(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基準ピースはランス部の相対的な進退経路上で対象物の前方に主貫通孔の軸心と対象物の内空間の軸心とを同心状に位置させて配置し、撮影ユニットが基準ピースを通して対象物の内空間に進退することを特徴とする請求項2に記載の内面検査装置。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の撮影装置には、例えば
図9に示す原理のものがある。これは、リングビームデバイスと呼ばれるものであり、レーザ照射部1の半導体レーザから円状のレーザ光2を円錐ミラー3に照射し、円錐ミラー3に入射したレーザ光2がその入射光軸に対して直角方向に反射し、光跡が360°に広がるディスク状の光4が形成される。レーザ照射部1と円錐ミラー3は透明円筒体5で一体化している。
【0003】
このディスク状の光4を物体の対象物内面に照射すると、対象物内面がリング状に照らされて、リング状の光切断面が照らし出される。この光切断面として映る光の輪は、
図10に示すように、対象物内面の断面輪郭を表す1本のリング状光6となる。以下においては対象物内面の断面輪郭を示す用語として光切断面を使用する。
【0004】
このリング状光6をレーザ照射部1の後方に位置する撮影部のカメラ(図示省略)で撮影することにより対象物内面の輪郭形状情報を得ることができる。
レーザ照射部1とその後方に位置する撮影部は一体のものとして管等の対象物の内部に挿入する必要があるので、レーザ照射部1と撮影部とを一体的に備えた撮影ユニットが長尺なランスで支持されている。
【0005】
特許文献1に記載する光学装置では、光源からの測定用光がレンズ系を介してコーンミラーの反射部によって反射され、光遮蔽部材の開口を介して、幅広で放射状の欠陥測定用光として測定対象側に出力される。コーンミラーの貫通穴を通過した測定用光は、コーンミラーの頂部周辺の反射部によって反射され、光遮蔽部材の開口を介して、幅狭で放射状の長さ特性測定用光として測定対象側に出力される。測定対象で反射した欠陥測定用光と長さ特性測定用光は、各々、測定部によって検出され、演算制御部によって測定対象の欠陥の有無判別や形状算出等が行われる。
【0006】
また、特許文献2には、異なる方向から撮影した被検体の画像を合成する際に、撮影手段の設置角度による誤差の影響を排除して、精度の高い合成画像を作成する方法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、
図9に示すような内面検査装置では、経時変化に伴う部品の劣化等の原因によって検査装置に異常が発生することがある。この原因としては、レーザ照射部の光源である半導体レーザの劣化、撮影部におけるカメラレンズのピントや絞りのずれ、あるいは装置を保護するための保護ガラスの汚れ等がある。
【0009】
このような原因によって、対象物の内面が正常な状態であっても欠陥があるかのように誤って検出する誤検知や、あるいは対象物の内面に欠陥がある場合でもその存在を検出することができない未検出が発生する。
【0010】
しかしながら、
図9に示すような内面検査装置では、誤検知や未検出の発生を認知することが困難であり、当然にその原因を判別することもできない。このために、製品不良の事象が発生しても、不良製品の検知やその発生の原因の究明が遅れることになり、結果として不良品が多発することになる。
【0011】
本発明は上記した課題を解決するものであり、欠陥検出性能の正常、異常を判断することが可能な内面検査装置および基準ピースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の内面検査装置の基準ピースは、試験体が軸心方向に貫通する主貫通孔を有し、主貫通孔の軸心周りの試験用内面に囲まれた内空間が基準内径寸法の形状をなし、試験体は主貫通孔の軸心周りの周壁に
複数の開口部を有し、前記開口部のそれぞれに擬似欠陥部を着脱可能に備え、各擬似欠陥部は内空間に臨む面が擬似欠陥形成面なすことを特徴とする。
【0013】
