【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、
エンジンからの駆動力を正逆無段に変速する主変速装置と、
ミッションケースに内装されると共に、複数の組合せが可能なギア列が設けられ、主変速装置から出力された駆動力を作業状態に応じた複数段に変速して走行装置に伝達するギア式の副変速装置と、
作業部への駆動力伝達を入り切りする作業クラッチと、
前記主変速装置を変速操作する主変速操作具と、
前記副変速装置を変速操作する副変速操作具と、
前記作業クラッチの入り切り操作をするクラッチ操作具と、
前記作業クラッチが入り操作されると、前記主変速操作具が前記主変速操作具の前進側操作経路における所定の指令位置よりも増速側へ操作されるのを牽制する牽制機構と、が備え
、
前記主変速操作具として、前後揺動操作式の主変速レバーが備えられると共に、前記クラッチ操作具として、前後揺動操作式のクラッチレバーが備えられ、
前記主変速レバーを前記前進側操作経路の前端側に操作するほど、増速されるように構成され、
前記牽制機構に、前記前進側操作経路に対して出退可能な牽制部と、前記牽制部と前記クラッチレバーとを連係するリンク部と、が備えられ、
前記クラッチレバーがクラッチ入り位置へ操作されると、前記牽制部が、前記前進側操作経路の前端側から前記主変速レバーの前側に突出し、前記前進側操作経路のうち前記所定の指令位置に対応する位置に位置する点にある。
また、本発明の特徴は、
エンジンからの駆動力を正逆無段に変速する主変速装置と、
ミッションケースに内装されると共に、複数の組合せが可能なギア列が設けられ、前記主変速装置から出力された駆動力を作業状態に応じた複数段に変速して走行装置に伝達するギア式の副変速装置と、
作業部への駆動力伝達を入り切りする作業クラッチと、
前記主変速装置を変速操作する主変速操作具と、
前記副変速装置を変速操作する副変速操作具と、
前記作業クラッチの入り切り操作をするクラッチ操作具と、
前記作業クラッチが入り操作されると、前記主変速操作具が前記主変速操作具の前進側操作経路における所定の指令位置よりも増速側へ操作されるのを牽制する牽制機構と、が備え、
前記主変速操作具として、前後揺動操作式の主変速レバーが備えられると共に、前記クラッチ操作具として、前後揺動操作式のクラッチレバーが備えられ、
前記牽制機構に、前記前進側操作経路に対して出退可能な牽制部と、前記牽制部と前記クラッチレバーとを連係するリンク部と、が備えられ、
前記クラッチレバーがクラッチ入り位置へ操作されると、前記牽制部が前記前進側操作経路のうち前記所定の指令位置に対応する位置に突出し、
前記クラッチレバーが前記クラッチ入り位置からクラッチ切り位置とは反対側に移動するのを規制する規制部が備えられ、
前記リンク部に、前記クラッチレバーの揺動軸芯周りに前記クラッチレバーと一体的に揺動するアーム部材と、一端が前記アーム部材に対して第一軸芯回りに回動可能に連係されると共に他端が前記牽制部に対して第二軸芯回りに回動可能に連係されたロッド部材と、が備えられ、
前記リンク部は、前記クラッチレバーがクラッチ切り位置から前記クラッチ入り位置に操作されると、前記揺動軸芯の方向に沿って見て、前記第一軸芯が前記揺動軸芯の後方側を通過し、かつ、前記第一軸芯と前記第二軸芯とを結ぶ直線が、前記揺動軸芯を跨いで移動するように構成されている点にある。
また、本発明の特徴は、
エンジンからの駆動力を正逆無段に変速する主変速装置と、
ミッションケースに内装されると共に、複数の組合せが可能なギア列が設けられ、前記主変速装置から出力された駆動力を作業状態に応じた複数段に変速して走行装置に伝達するギア式の副変速装置と、
作業部への駆動力伝達を入り切りする作業クラッチと、
前記主変速装置を変速操作する主変速操作具と、
