(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
薄板状の第1集電部材及び当該第1集電部材の表面の周辺部に接着される薄板状の第1絶縁部材から成る第1複合集電部材と、当該第1複合集電部材及び前記第1集電部材の表面で且つ第1絶縁部材よりも内方に積層される第1電極合材層とから成る正極又は負極の第1電極層と、固体電解質層と、薄板状の第2集電部材及び当該第2集電部材の表面の周辺部に接着される薄板状の第2絶縁部材から成る第2複合集電部材と、当該第2複合集電部材及び前記第2集電部材の表面で且つ第2絶縁部材よりも内方に積層される第2電極合材層とから成る負極又は正極の第2電極層とを備えた全固体電池の製造方法であって、
第1複合集電部材及び第1集電部材の表面で且つ第1絶縁部材よりも内方に第1電極合材の粉体を積層し第1電極層を形成する工程と、
前記第1電極層の表面に固体電解質の粉体を積層して固体電解質層を形成した後、第2電極合材の粉体をさらに積層して第2電極層を形成する工程と、
第2複合集電部材の第2絶縁部材に接着層を配置する工程と、を備え、
さらに、前記第1絶縁部材と前記第2絶縁部材に配置された前記接着層とが対向するように配置し、且つ前記第2絶縁部材を前記第2電極層の周囲に位置させた状態で、
弾性部材を介して押圧部材により、前記第2集電部材を前記第2電極層の表面形状に沿って押圧して変形させるとともに、第1絶縁部材と第2絶縁部材とを接着層により接着させる
ことを特徴とする全固体電池の製造方法。
薄板状の第1集電部材及び当該第1集電部材の表面の周辺部に接着される薄板状の第1絶縁部材から成る第1複合集電部材と、当該第1複合集電部材及び前記第1集電部材の表面で且つ第1絶縁部材よりも内方に積層される第1電極合材層とから成る正極又は負極の第1電極層と、固体電解質層と、薄板状の第2集電部材及び当該第2集電部材の表面の周辺部に接着される薄板状の第2絶縁部材から成る第2複合集電部材と、当該第2複合集電部材及び前記第2集電部材の表面で且つ第2絶縁部材よりも内方に積層される第2電極合材層とから成る負極又は正極の第2電極層とを備えた全固体電池の製造装置であって、
第1絶縁部材を有する第1電極層、固体電解質層及び第2電極層から成る主積層体を支持する受け台と、
第2複合集電部材及び第2絶縁部材に設けられた接着層から成る副積層体を支持し得るとともに前記受け台よりも上方に配置され且つ上下方向で移動可能に設けられた可動支持部材と、
当該可動支持部材よりも上方に配置されるとともに下端に弾性部材が設けられた押圧部材とを具備し、
前記受け台に支持された前記主積層体に前記可動支持部材に支持された前記副積層体を積層し押圧させて全固体電池を形成する際に、
前記押圧部材を下方に及び/又は前記受け台を上方に移動させることにより、前記可動支持部材に支持された副積層体と前記受け台に支持された主積層体とを接触させた後、さらに前記押圧部材を下方に及び/又は前記受け台を上方に移動させることにより、前記弾性部材を介して、前記第2絶縁部材を前記第2電極層の周囲に位置させた状態で、前記第2集電部材を前記第2電極層の表面に沿って変形させるとともに、前記接着層により前記第1絶縁部材と前記第2絶縁部材とを互いに接着させる
ことを特徴とする全固体電池の製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る
全固体電池の製造方法及びその製造装置について説明する。
なお、以下の実施の形態では、まず全固体電池の構成について説明し、次にその製造装置及び製造方法について説明する。
<全固体電池>
本実施の形態に係る全固体電池は、
図1に示すように、薄板状の第1集電部材1a及び第1集電部材1aの表面の周辺部に接着される薄板状の第1絶縁部材1bから成る第1複合集電部材1と、第1複合集電部材1及び第1集電部材1aの表面で且つ第1絶縁部材1bよりも内方に積層される第1電極合材層3とから成る正極又は負極の第1電極層4と、固体電解質層5と、薄板状の第2集電部材2a及び第2集電部材2aの表面の周辺部に接着される薄板状の第2絶縁部材2bから成る第2複合集電部材2と、第2複合集電部材2及び第2集電部材2aの表面で且つ第2絶縁部材2bよりも内方に積層される第2電極合材層6とから成る負極又は正極の第2電極層7とを備え、固体電解質層5を第1及び第2電極合材層3,6の間に配置して、第1及び第2電極層4,7を各絶縁部材1b,2bを対向させて積層する際に第1絶縁部材1b及び第2絶縁部材2bの間に接着層8を介在させるとともに、弾性部材を介して押圧部材により押圧することにより、第2集電部材2a、各電極合材層3,6及び固体電解質層5の間に空隙が生じないようにされている。
