特許第6095492号(P6095492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6095492-有機化合物の濃縮水溶液の製造方法 図000005
  • 特許6095492-有機化合物の濃縮水溶液の製造方法 図000006
  • 特許6095492-有機化合物の濃縮水溶液の製造方法 図000007
  • 特許6095492-有機化合物の濃縮水溶液の製造方法 図000008
  • 特許6095492-有機化合物の濃縮水溶液の製造方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095492
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】有機化合物の濃縮水溶液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 17/00 20060101AFI20170306BHJP
   C07C 31/22 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 29/76 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 59/08 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 51/43 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 47/19 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 45/81 20060101ALI20170306BHJP
   C07H 3/02 20060101ALI20170306BHJP
   C07D 307/46 20060101ALI20170306BHJP
   B01D 1/16 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   B01D17/00 502
   C07C31/22
   C07C31/20 Z
   C07C29/76
   C07C59/08
   C07C51/43
   C07C47/19
   C07C45/81
   C07H3/02
   C07D307/46
   B01D1/16
【請求項の数】19
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2013-119195(P2013-119195)
(22)【出願日】2013年6月5日
(65)【公開番号】特開2014-24057(P2014-24057A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2016年3月4日
(31)【優先権主張番号】特願2012-137907(P2012-137907)
(32)【優先日】2012年6月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】難波 正典
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 淳之介
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−019735(JP,A)
【文献】 特開平08−131701(JP,A)
【文献】 特開2003−200031(JP,A)
【文献】 特開2003−265160(JP,A)
【文献】 特開2003−289847(JP,A)
【文献】 特開2008−149316(JP,A)
【文献】 特開2009−142727(JP,A)
【文献】 特開2012−096206(JP,A)
【文献】 特開2012−245459(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0000842(US,A1)
【文献】 米国特許第04599459(US,A)
【文献】 松浦一雄,矢野陽子,脇坂昭弘,"新規な分離技術「超音波霧化分離」",生物工学会誌,2007年12月25日,Vol.85 No.12,Page.554-555
【文献】 安田啓司,外6名,"超音波霧化を用いた分離挙動に及ぼす溶液物性の影響",化学工学会第68年会研究発表講演要旨集,2003年 2月23日,Page.550
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 1/00−8/00
B01D 17/00−17/12
B01J 19/00−19/32
C07B 31/00−63/04
C07C 1/00−409/44
C12F 1/00−1/08
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に親水基を2個以上有する有機化合物を濃度40質量%未満で含有する水溶液を、前記有機化合物の濃度が40質量%以上となるように調整する濃度調整ステップと、
前記濃度調整ステップにおいて前記有機化合物の濃度を40質量%以上に調整した水溶液に超音波を照射して水を霧化させることにより脱水濃縮する脱水濃縮ステップと、
を含む、有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【請求項2】
前記濃度調整ステップにおける濃度調整を、前記有機化合物を濃度40質量%未満で含有する水溶液と、前記有機化合物又は前記有機化合物の濃度が40質量%よりも高い水溶液とを混合することにより行う、請求項1に記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【請求項3】
前記脱水濃縮ステップにおいて脱水濃縮して得られた前記有機化合物の濃縮水溶液を回収する回収ステップを更に含む、請求項1又は2に記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【請求項4】
前記濃度調整ステップにおける濃度調整を、超音波振動子が設けられた霧化槽を備えた超音波霧化装置において行う、請求項1〜3のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【請求項5】
前記濃度調整ステップにおいて、前記有機化合物の濃度を40質量%以上に調整した水溶液を、超音波振動子が設けられた霧化槽に仕込む、請求項1〜4のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【請求項6】
前記有機化合物の濃縮水溶液の製造を回分操作で行う、請求項1〜5のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【請求項7】
前記脱水濃縮ステップにおいて脱水濃縮する前記有機化合物の水溶液に、前記濃度調整ステップにおいて前記有機化合物を濃度40質量%未満で含有する水溶液を、前記有機化合物の濃度が40質量%以上となるように調整した水溶液を連続的又は間欠的に供給し、前記有機化合物の濃縮水溶液の製造を半回分操作で行う、請求項1〜5のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【請求項8】
前記脱水濃縮ステップにおいて脱水濃縮する前記有機化合物の水溶液に、前記濃度調整ステップにおいて前記有機化合物を濃度40質量%未満で含有する水溶液を、前記有機化合物の濃度が40質量%以上となるように調整した水溶液を連続的又は間欠的に供給すると共に、前記有機化合物の濃縮水溶液を連続的又は間欠的に回収し、前記有機化合物の濃縮水溶液の製造を連続操作で行う、請求項1〜5のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【請求項9】
前記脱水濃縮ステップにおいて前記有機化合物の水溶液に連続的又は間欠的に供給する水溶液の前記濃度調整ステップにおける濃度調整を、前記脱水濃縮ステップと同時進行的に、前記有機化合物を濃度40質量%未満で含有する水溶液と、前記有機化合物の濃度が40質量%よりも高い水溶液とを混合することにより行う、請求項7又は8に記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【請求項10】
前記有機化合物の濃度が40質量%よりも高い水溶液の一部又は全部が、前記脱水濃縮ステップにおいて脱水濃縮して得られた前記有機化合物の濃縮水溶液である、請求項9に記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【請求項11】
前記脱水濃縮ステップにおいて脱水濃縮する前記有機化合物の水溶液に、前記有機化合物を濃度40質量%未満で含有する水溶液を連続的又は間欠的に供給し、このとき、有機化合物を濃度40質量%未満で含有する水溶液の供給流量を、前記脱水濃縮する前記有機化合物の水溶液における前記有機化合物の濃度が40質量%以上となるように制御することにより前記濃度調整ステップを実施し、前記有機化合物の濃縮水溶液の製造を半回分操作で行う、請求項1〜5のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【請求項12】
前記脱水濃縮ステップにおいて脱水濃縮する前記有機化合物の水溶液に、前記有機化合物を濃度40質量%未満で含有する水溶液を連続的又は間欠的に供給すると共に、前記脱水濃縮ステップにおいて脱水濃縮して得られた前記有機化合物の濃縮水溶液を連続的又は間欠的に回収し、このとき、前記有機化合物を濃度40質量%未満で含有する水溶液の供給流量及び前記濃縮水溶液の回収流量を、前記脱水濃縮する前記有機化合物の水溶液における前記有機化合物の濃度が40質量%以上となるように制御することにより前記濃度調整ステップを実施し、前記有機化合物の濃縮水溶液の製造を連続操作で行う、請求項1〜5のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【請求項13】
前記脱水濃縮ステップにおいて超音波を照射する水溶液の温度を10℃以上100℃以下とする、請求項1〜12のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【請求項14】
前記有機化合物が、親水基として、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、エステル基、アセタール基、ヘミアセタール基、エーテル基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、スルホン酸基、硫酸エステル基、ホスホン酸基、リン酸基、及びウレイド基のうちから選ばれる1種又は2種以上を有する、請求項1〜13のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【請求項15】
前記有機化合物が多価アルコールを含む、請求項14に記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【請求項16】
前記有機化合物がカルボキシル基を有する有機化合物を含む、請求項14又は15に記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【請求項17】
前記有機化合物の分子内の炭素数が2以上、22以下である、請求項1〜16のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【請求項18】
前記有機化合物の分子量が50以上、400以下である、請求項1〜17のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【請求項19】
分子内に親水基を2個以上有する有機化合物を濃度40質量%未満で含有する水溶液を、前記有機化合物の濃度が40質量%以上となるように調整した後、前記有機化合物の濃度が40質量%以上となるように調整した水溶液に超音波を照射して水を霧化させることにより脱水濃縮する脱水濃縮方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物の濃縮水溶液の製造方法及びその脱水濃縮方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機化合物の水溶液に超音波を照射して水を霧化させることにより脱水する技術が研究開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1及び2には、植物系原料の発酵物に超音波を照射して水を霧化させることにより乳酸を分離する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、粘度が25mPa・s以下のグリセリン水溶液に超音波を照射することにより水を霧化させて脱水濃縮する濃縮グリセリンの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−115165号公報
