(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を説明する前に、本発明を想到するに至った経緯を説明する。
【0014】
図1は、従来の一般的な割出しテーブル200の構成を示した断面図である。
【0015】
図1に示すように、従来の割出しテーブル200は、本体110にベアリング111を介して、回転軸Jを中心に回転可能に支持されたスピンドル112と、スピンドル112の軸方向端部において、スピンドル112に固定されたテーブル113と、スピンドル112の径方向外方において、スピンドル112に固定されたウォームホイール114と、ウォームホイール114に係合し、ウォームホイール114を回転駆動するウォームシャフト115とを備えている。
【0016】
ここで、ウォームホイール114とスピンドル112とは、ボルト116を用いて締結されている。
【0017】
割出しテーブル200の軸方向の長さLを短くするには、ウォームホイール114をベアリング111の方向に近づけて、ウォームホイール114とベアリング111との距離を短くすればよい。
【0018】
しかしながら、ウォームホイール114をスピンドル112にボルト116で締結するには、スピンドル112側に、ボルト116をねじ込むためのタップ(ネジ穴)を設ける必要となる。そのため、ウォームホイール114をベアリング111の方向に近づけると、タップにねじ込まれたボルト116とベアリング111とが干渉するため、一定以上に近づけることができない。
【0019】
そこで、
図2に示すように、ボルト116とベアリング111との干渉を避けるために、スピンドル112側に設けるタップの位置を、ベアリング111の径方向内側にずらすことによって、割出しテーブル200の軸方向の長さLをさらに短くすることができる。
【0020】
しかしながら、この場合、ベアリング111の径方向内側に位置するスピンドル112に、タップを設けるためのスペースが必要となる。スピンドル112にタップを設けるスペースを確保するためには、割出しテーブル200の外径を拡大するか、あるいは、割出しテーブル200の貫通穴の直径Wを縮小する必要がある。
【0021】
従って、従来の方法では、割出しテーブル200の径方向の大きさを拡大せずに、あるいは、割出しテーブル200の貫通穴の直径Wを縮小せずに、割出しテーブル200の軸方向の長さLを短くするには限界があった。
【0022】
ところで、上述したように、ウォームホイール114は、ウォームシャフトとの摩擦熱によって、ウォームホイール114がウォームシャフト115に焼き付くのを防止するために、耐焼き付け性に優れた銅合金等が採用されている。しかしながら、このような材料からなるウォームホイール114は、スピンドル112に採用される鉄合金等に比べて剛性が低い。そのため、ウォームホイール114を、ベアリング111に接するまで近づけると、ベアリング111からの軸方向の荷重を、剛性の低いウォームホイール114が直接受けることになる。その結果、ベアリング111からの荷重を受けて、ウォームホイール114が変形すると、スピンドル112が傾き、割出し精度の低下を招く。
【0023】
そのため、割出し精度の低下を抑制するために、
図2に示すように、ベアリング111とウォームホイール114との間に、一定の厚みtを有するスピンドル112の部位(以下、突出部という)112aを確保する必要がある。
【0024】
そこで、本願発明者等は、ベアリング111の軸方向下方に設けられるスピンドル112の突出部112aに注目した。すなわち、
図2に示すように、ウォームホイール114と突出部112aとは、一定の面積で互いに面接触している。従って、面接触した領域を互いに結合できれば、割出しテーブル200の径方向の大きさを拡大せずに、あるいは、割出しテーブル200の貫通穴の直径Wを縮小せずに、割出しテーブル200の軸方向の長さLを短くすることができると考え、本発明を想到するに至った。
【0025】
上述したように、ウォームホイール114とスピンドル112とは異種金属で構成されているため、一般の溶接(アーク溶接やTIG溶接等)では、互いに接合することは困難である。
【0026】
また、一般的なレーザ接合は、異種金属同士の接合が可能であるが、外周部のみしか接合できないため、十分な接合強度が得られない。また、ロウ付けも、異種金属同士の接合が可能であるが、接着部の強度が母材強度に比べて弱いため、十分な接合強度を得られない。また、拡散接合も異種金属同士の接合が可能であるが接合面を磨く必要があり、接合時間も長いため、製造コストが高くなり、現実的ではない。
【0027】
