特許第6095481号(P6095481)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095481
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】風呂給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/00 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
   F24H1/00 602B
   F24H1/00 602G
   F24H1/00 602P
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-105516(P2013-105516)
(22)【出願日】2013年5月17日
(65)【公開番号】特開2014-228151(P2014-228151A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺西 章吾
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−283557(JP,A)
【文献】 特開2002−005513(JP,A)
【文献】 特開2002−206800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽の側壁に形成された循環口に接続され、循環ポンプにより該浴槽の湯水を循環させる循環路と、該循環路における水流の有無を検出する水流検出手段と、該循環路を流れる湯水を加熱する第1の加熱手段と、前記循環路に接続されて前記浴槽に湯水を供給可能とする給水路と、該給水路を開閉する給水弁と、前記給水路の通水量を検出する流量検出手段と、前記給水路を流れる水を加熱する第2の加熱手段と、前記給水路を介して浴槽に供給する湯水の量を設定する湯張り量設定手段と、前記給水路を介して浴槽に供給する湯水の温度を設定する湯張り温度設定手段と、前記湯張り量設定手段による設定湯張り量及び前記湯張り温度設定手段による設定湯張り温度に基づき前記給水弁及び前記第2の加熱手段を制御して、前記浴槽に湯水を供給する湯張り動作を実行する自動湯張り制御手段と、前記給水弁を閉弁させた状態で前記循環ポンプを駆動し、前記水流検出手段により検出される水流の有無に基づいて前記浴槽に設けられている排水栓の外れの有無を判定する排水栓外れ判定手段と、使用者の操作により該自動湯張り制御手段に湯張り動作を指示する自動湯張り指示手段とを備え、
前記自動湯張り制御手段は、湯張り動作を開始したとき、前記設定湯張り温度に加熱された湯水を、前記設定湯張り量よりも少なく且つ前記浴槽の循環口よりも上方の水位となる第1の所定水量となるまで供給して前記排水栓外れ判定手段により前記排水栓の外れの有無を判定し、該排水栓外れ判定手段が排水栓の外れ有りと判定した場合には、湯張り動作を中止し、該排水栓外れ判定手段が排水栓の外れ無しと判定した場合には、前記給水弁を開弁させて湯張り動作を継続することにより前記設定湯張り温度に加熱された湯水を前記設定湯張り量になるまで供給する風呂給湯装置において、
前記自動湯張り制御手段は、前記排水栓外れ判定手段が排水栓の外れ有りと判定したことにより湯張り動作を中止した後に、前記自動湯張りスイッチにより湯張り動作が指示されたとき、前記設定湯張り量から前記第1の所定水量を差し引くことにより求めた水量以下の水量である第2の所定水量の湯水を浴槽に供給し、更に、前記循環ポンプを駆動しつつ前記第1の加熱手段により前記循環路を流れる浴槽の湯水を加熱して、このとき浴槽の湯水に与えられた熱量と浴槽の湯水の温度上昇量とに基づいて浴槽の残水量を求め、この残水量を前記設定湯張り量から差し引くことにより求めた第3の所定水量の湯水を浴槽に供給することを特徴とする風呂給湯装置。
【請求項2】
請求項1記載の風呂給湯装置において、
