特許第6095630号(P6095630)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6095630波長変換型封止材組成物、波長変換型封止材層、および、それを用いた太陽電池モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095630
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】波長変換型封止材組成物、波長変換型封止材層、および、それを用いた太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/055 20140101AFI20170306BHJP
   H01L 31/048 20140101ALI20170306BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20170306BHJP
   C08K 5/3472 20060101ALI20170306BHJP
   C08K 5/45 20060101ALI20170306BHJP
   C08K 5/47 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   H01L31/04 622
   H01L31/04 560
   C09K3/10 Z
   C08K5/3472
   C08K5/45
   C08K5/47
【請求項の数】11
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-221317(P2014-221317)
(22)【出願日】2014年10月30日
(65)【公開番号】特開2015-111665(P2015-111665A)
(43)【公開日】2015年6月18日
【審査請求日】2016年1月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-225316(P2013-225316)
(32)【優先日】2013年10月30日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 正孝
(72)【発明者】
【氏名】尾之内 久成
(72)【発明者】
【氏名】北原 達也
【審査官】 堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/134992(WO,A1)
【文献】 特開平07−142752(JP,A)
【文献】 特開2012−025870(JP,A)
【文献】 特開2013−157560(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/171275(WO,A1)
【文献】 特開2010−263115(JP,A)
【文献】 特開2013−199583(JP,A)
【文献】 特開2006−303033(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/149028(WO,A1)
【文献】 特開2013−074167(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/069785(WO,A1)
【文献】 特開2011−204810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04 − 31/078
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を吸収して、吸収した光より長い波長の光に変換する第1の有機物と、第1の有機物よりも長い波長の光を吸収して、吸収した光より長い波長の光に変換する第2の有機物とを含む波長変換型封止材組成物であって、
前記第2の有機物の極大励起波長λ2exが450nm以下であり、
前記第1の有機物の極大発光波長λ1emと前記第2の有機物の極大励起波長λ2exとが下記式(式(1))の関係にあって、
[式(1)]
λ1em−60≦λ2ex(nm)
前記第1の有機物の極大吸収波長λ1absと前記第2の有機物の極大励起波長λ2exとが下記式(式(2))の関係にあり、
[式(2)]
λ2ex−λ1abs≧5(nm)
前記第1の有機物の発光量子収率φが85%以上であることを特徴とする波長変換型封止材組成物。
【請求項2】
前記第1の有機物のストークシフトΔλが50nm以上である、請求項1に記載の波長変換型封止材組成物。
【請求項3】
前記第2の有機物の発光量子収率φが85%以上である、請求項1〜のいずれかに記載の波長変換型封止材組成物。
【請求項4】
前記第1の有機物の極大吸収波長λ1absが300〜400nmである、請求項1〜のいずれかに記載の波長変換型封止材組成物。
【請求項5】
前記第2の有機物の極大励起波長λ2exが330〜450nmである、請求項1〜のいずれかに記載の波長変換型封止材組成物。
【請求項6】
第1の有機物が、ペリレン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、および、フルオレン誘導体からなる群から選ばれる1つを少なくとも含む、請求項1〜のいずれかに記載の波長変換型封止材組成物。
【請求項7】
第2の有機物が、ペリレン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、および、フルオレン誘導体からなる群から選ばれる1つを少なくとも含む、請求項1〜のいずれかに記載の波長変換型封止材組成物。
【請求項8】
太陽電池用途に用いられる、請求項1〜のいずれかに記載の波長変換型封止材組成物。
【請求項9】
請求項1〜のいずれかに記載の波長変換型封止材組成物により形成された波長変換型封止材層。
【請求項10】
請求項に記載の波長変換型封止材層、および、太陽電池セルを含む太陽電池モジュール。
【請求項11】
前記太陽電池セルが、結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、微結晶シリコン太陽電池、薄膜シリコン太陽電池、ヘテロ接合型太陽電池、多接合型太陽電池、硫化カドミウム/テルル化カドミウム太陽電池、CIS系薄膜太陽電池、CIGS系薄膜太陽電池、CZTS系薄膜太陽電池、III−V族太陽電池、色素増感型太陽電池、または、有機半導体太陽電池である、請求項10に記載の太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に太陽電池用途に好適である波長変換型封止材組成物、および、それを含む波長変換型封止材層、ならびに、上記波長変換型封止材層を用いた太陽電池モジュールに関する。より詳しくは、発電に寄与しない波長域の光を発電に寄与する波長域の光に波長変換することにより発電効率を高くしうる太陽電池モジュール、それに用いる波長変換型封止材組成物、および、波長変換型封止材層に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽エネルギーの利用により、従来の化石燃料に対する有望な代替エネルギー源が提供され、したがって、太陽エネルギーを電気に変換することができるデバイスの開発、たとえば、光起電デバイス(これはまた、太陽電池として知られている)などの開発が近年では大きく注目されている。いくつかの異なるタイプの成熟した光起電デバイスが開発されており、これらには、例をいくつかあげると、シリコン系デバイス、III−VおよびII−VIのPN接合デバイス、銅−インジウム−ガリウム−セレン(CIGS)薄膜デバイス、有機増感剤デバイス、有機薄膜デバイス、ならびに、硫化カドミウム/テルル化カドミウム(CdS/CdTe)薄膜デバイスが含まれる。これらのデバイスに関してのより詳細が、文献などに見出され得る(たとえば、非特許文献1参照)。しかしながら、これらのデバイスの多くの光電変換効率は依然として改善の余地があり、この効率を改善するための技術を開発することが、多くの研究者にとっては進行中の課題である。
【0003】
上記変換効率の向上のため、入射光のうち光電変換に寄与しない波長(たとえば、紫外線領域)を光電変換に寄与する波長に変換する、波長変換機能を備えた太陽電池が検討されている(たとえば、特許文献2等参照)。上記検討では、蛍光体粉末を樹脂原料と混合して、発光性パネルを形成する方法が提案されている。
【0004】
光起電デバイスおよび太陽電池において使用される波長変換無機媒体がこれまで開示されているが、ホトルミネセンス性有機媒体を光起電デバイスにおいて効率改善のために使用することに関する研究はほとんど報告されていない。無機媒体とは対照的に、有機媒体の使用が、有機材料は典型的にはより安価であり、かつ、使用することがより容易であり、このことから、有機材料がより良好な経済的選択の1つになるという点で注目されている。
【0005】