【0013】
以下、より具体化した全固体電池について説明する。下側に第1電極層4として正極層を配置する場合について説明するとともに、その平面視形状が正方形である場合について説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態に係る全固体電池は、正極として機能する第1電極層4と、第1電極層4に積層される固体電解質層5と、固体電解質層5に積層される負極として機能する第2電極層7とで構成されている。
【0015】
第1電極層4及び第2電極層7は、同一の構成をしているため、以下、電極層4,7として説明する。電極層4,7は、薄板状の集電部材1b,2b及び集電部材1a,2aの表面の周辺部に接着される薄板状の絶縁部材1b,2bから成る複合集電部材1,2と、複合集電部材1,2及び集電部材1a,2aの表面で且つ絶縁部材1b,2bよりも内方に積層される電極合材層3,6とで構成される。すなわち、複合集電部材1,2の中央部には、集電部材1a,2aが露出される開口部9,10が形成される。
【0016】
第1集電部材(正極集電部材ともいう)1aの上面の周辺部には所定幅でもって接着材1cを介して第1絶縁部材1bが配置されて第1複合集電部材(正極複合集電部材ともいう)1が構成されるとともに、この第1複合集電部材1の中央部に形成される開口部9に第1電極合材層(正極合材層ともいう)3が配置されて第1電極層4が構成される。
【0017】
そして、この第1電極層4における第1電極合材層3の上面に且つ第1電極合材層3の全体を覆うように固体電解質の粉体が積層されるとともに、この固体電解質層5の上面に第2電極合材層(負極電極合材層ともいう)6が積層される。ここで、以下、第1電極合材層3、固体電解質層5及び第2電極合材層6を併せて粉体層と称することがある。
【0018】
本実施の形態に係る全固体電池
の製造方法および製造装置で製造される全固体電池は、この第2電極合材層6の上面に、第2集電部材(負極集電部材ともいう)2aの上面の周辺部に所定幅でもって接着材2cを介して第2絶縁部材2bが配置されてなる第2複合集電部材(負極複合集電部材ともいう)2が配置された状態で、上方から押圧して第1絶縁部材1bと第2絶縁部材2bとが接着層8を介して強固に接着されたものである。
【0019】
このとき、
図1に示すように、第2集電部材2aは固体電解質層5の周辺部の外側の第1絶縁部材1bの上面に接触されて、第1電極合材層3と第2電極合材層6との内部短絡が防止されている。
【0020】
ここで、上記全固体電池の平面視の形状について説明すると、集電部材1a,2a及び電極合材層3,6は正方形にされており、当然ながら、接着材1c、2c及び接着層8についても、その正方形の辺に沿って配置されるため、中央部に開口部を有する。なお、接着材1c、2c及び接着層8には、一般に用いられる接着方法を用いるか、熱融着を代用しても構わない。本実施の形態においては、接着には、全て感圧接着材を用いている。
【0021】
そして、それぞれの大きさについて説明すると、正極(又は負極)の第1電極層4の上方に負極(又は正極)の第2電極層7が押圧されて積層されるため、各電極合材層3,6の大きさ、集電部材1a,2aの大きさ、集電部材1a,2aの周辺部に配置される絶縁部材1b,2bの内寸法つまり絶縁部材1b,2bに設けられる開口部9,10の大きさは、以下のようにされている。
【0022】
すなわち、
図1に示すように、第1絶縁部材1bの開口部9の方は第1電極層4の第1電極合材層3の大きさ以上であるとともに、第1電極合材層3の上方に配置される固体電解質層5は第1絶縁部材1bの開口部9の大きさ以上であり、さらにこの上に積層される第2電極層7の第2電極合材層6は固体電解質層5の大きさ以下であるとともに、第2電極合材層6の周囲に配置される第2絶縁部材2bの開口部10は第2電極合材層6の大きさ以上であり、且つ押圧時に第2集電部材2aの周辺部が第1絶縁部材1bに接触されるような大きさにされている。
【0023】
その大小関係を示すと下記のようになる。
第1電極合材層3の一辺の幅L1≦第1絶縁部材1bの開口部9の一辺の幅L2≦第2電極合材層6の一辺の幅L3≦固体電解質層5の一辺の幅L4≦第2絶縁部材2bの開口部10の一辺の幅L5
