特許第6095602号(P6095602)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095602
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】盗水防止水栓
(51)【国際特許分類】
   E03B 9/02 20060101AFI20170306BHJP
   E05B 65/00 20060101ALI20170306BHJP
   E05B 37/02 20060101ALI20170306BHJP
   F16K 35/00 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   E03B9/02 B
   E05B65/00 Z
   E05B37/02 Z
   F16K35/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-82708(P2014-82708)
(22)【出願日】2014年4月14日
(65)【公開番号】特開2015-203221(P2015-203221A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2016年11月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590006309
【氏名又は名称】株式会社水生活製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 徹
(72)【発明者】
【氏名】根岸 博明
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/052325(WO,A1)
【文献】 実開昭63−076064(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 9/00、9/02、9/04
E05B 37/02、49/00−49/04
E05B 65/00、77/00−85/28
F16K 35/00−35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通水路中の弁座に対して螺進螺退可能に組み付けた弁軸、及びこの弁軸の端部を囲み、係止溝を有した筒部を有する水栓本体と、前記弁軸に対して取り付けられて、この弁軸の回動操作を行うハンドルとを備えた盗水防止水栓であって、
前記ハンドルを、前記筒部の端部を覆うハンドル本体と、このハンドル本体内に組み付けたロック機構と、数字や絵文字を含む記号が付されて、前記ハンドル本体の外側から回動操作できる複数のダイヤルと、前記ハンドル本体に取り付けられて、前記弁軸の端部に連結される連結部材を備えたハンドルカバーと、このハンドルカバーの外面に対して前記ロック機構によって出入されて、前記水栓本体の係止溝に係合したとき、当該ハンドルの回動を阻止するロック爪と、を備えたものとしたことを特徴とする盗水防止水栓。
【請求項2】
前記ロック爪の出入方向を、前記ハンドルの回動方向に対して直交させたことを特徴とする請求項1に記載の盗水防止水栓。
【請求項3】
前記筒部の側面に、底面方向が前記弁軸の方向と同一となる工具挿入溝を形成するとともに、この工具挿入溝の端部が前記筒部の端面にて開口するようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項2のいずれかに記載の盗水防止水栓。
【請求項4】
前記筒部の係止溝を、前記筒部の端面にて円弧状に並ぶように複数形成したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の盗水防止水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば庭先の水栓柱等、家屋の外に設置した場合であっても、第三者による開閉操作が簡単に行えないようにした盗水防止水栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
庭先の水栓柱等、家屋の外に設置した水栓は、当該庭がオープンである場合、その住人の許可が得られなくても第三者によって簡単に操作できて、水道水をタダで使用するという、所謂「盗水」行為が行い易いものとなっている。
【0003】
この「盗水」を防止するために、従来では例えばハンドルと水道管との間を鎖で結び、この鎖に鍵を掛けるようにしたり、あるいは、特別な工具を採用しなければ、ハンドル操作が行えないようにする等(特許文献1)、種々な対策が講じられてきている。しかしながら、合鍵や特殊工具の置き場所を忘れてしまった場合には、簡単には開けられなくなってしまう。