また、従来の波長変換無機媒体では、波長変換の程度(波長変換の効率や変換前後の波長のシフト幅)が十分ではなかった。また、たとえば、単に波長変換媒体の層を複数組み合わせたり、単に複数の波長変換媒体を単一層に混合配合したとしても、波長変換媒体それ自体の波長吸収の特性は、他の波長変換媒体や本来太陽電池が吸収して光電変換しえた波長までも吸収してしまい、結果として光電変換効率がほとんど向上しない、または低下してしまうという負の効果まで発現しうることが判明した。
【0006】
また、従来から用いられている無機蛍光材料や有機蛍光材料は、太陽光に曝されて劣化し、波長変換機能を著しく低下してしまう場合があった。また、太陽電池の特性に適した波長で吸収および発光することが必要だが、最適な波長に調製することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0151785号明細書
【特許文献2】特開平7−142752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情に照らし、耐久性が高く、コスト的にも有利で、発電に寄与しない波長域の光を発電に寄与する波長域の光に波長変換することにより太陽電池セルの光電変換効率を向上させることが可能な太陽電池用の波長変換型封止材組成物を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、上記波長変換型封止材組成物により形成された波長変換型封止材層、および、それを用いた太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、以下に示す波長変換型封止材組成物、波長変換型封止材層、および、それを用いた太陽電池モジュールにより上記目的を達成できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明の波長変換型封止材組成物は、紫外線を吸収して、吸収した光より長い波長の光に変換する第1の有機物と、第1の有機物よりも長い波長の光を吸収して、吸収した光より長い波長の光に変換する第2の有機物とを含む波長変換型封止材組成物であって、
前記第1の有機物の極大発光波長λ1emと前記第2の有機物の極大励起波長λ2exとが下記式(式(1))の関係にあることを特徴とする。
[式(1)]
λ1em−60≦λ2ex(nm)
【0012】
本発明の波長変換型封止材組成物を用いることにより、これまで発電に寄与せずにロスしていたより短波長域の光を長波長側に効果的に変換して発電に寄与しうる光としてより有効活用することができる。さらには、たとえば、単に波長変換媒体の層を複数組み合わせたり、単に複数の波長変換媒体を単一層に混合配合した場合のように、セルが吸収したい短波長域の光または変換後の波長が他の波長変換媒体に吸収されてしまうこともなく、本発明では光電変換効率が大きく向上させることができる。なお、実施例にも記載している、本発明におけるモル吸光係数とは、当該化合物の最大吸収波長の光を照射した場合のモル吸光係数をいう。
【0013】
なお、本発明における極大発光波長とは、当該化合物が発光する光のうち発光量が最大値の波長をいう。また、本発明における極大励起波長とは、当該化合物が吸収する光のうち発光に寄与するものの吸光量が最大値の波長をいう。より具体的には、たとえば、極大発光波長λ1emとは、前記第1の有機物が発光する光のうち発光量が最大値の波長をいう。また、本発明における極大励起波長λ2exとは、前記第2の有機物が吸収する光のうち発光に寄与するものの吸光量が最大値の波長をいう。
【0014】
また、本発明は上記構成を有することにより、第1の有機物(有機色素)が発光した光を、第2の有機物(有機色素)が励起に用いてさらに発光することにより、結果として紫外線を、1種類の有機色素等が変換するよりも、さらに離れた波長への可視光へと変換することができていると推測している。特に、第1の有機物と第2の有機物の各吸光および発光(蛍光、りん光)の有機的関連によって、従来の波長変換無機媒体では十分ではなかった波長変換の程度(波長変換の効率や変換前後の波長のシフト幅)を向上させることが可能となる。
【0015】
また、太陽電池により光電変換される太陽光の波長は特定の波長域に限られている。また、ほとんどの太陽電池用封止材には、部材の劣化の防止目的として紫外線吸収剤が添加されている。これに対して、本発明においては、有機色素を特定の関係で組み合わせることにより、従来は発電に寄与できなかった紫外線を有効に活用することができる。この際に、本来太陽電池が吸収して光電変換すべき波長域までも有機色素が吸収してしまうと、光電変換効率が低下してしまうという負の効果(併用による負の影響)までもが発現してしまうことが判明した。そこで、光電変換される波長域を有機色素が吸収しないように、可視光を吸収する第2の有機物(有機色素)の波長帯域を本願発明の構成として制御することで、上記の負の効果の発生を防ぐことが可能となっていると推測している。
【0016】
また、本発明の波長変換型封止材組成物において、前記第1の有機物の極大吸収波長λ1absと前記第2の有機物の極大励起波長λ2exとが下記式(式(2))の関係にあることが好ましい。上記有機物を用いることにより、光電変換効率をより向上させやすくなり得る。
[式(2)]
λ2ex−λ1abs≧5(nm)
【0017】
なお、本発明における極大吸収波長とは、当該化合物が吸収する光の吸光量が最大値の波長をいう。より具体的には、本発明における極大吸収波長λ1absとは、前記第1の有機物が吸収する光の吸光量が最大値の波長をいう。
【0018】
また、本発明の波長変換型封止材組成物において、前記第2の有機物の極大励起波長λ2exが500nm以下であることが好ましい。上記第2の有機物を用いることにより、光電変換効率をより向上させやすくなり得る。
【0019】
また、本発明の波長変換型封止材組成物において、前記第1の有機物のストークシフトΔλが50nm以上であることが好ましい。上記第1の有機物を用いることにより、従来発電に寄与しない波長域の光を発電に寄与する波長域の光に大きく波長変換(レッドシフト)しやすく、光電変換効率をより向上させやすくなり得る。なお、本発明におけるストークシフトとは、極大励起波長と最大発光波長の波長間の差をいう。
【0020】
また、本発明の波長変換型封止材組成物において、上記第1の有機物の発光量子収率φが85%以上であることが好ましい。上記第1の有機物を用いることにより、光電変換効率をより確実に向上させることができる。なお、本発明における発光量子収率とは、極大励起波長の光を照射したときの吸収された光子数に対する、発光(または放出)された光子数の割合をいう。
【0021】
また、本発明の波長変換型封止材組成物において、上記第2の有機物の発光量子収率φが85%以上であることが好ましい。上記第2の有機物を用いることにより、光電変換効率をより確実に向上させることができる。
【0022】
また、本発明の波長変換型封止材組成物において、上記第1の有機物の極大吸収波長λ1absが300〜400nmであることが好ましい。上記第1の有機物を用いることにより、通常の太陽電池セルでは光電変換に利用しにくい(または利用できない)紫外線領域の光をより長波長側に変換し、光電変換効率をより向上させやすくなり得る。
【0023】
また、本発明の波長変換型封止材組成物において、上記第2の有機物の極大励起波長λ2exが330〜500nmであることが好ましい。上記第2の有機物を用いることにより、通常の太陽電池セルでは光電変換に利用しにくい(または利用できない)可視光の短波長領域の光をより長波長側変換し、光電変換効率をより向上より向上させやすくなり得る。また、本発明においては、さらに上記第1の有機物がより長波長側に変換した光もより長波長側(レッドシフト)に変換し、光電変換効率をより向上させることができる。
【0024】
また、本発明の波長変換型封止材組成物において、上記第1の有機物が、ペリレン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、および、フルオレン誘導体からなる群から選ばれる1つを少なくとも含むものとすることができる。
【0025】
また、本発明の波長変換型封止材組成物において、上記第2の有機物が、ペリレン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、および、フルオレン誘導体からなる群から選ばれる1つを少なくとも含むものとすることができる。
【0026】
また、本発明の波長変換型封止材組成物は、上記のような波長変換特性を有するため、特に太陽電池用途に用いられることが好ましい。
【0027】
