(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(本発明の第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態につき、
図1〜
図5を参照しつつ詳細に説明する。本実施形態は、手持式の動力工具として、例えば、
図11に示す電動グラインダ150のサイドグリップとして、あるいは
図12に示す打撃工具、すなわちハンマドリル160のサイドグリップとして適用される場合として説明する。
【0030】
本実施形態のサイドグリップ100は、動力工具の工具本体に着脱自在に接続されるグリップ本体部110と、作業者が握るグリップ部120と、弾性ゴム130と、粉体140とを主体に構成される。グリップ本体部110が、本発明における「接続部」に対応し、グリップ部120が本発明における「把持部」に対応し、弾性ゴム130が、本発明における「弾性要素」に対応し、粉体140が、本発明における「粉体」に対応する。
【0031】
グリップ本体部110は、
図1及び
図2に示すように、同一軸線上に配置された金属製の取付ボルト111と樹脂製のボルトホルダ113とからなり、取付ボルト111の一端部とボルトホルダ113の一端部がインサート成形により接合されている。なお、取付ボルト111とボルトホルダ113との接合部は、取付ボルト111の一端部が二面幅軸部111a(
図3参照)に形成されること、及び当該接合部にインサートボルト112が挿入されることにより所定の接合強度が確保されている。取付ボルト111は、他端にネジ部111bを有し、このネジ部111bを動力工具の本体ハウジングに設けたネジ孔に螺合することで動力工具に取り付けられる。
【0032】
ボルトホルダ113は、所定長さで直線状に延在する棒状部材であり、円形の大径軸部114と十字形断面の棒状部115と円形の小径軸部116を有し、それらは、取付ボルト111側から上記の順に同軸状で一体に形成されている。大径軸部114は、
図2に示すように、長軸方向端部側には外側に張り出す鍔部114aを有し、鍔部114aと長軸方向反対側の外周には円弧状の係合溝114bを有する。また、大径軸部114の外面には、
図1及び
図4に示すように、鍔部114aの背面に連接して径方向に突出するリブ状の突起114cが周方向に所定の間隔で複数(本実施形態では4個)設けられている。この突起114cは、
図1に示すように、鍔部114aの背面から大径軸部114の長軸方向略中程まで延在されている。棒状部115は、
図5に示すように、十字状に配置される板状部材115aにより構成される。
【0033】
小径軸部116の外側には、
図1及び
図2に示すように、円形のエンドキャップ117が嵌着されており、このエンドキャップ117は、長軸方向外側端部には外側に張り出す鍔部117aを有し、鍔部117aの長軸方向反対側の外周には半円弧状の係合溝117bを有する。また、便宜上、断面図での図示を省略するが、エンドキャップ117の外面には、大径軸部114の場合と同様に、鍔部117aの背面に連接して径方向に突出するリブ状の突起117cが周方向に所定の間隔で複数(本実施形態では4個)設けられている。この突起117cは、
図1に示すように、鍔部117aの背面からエンドキャップ117の長軸方向略中程まで延在されている。
【0034】
グリップ部120は、
図1及び
図2に示すように、所定長さで直線状に延在する略円形の筒状部材であり、筒部121と、筒部121の両端に一体に形成され、且つ当該筒部121の外径よりも大きい外径の大径筒部122とを備えている。各大径筒部122は、
図2に示すように、筒部121と連接する側については、筒部121の内径と同じ内径を有する肉厚に形成されるが、端部側については、当該肉厚の部分の内径よりも大きい内径に形成されている。すなわち、大径筒部122は、内周面における長軸方向略中間位置に段差部122aを有する構成とされる。
【0035】
また、グリップ部120の大径筒部122のうちの肉厚部分の内側には、
図4に示すように、径方向外向きに凹む略U形の凹部122bが周方向に所定の間隔で複数(本実施の形態では4個)形成されている。また、グリップ部120の筒部121の内側には、
図5に示すように、内向きに突出するリブ状の突起121aが周方向に所定の間隔で複数(本実施形態では4個)設けられる。
【0036】
上記のように形成されるグリップ部120は、ボルトホルダ113の外側に所定の隙間を置いて、その中心がボルトホルダ113の中心と一致するように同軸状に配置される。この場合、
図4に示すように、一方の大径筒部122の凹部122bの周方向中央にボルトホルダ113の大径軸部114の突起114cが位置し、他方の大径筒部122の凹部122bの周方向中央にエンドキャップ117の突起117cが位置し、また、
図5に示すように、筒部121の突起121a間にボルトホルダ113における棒状部115の十字形断面を構成する板状部材115aが位置するように配置される。
【0037】
上記のように、ボルトホルダ113の外側にグリップ部120が同軸状に配置されることで、当該ボルトホルダ113の外面とグリップ部120の内面との間、及びエンドキャップ117の外面とグリップ部120の内面との間には、それぞれ所定の空間が形成される。具体的には鍔部114a、係合溝114b、突起114cを含む大径軸部114の外面と、それに対応する凹部122bを含む一方の大径筒部122の内面及び筒部121の端部側内面との間に第1空間S1が形成される。また、鍔部117a、係合溝117b、突起117cを含むエンドキャップ117の外面と、それに対応する凹部122bを含む他方の大径筒部122の内面及び筒部121の端部側内面との間に第2空間S2が形成される。この第1空間S1と第2空間S2が、弾性ゴム130を配置するゴム配置空間として設定され、本発明における「弾性要素介在領域」に対応する。
【0038】
一方、ボルトホルダ113の棒状部115の外周面と、それに対応するグリップ部120の突起121aを含む筒部121の内面との間に第3空間S3が形成される。この第3空間S3が、粉体140を充填するための粉体充填空間として設定され、本発明における「粉体充填領域」に対応する。
【0039】