前記副変速装置を変速操作する副変速操作具と、
前記作業クラッチの入り切り操作をするクラッチ操作具と、
前記作業クラッチが入り操作されると、前記主変速操作具が前記主変速操作具の前進側操作経路における所定の指令位置よりも増速側へ操作されるのを牽制する牽制機構と、が備え、
前記主変速操作具として、前後揺動操作式の主変速レバーが備えられると共に、前記クラッチ操作具として、前後揺動操作式のクラッチレバーが備えられ、
前記牽制機構に、前記前進側操作経路に対して出退可能な牽制部と、前記牽制部と前記クラッチレバーとを連係するリンク部と、が備えられ、
前記クラッチレバーがクラッチ入り位置へ操作されると、前記牽制部が前記前進側操作経路のうち前記所定の指令位置に対応する位置に突出し、
前記牽制部に、前記前進側操作経路から外れた位置で前記前進側操作経路に沿って延びると共に、前後方向に沿ってスライド移動可能なガイド部材が備えられ、
前後方向に沿った異なる二位置に支持ブラケットが備えられ、
前記ガイド部材は、前記支持ブラケットに支持されている点にある。
【0009】
本発明によれば、作業クラッチが入り操作されているときと、切り操作されているときとで、主変速装置による前進速度領域が異なるものになる。つまり、作業クラッチの入り切りを条件として、二種類の速度領域が現出される。したがって、副変速装置の変速領域数の二倍の数の適正走行速度領域を現出可能なコンバインとなる。しかも、主変速操作具の操作を牽制するだけであって、ミッションケース内における部品点数やスペースを増加させる必要がなく、副変速装置のギア組合せ数を増やすのと比較してコンパクトなミッションケースとすることができる。また、スペースが増加しないので、その分を利用して、ギア厚を厚くして、副変速装置の耐久性を向上させることも可能になる。
【0010】
さらに、作業クラッチが入り操作されると、牽制機構によって、主変速操作具が前進側操作経路における所定の指令位置よりも増速側へ操作されるのが牽制されるので、作業部が駆動している状態において、走行速度が一定の走行速度以上に変速されることがない。したがって、誤操作によって走行装置が適正走行速度以上になることが防止される。
また、本発明によると、主変速操作具が前後揺動式の主変速レバーであるので、牽制部が所定の指令位置に対応する位置に突出すると、主変速レバーが増速側に操作されて主変速レバーと牽制部とが当接すると、主変速レバーがそれ以上増速側へ操作されることが確実に防止できる。また、本発明によれば、クラッチ操作具が前後揺動操作式のクラッチレバーであって動きが単純であり、かつ、牽制部が前進操作経路に対して出退するものであって動きが単純であるので、クラッチレバーと牽制部とを連係するリンク部を簡単な構造にすることができる。
【0011】
本発明においては、
前記作業クラッチが入り操作されても、前記前進側操作経路のうち前記所定の指令位置と中立位置との間の経路、及び、後進側操作経路における前記主変速操作具の操作は自在であると好適である。
【0012】
本発明によれば、作業部が駆動している状態である一定の走行速度以上に変速されることはないが、後進走行を含む低速側への変速は可能である。したがって、現在の作業の途中で、現在の作業についての適正走行速度以下の適正走行速度の作業や後進走行が必要となった場合に、走行速度の円滑な変更が可能となる。
【0013】
本発明においては、
前記所定の指令位置は、前記前進側操作経路のうち中間位置よりも増速側の位置に設定されていると好適である。
【0014】
本発明によれば、牽制時における主変速操作具の操作可能領域は、前進側操作経路の半分以上に設定されている。つまり、牽制時と非牽制時とにおける上限速度の差が比較的小さいので、作業状態と非作業状態において適正走行速度の差が小さいような場合に有効である。