前記自動湯張り制御手段は、前記湯張り動作を中止した後に前記第2の所定水量の湯水を前記浴槽に供給するとき、該第2の所定水量の湯水を前記設定湯張り温度より低い温度で供給し、前記浴槽の前記残水量を求めるとき、浴槽の湯水の温度を前記設定湯張り温度に上昇させ、前記第3の所定水量の湯水を前記浴槽に供給するとき、該第3の所定水量の湯水を前記設定湯張り温度で供給することを特徴とする風呂給湯装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の風呂給湯装置において、
前記自動湯張り制御手段は、前記湯張り動作を中止した後に前記第2の所定水量の湯水を前記浴槽に供給したとき、前記残水量を求めるための浴槽の湯水の加熱を開始するに先立って、前記排水栓外れ判定手段により前記排水栓の外れの有無を判定し、該排水栓外れ判定手段が排水栓の外れ有りと判定したとき、再度前記第1の所定水量の湯水を浴槽に供給したところで前記排水栓外れ判定手段により前記排水栓の外れの有無を判定し、該排水栓外れ判定手段が排水栓の外れ有りと判定した場合に、湯張り動作を中止し、排水栓の外れ無しと判定した場合に、前記残水量を求めるための浴槽の湯水の加熱を開始することを特徴とする風呂給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯張り機能を有する風呂給湯装置に関し、特に、浴槽の湯張り動作に際して浴槽の排水栓の外れを検出することが可能な風呂給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽の湯張りや、沸き上げ等を自動で行なう風呂給湯装置は、浴槽の側壁に形成された循環口に循環路が接続されている。この循環路には、浴槽の湯水を該循環路を介して循環させるための循環ポンプ、循環路の通水の有無に応じてON/OFFする水流スイッチ、及び、該循環路を循環する浴槽の湯水を加熱するための加熱手段(熱交換器及びガスバーナ等)が設けられている。
【0003】
更に、循環路には、浴槽に給水(湯を含む)するための給水路が接続され、給水路には、給水路の通水量を検出する流量センサが設けられている。そして、湯張りを行うときには、使用者がリモコンにおいて湯張り量を設定し、リモコンの自動湯張り指示手段である自動湯張りスイッチを操作することで、流量センサの検出水量が設定湯張り量となるように、給水路からの湯水が循環路を介して浴槽に供給される。
【0004】
ところで、浴槽には、入浴に使用した湯を排水するための排水口と、これを閉じる排水栓とが設けられている。そして、浴槽に湯張りを行うときには、排水栓により排水口を閉じておく必要がある。しかし、使用者が排水口を閉じておくのを忘れる等により、排水栓が外れた状態で湯張りが行われると、浴槽に供給した湯水が排水されて無駄になる不都合がある。
【0005】
そこで、従来、この種の風呂給湯装置においては、湯張りを行う際に、浴槽が備える排水栓の外れの有無を判定する動作を行うものが知られている(下記特許文献1参照)。このものでは、排水栓の外れの有無を判定するために、次の動作を行う。
【0006】
即ち、湯張り動作を開始したとき、先ず、浴槽の循環口以上の水位(循環路における循環が可能な水位)となる量の湯水を浴槽に供給したところで、給水を停止させる。このときの湯水の供給量は、試運転等により当該浴槽に給水して予め採取したものである。
【0007】
次いで、循環路の循環ポンプを作動させる。このとき、浴槽の排水栓が外れていなければ、浴槽から循環口を経て循環路に湯水が流れるので、水流スイッチがON状態となり、このことから排水栓が外れていないと判定する。そして、排水栓が外れていないと判定された場合には、給水停止状態を解除して湯張りを続行させる。
【0008】