上記の第1空間S1、第2空間S2、第3空間S3は、サイドグリップ100の長軸方向、すなわちボルトホルダ113からグリップ部120に向かう方向に交差する方向に並んで配置されている。そして、第1空間S1と第2空間S2には、それぞれ弾性ゴム130が配置され、第3空間S3には粉体140が配置される。第1空間S1に配置される弾性ゴム130は、当該第1空間S1の空間形状に対応した形状に形成されている。また、同様に、第2空間S2に配置される弾性ゴム130は、当該第2空間S2の空間形状に対応した形状に形成されている。
【0040】
具体的には取付ボルト111に近い方の第1空間S1に配置される弾性ゴム130は、ボルトホルダ113の大径軸部114の外面とそれに対向するグリップ部120の内面との間に挟まれる筒状部130a、大径軸部114の鍔部114aとグリップ部120の大径筒部122の段差部122aとの間に挟まれる段差部130b、及び大径軸部114の突起114cと大径筒部122の凹部122bとの間に挟まれる径方向の突部130cを有する構成とされる。
【0041】
また、取付ボルト111から遠い方の第2空間S2に配置される弾性ゴム130は、エンドキャップ117の外面とそれに対向するグリップ部120の内面との間に挟まれる筒状部130a、エンドキャップ117の鍔部117aとグリップ部120の大径筒部122の段差部122aとの間に挟まれる段差部130b、及びエンドキャップ117の突起117cと大径筒部122の凹部122bとの間に挟まれる径方向の突部130cを有する構成とされる。
【0042】
かくして、第1空間S1及び第2空間S2にそれぞれ配置される弾性ゴム130は、グリップ部120とボルトホルダ113に対して相対移動させるような力が作用した場合、サイドグリップ100の径方向、長軸方向及び周方向のいずれの方向についても、弾性変形、主として圧縮変形することでグリップ部120とボルトホルダ113の相対移動を許容する。すなわち、グリップ部120は、ボルトホルダ113に弾性ゴム130を介してサイドグリップ100の径方向、長軸方向及び周方向の3方向に相対移動可能に連結される。
【0043】
なお、大径軸部114の突起114cと大径筒部122の凹部122bとそれらの間に介在される弾性ゴム130の突部130c、及びエンドキャップ117の突起117cと大径筒部122の凹部122bとそれらの間に介在される弾性ゴム130の突部130cが圧縮変形された状態では、グリップ部120は、ボルトホルダ113に対して周方向に回り止めされる。すなわち、突起114c,117cと凹部122bとそれらの間に介在される弾性ゴム130の突部130cにより、本発明における「弾性要素介在領域の回り止め部」が構成される。
【0044】
弾性ゴム130のうち、第1空間S1の弾性ゴム130は、ボルトホルダ113の大径軸部114に嵌合された状態では、筒状部130aの内周面に形成した係合部130dが大径軸部114の係合溝114bに係合され、これにより長軸方向への相対移動が規制される。また、第2空間S2の弾性ゴム130は、エンドキャップ117の外側に嵌合された状態では、筒状部130aの内周面に形成した係合部130dがエンドキャップ117の係合溝117bに係合され、これにより長軸方向への相対移動が規制される。
【0045】
第3空間S3には、複数の粉体140が充填されて配置される。粉体140は、粉、粒等の集合体であり、例えば、砂が用いられるほか、セメント、小麦粉などの粉類や磁性の微粉末、トナー等を用いることが可能である。
【0046】
第3空間S3内に配置された粉体140は、グリップ部120の筒部121の内面とそれに対向するボルトホルダ113の棒状部115の外面との間で挟まれ、また、
図1に示すように、筒部121のリブ状の突起121aの延在方向端部と大径軸部114の長軸方向内側端部との間で挟まれ、さらに、
図5に示すように、筒部121の突起121aの側面とこれに対向するボルトホルダ113の棒状部115の板状部材115aとの間で挟まれる。すなわち、粉体140はサイドグリップ100の径方向、長軸方向及び周方向の3方向に関してボルトホルダ113とグリップ部120間に介在状に配置される。そして、グリップ部120は、突起121aと板状部材115aとそれらの間に存在する粉体140とによりボルトホルダ113に対して周方向に回り止めされる。上記の突起114cと板状部材115aとその間の粉体140により、本発明における「粉体充填領域の回り止め部」が構成される。
【0047】
なお、粉体140の充填は、サイドグリップ100の組み付けに際して行われる。すなわち、大径軸部114に予め弾性ゴム130が嵌合されたボルトホルダ113に向けてグリップ部120を長軸方向に移動させ、当該グリップ部120の一端部を大径軸部114の弾性ゴム130に嵌合した後、グリップ部120の他端部側から粉体140を充填する。そして、粉体140の充填後において、予め弾性ゴム130が嵌合されたエンドキャップ117をグリップ部120の他端部内に挿入して当該グリップ部120とボルトホルダ113の小径軸部116に嵌合し、その後、エンドキャップ117の貫通孔117dから小径軸部116のネジ孔116aに止ネジ(便宜上図示を省略する)を螺合して固定する。なお、弾性ゴム130の筒状部130aの外周面とこれに対応するグリップ部120の筒部121の内周面との隙間は、接着剤によって封印され、これにより粉体140のサイドグリップ外部への流出が防止される。
【0048】
本実施形態のサイドグリップ100は、上記のように構成され、手持式の動力工具としての、
図11に示す電動グラインダ150に適用され、あるいは
図12に示す打撃工具、具体的にはハンマドリル160に適用される。
【0049】
電動グラインダ150は、概ね円筒形状に形成された本体ハウジング151を有し、この本体ハウジング151の長軸方向の先端領域(
図11における左側)に、先端工具としての砥石(便宜上、図示を省略する)が装着される。この本体ハウジング151が、本発明における「工具本体」に対応する。本体ハウジング151のうち先端工具側と反対側の部位が作業者により把持される主把持部153として設定されており、サイドグリップ100は、当該本体ハウジング151の先端領域側に装着される。すなわち、本体ハウジング151の先端領域側にネジ孔を有するグリップ装着部が設定されており、このグリップ装着部のネジ孔に取付ボルト111のネジ部111bを螺合することにより、サイドグリップ100が電動グラインダ150に装着される。作業者は、主把持部153とサイドグリップ100を把持して研削作業を行う。
【0050】
