(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
引戸装置における引戸を開放状態に保持する引戸の開放ストッパー装置において、引戸装置は、建物用鉄骨に固定される引戸枠上部にレール部材が設けられ、引戸が開閉自在で自閉可能にレール部材に吊り下げられるとともに、引戸の閉鎖状態で、引戸が位置する側が出入口側とされ、引戸の開放状態で引戸の位置する側が戸袋側とされ、引戸枠の上部の出入り方向に面する側が、メンテナンスパネルあるいは、壁面を形成する化粧ボードで覆われることによって、少なくともレール部材が隠蔽され、開放ストッパー装置は、引戸側に設けられた第1係合部材と、引戸枠側に設けられた引戸を開放させると前記第1係合部材に係合する第2係合部材とから成り、引戸の開放時に両係合部材が係合することによって、引戸を開放状態で保持され、第1係合部材と第2係合部材のうち少なくとも一方に開放保持解除手段が設けられ、開放保持解除手段は、両係合部材の係合状態を解除する付勢手段と、該付勢手段の付勢力に抗して前記係合状態を維持する固定部材とを備え、固定部材は、熱融解性部を有し、熱融解性部の周辺温度が所定温度以上になったときに、該熱融解性部が融解し固定部材が破断することによって引戸の開放保持時の係合状態が解除されるものであって、開放ストッパー装置は、引戸の開閉操作で、引戸を開放状態での保持と、引戸を開放状態からの解除が可能に構成されるとともに、第1係合部材と第2係合部材は、メンテナンスパネルあるいは、壁面を形成する化粧ボードで隠蔽される位置に設けられ、固定部材が、メンテナンスパネルの下方で露出することを特徴とする引戸の開放ストッパー装置。
【実施例】
【0013】
以下、第1実施例を添付図面に基づいて詳述する。
図1において、符号1は引戸枠を示している。
引戸枠1は、
図1から
図5に示すように、建物用鉄骨11・・・にブラケット12・・・を介して固定された戸尻側縦枠13および戸先側縦枠14と、戸尻側縦枠13と戸先側縦枠14の上端間に、建物用鉄骨11・・・にブラケット12・・・を介して配設された上枠15を有している。
【0014】
そして、戸尻側縦枠13と戸先側縦枠14間で、上枠15の室内側(実施例ではメンテナンス側、いわゆる、引戸等の吊り込み側)と室外側の両面に上端が固定され、下端部が床面に埋め込まれた室内側中枠3と室外側中枠30が、室内側と室外側に所定間隔を有して配設されている。
以下、戸尻側縦枠13と室内側中枠3及び室外側中枠30間を戸袋側、戸先側縦枠14と室内側中枠3及び室外側中枠30間を出入口側、室内側中枠3と室外側中枠30の方向を出入り方向、戸尻側縦枠13と戸先側縦枠14の方向を開閉方向と云う。
尚、実施例では、便宜上、メンテナンス側を室内側として説明しているが、設置場所に対応して、点検側を室外側としても良い事は云うまでもない。
【0015】
図1、
図2、
図3において、符号2は、上枠15の室外側内面にネジ止め連結されているレール取付材を示している。
符号6は、レール部材5に吊り下げられた引戸を示し、符号16は、戸袋側の床面全幅にわたって固定されたベース材を示し、符号164は、ベース材16の出入口側端部に、ガイドローラー17が回転自在に設けられ、 室外側中枠30、室内側中枠3間でやや出入口側に突出して取付けられたガイドローラー取付部材を示している。
図1、
図2、
図3、
図4において、符号4・・・は、戸袋側の室内外側の両面上下方向に所定間隔を有して配設された下地桟を示している。
図3、
図4において符号7は、上枠15の点検出入口側に取り付けられる室内側ランマ下地パネルを示し、符号19は、上枠15の出入口側に設けられる室外側ランマ下地パネルを示している。
【0016】
そして、上記戸尻側縦枠13、戸先側縦枠14、上枠15、レール部材5が取り付けられたレール取付材2、ベース材16、室内側中枠3、室外側中枠30、下地桟4・・・、室外側ランマ下地パネル19、室内側ランマ下地パネル7(以上の部材が引戸枠1等の固定部材となる。)が、内装仕上げ(化粧ボード、クロス等の貼り付け)の行われるまでに施工され、内装仕上げが終了した後、室内側ランマ下地パネル7の一部のメンテナンスパネル73を取外して、引戸6がレール部材5に吊り込まれ、引戸6の摺動確認、閉鎖スピードの調整作業、レール取付材2の連結固定等が行われる。
