特許第6095643号(P6095643)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095643
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】発光材料および有機発光素子
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/06 20060101AFI20170306BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20170306BHJP
   C07D 487/16 20060101ALN20170306BHJP
【FI】
   C09K11/06
   C09K11/06 640
   H05B33/14 B
   !C07D487/16
【請求項の数】11
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2014-503534(P2014-503534)
(86)(22)【出願日】2013年3月7日
(86)【国際出願番号】JP2013056245
(87)【国際公開番号】WO2013133359
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2016年2月26日
(31)【優先権主張番号】特願2012-53437(P2012-53437)
(32)【優先日】2012年3月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516003621
【氏名又は名称】株式会社Kyulux
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】安達 千波矢
(72)【発明者】
【氏名】中川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】リ ジエ
【審査官】 岡山 太一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−182737(JP,A)
【文献】 特開2006−267981(JP,A)
【文献】 特表2000−506916(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/132953(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/094378(WO,A1)
【文献】 Boris,T.,et al,Donor-Substituted Heptaazaphenalen as a Nonliner Optically Active Molecule with Multiple Charge-Transfer Transitions ,Eur.J.Org.Chem,2004年,pp.4387-4390
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00−11/89
H01L 51/50
C07D 487/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物からなる発光材料。
【化1】
[一般式(1)において、Z1、Z2およびZ3は、各々独立に置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、または、置換もしくは無置換のジアリールアミノ基で置換されたアリール基を表す。]
【請求項2】
一般式(1)のZ1、Z2およびZ3が同一であることを特徴とする請求項1に記載の発光材料。
【請求項3】
一般式(1)のZ1、Z2およびZ3が、各々独立に置換もしくは無置換のジアリールアミノ基であることを特徴とする請求項1または2に記載の発光材料。
【請求項4】
前記化合物が一般式(2)で表される構造を有することを特徴とする請求項3に記載の発光材料。
【化2】
[一般式(2)において、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5およびAr6は、各々独立に置換もしくは無置換のアリール基を表す。]
【請求項5】
一般式(1)のZ1、Z2およびZ3が、各々独立に置換もしくは無置換のジアリールアミノ基で置換されたアリール基であることを特徴とする請求項1または2に記載の発光材料。
【請求項6】
前記化合物が一般式(3)で表される構造を有することを特徴とする請求項5に記載の発光材料。
【化3】
[一般式(3)において、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15およびAr16は、各々独立に置換もしくは無置換のアリール基を表す。]
【請求項7】
下記一般式(1)で表される構造を有する遅延蛍光体。
【化4】
[一般式(1)において、Z1、Z2およびZ3は、各々独立に置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、または、置換もしくは無置換のジアリールアミノ基で置換されたアリール基を表す。]
【請求項8】
発光材料として、請求項1〜6のいずれか一項に記載の発光材料を含むことを特徴とする有機発光素子。
【請求項9】
陽極、陰極、および前記陽極と前記陰極の間に発光層を含む少なくとも1層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記発光層に前記発光材料を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子である請求項8に記載の有機発光素子。
【請求項10】
下記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする、遅延蛍光を放射する有機発光素子。
【化5】