一方、使用者が排水栓を閉め忘れる等により、浴槽の排水栓が外れており、浴槽の水位が循環口の下方まで減少していた場合には、循環路の循環ポンプを作動させても循環路に湯水が流れることがないため、水流スイッチがOFF状態となる。これに基づき排水栓が外れていると判定し、湯張りを中止させ、排水栓が外れている旨の報知を行う。そして、この報知を受けた使用者は、外れている状態の排水栓を閉め直し、自動湯張りスイッチの操作により再度湯張りを開始することで、前記設定湯張り量による浴槽の湯張りを完了させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−283557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来の方法によって排水栓の外れが判定されたとき、排水栓の状態として、排水口から完全に外れている場合と、排水口を不完全に閉じている場合とが考えられる。排水栓による閉栓が不完全であった場合に、使用者が上記報知に促されて排水栓を閉め直したときには、循環口より低い水位の湯水が浴槽に残留している場合がある。
【0011】
しかし、浴槽に湯水が残留した状態で再度湯張りを開始すると、浴槽においては、残留している湯水に前記設定湯張り量の湯水が追加して供給される。このため、湯張りが完了したときの浴槽の湯水は、前記設定湯張り量を超えてしまい、場合によっては浴槽から湯水が溢れて無駄になるおそれがある。
【0012】
上記の点に鑑み、本発明は、浴槽の排水栓の外れ判定により排水栓が閉め直された後に湯張りが実行された場合に、浴槽に供給する湯水の無駄を抑えた湯張りが行える風呂給湯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するために、本発明は、浴槽の側壁に形成された循環口に接続され、循環ポンプにより該浴槽の湯水を循環させる循環路と、該循環路における水流の有無を検出する水流検出手段と、該循環路を流れる湯水を加熱する第1の加熱手段と、前記循環路に接続されて前記浴槽に湯水を供給可能とする給水路と、該給水路を開閉する給水弁と、前記給水路の通水量を検出する流量検出手段と、前記給水路を流れる水を加熱する第2の加熱手段と、前記給水路を介して浴槽に供給する湯水の量を設定する湯張り量設定手段と、前記給水路を介して浴槽に供給する湯水の温度を設定する湯張り温度設定手段と、前記湯張り量設定手段による設定湯張り量及び前記湯張り温度設定手段による設定湯張り温度に基づき前記給水弁及び前記第2の加熱手段を制御して、前記浴槽に湯水を供給する湯張り動作を実行する自動湯張り制御手段と、前記給水弁を閉弁させた状態で前記循環ポンプを駆動し、前記水流検出手段により検出される水流の有無に基づいて前記浴槽に設けられている排水栓の外れの有無を判定する排水栓外れ判定手段と、使用者の操作により該自動湯張り制御手段に湯張り動作を指示する自動湯張り指示手段とを備え、前記自動湯張り制御手段は、湯張り動作を開始したとき、前記設定湯張り温度に加熱された湯水を、前記設定湯張り量よりも少なく且つ前記浴槽の循環口よりも上方の水位となる第1の所定水量となるまで供給して前記排水栓外れ判定手段により前記排水栓の外れの有無を判定し、該排水栓外れ判定手段が排水栓の外れ有りと判定した場合には、湯張り動作を中止し、該排水栓外れ判定手段が排水栓の外れ無しと判定した場合には、前記給水弁を開弁させて湯張り動作を継続することにより前記設定湯張り温度に加熱された湯水を前記設定湯張り量になるまで供給する風呂給湯装置において、前記自動湯張り制御手段は、前記排水栓外れ判定手段が排水栓の外れ有りと判定したことにより湯張り動作を中止した後に、前記自動湯張り指示手段により湯張り動作が指示されたとき、前記設定湯張り量から前記第1の所定水量を差し引くことにより求めた水量以下の水量である第2の所定水量の湯水を浴槽に供給し、更に、前記循環ポンプを駆動しつつ前記第1の加熱手段により前記循環路を流れる浴槽の湯水を加熱して、このとき浴槽の湯水に与えられた熱量と浴槽の湯水の温度上昇量とに基づいて浴槽の残水量を求め、この残水量を前記設定湯張り量から差し引くことにより求めた第3の所定水量の湯水を浴槽に供給することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、先ず、自動湯張り指示手段により湯張り動作が指示されると、自動湯張り制御手段は、設定湯張り温度に加熱された湯水を前記第1の所定水量となるまで浴槽に供給し、排水栓外れ判定手段によって排水栓の外れの有無を判定する。この判定により、排水栓の外れが有りと判定されると、自動湯張り制御手段は湯張りを中止する。その後、使用者が浴槽の排水栓を閉め直し、自動湯張り指示手段を操作すると、自動湯張り制御手段は、前記第2の所定水量の湯水を浴槽に供給する。第2の所定水量は、前記設定湯張り量から前記第1の所定水量を差し引くことにより求めた水量以下の水量であるので、排水栓の閉め直した時点で浴槽に湯水が残留していた場合であっても、浴槽の湯水の量は設定湯張り量を超えることはなく、湯水の無駄を抑えることができる。