また、全固体電池の重量を低減する観点から、集電部材1a,2aの厚さが10〜50μm、第1及び第2絶縁部材1b,2bの厚さが20〜100μmであり、接着層8の厚さが5〜100μmであり、各電極合材層3,6及び固体電解質層5の厚さの合計が、各絶縁部材1b,2b及び接着層8の厚さの合計よりも大きいことが好適である。
【0024】
さらには、本実施の形態においては、成形時の加圧に好ましい圧力7.35〜14.7MPa(75〜150kgf/cm
2)に対して、第1複合集電部材1の開口部9の一辺の幅が10〜500mmであることが好ましく、50mmが最も好適である。なお、本実施の形態における、上記の適正な圧力範囲は、一般的な弾性部材の耐圧可能な数値範囲である。したがって、弾性部材の耐圧可能な圧力範囲内であれば、上記圧力の範囲に限らない。
【0025】
本実施の形態においては、第2集電部材2a、各電極合材層3,6及び固体電解質層5の間に空隙が生じないようにされている。この構成は、固体電解質層5を第1及び第2電極合材層3,6の間に配置して、第1及び第2電極層4,7を各絶縁部材1b,2bを対向させて積層する際に、第1絶縁部材1b及び第2絶縁部材2bの間に接着層8を介在させるとともに、弾性部材を介して押圧部材により押圧することによって成し得る。
【0026】
この構成によれば、全固体電池を加圧する際に、変形自在な弾性部材(後述する)を介して押圧することにより、押圧部材(後述する)のみを用いる場合と比較して、圧縮に伴い弾性部材の形状が変化し、各電極合材層3,6の表面形状に沿って各集電部材1a,2aを変形させて配することができるため、各電極合材層3,6及び固体電解質層5並びにこれらと各集電部材1a,2aとの間に空隙のない成形体を得ることができる。また、第1絶縁部材1bと第2絶縁部材2bとの間に接着層8を設けることで、各層間の空隙が低減された押圧状態を確実に維持することができるため、全固体電池の内部短絡が抑制される。
【0027】
そして、各電極合材層3,6の少なくとも一方の側面が厚み方向に対して傾斜している。より具体的には、各電極合材層3,6の少なくとも一方の側面が、各層の層面(層厚方向に直交する面すなわち表面)方向に対して10〜60°の範囲で傾斜していることが好ましい。この構成によれば、粉体層における各層の厚さの急な変化(不連続状態)が解消されることにより、押圧時に成形体に生じる内部応力による断層の発生が抑制されるため、内部短絡を抑制することができる。なお、各電極合材層3,6は粉体によって構成されるために層面や側面に凹凸を有することが多い。その場合、上記傾斜角度は、例えば、各電極合材層3,6について、凹凸の平均値に基づき平面をそれぞれ求め、それらが成す角度を計測したり、又、各電極合材層3,6について、複数箇所の断面における側面及び層面の成す角度を計測し、それらの平均値を算出すればよい。したがって、各電極合材層3,6の少なくとも一方の側面が、各電極合材層3,6の層面方向に対して平均10〜60°の範囲で傾斜していることになる。
【0028】
また、固体電解質層5の表面は、各電極合材層3,6の表面よりも面積が大きいことがよい。この構成により、粉体層の側面における正極合材層3と負極合材層6との接触が回避されるため、内部短絡を抑制することができる。
【0029】
さらには、集電部材1a,2aよりも面積の大きな弾性部材を用いることが好ましい。この構成によれば、押圧によって、弾性部材が各層の側面を覆うように変形するため、集電部材1a,2aを電極合材層3,6及び固体電解質層5の表面形状に沿って変形させるとともに、各電極合材層3,6及び固体電解質層5と各集電部材1a,2aとの間に空隙のない成形体が得られ、粉体層の崩壊を抑制することができる。
【0030】
以下、全固体電池の各層の機能及び用いられる材料について述べる。
集電部材1a,2aとしては、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ステンレス鋼、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、リチウム(Li)、錫(Sn)、又はこれらの合金等から成る板状体、箔状体が用いられる。本実施の形態においては、正極集電部材1aとしてはアルミ箔を、負極集電部材2aとしては銅箔をそれぞれ採用している。
【0031】
