【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「通水路11中の弁座11aに対して螺進螺退可能に組み付けた弁軸12、及びこの弁軸12の端部を囲
み、係止溝14を有した筒部13を有する水栓本体10と、弁軸12に対して取り付けられて、この弁軸12の回動操作を行うハンドル20とを備えた盗水防止水栓100であって、
ハンドル20を、筒部13の端部を覆うハンドル本体21と、このハンドル本体21内に組み付けたロック機構22と、数字や絵文字を含む記号が付されて、ハンドル本体21の外側から回動操作できる複数のダイヤル22aと、ハンドル本体21に取り付けられて、弁軸12の端部に連結される連結部材23aを備えたハンドルカバー23と、このハンドルカバー23の外面に対してロック機構22によって出入されて、水栓本体10の係止溝14に係合したとき、当該ハンドル20の回動を阻止するロック爪24と、を備えたものとしたことを特徴とする盗水防止水栓100」
である。
【0011】
この請求項1に係る盗水防止水栓100は、
図1及び
図3に示すように、接続部16によって水道管のような水供給管に接続されて、吐出口17から必要な水を吐出するようにした水栓本体10と、この水栓本体10の上側に連結されるハンドル20とを有するものであり、このハンドル20内に内蔵したロック機構22によって、ハンドル20の回動可能状態と回動不可状態とを現出させるようにしたものである。そして、このロック機構22の操作はハンドル20の外側から簡単に行えるようにしたものである。
【0012】
そのために、この盗水防止水栓100を構成しているハンドル20は、ハンドル本体21と、このハンドル本体21内に組み付けたロック機構22と、数字や絵文字を含む記号が付されて、ハンドル本体21の外側から回動操作できる複数のダイヤル22aと、ハンドル本体21に取り付けられて、弁軸12の端部に連結される連結部材23aを備えたハンドルカバー23と、このハンドルカバー23の外面に対してロック機構22によって出入されて、水栓本体10の係止溝14に係合したとき、当該ハンドル20の回動を阻止するロック爪24と、を備えたものである。
【0013】
勿論、水栓本体10については、通水路11中の弁座11aに対して螺進螺退可能に組み付けた弁軸12と、この弁軸12の端部を囲む筒部13と、この筒部13に係止溝14を形成したものであり、当該ハンドル20の回動操作を行えなくするには、ロック機構22によって出入されるロック爪24を、水栓本体10の係止溝14に係合させるようにするのである。なお、
図1の(b)には、ロック爪24がハンドル20内に入り込んで、水栓本体10側の係止溝14から外された状態が示してあり、この状態ではハンドル20の回動操作は行える状態にある。
【0014】
ところで、ロック機構22については種々な態様のものが適用できるが、この請求項1に係る盗水防止水栓100では、このロック機構22は、数字や絵文字を含む記号が付されて、ハンドル本体21の外側から回動操作できる複数のダイヤル22aを備えたものである。これらのダイヤル22aは、
図3の(a)及び(b)に示すように、その一部分がハンドル本体21から外方に突出したものであり、この突出した部分を指で回動操作することにより、当該ダイヤル22aに示してある数字や図柄の選択を自在に行えるようにしたものである。
【0015】
そして、これらのダイヤル22aの回動操作を行って、各ダイヤル22aが示す数字等を設定しておいたものに揃えることにより、ロック爪24をそれまで係合していた係止溝14から退避させたとき、当該ハンドル20の水栓本体10に対する係合が解かれるものである。このようなロック爪24の動きを制御するロック機構22は種々な形態のものとして市販されている。
【0016】
さて、以上のような盗水防止水栓100によって庭に散水したい場合には、上記したように、ハンドル20の外側から各ダイヤル22aの回動を行って、開錠状態となるように予め設定されている数字や図柄の配列を選択する。これにより、ロック爪24がそれまで係合していた係止溝14から退避され(
図1の(b)に示す状態)、ハンドル20の水栓本体10に対する係合が解かれる。ここで、当該ハンドル20を回動させれば、これに連結してある弁軸12が水栓本体10内にて回動され、この弁軸12の図示下端に設けてあった弁体12aが通水路11の弁座11aから離れる。そうすると、水栓本体10内の通水路11が接続部16と吐出口17とで連通することになるから、接続部16内に供給されている水道水は吐出口17から吐出することになって、散水が行えることになる。