本発明の内面検査装置は、対象物の内空間に面する対象物内面を対象物の内空間への進退方向に沿って撮影するものであって、光源光を出射する光源部を有し、光源部から出射した光源光を対象物内面に向けて放射状の照射光にして照射する照射部と、照射光で照らされた対象物内面の光切断面を出退方向に沿って連続的に撮影する撮影装置を有する撮影部とを有する撮影ユニットと、撮影ユニットを支持して対象物の内空間に相対的に進退するランス部と、撮影ユニットおよびランス部を対象物の内空間に相対的に進退させる搬送駆動装置と、内空間にランス部が相対的に進退する請求項1に記載の基準ピースを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の内面検査装置において、基準ピースはランス部の相対的な進退経路上で対象物の前方に主貫通孔の軸心と対象物の内空間の軸心とを同心状に位置させて配置し、撮影ユニットが基準ピースを通して対象物の内空間に進退することを特徴とする。
【0015】
本発明の内面検査装置において、撮影ユニットおよびランス部が基準ピースおよび対象物の内空間に相対的に進退することが可能か否かを判断する異常判定部を備え、異常判定部は、撮影部が基準ピースの主貫通孔の入口に臨んで試験用内面の光切断面を撮影した取得全画像において、取得全画像の中心となる撮影中心座標と取得全画像中に映る光切断面画像の中心となる主貫通孔の中心座標との座標の偏差から主貫通孔および対象物の内空間の中心軸と撮影ユニットの基準軸との軸ずれ量を求め、軸ずれ量に基づいて異常の有無を判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明によれば、基準ピースの試験体は、試験用内面に囲まれた内空間が基準内径寸法の形状をなし、周壁に擬似欠陥部を着脱可能に備えるので、擬似欠陥部を取り替えて擬似欠陥部の擬似欠陥形成面に種々の欠陥形状を形成することにより、検査の対象物に欠陥が発生した状態と同様の事象を模擬的に創り出すことができる。このため、対象物を検査する場合と同条件下において装置の欠陥検出精度等の各種性能を把握できる。
【0017】
擬似欠陥部には任意の欠陥形状が形成できるので、実際の欠陥形状の程度と欠陥検出精度との相関を求めることで、欠陥検出結果の判定基準を擬似欠陥部に形成する欠陥形状で検証しながら確定することができる。また、擬似欠陥部に形成した欠陥形状が正しく検知されるか否かを検証することで、内面検査装置の欠陥検出性能を正しく評価できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1から
図7において、内面検査装置は、対象物、例えば管100の内空間である中空部の孔101に対して進退し、対象物の内空間に面する対象物内面、ここでは管内面を管軸心に沿った進退方向に沿って撮影するものであり、その主要な構成部として照射部10と撮影部20とランス部30と異常判定部40と搬送駆動装置50を備えている。
【0020】
本実施の形態では管100は一端に受口102を有し、他端が挿口をなすが、本発明の対象物は本実施の形態に係る管100に限定するものではなく、管100が受口102のない直胴型であってもよく、管100以外のものであっても良い。
【0021】
照射部10は光源光を対象物内面である管内面に向けて放射状の照射光にして照射するもので、支持ホルダ11の光源部12に格納した半導体レーザが光源光としてレーザ光を出射する。光源部12の前方には透明ガラスの円筒体からなる反射部13が配置されており、反射部13は内部に円錐ミラーを収納している。円錐ミラーは半導体レーザが出射したレーザ光をその入射光軸に対して直角方向に反射し、光跡が360°に放射状に広がるディスク状の照射光とする。
【0022】
連結部14は、照射部10と撮影部20を連結するもので、樹脂もしくは金属のパイプ体からなり、照射部10を支持するのに必要な十分な強度を有している。
撮影部20は、照射光で照らされた対象物内面の光切断面(レーザリング)を進退方向に沿って連続的に撮影するものであり、接続部21と撮影装置をなすレンズ部22とカメラ部23からなる。接続部21は後端側でレンズ部22のフード24に螺合接続し、前端側にフランジ25を有している。
【0023】