一方、本発明の波長変換型封止材層は、上記波長変換型封止材組成物を用いて形成されたことを特徴とする。上記波長変換型封止材組成物を用いて形成されることにより、望ましい光学特性(高い量子収率等)を有する波長変換型封止材層となる。より詳細には、上記波長変換型封止材層には、上述の式(1)の関係にある上記第1の有機物と上記第2の有機物が含まれているため、これまで発電に寄与せずにロスしていたより短波長域の光を長波長側に効果的に変換して発電に寄与しうる光としてより有効活用することができる。さらには、たとえば、単に波長変換媒体の層を複数組み合わせたり、単に複数の波長変換媒体を単一層に混合配合した場合のように、吸収したい短波長域の光または変換後の波長が他の波長変換媒体に吸収されてしまうこともなく、本発明では光電変換効率が大きく向上させることができる。また、本発明の波長変換型封止材層は、第1の波長を有する少なくとも1つの光子を入力として受け入れて、第1の波長よりも長い(大きい)第2の波長を有する少なくとも1つの光子を出力として与え、この過程で波長変換型封止材層としての機能を発現する。上記波長変換型封止材層は、太陽電池用途に特に好適である。
【0028】
また、本発明の太陽電池モジュールは、上記波長変換型封止材組成物を用いて形成された波長変換型封止材層を含むことを特徴とする。上記太陽電池モジュールは、上記波長変換型封止材層を有するため、望ましい光学特性(高い量子収率等)を有する太陽電池モジュールとなる。
【0029】
また、本発明の太陽電池モジュールは、入射光が、太陽電池セルへの到達に先だって、上記波長変換型封止材層を通過するように配置されることが好ましい。上記構成とすることで、より確実に、太陽エネルギーのより広い範囲のスペクトルが電気に変換されることが可能となり、光電変換効率を効果的に高めることができる。
【0030】
また、本発明の太陽電池モジュールにおいて、上記太陽電池セルが、結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、微結晶シリコン太陽電池、薄膜シリコン太陽電池、ヘテロ接合型太陽電池、多接合型太陽電池、硫化カドミウム/テルル化カドミウム太陽電池、CIS系薄膜太陽電池、CIGS系薄膜太陽電池、CZTS系薄膜太陽電池、III−V族太陽電池、色素増感型太陽電池、または、有機半導体太陽電池であることが好ましい。上記太陽電池モジュールは、上記太陽電池セルを積層する太陽電池モジュールに用いることでより効果的に光電変換効率をより向上させることができる。特に、シリコン太陽電池においては、紫外線領域において光電変換効率が低いという問題があった。上記太陽電池モジュールでは、この波長領域もより効果的に光利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の波長変換型封止材層を用いた太陽電池モジュールの例を示す。
図2】本発明の波長変換型封止材層を用いた太陽電池モジュールの例を示す。
図3】本発明の実施例における蛍光スペクトル測定の結果を示す。
図4】本発明の実施例における蛍光スペクトル測定の結果を示す。
図5】本発明の実施例における蛍光スペクトル測定の結果を示す。
図6】本発明の実施例における蛍光スペクトル測定の結果を示す。
図7】本発明の実施例における蛍光スペクトル測定の結果を示す。
図8】本発明の実施例における蛍光スペクトル測定の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0033】
本発明の波長変換型封止材組成物は、紫外線を吸収して、吸収した光より長い波長の光に変換する第1の有機物と、第1の有機物よりも長い波長の光を吸収して、吸収した光より長い波長の光に変換する第2の有機物とを含む波長変換型封止材組成物であって、
前記第1の有機物の極大発光波長λ1emと前記第2の有機物の極大励起波長λ2exとが下記式(式(1))の関係にあることを特徴とする。
[式(1)]
λ1em−60≦λ2ex(nm)
【0034】
(波長変換型封止材組成物)
本発明の波長変換型封止材組成物は、紫外線を吸収して、吸収した光より長い波長の光に変換する第1の有機物と、第1の有機物よりも長い波長の光を吸収して、吸収した光より長い波長の光に変換する第2の有機物とを含む。
【0035】
本発明における第1の有機物とは、紫外線を吸収して、吸収した光より長い波長の光に変換する有機物である。言い換えると、第1の波長を有する少なくとも1つの光子を入力として受け入れて、第1の波長よりも長い(大きい)第2の波長を有する少なくとも1つの光子を出力として与えうる有機物である。上記有機物には、有機化合物だけでなく、有機金属錯体や有機無機ハイブリッド素材、および、色素部位を含有するオリゴマー化合物や色素部位を含有する高分子化合物も含まれうる。
【0036】
本発明において、前記第1の有機物のストークシフトΔλが50nm以上であることが好ましく、50〜100nmであってもよく、50〜70nmであってもよい。
【0037】
本発明において、上記第1の有機物の発光量子収率φが85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、93%以上であることがさらに好ましい。
【0038】
また、本発明において、上記第1の有機物の極大吸収波長λ1absが300〜400nmであることが好ましく、300〜360nmであってもよく、330〜350nmであってもよい。
【0039】
また、本発明において、上記第1の有機物の極大発光波長λ1emが350〜450nmであることが好ましく、380〜440nmであってもよく、400〜420nmであってもよい。上記第1の有機物を用いることにより、光電変換効率をより向上させることができる。
【0040】
また、上記第1の有機物として、有機蛍光化合物があげられる。上記有機蛍光化合物として、公知の有機色素化合物(有機色素、有機蛍光染料など)を用いることができる。上記有機蛍光化合物として、たとえば、ペリレン誘導体、ピレン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾイミダゾリン誘導体、ベンゾピラゾール誘導体、インドール誘導体、イソインドール誘導体、プリン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、トリアジン誘導体、芳香族イミド誘導体、ベンゾオキサゾイル誘導体、クマリン誘導体、スチレンビフェニル誘導体、ピラゾロン誘導体、ビス(トリアジニルアミノ)スチルベンジスルホン酸誘導体、ビススチリルビフェニル誘導体、ビスベンゾオキサゾリルチオフェン誘導体、ペンタセン誘導体、フルオレセン誘導体、ローダミン誘導体、アクリジン誘導体、フラボン誘導体、フルオレン誘導体、シアニン系色素、ローダミン系色素、および、多環芳香族炭化水素などをあげることができる。なかでも、上記第1の有機物が、ペリレン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、および、フルオレン誘導体からなる群から選ばれる1つを少なくとも含むものとすることが好ましい。
【0041】
また、上記有機蛍光化合物として、より具体的には、たとえば、ナフタルイミド、ペリレン、アントラキンノン、クマリン、ベンゾクマリン、キサンテン、フェノキサジン、ベンゾ[a]フェノキサジン、ベンゾ[b]フェノキサジン、ベンゾ[c]フェノキサジン、ナフタルイミド、ナフトラクタム、アズラクトン、メチン、オキサジン、チアジン、ジケトピロロピロール、キナクリドン、ベンゾキサンテン、チオーエピンドリン、ラクタムイミド、ジフェニルマレイミド、アセトアセトアミド、イミダゾチアジン、ベンズアントロン、ペリレンモノイミド、フタルイミド、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾオキサゾール、ピリミジン、ピラジン、トリアゾール、ジベンゾフラン、トリアジン、およびこれらの誘導体、ならびに、ハルビツール酸誘導体などをあげることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0042】
また、上記第1の有機物として、有機金属錯体があげられる。上記有機金属錯体として、公知の希土類金属の有機錯体等を用いることができる。上記有機金属錯体として、その中心金属元素の希土類元素については特に制限されず、たとえば、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムなどをあげることができる。なかでも、ユーロピウムまたはサマリウムが好ましいものとしてあげることができる。特に波長変換効率の観点から、ユーロピウム錯体またはサマリウム錯体の少なくとも1種であることが好ましい。
【0043】
また、上記有機錯体を構成する配位子として、特に制限されることなく、用いる金属に応じて適宜選択することができる。なかでも、ユーロピウムまたはサマリウムの少なくとも1種と錯体を形成可能な配位子であることが好ましい。上記配位子については、中性配位子である、カルボン酸、含窒素有機化合物、含窒素芳香族複素環化合物、β−ジケトン類、およびフォスフィンオキサイドから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0044】
