特許第6095488号(P6095488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095488
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】有機薄膜太陽電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/44 20060101AFI20170306BHJP
   H01L 51/48 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   H01L31/04 130
   H01L31/04 132
   H01L31/04 180
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-115714(P2013-115714)
(22)【出願日】2013年5月31日
(65)【公開番号】特開2014-236065(P2014-236065A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2015年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505113090
【氏名又は名称】村田 英幸
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】丸子 展弘
(72)【発明者】
【氏名】村田 英幸
【審査官】 濱田 聖司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−32917(JP,A)
【文献】 特開2011−142217(JP,A)
【文献】 特開2012−124336(JP,A)
【文献】 特開2012−69560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/42−51/48
H01L 31/00−31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性基板上に少なくとも透明電極層と有機半導体層と裏面電極層とがこの順番に積層されてなる有機薄膜太陽電池の製造方法であって、
前記透明性基板上に前記透明電極層と前記有機半導体層とがこの順番に積層された積層体を準備する工程と、
前記有機半導体層上に、膜厚が3.0μm以下の金属箔(ただし、有機半導体層を含まない)を積層して密着させることにより、前記有機半導体層上に前記裏面電極層を形成する工程と、
を含む、有機薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の有機薄膜太陽電池の製造方法において、
前記金属箔の厚みが0.01μm以上である、有機薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の有機薄膜太陽電池の製造方法において、
前記金属箔は、前記金属箔の一方の面に支持基材が設けられており、
前記裏面電極層を形成する前記工程では、前記金属箔と前記有機半導体層が接するように、前記有機半導体層上に前記金属箔を積層し、その後、前記支持基材を剥離する、有機薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の有機薄膜太陽電池の製造方法において、
前記支持基材はプラスチックフィルムである、有機薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の有機薄膜太陽電池の製造方法において、
前記支持基材の厚みは1μm以上100μm以下である、有機薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか一項に記載の有機薄膜太陽電池の製造方法において、
前記金属箔がロール状に巻回積層されており、
前記裏面電極層を形成する工程では、
巻回積層された前記金属箔を搬送するとともに、シート状の前記積層体を搬送することによりロール・トゥ・ロール方式で連続的に前記有機半導体層上に前記金属箔を積層する、有機薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか一項に記載の有機薄膜太陽電池の製造方法において、
前記金属箔は、アルミニウム、銀、金、および銅からなる群から選択される1種または2種以上の金属により構成されている、有機薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれか一項に記載の有機薄膜太陽電池の製造方法において、
