(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095480
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】圧力部材のバルジ半径を制御する装置、方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
G03G15/20 530
【請求項の数】20
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-105406(P2013-105406)
(22)【出願日】2013年5月17日
(65)【公開番号】特開2013-257557(P2013-257557A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2016年5月16日
(31)【優先権主張番号】13/495,090
(32)【優先日】2012年6月13日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・ブラッドリー・ウィリアムズ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・マシュー・ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス・アーノルド・クラーク
【審査官】
飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−251432(JP,A)
【文献】
特開2004−191405(JP,A)
【文献】
特開2002−268436(JP,A)
【文献】
米国特許第07715772(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷に有用な装置であって、
第1圧力部材と、
定着ニップを定める領域において、前記第1圧力部材の表面に面している部分を有する定着ベルトと、
第2圧力部材であって、前記定着ニップにおいて、前記定着ベルトが前記第1圧力部材と前記第2圧力部材の間に引き込まれるように、前記定着ベルトの別の部分に面している第2圧力部材と、
変形ニップを定める領域において前記第1圧力部材と接触する部分を備え、この接触により前記第1圧力部材を変形させて前記定着ニップを制御する変形部材であって、前記第1圧力部材の変形の度合いが変わるさまざまな圧力を加える変形部材と、を含み、
前記変形部材は、前記定着ベルトが前記第1圧力部材と前記第2圧力部材との両方に接触しない領域を低減し又は省くように、前記第1圧力部材に前記圧力を加える、
装置。
【請求項2】
前記変形部材によってもたらされた変形は、所定の半径を有するバルジである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記変形部材は、ロールである、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記変形部材は、シューである、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記変形部材は、摩擦低減コーティングでコーティングされる、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記第1圧力部材は、変形の大きさを調整するように調節可能な内部圧力ロールであり、前記変形ニップは、プロセス方向において前記定着ニップの下流に位置決めされる、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記定着ベルトは、前記変形ニップによって定められる領域において前記第1圧力部材の表面に面している部分を有し、
前記変形ニップは、プロセス方向において前記定着ニップの下流に位置決めされ、
前記変形部材は、前記変形ニップにおいて前記定着ベルトの別の部分に面し、
前記定着ベルトは、前記変形ニップにおいて前記第1圧力部材と前記変形部材の間に引き込まれる、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第1圧力部材は、前記第2圧力部材の材料および前記変形部材の材料よりも軟らかい材料を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記変形部材は移動可能であり、前記装置は、
要求に応じて、前記変形部材に働きかけて前記変形の度合いを変えるように構成される変形制御エレメントをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記変形部材は、メンテナンスコンディショナを用いて前記定着ベルトを処理するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