そこで、本願発明者等は、異種金属同士の面接合が可能な摩擦圧接に着目し、ウォームホイールとスピンドルとの接合に適合できるかどうか、検討を行った。
【0028】
摩擦圧接は、接合する部材を高速で擦り合わせ、 そのとき生じる摩擦熱によって部材を軟化させると同時に圧力を加えて接合する方法である。従って、耐焼き付け性に優れた材料(例えば、高力黄銅など)は、熱伝導性が良いため、接合温度まで上昇し難く、ウォームホイールとスピンドルとの接合には不向きと考えられていた。実際、予備的な実験として、1/2スケールの高力黄銅からなるサンプルと、炭素鋼(S45C)からなるサンプルとを用意して、これらを摩擦圧接したところ、母材に対して、5%以下の接合強度しか得られなかった。
【0029】
しかしながら、接合部の剛性を高め、入熱量を変更することで、実スケールのウォームホイールとスピンドルに対して、摩擦圧接を行ったところ、母材に対して、40%以上の接合強度が得られることが分かった。この強度は、一般的な割出しテーブルにおいて必要とされる強度の10倍以上の大きさであり、実用に十分耐える大きさである。
【0030】
このような接合強度に差が生じた理由は、以下のように考えられる。すなわち、後述する
図3に示すように、スピンドル12の突出部12aは、一定の幅を有する環状になっている。もし、突出部12aの径方向の幅が小さく、突出部12aとウォームホイール14との接触面積の大きさが不十分だと、接合部が変形し、入熱部での接合が困難であると同時に、接合部にせん断応力が残留することとなる。その結果、変形によって接合部がずれることによって、接合面全面に亘って溶着させることができなかったため、十分な接合強度が得られなかったものと考えられる。一方、突出部12aの径方向の幅を一定の大きさにすれば、突出部12aとウォームホイール14との接触面積を一定の大きさに確保できるため、接合部の変形及び残留せん断応力を抑制することができる。その結果、接合面全面に亘って溶着されることができたために、高い接合強度が得られたものと考えられる。
【0031】
以上の検討から、ボルト締結に代わって、摩擦圧接を、ウォームホイールとスピンドルとの結合に適用することが可能であることが分かった。また、後述するように、中間材を介して摩擦圧接を行えば、より強固な接合強度を得ることができる。
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態における説明では、回転軸に平行な方向を「軸方向」とし、回転軸を中心とする半径方向を「径方向」としている。また、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。
【0033】
(第1の実施形態)
図3は、本発明の第1の実施形態における割出しテーブル100の構成を示した断面図である。
【0034】
図3に示すように、本実施形態における割出しテーブル100は、本体10にベアリング11を介して、回転軸Jを中心に回転可能に支持されたスピンドル12と、スピンドル12の軸方向端部において、スピンドル12に固定されたテーブル13と、スピンドル12の径方向外方において、スピンドル12に固定されたウォームホイール14と、ウォームホイール14に係合し、ウォームホイール14を回転駆動するウォームシャフト15とを備えている。
【0035】
スピンドル12は、外周面において径方向外方に突出した環状の突出部12aを有し、ウォームホイール14の軸方向端面(上端面)と、突出部12aの軸方向端面(下端面)とは、摩擦圧接により接合されている。ここで、便宜上、軸方向のテーブル13側を「上方」、テーブル13と反対側を「下方」と定義し、例えば、軸方向端面のうち、テーブル13側の端面を上端面、テーブル13と反対側の端面を下端面という。
【0036】
また、突出部12aのウォームホイール14と接合した端面と反対側の端面(上端面)は、ベアリング11の軸方向端面(下端面)と接している。
【0037】
このように、ウォームホイール14の上端面とスピンドル12の突出部12aの下端面とを摩擦圧接により接合することによって、ウォームホイール14を、ベアリング11からの荷重に対して剛性が確保できるギリギリの距離まで、ベアリング11に近づけることができる。このとき、
図2に示したボルト締結のときのように、ベアリング111の径方向内側に位置するスピンドル112に、タップを設けるためのスペースは不要となる。そのため、割出しテーブル100の径方向の大きさを拡大することなく、あるいは、割出しテーブル100の貫通穴の直径Wを縮小することなく、割出しテーブル100の軸方向の長さLを短くすることができる。すなわち、