前記裏面電極層を形成する前記工程では、前記金属箔と前記有機半導体層との間に絶縁性の接着層を設けないで、前記有機半導体層上に前記金属箔を積層する、有機薄膜太陽電池の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜太陽電池の製造方法および有機薄膜太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜太陽電池は、一般的に、透明性基板上に透明電極層、有機半導体層および裏面電極層がこの順番に積層された構成となっている。
このような有機薄膜太陽電池は、シリコンや無機化合物材料を用いた無機太陽電池に比べて製法が簡便で生産コストを低くでき、着色性や柔軟性等を持たせられる等の利点を有する。
【0003】
太陽電池用電極の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法、CVD法等が知られている。
【0004】
特許文献1(特開2011−142217)には、光電変換層上に金属基材を熱圧着することにより太陽電池用電極を形成する方法が記載されている。
【0005】
このような金属基材を積層することにより太陽電池用電極を形成する方法は、例えば、ロール・トゥ・ロール(roll−to−roll)プロセスにより連続的に製造することができるため、生産性に優れている。さらに、電極を容易に大面積化することができる利点をもつ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−142217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、本発明者らの検討によると、金属基材を積層することにより裏面電極層を形成した有機薄膜太陽電池は、真空蒸着法などにより裏面電極層を形成したものに比べて発電効率が低いことが明らかになった。
【0008】
そこで、本発明では、発電効率の低下が抑制された有機薄膜太陽電池を生産性良く製造できる製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、発電効率が低下してしまう要因について鋭意検討した。その結果、使用する金属基材として膜厚が3.0μm以下の金属箔を選択することにより、得られる有機薄膜太陽電池の発電効率の低下を抑制できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明によれば、
透明性基板上に少なくとも透明電極層と有機半導体層と裏面電極層とがこの順番に積層されてなる有機薄膜太陽電池の製造方法であって、
上記透明性基板上に上記透明電極層と上記有機半導体層とがこの順番に積層された積層体を準備する工程と、
上記有機半導体層上に、膜厚が3.0μm以下の金属箔を積層して密着させることにより、上記有機半導体層上に上記裏面電極層を形成する工程と、
を含む、有機薄膜太陽電池の製造方法が提供される。
【0011】
さらに、本発明によれば、
上記本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法により得られた、有機薄膜太陽電池が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発電効率の低下が抑制された有機薄膜太陽電池を生産性良く製造できる製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る実施形態の有機薄膜太陽電池の構成の一例を示す断面図である。
図2】本発明に係る実施形態の有機薄膜太陽電池の製造工程を示す断面図である。
図3】本発明に係る実施形態の有機薄膜太陽電池の裏面電極側の構成の一例を示す平面図である。
図4】本発明に係る実施形態の有機薄膜太陽電池の裏面電極側の構成の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。図は概略図であり、実際の寸法比率とは必ずしも一致していない。また、「〜」はとくに断りがなければ、以上から以下を表す。
【0015】
<有機薄膜太陽電池の製造方法>
以下、本実施形態に係る有機薄膜太陽電池100の製造方法について説明する。
図1は、本発明に係る実施形態の有機薄膜太陽電池100の構成の一例を示す断面図である。図2は、本発明に係る実施形態の有機薄膜太陽電池100の製造工程を示す断面図である。
【0016】
本発明の有機薄膜太陽電池100の製造方法は、透明性基板101上に少なくとも透明電極層102と有機半導体層103と裏面電極層104とがこの順番に積層されてなる有機薄膜太陽電池100(図1)の製造方法であり、以下の(1)および(2)の2つの工程を少なくとも含んでいる。
(1)透明性基板101上に透明電極層102と有機半導体層103とがこの順番に積層された積層体110を準備する工程(図2(a))
