(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095461
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】ポリエステル積層不織布およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 3/018 20120101AFI20170306BHJP
D04H 3/147 20120101ALI20170306BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
D04H3/018
D04H3/147
B32B5/26
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-87711(P2013-87711)
(22)【出願日】2013年4月18日
(65)【公開番号】特開2014-210993(P2014-210993A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2016年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木原 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】高木 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】千塚 健史
【審査官】
平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】
特許第4619947(JP,B2)
【文献】
特開平10−086256(JP,A)
【文献】
特開昭63−295712(JP,A)
【文献】
米国特許第06649547(US,B1)
【文献】
特開2014−030785(JP,A)
【文献】
特開平11−032366(JP,A)
【文献】
特表2000−507657(JP,A)
【文献】
特開平3−249255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00〜18/04
B32B 1/00〜43/00
D01F 8/00〜 8/18
B01D39/00〜41/04
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の層が、ポリエステル長繊維を構成繊維とする不織布であって、該長繊維の横断面形状が、略Y字の下端で上下左右に連結した
形状(以下、「略Y4形状」という。)であり、
該長繊維相互間は、熱融着によって結合してなり、
他方の層が、ポリエステル極細繊維が集積してなる層であり、
両層は、一部のポリエステル極細繊維が、ポリエステル長繊維を構成繊維とする不織布の繊維間空隙に埋入することにより、一体化していることを特徴とする積層不織布。
【請求項2】
ポリエステル長繊維の単糸繊度が10デシテックス以上であることを特徴とする請求項1記載の積層不織布。
【請求項3】
ポリエステル長繊維を構成繊維とする不織布は、熱エンボス加工により部分的に熱圧着部が形成され、長繊維相互間が結合されていることを特徴とする請求項1または2記載の積層不織布。
【請求項4】
ポリエステル長繊維は、略Y4形状の各々の略V字部が低融点ポリエステルで形成され、その他の略+字部が高融点ポリエステルで形成されてなる複合型ポリエステル長繊維であり、
低融点ポリエステルの融着によって、長繊維相互間が結合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の積層不織布。
【請求項5】
ポリエステル極細繊維の繊維径が、3μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の積層不織布。
【請求項6】
溶融紡糸により、横断面形状が略Y字の下端で上下左右に連結した
形状(以下、「略Y4形状」という。)であるポリエステル長繊維を集積する工程、
前記集積した繊維ウェブに熱処理を施して、長繊維相互間を熱融着により結合させて長繊維不織布を得る工程、
前記長繊維不織布上に、メルトブロー法によりポリエステル極細繊維を吹き付けて、長繊維間の空隙に一部のポリエステル極細繊維を埋入させて積層不織布を得る工程とからなる積層不織布の製造方法。
【請求項7】