[一般式(1)において、Z1、Z2およびZ3は、各々独立に置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、または、置換もしくは無置換のジアリールアミノ基で置換されたアリール基を表す。]
【請求項11】
下記一般式(1)で表される化合物の遅延蛍光体としての使用。
【化6】
[一般式(1)において、Z1、Z2およびZ3は、各々独立に置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、または、置換もしくは無置換のジアリールアミノ基で置換されたアリール基を表す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘプタアザフェナレン骨格を有する発光材料とその発光材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘプタアザフェナレン骨格を有する化合物やその用途に関する研究が、これまでに種々なされてきている。例えば、ヘプタアザフェナレン骨格を有する化合物は、紫外線吸収剤として有用であり、化粧品や医薬品として応用しうることが見出されている(例えば特許文献1〜3参照)。
【0003】
ヘプタアザフェナレン骨格を有する化合物を有機発光素子の材料として用いることについては、長らく検討されていなかった。しかし、最近になって、ヘプタアザフェナレン骨格を有する化合物がホール注入材料として有用であることが見出されるに至っている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2008/83974号公報
【特許文献2】国際公開2008/83975号公報
【特許文献3】国際公開2007/6807号公報
【特許文献4】国際公開2010/614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようにヘプタアザフェナレン骨格を有する化合物については、これまで種々の検討がなされており、有機エレクトロルミネッセンス素子への応用に関する提案もわずかながらなされている。しかしながら、ヘプタアザフェナレン骨格を有する化合物のすべてについて網羅的な研究がされ尽くされているとは言えない。特に、ヘプタアザフェナレン骨格を有する化合物の有機エレクトロルミネッセンス素子の発光材料としての有用性を具体的に確認した文献は見あたらない。また、ヘプタアザフェナレン骨格を有する化合物の化学構造とその化合物の発光材料としての有用性の関係を論じた文献も見あたらない。このため、現時点では化学構造に基づいて発光材料としての有用性を予測することは困難な状況にある。本発明者らはこれらの課題を考慮して、ヘプタアザフェナレン骨格を有する化合物の発光材料としての有用性について検討し、有用な知見を得ることを目的として検討を進めた。また、発光材料として有用な化合物の一般式を導きだし、有用な発光材料を一般化することも目的として鋭意検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために鋭意検討を進めた結果、本発明者らは、ヘプタアザフェナレン骨格を有する特定の化合物が有機発光素子の発光材料として有用であることを見出した。特に、ヘプタアザフェナレン骨格を有する化合物の中に、遅延蛍光材料として有用な化合物や発光効率が極めて高い化合物があることを初めて見出し、従来は提案されていなかった優れた有機発光素子を安価に提供しうることを明らかにした。本発明者らは、この知見に基づいて、上記の課題を解決する手段として、以下の本発明を提供するに至った。
【0007】
[1] 下記一般式(1)で表される化合物からなる発光材料。
【化1】
[一般式(1)において、Z、ZおよびZは、各々独立に置換基を表す。]
[2] 一般式(1)のZ、ZおよびZが同一であることを特徴とする[1]に記載の発光材料。
[3] 一般式(1)のZ、ZおよびZが、各々独立に置換アミノ基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基であることを特徴とする[1]または[2]に記載の発光材料。
【0008】
[4] 一般式(1)のZ、ZおよびZが、各々独立に置換もしくは無置換のジアリールアミノ基であることを特徴とする[1]または[2]に記載の発光材料。
[5] 前記化合物が一般式(2)で表される構造を有することを特徴とする[4]に記載の発光材料。
【化2】
[一般式(2)において、Ar、Ar、Ar、Ar、ArおよびArは、各々独立に置換もしくは無置換のアリール基を表す。]
【0009】
[6] 一般式(1)のZ、ZおよびZが、各々独立に置換もしくは無置換のジアリールアミノ基で置換されたアリール基であることを特徴とする[1]または[2]に記載の発光材料。
[7] 前記化合物が一般式(3)で表される構造を有することを特徴とする[6]に記載の発光材料。
【化3】
[一般式(3)において、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15およびAr16は、各々独立に置換もしくは無置換のアリール基を表す。]
[8] 上記一般式(1)で表される構造を有する遅延蛍光体。
【0010】
[9] 発光材料として、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の発光材料を含むことを特徴とする有機発光素子。
[10] 陽極、陰極、および前記陽極と前記陰極の間に発光層を含む少なくとも1層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記発光層に前記発光材料を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子である[9]に記載の有機発光素子。
[11] 遅延蛍光を放射することを特徴とする[9]または[10]に記載の有機発光素子。
【発明の効果】
【0011】