【0015】
ここで、前記第2の所定水量の湯水の供給を開始する直前においては、使用者が排水栓を閉め直した後であるため、浴槽内の湯水の量は前記第1の所定水量よりも少なくなっている。このため、前記第2の所定水量の湯水が供給された時点での浴槽内の湯水の量は、前記設定湯張り量に達していない。
【0016】
そこで、更に、前記加熱手段により浴槽の湯水を加熱して浴槽の残水量を求め、この残水量を前記設定湯張り量から差し引くことにより第3の所定水量を求める。こうして求められた第3の所定水量は、排水栓が外れていたことによって前記第1の所定水量が減少した水量に相当する。従って、前記第2の所定水量の湯水を浴槽に供給した後に、更に、前記第3の所定水量の湯水を浴槽に供給することで、浴槽に溜まる湯水の量を前記設定湯張り量に合致させることができる。
【0017】
以上のように、本発明によれば、湯水の無駄を抑えた湯張りが行えるだけでなく、設定湯張り量の湯張りを高精度に行うことができる。
【0018】
本発明においては、前記自動湯張り制御手段は、前記湯張り動作を中止した後に前記第2の所定水量の湯水を前記浴槽に供給するとき、該第2の所定水量の湯水を前記設定湯張り温度より低い温度で供給し、前記浴槽の前記残水量を求めるとき、浴槽の湯水の温度を前記設定湯張り温度に上昇させ、前記第3の所定水量の湯水を前記浴槽に供給するとき、該第3の所定水量の湯水を前記設定湯張り温度で供給することが好ましい。
【0019】
これによれば、前記湯張り動作を中止した後に前記第2の所定水量の湯水が浴槽に供給された場合に、前記浴槽の残水量を求めると同時に浴槽の湯水の温度が前記設定湯張り温度となる。よって、浴槽の湯水を過剰に加熱する必要がなく、無駄なエネルギ消費を抑えることができる。更に、その後、前記第3の所定水量の湯水が前記設定湯張り温度で供給されることにより、浴槽に設定湯張り量の湯水が溜められた時点で、その湯水の温度は設定湯張り温度となっている。よって、浴槽の湯水を前記循環路において加熱する必要が殆どなく、効率よく湯張り動作を完了させることができる。
【0020】
また、本発明の風呂給湯装置において、前記自動湯張り制御手段は、前記湯張り動作を中止した後に前記第2の所定水量の湯水を前記浴槽に供給したとき、前記残水量を求めるための浴槽の湯水の加熱を開始するに先立って、前記排水栓外れ判定手段により前記排水栓の外れの有無を判定し、該排水栓外れ判定手段が排水栓の外れ有りと判定したとき、再度前記第1の所定水量の湯水を浴槽に供給したところで前記排水栓外れ判定手段により前記排水栓の外れの有無を判定し、該排水栓外れ判定手段が排水栓の外れ有りと判定した場合に、湯張り動作を中止し、排水栓の外れ無しと判定した場合に、前記残水量を求めるための浴槽の湯水の加熱を開始することが好ましい。
【0021】
浴槽の排水栓の外れは、使用者による閉栓忘れ以外にも、排水栓の損傷や異物の噛みこみ等によって閉栓不良となることが考えられる。この場合には、一度の判定だけでは排水栓の外れを判断することが難しい場合がある。
【0022】
そこで、本発明においては、前記第2の所定水量の湯水を浴槽に供給した状態で、排水栓の外れが有った場合、再度前記第1の所定水量の湯水を浴槽に供給して排水栓の外れの有無を判定する。これにより、排水栓の外れの有無を判定するための湯水の無駄な供給を抑えつつ、判定精度を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態による風呂給湯装置の構成を模式的に示す説明図。
図2】本実施形態におけるコントローラの機能的構成を示すブロック図。