熱エンボス加工により部分的に熱圧着部を形成させて、長繊維相互間を結合させることを特徴とする請求項6記載の積層不織布の製造方法。
【請求項8】
メルトブロー法によりポリエステル極細繊維を吹き付ける際のメルトブローノズルから長繊維不織布上面までの距離が20mm以上50mm未満であることを特徴とする請求項6または7に記載の積層不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長繊維不織布と極細繊維からなる層とが積層してなる積層不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
極細繊維から構成される不織布としては、メルトブロー法により得られる数μm程度の単糸繊度の極細繊維からなる不織布が知られている。また、メルトブロー法により得られる極細繊維の集積体は、それ自体で形態保持することが難しく、スパンボンド法による長繊維ウェブ層と積層して用いられることが多い。
【0003】
長繊維ウェブとメルトブロー法による極細繊維の集積体とが積層してなる不織布であって、極細繊維が長繊維ウェブ内に進入して一体化した不織布が提案されている(特許文献1)。この方法によれば、スパンボンド法による長繊維層とメルトブロー法による極細繊維層とをより高度に一体化するために、スパンボンド法により長繊維を堆積させた後、熱圧着処理等による長繊維同士の接合を施すことなく、単に長繊維が堆積してなる長繊維ウェブ上に直にメルトブローン法による極細繊維の吹き付けを行い、拘束されていない自由な長繊維の間に極細繊維を進入させ、その後、熱カレンダー処理等によって積層一体化するものである。
【0004】
この特許文献1の方法では、単に堆積させただけの長繊維ウェブ上に直にメルトブローン法により吹き付けを行っているため、長繊維が吹き付けによって捲れたり吹き飛ばされる恐れがあるため、操業性に劣り、また、捲れ等により目付斑が生じる恐れもある。これを避けるために、吹き付けノズルと長繊維層との間の距離を離すと、長繊維間への極細繊維の進入性が劣り、また、極細繊維同士の接着性が劣る傾向となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4619947号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、メルトブロー法による吹き付けの際の操業性が良好で、かつ、長繊維不織布中に極細繊維がより高度に侵入して一体化してなる積層不織布を提供することを課題とする。
【0007】
本件出願人は、今般、繊維の横断面形状を従来知られていなかった形状とすることにより、より剛性に優れたポリエステル長繊維不織布を得ることに成功した。そしてこの長繊維同士が熱接着により結合してなるポリエステル長繊維不織布上にメルトブロー法による極細繊維を吹き付けたところ、メルトブローノズルと長繊維不織布までの距離を近くしても、操業性が良好であり、かつ、両層が良好に一体化できることを見出し、本発明に到達した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、一方の層が、ポリエステル長繊維を構成繊維とする不織布であって、該長繊維の横断面形状が、略Y字の下端で上下左右に連結した
形状(以下、「略Y4形状」という。)であり、
該長繊維相互間は、熱融着によって結合してなり、
他方の層が、ポリエステル極細繊維が集積してなる層であり、
両層は、ポリエステル極細繊維が、ポリエステル長繊維を構成繊維とする不織布の繊維間空隙に埋入することにより、一体化していることを特徴とする積層不織布を要旨とするものである。
【0009】
まず、一方の層であるポリエステル長繊維を構成繊維とする不織布について説明する。この長繊維不織布は、その構成繊維の横断面形状に特徴がある。横断面形状は、
図1に示すような略Y字を四個持つものである。そして、略Y字の下端1で上下左右に連結して、
図2に示すような略Y4形状となっている。この略Y4形状は、四個の凹部2と八個の凸部3と四個の小凹部4とを有している。特に、中央の略+字部5と、略+字部5の各先端に連結された四個の略V字部6により、高剛性となっている。すなわち、六角形やY字等の単なる異形ではなく、剛性の高い略+字部5と略V字部6の組み合わせによって、より高剛性となるのである。また、このような特異な断面形状であるため、多数の凹部と凸部を有し、異形度が高く、長繊維相互間には十分に空隙を確保することができることから、長繊維不織布は通気性に優れる。