印刷プロセスにおいて基板を剥離する方法であって、
印刷に有用な装置内に定着ニップを定めるステップであって、前記装置は、
第1圧力部材と、
前記定着ニップにおいて、前記第1圧力部材の表面に面している部分を有する定着ベルトと、
第2圧力部材であって、前記定着ニップにおいて、前記定着ベルトが前記第1圧力部材と前記第2圧力部材の間に引き込まれるように、前記定着ベルトの別の部分に面している第2圧力部材と、
変形ニップを定める領域において前記第1圧力部材と接触する部分を備え、この接触により前記第1圧力部材を変形させて前記定着ニップを制御する変形部材と、を含む装置である、定めるステップと、
前記第1圧力部材内に所定の変形を引き起こすように、少なくとも部分的に前記変形部材に働きかけてさまざまな圧力を加えさせるステップと、
前記定着ベルトから前記基板を少なくとも部分的に剥離させるステップと、を含み、
前記圧力を加えさせるステップにおいて、前記変形部材は、前記定着ベルトが前記第1圧力部材と前記第2圧力部材との両方に接触しない領域を低減し又は省くように、前記第1圧力部材に前記圧力を加える、
方法。
【請求項12】
前記変形部材によってもたらされた変形は、所定の半径を有するバルジである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記変形部材は、ロールである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記変形部材は、シューである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1圧力部材は、変形の大きさを調節するように調整可能な内部圧力ロールであり、前記変形ニップは、プロセス方向において前記定着ニップの下流に位置決めされる、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記定着ベルトは、前記変形ニップを定める領域において前記第1圧力部材の表面に面している部分を有し、
前記変形ニップは、プロセス方向において前記定着ニップの下流に位置決めされ、
前記変形部材は、前記変形ニップにおいて前記定着ベルトの別の部分に面し、
前記定着ベルトは、前記変形ニップにおいて前記第1圧力部材と前記変形部材の間に引き込まれる、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記第1圧力部材は、前記第2圧力部材の材料および前記変形部材の材料よりも軟らかい材料を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記変形部材は移動可能であり、前記方法は、
変形制御エレメントの要求に応じて、前記変形を少なくとも部分的に変化させるステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
メンテナンスコンディショナを用いて前記定着ベルトを少なくとも部分的に前記変形部材に処理させるステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
基板を剥離するように構成された、印刷に有用なシステムであって、
第1圧力部材と、
定着ニップにおいて、前記第1圧力部材の表面に面している部分を有する定着ベルトと、
第2圧力部材であって、前記定着ニップにおいて、前記定着ベルトが前記第1圧力部材と前記第2圧力部材の間に引き込まれるように、前記定着ベルトの別の部分に面している第2圧力部材と、
変形ニップを定める領域において前記第1圧力部材と接触する部分を備え、この接触により前記第1圧力部材を変形させて前記定着ニップを制御する変形部材であって、前記第1圧力部材の変形の度合いが変わるさまざまな圧力を加える変形部材と、を含み、
前記変形部材は、前記定着ベルトが前記第1圧力部材と前記第2圧力部材との両方に接触しない領域を低減し又は省くように、前記第1圧力部材に前記圧力を加え、
前記変形ニップは、プロセス方向において前記定着ニップの下流に位置決めされ、前記変形部材は、摩擦低減コーティングでコーティングされ、
