(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095653
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】セラミック材料から作られる本体
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20170306BHJP
A61K 6/00 20060101ALI20170306BHJP
A61K 6/04 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
A61C8/00
A61K6/00 B
A61K6/04
【請求項の数】20
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-516228(P2014-516228)
(86)(22)【出願日】2012年6月22日
(65)【公表番号】特表2014-519933(P2014-519933A)
(43)【公表日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】EP2012002648
(87)【国際公開番号】WO2012175220
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2014年10月22日
(31)【優先権主張番号】11005158.8
(32)【優先日】2011年6月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506415207
【氏名又は名称】ストラウマン ホールディング アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104385
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100163360
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 知篤
(72)【発明者】
【氏名】ベルナー,シモン
【審査官】
宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−182755(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/094968(WO,A2)
【文献】
国際公開第2010/057949(WO,A2)
【文献】
特表2010−533708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック材料から作られる本体であって、
該本体はその一体化部分として本体の表面から所定の深さまで伸びている表面領域を含み、
該表面領域はナトリウム及びカリウムを含まず、
該表面領域はマグネシウム成分で豊富化されており、それにより親水性表面部位を形成しており、
前記マグネシウム成分が表面領域のセラミック材料中に統合されている、本体。
【請求項2】
前記マグネシウム成分がマグネシウムイオン又は酸化マグネシウムである、請求項1に記載の本体。
【請求項3】
前記表面領域は最大でも10μmの深さに伸びる、請求項1又は請求項2に記載の本体。
【請求項4】
前記表面領域中のマグネシウム成分の割合が前記本体の該表面領域以外の部分におけるマグネシウム成分より高い、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の本体。
【請求項5】
前記マグネシウム成分の割合が所定の深さから本体の表面に向かって連続的に増加する、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の本体。
【請求項6】
前記親水性表面部位が90°未満の接触角によって定義される、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の本体。
【請求項7】
前記セラミック本体がインプラントである、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の本体。
【請求項8】
前記セラミック本体が歯科用インプラントである、請求項7に記載の本体。
【請求項9】
前記親水性表面部位が骨と接触することを目的とする本体の部分に少なくとも形成される、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の本体。
【請求項10】
前記親水性表面部位が軟組織と接触することを目的とする本体の部分に少なくとも形成される、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の本体。
【請求項11】
前記親水性表面部位が本体の全表面に形成される、請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の本体。
【請求項12】
前記セラミック材料がジルコニアを含む、請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の本体。
【請求項13】
前記セラミック材料がイットリア安定化ジルコニアを含む、請求項12に記載の本体。
【請求項14】
少なくとも前記親水性表面部位の一部は表面粗さ処理により得られる増加した表面粗さを有する、請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の本体。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載のセラミック材料から作られる本体の親水性を向上する方法であって、
該方法は次の工程
a)マグネシウム塩、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、金属マグネシウム及びゲルを含有しているマグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1つのマグネシウム化合物を基礎のガラスセラミック本体の表面上に塗布すること、並びに
b)基礎のセラミック本体をその表面に塗布されたマグネシウム化合物とともに200℃より高い温度で熱処理して、それによりマグネシウム化合物ベースのマグネシウム成分がセラミック材料に拡散すること
を含む、方法。
【請求項16】