【特許文献2】特開2010−233543号公報
【特許文献3】特開2012−144530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、分子内に親水基を2個以上有する有機化合物を含有する水溶液に超音波を照射して脱水濃縮するときの効率を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、分子内に親水基を2個以上有する有機化合物を濃度40質量%未満で含有する水溶液を、前記有機化合物の濃度が40質量%以上となるように調整する濃度調整ステップと、前記濃度調整ステップにおいて前記有機化合物の濃度を40質量%以上に調整した水溶液に超音波を照射して水を霧化させることにより脱水濃縮する脱水濃縮ステップとを含む有機化合物の濃縮水溶液の製造方法である。
【0008】
本発明は、分子内に親水基を2個以上有する有機化合物を濃度40質量%未満で含有する水溶液を、前記有機化合物の濃度が40質量%以上となるように調整した後、前記有機化合物の濃度が40質量%以上となるように調整した水溶液に超音波を照射して水を霧化させることにより脱水濃縮する脱水濃縮方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、脱水濃縮前に、水溶液における分子内に親水基を2個以上有する有機化合物の濃度を、40質量%未満から40質量%以上に調整するので、それによって水溶液に超音波を照射した際に発生する霧滴に含まれる有機化合物の濃度が低下し、水溶液からは水が選択的に除去されることとなり、その結果として、超音波の照射による脱水濃縮の効率、すなわち、超音波を照射した際のエネルギーあたりの脱水効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】態様1で用いる超音波霧化装置の構成を示すブロック図である。
図2】態様2及び3で用いる超音波霧化装置の構成を示すブロック図である。
図3】態様2A及び3Aで用いる超音波霧化装置の構成を示すブロック図である。
図4】(a)〜(c)は、態様2A及び3Aで用いる別の超音波霧化装置の構成を示すブロック図である。
図5】実施例で用いた実験用の超音波霧化装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0012】
本実施形態に係る有機化合物の濃縮水溶液の製造方法は、濃度調整ステップと脱水濃縮ステップとを含む。そして、濃度調整ステップでは、分子内に親水基を2個以上有する有機化合物(以下、本出願では「有機化合物A」とも称する。)を濃度40質量%未満で含有する水溶液を原料とし、その原料水溶液を、有機化合物Aの濃度が40質量%以上となるように調整する。脱水濃縮ステップでは、濃度調整ステップにおいて有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整した水溶液(以下、本出願では「高濃度原料水溶液」とも称する。)に超音波を照射して水を霧化させることにより脱水濃縮する。
【0013】
本発明者らは、有機化合物の水溶液に超音波を照射して水を霧化させることにより脱水濃縮する場合、分子内に親水基を2個以上有する有機化合物では、水溶液における有機化合物の濃度が一定の境界濃度までは濃度上昇と共に超音波を照射した際に発生する霧滴に含まれる有機化合物の濃度も上昇し、一方、超音波を照射する水溶液における有機化合物の濃度がその境界濃度を超えると、超音波を照射した際に発生する霧滴に含まれる有機化合物の濃度が低下するということを見出した。そして、有機化合物が分子内に親水基を2個以上有する場合、水溶液における有機化合物の濃度が40質量%以上であれば、超音波を照射した際に発生する霧滴に含まれる有機化合物の濃度が極めて低いことを発見した。
【0014】
このように霧滴に含まれる有機化合物の濃度が低くなる理由は定かではないが、分子内に親水基を2個以上有する有機化合物は、親水基を多く持つことから、分子内に親水基を1個有する有機化合物に比べて相互作用する有機化合物の分子が多く、また、有機化合物同士の相互作用が強く、そのために霧化されにくくなる。また、有機化合物は、水溶液中の濃度が高くなると、有機化合物同士の相互作用の頻度が有機化合物と水の相互作用の頻度よりも多くなり、そのために霧化されにくくなる。これらの因子の相乗効果により、分子内に親水基を2個以上有する有機化合物の場合、水溶液における有機化合物の濃度が40質量%以上であれば、超音波を照射した際に発生する霧滴に含まれる有機化合物の濃度が極めて低くなり、水溶液からは水が選択的に除去され、その結果として、超音波の照射による脱水濃縮の効率を高めることができるのであると考えられる。
【0015】
以上のことから、本実施形態に係る有機化合物の濃縮水溶液の製造方法によれば、脱水濃縮前に、原料水溶液における有機化合物Aの濃度を、40質量%未満から40質量%以上に調整するので、それによってその濃度調整した高濃度原料水溶液に超音波を照射した際に発生する霧滴に含まれる有機化合物Aの濃度が低下し、高濃度原料水溶液からは水が選択的に除去されることとなり、その結果として、超音波の照射による脱水濃縮の効率、すなわち、超音波を照射した際のエネルギーあたりの脱水効率を高めることができる。
【0016】
<原料水溶液>
原料水溶液は、分子内に親水基を2個以上有する有機化合物Aを含有する。
【0017】
有機化合物Aの分子内の炭素数は、超音波の照射による脱水濃縮が高効率であるという観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上である。有機化合物Aの分子内の炭素数は、水への溶解性の観点から、好ましくは22以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは6以下である。
【0018】
有機化合物Aの分子量は、超音波の照射による脱水濃縮が高効率であるという観点から、好ましくは50以上、より好ましくは60以上、更に好ましくは70以上である。有機化合物Aの分子量は、水への溶解性の観点から、好ましくは400以下、より好ましくは300以下、更に好ましくは200以下である。
【0019】
有機化合物Aは分子内に親水基を2個以上有する。親水基とは、静電的相互作用や水素結合等によって水分子と弱い結合を作り、水に対して親和性を示すイオン性或いは高度の極性を有する官能基である。具体的には、親水基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、エステル基、アセタール基、ヘミアセタール基、エーテル基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、スルホン酸基、硫酸エステル基、ホスホン酸基、リン酸基、ウレイド基等が挙げられる。
【0020】
超音波の照射による脱水濃縮が高効率であるという観点から、親水基は、好ましくは水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アセタール基、ヘミアセタール基、アミノ基、アンモニウム基、スルホン酸基、硫酸エステル基、ホスホン酸基、及びリン酸基からなる群から選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくは水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アセタール基、ヘミアセタール基、アミノ基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1種又は2種以上、更に好ましくは水酸基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる1種又は2種以上である。
【0021】
有機化合物Aの分子内の親水基の個数は、超音波の照射による脱水濃縮が高効率であるという観点から2個以上である。有機化合物Aの親水基の個数は、同様の観点及び経済効率の観点から、好ましくは10個以下、より好ましくは8個以下、更に好ましくは5個以下、より更に好ましくは3個以下である。
【0022】
有機化合物Aは、同一の炭素原子に複数の親水基が結合していてもよく、また、隣接した炭素原子又は1個若しくは複数個のメチレン基等を隔てた炭素原子にそれぞれ親水基が結合していてもよく、更にこれらの両方の特徴を備えていてもよい。これらのうち好ましい有機化合物Aは、同一の炭素原子に複数の親水基が結合している有機化合物、隣接した炭素原子にそれぞれ親水基が結合している有機化合物である。
【0023】
有機化合物Aは、分子内に1種の親水基を2個以上有していてもよく、また、分子内に2種以上の親水基を有していてもよく、更にこれらの両方の特徴を備えていてもよい。
【0024】
また、有機化合物Aは、任意に水と相溶するものである場合、超音波の照射による脱水濃縮の効果が顕著である。有機化合物Aの25℃における水100g当たりの溶解度(以下「溶解度」と略す。)は、超音波の照射による脱水濃縮が高効率であるという観点から、好ましくは67g以上、より好ましくは100g以上、更に好ましくは150g以上であり、有機化合物Aと水とがあらゆる比率で相溶する溶解度であることがより更に好ましい。
【0025】
分子内に1種の親水基を2個以上有する有機化合物Aとしては、例えば、水酸基を2個以上有する多価アルコール、カルボキシル基を2個以上有する多価カルボン酸、アミノ基を2個以上有する多価アミン等が挙げられる。
【0026】
多価アルコールとしては、例えば、分子内に水酸基を2個有するエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオールなどのジオール;分子内に水酸基を3個有するグリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオールなどのトリオール;分子内に水酸基を4個有するペンタエリスリトールなどのテトラオール;グルコースやキシロースなどの糖類等が挙げられる。
【0027】
多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フランジカルボン酸などのジカルボン酸;クエン酸、トリメリット酸(ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸)、ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸などのトリカルボン酸;エチレンテトラカルボン酸、ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸などのテトラカルボン酸等が挙げられる。
【0028】
多価アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、パラフェニレンジアミンなどのジアミン;ジエチレントリアミンなどのトリアミン;トリエチレンテトラアミンなどのテトラアミン等が挙げられる。
【0029】
分子内に2種以上の親水基を有する有機化合物Aとしては、例えば、水酸基及びカルボキシル基を有するヒドロキシ酸、カルボキシル基及びアミノ基を有するアミノ酸、水酸基及びカルボニル基を有するヒドロキシアルデヒド等が挙げられる。
【0030】
ヒドロキシ酸は、水酸基及びカルボキシル基が同一の炭素原子に結合した乳酸や2−ヒドロキシ酪酸などのα−ヒドロキシ酸であってもよく、また、水酸基及びカルボキシル基が異なる炭素原子に結合した3−ヒドロキシ酪酸などの β−ヒドロキシ酸や4−ヒドロキシ酪酸などのγ−ヒドロキシ酸であってもよい。
【0031】
ヒドロキシ酸は、脂肪族ヒドロキシ酸であってもよく、また、芳香族ヒドロキシ酸であってもよい。脂肪族ヒドロキシ酸としては、例えば、2−ヒドロキシ酪酸、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられる。芳香族ヒドロキシ酸としては、例えば、サリチル酸等が挙げられる。
【0032】