前記基板は、プロセス方向における前記定着ニップの下流の位置において、前記定着ベルトからはがされる、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷に有用なベルトロール定着装置、方法およびシステムに関する。具体的には本開示は、定着ニップにおいて変形を制御することによってニップ圧力プロファイルを維持し、効果的な剥離もまたもたらすベルトロール定着器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のベルトロール定着器は、定着ベルトを引き込む内部圧力ロール(IPR)、および外部圧力ロール(EPR)を含む。従来、定着ニップは、加圧下におけるEPRとIPRの間の領域によって定められる。従来のベルトロール定着器は、硬いIPRおよび軟らかいEPRを利用して、転写ステーションからちょうどトナーを受け取ったところの基板に、画像を定着するための定着ニップを形成する。関連技術のベルトロール定着器アーキテクチャの一例として、
図1を参照せよ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のベルトロール定着器は、しばしば剥離シューを有し、剥離シューを用いて定着ベルトの内面に荷重をかけ、それによってEPRとIPRの間の加圧下にある領域を過ぎた領域において効果的な定着ニップ圧力を発生させる。剥離シューが、効果的な定着ニップ圧力を発生させるのに役立つことができるものの、剥離シューを備えた従来のIPRおよびEPRアーキテクチャを利用するベルトロール定着器は、依然としてしばしば、光沢関連画像品質(IQ)欠陥、剥離性能、およびプロセス許容度不足などの、これらには限定されない画像関連欠陥に直面する。これらの問題は、定着ニップにおいて剥離シューが原因で生じる圧力の変化によってもたらされる。剥離シューは、定着ベルト上で摩耗を経験またはもたらすことがあり、それによって頻繁な修理および/または差し換えを必要とすることがあり、この摩耗が原因で、メンテナンス費用は剥離シューの存在で増加することもある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
印刷用の装置、方法およびシステムが開示される。種々の典型的な実施形態は、定着ニップにおいて少なくとも変形を制御することによって、効果的なニップ圧力プロファイルを維持し、それによってベルトロール定着器の画像品質性能を改善する。いくつかの実施形態において、変形は、剥離シューの代わりに設けることができる。
【0005】
一実施形態によれば、印刷に有用な装置は、第1圧力部材を含む。本装置は、定着ニップを定める領域において、第1圧力部材の表面に面している部分を有する定着ベルトをさらに含む。本装置は、定着ニップにおいて、定着ベルトが第1圧力部材と第2圧力部材の間に引き込まれるように、定着ベルトのもう1つの部分に面している第2圧力部材も含む。本装置は、第1圧力部材を変形させるように構成された変形部材をさらに加えて含む。
【0006】
別の一実施形態によれば、定着ベルトから基板を剥離する方法は、第1圧力部材と、定着ニップにおいて、第1圧力部材の表面に面している部分を有する定着ベルトと、定着ニップにおいて、定着ベルトが第1圧力部材と第2圧力部材の間に引き込まれるように、定着ベルトのもう1つの部分に面している第2圧力部材と、第1圧力部材を変形させるように構成された変形部材とを含む装置内に定着ニップを定めるステップを含む。本方法は、第1圧力部材内で所定の変形を少なくとも部分的に変形部材に引き起こさせるステップをさらに含む。本方法は、定着ベルトから基板を少なくとも部分的に剥離させるステップも含む。
【0007】
別の一実施形態によれば、基板を剥離するように構成された、印刷に有用なシステムは、第1圧力部材を含む。本システムは、定着ニップにおいて、第1圧力部材の表面に面している部分を有する定着ベルトも含む。本システムは、定着ニップにおいて、定着ベルトが第1圧力部材と第2圧力部材の間に引き込まれるように、定着ベルトのもう1つの部分に面している第2圧力部材をさらに含む。本システムは、第1圧力部材を変形させるように構成された変形部材をさらに加えて含む。基板は、プロセス方向における定着ニップの下流の位置で、定着ベルトから剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、関連技術のベルトロール定着器の図式的側面図である。
【
図2】
図2は、関連技術のベルトロール定着器の定着ニップの図式的側面図である。
【
図3】
図3は、例示的な一実施形態によって、変形増強部材と接触する圧力部材を有するベルトロール定着器の図式的側面図である。
【
図4】
図4は、例示的な一実施形態によって、圧力部材と変形増強部材の間に引き込まれた定着ベルトを有するベルトロール定着器の図式的側面図である。
【
図5】
図5は、例示的な一実施形態によって、シューである変形増強部材を有するベルトロール定着器の図式的側面図である。
【
図6】
図6は、例示的な一実施形態によって、定着ベルトから基板を剥離するプロセスのフローチャートである。
【
図7】