【0017】
散水が完了すれば、ハンドル20を元の位置に戻して(ハンドル20を閉めて)、このハンドル20のハンドル本体21にて露出している各ダイヤル22aをバラバラにすると、ハンドル20内のロック爪24の先端が、例えばロック機構22自体に内蔵されているスプリングの作用によって押し下げられて、水栓本体10側の係止溝14に係合してロックが掛かるのである。このロック爪24の、水栓本体10側の係止溝14に対する係合状態は、当該係止溝14が筒部13の内側に形成してあることから、外からは見えない。このため、開錠のための各ダイヤル22aの並びが分からない第三者にとって、当該盗水防止水栓100の開放を行うことはできない。
【0018】
そして、この請求項1に係る盗水防止水栓100では、水栓としての基本的機能を発揮させる部材、通水路11、弁座11a、弁軸12、及び弁体12aを、一つの筒部13内に纏めるとともに、弁軸12の回動を行うハンドル20に、ロック機構22、ダイヤル22a、及びロック爪24を纏めたため、水栓本体10とハンドル20とを別物とし得るのである。
【0019】
これによって、水栓本体10またはハンドル20のどちらかに不具合が生じた場合、不具合が生じた方を交換するのみで、他方を使用し続けることができるものとなっているのである。また、ハンドル20内のロック機構22について、別種類のものに変更したい場合も、ハンドル20全体の交換を行うことによって、容易にロック機構22の交換が行えるものとなっているのである。
【0020】
従って、この請求項1に係る盗水防止水栓100は、ハンドル20自体にロック機構22を組み込んだので、鍵がなくても、あるいはハンドルの取り外し作業を行わなくても盗水防止が行えるものとなっているのである。
【0021】
以上の課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載の盗水防止水栓100について、
「ロック爪24の出入方向を、ハンドル20の回動方向に対して直交させたこと」
である。
【0022】
本発明に係る盗水防止水栓100は、水栓本体10とハンドル20との間がロック状態になっていると、ハンドル20側のロック爪24が水栓本体10側の係止溝14に係合しているということになるが、この状態でハンドル20を回したとすると、ロック爪24と係止溝14との間に力が加わる。ここで、もし、ハンドル20の回動方向とロック爪24の係止溝14に対する係合方向とが同じであったとすると、ハンドル20を無理に回せば、係合状態が簡単に外れたり、係合し合っていた部分が破損してしまうことになる。
【0023】
そこで、この請求項2に係る盗水防止水栓100では、ロック爪24の出入方向を、ハンドル20の回動方向に対して直交させることによって、ハンドル20を無理に回したとしても、ロック爪24と係止溝14との係合状態が簡単に外れないようにするとともに、係合し合っていたロック爪24または係止溝14が破損してしまわないようにしたのである。換言すれば、ロック爪24の出入方向が、ハンドル20の回動方向に対して直交していることによって、ロック状態にあるハンドル20を回動させたとすると、ロック爪24の先端は係止溝14の内面に直角に押し付けられることになるのであるから、ハンドル20の回動力がロック爪24の出入力、特にロック爪24を外してしまう力に変換されることは全くない。
【0024】
逆に、ロック状態を解除するために各ダイヤル22aを所定の位置に回動させたとき、ロック爪24の出入方向がハンドル20の回動方向に対して直交していたことによって、ロック爪24は容易に係止溝14から出ることになって、ロック状態が無理なく解除される。仮に、ロック爪24の先端が係止溝14内に接触していて摩擦力が働いていたとしても、ハンドル20を左右に少し回して摩擦力がない状態にしてやれば、ロック状態は容易に解除される。
【0025】
従って、この請求項2に係る盗水防止水栓100は、上記請求項1のそれと同様な機能を発揮する他、ロック爪24の作動が確実なものとなっているのである。
【0026】
さらに、上記課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項2のいずれかに記載の盗水防止水栓100について、