アミノ酸は、カルボキシル基及びアミノ基が同一の炭素原子に結合したグリシンやα−アラニン、グルタミン、グルタミン酸、アスパラギン酸などのα−アミノ酸であってもよく、また、カルボキシル基及びアミノ基が異なる炭素原子に結合したβ−アラニンなどのβ−アミノ酸やγ-アミノ酪酸などのγ−アミノ酸であってもよい。
【0033】
アミノ酸は、脂肪族アミノ酸であってもよく、また、芳香族アミノ酸であってもよい。脂肪族アミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸等が挙げられる。芳香族アミノ酸としては、例えば、フェニルアラニン等が挙げられる。
【0034】
ヒドロキシアルデヒドとしては、例えば、ヒドロキシメチルフルフラールなどが挙げられる。
【0035】
これらのうち、超音波の照射による脱水濃縮が高効率であるという観点から、好ましくは、水酸基を2個以上有する多価アルコール、水酸基及びカルボキシル基を有するヒドロキシ酸、水酸基及びカルボニル基を有するヒドロキシアルデヒド、複素環及びカルボニル基を有する複素環アルデヒドであり、より好ましくはグリセリン(溶解度:∞)、乳酸(溶解度:614g以上)、グルコース(溶解度:91g)、ヒドロキシメチルフルフラール(溶解度:∞)である。
【0036】
原料水溶液における有機化合物Aの濃度は40質量%未満であるが、濃度調整ステップが高効率になるという観点から、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下である。原料水溶液における有機化合物Aの濃度は、同様の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、より更に好ましくは5質量%以上である。
【0037】
なお、原料水溶液には、超音波の照射による脱水濃縮の効率を高める効果を損なわない範囲において、有機化合物Aの他に、メタノール等、超音波の照射によって除去される成分や除去されずに残留する成分が含まれていてもよい。
【0038】
<濃度調整ステップ>
有機化合物Aの濃度が40質量%未満の原料水溶液を、その濃度が40質量%以上の高濃度原料水溶液に調整する手段は特に限定されない。
【0039】
その濃度調整手段としては、例えば、(a)有機化合物Aの濃度が40質量%未満の原料水溶液と、有機化合物A又は有機化合物Aの濃度が40質量%よりも高い水溶液(以下、本出願では「高濃度水溶液」とも称する。)とを混合する方法、(b)有機化合物Aの濃度が40質量%未満の原料水溶液を脱水濃縮する方法が挙げられる。これらのうちプロセスの効率が高いという観点からは(a)の方法が好ましい。
【0040】
(a)の方法では、高濃度水溶液における有機化合物Aの濃度は、原料水溶液の濃度調整が高効率になるという観点から、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である。また、高濃度水溶液における有機化合物Aの濃度は、超音波の照射による脱水濃縮が高効率であるという観点及び高濃度水溶液を容易に入手できるという観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、より更に好ましくは70質量%以下である。
【0041】
また、本実施形態に係る有機化合物の濃縮水溶液の製造方法におけるプロセスの効率を高める観点からは、高濃度水溶液として、当該プロセスによる生成物、すなわち超音波の照射により脱水濃縮した有機化合物Aの濃縮水溶液を使用することが好ましい。
【0042】
(b)の方法では、原料水溶液を脱水濃縮して有機化合物Aの濃度を40質量%以上に上昇させることにより高濃度原料水溶液の濃度調整を行えばよい。脱水濃縮手段は、超音波の照射であってもよく、また、それ以外の加熱による水分の蒸発等であってもよい。
【0043】
濃度調整ステップでは、(a)の方法又は(b)の方法により有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整した高濃度原料水溶液を、超音波振動子が設けられた霧化槽に仕込んでもよく、また、(a)の方法又は(b)の方法による濃度調整を、超音波振動子が設けられた霧化槽を備えた超音波霧化装置において行ってもよい。
【0044】
濃度調整後の高濃度原料水溶液における有機化合物Aの濃度は40質量%以上であるが、超音波の照射による脱水濃縮が高効率であるという観点から、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である。濃度調整後の高濃度原料水溶液における有機化合物Aの濃度は、同様の観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、より更に好ましくは70質量%以下である。
【0045】
<脱水濃縮ステップ>
濃度調整した高濃度原料水溶液に超音波を照射すると、液面から高濃度原料水溶液の液柱が立ち、その液柱から水が霧化し、その結果、高濃度原料水溶液が脱水濃縮される。なお、この脱水濃縮ステップは、濃度調整ステップ後に時間間隔をおいて行ってもよく、また、濃度調整ステップと同時進行的に連動して行ってもよい。
【0046】
ここで、高濃度原料水溶液に照射する超音波の振動数は、超音波の照射による脱水濃縮が高効率であるという観点から、好ましくは20kHz以上、より好ましくは1MHz以上である。高濃度原料水溶液に照射する超音波の振動数は、同様の観点から、好ましくは10MHz以下、より好ましくは5MHz以下である。高濃度原料水溶液への超音波の照射は、高濃度原料水溶液を貯留する霧化槽に設けた超音波振動子により行うことができる。
【0047】
超音波照射時における高濃度原料水溶液の温度は、高濃度原料水溶液が液体の状態であれば特に制限されるものではないが、超音波の照射による霧化の効率を高めると共にエネルギー消費を軽減する観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは30℃以上、更に好ましくは40℃以上、より更に好ましくは50℃以上である。超音波照射時における高濃度原料水溶液の温度は、加圧や温調等の設備負荷を低減する観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下、より更に好ましくは70℃以下である。高濃度原料水溶液の温度調整は、高濃度原料水溶液を貯留する霧化槽に付設された温調機構により行うことができる。
【0048】
超音波の照射により高濃度原料水溶液から霧化した液滴はキャリアガスと共に排出することができる。キャリアガスとしては、特に限定されるものではないが、例えば、空気、窒素ガス、その他の不活性ガス等を用いることができる。キャリアガスの温度は、超音波を照射している高濃度原料水溶液の温度と極端な差がなければ特に制限されないが、常温又は高濃度原料水溶液と同じ温度であることが好ましい。
【0049】
超音波照射時における高濃度原料水溶液中の有機化合物Aの濃度は、超音波の照射による脱水濃縮が高効率であるという観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは60質量%である。超音波照射時における高濃度原料水溶液中の有機化合物Aの濃度は、同様の観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、より更に好ましくは70質量%以下である。なお、脱水濃縮ステップでは、超音波の照射による脱水濃縮の効果に影響がない範囲で、上記の濃度範囲を外れても構わない。
【0050】
霧化した液滴における有機化合物Aの濃度は、超音波の照射による脱水濃縮が高効率であるという観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、より更に好ましくは0.25質量%以下である。
【0051】
超音波照射時における高濃度原料水溶液の粘度は、超音波の照射による脱水濃縮が高効率であるという観点から、超音波照射時における温度において、好ましくは25mPa・s以下、より好ましくは20mPa・s以下、更に好ましくは15mPa・s以下である。超音波照射時における高濃度原料水溶液の粘度は、同様の観点から、より好ましくは50℃において、好ましくは25mPa・s以下、より好ましくは20mPa・s以下、更に好ましくは15mPa・s以下である。超音波照射時における高濃度原料水溶液の粘度は、国際標準化機構ISO12058に準拠して求めることができる。具体的には、高濃度原料水溶液の粘度は、高濃度原料水溶液で満たしたキャピラリーを傾斜させて重力の影響下でボールが落下するのに要する時間を測定し、その時間に基づいて求めることができる。
【0052】
脱水濃縮後における濃縮水溶液中の有機化合物Aの濃度は、超音波の照射による脱水濃縮が高効率であるという観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは60質量%以上である。脱水濃縮後における濃縮水溶液中の有機化合物Aの濃度は、環境負荷を低減すると共に経済効率を高める観点から、好ましくは100質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは95質量%以下である。
【0053】
脱水濃縮後における濃縮水溶液の粘度は、超音波の照射による脱水濃縮を経済的に行うという観点から、超音波を照射する温度において、好ましくは25mPa・s以下、より好ましくは20mPa・s以下、更に好ましくは15mPa・s以下である。脱水濃縮後における濃縮水溶液の粘度は、同様の観点から、より好ましくは50℃において、好ましくは25mPa・s以下、より好ましくは20mPa・s以下、更に好ましくは15mPa・s以下である。
【0054】
<回収ステップ>
本実施形態に係る有機化合物の濃縮水溶液の製造方法は、脱水濃縮ステップにおいて脱水濃縮した有機化合物Aの濃縮水溶液を回収する回収ステップを更に含んでいてもよい。
【0055】
この回収ステップは、脱水濃縮ステップ後に行ってもよく、また、脱水濃縮ステップと同時進行的に連動して行ってもよく、さらに、濃度調整ステップ及び脱水濃縮ステップと同時進行的に連動して行ってもよい。回収ステップを、脱水濃縮ステップ、或いは、濃度調整ステップ及び脱水濃縮ステップと同時進行的に連動して行うことにより、有機化合物Aの濃縮水溶液を連続的に製造することができる。この回収ステップでの濃縮水溶液の回収は連続的に行ってもよく、また、間欠的に行ってもよい。
【0056】
なお、回収ステップで回収して得られた有機化合物Aの濃縮水溶液は、上述した通り、濃度調整ステップにおいて、濃度調整のために用いる高濃度水溶液として用いることができる。
【0057】
(具体的実施態様)
本実施形態に係る有機化合物の濃縮水溶液の製造方法の具体的態様について説明する。
【0058】
<態様1:回分操作>
態様1-(i)の回分操作では、図1に示す超音波霧化装置10を用い、霧化槽11外において、有機化合物Aの濃度が40質量%未満の原料水溶液と有機化合物A又は有機化合物Aの濃度が40質量%よりも高い高濃度水溶液とを混合して、有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整した高濃度原料水溶液を調製した後、或いは、原料水溶液を脱水濃縮して有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整した高濃度原料水溶液を調製した後、その高濃度原料水溶液を超音波霧化装置10の霧化槽11に仕込む(濃度調整ステップ)。後者の濃度調整のための脱水濃縮方法としては、例えば、超音波の照射による水の霧化、加熱による水分の蒸発等が挙げられる。そして、霧化槽11において、霧化槽11内に設けられた超音波振動子12により高濃度原料水溶液に超音波を照射して水を霧化させることにより脱水濃縮する(脱水濃縮ステップ)。
【0059】
態様1-(ii)の回分操作では、図1に示す超音波霧化装置10を用い、霧化槽11に有機化合物A又は高濃度水溶液を仕込み、そこに原料水溶液を添加して有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整した高濃度原料水溶液を調製する(濃度調整ステップ)。そして、霧化槽11において、超音波振動子12により高濃度原料水溶液に超音波を照射して水を霧化させることにより脱水濃縮する(脱水濃縮ステップ)。
【0060】
