特許第6095456号(P6095456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6095456レーザ溶接方法およびレーザ・アークハイブリッド溶接方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095456
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】レーザ溶接方法およびレーザ・アークハイブリッド溶接方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/21 20140101AFI20170306BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20170306BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20170306BHJP
   B23K 26/348 20140101ALI20170306BHJP
   B23K 9/16 20060101ALI20170306BHJP
   B23K 103/04 20060101ALN20170306BHJP
【FI】
   B23K26/21 F
   B23K26/00 N
   B23K26/082
   B23K26/348
   B23K9/16 K
   B23K103:04
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-83717(P2013-83717)
(22)【出願日】2013年4月12日
(65)【公開番号】特開2014-205166(P2014-205166A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土井 一慶
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−52788(JP,A)
【文献】 特開昭61−88989(JP,A)
【文献】 特開2003−170284(JP,A)
【文献】 特開2011−92944(JP,A)
【文献】 特開平10−216972(JP,A)
【文献】 特開2002−178176(JP,A)
【文献】 特開2001−138077(JP,A)
【文献】 特開2002−336983(JP,A)
【文献】 特開2003−251484(JP,A)
【文献】 特開2012−6028(JP,A)
【文献】 特開2010−172911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の金属部材同士を突合せ継手によって接合する場合に、前記突合せ継手部分が裏当て材によって支持された状態で行われるレーザ溶接方法において、
レーザ光は、前記金属部材の接合端面同士を突き合わせた接合部を横切るように左右にウィービングさせながら照射され、左右に振れた部分を加熱部分としてレーザ出力を上げ、前記接合部を横切る部分を非加熱部分としてレーザ出力をゼロまたは低下させるようにすることを特徴とするレーザ溶接方法。
【請求項2】
請求項1に記載するレーザ溶接方法において、
ウィービングさせながら照射する前記レーザ光の軌跡を波形にすることを特徴とするレーザ溶接方法。
【請求項3】
請求項1に記載するレーザ溶接方法において、
ウィービングさせながら照射する前記レーザ光の軌跡は、左右に振れた加熱部分で小さく更にウィービングさせた波形にすることを特徴とするレーザ溶接方法。
【請求項4】
板状の金属部材同士を突合せ継手によって接合する場合に、前記突合せ継手部分が裏当て材によって支持された状態で行われ、先行してレーザ光が照射され、その後方でアーク溶接が行われるレーザ・アークハイブリッド溶接方法において、
レーザ光は、前記金属部材の接合端面同士を突き合わせた接合部を横切るように左右にウィービングさせながら照射され、左右に振れた部分を加熱部分としてレーザ出力を上げ、前記接合部を横切る部分を非加熱部分としてレーザ出力をゼロまたは低下させるようにし、
アーク溶接は、前記金属部材の接合端面同士を突き合わせた直線状の接合部に対して行うことを特徴とするレーザ・アークハイブリッド溶接方法。
【請求項5】
請求項4に記載するレーザ・アークハイブリッド溶接方法において、