前記工程a)のマグネシウム化合物はMgCO3、Mg(NO3)2、MgCl2、MgSO4、酢酸マグネシウムからなる群から選ばれる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記マグネシウム化合物はMgCO3及び/又はMgCl2である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記工程b)の後、未処理のマグネシウム化合物は液体で洗い流すこと、気流、ブラッシング、酸洗浄及び/又は酸磨きにより本体の表面から除去される、請求項15乃至請求項17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
洗い流すために使用される前記液体は純水又は水溶液である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
インプラントとしての使用のための、請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の本体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の、セラミック材料から作られる本体に関し、請求項15に記載の、セラミック材料から作られる本体の親水性を向上する方法に関し、そして、請求項19に記載の、インプラント又はそのようなインプラント用のアバットメント(abutment)としてのセラミック本体の使用、特に歯科用インプラント又は歯科用インプラントアバットメント(abutment)としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用インプラントなどの、インプラントは当技術分野で周知である。
【0003】
歯科用インプラントは、一般に、顎骨に固定されるように設計されるアンカー部と、クラウンまたはブリッジ等の上部構造の直接的又は間接的結合のための基部として機能する取付け部を含む。
【0004】
アンカー部と取付け部とが一部品として完全に一体化形成されている1パート歯科用インプラントシステム、及び取付け部として機能する、“アバットメント(abutment)”といわれる分離部分を含む2パート歯科用インプラントシステムがある。
【0005】
したがって、アバットメント(abutment)は、上部構造の骨に固定されている部分と接続するための、歯科インプラント用の分離した取付け部である。
【0006】
歯科用インプラントは、一般に、生体適合性があり、そしてさらに良好な機械的特性を有する材料からなる。
【0007】
アンカー部に関しては、歯科用インプラントは良好な骨結合性が要求される。
【0008】
用語“骨結合性”は、生きている骨と耐荷重性インプラントの表面との間の直接的な構造及び機能的な接合を示す。良好な骨結合は、インプラントと骨の間の永続的な結合が得られるように、インプラントは、骨中にねじ込むことによって初期の安定性に達した後、短い治癒時間のうちに安全に骨化することを意味する。
【0009】
インプラントのための適した材料は、一般的に、例えば、チタン又はジルコニウムベースのセラミック等のセラミックのような、金属製である。
【0010】
暗色であり、そしてそれゆえ天然歯の色と不一致であるチタンインプラントとは対照的に、セラミック材料は、それらの色が天然歯の色と密接に一致させることができるという利点を有する。したがって、試みは、少なくとも挿入後に視認できる部分がセラミック材料で作られている、歯科用インプラントを提供するためになされている。
【0011】
これら有利な特性にもかかわらず、歯科用インプラントのためのセラミック材料の使用は、頻繁に、一般的にかなり低いそれらの疲労安定性によって制限される。
【0012】
十分な機械的安定性を備えたセラミック材料が特許文献1に開示されている。しかし、この材料はそれ自体、骨結合性ではない。
【0013】
インプラント表面の機械的な粗面化が、それに続く粗面化表面のエッチングと組み合わされたとき、骨結合は特に高効率であることが見出された。これに関して、特許文献2に
は、その表面の少なくとも一部をフッ化水素酸を含む溶液を用いてエッチングする方法を開示されている。
【0014】
しかし、比較的に速い方法で確立されたインプラントと骨との間の永続的な結合は、最終的にインプラントした後の治癒期間の短縮を可能にするので、インプラントの骨結合特性のさらなる改良が依然として進行中の研究の主題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第6,165,925(B)号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1982670(A)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の目的は向上した親水性を有するセラミック体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は請求項1に記載の本体によって達成される。好ましい実施態様は従属請求項に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
したがって、本発明はセラミック材料から作られる本体であって、該本体はその一体化部分として表面から所定の深さまで伸びている表面領域を含む。発明によれば、表面領域はマグネシウム成分で豊富化されており、それにより親水性表面部位を形成している。
また、本発明の本体の好ましい態様としては、
セラミック材料から作られる本体であって、
該本体はその一体化部分として本体の表面から所定の深さまで伸びている表面領域を含み、
該表面領域はナトリウム及びカリウムを含まず、
該表面領域はマグネシウム成分で豊富化されており、それにより親水性表面部位を形成しており、
前記マグネシウム成分が表面領域のセラミック材料中に統合されている、本体である。
【0019】
表面領域が所定の深さまで伸びているという事実を考慮すると、本体は―“残りの領域”として―前記表面領域に囲まれた、中核領域をさらに含む。表面領域は本体の一体化部分なので、表面領域と中核領域とは一体的に形成される。
【0020】
一般的に、本発明の文中で使用される用語“豊富化された”とは、残りの領域、すなわち本体の、中核領域よりマグネシウム成分を高い割合で含むセラミック体の表面領域に関する。本文中で使用される用語“割合”とは、セラミック材料の、原子又は分子、それぞれの総数と比較して、いかなる形態(特にイオン形態)のマグネシウムのモル百分率に関する。
【0021】
下記に示されるように、マグネシウム成分の豊富化は、拡散又は浸透による、セラミック本体へのマグネシウム成分の取り込みにより一般に実現される。好ましい実施態様によれば、マグネシウム成分は、上で述べたように、表面領域のセラミック材料に溶け込む。後述するように、マグネシウム成分は好ましくはマグネシウムイオン又は酸化マグネシウム(MgO)である。
【0022】