上記カルボン酸としては、たとえば、酪酸、ステアリン酸、オレイン酸、ヤシ油脂肪酸、t−ブチルカルボン酸、コハク酸等の脂肪族カルボン酸、安息香酸、ナフトエ酸、キノリンカルボン酸などの芳香族カルボン酸などをあげることができる。
【0045】
含窒素有機化合物としては、たとえば、アルキルアミン、アニリン等の芳香アミン、含窒素芳香族複素環式化合物などがあげることができ、具体的には1,10−フェナントロリンまたは、ビピリジルなどをあげることができる。また、イミダゾール、トリアゾール、ピリミジン、ピラジン、アミノピリジン、ピリジンおよびその誘導体、アデニン、チミン、グアニン、シトシンなどの核酸塩基、および、その誘導体なども用いることができる。
【0046】
βージケトン類としては、たとえば、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルアセトンジイソブチロメタン、ジビパロイルメタン、3−メチルペンタンー2,4ジオン、2,2−ジメチルペンタンー3,5−ジオン、2−メチルー1,3−ブタンジオン、1,3−ブタンジオン、3−フェニルー2.4ーペンタンジオン、1,1,1−トリフロロー2,4−ペンタンジオン、1,1,1−トリフロロー5,5−ジメチルー2,4−ヘキサンジオン、2,2,6,6−テトラメチルー3,5−ヘプタンジオン、3−メチルー2,4−ペンタンジオン、2−アセチルシクロペンタノン、2−アセチルシクロヘキサノン、1−ヘプタフロロプロピルー3−t−ブチル−1、3−プロパンジオン、1,3−ジフェニルー2−メチルー1,3プロパンジオン(ジフェニルアセチルアセトン)、1−エトキシー1,3−ブタンジオンなどをあげることができる。中でも、1,3−ジフェニルー1,3−プロパンジオン、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトンが好ましい。
【0047】
また、上記第1の有機物として、色素部位を含有するオリゴマー化合物および色素部位を含有する高分子化合物があげられる。上記オリゴマー化合物および上記高分子化合物として、公知の有機色素化合物(有機色素、有機蛍光染料など)の構造を色素部位として分子内に含有しているオリゴマー化合物および高分子化合物を用いることができる。上記オリゴマー化合物および上記高分子化合物として、たとえば、ペリレン誘導体、ピレン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾイミダゾリン誘導体、ベンゾピラゾール誘導体、インドール誘導体、イソインドール誘導体、プリン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、トリアジン誘導体、芳香族イミド誘導体、ベンゾオキサゾイル誘導体、クマリン誘導体、スチレンビフェニル誘導体、ピラゾロン誘導体、ビス(トリアジニルアミノ)スチルベンジスルホン酸誘導体、ビススチリルビフェニル誘導体、ビスベンゾオキサゾリルチオフェン誘導体、ペンタセン誘導体、フルオレセン誘導体、ローダミン誘導体、アクリジン誘導体、フラボン誘導体、フルオレン誘導体、シアニン系色素、ローダミン系色素、および、多環芳香族炭化水素からなる群から選ばれる1つの分子構造を色素部位として分子内に含有するオリゴマー化合物または高分子化合物をあげることができる。なかでも、上記第1の有機物が、ペリレン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、および、フルオレン誘導体からなる群から選ばれる1つの分子構造を色素部位として分子内に含有するオリゴマー化合物または高分子化合物が好ましい。上記分子構造は同一オリゴマー化合物または高分子化合物中、単独で含有していてもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。また、上記オリゴマー化合物および上記高分子化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0048】
また、上記オリゴマー化合物および上記高分子化合物において、上記オリゴマー化合物および上記高分子化合物の主鎖構造は、光学的に透明な樹脂骨格であることが好ましい。上記主鎖構造としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルアセテート、ポリエチレンテトラフルオロエチレンなどのポリオレフィン類、ポリイミド、非晶質ポリカーボネート、シロキサンゾル−ゲル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、エポキシ樹脂、および、シリコーン樹脂などをあげることができる。これらの主鎖構造は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0049】
また、上記第1の有機物の配合量として、波長変換型封止材組成物のマトリックス樹脂100重量部に対して、0.001〜0.5重量部であることが好ましく、0.001〜0.3重量部であってもよく、0.005〜0.2重量部であってもよい。
【0050】
本発明における第2の有機物とは、紫外線を吸収して、吸収した光より長い波長の光に変換する有機物である。言い換えると、第1の波長を有する少なくとも1つの光子を入力として受け入れて、第1の波長よりも長い(大きい)第2の波長を有する少なくとも1つの光子を出力として与えうる有機物である。上記有機物には、有機化合物だけでなく、有機金属錯体や有機無機ハイブリッド素材、および、色素部位を含有するオリゴマー化合物や色素部位を含有する高分子化合物も含まれうる。
【0051】
本発明において、前記第2の有機物のストークシフトΔλが50nm以上であることが好ましく、50〜100nmであってもよく、50〜70nmであってもよい。
【0052】
また、本発明において、上記第2の有機物の発光量子収率φが85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、93%以上であることがさらに好ましい。
【0053】
また、本発明において、上記第2の有機物の極大励起波長λ2exが330〜500nmであることが好ましく、340〜450nmであってもよい。
【0054】
また、本発明において、上記第2の有機物の極大発光波長λ2emが400〜550nmであることが好ましく、410〜530nmであってもよい。上記第2の有機物を用いることにより、光電変換効率をより向上させることができる。
【0055】
また、上記第2の有機物として、有機蛍光化合物があげられる。上記有機蛍光化合物として、公知の有機色素化合物(有機色素、有機蛍光染料など)を用いることができる。上記有機蛍光化合物として、たとえば、ペリレン誘導体、ピレン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾイミダゾリン誘導体、ベンゾピラゾール誘導体、インドール誘導体、イソインドール誘導体、プリン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、トリアジン誘導体、芳香族イミド誘導体、ベンゾオキサゾイル誘導体、クマリン誘導体、スチレンビフェニル誘導体、ピラゾロン誘導体、ビス(トリアジニルアミノ)スチルベンジスルホン酸誘導体、ビススチリルビフェニル誘導体、ビスベンゾオキサゾリルチオフェン誘導体、ペンタセン誘導体、フルオレセン誘導体、ローダミン誘導体、アクリジン誘導体、フラボン誘導体、フルオレン誘導体、シアニン系色素、ローダミン系色素、および、多環芳香族炭化水素などをあげることができる。なかでも、上記第2の有機物が、ペリレン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、および、フルオレン誘導体からなる群から選ばれる1つを少なくとも含むものとすることが好ましい。
【0056】
また、上記有機蛍光化合物として、より具体的には、たとえば、ナフタルイミド、ペリレン、アントラキンノン、クマリン、ベンゾクマリン、キサンテン、フェノキサジン、ベンゾ[a]フェノキサジン、ベンゾ[b]フェノキサジン、ベンゾ[c]フェノキサジン、ナフタルイミド、ナフトラクタム、アズラクトン、メチン、オキサジン、チアジン、ジケトピロロピロール、キナクリドン、ベンゾキサンテン、チオーエピンドリン、ラクタムイミド、ジフェニルマレイミド、アセトアセトアミド、イミダゾチアジン、ベンズアントロン、ペリレンモノイミド、フタルイミド、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾオキサゾール、ピリミジン、ピラジン、トリアゾール、ジベンゾフラン、トリアジン、およびこれらの誘導体、ならびに、ハルビツール酸誘導体などをあげることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0057】