(2)有機半導体層103上に、膜厚が3.0μm以下の金属箔を積層して密着させることにより、有機半導体層103上に裏面電極層104を形成する工程(図2(b))
【0017】
本発明の有機薄膜太陽電池100の製造方法によれば、有機半導体層103上に、膜厚が3.0μm以下の金属箔を積層して密着させることにより、得られる有機薄膜太陽電池100の発電効率の低下を抑制できる。
【0018】
以下、各工程について詳細に説明する。
【0019】
はじめに、積層体110を準備する工程(図2(a))について説明する。積層体110は、例えば、透明性基板101上に透明電極層102と有機半導体層103とを順次形成することにより得ることができる。また、透明性基板101上に、既に透明電極層102と有機半導体層103とがこの順番に積層されたものを準備してもよい。
【0020】
まず、透明性基板101上の全面にまたは所定のパターン形状に透明電極層102を形成する。透明電極層102の形成方法としては、一般的な電極の形成方法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法やCVD法等の乾式プロセスや、塗工液を塗布する湿式プロセス等が挙げられる。
【0021】
透明性基板101は可視光に対して透明な基板であれば特に限定されるものではなく、一般的に有機薄膜太陽電池に使用されるものを用いることができる。例えば、ガラス基板、プラスチックフィルム基板等が挙げられる。
透明性基板101の厚さは特に限定されないが、通常は10μm以上200μm以下の範囲内である。
【0022】
透明電極層102は、透明性基板101上に設けられるものであり、裏面電極層104に対向する電極である。透明電極層102としては、可視光に対して透明で導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、一般的に有機薄膜太陽電池に使用されるものを用いることができる。例えば、スズ添加酸化インジウム(ITO)、酸化スズ(SnO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)等の透明導電性酸化物により形成されたものが挙げられる。
透明電極層102の厚さは特に限定されないが、通常は5nm以上100μm以下の範囲内である。
【0023】
次いで、透明電極層102上に有機半導体層103を形成する。
【0024】
有機半導体層103は、透明電極層102と裏面電極層104との間に形成されるものであり、有機薄膜太陽電池100の電荷分離に寄与し、生じた電子および正孔を各々反対方向の電極に向かって輸送する機能を有する。
有機半導体層103は、電子受容性および電子供与性の機能を両方有する単一の層であってもよいし、電子受容性の機能を有する電子受容性層と電子供与性の機能を有する電子供与性層とが積層されたものであってもよい。
【0025】
電子供与性材料(p型有機半導体材料とも呼ぶ。)としては、電子供与性の機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、一般的に有機薄膜太陽電池に使用されるものを用いることができる。例えば、電子供与性の導電性高分子材料が挙げられる。
電子供与性の導電性高分子材料としては、例えば、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリシラン、ポリチオフェン、ポリカルバゾール、ポリビニルカルバゾール、ポルフィリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、およびこれらの誘導体、フタロシアニン含有ポリマー、カルバゾール含有ポリマー、有機金属ポリマー等を挙げることができる。
【0026】
また、電子受容性材料(n型有機半導体材料とも呼ぶ。)としては、電子受容性の機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、有機薄膜太陽電池に一般的に使用されるものを用いることができる。例えば、フラーレン誘導体、カーボンナノチューブ、ペリレン誘導体等が挙げられる。
【0027】
有機半導体層103の膜厚としては、一般的に有機薄膜太陽電池において採用されている膜厚を採用することができる。例えば、0.2nm以上3000nm以下の範囲内である。膜厚が上記範囲内であると、有機半導体層103の導電性と光吸収性のバランスが優れている。また、膜厚が上記下限値以上であると、透明電極層102と裏面電極層104との間に短絡が生じることをより一層抑制できる。
【0028】
電子供与性材料および電子受容性材料の混合比は、使用する材料の種類により最適な混合比に適宜調整される。
【0029】
