(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の簡易判別方法では、使用者は、必ずしもバッテリパックの実際の状態(充電状態)を正しく知ることはできない。
具体的には、スライド子が「満充電」の位置にあるとしても、実際には満充電状態ではなくさらに充電可能な場合がある。例えば、充電完了からバッテリパックが長時間放置されると、残容量は徐々に減っていくが、バッテリパックが工具に挿入されない限り、スライド子の位置は「満充電」のままである。そのため、使用者は、実際には残容量が減っているにもかかわらず満充電状態であると誤認してしまう。
【0007】
また、バッテリパックを充電器に挿入するだけでスライド子が「満充電」に切り替わるため、例えば、バッテリパックを一時的に充電器に挿入しただけで充電はほとんどせずに再び充電器から取り外した場合も、スライド子は「満充電」のままである。そのため、使用者は、実際には充電がほとんどされていない状態であるにもかかわらず満充電状態であると誤認してしまう。
【0008】
また、バッテリパックを工具に挿入するだけでスライド子が「使用済み」に切り替わるため、例えば、満充電状態のバッテリパックを工具に挿入したものの全く使用せずに再び工具から取り外した場合も、スライド子は「使用済み」のままである。そのため、使用者は、実際には満充電状態であるにもかかわらず残容量が少ないバッテリパックであると誤認してしまう。
【0009】
また、充電器によっては、バッテリパック内の二次電池の温度に応じて充電容量を制限する機能を備えたものもある。具体的には、例えば常温時には二次電池が所定の充電電圧設定値(常温時充電電圧設定値)になるまで充電を行う(その常温時充電電圧設定値まで充電されると満充電状態として充電を停止する)のに対し、低温時には、充電電圧設定値を、常温時充電電圧設定値よりも低い所定の低温時充電電圧設定値に設定する。
【0010】
このように、二次電池の温度に応じて充電容量を制限する機能を備えた充電器を用いてバッテリパックを充電する場合、仮に低温時に充電を行って満充電状態にしたとしても、その後、周囲温度の変化等によって二次電池の温度が上昇して常温域に入ると、その常温域に入った時点では、二次電池はまだ充電可能な(満充電ではない)状態となる。しかし、使用者は、低温時に満充電状態まで充電したことで、その後温度が上昇しても、バッテリパックは引き続き満充電状態であると誤認してしまう。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、実際の残容量に応じた適切な充電状態(例えば、実際に満充電状態なのか、それとも実際には満充電状態ではなく充電の余力があるのか、等)を使用者が適切に認識することが可能なバッテリパックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた本発明のバッテリパックは、二次電池を有するバッテリと、報知部と、満充電状態判定部と、満充電判定時処理部と、増加要因検出部とを備える。
【0013】
報知部は、バッテリが満充電状態であることを報知するためのものである。満充電状態判定部は、バッテリが満充電状態であるか否かを判定する。満充電判定時処理部は、満充電状態判定部により満充電状態と判定された場合に、報知部による報知の実行若しくは報知部による報知が可能な満充電報知可能状態の保持の何れかを満充電判定時処理として行う。増加要因検出部は、満充電判定時処理の実行中に、満充電状態判定部により満充電状態と判定されたときよりもバッテリの充電可能容量が増加するような所定の充電可能容量増加要因が発生した場合にこれを検出する。
【0014】
そして、満充電判定時処理部は、満充電判定時処理の実行中に、増加要因検出部により充電可能容量増加要因の発生が検出された場合は、満充電判定時処理を停止する。
このように構成されたバッテリパックでは、バッテリの満充電状態が判定されると、満充電判定時処理が行われるが、満充電状態の判定後に充電可能容量増加要因が発生した場合は、満充電判定時処理が停止される(満充電状態との判定が解除され、報知部による報知がされない状態となる)。そのため、使用者は、バッテリが実際に満充電状態であるのかどうかなど、実際の残容量に応じた充電状態を適切に認識することが可能となる。
【0015】
バッテリパックが、電動機械器具の本体に着脱可能であって、その本体に装着されているときにバッテリから本体へ放電可能である場合は、その放電が行われた場合に充電可能容量増加要因が発生したものとするようにしてもよい。即ち、バッテリパックは、バッテリから本体へ放電されたことを直接又は間接的に検出する放電検出部を備え、その放電検出部により放電が検出されることを、充電可能容量増加要因の少なくとも1つとしてもよい。
【0016】
バッテリから本体へ放電が行われると、少なくともその放電された分、バッテリは再び充電可能な状態となる。そこで、満充電状態と判定された後、放電検出部によりバッテリから本体への放電が検出されたら満充電判定時処理を停止することで、本体への放電により満充電状態ではなくなったことを適切に認識することが可能となる。
【0017】
バッテリパックにおいて、バッテリから本体への放電を検出する方法は種々考えられるが、例えば、次のような方法を採用してもよい。即ち、本体が、バッテリから本体内へ放電させるために操作される操作スイッチを備え、その操作スイッチが操作された場合にその旨を示す操作信号をバッテリパックへ送信するよう構成されている場合は、放電検出部は、本体から操作信号を受信した場合に、バッテリから本体へ放電されたことを検出するようにしてもよい。