態様1-(iii)の回分操作では、図1に示す超音波霧化装置10を用い、霧化槽11に原料水溶液を仕込み、そこに有機化合物A又は高濃度水溶液を添加して有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整した高濃度原料水溶液を調製する(濃度調整ステップ)。そして、霧化槽11において、超音波振動子12により高濃度原料水溶液に超音波を照射して水を霧化させることにより脱水濃縮する(脱水濃縮ステップ)。
【0061】
態様1-(i)〜(iii)のいずれの回分操作でも、脱水濃縮後、得られた有機化合物Aの濃縮水溶液を、霧化槽11から延びる濃縮水溶液排出管13を介して排出して回収してもよい(回収ステップ)。
【0062】
<態様2:半回分操作>
[態様2A]
―態様2A-(i)―
態様2A-(i)の半回分操作では、図2〜4に示す超音波霧化装置10を用い、霧化槽11外において、有機化合物Aの濃度が40質量%未満の原料水溶液と有機化合物A又は有機化合物Aの濃度が40質量%よりも高い高濃度水溶液とを混合して、有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整した高濃度原料水溶液を調製した後、或いは、原料水溶液を脱水濃縮して有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整した高濃度原料水溶液を調製した後、それを直接超音波霧化装置10の霧化槽11に仕込む(濃度調整ステップ−初期)。後者の濃度調整のための脱水濃縮方法としては、例えば、超音波の照射による水の霧化、加熱による水分の蒸発等が挙げられる。そして、霧化槽11に初期に仕込んだ高濃度原料水溶液とは別に、有機化合物Aを濃度40質量%未満で含有する水溶液を、有機化合物Aの濃度が40質量%以上となるように調整した高濃度原料水溶液を調製し(濃度調整ステップ)、霧化槽11において、その高濃度原料水溶液を、原料槽14から延びて霧化槽11に接続された原料供給管15を介して連続的又は間欠的に供給しながら、霧化槽11内に設けられた超音波振動子12により高濃度原料水溶液に超音波を照射して水を霧化させることにより脱水濃縮する(脱水濃縮ステップ)。
【0063】
原料供給管15を介して霧化槽11に供給するための高濃度原料水溶液の調製方法として、原料槽14外において、原料水溶液に有機化合物A又は高濃度水溶液を混合して、有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整した高濃度原料水溶液を調製し、或いは、原料水溶液を脱水濃縮して有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整した高濃度原料水溶液を調製し、その高濃度原料水溶液を原料槽14に仕込んで貯留してもよい(態様2A-(i)-a)。この態様2A-(i)-aにおける高濃度原料水溶液の濃度調整ステップは、脱水濃縮ステップと同時進行的に連動して行ってもよい。その場合、前者の方法において、原料水溶液に混合する高濃度水溶液の一部又は全部が、脱水濃縮ステップにおいて得られた有機化合物Aの濃縮水溶液であってもよい。また、後者の濃度調整のための脱水濃縮方法としては、例えば、超音波の照射による水の霧化、加熱による水分の蒸発等が挙げられる。原料槽14に仕込む高濃度原料水溶液は、初期に霧化槽11に仕込む高濃度原料水溶液と同一であってもよい。
【0064】
原料槽14に有機化合物A又は高濃度水溶液を仕込み、そこに原料水溶液を添加することにより有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整した高濃度原料水溶液を調製してもよい(態様2A-(i)-b)。この態様2A-(i)-bにおける高濃度原料水溶液の濃度調整ステップは、脱水濃縮ステップと同時進行的に連動して行ってもよい。その場合、原料水溶液に混合する高濃度水溶液の一部又は全部が、脱水濃縮ステップにおいて得られた有機化合物Aの濃縮水溶液であってもよい。例えば、図3に示す超音波霧化装置10を用い、濃縮水溶液排出管13から分岐して原料槽14に接続された戻り管16を介して、脱水濃縮ステップにおいて得られた有機化合物Aの濃縮水溶液を原料槽14に供給し、それによって原料槽14に仕込む高濃度水溶液の一部又は全部が、有機化合物Aの濃縮水溶液になるようにしてもよい(態様2A-(i)-b’)。
【0065】
原料槽14に原料水溶液を仕込み、そこに有機化合物A又は高濃度水溶液を添加することにより有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整した高濃度原料水溶液を調製してもよい(態様2A-(i)-c)。この態様2A-(i)-cにおける高濃度原料水溶液の濃度調整ステップは、脱水濃縮ステップと同時進行的に連動して行ってもよい。その場合、原料水溶液に混合する高濃度水溶液の一部又は全部が、脱水濃縮ステップにおいて得られた有機化合物Aの濃縮水溶液であってもよい。例えば、図3に示す超音波霧化装置10を用い、濃縮水溶液排出管13から分岐して原料槽14に接続された戻り管16を介して、脱水濃縮ステップにおいて得られた有機化合物Aの濃縮水溶液を原料槽14に供給し、それによって原料槽14に仕込んだ原料水溶液に添加する高濃度水溶液の一部又は全部が、有機化合物Aの濃縮水溶液になるようにしてもよい(態様2A-(i)-c’)。
【0066】
原料槽14に原料水溶液を仕込み、それを脱水濃縮して有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整して高濃度原料水溶液を調製してもよい(態様2A-(i)-d)。濃度調整のための脱水濃縮方法としては、例えば、超音波の照射による水の霧化、加熱による水分の蒸発等が挙げられる。
【0067】
この高濃度原料水溶液の調製は、原料水溶液を原料槽14から原料供給管15を介して霧化槽11に供給する過程において行ってもよい。
【0068】
例えば、図4(a)に示す超音波霧化装置10を用い、原料槽14に原料水溶液を仕込み、その原料水溶液を、原料供給管15を介して霧化槽11に供給する過程において、原料供給管15に接続された有機化合物A供給管17を介して有機化合物A又は高濃度水溶液を合流させることにより、その有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整して高濃度原料水溶液を調製してもよい(態様2A-(i)-e)。この態様2A-(i)-eにおける高濃度原料水溶液の濃度調整ステップは、脱水濃縮ステップと同時進行的に連動して行われる。
【0069】
図4(b)に示す超音波霧化装置10を用い、原料槽14に原料水溶液を仕込み、その原料水溶液を、原料供給管15を介して霧化槽11に供給する過程において、濃縮水溶液排出管13から分岐して原料供給管15に接続された戻り管18を介して、脱水濃縮ステップにおいて得られた有機化合物Aの濃縮水溶液を合流させることにより、その有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整して高濃度原料水溶液を調製してもよい(態様2A-(i)-f)。この態様2A-(i)-fにおける高濃度原料水溶液の濃度調整ステップは、脱水濃縮ステップと同時進行的に連動して行われる。また、原料水溶液に混合する高濃度水溶液として、脱水濃縮ステップにおいて得られた有機化合物Aの濃縮水溶液が用いられる。
【0070】
図4(c)に示す超音波霧化装置10を用い、原料槽14に原料水溶液を仕込み、その原料水溶液を、原料供給管15を介して霧化槽11に供給する過程における原料供給管15に介設された濃度調整部19において、その有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整して高濃度原料水溶液を調製してもよい(態様2A-(i)-g)。この態様2A-(i)-gにおける高濃度原料水溶液の濃度調整ステップは、脱水濃縮ステップと同時進行的に連動して行われる。また、濃度調整部19では、脱水濃縮ステップにおいて得られた有機化合物Aの濃縮水溶液を用いて濃度調整を行ってもよい。
【0071】
濃度調整部19は、原料水溶液を超音波霧化により脱水濃縮する霧化槽で構成されていてもよい。その場合、各々、超音波振動子が設けられた霧化槽が連設され、上流側の濃度調整部19を構成する霧化槽では原料水溶液の濃度調整を行うと共に、下流側の霧化槽11において、濃度調整した高濃度原料水溶液の脱水濃縮を行う。また、濃度調整部19は、超音波霧化による脱水濃縮手段以外の手段であってもよく、例えば、原料水溶液の加熱による水分の蒸発により脱水濃縮する加熱槽で構成されていてもよい。
【0072】
−態様2A-(ii)−
態様2A-(ii)の半回分操作では、図2〜4に示す超音波霧化装置10を用い、霧化槽11に有機化合物A又は高濃度水溶液を仕込み、そこに原料水溶液を添加して有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整して高濃度原料水溶液を調製する(濃度調整ステップ−初期)。そして、霧化槽11に初期に仕込んだ高濃度原料水溶液とは別に、有機化合物Aを濃度40質量%未満で含有する水溶液を、有機化合物Aの濃度が40質量%以上となるように調整した高濃度原料水溶液を調製し(濃度調整ステップ)、霧化槽11において、その高濃度原料水溶液を、原料供給管15を介して連続的又は間欠的に供給しながら、超音波振動子12により高濃度原料水溶液に超音波を照射して水を霧化させることにより脱水濃縮する(脱水濃縮ステップ)。
【0073】
原料供給管15を介して霧化槽11に供給するための高濃度原料水溶液の調製方法としては、態様2A-(i)-a、態様2A-(i)-b、態様2A-(i)-b’、態様2A-(i)-c、態様2A-(i)-c’、態様2A-(i)-d、態様2A-(i)-e、態様2A-(i)-f、及び態様2A-(i)-gに準じた態様2A-(ii)-a、態様2A-(ii)-b、態様2A-(ii)-b’、態様2A-(ii)-c、態様2A-(ii)-c’、態様2A-(ii)-d、態様2A-(ii)-e、態様2A-(ii)-f、及び態様2A-(ii)-gの方法が挙げられる。
【0074】
−態様2A-(iii)−
態様2A-(iii)の半回分操作では、図2〜4に示す超音波霧化装置10を用い、霧化槽11に原料水溶液を仕込み、そこに有機化合物A又は高濃度水溶液を添加して有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整して高濃度原料水溶液を調製する(濃度調整ステップ−初期)。そして、霧化槽11に初期に仕込んだ高濃度原料水溶液とは別に、有機化合物Aを濃度40質量%未満で含有する水溶液を、有機化合物Aの濃度が40質量%以上となるように調整した高濃度原料水溶液を調製し(濃度調整ステップ)、霧化槽11において、その高濃度原料水溶液を、原料供給管15を介して連続的又は間欠的に供給しながら、超音波振動子12により高濃度原料水溶液に超音波を照射して水を霧化させることにより脱水濃縮する(脱水濃縮ステップ)。
【0075】
原料供給管15を介して霧化槽11に供給するための高濃度原料水溶液の調製方法としては、態様2A-(i)-a、態様2A-(i)-b、態様2A-(i)-b’、態様2A-(i)-c、態様2A-(i)-c’、態様2A-(i)-d、態様2A-(i)-e、態様2A-(i)-f、及び態様2A-(i)-gに準じた態様2A-(iii)-a、態様2A-(iii)-b、態様2A-(iii)-b’、態様2A-(iii)-c、態様2A-(iii)-c’、態様2A-(iii)-d、態様2A-(iii)-e、態様2A-(iii)-f、及び態様2A-(iii)-gの方法が挙げられる。
【0076】
−態様2A-(iv)−
態様2A-(iv)の半回分操作では、図2〜4に示す超音波霧化装置10を用い、霧化槽11外で調製した高濃度原料水溶液を、原料供給管15を介して霧化槽11に仕込む(濃度調整ステップ)。そして、それに引き続き、霧化槽11において、高濃度原料水溶液を、原料供給管15を介して連続的又は間欠的に供給しながら、超音波振動子12により高濃度原料水溶液に超音波を照射して水を霧化させることにより脱水濃縮する(脱水濃縮ステップ)。従って、この態様2A-(iv)の半回分操作では、霧化槽11に初期に仕込む高濃度原料水溶液と脱水濃縮ステップにおいて供給する高濃度水溶液とが同一となる。
【0077】