【0017】
以下、各部材について詳述する。
戸尻側縦枠13は横断面略コ字形に形成され、建物用鉄骨11の出入口側面から所定寸法離間した位置に立設され、横向きL字形のブラケット12・・・と建物用鉄骨11が溶接されたあと、鉛直姿勢の状態でブラケット12と溶接され、床面仕上げ時に下端部が床面に埋め込まれる。符号138は、引戸6が全開した時、引戸6の戸尻側端面が当接する、出入口側面に取り付けられた緩衝部材を示している。
【0018】
戸先側縦枠14は、
図4に示す如く、建物側鉄骨11側の上下方向に所定間隔を有して固定用部材141・・・が設けられ、出入口側方向で室内側に突出して室内側の化粧ボード100の出入り口側端面を隠蔽する室内側ボード閉塞突部147と、出入口側方向で室外側に突出して室外側の化粧ボード100の出入口側端面を隠蔽する室外側ボード閉塞突部146と、室内側ボード閉塞突部147と室外側ボード閉塞突部146間に位置し、上部が室内側ボード閉塞突部147と室外側ボード閉塞突部146より上方に突出し、引戸6の戸先側端部が位置する部分に閉鎖用凹部148が上下方向に渡って設けられた戸当たり部より扁平な略コ字形に形成されている。
【0019】
上枠15は、
図3に示す如く、断面下向きコ字形の上枠基板154と、上枠基板154の下面に連結された断面逆L字形の上枠室外側部材155より構成されている。
上枠室外側部材155の室内側にはレール取付材2が連結され、室外側の下半部には室外側ランマ下地パネル19が取付けられている。
【0020】
戸先側縦枠14と上枠15は上記のように構成され、戸尻側縦枠13が前述のようにして立設された後、上枠15の戸先側を戸先側縦枠14にネジ止めして、上枠15と戸先側縦枠14を仮組みした状態で、上枠15と戸尻側縦枠13を同様にして仮組みする。
次に、上記の状態を維持しながら戸先側のブラケット12・・・及び上枠15側のブラケット12・・・を介して、戸先側縦枠14の固定用部材141・・・及び上枠15の上面基板154を建物用鉄骨11と溶接連結する。
【0021】
ベース材16は、
図2、
図5、に示す如く、戸袋側の床面全幅に位置する固定面161と、固定面161の室内側(点検側)及び室外側(固定側)の端部に形成された立ち上がり面162、162と、立ち上がり面162、162から内方に突出して形成されたL字形の下地ボード受け面163、163と、固定面161の出入り口側端部に、出入り口側に突出し、扉6の下端面に形成された嵌合溝60内に嵌合するガイドローラー17を、その上面で回転自在に保持するガイドローラー取付部材164が固着されている。
そして、ガイドローラー取付部材164の出入り口側端部はアンカーボルトにて床面に固定されると共に、ベース材16の出入口側端部は室内側中枠3、室外側中枠30の内面と連結され、さらに、戸尻側端部が戸尻側縦枠13と連結され床面に固定される。
【0022】
室内側中枠3は、
図4に示す如く、上端部が上枠15の室内側にネジ止め連結され、内面側に位置する補強枠31と、補強枠31の出入り口側の端部から室内側に位置する室内側外側枠36より構成され、下端部がベース材16と連結され、床面仕上げ時に下端が床面に埋め込まれて立設される。
【0023】
室外側中枠30は、
図4に示す如く、上端部が上枠15の室外側とネジ止め連結され、内面側に位置する室外側補強枠301と、室外側補強枠301の出入り口側の端部から室外側に位置する室外側外側枠306より構成され、下端部がベース材16と連結され、床面仕上げ時に下端が床面に埋め込まれて立設される。
すなわち、室外側中枠30は、上部が上枠15と上下2箇所で連結され、下端が床面に埋め込まれて立設されているので、引戸の揺れによる上枠15の室内側への捩れを防止する補強材の機能を兼ね備えている。
【0024】
下地桟4は、
図5に示すように、基板表面部41と、基板表面部41の上下端部をL字形に折り曲げた上下フランジ部42、43より構成され、基板表面部41の戸先側端部と戸尻側端部が戸尻側縦枠13と室内側中枠3及び室外側中枠30にネジ止め連結され上下方向に所定間隔を有して配設されている。
【0025】
室外側ランマ下地パネル19は、
図3に示す如く、室外側表面基板191の上端部に形成されたL字形の上部連結用突片192と、室外側表面基板191の下端部に室外側に突出して形成された略コ字形の室外側化粧突部193より形成されている。