【0018】
このように構成されたバッテリパックによれば、バッテリから本体への放電の有無(延いては充電可能容量増加要因の発生の有無)を、本体からの操作信号に基づいて容易に検出することができる。
【0019】
バッテリパックが、バッテリの温度を検出する温度検出部を備えている場合は、充電可能容量増加要因の少なくとも1つを、温度検出部により検出されるバッテリの温度が、満充電状態判定部により満充電状態と判定されたときの温度よりも上昇することとしてもよい。
【0020】
バッテリの充電可能容量は、バッテリの性質上、バッテリの温度が高いほど大きくなって逆にバッテリの温度が低いほど小さくなることが多い。そのため、例えば低温環境下で充電が行われたことにより常温時よりも少ない充電量で満充電状態となって充電が完了した場合、その後温度(気温)が上昇してバッテリの温度が常温になれば、バッテリは満充電状態ではなくさらに追加充電が可能な状態となる。
【0021】
そこで、バッテリの温度が、満充電状態と判定されたときの温度よりも上昇した場合は、充電可能容量増加要因が発生したものとして満充電判定時処理を停止することで、使用者は、温度上昇により満充電状態ではなくなったことを適切に認識することが可能となる。
【0022】
報知部による報知を実行させるタイミングは、適宜決めることができる。例えば、報知部による報知を実行させるための所定の報知要求を検出する報知要求検出部を備えるようにし、満充電判定時処理部は、満充電判定時処理として、満充電報知可能状態の保持を行い、その満充電判定時処理の実行中に報知要求検出部により報知要求が検出されたら、報知部による報知を実行させるようにしてもよい。
【0023】
つまり、報知要求の有無にかかわらず、満充電判定時処理部は、満充電状態判定部により満充電状態と判定された場合は、満充電報知可能状態を保持しておく。そして、満充電報知可能状態の保持中に、報知要求が検出されたら、報知部による報知を実行させる。このようにすることで、使用者は、報知要求を行うことにより、実際の残容量に応じた充電状態を必要に応じて適切に認識することができる。
【0024】
また例えば、報知要求検出部を備えている場合、満充電状態判定部は、報知要求検出部により報知要求が検出された場合にバッテリが満充電状態であるか否かの判定を行うようにし、満充電判定時処理部は、満充電判定時処理として、報知部による報知を実行させるようにしてもよい。
【0025】
つまり、満充電状態判定部による判定自体も、報知要求があった場合に行うようにする。そして、報知要求があったときにバッテリが満充電状態であると判定されたら、報知部による報知を実行する。このような構成によっても、使用者は、報知要求を行うことにより、実際の残容量に応じた充電状態を必要に応じて適切に認識することができる。しかも、報知要求があったときに満充電状態か否かの判定を行うため、満充電状態判定部や満充電判定時処理部の処理負荷を軽減することも可能となる。
【0026】
報知要求検出部は、当該バッテリパックの挙動を検出する挙動検出部を備え、その挙動検出部により所定の挙動が検出された場合に、その挙動を報知要求として検出するようにしてもよい。このようにすることで、使用者は、例えばバッテリパックを動かしたり電力供給対象の器具等へ装着したりするなどの所定の挙動を発生させることでバッテリの充電状態を確認できるため、使用者の利便性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に示された具体的手段や構造等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の形態を採り得る。例えば、下記の実施形態の構成の一部を、同様の機能を有する公知の構成に置き換えたり、他の実施形態の構成に対して付加、置換等したり、課題を解決できる限りにおいて省略したりしてもよい。また、下記の複数の実施形態を適宜組み合わせて構成してもよい。
【0029】
[第1実施形態]
(1)電動工具の構成
本発明が適用された実施形態のバッテリパック1は、
図1に示すように、電動工具の本体(工具本体)100に着脱可能である。バッテリパック1を工具本体100に装着すると、両者は物理的且つ電気的に接続される。
図1は、両者が接続された状態を示している。
【0030】
バッテリパック1は、バッテリ(二次電池)10と、放電端子21と、負極端子22と、工具通信端子23と、充電器通信端子24と、充電端子41と、マイコン31と、セル状態検出部32と、サーミスタ33と、振動センサ34と、LED35と、セルフコントロールプロテクタ(以下「SCP」と略称する)36と、FET37と、ヒューズ38とを備えている。
【0031】
バッテリ10は、複数の二次電池セルが直列接続されて構成されている。なお、本実施形態の二次電池セルは、リチウムイオン二次電池であるが、これはあくまでも一例であり、他の種類の二次電池セルであってもよい。
【0032】
バッテリ10の正極は、ヒューズ38を介して放電端子21に接続されると共に、ヒューズ38及びSCP36を介して充電端子41に接続されている。バッテリ10の負極は、負極端子22に接続されている。ヒューズ38は、所定の最大許容電流を超える電流が流れると自ら溶断してバッテリ10から放電端子21への放電経路および充電端子41への充電経路を遮断する。