図7は、例示的な一実施形態を実装するのに用いることができるチップセットの図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態の装置およびシステムは、ベルトロール定着器を用いて基板にマーキング材料を定着することによって媒体上に画像を印刷するシステムを含むことができる。
【0010】
図1は、関連技術のベルトロール定着器100の一例の図式的側面図を図示する。従来のベルトロール定着器は、定着ベルト103を引き込む硬いIPR101、および軟らかいEPR105を利用する。IPR101、定着ベルト103およびEPR105は、転写ステーションからちょうどトナーを受け取ったところの基板に画像を定着するための定着ニップ107を形成する。
【0011】
基板は、トナーなどのマーキング材料を堆積できる、任意の形状の媒体とすることができる。基板は、ベルトロール定着器100によって、定着ニップ107の中をプロセス方向にニップ入口からニップ出口へ供給することができる。次いでベルトロール定着器100は、定着ニップ107において、例えば圧力および熱を加えて、基板にマーキング材料を定着するように構成することができる。
【0012】
定着ベルト103は、ベルトロール定着器100の1つ以上の部品によって引き込むことができる。例えば、定着ベルト103は、第1面および第2面を有することができる。第1面は、例えばIPR101と接触する内面とすることができ、ベルトロール定着器100の他の部材であって定着ベルト103を引き込むことができる部材と接触することもできる。第2面は、定着ニップ107の中を通過する基板と接触することができる。
【0013】
図1に図示したような従来のIPRおよびEPRアーキテクチャを利用するベルトロール定着器は、しばしば、光沢関連IQ欠陥、剥離性能、およびプロセス許容度不足などの、これらには限定されない画像関連欠陥に直面する。これらの問題は、IPRおよび/またはEPRエラストマーエラストマーバルジ(膨らみ)、温度変化、シュー配置、および内部から外部へのニップ力学などの変数によってもたらされた、定着ニップ形状における変化に起因している可能性がある。
【0014】
上述した画像関連欠陥の改善を支援するために、
図1に図示した関連技術のベルトロール定着器100は、剥離シュー109を用いて、定着ベルト103に荷重をかけ、定着ベルト103から基板を剥離するのを促進する。ベルトロール定着器100は、エアーナイフ111も用いて、定着ベルト103から基板を剥離するのを促進する。用紙は、定着ニップ107の中を通過後、定着ベルト103に貼り付く傾向がある。剥離シュー109は、用紙が定着ベルト103から離れる方へはがすように、小さい(<5mm)剥離半径を形成する。しかしながら、定着ベルト103が、剥離シュー109の外面側の周りに巻き付くので、関連技術のベルトロール定着器100を設計すると、定着ニップ107は3つの異なるゾーンを有することになる。これらの3つの異なるゾーンによって、定着ニップ107の全体を通してさまざまなニップ圧力が生じ、剥離性能の一貫性がなくなり、順繰りに上述した画像関連欠陥がもたらされる。剥離シュー109が存在すると、定着ベルト103などの、ベルトロール定着器100の種々の部品が摩耗する可能性があるので、メンテナンス費用も増加する。したがってこれらの特徴によって、頻繁な修理および/または差し換えが必要となることがある。剥離シュー109は、それ自体でも摩耗し、修理および/または差し換えが同様に必要となることがある。
【0015】
図2は、上述したように、定着ニップ107の形状の図式的側面図を図示する。定着ニップ107は、従来の2重ロールアーキテクチャおよび剥離シュー109の存在によってもたらされた3つのゾーンに分割される。第1に、IPR101とEPR105の干渉により発生した領域によって、主要な高圧力の定着ニップ(N1)が定められる。第2に、定着ベルト103がEPR105と接触するが、IPR101と接触しない領域によって、低圧力の接触ニップ(N2)が定められる。第3に、N2と剥離シュー109の間の領域であって、定着ベルト103がIPR101ともEPR105とも接触しない領域によって、非接触の径間(N3)が定められる。
【0016】
この3つのニップ形状によって、定着ニップ107の全体を通してさまざまなニップ圧力が生じ、剥離性能の一貫性がなくなり、順繰りに上述した画像関連欠陥がもたらされる。例えば、支持されていない非接触径間N3は、画像光沢欠陥の原因のうちの1つの可能性がある。基板の先頭エッジがN2の中を進みながら、例えば重量級シートなどの基板は、ベルト張力だけが下向き力を生み出す状態のEPR105の形状には、しばしば適合しない(N2内の圧力は、例えば10psi未満とすることができる)。本例では、定着ベルト103がもはやIPR101と接触しないので、下向き力は、N2内のベルト張力によって生み出されるだけである。シートのはり強度が原因で、ゾーンN2においてシートの分離およびその後のベルトへの再付着が発生することがあり、「つらら」と呼ばれる光沢欠陥が生じることになる。