すなわち、室外側ランマ下地パネル19は室外側中枠30と戸先側縦枠14の上部間に位置して取付けられ、室外側化粧ボード100が貼り付けられた状態で、室外側化粧突部193だけが露出することとなる。
【0026】
室内側ランマ下地パネル7は、
図3に示すように、基板72と、基板72の下端部に分離可能に設けられたメンテナンスパネル73より構成されている。
そして、基板72は、上枠15にネジ止め連結される、上端に形成された上端連結突片71と、室内側化粧ボード100の下端縁の下面を支持隠蔽する基板側下突片721より構成されている。
【0027】
メンテナンスパネル73は、
図3に示すように、室内側の上方から基板側下突片721の先端部分に載置され、室内側化粧ボード100に張られたクロスの下縁を隠蔽する載置用突片76と、戸先側縦枠14と室内側中枠3の上端部出入口側内面に取付けられたメンテナンスパネル連結座70、70に下面側が化粧ネジ700、700にて連結され、出入口上部の室内側を閉塞するL字形の室内側閉塞部78より構成されている。
【0028】
突部連結座70、70は対向した同形に構成されているので一方側についてのみ説明する。
突部連結座70は、
図3、
図14に示すように、室内側中枠3の上端部出入口側内面にネジ止め連結される連結用壁701と、連結用壁701の上端部に出入口側に突出して連設され、上面が室内側下地パネル7の基板側下突片721の下面に当接し、該下面にネジ止め連結される上部突出壁702と、連結用壁701の上端部に出入口側に突出して連設され、室内側閉塞部78の下面がネジ止め連結される連結用螺孔703を有する下部突出壁704より構成されている。
【0029】
室内側ランマ下地パネル7と、突部連結座70、70は、上記のように形成され、上端連結突片71が上枠15にネジ止めされた状態で、基板72の上方に下地ボード101が貼り付けられ、されに基板72の室内側の表面に室内側化粧ボード100が貼り付けられ、室外側ランマ下地パネル19の下室外側表面基板191の上方に下地ボード101が貼り付けられ、さらに、下室外側表面基板191の室外側表面に室外側化粧ボード100が貼り付けられ、下地桟4・・・の上下フランジ42、43、ベース材16の下地ボード受面163、上枠15の室内側垂下突片152及び室外側垂下突片153間等に下地ボード101・・・が貼り付けられ、下地ボード101・・・の表面の戸袋側に化粧ボード100が貼り付けられた状態で、出入口以外の表面が建物の壁面と同じ化粧用ボード100で面一に覆われた後、さらに室内側にはクロス等が貼り付けられることとなる。
【0030】
すなわち、戸先側縦枠14の室内側ボード閉塞突部146と、室外側ボード閉塞突部147と、室内側中枠突部32と室外側中枠突部302と、メンテナンスパネル73と室外側化粧突部193が化粧ボード100より外側に突出してあらわれることとなる。
そして、最終仕上げが施された(レール取付材2、引戸6等が取り付けられた)後、メンテナンスパネル73の載置用突片76を基板側下突片721に外側上方から載置し、突部連結座70、70に室内側閉塞部78が下面からネジ止め連結されて出入口の上部にメンテナンスパネル73が着座自在に設けられる。
【0031】
レール取付材2は、
図3に示すように、レール部材5が室内側に連結されるレール部材連結壁を有し、上枠15(上枠室外側部材155)の室内側に、出入口側と戸袋側のほぼ全幅にわたって、戸先側が下がる状態(レール部材5が前下がりの状態となるよう)に傾斜調節可能に連結される。
【0032】
レール部材5は、レール取付材2のほぼ全幅に渡って配設され、
図3に示すように、断面略C字形で、レール取付材2よりやや短目のレール補強部材500と、レール補強部材500の室内側にネジ止め連結される断面略C字形で、レール補強部材500とほぼ同長の室外側メンバー51と、室外側メンバー51の略3分の2程度の長さのボールリテーナに回転自在に保持されたボールを介して、室外側メンバー51に摺動自在に保持される、室外側メンバーの略3分の1程度の長さの移動側メンバー54より構成され、移動側メンバー54の室内側には、移動側メンバー54と同程度の長さの吊り下げ用金具55が固着されている。
【0033】
吊り下げ用金具55は、