【0033】
バッテリ10からバッテリパック1の外部(工具本体100等)への放電時には、バッテリ10の電力は放電端子21から出力される。一方、バッテリ10の充電時は、
図2を用いて後述するように、充電器からの充電電力が充電端子41から入力される。
【0034】
SCP36は、充電端子41とヒューズ38の間の通電経路に直列に挿入される2つのヒューズ26,26と、この各ヒューズ26,26を溶断するための2つの発熱用抵抗27,27を備えた一般的な構成である。2つの発熱用抵抗27,27の一端は、互いに接続されると共に2つのヒューズ26,26の接続部に接続されている。2つの発熱用抵抗27,27の他端は、互いに接続されると共にFET37のドレインに接続されている。FET37のソースは負極端子22に接続され、FET37のゲートはマイコン31に接続されている。
【0035】
マイコン31は、バッテリ10の過放電や過負荷を検出した場合に、その旨を示すオートストップ信号を工具通信端子23から工具本体100へ出力する。
また、マイコン31は、バッテリ10の異常や当該マイコン31内の異常など、バッテリパック1内における各種の異常(上記の過放電や過負荷は除く)を検知すると、その旨を示すオートストップ信号を工具通信端子23から工具本体100へ出力すると共に、FET37をオンさせる。FET37がオンすると、SCP36を構成する2つの発熱用抵抗27,27にバッテリ10から電流が流れてこれらが発熱し、これにより各ヒューズ26,26が溶断して、充電用の電源供給経路が遮断される。
【0036】
セル状態検出部32は、バッテリ10全体の電圧(バッテリ電圧)や、バッテリ10を構成する各二次電池セルの電圧(セル電圧)を取得し、それら各電圧をマイコン31へ出力する。
【0037】
サーミスタ33は、バッテリ10の近傍に設けられ、バッテリ10の温度(各セルの温度)を検出する。サーミスタ33は、マイコン31に接続されており、温度に応じた検出信号をマイコン31へ入力する。マイコン31は、サーミスタ33からの検出信号に基づいて、セル温度を検知する。
【0038】
振動センサ34は、バッテリパック1の振動を検知するためのセンサである。バッテリパック1が例えば使用者により動かされたり、工具本体100に装着されたりするなどして、バッテリパック1に振動が生じると、振動センサ34がその振動を検出して、その振動に応じた検出信号をマイコン31へ入力する。マイコン31は、振動センサ34からの検出信号に基づいて、バッテリパック1の振動の有無を検知する。LED35は、周知の発光素子であり、マイコン31により点灯・消灯が制御される。
【0039】
マイコン31は、CPU31aやメモリ31bなどを備えたマイクロコンピュータである。マイコン31は、メモリ31bに記憶されている各種の制御プログラムを実行することで、各種の機能を実現する。マイコン31により実現される機能の1つとして、バッテリ10が満充電状態か否かを検出してその検出結果に応じてLED35を制御する、満充電状態判定報知機能がある。その他、マイコン31は、工具通信端子23を介して工具本体100との間で各種データ通信を行ったり、充電器通信端子24を介して充電器120(
図2参照)との間で各種データ通信を行ったりする機能も備えている。
【0040】
工具本体100は、
図1に示すように、マイコン111と、モータ112と、駆動回路113と、トリガスイッチ114と、正極端子101と、負極端子102と、通信端子103とを備えている。
【0041】
正極端子101は、トリガスイッチ114を介してモータ112の一端に接続されている。負極端子102は、駆動回路113を介してモータ112の他端に接続されている。本実施形態のモータ112は、ブラシ付き直流モータである。
【0042】
トリガスイッチ114は、工具本体100に設けられた図示しないトリガを使用者が操作することによりオン・オフされる。即ち、使用者がトリガを引くとオンし、使用者がトリガを離すとオフされる。トリガスイッチ114のオン・オフの情報は、マイコン111に入力される。
【0043】
マイコン111は、図示しないCPUやメモリなどを備えており、CPUがメモリに記憶されている各種プログラムを実行することにより各種機能を実現する。マイコン111は、トリガスイッチ114がオンされると、駆動回路113内の駆動スイッチをオンさせることで、バッテリパック1からモータ112への通電(放電)を開始させ、これによりモータ112を動作させる。モータ112が回転すると、その回転駆動力により図示しない工具要素が動作し、これにより電動工具としての機能が発揮される。トリガスイッチ114がオフされると、マイコン111は、駆動回路113内の駆動スイッチをオフさせることで、バッテリパック1からモータ112への放電を停止させ、モータ112を停止させる。
【0044】
マイコン111は、トリガスイッチ114がオンされると、トリガオン検出信号を通信端子103からバッテリパック1へ送信する。マイコン111は、バッテリパック1からモータ112への通電が行われている間に、バッテリパック1から通信端子103を介してオートストップ信号が入力された場合は、モータ112への通電を強制停止させる。
【0045】
(2)充電システムの構成
バッテリパック1を充電するための充電システムについて、
図2を用いて説明する。バッテリパック1は、充電器120により繰り返し充電可能である。バッテリパック1を充電器120に装着すると、両者は物理的且つ電気的に接続される。
