特許第6095427号(P6095427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6095427マダニ忌避効力増強剤、及びこれを配合したマダニ忌避組成物を用いるマダニ忌避方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095427
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】マダニ忌避効力増強剤、及びこれを配合したマダニ忌避組成物を用いるマダニ忌避方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/00 20060101AFI20170306BHJP
   A01N 37/46 20060101ALI20170306BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   A01N25/00 101
   A01N37/46
   A01P17/00
   A01N25/00 102
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-55881(P2013-55881)
(22)【出願日】2013年3月19日
(65)【公開番号】特開2014-181195(P2014-181195A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2016年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 修
(72)【発明者】
【氏名】南手 良裕
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【審査官】 福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−349409(JP,A)
【文献】 特表2007−513871(JP,A)
【文献】 特開2009−001501(JP,A)
【文献】 特開2003−026523(JP,A)
【文献】 特開2010−184919(JP,A)
【文献】 特表2001−502729(JP,A)
【文献】 特開2006−206442(JP,A)
【文献】 特開2013−040132(JP,A)
【文献】 特開2010−132628(JP,A)
【文献】 特開2010−275264(JP,A)
【文献】 特開2010−222278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/00−65/48
A01P 1/00−23/00
A01M 1/00−99/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マダニ忌避成分として3−(N−ブチルアセトアミド)プロピオン酸エチルを3.0〜20w/v%と、
マダニ忌避効力増強剤としてグリコールエーテル化合物である
3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、
エチレングコールモノアリルエーテル、
プロピレングリコールモノフェニルエーテル、及び
ジプロピレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種を1.0〜10w/v%と、
更に溶剤としてエチルアルコール及び/又はイソプロピルアルコールを30〜96w/v%含有することを特徴とするマダニ忌避効力増強剤を配合したマダニ忌避組成物。
【請求項2】
前記マダニ忌避組成物が、当該マダニ忌避組成物を衣服に1mあたり2〜50mLをスプレー噴霧処理する、衣服処理用であることを特徴とする請求項1に記載のマダニ忌避効力増強剤を配合したマダニ忌避組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のマダニ忌避組成物を用いることを特徴とするマダニ忌避方法(ただし人体への使用は除く)。
【請求項4】