フランジ25には撮影部20の撮影視野内に配置される透明保護材26が連結されており、透明保護材26がレンズ部22の前方を覆っている。この透明保護材26はガラス材質であり、本実施の形態では板状ガラスからなる。
【0024】
レンズ部22はフード24およびフード24に接続したカメラレンズ27からなる。カメラ部23はカメラレンズ27に接続する撮影装置としてのカメラ28からなる。
撮影部20には衝突防止フランジ29を設けている。衝突防止フランジ29は、撮影ユニットの外径よりも一回り大きな外径を有しており、管内面を傷つけない材質からなり、管の内径のバラツキに起因して管内面と撮影ユニットが接触するおそれがある場合にあっても、衝突防止フランジ29の外周縁が管内面に当接する状態で撮影ユニットを管内面から離間した状態に保持する。
【0025】
照射部10と撮影部20からなる撮影ユニットはランス部30の挿入用ランス31の先端に設けてあり、挿入用ランス31が先端側に撮影ユニットを支持して管100の内空間に相対的に進退する。
【0026】
ランス部30は挿入用ランス31の基端側を保持するランス支持台32を備えており、ランス支持台32は昇降部33で挿入用ランス31を支持し、昇降部33の昇降により挿入用ランス31の上下方向の位置を調整可能である。ランス部30はランス延長パイプ34を介して撮影部20に接続している。
【0027】
異常判定部40は、画像処理装置(図示省略)にプログラム等によって構成された機能部で、検査結果に基づいて異常の有無を判断するものである。詳しくは、後述する。
搬送駆動部50は管台車51と管台車51の走行を制御する台車制御装置52を有している。管台車51は支持ローラ53を介して管100を支持している。管台車51は、管100の搬送ライン60との間において管100を受け渡す退避ステーション54と、管100の孔101に撮影部20および挿入用ランス31が挿入される検査ステーション55との間にわたって進退する。
【0028】
図1および
図2に示すように、内面検査装置の基準ピース500は、試験体501が検査の対象物である管100の基準内径寸法と同じ寸法で製作した直管パイプ部品である。試験体501は軸心方向に貫通する主貫通孔502を有しており、主貫通孔502の軸心周りの試験用内面503に囲まれた内空間504が基準内径寸法の形状をなし、試験用内面503は軸心方向に平坦で、均一な面をなし、軸心方向に曲がりや反りのない均一な内径を有している。試験用内面503は対象物の管100と同色で塗装してあり、その光反射率を等しくしてある。
【0029】
試験体501は主貫通孔502の軸心周りの周壁505に複数の開口部506を有しており、各開口部506に擬似欠陥ピン507を着脱可能に備えている。
図2に示すように、擬似欠陥ピン507は、フランジ部507aと開口部506に挿入する胴部507bからなり、胴部507bの内空間504に臨む面が擬似欠陥形成面508をなし、試験体501の試験用内面503に沿った形状をなす。
図2(a)に示すように、擬似欠陥形成面508が基準内径寸法に応じた湾曲面をなす正常であるものや、
図2(b)に示すように、擬似欠陥形成面508に不良品となる大きな凹部の欠陥509を形成したものや、
図2(c)に示すように、擬似欠陥形成面508に修繕可能な小さな凹部の欠陥509を形成したものなど種々のものを用意する。欠陥509は凹欠陥のみならず凸欠陥であっても良い。
【0030】
図3(a)に示すように、基準ピース500は、内空間504にランス部30が相対的に進退するように、ランス部30の相対的な進退経路上に配置する。この場合に、基準ピース500は、管台車51に設置した架台等によって支持し、ランス部30の相対的な進退経路上の位置と進退経路から外れた位置とにわたって移動可能に設ける。
【0031】
あるいは、
図3(b)に示すように、基準ピース500は、ランス部30の相対的な進退経路上で対象物の管100の前方に固定配置し、撮影ユニットが基準ピース500を通して対象物の管100の孔101に進退可能に設ける。
【0032】
以下、上記した構成の作用を説明する。
(基本動作)
図7(a)に示すように、台車制御装置52は退避ステーション54において搬送ライン60から管100を管台車51の上に受け取り、その後に