図3】本実施形態における自動湯張り制御に関するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態における風呂給湯装置1は、浴槽2の湯水を循環させる循環路3と、浴槽2に給湯する給湯路4(給水路)とを備えている。
【0025】
浴槽2の側壁には、循環路3が接続される循環口5が形成され、底部には浴槽内の湯水を排出するための排水栓6が着脱自在に設けられている。
【0026】
浴槽2の循環口5に接続された循環路3には、第1ガスバーナ7により加熱される風呂用熱交換器8が設けられている。なお、第1ガスバーナ7及び風呂用熱交換器8は、本発明における第1の加熱手段を構成するものである。
【0027】
循環路3は、浴槽2から風呂用熱交換器8の流入口側に至る流路が循環上流路3aとされ、風呂用熱交換器8の流出口側から浴槽2に至る流路が循環下流路3bとされている。
【0028】
循環上流路3aには、浴槽2から循環路3に入る湯水の温度を検出する第1温度センサ9と、浴槽2の湯水を循環路3に沿って循環させる循環ポンプ10と、循環路3の通水の有無を検出する水流スイッチ11(水流検出手段)とが設けられている。循環下流路3bには、風呂用熱交換器8を経て浴槽2に向かう湯水の温度を検出する第2温度センサ12が設けられている。
【0029】
給湯路4は、第2ガスバーナ13により加熱される給湯用熱交換器14を経由して設けられ、その上流側は図示しない水道管に接続されている。なお、第2ガスバーナ13及び給湯用熱交換器14は、本発明における第2の加熱手段を構成するものである。
【0030】
また、給湯路4は、給湯用熱交換器14の下流側で、浴槽2に給湯するための風呂用給湯路4aと、台所や洗面所等に給湯するための常用給湯路4bとに分流されている。風呂用給湯路4aは、その下流端が循環路3に接続されている。常用給湯路4bは、その下流端が台所や洗面所等の図示しない給湯カランに接続されている。
【0031】
風呂用給湯路4aには、これを開閉する湯張り電磁弁15(給水弁)と、循環路3から風呂用給湯路4aへの湯水の逆流を防止する逆止弁16と、風呂用給湯路4aの通水量を検出する流量センサ17(流量検出手段)とが設けられている。
【0032】
また、本実施形態の風呂給湯装置1は、後述する湯張り動作等を含めた運転制御を担うコントローラ18と、使用者の操作によって、コントローラ18に対する各種の設定及び運転指示が行われるリモコン19とが備えられている。
【0033】
リモコン19には、自動湯張り運転を指示するための自動湯張りスイッチ20(自動湯張り指示手段)の他、図示しないが、湯張り温度や沸き上げ温度を設定するための温度設定スイッチ(湯張り温度設定手段)や、湯張り量を設定するための湯張り量設定スイッチ(湯張り量設定手段)等の多数のスイッチ類、及び各種の案内やエラーの報知を行うためのスピーカが設けられている。
【0034】
コントローラ18は、マイクロコンピュータを用いた電子回路により構成され、図2に示すように、自動湯張り運転に関する制御を行う自動湯張り制御部21(自動湯張り制御手段)と、浴槽2の排水栓6の外れの有無を判定する排水栓外れ判定部22(排水栓外れ判定手段)と、浴槽2の残水量の検出処理を行う残水量検出処理部23、リモコン19のスピーカを駆動して報知を行う報知制御部24とを機能として備えている。
【0035】
コントローラ18には、第1温度センサ9、第2温度センサ12、水流スイッチ11、流量センサ17等の各種センサの検出信号や、リモコン19による指示データ等が入力される。そして、コントローラ18は、上記の各検出信号やリモコン19による指示に基づいて、循環ポンプ10、湯張り電磁弁15、第1ガスバーナ7、第2ガスバーナ13を制御する。
【0036】
なお、図示は省略するが、第1ガスバーナ7及び第2ガスバーナ13には、夫々に燃料ガスを供給するガス供給路が接続されており、各ガス供給路には、燃料ガスの供給量を調節するガス比例電磁弁やガス供給路を開閉する開閉電磁弁が備えられている。また、第1ガスバーナ7及び第2ガスバーナ13は、夫々、火花放電により点火するための点火プラグ、着火状態を検出する炎検出器、燃焼用空気を供給するための送風ファン等を備えている。