前記マダニ忌避組成物を衣服に1mあたり2〜50mLをスプレー噴霧処理することを特徴とする請求項3に記載のマダニ忌避方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マダニ忌避効力増強剤、及びこれを配合したマダニ忌避組成物を用いるマダニ忌避方法に関するものである。更に詳しくは、特に衣服に処理されるマダニ忌避成分のマダニ忌避効力を増強させ、当該衣服から露出した衣服着用者の肌をマダニの被害から保護するために効果的なマダニ忌避効力増強剤、及びこれを配合したマダニ忌避組成物を用いるマダニ忌避方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蚊、ブヨ、サシバエ等の害虫から人体等を守るための人体用害虫忌避剤は広く実用に供され、その忌避効力の向上、あるいは使用感の改善、刺激性の軽減を目的とした様々な改良品が提案されている。一方、人体の皮膚に対する症害を極力回避するために、害虫忌避剤を人体の皮膚に適用するのではなく、特開2003−26523号公報(特許文献1)や特開2010−222278号公報(特許文献2)のように、害虫忌避組成物を衣服に処理し害虫忌避効果を得ようとする試みもある。しかしながら、衣服に処理する方法では、忌避成分の処理ムラや処理量のバラツキが避けられず、蚊、ブヨ、サシバエ等のような飛翔害虫に対し満足のいく忌避効果が得られない場面が多いのが実情である。
【0003】
ところで、マダニ類は通常、野外の草むらや森林等に生息し、シカやイノシシ等の野生動物に寄生するが、犬に寄生する種類も知られている。マダニ類の成虫は、通りかかった人の上着に取り付いてから下着〜皮膚面に移行し、徘徊しながら寄生部位を探して咬着する。その後の吸血は産卵のために必要で、この際に様々な病原体を媒介させるベクターとなりうることが報告され、最近では、ウイルス感染症の一つである重症熱性血小板減少症候群(SFTS)との関連性が取り沙汰されている。
かかる現状を鑑み、当面のマダニ被害対策として、濃度が10%程度のジエチルトルアミド(ディート)製剤を手袋や袖口にスプレーしたり、露出皮膚面に塗布する方法が提唱されている。また、特開平5−178712号公報(特許文献3)には、ベンジルホーメート、ベンジルアセテート、ベンジルプロピオネート等の化合物及びこれを主成分とする精油等を有効成分に用いたマダニの忌避剤が開示されているが、それらの効果は到底十分とは言えない。
【0004】
本発明者らは、マダニ類の生態や習性を考慮した時、忌避成分の衣服処理が蚊、ブヨ、サシバエ等のような飛翔害虫に対するよりは効果的であることを認識し、マダニ被害対策に特化された製剤の開発を目指して検討を開始した。そして、その検討過程において、マダニ対策に最適な忌避成分とこの忌避効力を特異的に増強させ得るマダニ忌避効力増強剤を見出し、これを応用することによって本発明を完成するに至ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−26523号公報
【特許文献2】特開2010−222278号公報
【特許文献3】特開平5−178712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、マダニ忌避成分のマダニ忌避効力を増強させ、特に衣服に処理された時に当該衣服から露出した衣服着用者の肌をマダニの被害から保護するために効果的なマダニ忌避効力増強剤、及びこれを配合したマダニ忌避組成物を用いるマダニ忌避方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成が上記目的を達成するために優れた効果を奏することを見出したものである。
(1)マダニ忌避成分として3−(N−ブチルアセトアミド)プロピオン酸エチルを3.0〜20w/v%と、マダニ忌避効力増強剤としてグリコールエーテル化合物である
3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、
エチレングコールモノアリルエーテル、
プロピレングリコールモノフェニルエーテル、及び
ジプロピレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種を1.0〜10w/v%と、
更に溶剤としてエチルアルコール及び/又はイソプロピルアルコールを30〜96w/v%含有するマダニ忌避効力増強剤を配合したマダニ忌避組成物。
(2)前記マダニ忌避組成物が、当該マダニ忌避組成物を衣服に1mあたり2〜50mLをスプレー噴霧処理する、衣服処理用であることを特徴とする(1)に記載のマダニ忌避効力増強剤を配合したマダニ忌避組成物。
(3) (1)に記載のマダニ忌避組成物を用いることを特徴とするマダニ忌避方法(ただし人体への使用は除く)。
(4)前記マダニ忌避組成物を衣服に1mあたり2〜50mLをスプレー噴霧処理することを特徴とする(3)に記載のマダニ忌避方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のマダニ忌避効力増強剤は、マダニ忌避組成物に配合されるとともに、マダニ忌避成分のマダニ忌避効力を増強させ、特に衣服に処理された時に当該衣服から露出した衣服着用者の肌をマダニの被害から効果的に保護するので非常に有用性が高い。そしてこれを配合したマダニ忌避組成物を用い、特に衣服に処理する本発明のマダニ忌避方法も極めて実用的なものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で用いるマダニ忌避成分は、3−(N−ブチルアセトアミド)プロピオン酸エチル(以降、本忌避成分と称する)に特定される。