図3に示すように、移動側メンバー54の室内側に固着される連結固着部551と、連結固着部551の下端部に連設された室内側が開口するコ字形の吊り下げ支持部552より構成されている。
そして、吊り下げ支持面552の開閉方向側両端部には、室内側が開口する吊り下げボルト挿通孔が形成されている。
【0034】
吊り下げ用金具55に吊り下げられる引戸6は、前記吊り下げボルト挿通孔に対応する位置で、上端面に吊り下げボルト61、61が設けられたパネル形状をなし、戸先側の上面に開放ストッパー装置8の第1係合部材10が取り付けられ、下端面の開閉方向に前記ガイドローラー17が嵌合する嵌合溝60が形成され(
図3に示す。)、引戸6の戸先側端面には、引戸の閉鎖状態で戸先側縦枠14の閉鎖用凹部148内に位置する戸当たり部材600(
図4に示す。)が、戸先側縦枠14方向に突出して設けられている。
符号300は(
図1に示す。)、引戸6の戸先側端部(引き残し部)で、室内側(点検側)、室外側(固定側)に設けられた取手を示している。
【0035】
吊り下げボルト61は、螺軸部とボルト頭部よりなり、メンテナンスパネル73が取外された状態の出入口の室内側より、吊り下げボルト61、61の螺軸部が、吊り下げ支持部552の吊り下げボルト挿通孔を挿通して、ボルト頭部が吊り下げ用支持部552に保持され、必要に応じて頭部をスパナで回動して引戸6を所定の高さに位置させた後、ボルト保持体65、65が吊り下げ用支持部552に室内側より連結されて、レール部材5に吊り下げ用金具55を介して吊り下げられる。
【0036】
さらに、引戸6を吊り下げた状態で、レール取付材2の傾斜角度を調節し、引戸6の所望の自閉スピードを得る。
次に、第2係合部材9、ブレーキ装置、フリーストッパー装置等のオプション部材が室内側から取付けられるが、実施例の引戸の開放ストッパー装置8以外のオプション部材は公知(市販)のもの使用しているので説明は省略する。
【0037】
開放ストッパー装置8は、
図2、
図3及び
図6に示すように、室内側中枠3の上端部出入口側内面に取付けられる第2係合部材9と、第2係合部材9に対応して引戸6の戸先側の上面に取り付けられた第1係合部材10より構成されている。
【0038】
第2係合部材9は、主に支持基材93と第2係合片94と付勢手段95と固定部材96とで構成されており、これらの構成について詳述する。
【0039】
図7に示すように、支持基材93は、取付部壁931、支持部932、第1延長部933、第1保持部934とで構成される。
【0040】
取付部壁931は、第2係合部材9を室内側中枠3にネジ止めにて連結するためのものであって、取付部壁931は、室内側中枠3の上端部出入口側内面に接し連結用のネジが通る貫通孔が設けられている。
支持部932は、断面下向きコの字型であり、取付部壁931の上部から出入口側に突出して連設され、第2係合片94が上下方向に回動自在に取り付けられる支持座932a、932bと、付勢手段95を連結する第1連結係合孔932cを有している。
【0041】
第1延長部933は、支持座932bの突出方向の前方部の引戸6側の側面に連接され、下方に向かって垂れ下がるように延伸すると共に、引戸6とメンテナンスパネル73との間の隙間を通り、該隙間より下方に突出する長さに設定されている。
第1保持部934は、第1延長部933の下端面に連接されるとともに戸先側に突出している。したがって、第1保持部934はメンテナンスパネル73の下方に露出した状態となる。
そして、第1保持部934の戸先側先端部には、引戸6側と反対側に向かって第1保持軸934aが突設している。
【0042】
第2係合片94は、基部941、第2係合体942、第2延長部943、第2保持部944とで構成される。
基部941は、一端に支持軸受け941aを有し、支持軸受け941aから戸先方向に向かって延伸しており、延伸先上面に第2係合体942がネジ止めされている。
第2係合体942は、板バネ材で形成され弾性変形可能であって、前記基部941と連結される第2係合体基部942aの先端部から戸先側にかけて、上方に向かって傾斜する保持傾斜面942aと、保持傾斜面942aの上端部から戸先側にかけて下方に向かって傾斜する案内傾斜面942bを有した山形を成している。
そして、支持軸受け941aと第2係合部942の間の所定の位置に付勢手段95を係合する第2連結係合孔941bが設けられている。