ウィービングさせながら照射する前記レーザ光の軌跡は、波形にすること、または、左右に振れた加熱部分で小さく更にウィービングさせた波形にすることを特徴とするレーザ・アークハイブリッド溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の被接合部材を突き当てた接合部を裏当て材によって支持した状態で行われるレーザ溶接方法およびレーザ・アークハイブリッド溶接方法に関し、特に裏当て材にレーザ光が照射されることによって生じる溶接品質の低下を防止したレーザ溶接方法およびレーザ・アークハイブリッド溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被接合部材として例えば一対の鋼板を突合せ接合する場合、鋼板の接合端面同士を突合せた接合部にレーザ光が照射され、互いの母材が溶融して接合される。このとき、厚肉の鋼板では、接合部の裏面まで溶かし込むことが必要であるため、レーザ光による入熱量が多くなる。その際、溶融した接合部の母材が溶け落ちてしまわないように、レーザ光が照射される反対側には裏当て材が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−131283号公報
【特許文献2】特開2003−170284号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“レーザックス Q&A その5 レーザ溶接加工”,[online]、[平成25年3月15日検索]、インターネット<URL:http://www.laserx.co.jp/technology/qa/part5.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、被接合部材が長尺であって接合距離が長いような場合には、接合端面の継手を精度良く加工したとしても、接合端面同士を突き合わせたときに、公差分の隙間が生じてしまう箇所が生じる。突合せ継手のレーザ溶接では、通常、被接合部材同士の突き当て面の位置(接合部)を狙ってレーザ光が照射されるため、隙間が生じている箇所では、その隙間を通過して裏当て材にレーザ光が照射される。すると、裏当て材が溶けて蒸発・分解し、被接合部材の接合部にブローホールを生じさせるなど、溶接品質を低下させてしまう。そこで、こうしたレーザ光による隙間の通過を回避したレーザ溶接方法が上記特許文献1に開示されている。具体的には、被接合部材へのレーザ光の照射位置を突き合せ面から0〜0.8mmずらすとともに、照射方向を突合せ面に対して平行ではなく、3〜9度傾けてレーザ光を照射するレーザ溶接方法である。
【0006】
本発明は、前記従来例とは別の方法で課題を解決すべく、裏当て材へのレーザ照射によって生じ得る溶接品質の低下を防止したレーザ溶接方法およびレーザ・アークハイブリッド溶接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るレーザ溶接方法は、板状の金属部材同士を突合せ継手によって接合する場合に、前記突合せ継手部分が裏当て材によって支持された状態で行われるものであり、レーザ光は、前記金属部材の接合端面同士を突き合わせた接合部を横切るように左右にウィービングさせながら照射され、左右に振れた部分を加熱部分としてレーザ出力を上げ、前記接合部を横切る部分を非加熱部分としてレーザ出力をゼロまたは低下させるようにすることを特徴とする。
また、本発明に係るレーザ溶接方法は、ウィービングさせながら照射する前記レーザ光の軌跡を波形にすることが好ましい。
また、本発明に係るレーザ溶接方法は、ウィービングさせながら照射する前記レーザ光の軌跡を、左右に振れた加熱部分で小さく更にウィービングさせた波形にすることが好ましい。
【0008】
本発明に係るレーザ・アークハイブリッド溶接方法は、板状の金属部材同士を突合せ継手によって接合する場合に、前記突合せ継手部分が裏当て材によって支持された状態で行われ、先行してレーザ光が照射され、その後方でアーク溶接が行われるものであり、レーザ光は、前記金属部材の接合端面同士を突き合わせた接合部を横切るように左右にウィービングさせながら照射され、左右に振れた部分を加熱部分としてレーザ出力を上げ、前記接合部を横切る部分を非加熱部分としてレーザ出力をゼロまたは低下させるようにし、アーク溶接は、前記金属部材の接合端面同士を突き合わせた直線状の接合部に対して行うことを特徴とする。