有機半導体層103が電子受容性層と電子供与性層とが積層されたものである場合は、電子受容性層の膜厚としては、例えば、0.1nm以上1500nm以下の範囲内であり、電子供与性層の膜厚としては、例えば、0.1nm以上1500nm以下の範囲内である。膜厚が上記範囲内であると、有機半導体層103の導電性と光吸収性のバランスが優れている。また、膜厚が上記下限値以上であると、透明電極層102と裏面電極層104との間に短絡が生じることを抑制できる。
【0030】
有機半導体層103には、透明電極層102側に有機正孔輸送層(正孔取出し層とも呼ぶ。)を設けてもよい。
有機正孔輸送層は、有機半導体層103から透明電極層102への正孔の取出しが容易に行われるように設けられる層である。これにより、有機半導体層103から透明電極層102への正孔取出し効率が高められるため、得られる有機薄膜太陽電池100の発電効率をより一層向上させることができる。
【0031】
有機正孔輸送層に用いられる材料としては、有機半導体層103から透明電極層102への正孔の取出しを安定化させる材料であれば特に限定されるものではなく、一般的に有機薄膜太陽電池に使用されるものを用いることができる。例えば、ドープされたポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、テトラフェニルフェニレンジアミン(TPD)などの導電性有機化合物、酸化バナジウム、酸化モリブデンなどの酸化物等が挙げられる。
ここで、導電性有機化合物にドープするドーパントとしては、例えば、ポリスチレンスルホン酸(PSS)等が挙げられる。
このような導電性有機化合物とドーパントとの組み合わせとしては、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)と、ポリスチレンスルホン酸(PSS)との組み合わせ(PEDOT/PSS)が特に好ましい。
【0032】
有機正孔輸送層の膜厚としては、一般的に有機薄膜太陽電池において採用されている膜厚を採用することができる。例えば、10nm以上200nm以下の範囲内である。
【0033】
有機半導体層103には、裏面電極層104側に有機電子輸送層(電子取出し層とも呼ぶ。)を設けてもよい。
有機電子輸送層は、有機半導体層103から裏面電極層104への電子の取出しが容易に行われるように設けられる層である。これにより、有機半導体層103から裏面電極層104への電子取出し効率が高められるため、得られる有機薄膜太陽電池100の発電効率をより一層向上させることができる。
【0034】
有機電子輸送層に用いられる材料としては、有機半導体層103から裏面電極層104極への電子の取出しを安定化させる材料であれば特に限定されるものではなく、有機薄膜太陽電池に使用される一般的に公知のものを用いることができる。例えば、カルシウム、セシウムなどのアルカリ金属、フッ化リチウム、フッ化カルシウムなどの金属フッ化物、酸化チタン、酸化亜鉛などの酸化物等を挙げることができる。
【0035】
また、裏面電極層104側に有機正孔輸送層を設け、かつ、透明電極層102側に有機電子輸送層を設けてもよい。このような構成とすることで、いわゆる逆構造の有機薄膜太陽電池とすることができる。
【0036】
有機半導体層103を形成する方法としては、所定の膜厚に均一に形成することができる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、湿式塗工法が挙げられる。湿式塗工法を用いると、大気中で有機半導体層103を形成することができるため、コストの削減が図れるとともに、容易に大面積化することができる。
【0037】
電子受容性および電子供与性の機能を両方有する単一の有機半導体層103は、例えば、前述した電子供与性材料と電子受容性材料と有機溶媒とを含む塗工液を、透明電極層102上に塗布して塗膜を形成し、その後上記有機溶媒を乾燥除去することにより形成することができる。
【0038】
一方、電子受容性層と電子供与性層とが積層された有機半導体層103は、例えば、以下の方法により形成できる。はじめに、前述した電子供与性材料と有機溶媒とを含む塗工液を、透明電極層102上に塗布して塗膜を形成し、その後上記有機溶媒を乾燥除去することにより電子供与性層を透明電極層102上に形成する。次いで、前述した電子受容性材料と有機溶媒とを含む塗工液を、電子供与性層上に塗布して塗膜を形成し、その後上記有機溶媒を乾燥除去することにより電子受容性層を電子供与性層上に形成する。こうすることにより、透明電極層102上に、電子受容性層と電子供与性層とが積層された有機半導体層103を形成することができる。
【0039】
また、有機正孔輸送層および有機電子輸送層も、電子受容性層と電子供与性層の形成方法に準じてそれぞれ形成することができる。