図3に示した割出しテーブル100において、軸方向の長さLを、
図1に示した割出しテーブル200に対して短くすることができ、また、貫通穴の直径Wを、
図2に示した割出しテーブル200に対して拡大することができる。
【0038】
本実施形態において、スピンドル12の突出部12aの軸方向の厚みtは、ベアリング11からの荷重に対して剛性が確保できる厚みであればよく、スピンドル12の材料、ベアリング11から受ける荷重の大きさ、割出しテーブル100に要求される割出し精度等によって、適宜決めればよい。例えば、スピンドル12を炭素鋼で構成した場合、典型的には、スピンドル12の突出部12aの厚みtを、5〜20mm程度に設定すればよい。
【0039】
また、本実施形態において、ウォームホイール14及びスピンドル12の材料は特に限定されないが、ウォームホイール14は、耐焼き付け性の高い材料を用い、スピンドル12は、剛性の高い材料を用いることが好ましい。ウォームホイール14としては、例えば、銅合金(高力黄銅、アルミニウム青銅、白銅、真鍮、砲金、青銅など)等を用いることができ、特に、高力黄銅が好ましい。また、スピンドル12としては、例えば、鉄合金(炭素鋼、一般構造用鋼、クロムモリブデン鋼、炭素工具鋼、合金工具鋼鋼材など)等を用いることができる。
【0040】
ウォームホイール14とスピンドル12との摩擦圧接の条件は、使用する材料や大きさ等によって、適宜決めればよい。典型的な条件を例示すれば、回転数は800〜1200rpm、摩擦圧力は、5〜40MPa、摩擦時のストロークは、1〜6mm、アプセット圧力は、50〜120MPa、アプセット時間は、5〜20秒である。
【0041】
なお、摩擦圧接では、ウォームホイール14またはスピンドル12が相対的に回転するため、両者の側面同士が互いに接触しないよう、
図3に示すように、スピンドル12の外周面と、ウォームホイール14の内周面との間に、一定の隙間20を設けておくことが好ましい。
【0042】
また、ウォームホイール14は、環状になっているため、摩擦圧接の際、ウォームホイール14とスピンドル12との接合面において、径方向外側及び径方向内側に押し出されたバリが生じる。このとき、径方向外側に生じたバリ(外バリ)は、機械的に除去できるが、径方向内側に生じたバリ(内バリ)は、機械的に除去することが難しい。しかしながら、本実施形態では、スピンドル12の外周面と、ウォームホイール14の内周面との間に隙間20が設けられているため、この隙間20に内バリを閉じ込めておくことができる。なお、隙間20に閉じ込められた内バリが、隙間20から漏れ出ないようにするために、
図3に示すように、隙間20の一部に、Oリング等の封止材を設けておくことが好ましい。なお、隙間20がない場合や、あっても狭い場合には、スピンドル12またはウォームホイール14の接合面の近傍に、内バリを収容する空間部を設けておくことが好ましい。
【0043】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、ベアリング11の軸方向下方に設けられたスピンドル12の突出部12aに、ウォームホイール14を摩擦圧接させたが、突出部12aを、ウォームホイール14に対してベアリング11と反対側に設けてもよい。
【0044】
図4は、本発明の第2の実施形態における割出しテーブル100の構成を示した断面図である。なお、
図3に示した第1の実施形態の構成を同じ構成については、説明を省略する。
【0045】
図4に示すように、略円筒状のスピンドル12は、外周面において、ベアリング11の軸方向端面(下端面)の一部と接する肉厚部12bを有し、スピンドル12の突出部12aは、肉厚部12bに対して、ベアリング11と反対側に設けられている。そして、ウォームホイール14の軸方向端面(下端面)は、突出部12aの軸方向端面(上端面)と摩擦圧接により結合されている。また、ウォームホイール14の突出部12aと接合した端面と反対側の端面(上端面)は、ベアリング11の軸方向端面(下端面)の近傍に位置している。ここで、「近傍」とは、ウォームホイール14の上端面が、ベアリング11の下端面と接しない程度に、接近している距離をいう。
【0046】
このように、スピンドル12の突出部12aを、ウォームホイール14に対してベアリング11と反対側に設けることによって、ウォームホイール14を、ベアリング11により近づけることができる。これにより、スピンドル12の軸ぶれに伴う割出し精度の低下をより抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態では、ベアリング11の下端面には、スピンドル12の肉厚部12bの上端面が接しており、ウォームホイール14の上端面とベアリング11の下端面とが隣接した位置関係となっている。このうち、ベアリング11の下端面と接するスピンドル12の肉厚部12bが、ベアリング11からの荷重を受け止める役目をなしている。そのため、ベアリング11の下端面に接する肉厚部12bは、ベアリング11からの荷重に耐えうる一定の面積を有していることが好ましい。また、肉厚部12bの軸方向の長さは、