電極合材層3,6は、電子を送り出し受け取る酸化還元反応を行うために粒子間に電子伝導パスを確保する電極活物質と硫化物系無機固体電解質とを所定の割合で混合した混合材から成る層である。本実施の形態においては、硫化物系無機固体電解質として、リチウムイオン伝導性固体電解質を用いる。このように、電極活物質にリチウムイオン伝導性固体電解質を混合することにより、電子伝導性に加えてイオン伝導性を付与し、粒子間にイオン伝導パスを確保することができる。
【0032】
正極合材層3に適した正極活物質としては、リチウムイオンの挿入脱離が可能なものであればよく、特に限定されない。例えば、リチウム・ニッケル複合酸化物(LiNi
xM
1-xO
2、ただし、MはCo、Al、Mn、V、Cr、Mg、Ca、Ti、Zr、Nb、Mo及びWのうち少なくとも1つの元素)、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)等の層状酸化物、オリビン構造を持つリン酸鉄リチウム(LiFePO
4)、スピネル構造を持つマンガン酸リチウム(LiMn
2O
4、Li
2MnO
3、LiMO
2)等の固溶体やそれらの混合物、更に硫黄(S)、硫化リチウム(Li
2S)等の硫化物などを用いることもできる。本実施の形態においては、正極活物質として、具体的には、リチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム複合酸化物(LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2、以下、NCA系複合酸化物と称することがある。)を採用している。
【0033】
一方、負極合材層6に適した負極活物質としては、例えば天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素などの炭素材料のほかに硫化物系無機固体電解質と合材化されるものであれば限定されない。例えば、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)等の金属酸化物も用いることが出来る。本実施の形態においては、天然・人造などの黒鉛を採用している。
【0034】
また、正極活物質及び負極活物質の表面に、ジルコニア(ZrO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)、炭素(C)等をそれぞれコーティングしたものをそれぞれの電極活物質として使用することができる。
【0035】
リチウムイオン伝導性固体電解質としては、有機化合物又は無機化合物さらには有機及び無機化合物の混合物から成る材料を用いることができ、リチウムイオン電池分野で公知のものを使用することができる。本実施の形態においては、硫化物系無機固体電解質は、イオン伝導性が他の無機化合物よりも高いことが知られているため、硫化物系無機固体電解質を採用している。具体的には、Li
2S−P
2S
5系、Li
2S−GeS
2系、Li
2S−Ge
2S
2系、Li
2S−GeS
2−P
2S
5系、Li
2S−GeS
2−ZnS系、Li
2S−SiS
2系等のガラスセラミックスが挙げられる。本実施の形態においては、Li
2S−P
2S
5系ガラスセラミックスを採用している。
【0036】
本実施の形態においては、固体電解質層5は、材料について特に限定されるものではなく、有機化合物又は無機化合物さらには有機及び無機化合物の混合物から成る材料を用いることができ、リチウムイオン電池分野で公知のものを使用することができる。本実施の形態においては、硫化物系無機固体電解質は、イオン伝導性が他の無機化合物よりも高いことが知られているため、硫化物系無機固体電解質を採用している。具体的には、Li
2S−P
2S
5系、Li
2S−GeS
2系、Li
2S−Ge
2S
2系、Li
2S−GeS
2−P
2S
5系、Li
2S−GeS
2−ZnS系、Li
2S−SiS
2系等のガラスセラミックスが挙げられる。本実施の形態においては、Li
2S−P
2S
5系ガラスセラミックスを採用している。
<全固体電池の製造装置>
本発明に係る全固体電池の製造装置の実施の形態について
図2〜6を用いて説明する。
【0037】
この製造装置は、
図2に示すように、大きく分けて、全固体電池の構成部材(被プレス部材)を保持して金型の機能を果たすための装置本体(保持装置)20と、この装置本体20に保持された構成部材を押圧して全固体電池を成形するための押圧機(プレス機ともいえる)40とから構成されている。
【0038】
上記押圧機40は、
図2及び