【0010】
長繊維不織布は、長繊維相互間が熱融着によって結合してなる。この熱融着は、長繊維を得た後、これを集積して繊維ウェブを形成した後に、加熱処理を施すことにより得られるが、この熱処理は、熱エンボス加工によって部分的に熱圧着部を形成させるものであっても、また、熱風処理により長繊維同士の交点を融着により結合させたものであってもよい。また、これらの方法を併用したものでもよい。本発明においては、長繊維不織布の形態安定性および極細繊維層を積層してなる積層不織布の形態安定性の点から、部分的に熱と圧力とを付加することにより熱圧着する熱エンボス加工が好ましい。用いるエンボスロールの圧着面積率(エンボスロールの凸部の面積率)は、5〜30%がよい。圧着面積率が小さすぎると、形態安定性の効果を良好に奏することができず、一方、圧着面積率が大きすぎると、非圧着領域の割合が少なくなる傾向となり、極細繊維が長繊維相互間の空隙に侵入しにくくなる。
【0011】
長繊維は、1種のポリエステルからなる単相型であっても、2種のポリエステルからなる複合型であってもよいが、低融点ポリエステルと高融点ポリエステルとによって構成される複合型であるのが好ましい。低融点ポリエステルと高融点ポリエステルの複合型の場合は、横断面形状の略V字部6が低融点ポリエステルで形成され、略+字部5が高融点ポリエステルで形成された複合型ポリエステル長繊維であるのが好ましい。複合型の場合には、複合型ポリエステル長繊維を集積し、低融点ポリエステルを軟化又は溶融させた後、固化させることにより、ポリエステル長繊維相互間を低融点ポリエステルによって融着・接合させるとよい。低融点ポリエステルの融着によって、長繊維相互間が結合されているため、不織布の剛性がより優れ、優れた形態安定性を有する。低融点ポリエステルと高融点ポリエステルとの複合比は、繊維の強度や繊維同士の交点での接合強度等を考慮して、1/4〜2/1が好ましい。なお、低融点ポリエステルの複合比が小さくなると、低融点ポリエステルにより形成される略V字がより扁平形になり、また、高融点ポリエステルにより形成される略十字の各4箇所の先端部分が末広がりの形状になるが、このような変形した略V字および略十字であっても、本発明の範囲にあることは言うまでもない。
【0012】
長繊維不織布を構成するポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のホモポリエステルを好ましく用いることができる。また、ホモポリエステルに、第三成分として、イソフタル酸、ナフタリン−2・6−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸あるいはこれらのエステル類の酸成分、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオール成分を共重合したポリエステル共重合体を用いてもよい。またさらに、パラオキシ安息香酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、ポリアルキレングリコール、ペンタエリスリトールなどが添加あるいは共重合されていてもよい。
【0013】
本発明で用いるポリエステルに、必要に応じて、艶消し剤、顔料、防炎剤、消臭剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、結晶化促進剤等の各種添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。
【0014】
長繊維の単糸繊度は、剛性や繊維間の十分な空隙の確保、また、極細繊維の積層工程における吹き付け時の操業性や極細繊維の侵入性を考慮すると、10デシテックス以上が好ましく、より好ましくは15デシテックス以上である。単糸繊度の上限は特に限定しないが、溶融紡糸の際の冷却性を考慮すると、30デシテックス程度がよい。
【0015】
長繊維不織布の目付は、極細繊維が吹き付けによって長繊維不織布内に良好に侵入し一体化するために、15〜40g/m
2程度がよい。
【0016】
本発明における長繊維不織布は、溶融紡糸する際に用いるノズル孔を変更する以外は、従来公知の方法で得られる。すなわち、ポリエステル樹脂を溶融紡糸して得られた長繊維を集積して長繊維不織布を製造する方法において、溶融紡糸する際に用いるノズル孔の形状が、Y字の下端で上下左右に連結し、かつ、隣り合うY字の/同士及び\同士が平行である