図2は、両者が接続された状態を示している。なお、
図2において、バッテリパック1は、
図1に示したバッテリパック1と全く同じである。
【0046】
充電器120は、
図2に示すように、マイコン131と、充電用電源回路132と、正極端子121と、負極端子122と、通信端子124とを備えている。充電用電源回路132は、内部に整流回路やスイッチング電源回路を備え、商用電源等の交流(AC)電源から供給される交流電圧を整流・変圧して、バッテリパック1の充電用の直流電圧を生成する。
【0047】
マイコン131は、バッテリパック1内のマイコン31と同様、CPUやメモリ等を備えている。マイコン131は、通信端子124を介してバッテリパック1のマイコン31とデータ通信可能である。
【0048】
マイコン131は、充電器120にバッテリパック1が装着されると、充電用電源回路132を制御して充電用の直流電圧をバッテリパック1へ供給させることによりバッテリパック1の充電(バッテリ10の充電)を行う。
【0049】
バッテリパック1のマイコン31は、当該バッテリパック1が充電器120に接続されたことを例えば充電器通信端子24を介したデータ通信により認識すると、バッテリ電圧や各セルのセル電圧、セル温度等の情報(バッテリ情報)を充電器120のマイコン131へ周期的に送信する。
【0050】
充電器120のマイコン131は、バッテリパック1のマイコン31から周期的に送信されてくるバッテリ情報に基づいて、バッテリ10の充電状態を監視しつつバッテリ10を充電する。そして、何れか1つのセルのセル電圧が満充電状態となったら、バッテリ10全体として満充電状態になったものとして、バッテリパック1のマイコン31へ充電完了信号を送信し、充電を停止する。
【0051】
本実施形態の充電器120は、上記のように、何れか1つのセルでも満充電状態となったら充電を停止する。また、充電器120は、セル温度に応じて、バッテリ10の満充電容量(セルの満充電容量)を設定する。即ち、本実施形態では、セル温度が所定の常温域にあるか、それとも常温域よりも低い低温域にあるかによって、各セルの満充電容量が異なる。
【0052】
具体的には、本実施形態の充電システムでは、セル温度が常温域内の場合は、セル電圧に対する満充電電圧設定値が常温時電圧設定値VH(例えば4.1V)に設定される。つまり、セル温度が常温域にあるときに、少なくとも1つのセルのセル電圧が常温時電圧設定値VH以上になったら、そのセルについては満充電状態であると判断され、延いてはバッテリ10全体が満充電状態であると判断される。
【0053】
一方、セル温度が低温域内の場合は、セル電圧に対する満充電電圧設定値が、常温時電圧設定値Vhよりも低い低温時電圧設定値VL(例えば3.6V)に設定される。つまり、セル温度が低温域にあるときに、少なくとも1つのセルのセル電圧が低温時電圧設定値VL以上になったら、そのセルについては満充電状態であると判断され、延いてはバッテリ10全体が満充電状態であると判断される。
【0054】
図3に、セル電圧と残容量との関係の一例を示す。各セルは、実力的には、少なくとも4.1Vまでは充電することができる。セル電圧が4.1Vのときの充電容量を残容量100%とすると、セル電圧が4.1Vから低くなるほど、残容量も少なくなっていく。セル電圧が3.6Vになると、残容量は30%である。
【0055】
一方、本実施形態では、セル温度によって満充電電圧設定値が切り替わる。そのため、常温時においては満充電電圧設定値が4.1Vに設定されるものの、低温時においては満充電電圧設定値が3.6Vに設定される。つまり、低温時においてはセル電圧が3.6V以上になると満充電状態と判定されて充電が停止される。
【0056】
そのため、低温時に満充電状態まで充電された場合は、低温時電圧設定値VLを基準とすれば確かに満充電状態ではあるものの、常温時に充電可能な最大容量(常温時電圧設定値VH)を基準にすると30%程度である。そのため、低温時に充電を行って満充電状態(例えばセル電圧3.6V)まで充電した後、セル温度が上昇して常温域に入った場合は、満充電状態ではなくなり、更に充電が可能(例えば4.1Vまで充電可能)な状態となる。
【0057】
充電器120のマイコン131は、バッテリパック1のマイコン31からセル温度の情報を取得してそれに基づいて満充電電圧設定値を上記VH,VLの何れかに設定してもよいし、バッテリパック1のマイコン31から直接、セル温度に対応した何れかの満充電電圧設定値を取得してもよい。充電器120のマイコン131は、バッテリパック1のマイコン31からの情報に基づいて満充電電圧設定値を設定し、充電を行う。そして、少なくとも1つのセル電圧がその満充電電圧設定値以上になったら、バッテリ10が満充電状態になったものと判断して、充電完了信号をバッテリパック1へ送信し、充電を停止する。
【0058】
なお、上記構成とは逆に、バッテリパック1のマイコン31が自ら、セル温度に応じて満充電電圧設定値を設定し、充電中の各セルのセル電圧を監視して、少なくとも1つのセル電圧が満充電電圧設定値以上になったらその旨の充電完了信号を充電器120に送信して充電器120からの充電電力の供給を停止させるような構成であってもよい。
【0059】
(3)バッテリパック1の内部構造
次に、バッテリパック1の内部構造について、
図4を用いて概略説明する。