一方、ハンマドリル160は、本体ハウジング161の先端領域に先端工具としてのハンマビット(便宜上、図示を省略する)が装着され、本体ハウジング161のハンマビットと反対側に本体ハウジング161の長軸方向に交差する方向に延在するメインハンドルとしてのハンドグリップ163が設けられている。この本体ハウジング161が、本発明における「工具本体」に対応する。サイドグリップ100は、本体ハウジング161の先端領域側に着脱自在に装着されるリング状の取付部材165を介して装着される。すなわち、具体的な図示を省略するが、リング状の取付部材165に設けたネジ孔に取付ボルト111のネジ部111bを螺合することにより装着される。作業者は、ハンドグリップ163とサイドグリップ100を把持して穴明け作業を行う。
【0051】
さて、サイドグリップ100を把持しての、電動グラインダ150あるいはハンマドリル160による加工作業時において、本体ハウジング151,161と共にグリップ本体部110が振動する場合、グリップ本体部110におけるボルトホルダ113とグリップ部120との間に介在された弾性ゴム130は、当該ボルトホルダ113の振動に応じて弾性変形することで当該振動を低減する。
【0052】
具体的にはサイドグリップ100の長軸方向に交差する径方向の振動、すなわち、本体ハウジング151,161の長軸方向の振動については、大径軸部114とグリップ部120間、及びエンドキャップ117とグリップ部120間に挟まれた弾性ゴム130の筒状部130aが圧縮変形することで低減する。また、サイドグリップ100の長軸方向の振動については、大径軸部114の鍔部114aと大径筒部122の段差部122a間、及びエンドキャップ117の鍔部117aと大径筒部122の段差部122a間に挟まれた弾性ゴム130の段差部130bが圧縮変形することで低減する。更にサイドグリップ100の長軸方向回りの周方向の振動については、大径軸部114の突起114cとグリップ部120の凹部122b間、及びエンドキャップ117の突起117cとグリップ部120の凹部122b間に挟まれた弾性ゴム130の突部130cが圧縮変形することで低減する。
【0053】
複数の粉体140は、本体ハウジング151,161の振動に応じて粉体相互間での接触、微振動を繰り返し、そのときの摩擦抵抗によりグリップ部120の振動を低減する。すなわち、本実施形態のサイドグリップ100によれば、弾性ゴム130の硬さを下げる、つまりバネ定数を小さくして振動の低減効果を上げる一方、それに伴う剛性の低下を複数の粉体140により支援する構成であり、ボルトホルダ113に生じた振動を弾性ゴム130と粉体140により低減し、ボルトホルダ113からグリップ部120への振動伝達を効果的に低減することができる。
【0054】
一方、作業者による電動グラインダ150あるいはハンマドリル160の操作は、本体ハウジング151,161に発生する振動に比べて加速度の低い動きであり、当該操作のためにグリップ部120に入力される力は、粉体140によって受けられる。粉体140は、ボルトホルダ113とグリップ部120間の連結部に関する剛性感を高めることにつながり、グリップ部120のぐらつきを抑えるため、グリップ部120を操作したときの使用感が良くなる。粉体140は、前述したように、サイドグリップ100の長軸方向、長軸方向に交差する径方向、及び周方向の3方向について、エンドグリップ117を含むボルトホルダ113とグリップ部120間に存在する。このため、グリップ部120へ入力される作業者の力に対する粉体140の剛性感を高める効果は、上記3方向のいずれに対しても有効に作用する。
【0055】
以上のように、本実施形態のサイドグリップ100によれば、グリップ部120の防振性を確保しつつ、電動グラインダ150あるいはハンマドリル160を操作する際の操作性の向上を図ることができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、弾性ゴム130は、グリップ部120の筒部121の内面とボルトホルダ113の大径軸部114の外面との間、及びグリップ部120の筒部121の内面とエンドキャップ117の外面との間で周方向全体にわたって挟まれている。一方、粉体140は、グリップ部120の筒部121の内面とボルトホルダ113の棒状部115の外面との間で周方向全体にわたって挟まれている。このため、弾性ゴム130及び粉体140は、グリップ部120の径方向に関して、本体ハウジング151,161からグリップ本体部110を経てグリップ部120に入力する複数の方向の振動を低減することができる。例えば、
図11に示す電動グラインダ150の場合であれば、前後方向と上下方向が、本発明における「第1方向」と「第2方向」に対応し、
図12に示すハンマドリル160の場合であれば、前後方向と左右方向が、本発明における「第1方向」と「第2方向」に対応する。
【0057】
また、本実施形態によれば、大径軸部114の突起114cと大径筒部122の凹部122b間、及びエンドキャップ117の突起117cと大径筒部122の凹部122b間で弾性ゴム130が挟まれ、また筒部121の突起121aと棒状部115の板状部材115a間で粉体140が挟まれている。これにより、グリップ部120は、ボルトホルダ113に対して周方向に回り止めされることとなり、取付ボルト111のネジ部111bを電動グラインダ150あるいはハンマドリル160の本体ハウジング151,161側のネジ孔にねじ込んでサイドグリップ100を本体ハウジング151,161に取り付けるときの、あるいは取り外すときのグリップ120の回転操作を支障なく行うことができる。
【0058】
なお、電動グラインダ150のグリップ装着部の形状とハンマドリル160のグリップ装着部の形状等が異なる場合には、当該グリップ装着部の形状に対応し得るように、取付ボルト111については、予め長さや太さ等が調整される。
なお、本実施形態では、弾性ゴム130及び粉体140が、ボルトホルダ113の長軸回りにおいて、周方向全体にわたって連続している態様の場合で説明したが、周方向に所定間隔で複数配置される構成に変更してもよい。また、本実施形態では、弾性ゴム130と粉体140が、ボルトホルダ113からグリップ部120に向かう方向に交差する方向に並んで配置される場合で説明したが、ボルトホルダ113からグリップ部120に向かう方向に並んで配置される構成に変更してもよい。
【0059】
(本発明の第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態のサイドグリップ100につき、