【0017】
さらに加えて、例えば、画像の濃度および配置に依存して、基板は、非接触径間N3の中を進みながら、定着ベルト103またはEPR105に貼り付くことがある。基板は、非接触径間N3内で定着ベルト103から分離したり同ベルトに再度接したりして、「再貼り付き」として知られている画像品質欠陥がもたらされることになる。
【0018】
剥離シュー109を方向付けして、N2領域およびN3領域を省くことは困難である。上述したようにN2領域およびN3領域は、定着ニップ107内の圧力の変化によってもたらされる。剥離シュー109が、剥離性能を最適化しかつ画像欠陥を最小化するように位置決めすることができるものの、IPR101、EPR105および/または定着ベルト103において発生することがある熱膨張、ならびに定着ニップ107を過ぎたIPR101および/またはEPR105において発生する制御不良のバルジのために、その位置決めを完璧にするのは困難である。剥離シュー109を完璧に配置するのは、IPR101、EPR105、定着ベルト103および剥離シュー109のうちのいずれかに発生することがある種々の摩耗、ならびにIPR101および/またはEPR105におけるデュロメータ(硬度計)の変化のために、さらに困難である。
【0019】
N1とN2の間で発生する圧力の変化にもかかわらず、一定の基板は、長いN2領域においてよく機能する。N2領域を短くし過ぎると、剥離問題がもたらされることがあり、上述した画像品質問題のうちのいくつか、および他の問題が生じることになる。したがって、ニップ形状を制御することによって、N3領域を効果的にゼロに追い込みながら、剥離シュー109を必要とせずに、信頼性のある剥離性能を提供する定着システムの必要性がある。
【0020】
図3は、一実施形態によって、画像品質および剥離性能に影響するようにニップ形状を制御するベルトロール定着器300の図式的側面図を図示する。以下でより詳細に説明されるように、ニップ形状は、カスタマイズ可能な剥離半径を形成する圧力部材内で、変形を引き起こすことによって制御される。
【0021】
ベルトロール定着器300は、定着ベルト303を引き込むIPR301などの圧力部材を含む。本例において、IPR301は、その縦軸の周りを回転可能なドラムまたはロールとすることができる。IPR301は、任意のエラストマー材料、ゴム、ポリマーおよび/または金属を含むことができる。ベルトロール定着器300は、EPR305などのもう1つの圧力部材をさらに含む。EPR305は、任意のエラストマー材料、ゴム、ポリマー、および/または金属を含むことができる。同等の圧力の下で、IPR301が変形させるように構成できる変形量以下の量を、EPR305は、変形させるように構成することができる。少なくとも一実施形態において、IPR301は、所定の圧力の下で変形するように構成することができ、一方、EPR305は、同一の所定の圧力の下で変形しない状態のままであるように構成することができる。
【0022】
IPR301、定着ベルト303、およびEPR305は、IPR301および定着ベルト303が互いに接触し、かつEPR305および定着ベルト303が互いに接触する領域において、定着ニップ307を定める。定着ニップ307において、IPR301は、変形するように構成することができ、それによってIPR301の外面がEPR305の外面の形状に適合するようにする。次いで、定着ベルトがIPR301およびEPR305と接触する領域において、定着ニップ307の全体を通して、圧力を一様に加えることができる。したがって、この領域において、定着ベルト303および定着ニップ307の中をプロセス方向に同様に通過することができる任意の媒体に、一様な圧力を加えることができる。この領域は、少なくとも、
図2に関して上述したN1領域に一致すると判断することができる。
【0023】
例示的な一実施形態によって、ベルトロール定着器300は、縦軸の周りを回転してIPR301の変形310を引き起こすことができるバルジ増強ロール309などの、変形増強部材を含むことができる。IPR301は、本例において、半径Rを有する外面302を有するロールである。