一般式(1)で表される化合物は、有機発光素子の発光材料として有用である。一般式(1)で表される化合物群には、遅延蛍光を示すものや、発光効率が極めて高いものが含まれる。また、本発明の有機発光素子は、遅延蛍光を示すものや、発光効率が極めて高いものが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成例を示す概略断面図である。
図2】実施例1におけるフォロルミネッセンス発光スペクトルである。
図3】実施例1におけるフォロルミネッセンス過渡減衰を示すグラフである。
図4】実施例1におけるエレクトロルミネッセンス発光スペクトルである。
図5】実施例2におけるフォロルミネッセンス発光スペクトルである。
図6】実施例2におけるフォロルミネッセンス過渡減衰を示すグラフである。
図7】実施例2におけるエレクトロルミネッセンス発光スペクトルである。
図8】実施例2の有機エレクトロルミネッセンス素子の電流密度−電圧特性−輝度特性を示すグラフである。
図9】実施例2の有機エレクトロルミネッセンス素子の外部量子効率−電流密度特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
[一般式(1)で表される化合物]
本発明の化合物は、下記の一般式(1)で表される構造を有する。
【化4】
【0015】
一般式(1)において、Z、ZおよびZは、各々独立に置換基を表す。ここでいう置換基は、水素原子以外の原子または原子団を意味する。
、ZおよびZが表す置換基として好ましいのは、置換アミノ基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。Z、ZおよびZは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。好ましいのは、Z、ZおよびZがすべて同一である場合である。
【0016】
、ZおよびZがとりうる置換アミノ基は、−N(R)(R)で表される構造を有する基であり、ここでRおよびRは各々独立に置換基を表す。RおよびRとしては、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基であることが好ましく、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基であることがより好ましく、置換もしくは無置換のアリール基であることがさらに好ましい。RおよびRは同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。また、RおよびRは互いに結合して環状構造を形成していてもよい。そのような環状構造を形成している基の具体例として、カルバゾリル基を挙げることができる。Z、ZおよびZがとりうる置換アミノ基の特に好ましい例として、置換もしくは無置換のジアリールアミノ基を挙げることができ、具体例としてジフェニルアミノ基、ジ(4−フルオロフェニル)アミノ基を例示することができる。
【0017】
、ZおよびZがとりうるアリール基は、1つの芳香環からなるものであってもよいし、2以上の芳香環が融合した構造を有するものであってもよい。アリール基の炭素数は、6〜22であることが好ましく、6〜18であることがより好ましく、6〜14であることがさらに好ましく、6〜10であること(すなわちフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基)がさらにより好ましい。アリール基は置換されていてもよく、その場合の置換基としては、ハロゲン原子、置換アミノ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基であることが好ましく、ハロゲン原子、置換アミノ基であることがより好ましい。Z、ZおよびZがとりうるアリール基が置換されている場合の置換基の数は、1〜5であることが好ましく、1〜4であることがより好ましく、1〜3であることがさらに好ましい。複数の置換基を有する場合、各置換基は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。Z、ZおよびZがとりうる置換もしくは無置換のアリール基の特に好ましい例として、ジアリールアミノ基で置換されたアリール基を挙げることができる。具体例として、4−(ジフェニルアミノ)フェニル基、4−[ジ(4−tert−ブチルフェニル)アミノ]フェニル基、4−[ジ(4−メチルフェニル)アミノ]フェニル基、4−[ジ(4−エチルフェニル)アミノ]フェニル基、4−[ジ(4−プロピルフェニル)アミノ]フェニル基、4−[ジ(4−イソプロピルフェニル)アミノ]フェニル基、4−[ジ(3,5−ジメチルフェニル)アミノ]フェニル基、4−[ジ(3,5−ジエチルフェニル)アミノ]フェニル基、4−[ジ(2,4,6−トリメチルフェニル)アミノ]フェニル基、4−[ジ(1−ナフチル)アミノ]フェニル基、4−[ジ(2−ナフチル)アミノ]フェニル基を例示することができる。
【0018】
、ZおよびZがとりうるヘテロアリール基は、1つの環からなるものであってもよいし、2以上の環が融合した構造を有するものであってもよい。ヘテロアリール基の炭素数は、3〜21であることが好ましく、3〜17であることがより好ましく、3〜13であることがさらに好ましく、3〜9であることがさらにより好ましい。ヘテロアリール基は置換されていてもよく、その場合の置換基としては、ハロゲン原子、置換アミノ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基であることが好ましく、ハロゲン原子、置換アミノ基であることがより好ましい。Z、ZおよびZがとりうるヘテロアリール基が置換されている場合の置換基の数は、1〜4であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、1または2であることがさらに好ましい。複数の置換基を有する場合、各置換基は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0019】