高濃度原料水溶液の調製方法としては、態様2A-(i)-a、態様2A-(i)-b、態様2A-(i)-c、態様2A-(i)-d、態様2A-(i)-e、及び態様2A-(i)-gに準じた態様2A-(iv)-a、態様2A-(iv)-b、態様2A-(iv)-c、態様2A-(iv)-d、態様2A-(iv)-e、及び態様2A-(iv)-gの方法が挙げられる。また、濃度調整ステップと脱水濃縮ステップとを同時進行的に連動して行う場合には、原料水溶液と混合する高濃度水溶液として、脱水濃縮ステップにおいて得られた有機化合物Aの濃縮水溶液を用いる態様2A-(i)-b’、態様2A-(i)-c’、及び態様2A-(i)-fに準じた態様2A-(iv)-b’、態様2A-(iv)-c’、及び態様2A-(iv)-fの方法を採用することもできる。
【0078】
態様2A-(i)〜(iv)のいずれの半回分操作でも、脱水濃縮後、得られた有機化合物Aの濃縮水溶液を、霧化槽11から延びる濃縮水溶液排出管13を介して排出して回収してもよい(回収ステップ)。
【0079】
[態様2B]
態様2Bの半回分操作では、図2に示す超音波霧化装置10を用い、霧化槽11に有機化合物A又は有機化合物Aの濃度が40質量%よりも高い高濃度水溶液を貯留する。そして、霧化槽11において、原料槽14に貯留された有機化合物Aの濃度が40質量%未満の原料水溶液を、原料槽14から延びて霧化槽11に接続された原料供給管15を介して連続的又は間欠的に供給し、原料水溶液と高濃度水溶液とを混合させることにより有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整した高濃度原料水溶液を調製しながら(濃度調整ステップ)、霧化槽11内に設けられた超音波振動子12により高濃度原料水溶液に超音波を照射して水を霧化させることにより脱水濃縮する(脱水濃縮ステップ)。このとき、原料水溶液の供給流量を、霧化槽11内の高濃度原料水溶液における有機化合物Aの濃度が40質量%以上となるように制御する。
【0080】
この態様2Bの半回分操作では、霧化槽11内で濃度調整ステップと脱水濃縮ステップとを同時進行的に連動して行う。このとき、霧化槽11では、超音波の照射による脱水濃縮により高濃度原料水溶液における有機化合物Aの濃度が上昇するため、原料供給管15を介した霧化槽11への原料水溶液の供給流量を少なくすることにより、霧化槽11内の高濃度原料水溶液における有機化合物Aの濃度を高く維持することができる。なお、初期に霧化槽11において高濃度水溶液の濃度調整を行ってもよいが、操作時間を短縮する観点からは、霧化槽11に有機化合物A又は超音波霧化装置10外で濃度調整した高濃度水溶液を仕込むことが好ましい。
【0081】
態様2Bの半回分操作では、脱水濃縮後、得られた有機化合物Aの濃縮水溶液を、霧化槽11から延びる濃縮水溶液排出管13を介して排出して回収してもよい(回収ステップ)。
【0082】
<態様3:連続操作>
[態様3A]
―態様3A-(i)―
態様3A-(i)の連続操作では、図2〜4に示す超音波霧化装置10を用い、霧化槽11外において、有機化合物Aの濃度が40質量%未満の原料水溶液と有機化合物A又は有機化合物Aの濃度が40質量%よりも高い高濃度水溶液とを混合して、有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整した高濃度原料水溶液を調製した後、或いは、原料水溶液を脱水濃縮して有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整した高濃度原料水溶液を調製した後、それを直接超音波霧化装置10の霧化槽11に仕込む(濃度調整ステップ−初期)。後者の濃度調整のための脱水濃縮方法としては、例えば、超音波の照射による水の霧化、加熱による水分の蒸発等が挙げられる。そして、霧化槽11に初期に仕込んだ高濃度原料水溶液とは別に、有機化合物Aを濃度40質量%未満で含有する水溶液を、有機化合物Aの濃度が40質量%以上となるように調整した高濃度原料水溶液を調製し(濃度調整ステップ)、霧化槽11において、その高濃度原料水溶液を、原料槽14から延びて霧化槽11に接続された原料供給管15を介して連続的又は間欠的に供給しながら、霧化槽11内に設けられた超音波振動子12により高濃度原料水溶液に超音波を照射して水を霧化させることにより脱水濃縮する(脱水濃縮ステップ)。また、脱水濃縮後の有機化合物Aの濃縮水溶液を、霧化槽11から延びる濃縮水溶液排出管13を介して連続的又は間欠的に排出して回収する(回収ステップ)。
【0083】
原料供給管15を介して霧化槽11に供給するための高濃度原料水溶液の調製方法として、原料槽14外において、原料水溶液に有機化合物A又は高濃度水溶液を混合して、有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整した高濃度原料水溶液を調製し、或いは、原料水溶液を脱水濃縮して有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整した高濃度原料水溶液を調製し、その高濃度原料水溶液を原料槽14に仕込んで貯留してもよい(態様3A-(i)-a)。この態様3A-(i)-aにおける高濃度原料水溶液の濃度調整ステップは、脱水濃縮ステップと同時進行的に連動して行ってもよい。その場合、前者の方法において、原料水溶液に混合する高濃度水溶液の一部又は全部が、脱水濃縮ステップにおいて得られた有機化合物Aの濃縮水溶液であってもよい。また、後者の濃度調整のための脱水濃縮方法としては、例えば、超音波の照射による水の霧化、加熱による水分の蒸発等が挙げられる。原料槽14に仕込む高濃度原料水溶液は、初期に霧化槽11に仕込む高濃度原料水溶液と同一であってもよい。
【0084】
原料槽14に有機化合物A又は高濃度水溶液を仕込み、そこに原料水溶液を添加することにより有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整した高濃度原料水溶液を調製してもよい(態様3A-(i)-b)。この態様3A-(i)-bにおける高濃度原料水溶液の濃度調整ステップは、脱水濃縮ステップと同時進行的に連動して行ってもよい。その場合、原料水溶液に混合する高濃度水溶液の一部又は全部が、脱水濃縮ステップにおいて得られた有機化合物Aの濃縮水溶液であってもよい。例えば、図3に示す超音波霧化装置10を用い、濃縮水溶液排出管13から分岐して原料槽14に接続された戻り管16を介して、脱水濃縮ステップにおいて得られた有機化合物Aの濃縮水溶液を原料槽14に供給し、それによって原料槽14に仕込む高濃度水溶液の一部又は全部が、有機化合物Aの濃縮水溶液になるようにしてもよい(態様3A-(i)-b’)。
【0085】
原料槽14に原料水溶液を仕込み、そこに有機化合物A又は高濃度水溶液を添加することにより有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整した高濃度原料水溶液を調製してもよい(態様3A-(i)-c)。この態様3A-(i)-cにおける高濃度原料水溶液の濃度調整ステップは、脱水濃縮ステップと同時進行的に連動して行ってもよい。その場合、原料水溶液に混合する高濃度水溶液の一部又は全部が、脱水濃縮ステップにおいて得られた有機化合物Aの濃縮水溶液であってもよい。例えば、図3に示す超音波霧化装置10を用い、濃縮水溶液排出管13から分岐して原料槽14に接続された戻り管16を介して、脱水濃縮ステップにおいて得られた有機化合物Aの濃縮水溶液を原料槽14に供給し、それによって原料槽14に仕込んだ原料水溶液に添加する高濃度水溶液の一部又は全部が、有機化合物Aの濃縮水溶液になるようにしてもよい(態様3A-(i)-c’)。
【0086】
原料槽14に原料水溶液を仕込み、それを脱水濃縮して有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整して高濃度原料水溶液を調製してもよい(態様3A-(i)-d)。濃度調整のための脱水濃縮方法としては、例えば、超音波の照射による水の霧化、加熱による水分の蒸発等が挙げられる。
【0087】
この高濃度原料水溶液の調製は、原料水溶液を原料槽14から原料供給管15を介して霧化槽11に供給する過程において行ってもよい。
【0088】
例えば、図4(a)に示す超音波霧化装置10を用い、原料槽14に原料水溶液を仕込み、その原料水溶液を、原料供給管15を介して霧化槽11に供給する過程において、原料供給管15に接続された有機化合物A供給管17を介して有機化合物A又は高濃度水溶液を合流させることにより、その有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整して高濃度原料水溶液を調製してもよい(態様3A-(i)-e)。この態様3A-(i)-eにおける高濃度原料水溶液の濃度調整ステップは、脱水濃縮ステップと同時進行的に連動して行われる。
【0089】
図4(b)に示す超音波霧化装置10を用い、原料槽14に原料水溶液を仕込み、その原料水溶液を、原料供給管15を介して霧化槽11に供給する過程において、濃縮水溶液排出管13から分岐して原料供給管15に接続された戻り管18を介して、脱水濃縮ステップにおいて得られた有機化合物Aの濃縮水溶液を合流させることにより、その有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整して高濃度原料水溶液を調製してもよい(態様3A-(i)-f)。この態様3A-(i)-fにおける高濃度原料水溶液の濃度調整ステップは、脱水濃縮ステップと同時進行的に連動して行われる。また、原料水溶液に混合する高濃度水溶液として、脱水濃縮ステップにおいて得られた有機化合物Aの濃縮水溶液が用いられる。
【0090】
図4(c)に示す超音波霧化装置10を用い、原料槽14に原料水溶液を仕込み、その原料水溶液を、原料供給管15を介して霧化槽11に供給する過程における原料供給管15に介設された濃度調整部19において、その有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整して高濃度原料水溶液を調製してもよい(態様3A-(i)-g)。この態様3A-(i)-gにおける高濃度原料水溶液の濃度調整ステップは、脱水濃縮ステップと同時進行的に連動して行われる。また、濃度調整部19では、脱水濃縮ステップにおいて得られた有機化合物Aの濃縮水溶液を用いて濃度調整を行ってもよい。
【0091】
濃度調整部19は、原料水溶液を超音波霧化により脱水濃縮する霧化槽で構成されていてもよい。その場合、各々、超音波振動子が設けられた霧化槽が連設され、上流側の濃度調整部19を構成する霧化槽では原料水溶液の濃度調整を行うと共に、下流側の霧化槽11において、濃度調整した高濃度原料水溶液の脱水濃縮を行う。また、濃度調整部19は、超音波霧化による脱水濃縮手段以外の手段であってもよく、例えば、原料水溶液の加熱による水分の蒸発により脱水濃縮する加熱槽で構成されていてもよい。
【0092】
−態様3A-(ii)−
態様3A-(ii)の連続操作では、図2〜4に示す超音波霧化装置10を用い、霧化槽11に有機化合物A又は高濃度水溶液を仕込み、そこに原料水溶液を添加して有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整して高濃度原料水溶液を調製する(濃度調整ステップ−初期)。そして、霧化槽11に初期に仕込んだ高濃度原料水溶液とは別に、有機化合物Aを濃度40質量%未満で含有する水溶液を、有機化合物Aの濃度が40質量%以上となるように調整した高濃度原料水溶液を調製し(濃度調整ステップ)、霧化槽11において、その高濃度原料水溶液を、原料供給管15を介して連続的又は間欠的に供給しながら、超音波振動子12により高濃度原料水溶液に超音波を照射して水を霧化させることにより脱水濃縮する(脱水濃縮ステップ)。また、脱水濃縮後の有機化合物Aの濃縮水溶液を、濃縮水溶液排出管13を介して連続的又は間欠的に排出して回収する(回収ステップ)。
【0093】
原料供給管15を介して霧化槽11に供給するための高濃度原料水溶液の調製方法としては、態様3A-(i)-a、態様3A-(i)-b、態様3A-(i)-b’、態様3A-(i)-c、態様3A-(i)-c’、態様3A-(i)-d、態様3A-(i)-e、態様3A-(i)-f、及び態様3A-(i)-gに準じた態様3A-(ii)-a、態様3A-(ii)-b、態様3A-(ii)-b’、態様3A-(ii)-c、態様3A-(ii)-c’、態様3A-(ii)-d、態様3A-(ii)-e、態様3A-(ii)-f、及び態様3A-(ii)-gの方法が挙げられる。
【0094】
−態様3A-(iii)−