図3に示すように、全固体電池の構成部材を載置し得る基台部41と、この基台部41の上方位置に左右一対の支柱材42を介して設けられたクラウン部43と、このクラウン部43に設けられて油圧シリンダ(加圧装置の一例)44により下方に突出される押込み具45とから構成されている。
【0039】
上記装置本体20は、押圧機40の基台部41の上面に配置される支持台21と、この支持台21の中央に形成された凹状部21a内に配置されて全固体電池の構成部材(例えば、第1電極層4、固体電解質層5及び第2電極合材層6から成る積層体)を載置し得る載置面Sを有する受け台22と(実際には、後述する下側可動部材にも全固体電池の構成部材が載置されることになる)、上記支持台21の四隅に設けられるとともに一方の対角線上で立設された2本の第1支柱材(支柱用ボルトともいえる)23及びこれら2本の第1支柱材23と異なる他方の対角線上で立設され且つ第1支柱材23より短くされた2本の第2支柱材(支柱用ボルトともいえる)24と、上記支持台21に2本の第1支柱材23を介して所定高さでもって配置される固定板25と、上記支持台21に立設された2本の第1支柱材23に上下方向で移動可能に案内されるとともにこれら各第1支柱材23に外嵌されたコイルばね26により上方に付勢されて配置される板状の上側可動部材27と、
図3及び
図4に示すように上記支持台21に立設された2本の第2支柱材24に上下方向で移動可能に案内されるとともに左右に設けられたピン状付勢具28により上方に付勢され且つ上記受け台22を上下方向で案内し得る開口部29aが設けられた板状の下側可動部材29と、上記上側可動部材27にピン状保持材30により保持されるとともに下端に弾性部材31が取り付けられた取付体32が着脱自在に設けられた押圧部材33とから構成されている。ここで、弾性部材31は、天然ゴム、合成ゴム、シリコンゴムなどのものが例示される。
【0040】
また、上記下側可動部材29は、
図3に示すように、ピン状付勢具28が長く突出された高い待機位置(イ)と、
図4に示すように、ピン状付勢具28が半分程度が突出された低いプレス準備位置(ロ)との間で昇降可能にされており、またこのプレス準備位置(ロ)を保持するための保持具34が設けられている。この保持具34としては、例えば受け台22側に水平ピン35を介して鉛直面内で揺動自在(回動自在)に設けられるとともに下側可動部材29に設けられた係合ピン36に係脱自在な係止用フック37が用いられる(係合ピンとフックとから成るという構成でもよい)。なお、
図1には、この保持具34は図示していない。
【0041】
また、上記押圧部材33は、
図5に示すように、上側可動部材27に形成された開口部27a内に配置されるとともに平面視において90度異なる位置に設けられた上記ピン状保持部材30により2方から押圧されて支持されている。この構成によれば、押圧力に応じて、適切な硬度の押圧部材33に交換することができる。
【0042】
さらに、押込み具45と押圧部材33との接続部には、球体係合部39が具備されている。具体的には、
図3及び
図4に示すように、押込み具45の押圧部材33側(下方側)に球体39a(半球体)を備え、且つ押付部材33の押込み具45側(上方側)に凹状曲面の係合溝39bを設け、球体39aと係合溝39bが係合するように構成されている。この構成によって、押圧部材33に押付け力が作用したとき、その下面が被プレス材である構成部材の表面に僅かな傾きがある場合でも、その表面に追従して構成部材の表面に均等に力が加わるようにされている。
【0043】
また、上記下側可動部材29の中央には、
図6に示すように、受け台22を案内し得る開口部29aが形成されるとともに、その周囲には、より広い幅を有する段状案内部29bが形成されており、第1複合集電部材1を案内・載置し得るようにされている。
【0044】
本実施の形態に係る製造装置によれば、全固体電池を加圧する際に、変形自在な弾性部材31を介して押圧することにより、押圧部材33のみを用いる場合と比較して、圧縮に伴い弾性部材31の形状が変化し、各電極合材層3,6の表面形状に沿って各集電部材1a,2aを変形させて配することができるため、各電極合材層3,6及び固体電解質層5並びにこれらと各集電部材1a,2aとの間に空隙のない成形体を得ることができる。また、第1絶縁部材1bと第2絶縁部材2bとの間に接着層8を設けることで、各層間の空隙が低減された押圧状態を確実に維持することができるため、全固体電池の内部短絡が抑制される。
<全固体電池の製造方法>