図6〜
図10を参照しつつ説明する。この実施形態は、粉体140の充填に関する変形例である。この実施形態では、予めゴムや布あるいはビニール等の柔軟性のある素材からなるチューブ状の袋体141に粉体140を充填して封入し、当該粉体140の充填された袋体141を、グリップ部120の筒部121の内面と、ボルトホルダ113の棒状部115の外面との間に形成される空間に配置する構成としている。この構成以外については、前述した第1実施形態と概ね同様に構成されるため、同一符号を付して説明を省略する。上記のチューブ状の袋体141が、本発明における「袋体」に対応する。
【0060】
本実施形態においては、
図10に示すように、ボルトホルダ113の棒状部115は、円柱体状に形成されており、粉体配置空間として、当該棒状部115の長軸方向に平行に延在する断面円弧状の収容溝部115bが周方向に所定間隔で複数(本実施形態では4個)形成されている。この収容溝部115bが、本発明における「粉体充填領域」に対応する。収容溝部115bは、延在方向端部の端部が大径軸部114側では塞がれ、小径軸部116側では開口されている。粉体140が充填された各袋体141は、略円柱形に形成されており、小径軸部116側の開口から収容溝部115b内に挿入されて大径軸部114側端部で受けられる。
【0061】
収容溝部115bは、概ね半円弧状に設定されている。このため、収容溝部115bに配置された袋体141は、
図10に示すように、一部が収容溝部115bから棒状部115の外面に突出した状態で保持され、当該突出した部分がグリップ部120の筒部121の内面に対して接触する。
【0062】
粉体140が充填された袋体141は、
図7に示すように、サイドグリップ100の組み付けの最終工程において、予め弾性ゴム130が嵌合されたエンドキャップ117をグリップ部120の他端部内に挿入嵌合することにより、グリップ部120の筒体121の内面と、ボルトホルダ113の棒状部115の外面との間の空間に配置される。なお、エンドキャップ117は、貫通孔117dを通して小径軸部116のネジ孔116aに螺合される止ネジ(便宜上図示を省略する)によってボルトホルダ113に固定される。
【0063】
本実施形態に係るサイドグリップ100は、上述のように構成される。従って、第1の実施形態の場合と同様、手持式の動力工具としての、
図11に示す電動グラインダ150に適用され、あるいは
図12に示すハンマドリル160に適用された場合において、第1実施形態の場合と同様、グリップ部120の防振性を確保しつつ、電動グラインダ150あるいはハンマドリル160を操作する際の操作性の向上を図ることができる。
【0064】
本実施形態によれば、予めゴムや布あるいはビニール等の柔軟性のある素材からなる袋体141に粉体140を充填し、当該粉体140の充填された袋体141を、棒状部115の収容溝部115bに挿入する構成としている。このため、粉体140のグリップ部120の筒体121の内面とボルトホルダ113の棒状部115の外面との間の空間への配置作業を容易に行うことができ、サイドグリップ100の組付け作業の向上を図ることができる。
【0065】
なお、本実施形態では、ボルトホルダ113の周方向に関して、複数の粉体140が所定間隔で配置される場合で説明したが、周方向の全体にわたって連続する一体構造としても差し支えない。
【0066】
(本発明の第3実施形態)
次に本発明の第3実施形態につき、
図13〜
図18を参照しつつ説明する。この実施形態は、刈払機のハンドルに適用したものである。刈払機1は、
図13に示すように、操作桿2と、操作桿2の一端部に取り付けられた動力ユニット3と、操作桿2の他端に設けられた刈込ユニット4と、操作桿2の中間部に取り付けられて操作桿2の延在方向に交差する方向に突出する略U形のハンドル7とを備えている。刈込ユニット4は、先端工具としての刈刃5を回転可能に支持する。動力ユニット3は、刈刃5を駆動するエンジン(便宜上、図示を省略する)を有する。エンジンの出力は、
図14に示すように、操作桿2内を延在する回転軸9を経て刈刃5に回転運動として伝達されるように構成されている。操作桿2が、本発明における「工具本体及び操作桿」に対応し、動力ユニット3が、本発明における「駆動ユニット」に対応し、刈込ユニット4が、本発明における「刈込ユニット」に対応し、ハンドル7が、本発明における「ハンドル」に対応する。
【0067】
図14及び
図15に示すように、操作桿2の外側には、当該操作桿2にハンドル7を取り付けるために、2つの支持部21,23が長軸方向に所定の間隔を置いて設けられる。2つの支持部21,23は、フランジ状の部材として形成されており、そのうち動力ユニット3側の端部に形成された支持部21が、当該操作桿2を動力ユニット3に連結するための連結部材を兼用している。
【0068】
図14に示すように、ハンドル7は、作業者が握るグリップ部71、弾性ゴム80、粉体90を主体として構成される。グリップ部71は、一体状に連接される略円形の筒状部材73を備えている。グリップ部71が、本発明における「把持部」に対応する。
図15に示すように、筒状部材73は、操作桿2の支持部21,23間において、操作桿2の外側に同心状に配置されている。筒状部材73の長軸方向一端部には、操作桿2における一方の支持部21と長軸方向に対向するフランジ状の連結部75が形成され、他端部には他方の支持部23と長軸方向に対向するフランジ状の連結部77が形成されている。そして、連結部75,77と支持部21,23とは、操作桿2の中心線からオフセットした位置において、当該中心線の回りに所定間隔で配置された複数(本実施形態では4個)の弾性ゴム80を介して連結されている。この弾性ゴム80が、本発明における「弾性要素」に対応する。
【0069】
図15に示すように、筒状部材73の連結部75,77には、支持部21,23と対向する面に複数の円筒状の凹部75a,77aが筒状部材73の周方向に所定間隔で形成されている。また、これに対応して、支持部21,23には、連結部75,77と対向する面に円筒状の軸状の突部21a,23aが操作桿2の長軸方向回りに所定間隔で形成されている。
【0070】
各弾性ゴム80は、
図16〜