図4に示すように、バッテリパック1は、バッテリ10を構成する10個のセル11〜20を備えている。10個のセル11〜20は、直並列接続されている。具体的には、2つのセルが並列接続されてなる並列ブロックが5つ直列接続された接続形態となっている。各並列ブロックは、ブロック接続電極62,63,64,65によって直列接続されている。
【0060】
そして、最も高電位側の2つのセル11,12の正極が、正極電極61及びヒューズ38を介して放電端子21に接続され、最も低電位側の2つのセル19,20の負極が、負極電極66を介して負極端子22に接続されている。
【0061】
10個のセル11〜20の上には、基板51が配置されている。基板51の表面(各セルとは反対側)には、
図4(a)に示すように、放電端子21及び負極端子22のほか、充電端子41、マイコン31、SCP36、ヒューズ38、コネクタ45などが搭載されている。コネクタ45には、工具通信端子23及び充電器通信端子24が含まれている。なお、セル状態検出部32、サーミスタ33,振動センサ34,LED35、及びFET37は、
図4(a)では図示を省略している。
【0062】
負極電極66と負極端子22とは、より詳しくは、
図4(c)に示すように基板51に形成された導体パターンを介して電気的に接続されている。即ち、負極電極66は、直接的には、基板51上に形成された表面導体パターン54に接続されている。この表面導体パターン54は、スルーホール52に接続されている。スルーホール52は、多層導体パターンを介してスルーホール53に接続され、このスルーホール53が裏面導体パターン59に接続されている。そして、裏面導体パターン59が、負極端子22に直接的に接続されている。多層導体パターンは、詳しくは、表面層55、第1内部層56、第2内部層57、及び裏面層58の4つの導体層により構成されている。
【0063】
そのため、例えば放電電流については、負極端子22から裏面導体パターン59,スルーホール53、多層導体パターン、スルーホール52、表面導体パターン54、及び負極電極66を経て、最も低電位側のセル19,20に流入する。充電時の充電電流の流れはその逆である。
【0064】
(4)バッテリパック1のマイコンが実行する各種処理
次に、バッテリパック1のマイコン31が実行する各種処理のうち、上述した満充電状態判定報知機能を実現するための各種処理について説明する。マイコン31は、満充電状態判定報知機能を実現するために、
図5〜
図8に示す各処理を実行する。
【0065】
(4−1)満充電判定処理
まず、満充電判定処理について、
図5を用いて説明する。バッテリパック1のマイコン31において、CPU31aは、動作を開始すると、メモリ31bから
図5の満充電判定処理のプログラムを読み込んで、定期的に繰り返し実行する。
【0066】
CPU31aは、
図5の満充電判定処理を開始すると、S110で、セルの残容量Aを計測する。具体的には、バッテリ10を構成する各セルのセル電圧を取得する。そして、各セル電圧のうち最も高いセル電圧を残容量Aとする。なお、最も高いセル電圧を残容量Aとするのはあくまでも一例であり、他の演算方法等により残容量Aを導出するようにしてもよい。
【0067】
S120では、サーミスタ33からの検出信号に基づいてセル温度を検出する。S130では、S120で検出したセル温度に基づいて、そのセル温度において充電可能な容量の最大値(充電可能容量B)を算出する。本実施形態では、セル温度を常温域及び低温域の2つの温度域に区分して、温度域毎に満充電電圧設定値が設定されている。そのため、S130では、セル温度が常温域であれば、常温時電圧設定値VH(例えば4.1V)が充電可能容量Bとして算出され、セル温度が低温域であれば、低温時電圧設定値VL(例えば3.6V)が充電可能容量Bとして算出される。
【0068】
なお、セル電圧は一般に充電残容量に応じて変動し、残容量が少ないほどセル電圧も低くなる。そのため、本実施形態では、セル電圧を便宜的に充電容量として扱っている。
S140では、S110で計測した残容量AがS130で算出した充電可能容量B以上であるか否かを判断する。残容量Aが充電可能容量B以上である場合は、バッテリ10は満充電状態であると判断して、S150に進む。
【0069】
S150では、S120で検出したセル温度が低温域であるか否か判断する。低温域であった場合は、S160で低温時満充電フラグをセットし、常温域であった場合は、S170で常温時満充電フラグをセットする。
【0070】
S140で、残容量Aが充電可能容量Bより低い場合は、満充電状態ではないものと判断して、S180で、満充電フラグ(低温時満充電フラグ及び常温時満充電フラグの双方)をリセットする。
【0071】
(4−2)トリガ操作判定処理
次に、トリガ操作判定処理について、
図6を用いて説明する。バッテリパック1のマイコン31において、CPU31aは、動作を開始すると、メモリ31bから
図6のトリガ操作判定処理のプログラムを読み込んで、定期的に繰り返し実行する。
【0072】
CPU31aは、
図6のトリガ操作判定処理を開始すると、S310で、工具本体100からトリガオン信号を受信したか否か判断する。トリガオン信号を受信していない場合はS330に進む。トリガオン信号を受信した場合は、S320で、トリガオンフラグをセットして、S330に進む。
【0073】
S330では、充電器120から充電完了信号を受信したか否か判断する。充電完了信号を受信していない場合はこのトリガ操作判定処理を終了する。充電完了信号を受信した場合は、S340で、トリガオンフラグをリセットする。