図7(b)に示すように、管台車51を検査ステーション55に移動させる。管台車51が検査ステーション55へ移動する際に、撮影ユニットの照射部10、撮影部20が挿入用ランス31とともに管100の孔101に挿入される。
【0033】
そして、挿入用ランス31を管100に挿入しながら、あるいは挿入用ランス31を管100から引き出しながら対象物内面である管内面を撮影部20で撮影する。
(撮影動作)
照射部10では、支持ホルダ11の内部に格納した光源部12の半導体レーザが光源光としてレーザ光を反射部13の円錐ミラーに向けて出射する。反射部13の円錐ミラーは半導体レーザが出射したレーザ光をその入射光軸に対して直角方向に反射し、光跡が360°に放射状に広がるディスク状の照射光にして対象物内面である管内面に向けて照射する。このディスク状の光を対象物内面に照射すると、対象物内面がリング状に照らされて、リング状の光切断面が照らし出される。この光切断面として映る光の輪は、対象物内面の断面輪郭を表す1本のリング状光、すなわちレーザリングとなる。このレーザリングを撮影部20のカメラ28で撮影することにより対象物内面の輪郭形状情報を得る。
(管内面検査)
管100の内面の欠陥を検査する工程では、上述撮影動作によって対象物の管100の管内面をランス部30の進退方向に沿って撮影する。管内面を移動しながら撮影した画像を二値化し、得られたレーザリング画像の欠損や歪みから、異常判定部40が管内面の凹部等の欠陥の有無を判定する。
(欠陥検出性能確認)
基準ピース500の各開口部506に種々の擬似欠陥ピン507を装着する。
図3(a)に示すように、基準ピース500をランス部30の進退経路上に位置するように単独で配置し、管台車51を走行させて基準ピース500の主貫通孔502に撮影ユニットを挿入しつつ、上述した管内面検査工程と同様にして基準ピース500の試験用内面503を検査し、異常判定部40において欠陥の有無を判定する。
【0034】
この判定において、擬似欠陥ピン507に形成した欠陥509が正しく検知されるか否かを検証することで、あるいは擬似欠陥形成面508が正常である擬似欠陥ピン507を正常であると検知するか否かを検証することにより、内面検査装置の欠陥検出性能を正しく評価できる。すなわち、欠陥509を検出した場合には欠陥検出性能が正常であると判断し、基準ピース500を退避させて通常の管内面検査工程を実施し、管内面検査で異常を検知した場合には製品不良と判断する。また、欠陥509を検出できない場合には欠陥検出性能が異常であると判断し、経時変化等の原因を検討し、メンテナンスを実施する。
【0035】
また、
図3(b)に示すようにして基準ピース500を運用することも可能である。この場合には、基準ピース500をランス部30の相対的な進退経路上で対象物の管100の前方に固定配置し、撮影ユニットが基準ピース500を通して対象物の管100の孔101に進退可能に設ける。
【0036】
次ぎに、管台車51を走行させて基準ピース500の主貫通孔502に撮影ユニットを挿入しつつ、上述した管内面検査工程と同様にして基準ピース500の試験用内面503を検査し、続いて管100の孔101に撮影ユニットを挿入しつつ、管内面検査工程を行なう。
【0037】
そして、異常判定部40において欠陥の有無を判定する。この場合に、基準ピース500で行なう欠陥検出性能の評価と管内面検査の結果を同時に得る。そして、基準ピース500で行なう欠陥検出性能の評価が正常である場合には管内面検査の結果が信頼できると判断する。基準ピース500で行なう欠陥検出性能の評価が異常である場合には欠陥検出性能が低下していると判断し、管内面検査の結果が信頼できないと判断する。この欠陥検出性能が低下していると判断される状況が繰り返し発生する場合には、管内面検査の結果が無効であると判断し、あるいは装置異常と判断する。
【0038】
図4に、対象物の管100に対して管内面検査を連続して行う際の基準ピースの凹欠陥検出の判定結果と、その判定結果に基づくデータの取り扱い、および装置状態の検知方法の例を示す。
【0039】
例えば、