態様3A-(iii)の連続操作では、図2〜4に示す超音波霧化装置10を用い、霧化槽11に原料水溶液を仕込み、そこに有機化合物A又は高濃度水溶液を添加して有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整して高濃度原料水溶液を調製する(濃度調整ステップ−初期)。そして、霧化槽11に初期に仕込んだ高濃度原料水溶液とは別に、有機化合物Aを濃度40質量%未満で含有する水溶液を、有機化合物Aの濃度が40質量%以上となるように調整した高濃度原料水溶液を調製し(濃度調整ステップ)、霧化槽11において、その高濃度原料水溶液を、原料供給管15を介して連続的又は間欠的に供給しながら、超音波振動子12により高濃度原料水溶液に超音波を照射して水を霧化させることにより脱水濃縮する(脱水濃縮ステップ)。また、脱水濃縮後の有機化合物Aの濃縮水溶液を、濃縮水溶液排出管13を介して連続的又は間欠的に排出して回収する(回収ステップ)。
【0095】
原料供給管15を介して霧化槽11に供給するための高濃度原料水溶液の調製方法としては、態様3A-(i)-a、態様3A-(i)-b、態様3A-(i)-b’、態様3A-(i)-c、態様3A-(i)-c’、態様3A-(i)-d、態様3A-(i)-e、態様3A-(i)-f、及び態様3A-(i)-gに準じた態様3A-(iii)-a、態様3A-(iii)-b、態様3A-(iii)-b’、態様3A-(iii)-c、態様3A-(iii)-c’、態様3A-(iii)-d、態様3A-(iii)-e、態様3A-(iii)-f、及び態様3A-(iii)-gの方法が挙げられる。
【0096】
−態様3A-(iv)−
態様3A-(iv)の連続操作では、図2〜4に示す超音波霧化装置10を用い、霧化槽11外で調製した高濃度原料水溶液を、原料供給管15を介して霧化槽11に仕込む(濃度調整ステップ)。そして、それに引き続き、霧化槽11において、高濃度原料水溶液を、原料供給管15を介して連続的又は間欠的に供給しながら、超音波振動子12により高濃度原料水溶液に超音波を照射して水を霧化させることにより脱水濃縮する(脱水濃縮ステップ)。従って、この態様3A-(iv)の連続操作では、霧化槽11に初期に仕込む高濃度原料水溶液と脱水濃縮ステップにおいて供給する高濃度水溶液とが同一となる。また、脱水濃縮後の有機化合物Aの濃縮水溶液を、濃縮水溶液排出管13を介して連続的又は間欠的に排出して回収する(回収ステップ)。
【0097】
高濃度原料水溶液の調製方法としては、態様3A-(i)-a、態様3A-(i)-b、態様3A-(i)-c、態様3A-(i)-d、態様3A-(i)-e、及び態様3A-(i)-gに準じた態様3A-(iv)-a、態様3A-(iv)-b、態様3A-(iv)-c、態様3A-(iv)-d、態様3A-(iv)-e、及び態様3A-(iv)-gの方法が挙げられる。また、定常時において、濃度調整ステップと脱水濃縮ステップとを同時進行的に連動して行う場合には、原料水溶液と混合する高濃度水溶液として、脱水濃縮ステップにおいて得られた有機化合物Aの濃縮水溶液を用いる態様3A-(i)-b’、態様3A-(i)-c’、及び態様3A-(i)-fに準じた態様3A-(iv)-b’、態様3A-(iv)-c’、及び態様3A-(iv)-fの方法を採用することもできる。
【0098】
[態様3B]
態様3Bの連続操作では、図2に示す超音波霧化装置10を用い、霧化槽11に有機化合物A又は有機化合物Aの濃度が40質量%よりも高い高濃度水溶液を貯留する。そして、霧化槽11において、原料槽14に貯留された有機化合物Aの濃度が40質量%未満の原料水溶液を、原料槽14から延びて霧化槽11に接続された原料供給管15を介して連続的又は間欠的に供給し、原料水溶液と高濃度水溶液とを混合させることにより有機化合物Aの濃度を40質量%以上に調整した高濃度原料水溶液を調製しながら(濃度調整ステップ)、霧化槽11内に設けられた超音波振動子12により高濃度原料水溶液に超音波を照射して水を霧化させることにより脱水濃縮する(脱水濃縮ステップ)。また、脱水濃縮後の有機化合物Aの濃縮水溶液を、霧化槽11から延びる濃縮水溶液排出管13を介して連続的又は間欠的に排出して回収する(回収ステップ)。このとき、原料水溶液の供給流量及び濃縮水溶液の回収流量を、霧化槽11内の高濃度原料水溶液における有機化合物Aの濃度が40質量%以上となるように制御する。
【0099】
この態様3Bの連続操作では、霧化槽11内で濃度調整ステップと脱水濃縮ステップとを同時進行的に連動して行う。このとき、霧化槽11では、超音波の照射による脱水濃縮により高濃度原料水溶液における有機化合物Aの濃度が上昇するため、原料供給管15を介した霧化槽11への原料水溶液の供給流量を少なくすることにより、霧化槽11内の高濃度原料水溶液における有機化合物Aの濃度を高く維持することができる。なお、初期に霧化槽11において高濃度水溶液の濃度調整を行ってもよいが、操作時間を短縮する観点からは、霧化槽11に有機化合物A又は超音波霧化装置10外で濃度調整した高濃度水溶液を仕込むことが好ましい。
【0100】
上述した実施形態に関し、更に以下の濃縮水溶液の製造方法及び濃縮方法を開示する。
【0101】
<1>分子内に親水基を2個以上有する有機化合物を濃度40質量%未満で含有する水溶液を、前記有機化合物の濃度が40質量%以上となるように調整する濃度調整ステップと、前記濃度調整ステップにおいて前記有機化合物の濃度を40質量%以上に調整した水溶液に超音波を照射して水を霧化させることにより脱水濃縮する脱水濃縮ステップとを含む、有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0102】
<2>前記原料水溶液における前記有機化合物の濃度が、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、より更に好ましくは5質量%以上である、前記<1>に記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0103】
<3>前記濃度調整ステップにおいて濃度調整した水溶液における前記有機化合物の濃度が、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、また、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、より更に好ましくは70質量%以下である、前記<1>又は<2>に記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0104】
<4>前記濃度調整ステップにおける濃度調整を、前記有機化合物を濃度40質量%未満で含有する水溶液と、前記有機化合物又は前記有機化合物の濃度が40質量%よりも高い水溶液とを混合することにより行う、前記有機化合物又は前記有機化合物の濃度が40質量%よりも高く、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、また、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、より更に好ましくは70質量%以下である水溶液とを混合することにより行う、前記<1>〜<3>のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0105】
<5>前記脱水濃縮ステップにおいて脱水濃縮して得られた前記有機化合物の濃縮水溶液を回収する回収ステップを更に含む、前記<1>〜<4>のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0106】
<6>前記濃度調整ステップにおける濃度調整を、超音波振動子が設けられた霧化槽を備えた超音波霧化装置において行う、前記<1>〜<5>のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0107】
<7>前記濃度調整ステップにおいて、前記有機化合物の濃度を40質量%以上に調整した水溶液を、超音波振動子が設けられた霧化槽に仕込む、前記<1>〜<6>のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0108】
<8>前記有機化合物の濃縮水溶液の製造を回分操作で行う、前記<1>〜<7>のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0109】
<9>前記脱水濃縮ステップにおいて脱水濃縮する前記有機化合物の水溶液に、前記濃度調整ステップにおいて前記有機化合物を濃度40質量%未満で含有する水溶液を、前記有機化合物の濃度が40質量%以上となるように調整した水溶液を連続的又は間欠的に供給し、前記有機化合物の濃縮水溶液の製造を半回分操作で行う、前記<1>〜<7>のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0110】
<10>前記脱水濃縮ステップにおいて脱水濃縮する前記有機化合物の水溶液に、前記濃度調整ステップにおいて前記有機化合物を濃度40質量%未満で含有する水溶液を、前記有機化合物の濃度が40質量%以上となるように調整した水溶液を連続的又は間欠的に供給すると共に、前記有機化合物の濃縮水溶液を連続的又は間欠的に回収し、前記有機化合物の濃縮水溶液の製造を連続操作で行う、前記<1>〜<7>のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0111】
<11>前記脱水濃縮ステップにおいて前記有機化合物の水溶液に連続的又は間欠的に供給する水溶液の前記濃度調整ステップにおける濃度調整を、前記脱水濃縮ステップと同時進行的に、前記有機化合物を濃度40質量%未満で含有する水溶液と、前記有機化合物の濃度が40質量%よりも高く、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、また、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、より更に好ましくは70質量%以下である水溶液とを混合することにより行う、前記<9>又は<10>に記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0112】
<12>前記有機化合物の濃度が40質量%よりも高い水溶液の一部又は全部が、前記脱水濃縮ステップにおいて脱水濃縮して得られた前記有機化合物の濃縮水溶液である、前記<11>に記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0113】
<13>前記脱水濃縮ステップにおいて脱水濃縮する前記有機化合物の水溶液に、前記有機化合物を濃度40質量%未満で含有する水溶液を連続的又は間欠的に供給し、このとき、有機化合物を濃度40質量%未満で含有する水溶液の供給流量を、前記脱水濃縮する前記有機化合物の水溶液における前記有機化合物の濃度が40質量%以上となるように制御することにより前記濃度調整ステップを実施し、前記有機化合物の濃縮水溶液の製造を半回分操作で行う、前記<1>〜<7>のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0114】
<14>前記脱水濃縮ステップにおいて脱水濃縮する前記有機化合物の水溶液に、前記有機化合物を濃度40質量%未満で含有する水溶液を連続的又は間欠的に供給すると共に、前記脱水濃縮ステップにおいて脱水濃縮して得られた前記有機化合物の濃縮水溶液を連続的又は間欠的に回収し、このとき、前記有機化合物を濃度40質量%未満で含有する水溶液の供給流量及び前記濃縮水溶液の回収流量を、前記脱水濃縮する前記有機化合物の水溶液における前記有機化合物の濃度が40質量%以上となるように制御することにより前記濃度調整ステップを実施し、前記有機化合物の濃縮水溶液の製造を連続操作で行う、前記<1>〜<7>のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0115】
<15>前記脱水濃縮ステップにおいて、超音波照射時における水溶液中の前記有機化合物の濃度が、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは60質量%であり、また、好ましくは99質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、より更に好ましくは70質量%以下である、前記<1>〜<14>のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0116】