また、本発明に係るレーザ・アークハイブリッド溶接方法は、ウィービングさせながら照射する前記レーザ光の軌跡を、波形にすること、または、左右に振れた加熱部分で小さく更にウィービングさせた波形にすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、板状の金属部材の接合端面同士を突き合わせた接合部に隙間が存在していたとしても、レーザ光の照射位置をウィービングさせるため、レーザ光はその隙間を横切るだけである。しかも左右に振れた部分を加熱部分としてレーザ出力を上げた状態にする一方で、接合部を横切る部分を非加熱部分としてレーザ出力をゼロまたは低下させるようにする。そのため、レーザ光が隙間を通って裏当て材に照射されたとしても、その裏当て材が溶けてしまって接合部にブローホールなどを生じさせることはなく、溶接品質の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】鋼板同士の突合せ継手を示した斜視図であり、特に隙間が生じたギャップ部分を示している。
図2】第1実施形態のレーザ溶接方法を示した接合部の平面図であり、特に、連続して照射されるレーザ光の軌跡を示している。
図3】第2実施形態のレーザ溶接方法を示した接合部の平面図であり、特に、連続して照射されるレーザ光の軌跡を示している。
図4】第3実施形態のレーザ・アークハイブリッド溶接方法を示した接合部の平面図である。
図5】レーザ・アークハイブリッド溶接方法の他の実施案を示した接合部の平面図である。
図6】レーザ光による時間当たりの入熱量と溶け込み深さの関係をグラフに示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明に係るレーザ溶接方法およびレーザ・アークハイブリッド溶接方法の実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。以下に示す実施形態は、板状の鋼部材同士に形成された突合せ継手を接合するものであり、特に裏当て材が必要な肉厚な板状部材或いは板状部分を対象とする溶接方法である。図1は、鋼板同士の突合せ継手を示した斜視図であり、特に隙間が生じた箇所(ギャップ部分8)を示している。
【0012】
鋼板1,2は、例えば板厚が10mmを超える肉厚の板材であり、それぞれの端部には直線状で平面の接合端面11,12が突合せ継手として形成されている。接合の際には、そうした鋼板1,2の接合端面11,12同士が押し当てられるため、溶接方向には接合端面11,12同士が接する接合部が連続することとなる。しかし、鋼板1,2の接合部が長尺な場合には、公差によって、接合端面11,12の間に図示するような隙間ができてしまう。本実施形態のレーザ溶接方法およびレーザ・アークハイブリッド溶接方法は、こうしたギャップ部分8を考慮したものであり、隙間を通過したレーザ光によって裏当て材3を溶かしてしまわないようにする。
【0013】
図2は、第1実施形態のレーザ溶接方法を示した接合部の平面図であり、特に、連続して照射されるレーザ光を照射した軌跡20を示している。こうした軌跡20になるように、レーザ光を照射するレーザ溶接装置には、例えば前記特許文献2に記載するような装置が使用される。すなわち、レーザ光をウィービングさせながら溶接するレーザ溶接装置である。こうしたレーザ溶接装置は、不図示のレーザ発振器で作られた溶接用のレーザ光がレーザヘッドにまで送られ、その中の集光レンズによって集光されたレーザ光が接合部へ照射される。
【0014】
特に、レーザ光の軌跡20が、溶接進行方向Xに対して左右に振れるようにした波形であるため、レーザ溶接装置はウィービング機構を備えている。ウィービング機構は、例えば反射ミラーの角度を可変させるアクチュエータを有し、それによって反射ミラーを揺動させ、所定角度の範囲内でレーザ光の照射方向を左右に振らせるようにしたものである。これによりレーザ光の軌跡20は、予め設定した波形を描くこととなる。また、レーザ溶接装置は、軌跡20を描くようにした光路の設定以外にも、レーザ光の出力や、溶接進行方向Xに対するレーザヘッドの移動速度の制御設定が可能である。
【0015】
そこで、第1実施形態では、波形となるレーザ光の軌跡20上において、太実線で示した曲線部分と、破線で示した直線部分とでレーザ光の出力制御が行われる。曲線部分は、レーザ光を必ず鋼板1,2に照射することができる箇所であるため、レーザ出力を高くした加熱部分21とする。一方で直線部分は、ギャップ部分8を横切ることになるため、レーザ出力がゼロか、或いは低くなるようにした非加熱部分22とする。こうすることにより、接合部の母材を溶融させて接合させると共に、ギャップ部分8の隙間をレーザ光が通り抜けたとしても、裏当て材3を溶かしてしまうことなく、従来のような溶接品質の低下を防止する。
【0016】