図18に示すように、中心に取付孔81を有する円柱形状に形成されるとともに、弾性ゴム80の内部には粉体90が充填して封入されている。すなわち、弾性ゴム80は、内部に弾性ゴム80の周方向に連続する筒状空間S5を有し、その筒状空間S5に粉体90が充填された構成とされる。この弾性ゴム80の筒状空間S5が、本発明における「粉体充填領域」に対応し、粉体90が、本発明における「粉体」に対応する。そして、弾性ゴム80は、
図15に示すように、連結部75,77の凹部75a,77aに嵌合固定される一方、取付孔81に支持部21,23の突部21a,23aが嵌合固定される。従って、弾性ゴム80と粉体90は、支持部21,23からグリップ部120に向かう方向に並んで配置される。連結部75,77の凹部75a,77aと支持部21,23の突部21a,23aとの間に形成される筒状空間S4が、本発明における「弾性要素介在領域」に対応し、弾性ゴム80の、操作桿2側との接触部分、具体的には支持部21,23の突部21a,23aと嵌合する取付孔81の内周面が、本発明における「接続部」に対応する。
【0071】
なお、操作桿2の支持部21,23のうち、動力ユニット3に近い側の支持部21は、操作桿2と一体物として形成されるが、動力ユニット3から遠い方の支持部23は、操作桿2と別部材として形成され、ハンドル7の筒状部材73を組付ける際に、操作桿2に対して後付けで取り付けられる。また、筒状部材73の連結部75,77のうち、動力ユニット3から遠い方の連結部77に作業者が握る部分が連接される。
【0072】
本実施形態は、上記のように構成したものである。従って、刈払機1による草や小径木等の刈払い作業時において、動力ユニット3の駆動に伴い、あるいは刈込ユニット4の刈り込み作業に伴い操作桿2が振動した場合、弾性ゴム80は、操作桿2の振動に応じて弾性変形することで当該振動を低減する。具体的には操作桿2の長軸方向に交差する径方向、すなわち上下方向及び左右方向の振動、及び操作桿2の長軸方向回りの振動については、弾性部材80のうち、連結部75,77の凹部75a,77aの内周壁と支持部21,23の突部21a,23aの外周面とにより挟まれた領域が弾性変形(圧縮変形)することで低減する。また、操作桿2の長軸方向、すなわち前後方向の振動については、弾性部材80のうち、凹部75a,77aの底面と、これに対向する支持部21,23の側面とにより挟まれた領域が弾性変形(圧縮変形)することで低減する。上記の操作桿2の長軸方向に交差する径方向が、本発明における「第1方向」に対応し、操作桿2の長軸方向が、本発明における「第2方向」に対応する。
【0073】
弾性ゴム80内の粉体90は、操作桿2の振動に応じて粉体相互間での接触、微振動を繰り返し、そのときの摩擦抵抗により当該振動を低減する。すなわち、操作桿2に生じた振動を弾性ゴム80と粉体90とによって低減し、操作桿2からハンドル7への振動伝達を効果的に低減することができる。
【0074】
一方、作業者による刈払機1の操作は、操作桿2に発生する振動に比べて加速度の低い動きであり、刈払機1を操作するためにハンドル7に入力される力は、粉体90によって受けられる。粉体90は、操作桿2と筒状部材73間の連結部に関する剛性感を高めることにつながり、筒状部材73のぐらつきを抑えるため、ハンドル7を操作したときの使用感が良くなる。粉体90は、弾性ゴム80内に充填された構成であり、操作桿2の長軸方向、長軸方向に交差する径方向、及び長軸方向回りの周方向の3方向について、支持部21,23と連結部75,77間に存在する。このため、ハンドル7に入力される作業者の力に対する粉体90の剛性感を高める効果は、上記3方向のいずれに対しても有効に作用する。
【0075】
以上のように、本実施形態のハンドル7によれば、防振性を確保しつつ、刈払機1を操作する際の操作性の向上を図ることができる。
【0076】
なお、本実施形態では、操作桿2の周方向に関して、複数の弾性ゴム80が所定間隔で配置される場合で説明したが、弾性ゴム80が操作桿2の周方向の全体にわたって連続する一体構造としても差し支えない。
【0077】
(本発明の第4実施形態)
次に本発明の第4実施形態につき、
図19及び
図20を参照しつつ説明する。この実施形態は、ハンマドリルのメインハンドルに適用した例である。
図19及び
図20に示すように、ハンマドリル200は、ハンマドリル200の外郭形状を形成する本体ハウジング201と、作業者が握るメインハンドルとしてのハンドグリップ209と、ハンマビット219を保持するツールホルダ250を主体として構成されている。本体ハウジング201が、本発明における「工具本体」に対応し、ハンドグリップ209が、本発明における「ハンドル」に対応し、ハンマビット219が、本発明における「工具ビット」に対応する。
【0078】
なお、本実施形態では、便宜上、ハンマビット219の長軸方向、すなわち本体ハウジング201の長軸方向に関して、ハンマビット219側を、「前側」ないし「前方側」として規定し、ハンドグリップ209側を、「後側」ないし「後方側」として規定する。また、
図19中の紙面上方を、「上側」ないし「上方側」と規定し、紙面下方を、「下側」ないし「下方側」と規定する。
【0079】
本体ハウジング201は、ほぼ対称形の1対のハウジングを合わせて結合しており、内側に電動モータ210、便宜上、図示を省略する運動変換機構、動力伝達機構、及び打撃要素を収容している。電動モータ210は、その回転軸の方向がハンマビット219の長軸方向に平行となるように配置されている。
【0080】
ハンドグリップ209は、ハンマビット219の反対側において本体ハウジング201に連接され、ハンマビット219の長軸方向に交差する下方向に延在している。ハンドグリップ209には、トリガ209aが設けられており、作業者がトリガ209aを操作することによって、電動モータ210が通電駆動される。
【0081】
電動モータ210が通電駆動されると、その回転は運動変換機構を介して直線運動に変換された後、打撃要素を介してハンマビット219に長軸方向の直線運動として伝達され、ハンマビット219が打撃動作する。また、ハンマビット219には、上記の打撃動作に加え、電動モータ210により駆動される動力伝達機構を介して回転が伝達され、これにより周方向の回転動作が加えられる。すなわち、ハンマビット219は、長軸方向の打撃動作と周方向の回転動作を行うことで被加工材に穴明け作業を遂行する。
【0082】
ハンマドリル作業時において、本体ハウジング201に発生した振動の、作業者が握るハンドグリップ209への伝達を抑える防振構造につき説明する。