【0004】
そこで、特許文献2にて提案されているようなシリンダー錠を使用して、盗水を防止しようとする試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−21454号公報、要約
【特許文献2】特開2001−65213号公報、要約
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2にて提案されている「盗水防止用止水栓錠」は、「従来の一般的な止水栓では、水道水供給元との使用契約を結ばないでも、ハンドルを捻ればその止水栓を開栓操作することができるので、盗水しようと思えば簡単にできる。また、このような止水栓では、盗水を防止するために、ハンドルを止水栓の弁軸から外しておいても、このハンドルは市販されているため、それを購入すればその止水栓の弁軸に簡単に取り付けることができ、盗水の防止には全く役立たない」ことを解決することを目的としてなされたもので、図7に示すように、「止水栓の弁軸1にダイヤル式錠2のシリンダ部3を挿入し、このシリンダ部の上端を前記弁軸の上端にネジ止めし、このねじ止め部をダイヤル式錠のダイヤル付きキャップ4で覆うと共にこのダイヤル付きキャップを前記シリンダ部に装着したものとし、前記ダイヤル付きキャップに遊嵌した複数のダイヤルリング4a、4a…のダイヤル合わせにより、このダイヤル付きキャップを前記シリンダ部に着脱自在とした」という構成を有したものである。
【0007】
この特許文献2にて提案されている「盗水防止用止水栓錠」は、止水栓の弁軸1に挿入してあったダイヤル式錠2のシリンダ部3を外してからハンドルを取り付けて、このハンドルによって開閉操作を行うものであるため、ハンドルの取り付け作業や取り外し作業を伴うものであって、使用勝手が悪いと考えられる。
【0008】
そこで、本発明者等は、この種の盗水防止水栓について、鍵がなくても、あるいはハンドルの取り外し作業を行わなくても盗水防止が行えるようにするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0009】
すなわち、本発明の目的とするところは、ハンドル自体にロック機構を組み込んで、鍵がなくても、あるいはハンドルの取り外し作業を行わなくても盗水防止が行える盗水防止水栓100を、簡単な構造によって提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「通水路11中の弁座11aに対して螺進螺退可能に組み付けた弁軸12、及びこの弁軸12の端部を囲み、係止溝14を有した筒部13を有する水栓本体10と、弁軸12に対して取り付けられて、この弁軸12の回動操作を行うハンドル20とを備えた盗水防止水栓100であって、
ハンドル20を、筒部13の端部を覆うハンドル本体21と、このハンドル本体21内に組み付けたロック機構22と、数字や絵文字を含む記号が付されて、ハンドル本体21の外側から回動操作できる複数のダイヤル22aと、ハンドル本体21に取り付けられて、弁軸12の端部に連結される連結部材23aを備えたハンドルカバー23と、このハンドルカバー23の外面に対してロック機構22によって出入されて、水栓本体10の係止溝14に係合したとき、当該ハンドル20の回動を阻止するロック爪24と、を備えたものとしたことを特徴とする盗水防止水栓100」
である。
【0011】
この請求項1に係る盗水防止水栓100は、図1及び図3に示すように、接続部16によって水道管のような水供給管に接続されて、吐出口17から必要な水を吐出するようにした水栓本体10と、この水栓本体10の上側に連結されるハンドル20とを有するものであり、このハンドル20内に内蔵したロック機構22によって、ハンドル20の回動可能状態と回動不可状態とを現出させるようにしたものである。そして、このロック機構22の操作はハンドル20の外側から簡単に行えるようにしたものである。
【0012】
そのために、この盗水防止水栓100を構成しているハンドル20は、ハンドル本体21と、このハンドル本体21内に組み付けたロック機構22と、数字や絵文字を含む記号が付されて、ハンドル本体21の外側から回動操作できる複数のダイヤル22aと、ハンドル本体21に取り付けられて、弁軸12の端部に連結される連結部材23aを備えたハンドルカバー23と、このハンドルカバー23の外面に対してロック機構22によって出入されて、水栓本体10の係止溝14に係合したとき、当該ハンドル20の回動を阻止するロック爪24と、を備えたものである。
【0013】