また、上記第2の有機物として、有機金属錯体があげられる。上記有機金属錯体として、公知の希土類金属の有機錯体等を用いることができる。上記有機金属錯体として、その中心金属元素の希土類元素については特に制限されず、たとえば、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムなどをあげることができる。なかでも、ユーロピウムまたはサマリウムが好ましいものとしてあげることができる。特に波長変換効率の観点から、ユーロピウム錯体またはサマリウム錯体の少なくとも1種であることが好ましい。
【0058】
また、上記有機錯体を構成する配位子として、特に制限されることなく、用いる金属に応じて適宜選択することができる。なかでも、ユーロピウムまたはサマリウムの少なくとも1種と錯体を形成可能な配位子であることが好ましい。上記配位子については、中性配位子である、カルボン酸、含窒素有機化合物、含窒素芳香族複素環化合物、β−ジケトン類、およびフォスフィンオキサイドから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0059】
上記カルボン酸としては、たとえば、酪酸、ステアリン酸、オレイン酸、ヤシ油脂肪酸、t−ブチルカルボン酸、コハク酸等の脂肪族カルボン酸、安息香酸、ナフトエ酸、キノリンカルボン酸などの芳香族カルボン酸などをあげることができる。
【0060】
含窒素有機化合物としては、たとえば、アルキルアミン、アニリン等の芳香アミン、含窒素芳香族複素環式化合物などがあげることができ、具体的には1,10−フェナントロリンまたは、ビピリジルなどをあげることができる。また、イミダゾール、トリアゾール、ピリミジン、ピラジン、アミノピリジン、ピリジンおよびその誘導体、アデニン、チミン、グアニン、シトシンなどの核酸塩基、および、その誘導体なども用いることができる。
【0061】
βージケトン類としては、たとえば、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルアセトンジイソブチロメタン、ジビパロイルメタン、3−メチルペンタンー2,4ジオン、2,2−ジメチルペンタンー3,5−ジオン、2−メチルー1,3−ブタンジオン、1,3−ブタンジオン、3−フェニルー2.4ーペンタンジオン、1,1,1−トリフロロー2,4−ペンタンジオン、1,1,1−トリフロロー5,5−ジメチルー2,4−ヘキサンジオン、2,2,6,6−テトラメチルー3,5−ヘプタンジオン、3−メチルー2,4−ペンタンジオン、2−アセチルシクロペンタノン、2−アセチルシクロヘキサノン、1−ヘプタフロロプロピルー3−t−ブチル−1、3−プロパンジオン、1,3−ジフェニルー2−メチルー1,3プロパンジオン(ジフェニルアセチルアセトン)、1−エトキシー1,3−ブタンジオンなどをあげることができる。中でも、1,3−ジフェニルー1,3−プロパンジオン、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトンが好ましい。
【0062】
また、上記第2の有機物として、色素部位を含有するオリゴマー化合物および色素部位を含有する高分子化合物があげられる。上記オリゴマー化合物および上記高分子化合物として、公知の有機色素化合物(有機色素、有機蛍光染料など)の構造を色素部位として分子内に含有しているオリゴマー化合物および高分子化合物を用いることができる。上記オリゴマー化合物および上記高分子化合物として、たとえば、ペリレン誘導体、ピレン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾイミダゾリン誘導体、ベンゾピラゾール誘導体、インドール誘導体、イソインドール誘導体、プリン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、トリアジン誘導体、芳香族イミド誘導体、ベンゾオキサゾイル誘導体、クマリン誘導体、スチレンビフェニル誘導体、ピラゾロン誘導体、ビス(トリアジニルアミノ)スチルベンジスルホン酸誘導体、ビススチリルビフェニル誘導体、ビスベンゾオキサゾリルチオフェン誘導体、ペンタセン誘導体、フルオレセン誘導体、ローダミン誘導体、アクリジン誘導体、フラボン誘導体、フルオレン誘導体、シアニン系色素、ローダミン系色素、および、多環芳香族炭化水素からなる群から選ばれる1つの分子構造を色素部位として分子内に含有するオリゴマー化合物または高分子化合物をあげることができる。なかでも、上記第1の有機物が、ペリレン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、および、フルオレン誘導体からなる群から選ばれる1つの分子構造を色素部位として分子内に含有するオリゴマー化合物または高分子化合物が好ましい。上記分子構造は同一オリゴマー化合物または高分子化合物中、単独で含有していてもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。また、上記オリゴマー化合物および上記高分子化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0063】
また、上記オリゴマー化合物および上記高分子化合物において、上記オリゴマー化合物および上記高分子化合物の主鎖構造は、光学的に透明な樹脂骨格であることが好ましい。上記主鎖構造としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルアセテート、ポリエチレンテトラフルオロエチレンなどのポリオレフィン類、ポリイミド、非晶質ポリカーボネート、シロキサンゾル−ゲル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、エポキシ樹脂、および、シリコーン樹脂などをあげることができる。これらの主鎖構造は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0064】
また、上記第2の有機物の配合量として、波長変換型封止材組成物のマトリックス樹脂100重量部に対して、0.0001〜0.1重量部であることが好ましく、0.0001〜0.05重量部であってもよく、0.001〜0.02重量部であってもよい。
【0065】
本発明の波長変換型封止材組成物は、波長変換機能を有するものである。上記波長変換型封止材組成物は、入射光の波長をより長波長に変換するものである。上記波長変換型封止材組成物は、光学的に透明なマトリックス樹脂中に、波長変換機能を有する第1の有機物および第2の有機物等を分散させること等により形成することができる。
【0066】
本発明の波長変換型封止材組成物において、光学的に透明なマトリックス樹脂を用いることが好ましい。上記マトリックス樹脂として、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルアセテート、ポリエチレンテトラフルオロエチレンなどのポリオレフィン類、ポリイミド、非晶質ポリカーボネート、シロキサンゾル−ゲル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、エポキシ樹脂、および、シリコーン樹脂などをあげることができる。これらのマトリックス樹脂は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0067】
上記ポリ(メタ)アクリレートとして、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートを含み、たとえば、(メタ)アクリル酸エステル樹脂などをあげることができる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエンなどをあげることができる。ポリビニルアセテートとしては、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール(PVB樹脂)、変性PVBなどをあげることができる。
【0068】
上記(メタ)アクリル酸エステル樹脂の構成モノマーとして、たとえば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジルなどをあげることができる。さらには、上記アルキル基が水酸基、エポキシ基、ハロゲン基などで置換された(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどをあげることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0069】
上記(メタ)アクリル酸エステルにおいて、エステル部位のアルキル基の炭素数が1〜18であることが好ましく、炭素数1〜8であることがより好ましい。
【0070】
上記(メタ)アクリル酸エステル樹脂として、(メタ)アクリル酸エステルのほかに、これらと共重合可能な不飽和モノマーを用いて共重合体としてもよい。