加熱部分21は、接合部(ギャップ部分8)を跨いで左右交互に位置し、溶接進行方向Xに沿って見た場合、鋼板1,2の各々では不連続になっている。そこで、溶接品質を確保するため、各加熱部分21で適切な深さや範囲で鋼板1,2の溶融が行われるよう入熱量の調整が必要になる。そのため、レーザ溶接装置では、レーザ光の出力やレーザヘッドの移動速度などの制御設定が行われる。ここで、図6は、上記非特許文献1に開示されたものであり、レーザ光による時間当たりの入熱量と溶け込み深さの関係が示されている。横軸が溶接速度であり、縦軸には溶け込み深さが示されている。
【0017】
図6に示す結果は、ファイバーレーザとYAGレーザを使用したものであり、ファイバーレーザでは、その出力を7kW,10kW,17kWとし、YAGレーザでは、出力を4kWとしてLD励起式とランプ励起式が使用されたものである。そして、各レーザ出力において、溶接速度を変化させた鋼板に対する溶け込み深さが測定され、グラフに示すような結果が得られている。また、具体的に示してはいないが、溶接断面を確認することにより、溶け込み深さだけではなく溶接範囲についても測定することは可能である。
【0018】
レーザ溶接装置では、こうした測定値を基に、溶け込み深さやそれに伴う溶接範囲を考慮し、前記レーザ出力や溶接速度などの制御設定が行われる。更に、レーザ溶接装置は、レーザ出力や溶接速度の他に、波形であるレーザ光の軌跡20の振幅や波長、周波数、そして加熱部分21と非加熱部分22の切り換えのタイミングの制御設定が行われる。
【0019】
そこで、こうした制御設定が行われた不図示のレーザ溶接装置は、レーザヘッドが溶接進行方向Xに沿って直線的に移動する。その際、反射ミラーが揺動することにより、設定された波形を描くようにしてレーザ光が照射され、図2に示すような軌跡20をたどることになる。更にレーザ光は、加熱部分21と非加熱部分22とで出力コントロールが行われる。
【0020】
例えば、溶接速度が0.3〜1.0m/minであり、軌跡20の波形の周波数を10〜30Hzとする。レーザ光は非加熱部分22のタイミングで出力を下げるため、レーザ発振器では、レーザ光の軌跡20に対してほぼ倍の周波数である20〜60Hzとしてレーザ出力のON/OFFが制御される。ただし、レーザ発振器では出力をゼロまで落としてしまうと、安定した出力コントロールが難しくなるため、例えば最高出力を10kWとした場合には、最小出力をその1割程度の1kWにまで落とすようにしたON/OFF制御とする。なお、安定した出力コントロールが可能であれば、非加熱部分22でのレーザ出力をゼロにすることが望ましい。
【0021】
これにより、鋼板1,2の接合部にギャップ部分8が存在していたとしても、その隙間を跨ぐようにしてレーザ光による加熱が行われる。レーザ光が隙間を通って裏当て材3に照射されたとしても、その出力は弱く、しかも横切るだけである。そのため、レーザ光が裏当て材3を溶かしてしまい、鋼板1,2の接合部にブローホールを生じさせるなど、溶接品質を低下させることが防止できる。一方、鋼板1,2は、加熱部分21に照射されるレーザ光により、接合端面11,12の継手部分が溶融して互いに接合される。
【0022】
次に、図3は、第2実施形態のレーザ溶接方法を示した接合部の平面図であり、特に、連続して照射されるレーザ光の軌跡30を示している。本実施形態でも、前述したレーザ溶接装置が使用され、レーザ出力や溶接速度の制御など、或いはウィービング機構によるレーザ光の照射位置を左右に振ったウィービングが行われる。そのウィービングによって決定されるレーザ光の軌跡30は、図示するような加熱部分31と非加熱部分32から構成されている。
【0023】
特に、軌跡30の場合には、鋼板1,2の一方に振れたところで更に小さなウィービングがあり、加熱部分31に小さな波形が形成されている。そのため、軌跡30では、図2に示す軌跡20と比較した場合に、加熱部分31の距離が長くなって1箇所における入熱量が大きくなる一方、接合部(ギャップ部分8)を横切る非加熱部分32の数が減って裏当て材3に照射される回数が少なくなる。
【0024】
よって、本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、鋼板1,2の隙間を跨ぐようにして、加熱部分31にレーザ照射による加熱が行われる。また、ギャップ部分8では、隙間を通ってレーザ光が裏当て材3に照射されたとしても、レーザ出力はゼロ或いは低く制御され、しかも横切るだけである。そして特に、軌跡30になるようなレーザ光の照射では、ギャップ部分8を横切る回数が少ない。そのため、レーザ光が裏当て材3を溶かしてしまい、鋼板1,2の接合部にブローホールを生じさせるなど溶接品質の低下をより効果的に防止することができる。
【0025】
一方で、鋼板1,2は、加熱部分31に照射されるレーザ光により、接合端面11,12の継手部分が溶融して互いに接合される。また、本実施形態では、レーザ溶接装置に関して、その能力が低い場合でも、加熱部分31によって照射時間が長くなるため、母材を適切に溶融させることができ、溶接品質を確保することができる。