【0040】
上記塗工液の塗布方法としては、塗工液を均一に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、ビードコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等を挙げることができる。
【0041】
有機半導体層103中における電子供与性材料と電子受容性材料の割合は、モル比で、通常は電子供与性材料:電子受容性材料=1:0.5〜7であり、好ましくは電子供与性材料:電子受容性材料=1:0.7〜3である。
【0042】
以上より、積層体110を得ることができる。
【0043】
つづいて、有機半導体層103上に裏面電極層104を形成する工程(図2(b))について説明する。
【0044】
裏面電極層104は、有機半導体層103上に形成されるものであり、透明電極層102に対向する電極である。裏面電極層104は、後述するように、膜厚が3.0μm以下の金属箔を積層して密着させることにより形成されるものである。
【0045】
はじめに、使用する金属箔について説明する。
金属箔を構成する金属材料は、電極として機能するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アルミニウム、チタン、クロム、タングステン、モリブデン、白金、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、亜鉛、銀、金、銅、各種ステンレスおよびそれらの合金等が挙げられる。これらの中でも、光の反射率が優れ、得られる有機薄膜太陽電池の発電効率をより一層向上できる観点から、アルミニウム、銀、金、銅が好ましい。これらの金属または合金は、いずれか1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
また、有機半導体層103側には仕事関数のマッチングを良好とするための金属元素の箔を薄く用い、裏面側には他の電気伝導性のよい金属箔とを積層して用いてもよい。たとえば、金箔を有機半導体層103側に用い、裏面側に銅箔を合わせるなどを適用することで、材料コスト低減などが可能となる。
【0046】
金属箔の厚みの上限値は、3.0μm以下であり、好ましくは2.5μm以下であり、特に好ましくは1.0μm以下である。金属箔の厚みが上記上限値以下であると、有機半導体層103と裏面電極層104との密着性を向上させることができる。その結果として、得られる有機薄膜太陽電池100の発電効率を向上させることができる。また、材料費低減のため、薄い箔を用いる方が好ましい。
【0047】
また、金属箔の厚みの下限値は、好ましくは0.01μm以上であり、より好ましくは0.05μm以上であり、特に好ましくは0.1μm以上である。金属箔の厚みが上記下限値以上であると、金属箔の強度を十分に確保することができ、ピンホールなどの発生を抑制することができる。その結果として、得られる有機薄膜太陽電池100の発電効率をより一層向上させることができる。
【0048】
金属箔は、例えば、市販のものを用いることができる。
【0049】
つづいて、金属箔を有機半導体層103上に積層する方法について説明する。
【0050】
本発明の有機薄膜太陽電池100の製造方法では、有機半導体層103上に、膜厚が3.0μm以下の金属箔を積層して密着させることにより、有機半導体層103上に裏面電極層104を形成する。
【0051】
有機半導体層103上に、膜厚が3.0μm以下の金属箔を積層して密着させる方法としては、金属箔を有機半導体層103上に密着性良く配置することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、有機半導体層103上に金属箔を熱圧着する方法が挙げられる。有機半導体層103上に金属箔を熱ラミネートすることで密着性良く金属箔を積層することができる。
【0052】
有機半導体層103上に金属箔を熱圧着する方法は、例えば、ロール状に巻回された金属箔を用意し、シート状の積層体110とともにラミネーターに搬送する。ラミネーターは、金属箔とシート状の積層体110とを挟んだ状態で加圧して、ラミネートする。
【0053】
上記のラミネーターは、市販されているものを用いることができる。
【0054】
また、有機半導体層103上に金属箔を積層する際に、金属箔の一方の面に支持基材を設けておくのが好ましい。この場合、金属箔と有機半導体層103が接するように、有機半導体層105上に金属箔を積層し、その後、支持基材を剥離することにより、有機半導体層103上に裏面電極層104を形成する。
こうすることにより、膜厚が薄い金属箔を取り扱う際の作業性が向上し、効率良く有機半導体層103上に膜厚が3.0μm以下の金属箔を積層することができる。