図19に示すように、ハンドグリップ209は、本体ハウジング201の後方において、下方へと延在する作業者が握るためのグリップ部223、弾性ゴム230、粉体240を主体として構成される。グリップ部223は、前方が開口された概ね円筒状の筒状ハウジング部221を有する。グリップ部223が、本発明における「把持部」に対応する。筒状ハウジング部221は、本体ハウジング201のうち、概ね円筒状に形成された電動モータ210を収容する後方部分に外側から被さるように嵌合され、ハンマビット219の長軸方向に相対移動可能とされている。
【0083】
ハンドグリップ209のグリップ部223は、筒状ハウジング部221の後端部から当該筒状ハウジング部221の長軸方向(ハンマビット219の長軸方向)と交差する下方に所定長さで延在されるとともに、延在端部が自由端とされた長尺の棒状部材として構成されている。このような構成のグリップ部223を有するハンドグリップ209は、ピストル型ハンドルとも呼称される。
【0084】
図19及び
図20に示すように、本体ハウジング201の外面と、これに被さる筒状ハウジング部221の内面間には、複数(本実施の形態では4個)の防振用の弾性ゴム230が、電動モータ210の回転軸線回り(筒状ハウジング部221の周方向)に所定間隔で介在状に配置されている。すなわち、筒状ハウジング部221は、電動モータ210の回転軸線回りに配置された4個の弾性ゴム230を介してハンマビット219の長軸方向に相対移動可能に本体ハウジング201と連結された構成とされる。この弾性ゴム231が、本発明における「弾性要素」に対応し、筒状ハウジング部221が、本発明における「連結領域」に対応する。
【0085】
図20に示すように、4個の弾性ゴム230は、電動モータ210の回転軸線と交差する上下方向の直線に対して線対称に配置される。そして、各弾性ゴム230は、筒状ハウジング部221に形成された略半球状の球状凹面を有する外側ゴム受け221aと、本体ハウジング201に形成された略半球状の球状凹面を有する内側ゴム受け201aとによって挟持されている。外側ゴム受け221aの略半球状の球状凹面と、内側ゴム受け201aの略半球状の球状凹面とにより形成される空間S6が、本発明における「弾性要素介在領域」に対応し、弾性ゴム230の外面のうち、本体ハウジング201の内側ゴム受け201aと接触する部分が、本発明における「接続部」に対応する。
【0086】
4個の弾性ゴム230を介して連結される筒状ハウジング部221と本体ハウジング201の連結部構造のうち、電動モータ210の回転軸線と交差する水平軸線に対し、上側の左右については、互いに対向する外側ゴム受け221aと内側ゴム受け201aの対向面がハンドグリップ209側(後方)から見て略逆V字形に形成される。一方、下側の左右については、互いに対向する外側ゴム受け221aと内側ゴム受け201aの対向面がハンドグリップ209側から見て略V字形に形成される。すなわち、外側ゴム受け221aと内側ゴム受け201aとは、互いの対向面がハンマビット219の長軸方向には平行となり、長軸方向に交差する水平方向(左右方向)および鉛直方向(上下方向)には、それぞれ概ね45度で傾斜するように設定されている。このことにより、各弾性ゴム230に対し長軸方向には主として剪断方向の力が作用し、長軸方向に交差する方向には主として圧縮方向に力が作用する構成とされる。
【0087】
弾性ゴム230による連結部の後方において、本体ハウジング201の外周面とハンドグリップ209の筒状ハウジング部221の内周面との間には、複数の粉体充填用の空間S7が形成され、当該空間S7に粉体240が充填されている。従って、弾性ゴム230と粉体240は、本体ハウジング201から筒状ハウジング部221に向かう方向に交差する方向に並んで配置される。上記の空間S7が、本発明における「粉体充填領域」に対応し、粉体240が、本発明における「粉体」に対応する。なお、粉体充填用の空間S7については、周方向の全体にわたって連続する空間又は周方向に所定間隔で形成された複数の空間のいずれであってもよい。粉体240は、予めゴムや布あるいはビニール等の柔軟性のある素材からなる袋体241に充填され封入された状態で空間S7に配置される。
【0088】
空間S7に配置された粉体240は、ハンマビット219の長軸方向においては、本体ハウジング201の外周面に突設されたリブ状の突部201bと、筒状ハウジング部221の内周面に突設されたリブ状の突部221bとにより挟まれ、長軸方向に交差する径方向においては、本体ハウジング201の外周面と筒状ハウジング部221の内周面とにより挟まれる。
【0089】
本実施の形態に係るハンマドリル200は、上記のように構成されている。従って、ハンドグリップ209を把持しての穴明け作業時において、本体ハウジング201が振動した場合、本体ハウジング部201とハンドグリップ209の筒状ハウジング部221との間に介在された弾性ゴム230は、本体ハウジング201の振動に応じて弾性変形することで当該振動を低減する。具体的にはハンマビット219の長軸方向の振動については、外側ゴム受け221aと内側ゴム受け201aとの間で弾性ゴム230がハンマビット219の長軸方向に剪断変形することで低減し、長軸方向に交差する方向については、外側ゴム受け221aと内側ゴム受け201aとの間で弾性ゴム230がハンマビット219の長軸方向に交差する上下方向あるいは左右方向に圧縮変形することで低減する。ハンマビット219の長軸方向が、本発明における「第1方向」に対応し、長軸方向に交差する方向が、本発明における「第2方向」に対応する。
【0090】
複数の粉体240は、本体ハウジング201の振動に応じて粉体相互間での接触、微振動を繰り返し、そのときの摩擦抵抗により当該振動を低減する。すなわち、本実施形態によれば、本体ハウジング201が振動した際、当該振動を弾性ゴム230と粉体240とによって低減し、本体ハウジング201からハンドグリップ209への振動伝達を効果的に低減することができる。
【0091】
一方、作業者によるハンマドリル200の操作は、本体ハウジング201に発生する振動に比べて加速度の低い動きであり、当該操作のためにハンドグリップ209に入力される力は、粉体240によって受けられる。粉体240は、本体ハウジング201と筒状ハウジング部221間の連結部に関する剛性感を高めることとなり、筒状ハウジング221のぐらつきを抑えるため、ハンドグリップ209を操作したときの使用感が良くなる。すなわち、本実施形態のハンドグリップ209によれば、防振性を確保しつつ、ハンマドリル200を操作する際の操作性の向上を図ることができる。