本発明に係る全固体電池の製造方法の実施の形態について
図7を用いて説明する。
【0045】
本実施の形態において、全固体電池の製造方法は、第1複合集電部材1に第1集電部材1aの表面で且つ第1絶縁部材1bよりも内方に第1電極合材の粉体を積層し第1電極層4を形成する工程と、第1電極層4の表面に固体電解質の粉体を積層して固体電解質層5を形成した後、第2電極合材の粉体をさらに積層して第2電極合材層6を形成する工程と、第2複合集電部材2の第2絶縁部材2bに接着層8を配置する工程とを備える。さらに、第1絶縁部材1bと第2絶縁部材2bに配置された接着層8とが対向するように配置し、且つ第2絶縁部材2bを第2電極合材層6の周囲に位置させた状態で、弾性部材31を介して押圧部材33により、第2集電部材2aを第2電極合材層6の表面形状に沿って押圧して変形させるとともに、第1絶縁部材1bと第2絶縁部材2bとを接着層8により接着させることができる。
【0046】
具体的には、まず、第1及び第2複合集電部材1,2をそれぞれ組み立てる。なお、第1及び第2複合集電部材1,2は同一の構成である。第1及び第2集電部材1a,2aの表面に、その周辺に沿って、中央部に開口部9,10を有する第1及び第2絶縁部材1b,2bを接着材又は熱融着により接着する。すなわち、第1及び第2集電部材1a,2aは開口部9,10の位置にて露出した状態である。
【0047】
第1複合集電部材1の開口部9に第1電極合材の粉体を積層して、第1電極合材層3を形成する。すなわち、第1集電部材1aに固体電解質の粉体を積層して固体電解質層5を形成する。この固体電解質層5の表面に第2電極合材の粉体を積層して第2電極合材層6を形成する。以下、便宜上、この積層体を主積層体Xと称する。
【0048】
一方、第2複合集電部材2の第2絶縁部材2bの表面(第2集電部材1aの接着されていない側の面)に接着層8を設ける。以下、便宜上、この積層体を副積層体Yと称する。
次に、主積層体Xと副積層体Yとを接着層8を介して接着する。
【0049】
すなわち、
図7(a)及び
図3に示すように、主積層体Xを受け台22の載置面Sに載せて、副積層体Yを下側可動支持部材29に載せ、第1絶縁部材1bと第2絶縁部材2bに配置された接着層8とが対向するように配置する。
【0050】
図7(b)に示すように、押圧機40の(図示せず)押込み具45(図示せず)から押圧力が伝達された押圧部材33により、副積層体Yを主積層体Xへ近づけ押圧する。具体的には、押圧機40を下降させることで押圧部材33を下降させ、さらに弾性部材31が下降することにより下側可動支持部材29を押し下げることによって、第2複合集電部材2の第2集電部材2aが主積層体Xに平行に積層される。押圧を継続すると主積層体Xに含まれる空気が押し出されて主積層体Xが圧縮される。
【0051】
このとき、
図7(c)に示すように、押圧部材33は弾性部材31を介して、第2集電部材2aを第2電極合材層6の表面形状に沿って押圧して変形させるとともに、第2絶縁部材2bを第2電極合材層6の周囲に位置させる。具体的には、引き続き押圧すると、押出される空気が減少するため、主積層体Xの嵩は減少しにくくなり、押圧の進行に伴って弾性部材が第2電極合材層6の表面形状に合わせて変形して主積層体Xを第2集電部材2aで包み込む。これと同時に第2複合集電部材2に具備した接着層8が第1複合集電材1に圧着され、複合集電材1,2同士が粉体層を密封する。
【0052】
さらに、押圧部材33により、接着層8を押圧することにより、第1絶縁部材1b及び第2絶縁部材2bを強固に接着する。
本実施の形態に係る製造方法によれば、圧力をかけながら第2集電部材2aを変形させたことにより第2集電部材2aは第2電極合材層2の表面形状に変形されるとともに、粉体層内部の空気を押し出しながら密封したことにより、粉体が流動される空隙が形成されにくい全固体電池を製造することができる。
【0053】
また、この製造方法によれば、全固体電池を加圧する際に、変形自在な弾性部材31を介して押圧することにより、押圧部材33のみを用いる場合と比較して、圧縮に伴い弾性部材31の形状が変化し、各電極合材層3,6の表面形状に沿って各集電部材1a,2aを変形させて配することができるため、各電極合材層3,6及び固体電解質層5並びにこれらと各集電部材1a,2aとの間に空隙のない成形体を得ることができる。また、第1絶縁部材1bと第2絶縁部材2bとの間に接着層8を設けることで、各層間の空隙が低減された押圧状態を確実に維持することができるため、全固体電池の内部短絡が抑制される。