本明細書でいうアルキル基は、直鎖状であっても、分枝状であっても、環状であってもよい。好ましいのは直鎖状または分枝状のアルキル基である。アルキル基の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜3であること(すなわちメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基)がさらにより好ましい。環状のアルキル基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基を挙げることができる。
【0020】
本明細書でいうハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であることが好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子であることがより好ましく、フッ素原子、塩素原子であることがさらに好ましい。
【0021】
アルキル基やアリール基やヘテロアリール基の置換基としては、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールオキシ基を挙げることができる。置換基として採用しうるアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の説明と好まし範囲は、上記と同じである。また、置換基として採用しうるアルコキシ基は、直鎖状であっても、分枝状であっても、環状であってもよい。好ましいのは直鎖状または分枝状のアルコキシ基である。アルコキシ基の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜3であること(すなわちメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基)がさらにより好ましい。環状のアルコキシ基としては、例えばシクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基を挙げることができる。また、置換基として採用しうるアリールオキシ基は、1つの芳香環からなるものであってもよいし、2以上の芳香環が融合した構造を有するものであってもよい。アリールオキシ基の炭素数は、6〜22であることが好ましく、6〜18であることがより好ましく、6〜14であることがさらに好ましく、6〜10であること(すなわちフェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基)がさらにより好ましい。さらに、置換基として採用しうるヘテロアリールオキシ基は、1つの環からなるものであってもよいし、2以上の環が融合した構造を有するものであってもよい。ヘテロアリールオキシ基の炭素数は、3〜21であることが好ましく、3〜17であることがより好ましく、3〜13であることがさらに好ましく、3〜9であることがさらにより好ましい。
【0022】
本発明の化合物は、下記の一般式(2)で表される構造を有するものであることが好ましい。一般式(2)で表される化合物群は、特に遅延蛍光を示すものを含む点で好ましい。
【化5】
【0023】
一般式(2)において、Ar、Ar、Ar、Ar、ArおよびArは、各々独立に置換もしくは無置換のアリール基を表す。Ar、Ar、Ar、Ar、ArおよびArは、同一であっても異なっていてもよいが、好ましいのはAr、Ar、Ar、Ar、ArおよびArのすべてが同一である場合である。ArとArは互いに連結してN原子とともに環状構造を形成してもよい。また、ArとArは互いに連結してN原子とともに環状構造を形成してもよく、ArとArは互いに連結してN原子とともに環状構造を形成してもよい。Ar、Ar、Ar、Ar、ArおよびArがとりうる置換もしくは無置換のアリール基の説明と具体例については、上記の一般式(1)の説明における置換もしくは無置換のアリール基の説明と具体例を参照することができる。
【0024】
一般式(2)で表される化合物の具体例として、以下の構造式で表される化合物を挙げることができる。
【化6】
【0025】
一般式(2)で表される化合物の具体例として、以下の表に記載される化合物を挙げることができる。ここでは、Ar、Ar、Ar、Ar、ArおよびArはすべて同一であり、これらをまとめてArと表記している。
【0026】
【表1】
【0027】
本発明の化合物は、下記の一般式(3)で表される構造を有するものであることも好ましい。一般式(3)で表される化合物群は、特に発光効率が高い点で好ましい。
【化7】
【0028】
一般式(3)において、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15およびAr16は、各々独立に置換もしくは無置換のアリール基を表す。Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15およびAr16は、同一であっても異なっていてもよいが、好ましいのはAr11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15およびAr16のすべてが同一である場合である。Ar11とAr12は互いに連結してN原子とともに環状構造を形成してもよい。また、Ar13とAr14は互いに連結してN原子とともに環状構造を形成してもよく、Ar15とAr16は互いに連結してN原子とともに環状構造を形成してもよい。Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15およびAr16がとりうる置換もしくは無置換のアリール基の説明と具体例については、上記の一般式(1)の説明における置換もしくは無置換のアリール基の説明と具体例を参照することができる。
【0029】