蚊、ブヨ、サシバエ等のような飛翔害虫に対して忌避作用あるいは吸血阻害作用を有する害虫忌避成分としては、本忌避成分のほか、例えば、ディート、1−メチルプロピル 2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペリジンカルボキシラート、p−メンタン−3,8−ジオール、1,6−ヘキサンジオール、ベンジルアセテート、シトロネラール、シトロネロール、シトラール、リナロール、テルピネオール、メントール、α―ピネン、カンファー、ゲラニオール、カランー3,4−ジオール等の合成あるいは天然の各種化合物、更には、桂皮、シトロネラ、レモングラス、クローバ、ベルガモット、月桂樹、ユーカリ等から採れる精油、抽出液があげられるが、本発明者らによる各種試験の結果、マダニに対しては3−(N−ブチルアセトアミド)プロピオン酸エチルが特に高い忌避効果を示すことが認められた。
【0010】
本忌避成分は、ディートに較べると衣服に対してシミや変色等の影響を生じにくく、また水に溶けやすいために製剤化が有利となる場面がある。
本忌避成分のマダニ忌避組成物中の配合量は3.0〜20w/v%、好ましくは5.0〜12w/v%が適当である。3.0w/v%未満であると十分な忌避効果が得られず、一方20w/v%を超えると製剤化に困難を伴う場合があり好ましくない。
なお、本発明の趣旨に支障を来たさない限りにおいて、本忌避成分と共に上記した他の害虫忌避成分を適宜併用しても構わない。
【0011】
本発明は、本忌避成分を含有するマダニ忌避組成物に配合され、かつ、本忌避成分のマダニ忌避効力を相乗的に増強させる成分として、炭素数が4〜10のグリコール又はグリコールエーテル化合物から選ばれる1種又は2種以上を特定したことに特徴を有する。
炭素数が4〜10のグリコール又はグリコールエーテル化合物としては、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エチレングルコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール[以降、ソルフィット(株式会社クラレ商品名)と称する]、及びジプロピレングリコールジメチルエーテル等があげられるが、なかんずく1,3−ブチレングリコール及び/又はソルフィットがマダニ忌避効力の増強作用が強く好適である。
【0012】
前記グリコール又はグリコールエーテル化合物は、前記マダニ忌避組成物中に1.0〜10w/v%配合される。1.0w/v%未満であるとマダニ忌避効力の増強作用が乏しく、一方、10w/v%を超えて配合しても配合量に相応した増強作用が得られない。
本発明者らの検討結果によれば、前記グリコール又はグリコールエーテル化合物は、本忌避成分のマダニに対する忌避効力を特徴的に増強させる一方、例えば、蚊の場合はそれほどの忌避効力増強作用を有さないことが実証された。
【0013】
本発明に係るマダニ忌避組成物は、特に衣服処理用に適しており、通常、速乾性や火気への安全性等を考慮のうえ溶剤が配合される。かかる溶剤としてはエチルアルコール及び/又はイソプロピルアルコール(IPA)が好ましく、その配合量はマダニ忌避組成物に対し30〜96w/v%が適当である。エチルアルコールを用いる場合、速乾性に優れるとともに肌への作用が緩和で、かつ食品用として一般的な醸造エチルアルコールが使い易い。
必要ならば、他の種類の溶剤、例えば、水、灯油等の炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤等を適宜配合してもよい。例えば、人の肌に適用される場面では、水を配合することによって人体への安全性やさらさら感を付与できるので好適である。水の種類については特に限定されないが、硬度700以下の天然ミネラル水が好ましい。海洋深層水、海洋表層水、地下深層水、山麓の涌き水等のミネラル水は、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン等の金属イオンを含み、人体に不足しがちなミネラル成分を補給しやすいことから各方面で注目されており、例えば、逆浸透膜法等により濾過、脱塩処理を行い硬度を100〜1000程度に調整したものが飲料として販売されている。
【0014】
前記マダニ忌避組成物を調製するに際し、更に、界面活性剤や可溶化剤、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤、滑沢剤、安定化剤、pH調整剤、着色剤、香料等を適宜配合することもできる。