【0015】
本発明においては、
前記副変速装置は、高速変速状態と低速変速状態との二つの状態に切り換え可能であり、
前記牽制機構は、前記副変速装置が前記高速変速状態に操作されている状態においても前記低速変速状態に操作されている状態においても、前記作業クラッチが入り操作されると、前記主変速操作具が前記前進側操作経路における前記所定の指令位置よりも増速側へ操作されるのを牽制すると好適である。
【0016】
本発明であれば、副変速装置が高速変速状態であり、かつ、大きな駆動力を必要とする作業部が駆動しているようなエンジン高負荷状態のときに、主変速装置が高速変速側に操作されて、エンジンに更に負荷かかってしまう事態を未然に防止できる。
【0017】
また、副変速装置が低速変速状態に操作されて低速で走行している状態から、作業部を駆動させると共に現状速度よりもかなり高速で走行する状態に移行しようとする場合は、作業クラッチを入り状態に操作した上で、副変速装置を高速変速状態に操作すると効率良く適正走行速度に増速できる。しかし、副変速装置を高速変速状態に操作し忘れることも考えられる。この場合において、本発明であれば、運転者が、増速をしようと、主変速操作具を操作しても所定の指令位置よりも増速側には操作できず、走行速度は適正走行速度よりも低いものとなる。この結果、運転者は、副変速装置が低速変速状態であることに気付くこととなる。
【0018】
このように、本発明であれば、適正走行速度以上への主変速操作具の誤操作を未然に防止できると共に、副変速装置の操作し忘れ等の誤操作を運転者に気付かせられる。
【0019】
本発明においては、
前記副変速装置は、高速変速状態と低速変速状態との二つの状態に切り換え可能であり、
前記牽制機構は、前記副変速装置が前記高速変速状態に操作されている状態において前記作業クラッチが入り操作されると、前記主変速操作具が前記前進側操作経路における前記所定の指令位置よりも増速側へ操作されるのを牽制すると好適である。
【0020】
本発明であれば、副変速装置が高速変速状態であり、かつ、大きな駆動力を必要とする作業部が駆動しているようなエンジン負荷の高い作業時に、主変速装置が高速変速側に操作されて、エンジン負荷が更に高まってしまうようなことを防止できる。
【0021】
このように、本発明であれば、適正走行速度以上への主変速操作具の誤操作が未然に防止される。
【0022】
【0023】
【0024】
本発明においては、
前記主変速レバーは、運転部のサイドパネルに備えられ、
前記クラッチレバーは、前記サイドパネルにおいて前記主変速レバーの後方に備えられ、
前記牽制部は、前後方向に沿ってスライド移動可能であり、かつ、前記クラッチレバーがクラッチ切り位置に操作されると前記前進側操作経路の前方側に引退すると好適である。
【0025】
本発明によれば、前後揺動式の主変速レバーとクラッチレバーとが、サイドパネルにおいて前後に並べられ、かつ、牽制部が、前進側操作経路の前方から前後方向にスライドして前進側操作経路に突出する。つまり、全ての部材の動きが前後方向に沿っているので、リンク部を前後方向に沿った形状かつ前後方向に沿った動きのものとすることができる。この結果、簡単な構造かつ左右方向にコンパクトな牽制機構となる。
【0026】
本発明においては、
前記クラッチレバーが前記クラッチ入り位置からクラッチ切り位置とは反対側に移動するのを規制する規制部が備えられ、
前記リンク部に、前記クラッチレバーの揺動軸芯周りに前記クラッチレバーと一体的に揺動するアーム部材と、一端が前記アーム部材に対して第一軸芯回りに回動可能に連係されると共に他端が前記牽制部に対して第二軸芯回りに回動可能に連係されたロッド部材と、が備えられ、