一般式(3)で表される化合物の具体例として、以下の構造式で表される化合物を挙げることができる。
【化8】
【0030】
一般式(3)で表される化合物の具体例として、以下の表に記載される化合物を挙げることができる。ここでは、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15およびAr16はすべて同一であり、これらをまとめてArと表記している。
【0031】
【表2】
【0032】
[一般式(1)で表される化合物の合成法]
一般式(1)で表される化合物の合成法は特に制限されない。一般式(1)で表される化合物の合成は、既知の合成法や条件を適宜組み合わせることにより行うことができる。例えば、特表2009−501194の段落番号0039〜0049に記載される合成法を適宜選択したり、組み合わせたり、応用したりすることにより合成することができる。また、一般式(1)で表される化合物は、その他の公知の合成反応を組み合わせることによっても合成することができる。
【0033】
[有機発光素子]
本発明の一般式(1)で表される化合物は、有機発光素子の発光材料として有用である。このため、本発明の一般式(1)で表される化合物は、有機発光素子の発光層に発光材料として効果的に用いることができる。一般式(1)で表される化合物の中には、遅延蛍光を放射する遅延蛍光材料(遅延蛍光体)が含まれている。すなわち本発明は、一般式(1)で表される構造を有する遅延蛍光体の発明と、一般式(1)で表される化合物を遅延蛍光体として使用する発明と、一般式(1)で表される化合物を用いて遅延蛍光を発光させる方法の発明も提供する。そのような化合物を発光材料として用いた有機発光素子は、遅延蛍光を放射し、発光効率が高いという特徴を有する。その原理を、有機エレクトロルミネッセンス素子を例にとって説明すると以下のようになる。
【0034】
有機エレクトロルミネッセンス素子においては、正負の両電極より発光材料にキャリアを注入し、励起状態の発光材料を生成し、発光させる。通常、キャリア注入型の有機エレクトロルミネッセンス素子の場合、生成した励起子のうち、励起一重項状態に励起されるのは25%であり、残り75%は励起三重項状態に励起される。従って、励起三重項状態からの発光であるリン光を利用するほうが、エネルギーの利用効率が高い。しかしながら、励起三重項状態は寿命が長いため、励起状態の飽和や励起三重項状態の励起子との相互作用によるエネルギーの失活が起こり、一般にリン光の量子収率が高くないことが多い。一方、遅延蛍光材料は、項間交差等により励起三重項状態へとエネルギーが遷移した後、三重項−三重項消滅あるいは熱エネルギーの吸収により、励起一重項状態に逆項間交差され蛍光を放射する。有機エレクトロルミネッセンス素子においては、なかでも熱エネルギーの吸収による熱活性化型の遅延蛍光材料が特に有用であると考えられる。有機エレクトロルミネッセンス素子に遅延蛍光材料を利用した場合、励起一重項状態の励起子は通常通り蛍光を放射する。一方、励起三重項状態の励起子は、デバイスが発する熱を吸収して励起一重項へ項間交差され蛍光を放射する。このとき、励起一重項からの発光であるため蛍光と同波長での発光でありながら、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差により、生じる光の寿命(発光寿命)は通常の蛍光やりん光よりも長くなるため、これらよりも遅延した蛍光として観察される。これを遅延蛍光として定義できる。このような熱活性化型の励起子移動機構を用いれば、キャリア注入後に熱エネルギーの吸収を経ることにより、通常は25%しか生成しなかった励起一重項状態の化合物の比率を25%以上に引き上げることが可能となる。100℃未満の低い温度でも強い蛍光および遅延蛍光を発する化合物を用いれば、デバイスの熱で充分に励起三重項状態から励起一重項状態への項間交差が生じて遅延蛍光を放射するため、発光効率を飛躍的に向上させることができる。
【0035】
本発明の一般式(1)で表される化合物を発光層の発光材料として用いることにより、有機フォトルミネッセンス素子(有機PL素子)や有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの優れた有機発光素子を提供することができる。有機フォトルミネッセンス素子は、基板上に少なくとも発光層を形成した構造を有する。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも陽極、陰極、および陽極と陰極の間に有機層を形成した構造を有する。有機層は、少なくとも発光層を含むものであり、発光層のみからなるものであってもよいし、発光層の他に1層以上の有機層を有するものであってもよい。そのような他の有機層として、正孔輸送層、正孔注入層、電子阻止層、正孔阻止層、電子注入層、電子輸送層、励起子阻止層などを挙げることができる。正孔輸送層は正孔注入機能を有した正孔注入輸送層でもよく、電子輸送層は電子注入機能を有した電子注入輸送層でもよい。具体的な有機エレクトロルミネッセンス素子の構造例を図1に示す。図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を表わす。
以下において、有機エレクトロルミネッセンス素子の各部材および各層について説明する。なお、基板と発光層の説明は有機フォトルミネッセンス素子の基板と発光層にも該当する。
【0036】
(基板)
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については、特に制限はなく、従来から有機エレクトロルミネッセンス素子に慣用されているものであればよく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英、シリコンなどからなるものを用いることができる。
【0037】
(陽極)