図4(a)に示すように、基準ピース500の欠陥が未検出の頻度が少ない場合には、基準ピース500の欠陥が未検出の場合に検査無効と通知する。基準ピースの欠陥を検出できない未検出の頻度が低い場合は、撮影ユニットの照明部10の照射面や撮影部20の撮影面に一時的に塵埃などが付着し、一時的に検査性能が低下する等が考えられ、検査はそのまま継続する。
【0040】
図4(b)に示すように、基準ピース500の欠陥が未検出の頻度が大きい場合、すなわち単位ロット中の半数以上の検査において基準ピース500の欠陥が未検出の場合には、基準ピース500の欠陥が未検出の場合に検査無効と通知するとともに、装置の異常を警告する。
図4(c)に示すように、基準ピース500の欠陥が未検出の頻度が異常に大きい場合、すなわち単位ロット中の全数の検査において基準ピース500の欠陥が未検出の場合には、装置の異常を警告するとともに、メンテナンスの実施を要求する。
【0041】
上述したように、基準ピース500の試験体501は、試験用内面503に囲まれた内空間504が基準内径寸法の形状をなし、周壁505に擬似欠陥部を着脱可能に備えるので、擬似欠陥ピン507を取り替えて擬似欠陥ピン507の擬似欠陥形成面508に種々の欠陥形状の欠陥509を形成することにより、検査の対象物の管100に欠陥が発生した状態と同様の事象を模擬的に創り出すことができる。このため、対象物の管100を検査する場合と同条件下において装置の欠陥検出精度等の各種性能を把握できる。
【0042】
擬似欠陥ピン507には任意の欠陥形状が形成できるので、実際の欠陥形状の程度と欠陥検出精度との相関を求めることで、欠陥検出結果の判定基準を擬似欠陥部に形成する欠陥形状で検証しながら確定することができる。
【0043】
また、基準ピース500の試験用内面503は対象物の管100と同色で塗装してあり、その光反射率を等しくしてある。このため、撮影ユニットから試験用内面503に照射され、撮影ユニットで撮影されたレーザリングのレーザ線幅の円周分布、あるいはレーザリングの直径と基準ピース500の内径との比較から、検査性能の低下も検出可能である。
【0044】
例えば、基準ピース500の擬似欠陥を正常に検出した場合であっても、レーザリングの幅が全体に亘って規定幅から外れる、あるいは画像から得た直径に誤差が生じている場合は、レーザの出力の低下や撮影部のピントのずれなどが生じている可能性があるとして、擬似欠陥未検出時と同じくその検査データを無効としてもよい。また、レーザリングの一部の線分の幅が細い場合、あるいは線分が途切れている場合は、塵埃等の付着などが考えられ、正確な欠陥検出ができない可能性があるため、擬似欠陥未検出時と同じくその検査データを無効としてもよい。
(軸ずれ検査)
上述した基本動作において、
図5(a)に示すように、撮影部20の例えば接続部21と管100の直管部の端部が干渉すると、それ以上にランス部30を挿入することが困難となる。
図5(b)は、撮影部20を支持する挿入用ランス31が管100に正常に挿入された状態を示す。
【0045】
基準ピース500は、搬送駆動装置50の管台車51に固定配置されるが、ランス高さ位置のバラツキや検査本数の増加に伴なう管台車51の車輪やレールの摩耗等によって、撮影ユニットが基準ピース500との軸にずれが生じ、撮影ユニットが基準ピース500に衝突し破損する可能性があるため、基準ピース500に対する軸ずれ検査を行う。
【0046】
図8(a)に示すように、撮影部20が基準ピース500の主貫通孔502の入口に臨む位置に撮影ユニットを配置する。この状態において、撮影ユニットの撮影部20は基準ピース500の外に位置し、先端側の照射部10が基準ピース500の主貫通孔502の中に位置する。
【0047】
次に、撮影ユニットの照射部10の光源部12から出射した光源光を反射部13で反射させて放射状の照射光にして基準ピース500の内面である主貫通孔502の管内面に向けて照射し、照射光で照らされた管内面の光切断面(レーザリング)を撮影部20のカメラ部23で撮影する。撮影部20は、対象物の管内面の光切断面(レーザリング)を撮影する。次ぎに、
図8(b)に示すように、撮影部20が撮影した取得全画像P0において、取得全画像P0の中心となる撮影中心座標(X
1,Y