形状(以下、「Y4形」という。)のものを用いるというものである。
【0017】
このノズル孔は、
図3に示すY字を四個持つものである。そして、Y字の下端7で上下左右に連結して、
図4に示すY4形となっている。このY4形は、隣り合うY字の/8,8同士が平行であり、また\9,9同士が平行となっている。かかるY4形のノズル孔にポリエステル樹脂を供給して溶融紡糸することにより、横断面が略Y4形状のポリエステル長繊維を得ることができる。特に、隣り合うY字の/8,8同士及び\9,9同士が平行となっていることにより、四個の凹部2を持つポリエステル長繊維を得ることができる。また、略+字部5と、その各々の先端に設けられた略V字部6とを持つポリエステル長繊維を得ることができる。2種のポリエステルを用いて、かかるY4形状のノズル孔にポリエステル樹脂を供給するにあたっては、低融点ポリエステル樹脂をY4形のV字部10に供給し、高融点ポリエステル樹脂をY4形の+字部11に供給する。かかる供給態様で溶融紡糸することにより、略V字部6が低融点ポリエステルで形成され、略+字部5が高融点ポリエステルで形成された複合型ポリエステル長繊維が得られる。
【0018】
ポリエステル長繊維を得た後、これを集積して繊維ウェブを形成する。そして、繊維ウェブに熱処理を施すことにより、ポリエステル長繊維の一部(高融点ポリエステルと低融点ポリエステルによって構成される場合は、低融点ポリエステル)を軟化または溶融させ、冷却して固化させることにより、ポリエステル長繊維相互間を融着して、ポリエステル長繊維不織布を得る。
【0019】
本発明の積層不織布は、他方の層が、ポリエステル極細繊維が集積してなる層により構成され、該ポリエステル極細繊維が、上記したポリエステル長繊維不織布の繊維間空隙に埋入することにより一体化している。
【0020】
次に、本発明における極細繊維について説明する。極細繊維は、ポリエステルにより構成される。上記した長繊維不織布もまたポリエステルにより構成されることから、両者は相溶性が良好であるため、極細繊維が長繊維不織布の繊維間空隙に埋入しやすく、両者が良好に一体化する。極細繊維を構成するポリエステルとしては、長繊維不織布を構成するポリエステルとして上記したものから選択するとよい。
【0021】
極細繊維の繊維径は、6μm以下がよく、好ましくは3μm以下、特に0.1〜3μmであるのが好ましい。極細繊維の繊維径を0.1μm未満とするのは、製造上、困難である。また、極細繊維の繊維径が6μmを超えると、極細繊維の集積体としての効果(例えば、粉塵を濾過するフィルター効果等)を良好に奏しない傾向となる。
【0022】
極細繊維が集積してなる層は、従来公知のメルトブロー法により溶融紡糸して得ることができる。前記したポリエステル樹脂単独で、あるいは前記ポリエステル樹脂の中から選択された2種以上の相異なるポリエステル樹脂がブレンドされたブレンド物を、あるいは前記ポリエスエル樹脂の中から選択された2種の相異なるポリエステル樹脂を芯鞘型あるいは並列型に配するようにして、いわゆるメルトブロー法にて溶融紡出し、すなわち紡糸口金に配設された孔径0.1mm〜1.0mm程度の紡糸孔から吐出し、吐出された溶融樹脂流を溶融温度より20℃〜70℃高い温度で幅0.1mm〜0.5mm程度のスリット状ノズルから噴出される高圧気体流により牽引・細化し、捕集面上に捕集・堆積させることにより得ることができる。本発明においては、ネット製コンベア上に捲出し移動するポリエステル長繊維不織布を捕集面とし、極細繊維を堆積させる。
【0023】
メルトブロー法で溶融紡出するに際し、紡糸温度は用いるポリエステル樹脂の溶融特性に応じて適宜選択可能であるが、このとき、溶融樹脂の溶融粘度を通常の溶融紡糸の場合よりも低くしなければ紡糸孔から吐出された溶融樹脂流の細化が困難であり、細繊度の繊維を得ることができない。従って、紡糸温度はポリエステル樹脂の融点より30〜100℃高い温度とするのが好ましい。紡糸温度がポリエステル樹脂の融点+30℃未満であると、溶融粘度が高すぎて溶融樹脂流の細化が困難となって目的とする細繊度の繊維を得ることができず、一方、紡糸温度が重合体の融点+100℃を超えると、ポリエステル樹脂に熱分解を生じ、いずれも好ましくない。
【0024】