有機エレクトロルミネッセンス素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが好ましく用いられる。このような電極材料の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極材料の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な材料を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0038】
(陰極)
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが用いられる。このような電極材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性および酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陽極の説明で挙げた導電性透明材料を陰極に用いることで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0039】
(発光層)
発光層は、陽極および陰極のそれぞれから注入された正孔および電子が再結合することにより励起子が生成した後、発光する層であり、発光材料を単独で発光層に使用しても良いが、好ましくは発光材料とホスト材料を含む。発光材料としては、一般式(1)で表される本発明の化合物群から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子および有機フォトルミネッセンス素子が高い発光効率を発現するためには、発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、発光材料中に閉じ込めることが重要である。従って、発光層中に発光材料に加えてホスト材料を用いることが好ましい。ホスト材料としては、励起一重項エネルギー、励起三重項エネルギーの少なくとも何れか一方が本発明の発光材料よりも高い値を有する有機化合物を用いることができる。その結果、本発明の発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、本発明の発光材料の分子中に閉じ込めることが可能となり、その発光効率を十分に引き出すことが可能となる。もっとも、一重項励起子および三重項励起子を十分に閉じ込めることができなくても、高い発光効率を得ることが可能な場合もあるため、高い発光効率を実現しうるホスト材料であれば特に制約なく本発明に用いることができる。本発明の有機発光素子または有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光は発光層に含まれる本発明の発光材料から生じる。この発光は蛍光発光および遅延蛍光発光の両方を含む。但し、発光の一部或いは部分的にホスト材料からの発光があってもかまわない。
ホスト材料を用いる場合、発光材料である本発明の化合物が発光層中に含有される量は0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、また、50重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。
発光層におけるホスト材料としては、正孔輸送能、電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する有機化合物であることが好ましい。
【0040】
(注入層)
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層または正孔輸送層の間、および陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
【0041】
(阻止層)
阻止層は、発光層中に存在する電荷(電子もしくは正孔)および/または励起子の発光層外への拡散を阻止することができる層である。電子阻止層は、発光層および正孔輸送層の間に配置されることができ、電子が正孔輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。同様に、正孔阻止層は発光層および電子輸送層の間に配置されることができ、正孔が電子輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。阻止層はまた、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止するために用いることができる。すなわち電子阻止層、正孔阻止層はそれぞれ励起子阻止層としての機能も兼ね備えることができる。本明細書でいう電子阻止層または励起子阻止層は、一つの層で電子阻止層および励起子阻止層の機能を有する層を含む意味で使用される。
【0042】
(正孔阻止層)
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は電子を輸送しつつ、正孔が電子輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。正孔阻止層の材料としては、後述する電子輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。
【0043】
(電子阻止層)
電子阻止層とは、広い意味では正孔を輸送する機能を有する。電子阻止層は正孔を輸送しつつ、電子が正孔輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔が再結合する確率を向上させることができる。
【0044】
(励起子阻止層)