【0054】
そして、この製造方法によれば、弾性部材31を介して押圧することによって、粒子間の空気を追い出しながら各層を圧縮する作業と、第1複合集電部材1及び第2複合集電部材2で封止する作業とを1つの工程で行うことができる。さらに接着層8を加圧することにより第1複合集電部材1と第2複合集電部材2とが強固に接着されるため、粉体層をより確実に包装することができる。
【0055】
さらには、上述の全固体電池を単セルとした場合に、上述のように単セルに耐崩壊性を有するため、単セル積層工程や、支持体との複合封止工程等の単セルの連結作業においても、崩壊による内部短絡を抑制することができる。ひいては、製造時の操作性が向上し、歩留が向上する。
【0056】
最後に、一般的な全固体電池の内部短絡の原因である製造時の成形体の崩壊について説明する。この崩壊は大きく以下の3つのパターンに分けられる。本実施の形態に係る製造方法によれば、これら第1乃至第3のパターンの崩壊を抑制することが可能である。
【0057】
まず、第1のパターンについて説明する。主積層体Xは、中央部の厚さが厚く、周辺部の厚さが薄い。仮に、この主積層体Xに副積層体Yを載せて、弾性部材を介さずに剛体の押圧部材のみを用いて押圧する場合、押圧部材33は集電部材1a,2aに対して平行に維持されるため、押圧された圧力は厚さの厚い中央部分にのみ負荷される。このため、粉体層の外周部は非成形又は成形不十分となり、脆くなる。すなわち、第1のパターンとは、その後の工程において何らかの衝撃等が加わった場合、成形体のうち脆い外周部が崩壊し全固体電池の内部短絡が発生することである。これに対して、本実施の形態によれば、全固体電池を加圧する際に、変形自在な弾性部材31を介して押圧することにより、押圧部材33のみを用いる場合と比較して、圧縮に伴い弾性部材31の形状が変化し、電極合材層3,6の表面形状に沿って集電部材1a,2aを変形させて配することができるため、各電極合材層3,6及び固体電解質層5並びにこれらと各集電部材1a,2aとの間に空隙のない、外周部の成形が十分に可能な成形体を得ることができる。
【0058】
次に、第2のパターンとは、製造時の押圧の速度が速過ぎることにより起こる気流によって粉体が飛散し、成形体が崩壊してしまうものである。ここで言う気流とは、粉体の粒子間の空気が圧縮により粉体層の外へ押し出されることにより発生するものである。これに対して、本実施の形態によれば、押圧部33の降下が油圧により行われるので、加圧の速度を制御することが容易となり、第2のパターンによる崩壊が抑制される。
【0059】
そして、第3のパターンとは、上述のとおり、主積層体Xの粉体層において、各層の厚さが急に変化する部分(不連続部分)にて、断層が生じることである。特に固体電解質層5は、電気絶縁層として機能しているので、固体電解質層5にて断層が生じると内部短絡が生じる。これに対して、本実施の形態によれば、弾性部材を介して押圧部材で押圧することによって、弾性部材は押圧時に粉体層の表面形状に沿って変形するため、粉体層の厚さの差によって負荷される押圧力が不均等になることを抑制することができる。すなわち、主積層体Xの厚みのばらつきに対応して弾性部材31が変形するので、積層体Xは均等に加圧され、断層を生じることが抑制される。また、押付けが完了しても、第2複合集電部材2が第2電極合材層6及び固体電解質層5に密着するため、空気及び粒子が移動できる空隙が形成されにくくなる。その結果、成形体の外周部の崩壊が抑制され、崩壊しにくい構造の全固体電池を製造することができる。なお、本実施の形態においては、電極合材層3,6の側面を傾斜させることで、粉体層における各層の厚さの急な変化(不連続状態)が解消されることにより、押圧時に成形体に生じる内部応力による断層の発生が抑制されるため、内部短絡を抑制することもできる。
【0060】
上述のように、本実施の形態に
係る全固体電池の製造方法及び全固体電池の製造装置によれば、これらの第1〜第3のパターンによる崩壊それぞれについて、解決することができる。
[変形例]
本実施の形態においては、下側に第1電極層4として正極層を配置する場合について説明したが、当然、下側に第1電極層4として負極層を配置しても構わない。
【0061】
また、本実施の形態においては、全固体電池の平面視形状が正方形状であるものを例示したが、これに限定されない。例えば、平面視形状が円形状の場合、中央部の開口部9,10も円形状でも構わない。また、全固体電池の平面視形状と、各絶縁部材1b,2bの開口部9,10の平面視形状とは、異ならせてもよい。