前記リンク部は、前記クラッチレバーがクラッチ切り位置から前記クラッチ入り位置に操作されると、前記揺動軸芯の方向に沿って見て、前記第一軸芯が前記揺動軸芯の後方側を通過し、かつ、前記第一軸芯と前記第二軸芯とを結ぶ直線が、前記揺動軸芯を跨いで移動するように構成されていると好適である。
【0027】
本発明によれば、クラッチレバーがクラッチ切り位置からクラッチ入り位置に操作されると、第一軸芯と第二軸芯とを結ぶ直線が、揺動軸芯を跨いで移動するように構成され、かつ、規制部が備えられているので、作業クラッチがクラッチ入り操作されるときのリンク部の動作と、作業クラッチが切り操作されるときのリンク部の動作とは、逆の動作でなければならない。即ち、作業クラッチが入り操作されるときに辿った経路を第一軸芯が逆に辿るようにリンク部が動作するしか、作業クラッチが切り操作されることはない。
【0028】
したがって、主変速レバーが牽制機構によって牽制されている際に、例えば、誤って運転者が強づくに主変速レバーを増速側へ動かそうとしても、その力によって不測にリンク機構が動いてしまってクラッチレバーが切り位置に移動させられるということがない。
【0029】
本発明においては、
前記牽制部に、前記前進側操作経路から外れた位置で前記前進側操作経路に沿って延びると共に、前後方向に沿ってスライド移動可能なガイド部材が備えられ、
前後方向に沿った異なる二位置に支持ブラケットが備えられ、
前記ガイド部材は前記支持ブラケットに支持されていると好適である。
【0030】
本発明によれば、ガイド部材は、その移動方向に並ぶ二箇所において支持ブラケットに支持、案内されるので、ガイド部材の移動が安定し、かつ、円滑になる。
【0031】
本発明においては、
前記支持ブラケットに、前後方向に沿った異なる二位置に位置する二つの貫通孔が備えられ、
前記ガイド部材は、前記貫通孔に貫通支持されていると好適である。
【0032】
本発明によれば、ガイド部材を案内支持する部材として一つの支持ブラケットを備えるだけで良い。また、一つの支持ブラケットに並ぶ貫通孔を二つ設ける構成であるので、二つのブラケットの夫々に一つの貫通孔が備えられている場合と異なって、貫通孔の位置合わせ作業が不要である。
【0033】
本発明においては、
前記牽制部に、前記ガイド部材の先端部に設けられると共に、前記前進側操作経路に突出可能な突出部材が備えられ、
前記支持ブラケットとは別の支持ブラケットが備えられ、
前記別の支持ブラケットに、前記突出部材が貫通されて前記突出部材の前後方向のスライド移動を許容する長孔が形成され、
前記別の支持ブラケットは、前記前進側操作経路を挟んで前記支持ブラケットとは反対側に設けられていると好適である。
【0034】
本発明によると、突出部材は、主変速レバーと当接する箇所を挟んで一方側が支持ブラケットに支持され、かつ、他方側が別の支持ブラケットに支持されている。つまり、突出部材は、当接部を挟んで両端側共に安定して支持されている。したがって、本発明であると、ガイド部材全体として安定支持されるのは当然ながら、主変速レバーを牽制するに際して、主変速レバーが当接しても牽制部に変形やこじれが生じ難く、主変速レバーの増速側への移動を確実に牽制できる。
【0035】
本発明においては、
前記作業部は刈取部であり、かつ、前記作業クラッチは刈取クラッチであると好適である。
【0036】
本発明であれば、刈取作業時には上限速度が低くなり、かつ、非刈取作業時には上限速度が高くなって、夫々に最適な速度領域を簡単な構成で現出可能である。
【0037】
本発明においては、
前記主変速装置は、静油圧式無段変速装置であると好適である。
【0038】
本発明のように、主変速装置として静油圧式無段変速装置を採用すると、コンパクトな変速装置となる上、中立状態では、ブレーキをかけたのと同じ効果が得られ、操作性が高いものとなる。