本発明においては、ポリエステル長繊維不織布を捕集面とし、ポリエステル長繊維不織布上に、メルトブロー法により直接吹き付けて極細繊維の集積体を堆積する。これにより、ポリエステル長繊維不織布の繊維間隙に、ポリエステル極細繊維が一部埋入して、長繊維不織布上に極細繊維の集積体が良好に複合されて積層一体化した積層不織布を得ることができる。
【0025】
極細繊維を吹き付ける際のメルトブローノズルから長繊維不織布上面までの距離は、適宜設計できるが、20mm以上50mm未満であることが好ましい。本発明においては、メルトブローン法により吹き付ける樹脂がポリエステル樹脂であることからも、距離をより小さく設定することができる。例えば、汎用のポリプロピレン樹脂の場合、距離を100mm以上離さなければ、極細繊維の集積体がフィルム状となりやすいが、ポリエスエル樹脂は一般に結晶化しやすいため、距離をより近くに設定しても、このような現象が起こり難く、極細繊維の集積体は、繊維の風合いを保持できる。両者間の距離を50mm未満と近くに設定することにより、長繊維の繊維間隙に極細繊維を良好に侵入させて長繊維不織布内に極細繊維が埋入して、良好に積層一体化させることができる。距離を20mm以上とすることにより、極細繊維の結晶化がある程度促進されて、極細繊維の集積体がフィルム状となったり、過度にペーパーライクとならず、繊維の風合いを保持することができる。また、本発明の長繊維不織布は、構成繊維相互間が熱融着によって接合して拘束されているため、メルトブローノズルの距離を小さく設定しても、吹き付けによる圧力で繊維が捲くれたり移動することなく、さらには、長繊維が特異な異形であることにより繊維間には十分な空隙が保持されることから、長繊維不織布は通気性に優れ、吹き付けの際の長繊維不織布下面からの吸引が効果的に機能するため、長繊維不織布による圧力損失が非常に小さく、吹き付ける極細繊維が吸引力不足によって生じる風綿(フライ)発生の恐れがなく、操業性良く、長繊維不織布と極細繊維とを積層一体化することができる。
【0026】
ポリエステル極細繊維が集積してなる層の目付は、積層不織布を適用する用途等に応じて適宜選定すればよいが、10〜60g/m
2程度がよい。
【0027】
なお、本発明の積層不織布は、長繊維不織布に直にメルトブロー法により吹き付けるだけで極細繊維が長繊維不織布内に埋入して一体化するために、得られた積層不織布に、さらに積層一体化を目的として熱処理等を施す必要はないが、積層不織布表面の毛羽立ち防止や表面平滑化、あるいは積層不織布の厚み制御、あるいは積層不織布を適用する用途等にて求められる要求性能に応じて、得られた積層不織布を熱カレンダー装置や熱エンボス装置に導入して、熱処理を施してもよい。
【0028】
本発明の積層不織布は、特異な断面形状を有するポリエステル長繊維からなる長繊維不織布と、極細繊維からなる集積体とが積層一体化した不織布であり、剛性と塵埃除去性に優れているため、各種フィルター、支持体その他、広範な用途に供することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る積層不織布を構成するポリエステル長繊維不織布は、その構成繊維であるポリエステル長繊維の横断面が、略十字部と、この略十字の各先端に設けられた略V字部とからなり、特異な断面形状であるため、剛性に優れ、また、繊維間の空隙が大きく通気性に優れる。したがって、この長繊維相互が熱融着により接合してなる形態安定性に優れる長繊維不織布に直にメルトブローン法による極細繊維を吹き付けて、極細繊維が良好に長繊維不織布内に良好に埋入し、操業性良く、積層一体化した不織布を得ることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、本発明中における各物性値はそれぞれ以下のような方法にて測定した値である。
(1)相対粘度;フェノールと四塩化エタンの等重量混合液を溶媒とし、この溶媒100cm
3に試料0.5gを溶解し、温度20℃の条件で常法により測定した。
(2)融点(℃);パーキンエルマー社製示差走査熱量計DSC−2型を用い、昇温速度20℃/分で昇温し、得られる融解吸熱曲線において極値を与える温度を融点(℃)とした。
(3)目付(g/m
2);JIS L1906に準じて測定した。
(4)単糸繊度(デシテックス);積層不織布において、1cm角の試料片計2点を準備し、電子顕微鏡(JEOL社製JSM−6390LV、ポリエステル長繊維は倍率500倍、ポリエステル極細繊維は倍率2000倍にて観察)にて繊維の直径を各25点測定し、その平均値を単糸繊度とした。