【0043】
第2延長部943は、基部941先端部の引戸6側の側面に連接され、基部941下方に向かって垂れ下がるように延伸すると共に、引戸6とメンテナンスパネル73との間の隙間を通り、該隙間より下方に突出する長さに設定されている。
第2保持部944は、第2延長部943の下端面に連接され、引戸6の反対側に向かって突出している。したがって、第2保持部944はメンテナンスパネル73の下方に露出した状態となる。
そして、第2保持部944には引戸6側と反対側に向かって第2保持軸944aが突設している。
【0044】
付勢手段95は、板バネ材であって、板状の第1アーム951と板状の第2アーム952の一端つないだ正面視横向きV字状を成している。
各アームの先端には、それぞれ、第1連結係合孔932cと第2連結係合孔941bに係合する第1係合片951aと第2係合片951bが形成されている。
【0045】
固定部材96は、第1部材961、第2部材962、熱融解性材963とで構成されている。
第1部材961は板状であって、一端部付近に支持基材93の第1保持部934が差し込まれる第1保持孔961aが設けられている。
第2部材962は第1部材961と同様に、板状であって一端部付近に第2係合片94の第2保持部944が差し込まれる第2保持孔962aが設けられており、他端部側に熱融解性材963が流し込まれる連結孔962bが設けられている。
熱融解性材963は、通常温度では固形であるが、一定の温度以上になると溶融する低融点合金であって、本実施例においては摂氏72度で溶解するものが用いられているが、摂氏120度で溶解するものを採用するなど、引戸の設置環境に合わせて適宜決定すればよい。
【0046】
そして、第1部材961の前記保持孔の反対側端部付近と、第2部材962の連結孔962b付近が連結孔962bから第1部材961部材が臨むように重ね合わされ、連結孔962bに、熱によって融解した熱融解性材963が流し込まれ、この状態で常温放置すると、熱融解性材963の温度低下と共に熱融解性材963が固形化し、第1部材961と第2部材962が固形化した熱融解性材963によって連結される。このようにして、固定部材96は使用形態とされる。
【0047】
前記のように形成された各部材を次のように組み合わせる。
支持基材93の支持座932a、932bと第2係合片94の支持軸受け941aが支持軸935によって連結されることによって、第2係合片94は上下方向に回動自在となる。
そして、付勢手段95のV字状のつながった側が、第2係合片94の支持軸受け941a側に位置し、第1アーム951と第2アーム952の第1係合片951aと第2係合片951bが、それぞれ、支持基材93の第1連結係合孔932cと第2係合片94の第2連結係合片941bに係合して取り付けられている。
このように付勢手段95を取り付けることによって、第2係合片94は支持基材93に対して、支持軸935を回動中心に下方に回動した状態で維持される。
【0048】
次に、第2係合片94を付勢手段95の付勢力に抗しながら下から押し上げ、第2係合片94の基部941が水平状態近くになったところで、固定部材96の第1保持孔961aを第1保持軸934aに差し込み、固定部材96の第2保持孔962aを第2係合片94の第2保持軸944aに差し込む。
【0049】
この状態で、第2係合片94には、付勢手段95の付勢力によって常に下向きに回動する力が加わることになるが、固定部材96で該回動を規制しているので、第2係合片94の基部941水平状態近くまま維持される。また、固定部材96の第1保持孔961aと第2保持孔962aに付勢手段95の付勢力が常に伝わるため、固定部材96は、第1保持部934、第2保持部944から容易に外れない。
さらに、第1保持軸934a、第2保持軸944aのそれぞれに、溝部934b、944bを設けることによって、なんらかの衝撃などで万が一、固定部材96が、ずれたとしても、溝部934bあるいは944bに固定部材96保持孔端部が落ちるので固定部材96が引っかかり、固定部材96が第1保持軸934a、第2保持軸944aから容易に外れないようにすることができる。
【0050】
第1係合部材10は、引戸6の引き残し部(戸先側端部)上面にネジ止め連結される断面L字形の連結金具101と、連結金具101の垂直面101aの引戸6の反対側に設けられたストッパー車102からなる。