【0026】
ところで、前記実施形態ではレーザ溶接の場合を説明したが、その他にもレーザ光の照射に続いてアーク溶接(MIG溶接やMAG溶接)を行うレーザ・アークハイブリッド溶接にしてもよい。図4は、第3実施形態のレーザ・アークハイブリッド溶接方法を示した接合部の平面図である。第3実施形態のレーザ・アークハイブリッド溶接方法では、溶接進行方向Xに沿って見た場合、前方にレーザヘッドが配置され、その後方には溶接ワイヤが配置される。
【0027】
そして、先行するレーザヘッドからは、前記第1又は第2実施形態で示すようなウィービングを伴ったレーザ照射が行われる。すなわち、図2及び図3に示す軌跡20,30になるように、レーザ光が鋼板1,2に対して照射される。ここでも、加熱部分21,31はレーザ出力を高くする一方で、非加熱部分22,32ではレーザ出力がゼロか、或いは低くなるようにする。続いて、レーザ光が照射された溶接進行方向Xの後方では、アーク溶接40が行われる。アーク溶接40は、接合端面11,12同士が突き当てられた接合部に対して行われ、例えばシールドガスが供給され、溶接ワイヤによるミグ溶接が行われる。
【0028】
本実施形態では、こうした2段階の工程によって、鋼板1,2は、接合端面11,12の継手部分が接合される。すなわち、先行するレーザ光の照射によって鋼板1,2の接合部が加熱され、それに続くアーク溶接40によって鋼板1,2同士が接合される。なお、本実施形態では、接合端面11,12の角部に面取りを行い、接合部に開先ができるようにすることが好ましい。
【0029】
こうしたレーザ・アークハイブリッド溶接では、エネルギー密度が相互に異なる2つの熱源を利用することになる。そのため、単なるアーク溶接に比べて溶接速度を上げることができる他、レーザ溶接だけの場合に比べて溶込み深さの調整が容易になり、接合部の裏面の溶接仕上げを向上させることができる。また、第1、第2実施形態と同様に、レーザ光がギャップ部分8(図2図3参照)の隙間を通って裏当て材3に照射されたとしても、その出力はゼロか、或いは低く、しかも横切るだけであるため、レーザ光が裏当て材3を溶かしてしまい、鋼板1,2の接合部にブローホールを生じさせるなど溶接品質の低下を防止することができる。
【0030】
続いて、レーザ・アークハイブリッド溶接方法における他の実施案について説明する。図5は、レーザ・アークハイブリッド溶接方法の他の実施案を示した接合部の平面図である。第3実施形態では、レーザ光をウィービングさせたが、図示する軌跡45となるように、レーザ光を直線状に照射してもよい。ただし、接合部にレーザ光を照射してしまうと、ギャップ部分8の隙間を通って裏当て材3を溶かしてしまうため、軌跡45となるようにレーザ光を接合部と平行に移動させ、鋼板1,2の一方にだけ照射させるようにする。アーク溶接40は、第3実施形態と同様に、接合端面11,12同士が突き当てられた接合部に対して行われる。アーク溶接40は、例えばシールドガスが供給され、溶接ワイヤによるミグ溶接が行われる。なお、レーザ溶接装置によってツインビームが可能であれば、鋼板1,2の両方にレーザ光を照射させるようにしてもよい。
【0031】
そして、この実施案でも、エネルギー密度が相互に異なる2つの熱源を利用することになるため、アーク溶接に比べて溶接速度を上げることができる他、レーザ溶接に比べて溶込み深さの調整が容易になり、接合部の裏面の溶接仕上げを向上させることができる。また、本実施案では、レーザ光がギャップ部分8の隙間を一切通らないので、レーザ光が裏当て材3に照射されることはない。従って、レーザ光が裏当て材3を溶かしてしまうことはなく、鋼板1,2の接合部にブローホールを生じさせるなど溶接品質の低下を効果的に防止することができる。
【0032】
以上、本発明に係るレーザ溶接方法およびレーザ・アークハイブリッド溶接方法の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、第2実施形態では加熱部分31は波形になっているが、鋼板1,2の一方に振れた場合に小さなウィービングをすることなく直線にして、加熱部分の形状が台形になるようにしてもよい。また、第3実施形態のレーザ・アークハイブリッド溶接の場合でも同様である。
【符号の説明】
【0033】
1,2 鋼板
3 裏当て材
8 ギャップ部分
11,12 接合端面
20 軌跡
21 加熱部分
22 非加熱部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6