(5)層間剥離性;積層不織布の層間剥離性に関しては、下記のとおり、目視評価及び触感により評価を行った。
○:積層不織布の層間は実質的に一体化しており、剥離しない。
△:積層不織布の層間は、容易に剥離する。
×:層間が一体化せず、積層一体化していない。
【0031】
実施例
高融点ポリエステル樹脂として、相対粘度1.38、融点260℃のポリエチレンテレフタレートを、低融点ポリエステル樹脂としてエチレンテレフタレート単位にイソフタル酸を8mol%共重合した相対粘度1.44、融点230℃の共重合ポリエステルを準備した。そして、
図4に示したノズル孔を用い、V字部に低融点ポリエステル樹脂を供給し、十字部に高融点ポリエステル樹脂を供給して、紡糸温度285℃、単孔吐出量9.17g/分で溶融紡糸した。なお、低融点ポリエステル樹脂と、高融点ポリエステル樹脂の供給量の質量比は、1:1.75であった。
【0032】
次いで、ノズル孔から排出されたフィラメント群をエアーサッカー入口に導入し、複合型ポリエステル長繊維の単糸繊度が20デシテックスとなるように牽引した。エアーサッカー出口から排出された複合型ポリエステル長繊維群を開繊装置にて開繊した後、移動するネット製コンベア上に集積し、繊維ウェブを得た。この繊維ウェブを、エンボスロール(各エンボス凸部先端の面積は0.7mm
2で、ロール全面積に対するエンボス凸部の占める面積率は15%)とフラットロールからなる熱エンボス装置に導入し、両ロールの表面温度を210℃、両ロール間の線圧300N/cmの条件で熱エンボス加工を施して、目付20g/m
2のポリエステル長繊維不織布を得た。ポリエステル長繊維の単糸繊度は、20.14デシテックスであった。また、ポリエステル長繊維不織布の通気度(フラジール型通気度試験機(DAIEI KAGAKUSEIKI SEISAKUSHO LTD.TEXTILE AIR PERMEABILITY TESTER 織物通気度試験機) を用い、JIS L 1096の「一般織物試験方法」に準拠し、傾斜型気圧計は12.7mmに固定して通気度を測定)は、400cc/cm
2/秒以上であり、通気性に非常に優れたものであった。
【0033】
次いで、下記方法により積層不織布を得た。すなわち、相対粘度1.33、融点260℃のポリエチレンテレフタレートを用い、メルトブロー法により、孔径0.15mmの紡糸孔より紡糸温度320℃として溶融吐出し、高圧気体流により牽引・細化し、メルトブローノズル孔と長繊維不織布上面との距離が30mmの位置となるように配置し、ポリエステル極細繊維の集積体の目付が20g/m
2となるよう速度調整されたネット製コンベア上に捲出し移動させたポリエステル長繊維不織布の上面に、メルトブロー法によりポリエステル極細繊維を直接堆積・捕集し、目付40g/m
2の積層不織布を得た。メルトブロー法による吹き付けの際には、風綿が発生することなく、操業性は良好であった。また、ポリエステル極細繊維の繊維径は1.3μmであった。
【0034】
得られた積層不織布を目視にて観察したところ、積層不織布の層間は実質的に一体化しており容易に剥離しないものであり、層間剥離性の評価は、「○」であった。また、電子顕微鏡で断面や、それぞれの表面から観察すると、長繊維不織布の繊維間空隙に極細繊維の集積体が埋入していた。
【0035】
比較例
実施例において、長繊維不織布を作成する際、熱エンボス装置に導入せずに、単に繊維が堆積しただけの繊維ウェブの状態のものを用いて、メルトブロー法による吹き付けを行ったところ、長繊維が吹き付けによる圧力により飛ばされたため、メルトブロー法による吹き付け作業を中断した。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明に用いる長繊維の横断面形状である略Y4形状の一つの略Y字を示した図である。
【
図2】本発明に用いる長繊維の横断面形状である略Y4形状を示した図である。
【
図3】本発明に用いるY4形のノズル孔の一つのY字を示した図である。
【
図4】本発明に用いるY4形のノズル孔を示した図である。
【符号の説明】
【0037】
1 長繊維の横断面形状である略Y形状の一つの略Y字の下端
2 略Y4形状で形成された凹部
3 略Y4形状で形成された凸部
4 略Y4形状で形成された小凹部
5 略Y4形状中の略十字部
6 略Y4形状中の略V字部
7 溶融紡糸する際のノズル孔の形状であるY4形状の一つのY字の下端
8 Y字の/
9 Y字の\
10 Y4形のV字部
11 Y4形の十字部