<16>前記脱水濃縮ステップにおいて、霧化した液滴における前記有機化合物の濃度が、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、より更に好ましくは0.25質量%以下である、前記<1>〜<15>のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0117】
<17>前記脱水濃縮ステップにおいて、超音波照射時における水溶液の粘度が、好ましくは25mPa・s以下、より好ましくは20mPa・s以下、更に好ましくは15mPa・s以下である、前記<1>〜<16>のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0118】
<18>前記脱水濃縮ステップにおいて、脱水濃縮後における濃縮水溶液中の前記有機化合物の濃度が、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは60質量%以上であり、また、好ましくは100質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは95質量%以下である、前記<1>〜<17>のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0119】
<19>前記脱水濃縮ステップにおいて、脱水濃縮後における前記有機化合物の濃縮水溶液の粘度が、好ましくは25mPa・s以下、より好ましくは20mPa・s以下、更に好ましくは15mPa・s以下である、前記<1>〜<18>のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0120】
<20>前記脱水濃縮ステップにおいて超音波を照射する水溶液の温度を、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは30℃以上、より更に好ましくは40℃以上とし、また、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下、より更に好ましくは70℃以下とする、前記<1>〜<19>のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0121】
<21>前記脱水濃縮ステップにおいて超音波を照射する水溶液の温度を50℃以上100℃以下とする、前記<20>に記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0122】
<22>前記脱水濃縮ステップにおいて水溶液に照射する超音波の振動数が、好ましくは20kHz以上、より好ましくは1MHz以上であり、また、好ましくは10MHz以下、より好ましくは5MHz以下である、前記<1>〜<21>のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0123】
<23>前記有機化合物が、親水基として、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、エステル基、アセタール基、ヘミアセタール基、エーテル基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、スルホン酸基、硫酸エステル基、ホスホン酸基、リン酸基、及びウレイド基からなる群から選ばれる1種又は2種以上、好ましくは水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アセタール基、ヘミアセタール基、アミノ基、アンモニウム基、スルホン酸基、硫酸エステル基、ホスホン酸基、及びリン酸基からなる群から選ばれる1種又は2種以、上、より好ましくは水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アセタール基、ヘミアセタール基、アミノ基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1種又は2種以上、更に好ましくは水酸基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる1種又は2種以上を有する、前記<1>〜<22>のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0124】
<24>前記有機化合物が多価アルコールを含む、前記<23>に記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0125】
<25>前記有機化合物である多価アルコールが、分子内に水酸基を2個有するジオール、分子内に水酸基を3個有するトリオール、分子内に水酸基を4個有するテトラオール、及び糖類からなる群から選ばれる1種又は2種以上である、前記<24>に記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0126】
<26>前記有機化合物がカルボキシル基を有する有機化合物を含む、前記<23>〜<25>のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0127】
<27>前記カルボキシル基を有する有機化合物が、分子内にカルボキシル基を2個以上有する多価カルボン酸、分子内に水酸基及びカルボキシル基を有するヒドロキシ酸、並びに分子内にカルボキシル基及びアミノ基を有するアミノ酸からなる群から選ばれる1種又は2種以上である、前記<26>に記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0128】
<28>前記有機化合物の分子に含まれる炭素数が、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、また、好ましくは22以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは6以下である、前記<1>〜<27>のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0129】
<29>前記有機化合物の分子量が、好ましくは50以上、より好ましくは60以上、更に好ましくは70以上であり、また、好ましくは400以下、より好ましくは300以下、更に好ましくは200以下である、前記<1>〜<28>のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0130】
<30>前記有機化合物の分子内の親水基の個数が、好ましくは10個以下、より好ましくは8個以下、更に好ましくは5個以下、より更に好ましくは3個以下である、前記<1>〜<29>のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0131】
<31>前記有機化合物は、同一の炭素原子に複数の親水基が結合している有機化合物、又は、隣接した炭素原子にそれぞれ親水基が結合している有機化合物である、前記<1>〜<30>のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0132】
<32>前記有機化合物の25℃における水100g当たりの溶解度が、好ましくは67g以上、より好ましくは100g以上、更に好ましくは150g以上である、前記<1>〜<31>のいずれかに記載された有機化合物の濃縮水溶液の製造方法。
【0133】
<33>分子内に親水基を2個以上有する有機化合物を濃度40質量%未満で含有する水溶液を、前記有機化合物の濃度が40質量%以上となるように調整した後、前記有機化合物の濃度が40質量%以上となるように調整した水溶液に超音波を照射して水を霧化させることにより脱水濃縮する脱水濃縮方法。
【実施例】
【0134】
(分析方法)
[高速液体クロマトグラフ(HPLC)の測定条件]
採取した有機化合物水溶液中の有機化合物の濃度を、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて定量した。HPLCの分析条件は、次の通りである。
・装置名:LaChrom Elite (HITACHI製)
・カラム:ICSep ICE-ION-300
・溶離液:0.0085規定 硫酸、0.4mL/min
・検出法:RI(HITACHI、L-2490)
・カラム温度:40℃
・注入液量:20μL
・保持時間:40min
(実験用超音波霧化装置)
図5は、下記の実験で用いた実験用の超音波霧化装置20を示す。
【0135】
この実験用の超音波霧化装置20は、温調機構が付設された霧化槽21を備え、霧化槽21内には超音波振動子22(振動数:2.4MHz、出力:30W)が設けられている。霧化槽21の下部には原料槽24から延びる原料供給管25が結合していると共に、霧化槽21の下部からは、図示しない送液ポンプが介設された戻り管26が延びて原料槽24に結合しており、これにより原料槽24と霧化槽21との間を原料供給管25及び戻り管26を介して水溶液が循環するように構成されている。霧化槽21の上部には図示しないガス源から延びるキャリアガス供給管27が結合している。霧化槽21の天部からは霧回収管28が延びて霧回収器29に結合している。
【0136】
(実験1)
<実施例1>
グリセリン(炭素数:3、分子量:92、親水基:3個)の濃度が20.7質量%のグリセリン水溶液にグリセリンを添加して濃度を48質量%に調整した。そして、この濃度を48質量%に調整したグリセリン水溶液841gを上記実験用の超音波霧化装置20の原料槽24に仕込み、グリセリン水溶液の温度を60℃に調温して原料槽24と霧化槽21との間を原料供給管25及び戻り管26を介して循環させながら、回分操作で超音波の照射による脱水濃縮を9.0時間行った。そして、霧回収器29に回収された液滴の量及びその液滴中のグリセリンの濃度、並びに霧化槽21内の脱水濃縮された濃縮水溶液中のグリセリンの濃度を測定した。
【0137】
<実施例2>
グリセリンの濃度が10.1質量%のグリセリン水溶液にグリセリンを添加して濃度を59質量%に調整した。そして、この濃度を59質量%に調整したグリセリン水溶液804gを上記実験用の超音波霧化装置20の原料槽24に仕込み、グリセリン水溶液の温度を50℃に調温して原料槽24と霧化槽21との間を原料供給管25及び戻り管26を介して循環させながら、回分操作で超音波の照射による脱水濃縮を2.5時間行った。そして、実施例1と同様、霧回収器29に回収された液滴の量及びそこに含まれるグリセリンの濃度、並びに霧化槽21内の脱水濃縮された濃縮水溶液中のグリセリンの濃度を測定した。
【0138】
<実施例3>
乳酸(炭素数:3、分子量:90、親水基:2個)の濃度が5.00質量%の乳酸水溶液に乳酸を添加して濃度を44質量%に調整した。そして、この濃度を44質量%に調整した乳酸水溶液805gを上記実験用の超音波霧化装置20の原料槽24に仕込み、乳酸水溶液の温度を50℃に調温して原料槽24と霧化槽21との間を原料供給管25及び戻り管26を介して循環させながら、回分操作で超音波の照射による脱水濃縮を6.0時間行った。そして、実施例1と同様、霧回収器29に回収された液滴の量及びその液滴中の乳酸の濃度、並びに霧化槽21内の脱水濃縮された濃縮水溶液中の乳酸の濃度を測定した。
【0139】
<実施例4>
グルコース(炭素数:6、分子量:180、親水基:5個)の濃度が5.00質量%のグルコース水溶液にグルコースを添加して濃度を62質量%に調整した。そして、この濃度を62質量%に調整したグルコース水溶液800gを上記実験用の超音波霧化装置20の原料槽24に仕込み、グルコース水溶液の温度を50℃に調温して原料槽24と霧化槽21との間を原料供給管25及び戻り管26を介して循環させながら、回分操作で超音波の照射による脱水濃縮を1.0時間行った。そして、実施例1と同様、霧回収器29に回収された液滴の量及びその液滴中のグルコースの濃度、並びに霧化槽21内の脱水濃縮された濃縮水溶液中のグルコースの濃度を測定した。
【0140】
<実施例5>
1,2−プロパンジオール(炭素数:3、分子量:76、親水基:2個)の濃度が5.00質量%の1,2−プロパンジオール水溶液に1,2−プロパンジオールを添加して濃度を51質量%に調整した。そして、この濃度を51質量%に調整した1,2−プロパンジオール水溶液504gを上記実験用の超音波霧化装置20の原料槽24に仕込み、1,2−プロパンジオール水溶液の温度を50℃に調温して原料槽24と霧化槽21との間を原料供給管25及び戻り管26を介して循環させながら、回分操作で超音波の照射による脱水濃縮を0.5時間行った。そして、実施例1と同様、霧回収器29に回収された液滴の量及びその液滴中の1,2−プロパンジオールの濃度、並びに霧化槽21内の脱水濃縮された濃縮水溶液中の1,2−プロパンジオールの濃度を測定した。