【0055】
支持基材としては、プラスチックフィルムを用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂(PMMA)、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミドなどが挙げられる。これらの中でもPETフィルム、PENフィルムが好ましく、PETフィルムがとくに好ましい。
【0056】
支持基材の厚みは好ましくは1μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上50μm以下である。支持基材の厚みが上記範囲内であると、金属箔の作業性がより一層向上する。
【0057】
本実施形態に係る有機薄膜太陽電池100の製造方法では、金属箔をロール状に巻回積層して使用するのが好ましい。これにより、裏面電極層104を形成する工程をロール・トゥ・ロール方式で連続的におこなうことができるため、有機薄膜太陽電池100の生産性をより一層向上させることができる。
【0058】
裏面電極層104を形成する工程では、金属箔と有機半導体層103との間に絶縁性の接着層を設けないで、有機半導体層103上に金属箔を積層することが好ましい。
こうすることにより、有機半導体層103と裏面電極層104との間の導電性が向上し、その結果として、得られる有機薄膜太陽電池100の発電効率を向上させることができる。
さらに、金属箔は複数の金属箔を重ねて用いてもよい。この際、裏面電極層104側の1層目の金属箔は膜厚が3.0μm以下のものを用いることが必要である。しかし、2層目以降は1層目の金属箔とは異なるものを用いてもよく、例えば、1層目よりも電気伝導性が良好な金属箔などを用いることができる。また形成方法は、予め2種以上の金属箔を積層して、圧延等により一体化した後、1層の場合と同様の工程で電極形成する方法が好ましい。これにより作業性がより向上する。なお、金属箔を2層以上重ねて用いる場合は、裏面電極層104側の1層目の金属箔の膜厚が3.0μm以下であればよく、複数の金属箔の合計が3μm以下である必要はない。
【0059】
<有機薄膜太陽電池>
図1は、本発明に係る実施形態の有機薄膜太陽電池100の構成の一例を示す断面図である。
本実施形態に係る有機薄膜太陽電池100は、透明性基板101上に少なくとも透明電極層102と有機半導体層103と裏面電極層104とがこの順番に積層された構成となっている。また、本実施形態に係る有機薄膜太陽電池100は、上記本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法により得ることができる。
【0060】
本実施形態に係る有機薄膜太陽電池100には、上述した構成部材の他にも必要に応じて、一般的に有機薄膜太陽電池において採用されている構成部材を設けてもよい。例えば、バリア層、保護層、強度支持層、防汚層、高光反射層、光封じ込め層、封止材層等の機能層を設けてもよい。また、層構成に応じて、各機能層間に接着層を設けてもよい。
本実施形態において、有機半導体層103の全面に金属箔を積層して裏面電極層104を形成してもよいが、図3のように帯状の金属箔を並べて積層して裏面電極層104を形成してもよいし、図4のように格子状に金属箔を並べて積層して裏面電極層104を形成してもよい。金属箔をこのように積層することで、全面に積層する場合と比べて金属箔使用量を低減することができる。そのため、省資源の観点および特に貴金属の場合、コストの観点で有利となる。蒸着法、CVD法などでは部分的に積層することが難しく、たとえマスクを使って図3のように帯状に金属を積層したとしても、マスク部についた金属は無駄となってしまう。
なお、図3のように金属箔を帯状もしくは格子状に並べて電極とする場合、電荷を電極まで高効率で輸送するため、下地層には、前述したPEDOT:PSS等の有機正孔輸送層または有機電子輸送層を用いることが好ましい。
さらに、金属箔を帯状、格子状に並べて使用する場合、裏面電極層の反射の効果が薄れるため、この裏面電極層のさらに後方に反射率の高い金属箔を用いることが好ましい。あるいは、太陽電池モジュール化の段階で、たとえばTiOなどの反射材料を配合した、反射率の高い封止材、もしくは反射率の高いバックシートと組み合わせることが好ましい。
【0061】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
ガラス基板にITO(150nm、面抵抗15Ω/□以下)をパターニングしたガラス基板を用いた。発電素子部分の対向電極で挟まれた有効面積は2×5mmのサイズとした。