勿論、水栓本体10については、通水路11中の弁座11aに対して螺進螺退可能に組み付けた弁軸12と、この弁軸12の端部を囲む筒部13と、この筒部13に係止溝14を形成したものであり、当該ハンドル20の回動操作を行えなくするには、ロック機構22によって出入されるロック爪24を、水栓本体10の係止溝14に係合させるようにするのである。なお、図1の(b)には、ロック爪24がハンドル20内に入り込んで、水栓本体10側の係止溝14から外された状態が示してあり、この状態ではハンドル20の回動操作は行える状態にある。
【0014】
ところで、ロック機構22については種々な態様のものが適用できるが、この請求項1に係る盗水防止水栓100では、このロック機構22は、数字や絵文字を含む記号が付されて、ハンドル本体21の外側から回動操作できる複数のダイヤル22aを備えたものである。これらのダイヤル22aは、図3の(a)及び(b)に示すように、その一部分がハンドル本体21から外方に突出したものであり、この突出した部分を指で回動操作することにより、当該ダイヤル22aに示してある数字や図柄の選択を自在に行えるようにしたものである。
【0015】
そして、これらのダイヤル22aの回動操作を行って、各ダイヤル22aが示す数字等を設定しておいたものに揃えることにより、ロック爪24をそれまで係合していた係止溝14から退避させたとき、当該ハンドル20の水栓本体10に対する係合が解かれるものである。このようなロック爪24の動きを制御するロック機構22は種々な形態のものとして市販されている。
【0016】
さて、以上のような盗水防止水栓100によって庭に散水したい場合には、上記したように、ハンドル20の外側から各ダイヤル22aの回動を行って、開錠状態となるように予め設定されている数字や図柄の配列を選択する。これにより、ロック爪24がそれまで係合していた係止溝14から退避され(図1の(b)に示す状態)、ハンドル20の水栓本体10に対する係合が解かれる。ここで、当該ハンドル20を回動させれば、これに連結してある弁軸12が水栓本体10内にて回動され、この弁軸12の図示下端に設けてあった弁体12aが通水路11の弁座11aから離れる。そうすると、水栓本体10内の通水路11が接続部16と吐出口17とで連通することになるから、接続部16内に供給されている水道水は吐出口17から吐出することになって、散水が行えることになる。
【0017】
散水が完了すれば、ハンドル20を元の位置に戻して(ハンドル20を閉めて)、このハンドル20のハンドル本体21にて露出している各ダイヤル22aをバラバラにすると、ハンドル20内のロック爪24の先端が、例えばロック機構22自体に内蔵されているスプリングの作用によって押し下げられて、水栓本体10側の係止溝14に係合してロックが掛かるのである。このロック爪24の、水栓本体10側の係止溝14に対する係合状態は、当該係止溝14が筒部13の内側に形成してあることから、外からは見えない。このため、開錠のための各ダイヤル22aの並びが分からない第三者にとって、当該盗水防止水栓100の開放を行うことはできない。
【0018】
そして、この請求項1に係る盗水防止水栓100では、水栓としての基本的機能を発揮させる部材、通水路11、弁座11a、弁軸12、及び弁体12aを、一つの筒部13内に纏めるとともに、弁軸12の回動を行うハンドル20に、ロック機構22、ダイヤル22a、及びロック爪24を纏めたため、水栓本体10とハンドル20とを別物とし得るのである。
【0019】
これによって、水栓本体10またはハンドル20のどちらかに不具合が生じた場合、不具合が生じた方を交換するのみで、他方を使用し続けることができるものとなっているのである。また、ハンドル20内のロック機構22について、別種類のものに変更したい場合も、ハンドル20全体の交換を行うことによって、容易にロック機構22の交換が行えるものとなっているのである。
【0020】
従って、この請求項1に係る盗水防止水栓100は、ハンドル20自体にロック機構22を組み込んだので、鍵がなくても、あるいはハンドルの取り外し作業を行わなくても盗水防止が行えるものとなっているのである。
【0021】
以上の課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載の盗水防止水栓100について、
「ロック爪24の出入方向を、ハンドル20の回動方向に対して直交させたこと」
である。
【0022】
本発明に係る盗水防止水栓100は、水栓本体10とハンドル20との間がロック状態になっていると、ハンドル20側のロック爪24が水栓本体10側の係止溝14に係合しているということになるが、この状態でハンドル20を回したとすると、ロック爪24と係止溝14との間に力が加わる。ここで、もし、ハンドル20の回動方向とロック爪24の係止溝14に対する係合方向とが同じであったとすると、ハンドル20を無理に回せば、係合状態が簡単に外れたり、係合し合っていた部分が破損してしまうことになる。