【0071】
上記不飽和モノマーとして、たとえば、メタクリル酸、アクリル酸などの不飽和有機酸、スチレン、α−メチルスチレン、アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどをあげることができる。これらの不飽和モノマーは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0072】
上記(メタ)アクリル酸エステルにおいて、なかでも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルおよびその官能基置換した(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどを用いることが好ましく、耐久性や汎用性の観点からは、メタクリル酸メチル等がより好ましい例としてあげることができる。
【0073】
上記(メタ)アクリル酸エステルと上記不飽和モノマーの共重合体として、たとえば、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などをあげることができる。なかでも、耐湿性や汎用性、コスト面の観点からは、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく、また耐久性と表面硬度の点からは、(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体と(メタ)アクリル酸エステルとの併用が、上記各観点から好ましい。
【0074】
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体として、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対して、酢酸ビニル単量体単位の含有率が10〜35重量部であることが好ましく、20〜30重量部であることがより好ましく、上記含有率の場合には希土類錯体などのマトリックス樹脂中への均一分散性の観点から好ましい。
【0075】
光学的に透明なマトリックス樹脂として上記エチレン−酢酸ビニル共重合体を用いる場合には、市販品を適宜使用することができる。上記エチレン−酢酸ビニル共重合体の市販品として、たとえば、ウルトラセン(東ソー株式会社製)、エバフレックス(三井・デュポンポリケミカル株式会社製)、サンテックEVA(旭化成ケミカルズ社製)、UBE EVAコポリマー(宇部丸善ポリエチレン社製)、エバテート(住友化学社製)、ノバテックEVA(日本ポリエチレン社製)、スミテート(住友化学社製)、ニポフレックス(東ソー社製)などをあげることができる。
【0076】
上記マトリックス樹脂において、架橋性モノマーを加えて、架橋構造を有する樹脂としてもよい。
【0077】
上記架橋性モノマーとして、たとえば、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物(たとえば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(エチレン基の数が2〜14のもの)、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(プロピレン基の数が2〜14のもの)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAトリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAデカオキシエチレンジ(メタ)アクリレート等)、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を付加して得られる化合物(たとえば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート等)、多価カルボン酸(たとえば、無水フタル酸)と水酸基およびエチレン性不飽和基を有する物質(たとえば、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)とのエステル化物、アクリル酸若しくはメタクリル酸のアルキルエステル(たとえば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル)、ウレタン(メタ)アクリレート(たとえば、トリレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステルとの反応物、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとシクロヘキサンジメタノールと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステルとの反応物等)、などをあげることができる。これらの架橋性モノマーは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。なかでも、上記架橋性モノマーにおいて、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレートが好ましいものとしてあげられる。
【0078】
上記架橋性モノマーを含むマトリックス樹脂を用いる場合、たとえば、上記架橋モノマーに熱重合開始剤または光重合開始剤を加えて、加熱または光照射によって重合・架橋させ架橋構造を形成することができる。
【0079】
上記熱重合開始剤として、公知の過酸化物を適宜用いることができる。上記熱可塑性樹脂重合開始剤としては、たとえば、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシベンズエート、ベンゾイルパーオキサイドなどをあげることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0080】
上記熱重合開始剤の配合量は、たとえば、上記マトリックス樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量部用いることができる。
【0081】
上記光重合開始剤としては、紫外線または可視光線により遊離ラジカルを生成する公知の光開始剤を適宜用いることができる。上記光重合開始剤として、たとえば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテルなどのベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、ベンジルジメチルケタール(チバ・ジャパン・ケミカルズ社製、イルガキュア651)、ベンジルジエチルケタールなどのベンジルケタール類、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノンなどのアセトフェノン類、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのキサントン類、あるいはヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュア184)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ビトロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(チバ・ジャパン・ケミカルズ社製、ダロキュア1116)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(メルク社製、ダロキュア1173)などをあげることができる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0082】
また、上記光重合開始剤として、たとえば、2,4,5−トリアリルイミダゾール二量体と2−メルカプトベンゾオキサゾール、ロイコクリスタルバイオレット、トリス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン等との組み合わせなどをあげることができる。また、たとえば、ベンゾフェノンに対するトリエタノールアミン等の三級アミンのように、適宜公知の添加剤を用いてもよい。
【0083】
上記光重合開始剤の配合量は、たとえば、上記マトリックス樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量部用いることができる。
【0084】
上記マトリックス樹脂の屈折率として、たとえば、1.4〜1.7の範囲、1.45〜1.65の範囲、または、1.45〜1.55の範囲である。いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックス樹脂の屈折率が1.5である。
【0085】