図4に示すように、ベアリング11の下端面に接する部分から、突出部12aの上端面に接する部分まで延びていてもよく、あるいは、ベアリング11の下端面に接する部分にのみ設けていてもよい。ただし、後者の場合、肉厚部12bの軸方向の長さは、ベアリング11からの荷重に耐えうる一定の長さを有していることが好ましい。
【0048】
また、本実施形態においても、スピンドル12の外周面と、ウォームホイール14の内周面との間に隙間20を設けておくことが好ましい。これにより、摩擦圧接のときに生じる内バリを、隙間20に閉じ込めておくことができる。また、隙間20に閉じ込めた内バリが、隙間20から外に漏れ出ないように、隙間20の一部に、Oリング等の封止材を設けておくことが好ましい。なお、隙間20がない場合や、あっても狭い場合には、スピンドル12またはウォームホイール14の接合面の近傍に、内バリを収容する空間部を設けておくことが好ましい。
【0049】
このように、ウォームホイール14の下端面と、スピンドル12の突出部12aの上端面とを摩擦圧接により接合することによって、ウォームホイール14を、ベアリング11に接しないギリギリの距離まで、ベアリング11に近づけることができる。そのため、
図4に示した割出しテーブル100において、軸方向の長さLを、
図1に示した割出しテーブル200に対して短くすることができ、また、貫通穴の直径Wを、
図2に示した割出しテーブル200に対して拡大することができる。
【0050】
(実施形態の変形例)
上記の実施形態で説明したように、本発明における割出しテーブル100は、スピンドル12の外周面に、径方向外方に突出した環状の突出部12aを設け、ウォームホイール14と突出部とを摩擦圧接により接合することによって、割出しテーブル100の軸方向の長さLを短くしたものである。
【0051】
上述したように、本願発明者等は、ウォームホイール14とスピンドル12とを摩擦圧接で結合しても、十分な接合強度を得ることを確認している。とりわけ、ウォームホイール14の材料として、耐焼き付け性の高い高力黄銅を用いた場合でも、母材に対して、40%以上(一般的な割出しテーブルにおいて必要とされる強度の10倍以上)の接合強度を得ることができる。
【0052】
本変形例では、より強い接合強度を得るための摩擦圧接の方法について説明する。
【0053】
図5(a)、(b)は、本実施形態の変形例を示した部分断面図である。ここで、
図5(a)は、第1の実施形態の変形例で、
図5(b)は、第2の実施形態の変形例である。
【0054】
図5(a)、(b)に示すように、本変形例では、ウォームホイール14の軸方向端面と、突出部12aの軸方向端面とが、中間材30を介して摩擦圧接により接合されている。中間材30としては、ウォームホイール14及びスピンドル12の両方の材料に対して、接合強度の高い材料を選ぶことが好ましい。例えば、ウォームホイール14の材料として高力黄銅を用い、スピンドル12の材料として炭素鋼を用いた場合、中間材30の材料としては、純銅(C1020、C1100)または、銅と亜鉛以外の不純物が少ない黄銅(C2700、C2801、C4621、C14500、C3604、C1220、快削黄銅)、銅と錫以外の不純物が少ない黄銅(C5191、青銅)等を用いることができる。
【0055】
これにより、ウォームホイール14とスピンドル12とを直接に摩擦圧接する場合に比べて、より接合強度の高い結合を得ることができる。
【0056】
なお、摩擦圧接は、中間材30を、ウォームホイール14またはスピンドル12に、それぞれ順番に摩擦圧接してもよいし、中間材30をウォームホイール14とスピンドル12との間に挟んで、一度に摩擦圧接してもよい。後者の場合、中間材30を回転させて、両側のウォームホイール14とスピンドル1とから圧力を加えればよい。
【0057】
また、中間材30の形状を、熱が逃げ難い形状、例えば、軸方向において、横断面積が他の部位よりも小さい部位を有するような形状(例えば、縦断面が、T字またはI字の形状)にすることによって、より接合強度の高い結合を得ることができる。
【0058】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。