「筒部13の側面に、底面方向が弁軸12の方向と同一となる工具挿入溝15を形成するとともに、この工具挿入溝15の端部が筒部13の端面13aにて開口するようにしたこと」
である。
【0027】
工具挿入溝15は、例えば
図1の(a)に示すように、水栓本体10を構成している筒部13の側面に形成したものであり、
図3の(b)に示すように、その底面方向が弁軸12の方向と同一となるようにしたものである。また、この工具挿入溝15の端部は、
図4にも示すように、筒部13の端面13aにて開口させたものである。
【0028】
工具挿入溝15を以上のように形成することによって、弁軸12の端部に連結されるハンドルカバー23をハンドル本体21に固定するための固定ネジ25が、
図2の(b)に示すような「見えない状態」と、
図2の(c)に示すような「見える状態」と、になる場合分けが行えるのである。勿論、
図2の(b)状態から(c)状態に変更するには、当該盗水防止水栓100のハンドル20を、各ダイヤル22aの回動操作によってロック状態を解除してから行う。
【0029】
固定ネジ25が、
図2の(b)に示すような「見えない状態」となっていると、当然のことながら、当該固定ネジ25を外してハンドル20を外すことはできない。この固定ネジ25は、水栓本体10側の弁軸12先端に取り付けられるハンドルカバー23を、ハンドル本体21に取り付けたりこのハンドルカバー23をハンドル本体21から外すものだから、固定ネジ25が「見えない状態」となっていれば、結果的に、ハンドル20を外すことはできない。
【0030】
逆に、固定ネジ25が
図2の(c)に示すような「見える状態」になっていれば、ドライバーをこの工具挿入溝15内に挿通して固定ネジ25の取り外しを行えば、ハンドル20を外すことができる。なお、ハンドル20を外して所定のメンテナンス等が完了すれば、再び固定ネジ25の固定を行い、
図2の(b)に示す状態に戻しておけば、第三者によって当該ハンドル20が外されることはない。
【0031】
従って、この請求項3に係る盗水防止水栓100は、上記請求項1または2のそれと同様な機能を発揮する他、固定ネジ25を工具挿入溝15から露出させるか否かの選択が行えて、盗水防止がより一層確実に行えるようになっている。
【0032】
そして、上記課題を解決するために、請求項4に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の盗水防止水栓100について、
「筒部13の係止溝14を、筒部13の端面13aにて円弧状に並ぶように複数形成したこと」
である。
【0033】
この請求項4に係る盗水防止水栓100では、
図4及び
図5に示すように、ロック爪24の先端が係合されるべき係止溝14を、筒部13の端面13aにて円弧状に並ぶように複数形成したものである。なお、ロック爪24の先端は、例えば
図5に示すように、各係止溝14のうちの一つにしか係合できないものである。
【0034】
当該盗水防止水栓100の閉止時におけるハンドル20の回転停止位置は、水栓本体10内の弁座11aに対する弁体12aの位置によって決定され、一方、この弁体12aは、一般的には合成ゴムによって形成されているから、経年変化若しくは変形するものである。従って、工場出荷時において、ロック爪24の係合位置を、例えば
図4に示した一番上の係止溝14にしておいても、長期間使用することによって弁体12aが経年変化した結果、この一番上の係止溝14では完全止水することができなくなる。
【0035】
このように、当該盗水防止水栓100を長期間使用することによって弁体12aが変形してきた場合、盗水防止水栓100の完全止水位置でハンドル20を回動停止できるようにするには、ハンドル20をもう少しきつく閉めたところで停止させ、その位置でロック状態が確保できるようにしなければならない。そこで、筒部13の係止溝14を、筒部13の端面13aにて円弧状に並ぶように複数形成しておくことによって、弁体12aが経年変化したとき、例えば
図4に示した上から2番目の係止溝14の位置をロック位置にして、これにロック爪24の先端を係合させるのである。これにより、弁体12aの経年変化に応じてハンドル20の回転停止位置を変えることができ、当該盗水防止水栓100の耐久性が向上することになるのである。
【0036】
従って、この請求項4に係る盗水防止水栓100は、上記請求項1〜3のそれと同様な機能を発揮する他、耐久性が向上したものとなっているのである。