界面活性剤や可溶化剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル類(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等の非イオン系界面活性剤や、ラウリルアミンオキサイド、ステアリルアミンオキサイド、ラウリル酸アミドプロピルジメチルアミンオキサイド等の高級アルキルアミンオキサイド系界面活性剤を例示することができる。
また、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤としては、パラアミノ安息香酸、アミルサリシネート、オクチルシンナメート、メトキシ桂皮酸オクチル、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等があげられる。更に、肌に適用された場合に、さらさら感を付与するための助剤として、無水ケイ酸、タルク等の無機粉末、変性デンプン、シルク繊維粉末等の有機粉末を配合してもよい
【0015】
本発明では、本発明の効果に支障を来たさない限りにおいて他の機能性成分を配合しても
よく、例えば、殺虫成分や、消臭成分、除菌・抗菌成分、衣服の柔軟成分等があげられる。殺虫成分としては、常温揮散性ピレスロイド系のエムペントリン、プロフルトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン等があげられるが、本発明の趣旨に照らし、配合するとしても極力微量に留めるのが好ましい。消臭成分としては、イネ科、ツバキ科、イチョウ科、モクセイ科、クワ科、ミカン科、キントラノオ科、カキノキ科の中から選ばれる植物抽出物、例えば、サトウキビエキス、緑茶抽出エキス、チャ乾留物、柿抽出エキス、グレープフルーツ抽出エキス、レンギョウ抽出エキス等が代表的である。また、「緑の香り」と呼ばれる青葉アルコールや青葉アルデヒド等を添加してリラックス効果を付与することもできる。
【0016】
本発明に係るマダニ忌避組成物が適用される剤型としては、液剤、乳剤、水溶剤、マイクロエマルジョン等があり、通常スプレー形態で用いられる。また、液状のマダニ忌避組成物に噴射剤を加えてエアゾール形態とすれば、スプレー粒子を微粒化でき、しかも使い易いので好適である。なお、エアゾール形態の場合、各成分の含有量はマダニ忌避組成物中の含量又は濃度で示す。
【0017】
エアゾール形態に適用する場合の噴射剤としては、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)、圧縮ガス(窒素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素、圧縮空気等)があげられる。
【0018】
前記マダニ忌避組成物が充填される容器は、その用途、使用目的、対象害虫等に応じて、適宜バルブ、噴口、ノズル等の形状を選択すればよい。
例えば、広角ノズル付きのトリガースプレータイプは、一度の操作で広い範囲を処理することが可能となり便利である。また、容器の材質としてPETを使用することによって、液量を視認できると共にデザイン性にも優れるというメリットを有する。
【0019】
本発明の対象とするマダニについては、一般的なマダニ類であれば、特に限定はされないが、マダニ類として、ヤマトマダニ、タネガタマダニ、シュルチェマダニ、カモニカマダニ、フタトゲチマダニ、キチマダニ、オオトゲチマダニ、タカサゴキララマダニなどが挙げられる。
【0020】
こうして得られた本発明に係るマダニ忌避組成物は、本忌避成分とマダニ忌避効力増強剤の相乗効果によって顕著なマダニ忌避効力を示す。そして、草むらや森林等に入る前に、当該マダニ忌避組成物を衣服に1mあたり2〜50mL処理することによって、およそ4〜12時間にわたりマダニ類が衣服に付着するのを防止し、仮に取り付いたとしても下着〜皮膚面に移行することがないので、衣服から露出した衣服着用者の肌をマダニの被害から効果的に保護することが可能となる。このように、本発明に係るマダニ忌避組成物は、マダニ防除に特化した有用な製剤を提供するものであるが、アカイエカ、チカイエカ、ヒトスジシマカなどの蚊類、蚋、ユスリカ類、ハエ類、コバエ類(ショウジョウバエ類、ノミバエ類等)、チョウバエ類、イガ類などの飛翔害虫に対しても有効であり、総合的にみてその実用性は極めて高い。
【0021】
次に具体的な実施例に基づき、本発明のマダニ忌避効力増強剤、及びこれを配合したマダニ忌避組成物を用いるマダニ忌避方法について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0022】
本忌避成分[3−(N−ブチルアセトアミド)プロピオン酸エチル]を7.0g(7.0w/v%)、マダニ忌避効力増強剤として1,3−ブチレングリコールを2.0g(2.0w/v%)、柿抽出物由来の消臭成分を1.0g(1.0w/v%)、及び99%エタノールを55g(55w/v%)に精製水を加えて全量を100mLとし、ポンプスプレー容器に充填してスプレータイプの本発明に係るマダニ忌避組成物を調製した。