図2に関して上述したN3領域を低減しまたは省くために、IPR301の外面302の半径Rは、IPR301の外面302が、プロセス方向におけるバルジ増強ロール309の上流に形成された剥離半径R2を有するように、変形310によって改変される。種々の実施形態によって、剥離半径R2の大きさは、半径Rの大きさ未満とすることができる。1つ以上の実施形態において、半径R2は、例えば5mm未満とすることができる。変形をもたらすために、バルジ増強ロール309の半径R3は、IPR301の半径Rよりも小さい、等しい、または大きいとすることができる。半径の差異は、例えば、変形310の望ましいサイズ、結果的な半径R2の大きさ、圧力の制約、およびベルトロール定着器300内のスペースの制約に依存することがある。
【0024】
種々の実施形態によって、バルジ増強ロール309は、任意のエラストマー材料、ゴム、ポリマーおよび/または金属で構成することができる。バルジ増強ロール309は、変形310を引き起こすために、IPR301が、所定の圧力の下で変形する量未満の量だけ変形するように、またはまったく変形しないように構成することができる。変形310をもたらすとき、バルジ増強ロール309がIPR301と接触する領域は、変形ニップ308を定める。
【0025】
種々の実施形態によって、バルジ増強ロール309およびIPR301は、例えばIPR301およびバルジ増強ロール309の熱膨張によってもたらされた任意の変化を除いて、変形310の度合いが一定であるような定位置にあるとすることができる。
【0026】
種々の例示的な実施形態によって、バルジ増強ロール309は、代替策として、要求に応じて変形310の度合い、すなわち剥離半径R2の大きさを制御するために、移動可能とすることができる。剥離半径R2の大きさは、例えば、基板タイプ、基板重量、および/または温度および湿度などの天気状態に基づいて変化することもあるベルトロール定着器300の剥離性能に、影響を及ぼすことができる。したがって、変形制御部材311は、バルジ増強ロール309を例えば第1位置から第2位置へ変化させて、変形310の度合いを改変するように変形ニップ308内にさまざまな圧力を加えることができる。
【0027】
変形制御部材311は、例えば、変形ニップ308において圧力をバルジ増強ロール309に加えさせるばね作動システム、変形ニップ308において圧力をバルジ増強ロール309に加えさせる圧縮空気デバイス、または変形ニップ308において所定の圧力をバルジ増強ロール309が加えることを可能にする任意の他のデバイスのうちのいずれかとすることができる。
【0028】
さらに加えて、バルジ増強ロール309の位置の変化は、種々のベルトサイズの定着ベルト303に適応することも可能にすることができる。例えば、より厚いまたはより薄いベルトは、種々の印刷ジョブ要件、プリンタ速度などのさまざまな性能要件に対して、またはより重いもしくはより軽い基板に適応させるために、ならびにIPR301および/もしくはEPR305などのベルトロール定着器300の部品の熱膨張の原因となるために、ベルトロール定着器300内で用いることができる。IPR301の膨張に適応させるために、ベルトロール定着器300において、より薄い定着ベルト303を用いて、所定の剥離半径R2を維持するのに役立つことができる。しかしながら、ベルトサイズが変化することがあり、かつ可用性が制限される可能性があるので、変形310の大きさは、利用可能なベルトサイズにかかわらず所定の剥離半径R2を維持することができるように、変形制御部材311によって制御することもできる。
【0029】
さらに加えて、変形310の大きさを最適な剥離半径R2に改変すると、定着ベルト303の必要な厚さおよびその上の任意のコーティングを低減することが可能となる。このように厚さが低減されると、画像の品質および一貫性を改善することなどの、ベルトロール定着器300の性能に効果を及ぼすことができる。例えば、コーティングをより薄くすると、定着ニップ307内の圧力、または定着ニップ307内で定着ベルト303が経験しうる任意の熱膨張の結果として、定着ベルト303に起こりうる変形量が、効果的に低減されることになる。
【0030】
代替策としては、または移動可能なバルジ増強ロール309に加えて、IPR301は、変形ニップ308において所定の圧力を加えるために上述したやり方と同様に、変形310の大きさを調整するベルトロール定着器300の他の部品といっしょに、調整可能とすることができる。
【0031】
1つ以上の実施形態において、バルジ増強ロール309は、定着ベルト303と接触するようにまたは接触しないように構成することができる。種々の実施形態において、バルジ増強ロール309は、さらに加えて、IPR301および定着ベルト303のうちの1つ以上をクリーニングしならびに/または調節することなどのメンテナンス機能を実行するように構成することができる。
【0032】