【0023】
そこで、この請求項2に係る盗水防止水栓100では、ロック爪24の出入方向を、ハンドル20の回動方向に対して直交させることによって、ハンドル20を無理に回したとしても、ロック爪24と係止溝14との係合状態が簡単に外れないようにするとともに、係合し合っていたロック爪24または係止溝14が破損してしまわないようにしたのである。換言すれば、ロック爪24の出入方向が、ハンドル20の回動方向に対して直交していることによって、ロック状態にあるハンドル20を回動させたとすると、ロック爪24の先端は係止溝14の内面に直角に押し付けられることになるのであるから、ハンドル20の回動力がロック爪24の出入力、特にロック爪24を外してしまう力に変換されることは全くない。
【0024】
逆に、ロック状態を解除するために各ダイヤル22aを所定の位置に回動させたとき、ロック爪24の出入方向がハンドル20の回動方向に対して直交していたことによって、ロック爪24は容易に係止溝14から出ることになって、ロック状態が無理なく解除される。仮に、ロック爪24の先端が係止溝14内に接触していて摩擦力が働いていたとしても、ハンドル20を左右に少し回して摩擦力がない状態にしてやれば、ロック状態は容易に解除される。
【0025】
従って、この請求項2に係る盗水防止水栓100は、上記請求項1のそれと同様な機能を発揮する他、ロック爪24の作動が確実なものとなっているのである。
【0026】
さらに、上記課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項2のいずれかに記載の盗水防止水栓100について、
「筒部13の側面に、底面方向が弁軸12の方向と同一となる工具挿入溝15を形成するとともに、この工具挿入溝15の端部が筒部13の端面13aにて開口するようにしたこと」
である。
【0027】
工具挿入溝15は、例えば図1の(a)に示すように、水栓本体10を構成している筒部13の側面に形成したものであり、図3の(b)に示すように、その底面方向が弁軸12の方向と同一となるようにしたものである。また、この工具挿入溝15の端部は、図4にも示すように、筒部13の端面13aにて開口させたものである。
【0028】
工具挿入溝15を以上のように形成することによって、弁軸12の端部に連結されるハンドルカバー23をハンドル本体21に固定するための固定ネジ25が、図2の(b)に示すような「見えない状態」と、図2の(c)に示すような「見える状態」と、になる場合分けが行えるのである。勿論、図2の(b)状態から(c)状態に変更するには、当該盗水防止水栓100のハンドル20を、各ダイヤル22aの回動操作によってロック状態を解除してから行う。
【0029】
固定ネジ25が、図2の(b)に示すような「見えない状態」となっていると、当然のことながら、当該固定ネジ25を外してハンドル20を外すことはできない。この固定ネジ25は、水栓本体10側の弁軸12先端に取り付けられるハンドルカバー23を、ハンドル本体21に取り付けたりこのハンドルカバー23をハンドル本体21から外すものだから、固定ネジ25が「見えない状態」となっていれば、結果的に、ハンドル20を外すことはできない。
【0030】
逆に、固定ネジ25が図2の(c)に示すような「見える状態」になっていれば、ドライバーをこの工具挿入溝15内に挿通して固定ネジ25の取り外しを行えば、ハンドル20を外すことができる。なお、ハンドル20を外して所定のメンテナンス等が完了すれば、再び固定ネジ25の固定を行い、図2の(b)に示す状態に戻しておけば、第三者によって当該ハンドル20が外されることはない。
【0031】
従って、この請求項3に係る盗水防止水栓100は、上記請求項1または2のそれと同様な機能を発揮する他、固定ネジ25を工具挿入溝15から露出させるか否かの選択が行えて、盗水防止がより一層確実に行えるようになっている。
【0032】
そして、上記課題を解決するために、請求項4に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の盗水防止水栓100について、
「筒部13の係止溝14を、筒部13の端面13aにて円弧状に並ぶように複数形成したこと」
である。
【0033】
この請求項4に係る盗水防止水栓100では、図4及び図5に示すように、ロック爪24の先端が係合されるべき係止溝14を、筒部13の端面13aにて円弧状に並ぶように複数形成したものである。なお、ロック爪24の先端は、例えば図5に示すように、各係止溝14のうちの一つにしか係合できないものである。