上記波長変換型封止材組成物は、たとえば、上記マトリックス樹脂中に、波長変換機能を有する上記第1の有機物と上記第2の有機物とを分散、吸着、含浸させること等により形成することができる。
【0086】
また、上記波長変換型封止材組成物において、前記第1の有機物の極大発光波長λ1emと前記第2の有機物の極大励起波長λ2exとが、下記式(式(1))の関係、つまりλ1em−60≦λ2ex(nm)であることを特徴としているが、λ1em−55≦λ2ex(nm)であってもよく、λ1em−50≦λ2ex(nm)であってもよく、λ1em−20≦λ2ex(nm)であってもよく、λ1em−15≦λ2ex(nm)であってもよく、λ1em−10≦λ2ex(nm)であってもよく、λ1em−0≦λ2ex(nm)であってもよい。本発明の波長変換型封止材組成物は、上記関係を満たす構成を有することにより、前記第1の有機物がより長波長域にシフトして発光させた光を、前記第2の化合物が効果的に励起に用いることができ、次いで第2の有機物がより長波長域にシフト(レッドシフト)させて発光させる結果、発電に寄与しない波長域の光を発電に寄与する波長域の光に波長変換することができるものと推測している。
[式(1)]
λ1em−60≦λ2ex(nm)
【0087】
また、上記波長変換型封止材組成物において、前記第1の有機物の極大吸収波長λ1absと前記第2の有機物の極大励起波長λ2exとが下記式(式(2))の関係、つまりλ2ex−λ1abs≧5(nm)であることを特徴としているが、λ2ex−λ1abs≧10(nm)であってもよく、λ2ex−λ1abs≧50(nm)であってもよく、λ2ex−λ1abs≧60(nm)であってもよく、λ2ex−λ1abs≧70(nm)であってもよく、λ2ex−λ1abs≧80(nm)であってもよい。本発明の波長変換型封止材組成物は、上記関係を満たす構成を有することにより、前記第1の有機物がより長波長域にシフトして発光させた光を、前記第2の化合物が効果的に励起に用いることがしやすくなり、次いで第2の有機物がより長波長域にシフト(レッドシフト)させて発光させる結果、発電に寄与しない波長域の光を発電に寄与する波長域の光に波長変換することができるものと推測している。
[式(2)]
λ2ex−λ1abs≧5(nm)
【0088】
また、上記波長変換型封止材組成物において、前記第1の有機物の、前記波長変換型封止材中における重量部数P、モル吸光係数ε、および分子量Mwの逆数の積で表される指標Cと、
前記第2の有機物の、前記波長変換型封止材中における重量部数P、モル吸光係数ε、および分子量Mwの逆数の積で表される指標Cとの比(式(3))が、
0.001≦C/C≦0.5であることを特徴としているが、0.002≦C/C≦0.5であってもよく、0.003≦C/C≦0.48であってもよく、0.004≦C/C≦0.48であってもよい。
[式(3)]
/C=[(P×ε)/Mw]/[(P×ε)/Mw
【0089】
また、上記第1の有機物と上記第2の有機物の組み合わせ配合量として、上述の式(3)の比が特定の範囲になるように満たしたうえで、波長変換型封止材組成物のマトリックス樹脂100重量部に対して、上記第1の有機物と上記第2の有機物の各配合量が0.001〜0.5重量部と0.0001〜0.1重量部であることが好ましく、0.001〜0.3重量部と0.0001〜0.05重量部であってもよく、0.005〜0.2重量部と0.001〜0.02重量部であってもよい。
【0090】
上記第1の有機物と上記第2の有機物の分子量は、GC/APCI−TOF MSスペクトル測定のほか、各種質量分析法(ESI法、APCI法、MALDI法、などのイオン化法とTOF型、FT−ICR型、IT型などの検出法を使う方法)にて求めることが可能である。また、上記有機物が高分子量体やオリゴマー体の場合等には、必要に応じてGPC測定(示差屈折計、光散乱検出器などの検出器との併用システム)にて重量平均分子量を求めることで上記分子量を決定することができる。
【0091】
また、上記第1の有機物と上記第2の有機物の組み合わせとして、第1の有機物の最大発光波長領域が、第2の有機物の最大励起波長域と重なりが大きくなる方が好ましい。上記組合わせの場合、通常の太陽電池セルでは光電変換に利用しにくい(または利用できない)紫外線光や可視光の短波長領域の光をより長波長側変換し、光電変換効率をより向上させることができる。さらに、上記第1の有機物がより長波長側に変換した光もより長波長側に変換し、光電変換効率をより向上させることができる場合がある。
【0092】
また、上記波長変換型封止材組成物において、所望の性能を損なわない範囲で、適宜公知の添加剤を含むことができる。上記添加剤として、たとえば、熱可塑性ポリマー、酸化防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、有機過酸化物、充填剤、可塑剤、シランカップリング剤、受酸剤、クレイ等があげられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0093】
また、上記波長変換型封止材組成物を製造するには、公知の方法に準じて行えばよい。たとえば、上記の各材料を加熱混練、スーパーミキサー(高速流動混合機)、ロールミル、プラストミル等を用いて公知の方法で混合して得る方法などをあげることができる。また、上記波長変換型封止材層の製造まで連続して行ってもよい。
【0094】
(波長変換型封止材層)
一方、本発明の波長変換型封止材層は、上記波長変換型封止材組成物を用いて形成されたことを特徴とする。
【0095】
上記波長変換型封止材層を製造するには、公知の方法に準じて行えばよい。たとえば、上記の各材料を加熱混練、スーパーミキサー(高速流動混合機)、ロールミル、プラストミル等を用いて公知の方法で混合した組成物を、通常の押出成形、カレンダ成形(カレンダリング)、真空熱加圧等により成形してシート状物を得る方法により適宜製造することができる。また、PETフィルム等の上に上記層を形成した後、表面保護層に転写する方法により製造することができる。また、ホットメルトアプリケーターにより、混練溶融と塗布を同時に行う方法を用いることができる。
【0096】
より具体的には、たとえば、上記マトリックス樹脂、第1の有機物、および、第2の有機物等を含む上記波長変換型封止材組成物を、表面保護層またはセパレーターなどにそのまま塗布してもよし、上記材料を他の材料と混合組成物として塗布してもよい。また、上記波長変換型封止材組成物を蒸着、スパッタリング、エアロゾルデポジッション法等で形成してもよい。
【0097】
上記混合組成物として塗布する場合、上記マトリックス樹脂は、加工性を考慮して、融点が50〜250℃であることが好ましく、50〜200℃であることがより好ましく、50〜180℃であることがさらに好ましい。また、たとえば、上記波長変換型封止材組成物の融点が50〜250℃の場合、上記組成物の混練溶融および塗布温度は、上記融点に30〜100℃加えた温度で行うことが好ましい。
【0098】
また、いくつかの実施形態において、波長変換型封止材層が下記の工程によって薄膜構造体に製造される:(i)ポリマー(マトリックス樹脂)粉末が所定の比率で溶媒(たとえば、テトラクロロエチレン(TCE)、シクロペンタノン、ジオキサンなど)に溶解されたポリマー溶液を調製する工程、(ii)ポリマー混合物を含有する発光色素(蛍光色素化合物)を、ポリマー溶液を所定の重量比で発光色素と混合して、色素含有ポリマー溶液を得ることによって調製する工程、(iii)色素/ポリマー薄膜を、色素含有ポリマー溶液をガラス基板の上に直接に流し込み、その後、基板を2時間で室温から最高で100℃まで熱処理し、残留溶媒を130℃での一晩のさらなる真空加熱によって完全に除くことによって形成する工程、および、(iv)使用前に、色素/ポリマー薄膜を水の中で剥がし、その後、自立型ポリマーフィルムを完全に乾燥する工程;(v)フィルムの厚さを、色素/ポリマー溶液の濃度および蒸発速度を変化させることによって制御することができる。
【0099】
また、上記加熱混練処理等を行って加工する場合、上記蛍光色素化合物の融点が過度に高い場合、系内(ポリマーマトリックス中など)に均一に分散・溶解することに難しくなり、得られるシートにおいて色素が均一分散しにくくなることがある。そのため、蛍光色素化合物として、その融点が250℃以下、望ましくは220℃以下、さらに望ましくは210℃以下であることが好ましい。ただ、低すぎる場合にも、ブリードアウト等の不都合が生じうるため、融点が50℃以下のものは上記工程では劣る場合がある。よって、上記融点が50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがさらに好ましい。上記のような本発明の発色団を用いることにより、特にシート化した際の均一性が容易に得られやすくなり、生産・加工性に特に優れたものとなる。
【0100】