1つ以上の実施形態において、剥離性能を改善するために、変形310が上述した領域N3を低減しまたは省くように制御されて、基板317が最適な瞬間に自然に剥離することができるものの、ベルトロール定着器300は、エアーナイフ313および出口バッフル315をさらに含み、定着ベルト303からの基板317の剥離を促進することができる。出口バッフル315は、定着ニップ307の中をプロセス方向に前進しながら、基板をガイドすることもできる。例えば万一、基板317が定着ベルト303に貼り付いたならば、エアーナイフ313は、基板317を定着ベルトから分離させることができる。さらに、出口バッフル315は、定着ベルト303からの早期のまたは過剰な分離を防止し、それによって少なくとも上述した画像欠陥の低減を促進することができる。
【0033】
図4は、別の一実施形態によって、
図3に関連して上述したベルトロール定着器300の図式的側面図を図示する。ベルトロール定着器300は、本例において、定着ベルト303をIPR301とバルジ増強ロール309の間の変形ニップ308の中に引き込む。この領域内で定着ベルト303を通過させることができ、したがって例えばベルトロール定着器300の内部におけるスペースを節約することができる。さらに上述したように、バルジ増強ロール309は、IPR301と接触する定着ベルト303の一部分と反対側(すなわち定着ベルト303の外面)にある定着ベルト303の一部分と接触するので、定着ベルト303の外面に、オイルまたは他の潤滑剤などのメンテナンスコンディショナを加えるように構成することができ、定着ベルトの外面用のクリーニングデバイスとして機能することもできる。
【0034】
図5は、別の一実施形態によって、
図3に関連して上述したベルトロール定着器300の図式的側面図を図示する。ベルトロール定着器300は、本例において、バルジ増強ロール309をバルジ増強シュー509で差し換える。バルジ増強シュー509は、上述したバルジ増強ロール309と同様に、変形310をもたらすために、固定するまたは移動可能とすることができる。バルジ増強シュー509は、エラストマー材料、ゴム、ポリマー、金属、または任意のこれらの組み合わせのうちのいずれかを含むことができる。バルジ増強シュー509は、変形ニップ308をIPR301と形成し、かつIPR301と直接に接触するので、Teflonなどの摩擦抵抗性コーティングでコーティングして、IPR301および/またはバルジ増強シュー509の摩耗を低減することができる。
【0035】
本例において、定着ベルト303は、変形ニップ308の中を通過しないように、トラッキングされる。これは、バルジ増強シュー509が、バルジ増強ロール309のように縦軸の周りを回転するようにはなっていないためである。バルジ増強シュー509が回転しないので、これは、応力および/または摩耗を定着ベルト303にもたらさないようにすることができる。しかしながら、バルジ増強シュー上の摩擦抵抗性コーティングを考慮して、定着ベルト303は、任意選択でIPR301とバルジ増強シュー509の間に引き込まれて、ベルトロール定着器300の内部におけるスペースを節約するとともに、上述したように定着ベルトをクリーニングしまたはメンテナンスコンディショナを提供することもできる。
【0036】
図6は、一実施形態によって、定着ベルト303から基板317を剥離するプロセスのフローチャートである。一実施形態において、ベルトロール定着器300は、例えば、
図7に示されるようにプロセッサおよびメモリを含むチップセットに実装された制御モジュールによって、プロセス600を実行する。ステップ601において、ベルトロール定着器300は、ベルトロール定着器300内に定着ニップ307を定める。ベルトロール定着器300は、例えば、IPR301およびIPR301によって引き込まれる定着ベルト303などの圧力部材を有することができる。ベルトロール定着器300において、定着ベルト303の一部分は、定着ニップ307におけるIPR301の表面に面している。ベルトロール定着器300は、例えば、定着ニップ307においてIPR301の表面に面している定着ベルト303の部分以外の、定着ベルト303の部分に面している部分を有するEPR305などのもう1つの圧力部材も有することができる。したがって、定着ベルト303は、IPR301とEPR305の間に引き込むことができる。ベルトロール定着器300は、例えば、IPR301を変形させるように構成された、バルジ増強ロール309などの変形部材も含み、
図2において上述したN3領域を低減しまたは省くために、IPR301内に変形を引き起こすことができる。
【0037】
プロセスは、ステップ603へ続き、同ステップにおいてベルトロール定着器300は、IPR301内で変形310を少なくとも部分的にバルジ増強ロール309に引き起こさせる。