【0034】
当該盗水防止水栓100の閉止時におけるハンドル20の回転停止位置は、水栓本体10内の弁座11aに対する弁体12aの位置によって決定され、一方、この弁体12aは、一般的には合成ゴムによって形成されているから、経年変化若しくは変形するものである。従って、工場出荷時において、ロック爪24の係合位置を、例えば図4に示した一番上の係止溝14にしておいても、長期間使用することによって弁体12aが経年変化した結果、この一番上の係止溝14では完全止水することができなくなる。
【0035】
このように、当該盗水防止水栓100を長期間使用することによって弁体12aが変形してきた場合、盗水防止水栓100の完全止水位置でハンドル20を回動停止できるようにするには、ハンドル20をもう少しきつく閉めたところで停止させ、その位置でロック状態が確保できるようにしなければならない。そこで、筒部13の係止溝14を、筒部13の端面13aにて円弧状に並ぶように複数形成しておくことによって、弁体12aが経年変化したとき、例えば図4に示した上から2番目の係止溝14の位置をロック位置にして、これにロック爪24の先端を係合させるのである。これにより、弁体12aの経年変化に応じてハンドル20の回転停止位置を変えることができ、当該盗水防止水栓100の耐久性が向上することになるのである。
【0036】
従って、この請求項4に係る盗水防止水栓100は、上記請求項1〜3のそれと同様な機能を発揮する他、耐久性が向上したものとなっているのである。
【発明の効果】
【0037】
以上説明した通り、本発明においては、
「通水路11中の弁座11aに対して螺進螺退可能に組み付けた弁軸12、及びこの弁軸12の端部を囲み、止溝14を有した筒部13を有する水栓本体10と、弁軸12に対して取り付けられて、この弁軸12の回動操作を行うハンドル20とを備えた盗水防止水栓100であって、
ハンドル20を、筒部13の端部を覆うハンドル本体21と、このハンドル本体21内に組み付けたロック機構22と、数字や絵文字を含む記号が付されて、ハンドル本体21の外側から回動操作できる複数のダイヤル22aと、ハンドル本体21に取り付けられて、弁軸12の端部に連結される連結部材23aを備えたハンドルカバー23と、このハンドルカバー23の外面に対してロック機構22によって出入されて、水栓本体10の係止溝14に係合したとき、当該ハンドル20の回動を阻止するロック爪24と、を備えたものとしたこと」
に構成上の主たる特徴があり、これにより、ハンドル20自体にロック機構22を組み込んで、鍵がなくても、あるいはハンドル20の取り外し作業を行わなくても盗水防止が行える盗水防止水栓100を、簡単な構造によって提供することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明に係る盗水防止水栓100を示すもので、(a)は側面図、(b)は図3中の3ー3線で切って見た立断面図である。
図2】同盗水防止水栓100を示すもので、(a)は側面図、(b)は(a)中の2−2線に沿って見た固定ネジ25が見えないときの底面図、(c)は(a)中の2−2線に沿って見た固定ネジ25が見えるときの底面図である。
図3】同盗水防止水栓100を示すもので、(a)は正面図、(b)は図1中の1ー1線で切って見た立断面図である。
図4】同盗水防止水栓100の斜め上方から見た分解斜視図である。
図5】同盗水防止水栓100の斜め後方から見た分解斜視図である。
図6】同盗水防止水栓100の側方から見た分解斜視図である。
図7】特許文献2に提案されている技術を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に、上記のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した実施の形態である盗水防止水栓100について説明すると、図1図3には、本実施形態に係る盗水防止水栓100が示してある。この盗水防止水栓100は、図1の(a)に示したように、水道管等の水供給源に接続される接続部16と、この接続部16を通して供給された水を吐出する吐出口17と、これらの接続部16及び吐出口17の上側に一体化された筒部13とを有する水栓本体10と、この水栓本体10に取り付けられるハンドル20とを備えたものである。換言すれば、この盗水防止水栓100は、内部に部品を組み付けた水栓本体10と、この水栓本体10に取り付けられるハンドル20とからなっており、水栓本体10またはハンドル20を個別に交換できるものとなっているのである。
【0040】