【0092】
(本発明の第5の実施形態)
次に本発明の第5実施形態につき、
図21及び
図22を参照しつつ説明する。この実施形態は、ハンマドリルのメインハンドルに適用した例である。
図21に示すように、ハンマドリル300は、ハンマドリル300の外郭形状を形成する本体ハウジング301と、作業者が握るメインハンドルとしてのハンドグリップ309と、ハンマビット319を保持するツールホルダ350を主体として構成されている。本体ハウジング301が、本発明における「工具本体」に対応し、ハンドグリップ309が、本発明における「ハンドル」に対応し、ハンマビット319が、本発明における「工具ビット」に対応する。
【0093】
なお、本実施形態では、便宜上、ハンマビット319の長軸方向、すなわち本体ハウジング301の長軸方向に関して、ハンマビット319側を、「前側」ないし「前方側」として規定し、ハンドグリップ309側を、「後側」ないし「後方側」として規定する。また、
図1中の紙面上方を、「上側」ないし「上方側」と規定し、紙面下方を、「下側」ないし「下方側」と規定する。
【0094】
本体ハウジング301は、ほぼ対称形の1対のハウジングを合わせて結合しており、内側に電動モータ310、運動変換機構311、動力伝達機構313、及び打撃要素315を収容している。電動モータ310は、その回転軸の方向がハンマビット319の長軸方向に交差するように配置されている。
【0095】
ハンドグリップ309は、ハンマビット319の反対側、すなわちハンマドリル300の後方に配置されている。ハンドグリップ309は、ハンマビット319の長軸方向に交差する下方向に延在され、その延在方向の各端部が本体ハウジング301に連接されている。ハンドグリップ309には、トリガ309aが設けられており、作業者がトリガ309aを操作することによって、電動モータ310が通電駆動される。
【0096】
電動モータ310が通電駆動されると、その回転は運動変換機構311を介して直線運動に変換された後、打撃要素315を介してハンマビット319に長軸方向の直線運動として伝達され、ハンマビット319が打撃動作する。また、ハンマビット319には、上記の打撃動作に加え、電動モータ310により駆動される動力伝達機構313を介して回転が伝達され、これにより周方向の回転動作が加えられる。すなわち、ハンマビット319は、長軸方向の打撃動作と周方向の回転動作を行うことで被加工材に穴明け作業を遂行する。
【0097】
ハンマドリル作業時において、本体ハウジング301に発生した振動の、作業者が握るハンドグリップ309への伝達を抑える防振構造につき説明する。
図21に示すように、ハンドグリップ309は、ハンマビット319の長軸方向に交差する上下方向に延在するグリップ部309A、弾性ゴム330、粉体340を主体として構成される。グリップ部109Aは、当該グリップ部309Aの上の端部から前方に延びて本体ハウジング301と連結される上部連接領域309Bと、グリップ部309Aの下の端部から前方に延びて本体ハウジング301と連結される下部連接領域309Cとを有する。グリップ部309Aが、本発明における「把持部」に対応する。
【0098】
上部連接領域309Bの前部と本体ハウジング301の後方上部との間には圧縮コイルバネ320が介在状に配置されている。圧縮コイルバネ320は、その弾発力の作用方向が、振動の入力方向であるハンマビット319の長軸方向に概ね一致するように配置されている。圧縮コイルバネ320は、ハンマビット319の長軸線よりも上方位置に置かれ、その長軸方向の一端が本体ハウジング301に形成された本体側バネ受け320aによって支持され、他端が上部連接領域309Bに形成されたグリップ側バネ受け320bによって支持される。すなわち、ハンドグリップ309の上部連接領域309Bは、圧縮コイルバネ320を介して本体ハウジング301にハンマビット319の長軸方向に相対移動可能に連結されている。なお、圧縮コイルバネ320は、本体ハウジング301と上部連接領域309Bとの間に配置された伸縮自在なゴム製の防塵カバー321によって被覆されている。
【0099】
図21及び
図22に示すように、下部連接領域309Cは、本体ハウジング301の後方下部と弾性ゴム330を介して連結されている。この弾性ゴム330が、本発明における「弾性要素」に対応し、下部連接領域309Cが、本発明における「1か所の連結領域」に対応する。する。弾性ゴム330は、中心に円形孔330aを有する円柱形状に形成されており、弾性ゴム330の内部には粉体340が充填されている。具体的には弾性ゴム330の周方向に所定間隔で形成された複数の円弧状の空間S9が半径方向に2列形成されている。これらの空間S9は、少なくとも弾性ゴム330の長軸方向一端が粉体340の充填口として開放されており、粉体340の充填後において塞がれる。この円弧状の空間S9が、本発明における「粉体充填領域」に対応し、粉体340が、本発明における「粉体」に対応する。
【0100】
上記のように構成された粉体340が充填された弾性ゴム330は、本体ハウジング301の後方下部に形成された円筒状の外側ゴム受け331aと、当該外側ゴム受け331a内に同心状に配置される円柱状の内側ゴム受け331bとの間に介在状に配置される。従って、弾性ゴム330と粉体340は、外側ゴム受け331aから円柱状の内側ゴム受け331bに向かう方向に並んで配置される。外側ゴム受け331a及び内側ゴム受け331bは、ハンマビット319の長軸方向に交差する左右方向を長軸方向とする。円柱状の内側ゴム受け331bは、長軸方向の両端部が下部連接領域309Cの前端部によって固定状に支持される。上記の同心状に配置される外側ゴム受け331aと内側ゴム受け331bとの間に形成される空間S8が、本発明における「弾性要素介在領域」に対応し、弾性ゴム330のうち、円筒状の外側ゴム受け331aと接触する部分が、本発明における「接続部」に対応する。
【0101】
弾性ゴム330は、外側ゴム受け331a内に嵌合され、その外周面を外側ゴム受け331aの内周面で受けられる。一方、弾性ゴム330の円形孔330a内に内側ゴム受け331bが嵌入され、当該内側ゴム受け331bの外周面によって弾性ゴム330の内周面が受けられる。これにより、ハンドグリップ309の下部連接領域309Cは、粉体340が充填された弾性ゴム330を介して本体ハウジング301にハンマビット319の長軸方向に相対移動可能に連結される。