【0141】
<実施例6>
キシロース(炭素数:5、分子量:150、親水基:4個)の濃度が5.00質量%のキシロース水溶液にキシロースを添加して濃度を42質量%に調整した。そして、この濃度を42質量%に調整したキシロース水溶液801gを上記実験用の超音波霧化装置20の原料槽24に仕込み、キシロース水溶液の温度を50℃に調温して原料槽24と霧化槽21との間を原料供給管25及び戻り管26を介して循環させながら、回分操作で超音波の照射による脱水濃縮を0.4時間行った。そして、実施例1と同様、霧回収器29に回収された液滴の量及びその液滴中のキシロースの濃度、並びに霧化槽21内の脱水濃縮された濃縮水溶液中のキシロースの濃度を測定した。
【0142】
<実施例7>
ヒドロキシメチルフルフラール(炭素数:6、分子量:126、親水基:3個)の濃度が5.00質量%のヒドロキシメチルフルフラール水溶液にヒドロキシメチルフルフラールを添加して濃度を51質量%に調整した。そして、この濃度を51質量%に調整したヒドロキシメチルフルフラール水溶液600gを上記実験用の超音波霧化装置20の原料槽24に仕込み、ヒドロキシメチルフルフラール水溶液の温度を50℃に調温して原料槽24と霧化槽21との間を原料供給管25及び戻り管26を介して循環させながら、回分操作で超音波の照射による脱水濃縮を1.5時間行った。そして、実施例1と同様、霧回収器29に回収された液滴の量及びその液滴中のヒドロキシメチルフルフラールの濃度、並びに霧化槽21内の脱水濃縮された濃縮水溶液中のヒドロキシメチルフルフラールの濃度を測定した。
【0143】
<比較例1>
グリセリンの濃度が22質量%のグリセリン水溶液801gを上記実験用の超音波霧化装置20の原料槽24に仕込み、グリセリン水溶液の温度を50℃に調温して原料槽24と霧化槽21との間を原料供給管25及び戻り管26を介して循環させながら、回分操作で超音波の照射による脱水濃縮を2.3時間行った。そして、実施例1と同様、霧回収器29に回収された液滴の量及びその液滴中のグリセリンの濃度、並びに霧化槽21内の脱水濃縮された濃縮水溶液中のグリセリンの濃度を測定した。
【0144】
<比較例2>
乳酸の濃度が4.8質量%の乳酸水溶液857gを上記実験用の超音波霧化装置20の原料槽24に仕込み、乳酸水溶液の温度を70℃に調温して原料槽24と霧化槽21との間を原料供給管25及び戻り管26を介して循環させながら、回分操作で超音波の照射による脱水濃縮を1.7時間行った。そして、実施例1と同様、霧回収器29に回収された液滴の量及びその液滴中の乳酸の濃度、並びに霧化槽21内の脱水濃縮された濃縮水溶液中の乳酸の濃度を測定した。
【0145】
<比較例3>
乳酸の濃度が20質量%の乳酸水溶液701gを上記実験用の超音波霧化装置20の原料槽24に仕込み、乳酸水溶液の温度を50℃に調温して原料槽24と霧化槽21との間を原料供給管25及び戻り管26を介して循環させながら、回分操作で超音波の照射による脱水濃縮を2.0時間行った。そして、実施例1と同様、霧回収器29に回収された液滴の量及びその液滴中の乳酸の濃度、並びに霧化槽21内の脱水濃縮された濃縮水溶液中の乳酸の濃度を測定した。
【0146】
<比較例4>
グルコースの濃度が20質量%のグルコース水溶液801gを上記実験用の超音波霧化装置20の原料槽24に仕込み、乳酸水溶液の温度を50℃に調温して原料槽24と霧化槽21との間を原料供給管25及び戻り管26を介して循環させながら、回分操作で超音波の照射による脱水濃縮を0.9時間行った。そして、実施例1と同様、霧回収器29に回収された液滴の量及びその液滴中のグルコースの濃度、並びに霧化槽21内の脱水濃縮された濃縮水溶液中のグルコースの濃度を測定した。
【0147】
<比較例5>
グリセリンの濃度が30質量%のグリセリン水溶液801gを上記実験用の超音波霧化装置20の原料槽24に仕込み、乳酸水溶液の温度を50℃に調温して原料槽24と霧化槽21との間を原料供給管25及び戻り管26を介して循環させながら、回分操作で超音波の照射による脱水濃縮を0.3時間行った。そして、実施例1と同様、霧回収器29に回収された液滴の量及びその液滴中のグリセリンの濃度、並びに霧化槽21内の脱水濃縮された濃縮水溶液中のグリセリンの濃度を測定した。
【0148】
<比較例6>
1,2−プロパンジオールの濃度が31質量%の1,2−プロパンジオール水溶液402gを上記実験用の超音波霧化装置20の原料槽24に仕込み、乳酸水溶液の温度を50℃に調温して原料槽24と霧化槽21との間を原料供給管25及び戻り管26を介して循環させながら、回分操作で超音波の照射による脱水濃縮を0.4時間行った。そして、実施例1と同様、霧回収器29に回収された液滴の量及びその液滴中の1,2−プロパンジオールの濃度、並びに霧化槽21内の脱水濃縮された濃縮水溶液中の1,2−プロパンジオールの濃度を測定した。
【0149】
<比較例7>
キシロースの濃度が30質量%のキシロース水溶液802gを上記実験用の超音波霧化装置20の原料槽24に仕込み、乳酸水溶液の温度を50℃に調温して原料槽24と霧化槽21との間を原料供給管25及び戻り管26を介して循環させながら、回分操作で超音波の照射による脱水濃縮を0.5時間行った。そして、実施例1と同様、霧回収器29に回収された液滴の量及びその液滴中のキシロースの濃度、並びに霧化槽21内の脱水濃縮された濃縮水溶液中のキシロースの濃度を測定した。
【0150】
(実験結果1)
表1及び2は上記の実験結果を示す。
【0151】
【表1】
【0152】
【表2】
【0153】
霧回収器29に回収された液滴の量は、実施例1が413g、実施例2が83.8g、実施例3が414g、実施例4が54.8g、実施例5が27.4g、実施例6が73.0g、及び実施例7が58.2g、並びに、比較例1が434g、比較例2が444g、比較例3が311g、比較例4が110g、比較例5が51.0g、比較例6が41.0g、及び比較例7が86.0gであった。
【0154】
霧回収器29に回収された液滴に含まれる有機化合物の濃度は、実施例1のグリセリンが0.19質量%、実施例2のグリセリンが0質量%、実施例3の乳酸が0.64質量%、実施例4のグルコースが0質量%、実施例5の1,2−プロパンジオールが0.91質量%、実施例6のキシロースが0.91質量%、及び実施例7のヒドロキシメチルフルフラールが0.11質量%、並びに、比較例1のグリセリンが8.8質量%、比較例2の乳酸が2.4質量%、比較例3の乳酸が12質量%、比較例4のグルコースが6.8質量%、比較例5のグリセリンが4.2質量%、比較例6の1,2−プロパンジオールが3.1質量%、及び比較例7のキシロースが3.0質量%であった。
【0155】
霧化槽21内の脱水濃縮された濃縮水溶液中の有機化合物の濃度は、実施例1のグリセリンが93質量%、実施例2のグリセリンが66質量%、実施例3の乳酸が83質量%、実施例4のグルコースが67質量%、実施例5の1,2−プロパンジオールが55質量%、実施例6のキシロースが49質量%、及びに実施例7のヒドロキシメチルフルフラールが58質量%、並びに、比較例1のグリセリンが36質量%、比較例2の乳酸が8.2質量%、比較例3の乳酸が26質量%、比較例4のグルコースが24質量%、比較例5のグリセリンが32質量%、比較例6の1,2−プロパンジオールが34質量%、及びに比較例7のキシロースが34質量%であった。
【0156】
表1及び2から明らかなように、実施例1〜7は、比較例1〜7に比べ、回収された液滴中に含まれる有機化合物の濃度は低く、従って、霧化槽21において有機化合物の水溶液が効率よく脱水濃縮されている。
【0157】
(実験2)
<実施例8>
グリセリンの濃度が20質量%のグリセリン水溶液にグリセリンを添加して濃度を60質量%に調整した。そして、この濃度を60質量%に調整したグリセリン水溶液を、超音波霧化装置20の原料槽24に300g及び霧化槽21に200gそれぞれ仕込み、グリセリン水溶液の温度を50℃に調温し、原料槽24から霧化槽21へのグリセリン水溶液の供給速度が113g/hrになるようにその供給流量を調整して、半回分操作で超音波の照射による脱水濃縮を1.0時間行った(態様2A-(i)-a)。そして、実施例1と同様、霧回収器29に回収された液滴の量及びその液滴中のグリセリンの濃度、並びに霧化槽21内の脱水濃縮された濃縮水溶液中のグリセリンの濃度を測定した。
【0158】
<実施例9>
グリセリンの濃度が30質量%のグリセリン水溶液201gを超音波霧化装置20の原料槽24に、及び60質量%のグリセリン水溶液251gを霧化槽21にそれぞれ仕込んだ。そして、グリセリン水溶液の温度を50℃に調温し、原料槽24から霧化槽21へのグリセリン水溶液の供給速度が37g/hrになるようにその供給流量を調整することにより、霧化槽21内のグリセリン水溶液のグリセリンの濃度を40質量%以上に維持し、半回分操作で超音波の照射による脱水濃縮を1.1時間行った(態様2B)。そして、実施例1と同様、霧回収器29に回収された液滴の量及びその液滴中のグリセリンの濃度、並びに霧化槽21内の脱水濃縮された濃縮水溶液中のグリセリンの濃度を測定した。
【0159】
<実施例10>
グリセリンの濃度が20質量%のグリセリン水溶液にグリセリンを添加して濃度を60質量%に調整した。そして、この濃度を60質量%に調整したグリセリン水溶液を超音波霧化装置20の原料槽24に300g及び霧化槽21に201gそれぞれ仕込み、グリセリン水溶液の温度を50℃に調温し、原料槽24から霧化槽21へのグリセリン水溶液の供給速度が104g/hrになるようにその供給流量を調整すると共に、霧化槽21からの濃縮されたグリセリン水溶液の排出速度が74g/hrになるようにその回収流量を調整して、連続操作で超音波の照射による脱水濃縮を1.0時間行った(態様3A-(i)-a)。そして、実施例1と同様、霧回収器29に回収された液滴の量及びその液滴中のグリセリンの濃度、並びに霧化槽21内の脱水濃縮された濃縮水溶液中のグリセリンの濃度を測定した。
【0160】
<実施例11>
グリセリンの濃度が30質量%のグリセリン水溶液262gを超音波霧化装置20の原料槽24に、及び60質量%のグリセリン水溶液251gを霧化槽21にそれぞれ仕込んだ。そして、グリセリン水溶液の温度を50℃に調温し、原料槽24から霧化槽21へのグリセリン水溶液の供給速度が40g/hrになるようにその供給流量を調整すると共に、霧化槽21からの濃縮されたグリセリン水溶液の排出速度が61g/hrになるようにその回収流量を調整することにより、霧化槽21内のグリセリン水溶液のグリセリンの濃度を40質量%以上に維持し、連続操作で超音波の照射による脱水濃縮を1.1時間行った(態様3B)。そして、実施例1と同様、霧回収器29に回収された液滴の量及びその液滴中のグリセリンの濃度、並びに霧化槽21内の脱水濃縮された濃縮水溶液中のグリセリンの濃度を測定した。
【0161】
(実験結果2)
表3は実施例8〜11の実験結果を示す。
【0162】
【表3】
【0163】
霧回収器29に回収された液滴の量は、実施例8が18g、実施例9が16g、実施例10が26g、及び実施例11が21gであった。
【0164】
霧回収器29に回収された液滴に含まれる有機化合物の濃度は、実施例8のグリセリンが0質量%、実施例9のグリセリンが0質量%、実施例10のグリセリンが0質量%、及び実施例11のグリセリンが0質量%であった。
【0165】
霧化槽21内の脱水濃縮された濃縮水溶液中の有機化合物の濃度は、実施例8のグリセリンが67質量%、実施例9のグリセリンが64質量%、実施例10のグリセリンが71質量%、及び実施例11のグリセリンが65質量%であった。
【0166】
表3から明らかなように、半回分操作及び連続操作のいずれの超音波の照射によるグリセリン水溶液の脱水濃縮の場合も、回収された液滴中に含まれるグリセリンの濃度は低く、従って、霧化槽21においてグリセリン水溶液が効率よく脱水濃縮されている。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明は、有機化合物の濃縮水溶液の製造方法及びその脱水濃縮方法について有用である。
【符号の説明】
【0168】
10,20 超音波霧化装置
11,21 霧化槽
12,22 超音波振動子
13 濃縮水溶液排出管
14,24 原料槽
15,25 原料供給管
16,18,26 戻り管
17 有機化合物A供給管
19 濃度調整部
27 キャリアガス供給管
28 霧回収管
29 霧回収器
図1
図2
図3
図4
図5