水栓本体10は、内部に、上記接続部16と吐出口17とを連通させる通水路11を形成したものであり、この通水路11の、筒部13の中心下部に位置する部分に弁座11aを形成したものである。この弁座11aの中心には、上記通水路11の接続部16側部分と吐出口17側部分とを連通させる穴が形成してあり、通水路11の吐出口17側部分には筒部13内空間に連なる穴が形成してある。また、弁座11aには弁体12aが当節し得るようにしてあり、この弁体12aは筒部13内に設けた弁軸12の下端に取り付けてある。
【0041】
弁軸12の上端部は、筒部13内の中心に位置していて、この上端部外周には、後述するハンドル20側のハンドルカバー23の連結部材23aを回動不能に連結するための、当該弁軸12の軸心方向のセレーションが刻んである。また、この弁軸12の上端には、ハンドル20側のハンドルカバー23を取り付ける弁軸止めネジ26のためのネジ穴が形成してある。なお、この弁軸12が突出している筒部13内は、この弁軸12の組み付けを容易にするだけの空間が形成してあり、結果として、当該筒部13の端面13aは、手で掴む大きさの後述するハンドル20を受承できる大きさのものとなっている。
【0042】
筒部13の端面13aには、後述するハンドル20側のロック爪24を係合させるための係止溝14が形成してあるが、本実施形態では、この係止溝14を、筒部13の端面13aにて円弧状に並ぶように複数形成してある。このようにしたのは、当該盗水防止水栓100を長期間使用することによって弁体12aが変形してきた場合、盗水防止水栓100の完全止水位置でハンドル20を回動停止できるようにするには、ハンドル20をもう少しきつく閉めたところで停止させ、その位置でロック状態が確保できるようにしなければならないからである。つまり、筒部13の係止溝14を、筒部13の端面13aにて円弧状に並ぶように複数形成しておくことによって、弁体12aが経年変化したとき、例えば図4に示した1番目の位置を初期位置であったとき、上から2番目の係止溝14の位置をロック位置にして、これにロック爪24の先端が係合できるようにするのである。これにより、弁体12aの経年変化に応じてハンドル20の回転停止位置を変えることができ、当該盗水防止水栓100の耐久性を向上させることになるのである。
【0043】
さらに、筒部13については、例えば図1の(a)に示したように、その側面に工具挿入溝15を形成したものであり、図3の(b)に示したように、この工具挿入溝15の底面方向を弁軸12の方向と同一となるようにしてある。また、この工具挿入溝15の端部は、図4にも示したように、筒部13の端面13aにて開口させたものである。
【0044】
工具挿入溝15を以上のように形成することによって、弁軸12の端部に連結されるハンドルカバー23をハンドル本体21に固定するための固定ネジ25が、図2の(b)に示したような「見えない状態」と、図2の(c)に示したような「見える状態」と、になる場合分けが行えるのである。
【0045】
固定ネジ25が、図2の(b)に示すような「見えない状態」となっていると、当該固定ネジ25を外してハンドル20を外すことはできない。この固定ネジ25は、水栓本体10側の弁軸12先端に取り付けられるハンドルカバー23を、ハンドル本体21に取り付けたり、このハンドルカバー23をハンドル本体21から外すものだから、固定ネジ25が「見えない状態」となっていれば、結果的に、ハンドル20を外すことはできない。
【0046】
逆に、固定ネジ25が図2の(c)に示したような「見える状態」になっていれば、ドライバーをこの工具挿入溝15内に挿通して固定ネジ25の取り外しを行えば、ハンドル20を外すことができる。なお、ハンドル20を外して所定のメンテナンス等が完了すれば、再び固定ネジ25の固定を行い、図2の(b)に示した状態に戻しておけば、第三者によって当該ハンドル20が外されることはない。
【0047】
一方、ハンドル20は、筒部13の端部を覆うハンドル本体21と、このハンドル本体21内に組み付けたロック機構22と、数字や絵文字を含む記号が付されて、ハンドル本体21の外側から回動操作できる複数のダイヤル22aと、ハンドル本体21に取り付けられて、弁軸12の端部に連結される連結部材23aを備えたハンドルカバー23と、このハンドルカバー23の外面に対してロック機構22によって出入されて、水栓本体10の係止溝14に係合したとき、当該ハンドル20の回動を阻止するロック爪24と、を備えたものである。
【0048】
このハンドル20のハンドル本体21は、これを手で掴んで回動操作を行うもので、その外形は、図4及び図5に示したように、水栓本体10側の筒部13の端面13aの外形と同じとなるようにしたものであり、内部にはロック機構22が設置できるようにしてある。このハンドル本体21の上面には、複数の窓21aが形成してあり、これらの窓21aからは、図3及び図4に示したように、ロック機構22を構成しているダイヤル22aの一部を露出できるものである。