【0102】
本実施の形態に係るハンマドリル300は、上記のように構成されている。従って、ハンドグリップ309を把持しての穴明け作業時において、本体ハウジング301が振動した場合、本体ハウジング部301と上部連接領域309Bとの間に介在された圧縮コイルバネ320及び本体ハウジング部301と下部連接領域309Cとの間に介在された弾性ゴム330が、本体ハウジング301の振動に応じて弾性変形することで当該振動を低減する。特に弾性ゴム330の場合、ハンマビット319の長軸方向の振動については、外側ゴム受け331aと内側ゴム受け331bとの間で弾性ゴム330がハンマビット319の長軸方向に圧縮変形することで低減し、長軸方向に交差する方向については、外側ゴム受け331aと内側ゴム受け331bとの間で弾性ゴム330がハンマビット319の長軸方向に交差する上下方向あるいは左右方向に圧縮変形することで低減する。ハンマビット319の長軸方向が、本発明における「第1方向」に対応し、長軸方向に交差する方向が、本発明における「第2方向」に対応する。
【0103】
弾性ゴム330の内部に充填された複数の粉体340は、本体ハウジング301の振動に応じて粉体相互間での接触、微振動を繰り返し、そのときの摩擦抵抗により等が振動を低減する。すなわち、本実施形態によれば、本体ハウジング301が振動した際、当該振動を弾性ゴム330と粉体340とによって低減し、本体ハウジング301からハンドグリップ309への振動伝達を効果的に低減することができる。
【0104】
一方、作業者によるハンマドリル300の操作は、本体ハウジング301に発生する振動に比べて加速度の低い動きであり、当該操作のためにハンドグリップ309に入力される力は、粉体340によって受けられる。粉体340は、本体ハウジング301と下部連接領域309C間の連結部に関する剛性感を高めることとなり、下部連接領域309Cのぐらつきを抑えるため、ハンドグリップ309を操作したときの使用感が良くなる。すなわち、本実施形態のハンドグリップ309によれば、防振性を確保しつつ、ハンマドリル300を操作する際の操作性の向上を図ることができる。
【0105】
なお、本実施の形態では、弾性ゴム330の内部に粉体340が分離した状態で複数配置される場合で説明したが、周方向の全体にわたって連続する一体構造としても差し支えない。また、弾性ゴム330を円柱形状に形成したが、四角形に形成し、前半分を本体ハウジング301で支持し、後半分を下部連接領域309Cで支持してもよい。また、上部連接領域309Bと本体ハウジング301とを粉体340入りの弾性ゴム330によって連結してもよい。
【0106】
また、粉体の配置に関して、図示の実施形態では、本発明における「接続部」と「把持部」の間に直接に介在状に配置される場合と、弾性ゴムと弾性ゴムの間に介在状に配置される場合を示しているが、これに限らず、弾性ゴムと「接続部」との間に介在状に配置される構成、あるいは弾性ゴムと「把持部」との間に介在状に配置される構成とすることも可能である。
【0107】
上述した図示の実施形態では、動力工具として、電動グラインダ150、刈払機1、ハンマドリル160,200,300を例にして説明しているが、これら工具以外の工具、例えばレシプロソーやハンマの補助ハンドル、メインハンドルに適用してもよい。
【0108】
なお、本発明の趣旨に鑑み、以下の如き態様を構成することができる。
(態様1)
「請求項8に記載の動力工具であって、
前記粉体充填領域は、前記弾性要素と前記接続部との間、前記弾性要素と前記把持部との間、前記接続部と前記把持部との間、または前記弾性要素同士の間に介在状に配置されていることを特徴とする動力工具。」
【0109】
態様1のように構成することで、工具本体から接続部を経て入力する複数の方向の振動を低減するように、複数の粉体を合理的に配置することができる。
【0110】
(態様2)
「請求項9に記載の動力工具であって、
前記弾性要素が、前記工具本体に直接に連接する構成であることを特徴とする動力工具。」
【0111】
態様2によれば、工具本体と弾性要素が直接に連接されることで、連接に関する合理化が図れる。
【0112】
(実施形態の各構成要素と本発明の構成要素との対応関係)
本実施形態における各構成要素と、本発明における構成要素との発明特定事項との関係は、以下のとおりである。もちろん、本実施形態における各構成要素は、対応する本発明の特定事項に関する一つの実施構成例に過ぎず、本発明の各構成要素はこれに限定されるものではない。
グリップ本体部110、弾性ゴム80の突起21aとの接触部分、弾性ゴム230の内側ゴム受け201aとの接触部分、弾性ゴム330の外側ゴム受け331aとの接触部分のそれぞれが、本発明の「接続部」に対応する構成の一例である。
グリップ部120,71,223,309Aが、本発明の「把持部」に対応する構成の一例である。
弾性ゴム130,80,230,330が、本発明の「弾性要素」に対応する構成の一例である。
粉体140,90,240,340が、本発明の「粉体」に対応する構成の一例である。
第1空間S1、第2空間S2、筒状空間S4、空間S6、空間S8のそれぞれが、本発明の「弾性要素介在領域」に対応する構成の一例である。
第3空間S3、収容溝部115b、筒状空間S5、空間S7、空間S9のそれぞれが、本発明の「粉体充填領域」に対応する構成の一例である。
突起114c,117cと凹部122bとそれらの間に介在される弾性ゴム130の突部130cが、本発明の「弾性要素介在領域の回り止め部」に対応する構成の一例である。
突起114cと板状部材115aとその間の粉体140が、本発明の「粉体充填領域の回り止め部」に対応する構成の一例である。
チューブ状の袋体141が、本発明の「袋体」に対応する構成の一例である。
本体ハウジング151,161,操作桿2,本体ハウジング201,301のそれぞれが、本発明の「工具本体」に対応する構成の一例である。
操作桿2が、本発明の「操作桿」に対応する構成の一例である。
動力ユニット3が、本発明の「駆動ユニット」に対応する構成の一例である。
刈込ユニット4が、本発明の「刈込ユニット」に対応する構成の一例である。
ハンドグリップ209,309が、本発明の「ハンドル」に対応する構成の一例である。
ハンマビット219,319が、本発明の「工具ビット」に対応する構成の一例である。