1)と取得全画像中に映る光切断面画像P1の中心となる対象物中心座標(X
0,Y
0)との座標の偏差から基準ピース500の軸心と撮影ユニットおよびランス部の基準軸との軸ずれ量を求め、軸ずれ量に基づいて異常の有無を判断する。
【0048】
ここで、取得全画像POの中心となる撮影中心座標(X
1,Y
1)はカメラ部23およびレンズ部22の中心に一致するが、撮影ユニットおよびランス部の基準軸は必ずしも撮影中心座(X
1,Y
1)と一致する必要はなく、基準軸と撮影中心座標(X
1,Y
1)とが一定距離の位置関係を有していれば良い。
【0049】
異常判定部40は、求めた軸ずれ量が許容範囲内、すなわち正常範囲内であるときに、搬送駆動装置50により撮影部20およびランス部30を対象物である基準ピース500の主貫通孔502に相対的に進入させることを許可する許可信号を台車制御装置52に出し、軸ずれ量が許容範囲を超えるとき、すなわち正常範囲外であるときに、搬送駆動装置50により撮影部20およびランス部30を基準ピース500の主貫通孔502に相対的に進入させることを禁止する禁止信号を台車制御装置52に出す。
【0050】
このように、撮影ユニットの撮影部20が基準ピース500の外に位置し、先端側の照射部10のみ基準ピース500の主貫通孔502の中に位置する状態、すなわち基準ピース500と撮影ユニットの衝突の可能性が低い状態で、撮影ユニットの挿入可否判断を行なえるので、衝突による撮影ユニットの損傷を未然に防止できる。
【0051】
また、基準ピース500は直管で形成されており、対象物の管100のように管の撓みや内径変動を考慮する必要がないため、基準ピース500の軸心と撮影ユニットおよびランス部の基準軸との軸ずれ量を正確に求めることができる。
【0052】
上述の
図3(b)に示すように対象物の管100の前方に基準ピース500を配置する場合においては、例えば管100を支持する支持ローラ53の摩耗などにより、基準ピース500と管100の軸ずれが生じている可能性がある。このため、基準ピース500との軸ずれ検査と同様に、管100に対しても軸ずれ検査を実施する。
【0053】
この場合、撮影ユニットの先端側の照射部10が管100の孔101の直管部の中に位置し、撮影部20が直管部の外側に位置する際の管内面の光切断面(レーザリング)の取得画像から、撮影ユニットと管100との軸ずれ量を求め、軸ずれ量に基づいて異常の有無を判断する。
【0054】
図3(b)の構成にあっては、撮影ユニットと基準ピース500に対する軸ずれ量が正常範内であっても、撮影ユニットと管100との軸ずれ検査が正常範囲外であれば、搬送駆動装置50により撮影部20およびランス部30を対象物である管100の孔101に相対的に進入させることを禁止する禁止信号を台車制御装置52に出す。
【0055】
このように、管100と撮影ユニットの衝突の可能性が低い状態で、撮影ユニットの挿入可否判断を行なえるので、衝突による撮影ユニットの損傷を未然に防止できる。
また、基準ピース500と管100の軸ずれ量から、軸ずれの原因となる場所の絞り込みが行いやすくなる。すなわち、基準ピース500撮影ユニットの軸ずれ量が大きい場合は、基準ピース500の固定装置あるいはランス部30が位置ずれを起こしている可能性が高いと推測できる。管100と撮影ユニットの軸ずれ量が大きい場合は、管100の支持装置が位置ズレを起こしている可能性が高いと推測できる。このように、軸ずれの要因を素早く特定することができるので、検査再開までの時間を短縮でき、生産への影響を低くすることが可能となる。
(その他の実施の形態)
上述の実施の形態では、検査対象物の管100を載せた管台車51が退避ステーション54と検査ステーション55との間にわたって進退することで、管100の孔101に撮影ユニットおよび挿入用ランス31が挿入され、管100の内面を検査する構成を示した。しかし、検査対象物と撮影ユニットを相対的に移動させるものであればこの構成に限るものではない。例えば、検査対象物の管100が静止している状態で、撮影ユニットおよび挿入用ランス31を支持し移動させる移動手段により、撮影ユニットおよび挿入用ランス31を管100の孔101に進退可能とする構成であっても良い。