【0038】
次にステップ605において、ベルトロール定着器300は、任意選択で、メンテナンスコンディショナを用いて定着ベルト303を少なくとも部分的にバルジ増強ロール309に処理させおよび/または定着ベルト303を少なくとも部分的にバルジ増強ロール309にクリーニングさせる。次いでステップ607において、任意選択で、変形ニップ308におけるIPR301に向かう方向のバルジ増強ロール309上に、所定の圧力を変形制御部材311に加えさせることができる。所定の圧力は、変形310の大きさに基づいて、選択可能な剥離半径R2を可能にするために、カスタマイズ可能な量とすることができる。次いでステップ609において、ベルトロール定着器300は、定着ベルト303から基板317を剥離する。ベルトロール定着器300は、エアーナイフ313を用いて、剥離を生じさせることができる。
【0039】
図7は、本発明の一実施形態を実装することができる、チップセットまたはチップ700を図示する。チップセット700は、本明細書で説明したようにバルジ半径の大きさを制御するようにプログラミングされ、例えば、1つ以上の物理的なパッケージ(例えばチップ)として組み込まれたプロセッサおよびメモリ部品を含む。例として、物理的パッケージは、1つ以上の材料から成る配列、部品、および/または構造組立品(例えばベースボード)上の配線を含み、物理的強度、サイズの保全、および/または電気的相互作用の制限などの1つ以上の特徴を提供する。一部の実施形態において、チップセット700は、単一のチップ内に実装できるようにもくろまれる。一部の実施形態において、チップセットまたはチップ700は、単一の「システムオンチップ」として実装できるようにさらにもくろまれる。一部の実施形態において、個々のASICは例えば使用せずに、本明細書で開示されるようなすべての機能が1つのプロセッサまたは複数のプロセッサによって実行することになるようにさらにもくろまれる。チップセットまたはチップ700、またはこれらの一部分は、バルジ半径の大きさを制御する1つ以上のステップを実行する一例の手段を構成する。
【0040】
一実施形態において、チップセットまたはチップ700は、チップセット700の部品間で情報を通過させるバス701などの通信機構を含む。プロセッサ703は、バス701への接続性を有し、命令を実行して、例えばメモリ705に格納された情報を処理する。プロセッサ703は、各コアが独立に実行するように構成された、1つ以上の処理コアを含むことができる。マルチ・コア・プロセッサは、単一の物理的パッケージの内部で多重処理を可能にする。マルチ・コア・プロセッサには、2つの、4つの、8つの、またはより多数の処理コアを含む例がある。代替策としてはまたは加えて、プロセッサ703は、バス701を経由してタンデムに構成された1つ以上のマイクロプロセッサを含み、命令の独立した実行、パイプライン処理、およびマルチスレッドを可能にすることができる。プロセッサ703は、1つ以上のデジタル信号処理プロセッサ(DSP)707または1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)709などの、一定の処理機能および処理タスクを実行する1つ以上の専門部品も伴うことができる。DSP707は、典型的には、プロセッサ703とは独立して、実在の信号(例えば、音声)をリアルタイムで処理するように構成される。同様に、ASIC709は、より汎用のプロセッサによっては容易に実行されない専門機能を実行するように構成することができる。本明細書で説明される機能の実行を促進する他の専門部品は、1つ以上のフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、1つ以上のコントローラ、または他の1つ以上の専用コンピュータチップを含むことができる。
【0041】
一実施形態において、チップセットまたはチップ700は、単なる1つ以上のプロセッサ、ならびにこの1つ以上のプロセッサをサポートするおよび/もしくは同プロセッサに関連するならびに/または同プロセッサ用の、何らかのソフトウェアおよび/もしくはファームウェアを含む。
【0042】
プロセッサ703および付随の部品は、バス701を経由してメモリ705への接続性を有する。メモリ705は、動的メモリ(揮発性メモリ)(例えば、RAM、磁気ディスク、書き込み可能光ディスクなど)および静的メモリ(不揮発性メモリ)(例えば、ROM、CD−ROMなど)を両方とも含み、実行されると本明細書で説明された、バルジ半径の大きさを制御するステップを実行する、実行可能な命令を格納する。メモリ705は、本明細書で説明されたステップの実行と関連した、または同実行によって発生した任意のデータも格納する。