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は発光層に隣接して陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。すなわち、励起子阻止層を陽極側に有する場合、正孔輸送層と発光層の間に、発光層に隣接して該層を挿入することができ、陰極側に挿入する場合、発光層と陰極との間に、発光層に隣接して該層を挿入することができる。また、陽極と、発光層の陽極側に隣接する励起子阻止層との間には、正孔注入層や電子阻止層などを有することができ、陰極と、発光層の陰極側に隣接する励起子阻止層との間には、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層などを有することができる。阻止層を配置する場合、阻止層として用いる材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーの少なくともいずれか一方は、発光材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーよりも高いことが好ましい。
【0045】
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。使用できる公知の正孔輸送材料としては例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物およびスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、芳香族第3級アミン化合物を用いることがより好ましい。
【0046】
(電子輸送層)
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる場合もある)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。使用できる電子輸送層としては例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0047】
有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する際には、一般式(1)で表される化合物を発光層に用いるだけでなく、発光層以外の層にも用いてもよい。その際、発光層に用いる一般式(1)で表される化合物と、発光層以外の層に用いる一般式(1)で表される化合物は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、上記の注入層、阻止層、正孔阻止層、電子阻止層、励起子阻止層、正孔輸送層、電子輸送層などにも一般式(1)で表される化合物を用いてもよい。これらの層の製膜方法は特に限定されず、ドライプロセス、ウェットプロセスのどちらで作製してもよい。
【0048】
以下に、有機エレクトロルミネッセンス素子に用いることができる好ましい材料を具体的に例示する。ただし、本発明において用いることができる材料は、以下の例示化合物によって限定的に解釈されることはない。また、特定の機能を有する材料として例示した化合物であっても、その他の機能を有する材料として転用することも可能である。なお、以下の例示化合物の構造式におけるR、R’、R〜R10は、各々独立に水素原子または置換基を表す。Xは環骨格を形成する炭素原子または複素原子を表し、nは3〜5の整数を表し、Yは置換基を表し、mは0以上の整数を表す。
【0049】
まず、発光層のホスト材料としても用いることができる好ましい化合物を挙げる。
【0050】
【化9】
【0051】
【化10】
【0052】
【化11】
【0053】
【化12】
【0054】
【化13】
【0055】
次に、正孔注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0056】
【化14】
【0057】
次に、正孔輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0058】
【化15】
【0059】
【化16】
【0060】
【化17】
【0061】
【化18】
【0062】
【化19】
【0063】
【化20】
【0064】
次に、電子阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0065】
【化21】
【0066】
次に、正孔阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0067】
【化22】
【0068】
次に、電子輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0069】
【化23】
【0070】
【化24】
【0071】
【化25】
【0072】
次に、電子注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0073】
【化26】
【0074】
さらに添加可能な材料として好ましい化合物例を挙げる。例えば、安定化材料として添加すること等が考えられる。
【0075】
【化27】
【0076】
上述の方法により作製された有機エレクトロルミネッセンス素子は、得られた素子の陽極と陰極の間に電界を印加することにより発光する。このとき、励起一重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長の光が、蛍光発光および遅延蛍光発光として確認される。また、励起三重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長が、りん光として確認される。通常の蛍光は、遅延蛍光発光よりも蛍光寿命が短いため、発光寿命は蛍光と遅延蛍光で区別できる。
一方、りん光については、本発明の化合物のような通常の有機化合物では、励起三重項エネルギーは不安定で熱等に変換され、寿命が短く直ちに失活するため、室温では殆ど観測できない。通常の有機化合物の励起三重項エネルギーを測定するためには、極低温の条件での発光を観測することにより測定可能である。