ストッパー車102は、垂直面101aに対して垂直に立てられた基軸102aと基軸102aを中心軸に回転するように設けられたローラー体102bとからなる。
【0051】
本発明の開放ストッパー装置8は、上記のように構成され、引戸6が開放される時(
図9の矢印の方向)、第1係合部材10のローラー体102bが、第2係合部材9の案内傾斜面942bに圧接し(
図9の状態)、引戸6が全開状態に近づくにしたがって、ローラー体102bは案内傾斜面942bに沿って、案内傾斜面942bを押し下げ、第2係合体942を弾性変形させながら移動する(
図10の状態)。
そして、ローラー体102bが案内傾斜面942bを乗り越えた時、押し下げられていた基部941は、水平状態に復帰する(
図11の状態)。
この状態で、開放操作を止めると、引戸6が自閉し始めるが、ローラー体102bが保持傾斜面942aに当接するので開放状態は保持される。
当然のごとく、基部941の弾性変形力は、引戸6の自閉力によって、ローラー体102bが保持傾斜面942aを押し下ない強さに設定されている。
また、基部941の弾性変形力は、複数枚(図面では2枚)配設される第2係合体942の枚数の増減によって調整できる。
【0052】
この状態から引戸6が閉止する時は、引戸6を人の手によって閉止方向に移動させる。人の力によって、ローラー体102bが保持傾斜面942aを押し下げ開放状態が解除される。
【0053】
前述の開放保持状態で火災が起きた場合、火災によって、固定部材96の周辺温度が熱融解性材963の融解温度(実施例では摂氏72度)に達すると、熱融解性材963が融解するので、付勢手段95の付勢力によって、固定部材96の第1部材961と第2部材962が分断する。そして、第2係合片94が、第2係合片94の自重と付勢手段95の付勢力によって下方に押し下げられる(
図12の状態)。
その結果、保持傾斜面942aがローラー体102bを保持しなくなるので、開放状態が解除され、引戸6の自閉手段によって引戸6自動的に閉鎖し始める(
図13の状態、矢印は引戸の移動方向を示す)。
付勢手段95がなくとも、第2係合片94の自重あるいは錘を用いて第2係合片94を下方に押し下げることも可能である。ただし、付勢手段95を備えることによって、前述のように固定部材96の脱落を防止することが容易となるばかりか、第2係合片94の解除動作の安定化を図ることができる。
【0054】
また、
図15、
図16で示す第2実施例のように、第2係合片94を第1実施例に対して上下反転するように配設してもよい。この場合、前記の火災時には第2係合片94は上方に跳ね上がるので、付勢手段95の付勢力は、第一実施例に対して第2係合片94の自重分も持ち上げる付勢力を付加しておかなければならない。
【0055】
また、
図17で示す第3実施例のように、第1係合部材側に熱融解性材を設けて、第2係合部材側にストッパー車を設けてもよい。この場合、引戸6の自閉手段がレール取付材2の傾斜によるものでは引戸6の開放によって、第1係合部材がメンテナンスパネルの下面に接触することも考えられるので、引戸6の自閉手段は、ゼンマイ式、錘式などを使用し、引戸6が開閉によって上下動しないようにした方が好ましい。
【0057】
実施例において、第1係合部材10は、引戸6の戸先側の上面に取り付けられているが、引戸の上面に限るものではない。引戸の開閉に合わせて移動する移動部材に取り付ければよいので、例えば吊り下げ用金具に取り付けることも可能である。
引戸の移動装置を広く知られている戸車式にした場合、戸車を支持する金具に取り付けることもできる。
【0058】
また、第2係合部材9は、室内側中枠3の上端部出入口側内面に取り付けられているが、室内側中枠に限るものではない。レール部材5に取り付けるようにしてもよく、第2係合部材を引戸に開閉によって移動しない固定部材に取り付けるようにすればよい。
【0059】
開放ストッパーは、引戸が全開状態で保持される位置が一般的であるが、全開状態だけではなく、第2係合部材9を引戸の開放途中で開放状態を保持させる位置(例えば上端連結突片71下面)に設置し、半開開放ストッパーとして使用してもよい。
引戸の自閉手段は、ゼンマイ式、錘式など他の方法を用いても構わない。