【0074】
つまり、
図6のトリガ操作判定処理は、充電によりバッテリ10が満充電状態となった場合はトリガオンフラグをリセットし、満充電状態になった後、工具本体100に装着されて一度でもトリガスイッチ114がオンされたら(つまりモータ112へ一度でも放電されたら)トリガオンフラグをセットする、という処理である。トリガオンフラグがセットされたら、以後、再び充電器120によって満充電状態に充電されるまでは、トリガオンフラグはセットされたままとなる。
【0075】
(4−3)温度変化判定処理
次に、温度変化判定処理について、
図7を用いて説明する。バッテリパック1のマイコン31において、CPU31aは、動作を開始すると、メモリ31bから
図7の温度変化判定処理のプログラムを読み込んで、定期的に繰り返し実行する。
【0076】
CPU31aは、
図7の温度変化判定処理を開始すると、S410で、サーミスタ33からの検出信号に基づいてセル温度を検出する。S420では、S410で検出したセル温度が常温域であるか否か判断する。セル温度が常温域でない場合は、この温度変化判定処理を終了する。セル温度が常温域である場合は、S430に進む。
【0077】
S430では、低温時満充電フラグがセットされているか否か判断する。低温時満充電フラグがセットされていない場合はこの温度変化判定処理を終了する。低温時満充電フラグがセットされている場合は、S440で、その低温時満充電フラグをリセットする。
【0078】
低温時満充電フラグがセットされているということは、充電が低温時に行われて低温時電圧設定値VLまで充電されたということである。そして、その後にセル温度が上昇して常温域になったということは、現在の残容量はその常温域に対しては満充電状態ではなくさらに充電可能な状態であるということである。そのため、低温時に満充電状態となったもののその後セル温度が上昇して常温域になった場合は、
図7の処理によって、低温時満充電フラグをリセットする(満充電状態であるとの判断結果をキャンセルする)ようにしている。
【0079】
(4−4)報知処理
次に、報知処理について、
図8を用いて説明する。バッテリパック1のマイコン31において、CPU31aは、動作を開始すると、メモリ31bから
図8の報知処理のプログラムを読み込んで、定期的に繰り返し実行する。
【0080】
CPU31aは、
図8の報知処理を開始すると、S210で、報知条件が成立したか否か判断する。報知条件とは、具体的には、振動センサ34によりバッテリパック1の振動が検知されたことである。
【0081】
報知条件が成立していない場合、即ちバッテリパック1の振動が検知されていない場合は、この報知処理を終了する。報知条件が成立した場合、即ちバッテリパック1の振動が検知された場合は、S220で、満充電フラグがセットされているか否か、即ち低温時満充電フラグ及び常温時満充電フラグのうち何れか一方がセットされているか否かを判断する。満充電フラグがセットされていない場合はこの報知処理を終了する。満充電フラグがセットされていれば、S230に進む。
【0082】
S230では、トリガオンフラグがセットされているか否か判断する。トリガオンフラグがセットされていればこの報知処理を終了するが、トリガオンフラグがセットされていない場合は、S240で、LED35を点灯させる。S250では、S240によるLED35の点灯が開始された点灯開始タイミングから規定時間が経過したか否か判断する。
【0083】
点灯開始から規定時間が経過していない場合は、S260で、S230と同様にトリガオンフラグがセットされているか否か判断する。そして、トリガオンフラグがセットされていない場合は、S240に戻る。S250で点灯開始から規定時間が経過した場合、及びS260でトリガオンフラグがセットされている場合は、S270で、LED35を消灯する。
【0084】
つまり、報知条件が成立(振動検知)した場合に、何れかの満充電フラグがセットされていて、且つトリガオンフラグがセットされていない場合は、バッテリ10が満充電状態であるとして、LED35を規定時間点灯させるのである。そのため、バッテリパック1の使用者は、バッテリパック1を持ったり工具本体100に装着するなどしてバッテリパック1に振動を与えたときにLED35が点灯するか否かによって、バッテリ10が満充電状態か否かを知ることができる。
【0085】
(5)第1実施形態の効果等
以上説明した本実施形態のバッテリパック1によれば、残容量Aが充電可能容量B以上である場合にバッテリ10のバッテリの満充電状態が判定されるが、その後、充電可能容量が増加するような要因が発生した場合は、満充電状態が解除(満充電フラグがリセット)される。使用者は、バッテリパック1を振動させたときのLED35の点灯有無によって、バッテリ10が満充電状態であるか否かを視認することができる。
【0086】
そのため、使用者は、バッテリ10が実際に満充電状態であるのかどうかなど、バッテリ10の実際の残容量に応じた充電状態を適切に認識することが可能となる。特に、本実施形態では、バッテリ10の充電状態をLED35によって視認できるため、バッテリパックが複数あったとしても、その複数のバッテリパックのうちどのバッテリパックが満充電状態であるかを容易に識別することができる。
【0087】