【0077】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。本発明によれば、発光層に一般式(1)で表される化合物を含有させることにより、発光効率が大きく改善された有機発光素子が得られる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子などの有機発光素子は、さらに様々な用途へ応用することが可能である。例えば、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いて、有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造することが可能であり、詳細については、時任静士、安達千波矢、村田英幸共著「有機ELディスプレイ」(オーム社)を参照することができる。また、特に本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、需要が大きい有機エレクトロルミネッセンス照明やバックライトに応用することもできる。
【実施例】
【0078】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0079】
(実施例1)
(1)有機フォトルミネッセンス素子(有機PL素子)の作製
6重量%の化合物1とPYD2を共蒸着することにより石英基板上に製膜し、PL発光スペクトル、PL量子収率、PL過渡減衰を測定した。図2に励起波長337nmにおけるPL発光スペクトルを示す。共蒸着膜は青色発光を示し、PL量子収率は32%と高い値を示した。
次に化合物1の遅延蛍光特性を検討するために、ストリークカメラを用いて共蒸着膜のPL過渡減衰を測定した。測定結果を図3に示す。PL過渡減衰曲線は2成分のフィッティングによく一致した。また、窒素ガスをバブリングしながら測定した場合は4nsの短寿命成分と1.2μsの長寿命成分が観測され、窒素ガスをバブリングせずに測定した場合は5nsの短寿命成分と256nsの長寿命成分が観測された。すなわち、化合物1によって、短寿命の蛍光に加え、長寿命成分に由来する遅延蛍光が観測された。
【0080】
(2)有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)の作製
図1に示す層構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を以下の手順で製造した。
ガラス上にインジウム・スズ酸化物(ITO)をおよそ30〜100nmの厚さで製膜し、さらにその上にα−NPDを60nmの厚さで製膜した。次いで、6重量%の化合物1とPYD2を共蒸着することによって発光層を20nmの厚さで製膜した。さらにその上にBphenを厚さ40nmで製膜した。次いで、マグネシウム−銀(MgAg)を100nm真空蒸着し、次いでアルミニウム(Al)を20nmの厚さに蒸着して、図1に示す層構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子とした。作成した有機EL素子のEL発光スペクトルを図4に示す。図2のPLスペクトルとよく一致したことから、素子からの発光は化合物1に由来することが確認された。
【0081】
【化28】
【0082】
(実施例2)
(1)有機フォトルミネッセンス素子の作製
6重量%の化合物101とPYD2を共蒸着することにより石英基板上に製膜し、PL発光スペクトルとPL量子収率を測定した。図5に励起波長337nmにおけるPL発光スペクトルを示す。共蒸着膜は赤色発光を示し、PL量子収率は91%と高い値を示した。77K、100K、150K、200K、250K、300KにおけるPL過渡減衰をストリークカメラを用いて測定した結果を図6に示す。図6より、遅延蛍光が温度に依存することが確認された。
【0083】
(2)有機エレクトロルミネッセンス素子の作製
図1に示す層構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を以下の手順で製造した。
ガラス上にインジウム・スズ酸化物(ITO)をおよそ30〜100nmの厚さで製膜し、さらにその上にα−NPDを60nmの厚さで製膜した。次いで、6重量%の化合物101とPYD2を共蒸着することによって発光層を20nmの厚さで製膜した。さらにその上にBphenを厚さ40nmで製膜した。次いで、マグネシウム−銀(MgAg)を100nm真空蒸着し、次いでアルミニウム(Al)を20nmの厚さに蒸着して、図1に示す層構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子とした。図7にエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを示す。PLスペクトルとよく一致したことから、素子からの発光は化合物101に由来することが確認された。図8に電流密度−電圧特性−輝度特性を示し、図9に外部量子効率−電流密度特性を示す。外部量子効率は13.85%と高いことが確認された。
【0084】
(実施例3)
実施例1および2と同様にして、化合物2〜23および化合物102〜123についても有用性を確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
一般式(1)で表される化合物は、有機発光素子の発光材料として有用である。また、一般式(1)で表される化合物には、遅延蛍光を示すものや、発光効率が極めて高いものが含まれる。このため、一般式(1)で表される化合物を発光材料として用いた有機発光素子は、遅延蛍光を示したり、高い発光効率を示したりするため、極めて有用である。このため、本発明は産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0086】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 陰極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9