上記波長変換型封止材層の厚みは、20〜2000μmであることが好ましく、50〜1000μmであることがより好ましく、200〜800μmであることがさらに好ましい。20μmよりも薄くなると、波長変換機能が発現しにくくなってしまう。一方、2000μmより厚くなると、他層との密着性が低下し、コスト的にも不利益である。
【0101】
上記波長変換型封止材層の光学的厚み(吸光度)は、0.5〜6であることが好ましく、1〜4であることがより好ましく、1〜3であることがさらに好ましい。上記吸光度が低いと、波長変換機能が発現しにくくなってしまう。一方、上記吸光度が大きすぎると、コスト的にも不利益である。なお、上記吸光度は、ランベルト・ベールの法則に従って算出される値である。
【0102】
(太陽電池モジュール)
本発明の太陽電池モジュール1は、上記波長変換封止材層20および太陽電池セル30を含むことを特徴とする。一例として図1、2に簡易な模式図を示すが、本発明がこれらに限定されるものではない。また、表面保護層10、太陽電池セルの背面側にさらに封止材層40、バックシート50を適宜備えることもできる。また、これらの各層間に、上記太陽電池用封止材層の上記機能を損なわない限り、接着材層、粘着剤層などの他の層を適宜介在してもよい。また、上記背面用の封止材層として、適宜、本発明の波長変換型封止材層を用いてもよい。
【0103】
上記太陽電池モジュールは、上記波長変換型封止材層を備えるため、通常は光電変換に寄与しない波長を光電変換に寄与しうる波長に変換することができる。具体的には、ある波長をそれよりもより長波長へ、たとえば、370nmより短い波長を370nm以上の波長に変換することができる。特に、紫外線領域の波長(10nm〜365nm)を可視光領域の波長(370〜800nm)へ変換するものである。また、光電変換に寄与する波長の範囲は、太陽電池の種類によって変化し、たとえば、シリコン系太陽電池であっても、使用されるシリコンの結晶形態によって変化する。たとえば、アモルファスシリコン太陽電池の場合、400nm〜700nm、多結晶シリコン太陽電池の場合、約600nm〜1100nmと考えられる。このため、光電変換に寄与する波長は、必ずしも可視光領域の波長にかぎられない。
【0104】
上記太陽電池セルとして、たとえば、結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、微結晶シリコン太陽電池、薄膜シリコン太陽電池、ヘテロ接合型太陽電池、多接合型太陽電池、硫化カドミウム/テルル化カドミウム太陽電池、CIS系薄膜太陽電池、CIGS系薄膜太陽電池、CZTS系薄膜太陽電池、III−V族太陽電池、色素増感型太陽電池、または、有機半導体太陽電池を用いることができる。上記太陽電池セルとして、結晶シリコン太陽電池であることが好ましい。
【0105】
上記太陽電池モジュールの製造において、上記太陽電池用封止材層を上記太陽電池セル等に転写してもよく、直接上記太陽電池セル上に塗布形成してもよい。また、上記太陽電池用封止材層と他の層を同時に形成してもよい。
【0106】
また、本発明の太陽電池モジュールは、入射光が、太陽電池セルへの到達に先だって、上記波長変換型封止材層を通過するように配置されることが好ましい。上記構成とすることで、より確実に、太陽エネルギーのより広い範囲のスペクトルが電気に変換されることが可能となり、光電変換効率を効果的に高めることができる。
【0107】
上記表面保護層として、太陽電池用途の表面保護層として用いられている公知のものを用いることができる。上記表面保護層として、たとえば、フロントシートやガラスなどをあげることができる。上記ガラスとして、たとえば、白板、エンボスの有無等、適宜種々のものを用いることができる。
【実施例】
【0108】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。
【0109】
(有機物)
実施例および比較例では、以下の蛍光化合物を用いた。
[化合物A]
【化1】

4,7−ジフェニル−2−イソブチル−2H−ベンゾトリアゾール
[化合物B]
【化2】

(1,10−フェナントロリン)トリス[4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−1,3−ブタンジオナト]ユーロピウム(III)
[化合物C]
【化3】

4,7−ビス(4−t−ブチルフェニル)−2−イソブチル−2H−ベンゾトリアゾール
[化合物D]
【化4】

4,7−ビス(4−イソブチルオキシフェニル)−2−イソブチル−2H−ベンゾトリアゾール
[化合物E]
【化5】

4,7−ビス(4−t−ブチルフェニル)−2、1,3−ベンゾチアジアゾール
[化合物F]
【化6】

4,7−ビス(4−イソブチルオキシフェニル)−2、1,3−ベンゾチアジアゾール
【0110】
(その他の化合物)
マトリックス樹脂:スミテートKA30、エチレンビニルアセテート(EVA)樹脂(住友化学社製)
過酸化物:パーブチルE、t−ブチルパーオキシ−2−エチルへキシルモノカルボネート(日油社製)
架橋助剤:TAIC、トリアリルイソシアヌレート(日本化成社製)
酸化防止剤:BHT、ジブチルヒドロキシトルエン(東京化成社製)
光安定化剤:Tinuvin144、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート(BASF社製)
シランカップリング剤:KBM503、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)。
【0111】
(分子量の測定)
発光性化合物の分子量をGC/APCI−TOF MSスペクトル測定にて評価した。
【0112】
(封止材)
各実施例・比較例において、各化合物を表の配合に基づき、各封止材層(封止シート)を下記方法によって製造した。
[封止シートの樹脂組成物]
各実施例・比較例において、上記EVA樹脂100重量部および各化合物をはかりとり、ドライブレンドした後に、単軸押し出し機を用いて溶融混練することで、エチレン共重合体組成物のペレットを得た。上記ペレットからプレス成型機を用いて封止材層樹脂シート(厚さ:約650μm)を作製した。
【0113】
(極大吸収波長の測定)
極大吸収波長の測定は、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V−560、波長範囲300〜800nm)を用いて行った。吸収スペクトルのうちで吸光度の極大値を示す波長を極大吸収波長とした。
【0114】
(極大励起波長・最大発光波長)
極大励起波長・最大発光波長の測定は、蛍光分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、F−4500)を用いて行い、(励起−発光)3次元測定において発光強度が最大となる発光波長を最大発光波長、最大発光波長の励起スペクトルのうちで発光強度の極大値を示す波長を極大励起波長とした。
【0115】
(発光量子収率の測定)
発光量子収率の測定は、MCPD(大塚電子社製、MCPD−9800、QE1100L、ソフトウェアVer.1.10.10.1)を用いて行い、極大励起波長で励起した時の発光量子収率を測定した。
【0116】
(太陽電池モジュールのJsc測定)
上記で得られた封止シートを20cmX20cmに裁断し、保護ガラスとしての強化ガラス(旭硝子社製:ソライト)、封止シート、太陽電池セル(Qセル社製:Q6LTT3−G2−200/1700−A、結晶シリコン型)、裏面用封止シート(400μm厚EVAシート)、バックシートとしてPETフィルムを載せ、真空ラミネーター(株式会社エヌ・ピー・シー:LM−50x50−S)を用いて、140℃、真空5分、加圧10分の条件でラミネートし、太陽電池モジュールを作製した。この太陽電池モジュールの分光感度を分光感度測定装置(分光計器社製、CEP−25RR)を用いて測定し、分光感度測定から算出されたJsc値を得た。なお、Jsc値とは、分光感度測定装置によるサンプル測定から得られる分光感度スペクトルと基準太陽光の演算により算出される短絡電流密度をいう。
【0117】
下記表1〜3および図3に、得られた各封止材層(封止シート)を用いたときの測定結果を示す。なお、出力とは、各実施例・比較例におけるJsc値の、EVA樹脂のみの場合のJsc値に対する増減比率を算出したものである。
【表1】

【表2】

【表3】
【0118】
測定の結果、表および図に示したように、式(1)が本願発明の範囲である実施例においては、優れた光電変換効率の向上が認められた。一方、式(1)が本願発明の範囲を満たさない比較例においては、実施例に比べて光電変換効率の向上が認められない、または、併用による有意の向上効果が認められなかった。
【符号の説明】
【0119】
1 太陽電池モジュール
10 表面保護層
20 波長変換型封止材層
30 太陽電池セル
40 裏面用封止材層
50 バックシート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8