【0037】
次に、前記コントローラ18による自動湯張り運転に関する作動を説明する。図3を参照して、リモコン19の自動湯張りスイッチ20が操作されて自動湯張り運転が指示されると、コントローラ18は、その自動湯張り制御部21の機能により、STEP1に進み、浴槽2に対して第1の所定水量の給湯を行う。即ち、自動湯張り制御部21は、風呂用給湯路4aの湯張り電磁弁15を開弁し、第2ガスバーナ13を燃焼運転する。このとき、使用者がリモコン19で設定した設定湯張り温度の湯を、給湯路4の風呂用給湯路4a及び循環路3を介して浴槽2に供給する。そして、この給湯を風呂用給湯路4aの流量センサ17で検出される流量の積算量が第1の所定水量に達するまで行なう。第1の所定水量は、設定湯張り量よりも少なく、浴槽内の水面が循環口5を覆う程度のレベルの量(水位が循環口5よりも上方に位置する量)である。この第1の所定水量は、試運転の際に採取され、コントローラ18が備える図示しないメモリに登録されている。
【0038】
次いで、STEP2に進み、自動湯張り制御部21は、排水栓外れ判定部22により浴槽2の排水栓6の外れの有無を判定する。そして、STEP2において、排水栓6が外れていないと判断された場合にはSTEP3に進み、排水栓6が外れていると判断された場合にはSTEP4に進む。
【0039】
ここで、排水栓外れ判定部22による排水栓6の外れの有無の判定処理について説明する。排水栓外れ判定部22は、循環ポンプ10を作動させつつ、水流スイッチ11の検出信号を監視する。このとき、第1の所定水量である循環口5よりも上のレベルの湯水が浴槽2に存在していれば、水流スイッチ11は連続的にON信号を出力し、浴槽2の湯水の水位が循環口5を下回っていると水流スイッチ11はOFFになる。浴槽2の排水栓6が外れていた場合には、浴槽2の湯水の水位が循環口5を下回る。そこで、排水栓外れ判定部22は、水流スイッチ11がOFF状態であるとき排水栓6の外れ有りと判定し、水流スイッチ11のON信号を確認したとき、排水栓6の外れ無しと判定する。
【0040】
STEP2において排水栓6の外れ無しと判断されてSTEP3に進むと、自動湯張り制御部21は、風呂用給湯路4aの湯張り電磁弁15を開弁し、第2ガスバーナ13を燃焼運転することにより、設定湯張り温度の湯を、給湯路4の風呂用給湯路4a及び循環路3を介して浴槽2に供給する。この時、既に第1の所定水量の湯が浴槽2に溜められていることにより、STEP3では、設定湯張り量から第1の所定水量を差し引いた量の湯が浴槽に供給される。そして、風呂用給湯路4aの流量センサ17で検出される流量の積算量が設定湯張り量から第1の所定水量を差し引いた量に達したところで湯張り電磁弁15を閉弁し、STEP15で湯張り完了を報知して湯張り運転を終了させる。STEP15における報知は、報知制御部24がリモコン19のスピーカを駆動することにより行われる。
【0041】
一方、STEP2において排水栓6の外れ有りと判断されてSTEP4に進むと、自動湯張り制御部21は、報知制御部24を介してリモコン19のスピーカにより、排水栓6の閉め直しを促す報知(例えば、「浴槽の排水栓が外れていませんか?」といった音声による報知)を行い、更に、STEP5に進んで自動湯張り制御部21は、湯張り運転を中止する。これにより、浴槽2の排水栓6が外れた状態で湯張りが行われて湯が無駄になる事態を防止することができる。
【0042】
上記報知を受けた使用者が浴槽2の排水栓6を閉め直し、リモコン19の自動湯張りスイッチ20を操作して自動湯張り運転を指示すると、自動湯張り制御部21は、STEP6を経てSTEP7に進む。
【0043】
STEP7において、自動湯張り制御部21は、第2ガスバーナ13の燃焼運転は行わず、風呂用給湯路4aの湯張り電磁弁15を開弁して非加熱水を浴槽2に供給する。この時には、第2の所定水量の非加熱水が浴槽に供給される。第2の所定水量は、本実施形態においては設定湯張り量から第1の所定水量を差し引いた水量と同じ量とした。このとき、浴槽2に供給する水量はSTEP3と同じであるが、非加熱水(設定湯張り温度よりも低温の水)であるところがSTEP3とは異なっている。なお、第2の所定水量は、本実施形態においては設定湯張り量から第1の所定水量を差し引いた水量以下の量であってもよい。