ガラス基板上のITOの上部にTiOx膜をゾルゲル法を用いて以下の方法により20nm付与した。はじめに、チタニウム[IV]イソプロポキシドとアセチルアセトンと酢酸とエタノールをモル比で1:0.3:0.2:200の割合で混合し、室温で12時間放置した。その後、ガラス基板上に6000rpm60秒の条件でスピンコートし、150℃1時間熱処理して形成した。
ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT、メルク社製、lisicon SP001 EF430602)と、フラーレン誘導体(PC61BM:フェニル−C61−ブタン酸−メチルエステル、Luminescence Technology製、PC61BM LT-S905)を1:1の配合比でクロロベンゼン溶媒に溶解させた。次いで、ITOの上部に形成したTiOx膜上に、得られたP3HT/PC61BM溶液を600rpm、60秒の条件でスピンコートし、P3HT/PC61BM層を形成した。
次いで、P3HT/PC61BM層上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)と、ポリ(4−スチレンスルホン酸)(PSS)の分散液(H.C. Starck Ltd.製、CLEVIOS PAI408)を1600rpm、60秒の条件でスピンコートし、厚さPEDOT/PSS層を形成した。
【0064】
つづいて、Au箔(Au箔の膜厚0.2μm、箔一社製、型番:JK−013)の上にPETフィルムを載せ、PETフィルムごと2mm巾にカットした、この支持基材付きAu箔をPEDOT/PSS層上に載せ、端部でガラス基板上のITOの対向電極のパッドと電気的接続を取れる位置にセットした。次いで、支持基材の上部から硬質ゴムロールにて押さえた後、支持基材をはがした。ここで、支持基材はPET製フィルムであり、膜厚は20μmである。
【0065】
得られた有機薄膜太陽電池素子を溝付ガラスキャップにてUV硬化エポキシ樹脂で枠封止して、150℃5分の熱処理を行い、有機薄膜太陽電池を得た。
【0066】
(評価)
得られた有機薄膜太陽電池について、ぺクセル・テクノロジー社製、簡易型ソーラシミュレ−タ−、TYPE:PEC−L10、エアマスフィルターAM1.5Gを用いて、光照度が100mW/cmとなる位置にサンプルをセットし、基準太陽光スペクトルの連続光を照射した。30分後にケースレー製2400のソースメータを用いて、IVカーブを測定することにより、発電特性を求めた。発電効率は2.9%であった。
【0067】
(実施例2)
実施例1と同様に裏面電極付与前の素子を作製した。
実施例2では、実施例1のAu箔の変わりに、膜厚0.75μmのAu箔(ニラコ製 型番:AU-173058、アクリルサポート材付き)を用いた。Au箔は、アクリルサポート材付きのままで、幅2mmの必要形状にカッタで切断した。その後、アクリルサポート材をアセトンに浸して完全に除去して、室温乾燥したものを20μm厚みのPETフィルムの支持基材上に載せた。
この支持基材付きAu箔をPEDOT/PSS層上に載せ、端部でガラス基板上のITOの対向電極のパッドと電気的接続を取れる位置にセットした。次いで、支持基材の上部から硬質ゴムロールにて押さえた後、支持基材をはがした。
実施例1と同様に発電特性の評価を行った。発電効率は2.2%であった。
【0068】
(実施例3)
実施例1と同様に裏面電極付与前の素子を作製した。
実施例3では、実施例1のAu箔の変わりに、膜厚2.5μmのAu箔(ニラコ製 型番:AU-173102、アクリルサポート材付き)を用いた。Au箔は、アクリルサポート材付きのままで、幅2mmの必要形状にカッタで切断した。その後、アクリルサポート材をアセトンに浸して完全に除去して、室温乾燥したものを20μm厚みのPETフィルムの支持基材上に載せた。
この支持基材付きAu箔をPEDOT/PSS層上に載せ、端部でガラス基板上のITOの対向電極のパッドと電気的接続を取れる位置にセットした。次いで、支持基材の上部からゴム製ロールにて押さえた後、支持基材をはがした。
実施例1と同様に発電特性の評価を行った。発電効率は2.2%であった。
【0069】
(比較例1)
Au箔の膜厚を5μm(ニラコ製 型番:AU−173138)とした以外は、実施例1と同様にして有機薄膜太陽電池を得た。
ただし、膜厚5μmのAu箔は自立性があり支持基材であるPETフィルムから剥がれるため、素子に載せる際に、PETフィルムの上部からメンディングテープにて固定した。次いで、ゴムロールで押さえた後、さらにステンレス製のロールで押さえた。その後、支持基材を剥がした。
【0070】
実施例1と同様に発電特性の評価を行った。発電効率は0.1%以下であった。
【符号の説明】
【0071】
100 有機薄膜太陽電池
101 透明性基板
102 透明電極層
103 有機半導体層
104 裏面電極層
110 積層体
図1
図2
図3
図4