【0049】
また、このハンドル本体21の下面には、例えば図3の(b)に示したように、ハンドル本体21とは別体のハンドルカバー23が取り付けられるのであるが、このハンドルカバー23のハンドル本体21に対する取り付けは、図2の(c)にて示したように、固定ネジ25によって行われる。さらに、このハンドルカバー23の中心には、図1及び図3の各(b)に示したように、水栓本体10側の弁軸12上端に向けて突出する連結部材23aが一体的に形成してあり、図4に示したように、この連結部材23a内に挿通した弁軸止めネジ26を弁軸12の上端に螺着することによって、当該ハンドルカバー23は弁軸12に連結される。そして、このハンドルカバー23のハンドル本体21に対する固定は、水栓本体10側の工具挿入溝15から挿入されたドライバー等によって締着される固定ネジ25によってなされることは、上述した通りである。
【0050】
ところで、ロック機構22については種々な態様のものが適用できるが、この実施形態に係る盗水防止水栓100では、このロック機構22は、数字や絵文字を含む記号が付されて、ハンドル本体21の外側から回動操作できる複数のダイヤル22aを備えたものである。これらのダイヤル22aは、図3の(a)及び(b)に示すように、その一部分がハンドル本体21から外方に突出したものであり、この突出した部分を指で回動操作することにより、当該ダイヤル22aに示してある数字や図柄の選択を自在に行えるようにしたものである。
【0051】
このロック機構22は、ロック爪24の動きを制御するものであるが、ロック爪24は、前述した通り、その先端が水栓本体10側の筒部13に形成してある係止溝14に係合したとき、当該盗水防止水栓100をロック状態にするものである。本実施形態のロック爪24は、例えば図4に示したように、ロック機構22の各ダイヤル22aを連結している軸にその基部が支持されているもので、各ダイヤル22aの回動方向に上下動するものである。
【0052】
このロック機構22は、各ダイヤル22aの回動操作を行って、各ダイヤル22aが示す数字等を設定しておいたものに揃えることにより、ロック爪24をそれまで係合していた係止溝14から退避させることができ、当該ハンドル20の水栓本体10に対する係合を解くものである。これとは逆に、各ダイヤル22aをバラバラにすれば、ロック爪24は下動して水栓本体10側の係止溝14に係合するものである。このようなロック爪24の動きを制御するロック機構22は種々な形態のものとして市販されている。
【0053】
以上のようなハンドル20を水栓本体10に取り付けるには、以下のようにする。まず、ハンドル20から取り外したハンドルカバー23の連結部材23aを水栓本体10側の弁軸12の先端に差し込んで、図4に示したように、ハンドルカバー23の上から弁軸止めネジ26を連結部材23a内に挿通してこれを弁軸12上端に締着する。このハンドルカバー23の上にハンドル20の残りの部分を嵌め込むのであるが、ハンドルカバー23自体の形状は図4にも示したように方向性のあるものであるから、嵌め込みができる位置で嵌め込まれれば、ロック爪24の先端は、図4にも示したように、自動的に水栓本体10側の係止溝14に向かい係合し得る状態となる。このとき、ハンドル20は水栓本体10に組み付けられてはいるが、ロック爪24はロック状態を形成していない。
【0054】
次に、ハンドル20を適宜回動して、ハンドルカバー23に形成してある取付穴が、図2の(c)に示したような固定ネジ25取り付け可能な位置となるように調整し、この取付穴が水栓本体10の工具挿入溝15から見えたら、固定ネジ25の締着を行う。その後、当該盗水防止水栓100が完全止水位置となるまでハンドル20を締め、各ダイヤル22aをバラバラに回動させて、ロック爪24によるロック状態を形成するのである。
【0055】
なお、工場出荷時には、ロック爪24は、図4に示した複数の係止溝14の内の、例えば一番上になっている係止溝14内に係合するよう、調整される。
【符号の説明】
【0056】
100 盗水防止水栓
10 水栓本体
11 通水路
11a 弁座
12 弁軸
12a 弁体
13 筒部
13a 端面
14 係止溝
15 工具挿入溝
16 接続部
17 吐出口
20 ハンドル
21 ハンドル本体
21a 窓
22 ロック機構
22a ダイヤル
23 ハンドルカバー
23a 連結部材
24 ロック爪
25 固定ネジ
26 弁軸止めネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7