【0044】
また、浴槽2の排水栓6の外れが検出されて湯張りが中止された後にリモコン19の自動湯張りスイッチ20が操作された場合、従来においては、浴槽2の排水栓6の外れの判断のために浴槽に供給した湯水の量は考慮されずに、浴槽2が空であるとみなして設定湯張り量の湯が浴槽2に供給される。しかし、排水栓6の閉じ具合が不十分である等により浴槽2の湯水が微量ずつ排水されていた場合には、浴槽2内の湯水の水位が循環口5を少し下回った程度に過ぎず、使用者によって排水栓6が閉め直された時点で、第1の所定水量のうちの殆どの量の湯水が浴槽2に残留していることもある。このため、設定湯張り量の湯水が再び浴槽2に供給されると、浴槽2に残留した湯水に設定湯張り量の湯水が加わり、場合によっては浴槽2から湯水が溢れる事態も想定される。
【0045】
それに対して、本実施形態においては、浴槽2の排水栓6の外れが検出されて湯張りが中止された後にリモコン19の自動湯張りスイッチ20が操作された場合には、自動湯張り制御部21は、STEP7において第2の所定水量の給水を行うので、浴槽2から湯水が溢れる事態を確実に回避することができる。
【0046】
続いてSTEP8に進むと、自動湯張り制御部21は、排水栓外れ判定部22によりSTEP2と同様の手順で浴槽2の排水栓6の外れの有無を判定する。そして、STEP8において、排水栓6が外れていないと判断された場合にはSTEP11に進み、排水栓6が外れていると判断された場合にはSTEP9に進む。
【0047】
STEP8において、排水栓6が外れていると判断された場合には、使用者が排水栓6の閉め直しを行わずにリモコン19の自動湯張りスイッチ20を操作した場合と、使用者が排水栓6の閉め直しを行ったにもかかわらず、リモコン19の自動湯張りスイッチ20を操作したとき依然として排水栓6から排水されている場合とが考えられる。
【0048】
そこで、STEP9に進んで、自動湯張り制御部21は、浴槽2に対して第1の所定水量の非加熱水を供給し、更にSTEP10に進んで、排水栓外れ判定部22により浴槽2の排水栓6の外れの有無を判定する。このように、複数回の排水栓6の外れ判定を行って判定精度を向上させる一方で、STEP9においては浴槽2に対する非加熱水の供給量を必要最小限に抑えることができる。
【0049】
そして、STEP10において、排水栓6が外れていると判断された場合にはSTEP4に戻り、排水栓6が外れていないと判断された場合にはSTEP11に進む。
【0050】
STEP11に進むと、自動湯張り制御部21は、浴槽2の水(このとき、STEP7、又はSTEP9を経ているので浴槽2内には非加熱水が溜められている)の沸き上げ処理を行う。即ち、自動湯張り制御部21は、循環ポンプ10を作動させ、第1ガスバーナ7を燃焼運転して風呂用熱交換器8により浴槽2の水を加熱する。このとき、自動湯張り制御部21は、第2温度センサ12の検出温度が設定湯張り温度となるように、第1ガスバーナ7の燃焼運転を制御する。
【0051】
STEP11による沸き上げ処理が完了すると、自動湯張り制御部21は、循環ポンプ10を停止させると共に第1ガスバーナ7の燃焼運転を停止させてSTEP12に進む。STEP12に進むと、自動湯張り制御部21は、残水量検出処理部23により浴槽2の残水量を算出する。
【0052】
なお、残水量検出処理部23による浴槽2の残水量の算出においては、STEP11による沸き上げ処理の際に採取した複数のデータが用いられる。浴槽2の残水量の算出に際して、本実施形態においては、本出願人が先に提案した特許第3850635号による方法を用いた。ここで、浴槽2の残水量の算出方法を簡単に説明すれば次の通りである。
【0053】