【0062】
そして、本実施の形態においては、押圧部材33を下方に移動させることにより成形体を得る構成としたが、これに限定されない。例えば、受け台22を上方に移動させて、又は受け台22を上方に移動させるとともに押圧部材33を下方に移動させることにより、成形体を得るような構成としてもよい。
[実施例]
以下、本実施の形態に係る
全固体電池の製造方法および製造装置で製造された全固体電池の実施例について、説明する。
【0063】
一辺が28mmの正方形で厚さ20μmのアルミ箔(第1集電体1a)に、一辺が22mmの正方形の開口部9を中央部に有する一辺が40mmの正方形で厚さ50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)製の第1絶縁部材1bが、一辺が22mmの正方形の開口部を中央部に有する一辺が26mmの正方形の感圧接着材1cを介して接着された正極複合集電部材1を作製した。一辺が40mmの正方形で厚さ10μmの銅箔(第2集電体2a)に、一辺が28mmの正方形の開口部10を中央部に有する一辺が50mmの正方形で厚さ50μmのPET製の第2絶縁部材2bが、一辺が36mmの開口部を中央部に有する一辺が28mmの正方形の感圧接着材2cを介して接着された負極複合集電部材2を作製した。さらに、負極複合集電部材2には、正極複合集電部材1との接着に用いる感圧接着層(接着層8)を、第2絶縁部材2bにおいて、銅箔を接着した面の反対面に設けている。この感圧接着層(接着層8)は一辺が36mmの正方形で中央部に設けられた開口部が一辺が28mmの正方形をしたものである。
【0064】
固体電解質としてのLi
2S−P
2S
5系のガラスセラミックスと、正極活物質としてのNCA系複合酸化物とを8:2の重量比で混合して正極合材を調製した。Li
2S−P
2S
5系のガラスセラミックスと、負極活物質としての黒鉛とを7:3の重量比で混合して負極合材を調製した。
【0065】
そして、正極複合集電部材1の開口部9に110mgの正極合材の粉体を一辺が20mmの正方形状に成膜(積層)して正極合材層3を形成した。また、正極合材層3の上に、85mgの固体電解質の粉体を一辺が26mmの正方形状に成膜(積層)して固体電解質層5を形成した。この固体電解質層5に、110mgの負極合材の粉体を一辺24mmの正方形状に成膜した。このように主積層体Xを作製した。
【0066】
この主積層体Xを受け台22の載置面Sに載せ、副積層体Yを下側可動支持部材29に載せた。押圧部材33の先端部には一辺が48mmの正方形で厚さ5mmのシリコン製のゴム板(弾性部材31)を装着した。最終的に2.94×10
3N(300kgf)の力で加圧し、成形体を作製した。
【0067】
そして、この全固体電池を支持体(一辺40mm、厚さ0.3mmのステンレス板)2枚で挟み、電気取り出し用のタブを具備した熱融着性ラミネートで真空封止した。この時、電気取り出し用のタブを支持体であるステンレス板に接触させることでラミネート内の全固体電池との電気的接続を確保した。真空封止した全固体電池を油圧プレス機にて3.92×10
5N(40ton)の力にて加圧して完成電池とした。なお、電極合材の調製から真空封止までの工程は、露点−80℃以下の環境で行った。
【0068】
上記工程にて10個の全固体電池を作製したところ、全ての全固体電池において、内部短絡が発生しなかった。
[比較例1]
比較のために、押圧部材33の先端に弾性部材31を装着せず、それ以外は実施例1と同様の方法且つ同一の条件で全固体電池を作製した。作製した10個の全固体電池中、5個の全固体電池で内部短絡が発生した。内部短絡が発生した電池は、負極複合集電部材2と正極複合集電部材1の接着が不完全であり、全固体電池の外周部において両極の複合集電部材1,2間に空隙が形成されていた。また、これらを解体したところ粉体層の外周部が欠損していた。
[比較例2]
また、正極複合集電部材1と負極複合集電部材2を貼り合せる感圧接着層8を設けず、それ以外は実施例1と同様の方法且つ同一の条件で全固体電池を作製した。2.94×10
3N(300kgf)の力で押圧したが、押圧を止めると、負極複合集電部材2と正極複合集電部材1の間に空隙が生じた。作製した10個の全固体電池中、7個の全固体電池で内部短絡が発生した。上述のことから、真空封止する工程で内部短絡が発生したと考えられる。