また、バッテリ10が満充電状態と判定された後、工具本体100のトリガスイッチ114がオンされたら、満充電状態が解除される。そのため、使用者は、トリガスイッチ114のオンによる充電容量の低下を適切に認識することができる。なお、工具本体100への放電による充電容量の低下は、例えば、放電電流を検出することによっても検出可能であるが、そのような方法に比べて、トリガスイッチ114のオンに基づく検出方法の方が容易に検出可能である。
【0088】
また、バッテリ10が満充電状態と判定された後、セル温度がその判定時よりも上昇した場合は(具体的には温度域が変化した場合は)、満充電状態が解除される。そのため、使用者は、温度上昇による充電容量の相対的な低下を適切に認識することができる。
【0089】
また、本実施形態では、バッテリパック1の振動の有無にかかわらず、満充電判定処理(
図5)によりバッテリ10の充電状態が判定され、満充電状態の場合はその旨の満充電フラグがセットされる。そして、満充電フラグがセットされている間にバッテリパック1の振動が検知されたら、LED35が点灯する。そのため、使用者は、バッテリパック1を振動させることで、実際の残容量に応じた充電状態を、必要に応じて適切に認識することができる。
【0090】
また、満充電状態か否かをLED35で確認したい場合、使用者は、バッテリパック1を振動させればよい。つまり、使用者は、例えばバッテリパック1を移動させたり手で持って振ったりするだけで、バッテリ10が満充電状態であるか否かを確認できる。そのため、利便性の良いバッテリパック1の提供が可能となる。
【0091】
なお、例えばバッテリパック1の外部からの操作(例えばスイッチなどの操作)等によって満充電状態か否かを確認できるようにしてもよいが、そのようにすると、バッテリパック1の防水性・防塵性に影響を与えるおそれがある。そのため、バッテリパック1の防水性や防塵性を考慮すると、上記実施形態のようにバッテリパック1に振動センサ34を内蔵してその検出信号によって振動の有無の検出(延いてはLED35の点灯制御)を行うのが好ましい。
【0092】
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、バッテリパック1のマイコン31は、報知条件の成立の有無に関係なく、
図5の満充電判定処理を定期的に繰り返し実行する構成であった。これに対し、本実施形態では、マイコン31は、報知条件が成立した場合に満充電の判定やその判定結果に基づくLED35の点灯制御を行う。
【0093】
つまり、本実施形態では、バッテリパック1のマイコン31は、
図6のトリガ操作判定処理は第1実施形態と同様に行うものの、他の
図5,
図7,
図8の各処理については本実施形態では実行せず、これら各処理に代えて
図9の充電状態報知処理を実行する。
【0094】
バッテリパック1のマイコン31において、CPU31aは、動作を開始すると、メモリ31bから
図9の充電状態報知処理のプログラムを読み込んで、定期的に繰り返し実行する。
【0095】
CPU31aは、
図9の充電状態報知処理を開始すると、S510で、報知条件が成立したか否か判断する。この判断は、
図8のS210と同じである。報知条件が成立していない場合はこの充電状態報知処理を終了するが、報知条件が成立した場合は、S520に進む。
【0096】
S520〜S550の処理は、
図5のS110〜S140の処理と同じである。即ち、S520でセルの残容量Aを計測し、S530でセル温度を検出し、S540で充電可能容量Bを算出する。そして、S550で、S520で計測した残容量AがS540で算出した充電可能容量B以上であるか否か判断する。
【0097】
残容量Aが充電可能容量B以上である場合は、バッテリ10は満充電状態であると判断して、S560に進む。S560〜S590の処理は、
図8のS240〜S270の処理と同じである。即ち、S560でLED35を点灯させ、S570でその点灯開始から規定時間経過したか否か判断する。規定時間経過していない場合は、S580でトリガオンフラグがセットされているか否か判断し、セットされていなければS560に戻る。そして、点灯開始から規定時間が経過した場合、及びS580でトリガオンフラグがセットされていると判断した場合は、S590でLED35を消灯する。S550で、残容量Aが充電可能容量Bより低い場合は、満充電状態ではないものと判断して、この充電状態報知処理を終了する。
【0098】
このように、本実施形態では、報知条件が成立したとき、即ち使用者等によりバッテリパック1に外部から振動が与えられたときに、満充電状態か否かの判定およびその判定結果に基づくLED35の点灯制御を行うようにしている。そのため、使用者は、バッテリパック1を動かすこと等により、実際の残容量に応じた充電状態を、必要に応じて適切に認識することができる。
【0099】
[他の実施形態]
(1)上記各実施形態では、報知条件が、振動センサ34によりバッテリパック1の振動が検知されたことであったが、これは報知条件の一例にすぎない。振動検知とは別の報知条件を設定してもよいし、振動検知に加えてさらに他の各種の報知条件も設定してもよい。複数の条件を設定する場合、その複数の条件の少なくとも1つ又は複数が成立した場合に報知条件の成立としてもよいし、複数の条件の全てが成立した場合に報知条件の成立としてもよい。
【0100】
報知条件の他の例としては、例えば、工具本体や充電器への装着検知が考えられる。なお、この装着検知は、振動センサ34による振動検知を利用するのではなく、例えば装着相手とのデータ通信あるいはその他の方法によって装着を直接的に検知することを想定している。
【0101】