【0023】
山歩きに出かける前に、上記ポンプスプレーを上着とズボンに1mあたり10mL、特に袖口とズボンの下部には入念にスプレーした。約5時間山を歩き草むらに入ることもあったが、マダニに取り付かれることがなく、衣服にシミを残すこともなかった。
【実施例2】
【0024】
本忌避成分を3.5g(7.0w/v%)、マダニ忌避効力増強剤として1,3−ブチレングリコールを1.0g(2.0w/v%)とトリプロピレングリコールを0.5g(1.0w/v%)、無水ケイ酸(商品名:サイリシア)を2.0g(4.0w/v%)、及びグリセリン脂肪酸エステル(商品名:デカグリン)0.25g(0.5w/v%)に99%エタノールを加えて全量を50mLとし、本発明に係るマダニ忌避組成物を調製した。このマダニ忌避組成物(50mL)をエアゾール容器に入れ、更に液化石油ガス(LPG:50mL)を加圧下に充填して、人体用に適したエアゾールを作製した。
【0025】
上記エアゾールを、肌が露出した手首、足首及び首回りと上着の袖口に濡れる程度に噴霧した。約5時間山を散策したが、さらさら感を有して使いやすく、またマダニの咬着被害を受けることもなかった。
【実施例3】
【0026】
実施例1に準じて表1に示す処方のスプレータイプのマダニ忌避組成物を調製し、以下の忌避効力試験を実施した。結果を表1に併せて示す。なお実施例3および7については、参考例として示す。
【0027】
(1)マダニに対する忌避試験
供試マダニとしてライム病を媒介するシュルチェマダニを用いた。即ち、各試料を幅0.68cmの濾紙に該忌避成分が0.1mg/cmとなるように含浸させ、この濾紙を直径3.3cmのシャーレ内壁に隙間なく一巡させた後、絶食状態にあるマダニの雌成虫をシャーレ中央に載せ、マダニがこの濾紙を乗り越えるまでにかかった時間を測定した。試験は3回行い、対照として試料試験直後に無処理濾紙による試験を毎回行い、該対照との比較によって評価した。また、比較物質としてディートを用いて同様に試験を行った。対照との比較は、濾紙を乗り越えるのに要した時間での対照との時間比とし、次式により求めた。

対照との時間比=試験濾紙を乗り越えるのに要した時間/無処理濾紙を乗り越えるのに要した時間

得られた結果を次の基準により判定した。
5:逃避時間又は対照との時間比がディート(比較例2)の5倍以上、
4:逃避時間又は対照との時間比がディート(比較例2)の3〜5倍、
3:逃避時間又は対照との時間比がディート(比較例2)の2〜3倍、
2:逃避時間又は対照との時間比がディート(比較例2)の1〜2倍、
1:逃避時間又は対照との時間比がディート(比較例2)と同程度、
0:逃避時間又は対照との時間比がディート(比較例2)の1倍未満。
【0028】
(2)蚊に対する忌避試験
ヘアレスマウスを固定用の金網の中に入れ、その背中に各試料を処理したガーゼ(大きさ:3cm×3cm、含浸量:該忌避成分として0.1mg/cm)を固定し忌避試験用の検体とした。供試虫としては1日絶食させた羽化5日後未吸血のヒトスジシマカ雌成虫を使用し、各忌避試験用検体を入れたケージに前記供試虫20匹を放った。直後から10分間にマウスに飛来し吸血した供試虫数を数え、無処理ガーゼを用いた対照との比較から次式により忌避率を求めた。

忌避率(%)=100−(処理検体の飛来吸血虫数/対照の飛来吸血虫数)×100
【0029】
【表1】
【0030】
比較例1、3、7及び9の試験結果から、害虫忌避成分として知られる本忌避成分[3−(N−ブチルアセトアミド)プロピオン酸エチル]、ディート、1,6−ヘキサンジオール、及びベンジルアセテートは、蚊に対してそれほどの差がなく有効であったが、マダニに対しては本忌避成分の忌避効力が有意に高かった。そして、本発明がマダニ忌避効力増強剤として開示する炭素数が4〜10のグリコール又はグリコールエーテル化合物は、本忌避成分との組合わせで、しかもマダニに対してのみ特徴的に顕著な相乗効果を奏し、蚊に対しては効力増強効果がそれほど高くないことが明らかとなった(本発明3と比較例3の対比)。一方、ディート、1,6−ヘキサンジオール、及びベンジルアセテートのような他の害虫忌避成分の場合、当該グリコール又はグリコールエーテル化合物の効力増強作用は、マダニ及び蚊のいずれに対しても低かった(比較例1と2の対比、比較例6と7の対比、比較例8と9の対比)。
更に、比較例4と5の試験結果を参酌すると、グリコール又はグリコールエーテル化合物は炭素数が4〜10の範囲であることが必要で、また、本発明7の結果から溶剤としてはエチルアルコール及び/又はイソプロパノールが、忌避効果だけでなく、速乾性や衣服への影響の点からも好ましいことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、マダニ忌避用途だけでなく、他の分野にも利用できる可能性がある。