自動湯張り制御部21が循環ポンプ10を作動させて第1ガスバーナ7の燃焼運転を行い、風呂用熱交換器8によって浴槽2の湯を加熱しているとき、残水量検出処理部23は、所定の単位時間毎(例えば1秒毎)に所定時間(熱量積算時間)にわたって風呂用熱交流入温度Tを第1温度センサ9により逐次検出し、その検出した最初の風呂用熱交流入温度TをパラメータTSとして記憶しておく。そして、あらかじめ実験等より定められた定数aを現在の風呂用熱交流入温度Tで除して、第1ガスバーナ7から浴槽2の湯水への熱量伝達率η(これは基本的には風呂用熱交換器8の熱効率に等しい)を決定する(η=a/T)。
【0054】
次いで、残水量検出処理部23は、第1ガスバーナ7の現在の発生熱量Qin[J/sec]に熱量伝達率ηを乗算することにより、第1ガスバーナ7から現在浴槽2の湯水に与えられた熱量q[J/sec]を求める(q=Qin・η)。第1ガスバーナ7の発生熱量Qinは、第1ガスバーナ7への供給ガス量を規定するガス比例電磁弁(図示しない)の通電量に基づくデータテーブルに従って求められる。
【0055】
更に、熱量qを単位時間毎に累積加算して積算値Σqを得る。そして、所定時間(熱量積算時間)が経過した時点で風呂用熱交流入温度TをパラメータTEとして記憶保持する。
【0056】
以上のようにして、熱量積算時間が経過するまでの期間において浴槽2の湯水に与えられた実熱量が、最終的に積算値Σqとして求められ、加熱当初の風呂用熱交流入温度Tと、熱量積算時間の経過時の風呂用熱交流入温度TとがそれぞれパラメータTS、TEの値として記憶保持される。以下、パラメータTS、TEの値の差は温度上昇量ΔTとして用いる。
【0057】
浴槽2の湯水の温度上昇量ΔTと、浴槽2の湯水の総量と、水の比熱C[J/℃・リットル]とを乗算したものは、前記熱量積算時間の期間に浴槽2の湯水に与えられた実熱量Σqである。よって、実熱量Σqを浴槽2の湯水の温度上昇量ΔTと水の比熱Cとを乗算した値で除算し、浴槽2の残水量が求められる。
【0058】
こうしてSTEP12で浴槽2の残水量が求められると、自動湯張り制御部21は、STEP13に進み、設定湯張り量からSTEP12で算出した残水量を差し引いて、第3の所定水量を求める。
【0059】
次いで、自動湯張り制御部21は、STEP14に進んで、浴槽2に対して第3の所定水量の給湯を行う。即ち、自動湯張り制御部21は、風呂用給湯路4aの湯張り電磁弁15を開弁し、第2ガスバーナ13を燃焼運転する。このとき、使用者がリモコン19で設定した設定湯張り温度の湯を、給湯路4の風呂用給湯路4a及び循環路3を介して浴槽2に供給する。そして、この給湯を風呂用給湯路4aの流量センサ17で検出される流量の積算量が第3の所定水量に達するまで行なう。これにより、浴槽2に対して、設定湯張り量の湯張りが極めて精度よく行われる。
【0060】
そして、自動湯張り制御部21は、STEP15に進み、湯張り完了を報知して湯張り運転を終了させる。
【0061】
なお、本実施形態においては、STEP9及びSTEP10を設けて、排水栓6の外れを判定する精度を向上させた例を示しているが、STEP9及びSTEP10を設けない場合であっても、浴槽2に対する湯水の無駄な供給を防止することができる。
【0062】
また、STEP11により浴槽2の湯水を設定湯張り温度まで沸き上げることで、STEP12による残水量の算出に用いるデータの採取を効率よく行うようにしている。このため、本実施形態においては、STEP7やSTEP9で浴槽2に対して非加熱水を供給することで過剰に高温の沸き上げを行うことなく残水量の算出を可能としているが、このとき供給する湯水は、非加熱水に限るものではなく、設定湯張り温度よりも低い温度の湯水であればよい。
【符号の説明】
【0063】
1…風呂給湯装置、2…浴槽、3…循環路、4…給湯路(給水路)、5…循環口、6…排水栓、7…第1ガスバーナ(第1の加熱手段)、8…風呂用熱交換器(第1の加熱手段)、10…循環ポンプ、11…水流スイッチ(水流検出手段)、13…第2ガスバーナ(第2の加熱手段)、14…給湯用熱交換器(第2の加熱手段)、15…湯張り電磁弁(給水弁)、17…流量センサ(流量検出手段)、20…自動湯張りスイッチ(自動湯張り指示手段)、21…自動湯張り制御部(自動湯張り制御手段)、22…排水栓外れ判定部(排水栓外れ判定手段)。
図1
図2
図3