また例えば、バッテリパック1に操作スイッチを設け、使用者によりその操作スイッチが操作されたときに、報知条件が成立したものと判断するようにしてもよい。このようにすれば、ユーザは、バッテリパック1の充電状態を確認したい場合、操作スイッチを操作することで、容易にその充電状態を確認できる。
【0102】
なお、報知条件としてバッテリパック1の振動の検知を用いる場合、振動センサ34を用いることは必須ではなく、振動センサ34以外の他のセンサ(例えば加速度センサ、ジャイロセンサ等)を用いて直接又は間接的にバッテリパック1の振動を検知できるようにしてもよい。
【0103】
(2)第1実施形態において、
図5の満充電判定処理では、S120でセル温度の検出を行い、セル温度に応じた満充電判定(満充電フラグのセット又はリセット)を行っている。そのため、
図5の満充電判定処理の実行周期によっては、
図7の温度変化判定処理を省いても良い。例えば、
図5の満充電判定処理と
図7の温度変化判定処理を同等の周期で実行するのであれば、あえて
図7の温度変化判定処理を実行しなくてもよい。もちろん、実行周期にかかわらず、
図5の満充電判定処理とは別に
図7の温度変化判定処理も実行するようにしてもよい。
【0104】
(3)LED35を点灯させる際の点灯時間(規定時間)は、使用者等が任意に設定できるようにしてもよい。その場合、例えばバッテリパック1自体に設定手段を設けて設定できるようにしてもよいし、バッテリパック1と他の外部機器との間の有線通信又は無線通信により外部機器から設定できるようにしてもよい。
【0105】
(4)充電可能容量Bについて、上記実施形態では、セル温度に応じて2種類の値の何れかが算出される構成であったが、セル温度の温度域を3種類以上に設定して各温度域毎に充電可能容量Bが算出される構成であってもよい。そして、あるセル温度に対応した充電可能容量Bに基づいて満充電状態と判定された後、セル温度が上昇してその温度域が変化した場合に、満充電状態を解除(フラグをリセット)するようにしてもよい。
【0106】
また、バッテリパック1とは別の外部機器から有線通信又は無線通信により充電可能容量Bを設定できるようにしてもよい。その場合、外部機器において周囲温度を考慮して充電可能容量Bを設定してもよい。或いは、外部機器がバッテリパック1から通信にてセル温度を取得し、その取得したセル温度を考慮して充電可能容量Bを設定するようにしてもよい。
【0107】
(5)上記実施形態では、バッテリパック1のマイコン31及び充電器120のマイコン131の何れも、バッテリ10を構成する複数のセルのセル電圧のうち何れか1つでも満充電状態になったらバッテリ10全体が満充電状態になったものと判断するようにしたが、このような満充電の判断方法はあくまでも一例である。また、上記実施形態では、バッテリ10を構成する複数のセルのうち最も残容量の多い(即ち最もセル電圧の高い)セルの残容量を比較対象として、そのセルの残容量が充電可能容量Bより小さい場合は、バッテリ10全体として満充電状態ではないものと判断するようにしたが、このような非満充電状態の判断方法もあくまでも一例である。例えば、バッテリ10全体の電圧(バッテリ電圧)に基づいて満充電か否かを判断するようにしてもよい。
【0108】
(6)満充電状態であるか否かを使用者等に報知するための具体的手段として、LED35を用いることは必須ではない。LED35以外の他の手段(例えば液晶ディスプレイによる表示や、音声による報知など)を用いて報知するようにしてもよい。
【0109】
また、満充電状態であるか否かを使用者等に報知するための手段に加えて、バッテリパック1における所定の部位(例えばその満充電状態か否かの報知手段の近辺)に、バッテリ10の残容量を表示するための一般的な表示手段を設けてもよい。
【0110】
(7)上記実施形態では、満充電状態か否かの判定を行ってその判定結果に応じてLED35の点灯を制御する例について説明したが、満充電状態とは異なる状態を判定してその判定結果に応じてLED35の点灯を制御するようにしてもよい。例えば、満充電状態ではないもののそれに近い(満充電状態のセル電圧よりも若干低い)電圧を設定し、その設定電圧を基準に判定及びLED35の点灯制御を行うようにしてもよい。
【0111】
(8)上記実施形態では、工具本体100とのデータ通信のための工具通信端子23と、充電器120とのデータ通信のための充電器通信端子24とを別々に設けたが、これら各通信端子は同一の端子にしてもよい。
【0112】
(9)上記実施形態では、バッテリ10の正極に接続される外部接続用の正極端子として、放電用の放電端子21と充電用の充電端子41とを別々に設けたが、これら各端子は同一の正極端子にしてもよい。その場合も、その1つの正極端子とバッテリ10の正極との間に、正常時の放電電流及び充電電流では溶断しないようなヒューズを備えたSCPを設けてもよい。
【0113】
(10)LED35等の報知手段を用いて満充電状態か否かの表示をすることは電力消費を伴う。そのため、表示に伴う消費電流を考慮して、例えば規定回数以上表示を行った場合には、満充電では無くなったと判断して満充電状態の表示を行わないようにしてもよい。
【0114】
(11)バッテリパック1は、
図1に示した工具本体100以外の各種の電動機械器具に装着可能であって、それら各種の電動機械器具へ動作用の電力を供給可能である。また、バッテリパック1は、
図2に示した充電器120以外の各種の充電器に装着してバッテリ10を充電させることができる。