特に、本発明による本体はインプラントとして、さらに具体的にいうと歯科用インプラントとして使用される。
【0023】
驚くべきことに、本発明のセラミック本体はインプラント又はアバットメント(abutment)が向上した親水性を備えて得られるということが見出された。本発明によって達成される親水性は安定であり;特に、親水性は水溶液における本体の保管の間維持されることが見出された。
【0024】
親水性のこの向上はセラミック表面の向上した骨結合特性に伴う。このことは本発明の本体を歯科用インプラント又はアバットメント(abutment)としての使用に特に適切にする。
【0025】
インプラント又はアバットメント(abutment)と周辺軟部組織との向上した相互作用を考慮すると、向上した親水性はインプラントのアンカー部だけでなく取付け部、特にアバットメント(abutment)、又はそれぞれの中間部に有益である。
【0026】
特に、本発明の文中で使用される用語“親水性の”又は“親水性”とは、90°未満、より好ましくは30°未満、最も好ましくは10°未満である親水性表面部位の接触角に言及する。
【0027】
理論に束縛されることなく、骨結合及び/又は軟組織再生方法の重要な役割を担っている表面の親水性は、特定タンパク質(例えば、フィブリノゲン、血漿フィブロネクチン)の改良された付着や血液凝固により得られた安定化に伴って進行するという事実によってある程度は説明できる。このことは最終的に新しい骨のより速い形成をもたらす。
【0028】
急性の又は慢性の炎症過程を抑えることを含む、速い治癒過程を目的としながら、本発明は、上で述べたように、周囲の骨組織構造とインプラントの密接な接触により、迅速で機械的に安定した骨結合を可能とする。
【0029】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の本体のセラミック材料はジルコニアを含む。ジルコニアセラミックは他の歯科用材料との相互作用を示さず、また電気的に中性である。使用しやすいガム反応のために、また歯垢はこの材料にあまり付着しないように思われるという結果に起因して、材料は炎症の非常に低いリスクを負う。さらに、材料は明色があり、それ故天然歯の色にしっかりと適応できる。
【0030】
最も好ましい実施態様によれば、本発明のインプラントはイットリア安定化ジルコニアを含んでいるセラミックから作られる。一般に、使用されるイットリア安定化ジルコニアは正方相である。イットリア安定化正方晶ジルコニアには高強度、高靱性、及び良好な耐摩耗性がある。
【0031】
イットリア安定化ジルコニアの他には、例えば、アルミナ安定化ジルコニア又はセリア安定化ジルコニアもまた本発明に使用できる。ジルコニア安定化アルミナなどの、他のセラミック材料は考えられる。この関連で、用語“セラミック材料”は、ガラスセラミック材料もまた含むと理解されるべきである。
【0032】
材料の固有特性を妨げずに高い親水性を実現することを考慮すると、表面領域は本体の表面から最大でも約10μm、より好ましくは最大でも約1μm、さらに好ましくは最大でも約500nm、そして最も好ましくは最大でも約200nmの深さに伸びる。親水性を向上すると同時にセラミック材料やその表面トポグラフィーの固有特性を維持するため、この範囲内では、表面領域は十分に薄いと考えられる。したがって、向上した親水性の他に、セラミック材料の他の特性―例えば、本体の外観―は、本質的に不変のままにすることができる。セラミックの機械的性質、上で述べたように、例えば、イットリア安定化正方晶ジルコニアの強度、靱性及び耐摩耗性もまた維持できる。
【0033】
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、マグネシウム成分の割合は、通常、所定の深さから本体の表面に向かって連続的に増加する。言い換えれば、表面領域では、上で述べたように、表面から中核領域に向かって減少しているマグネシウム成分の勾配がある。このことは以下に詳細に開示される本発明の直接的方法がもたらす結果である。結果的に
、マグネシウム成分が親水性をもたらすために非常に重要である場合には、マグネシウム成分の割合は最も高い。
【0034】
発明のさらに好ましい実施態様によれば、この部分では向上した親水性は特に重要なので、親水性表面部位は骨組織と接触することを目的とする本体の部分に少なくとも形成される。
【0035】
基本的なメカニズムは向上した骨結合を導くメカニズムと異なると思われるけれども、代替的に又は追加的に、インプラントへの軟組織の付着はより高い親水性によって向上されることが見出されているので、親水性表面部位は軟組織と接触することを目的とする本体の部分に少なくとも形成されることもまた考えられる。
【0036】
特に好ましい実施態様によれば、親水性表面部位は本体の全表面に形成される。上記のように、親水性表面部位は本体の一部にのみ形成されることもまた考えられる。
【0037】
親水性表面部位の少なくとも一部は表面粗さ、すなわち、粗面、特に欧州特許出願公開第1982670号に準じる欧州特許出願公開第1982671号に記載されているような方法によって得られるような、微視的粗さと巨視的粗さとの組み合わせを有することがさらに好ましい。微視的粗さをもたらすための詳細な説明は欧州特許出願公開第1982670号、特に段落[0024]乃至[0030]、[0060]乃至[0064]及び[0079]乃至[0081]に載っており、それらの開示内容は参照することにより本明細書に含まれる。
【0038】
微視的及び巨視的表面粗さの記載された組み合わせはインプラントの高い骨結合特性に寄与する。
【0039】
上述の本体に加えて、本発明はさらに本体の親水性を向上する方法に関する。該方法は次の工程
a)マグネシウム塩、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、金属マグネシウム及びゲルを含有しているマグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1つのマグネシウム化合物を基礎のガラスセラミック本体の表面上に塗布すること;
b)基礎のセラミック本体
をその表面に塗布されたマグネシウム化合物
とともに200℃より高い温度で熱処理して、それによりマグネシウム化合物ベースのマグネシウム成分がセラミック材料に拡散すること
を含む。
したがって、水溶液で洗い流すことはマグネシウム成分を除去しないという意味で、マグネシウム成分とセラミック体との安定した結合が形成される。
【0040】
加熱処理b)の温度は好ましくはマグネシウム化合物の熱分解温度を超える温度に設定される。一般的に、加熱処理b)の温度は約250℃乃至約1650℃、好ましくは約600℃乃至約900℃の範囲内である。
【0041】
当然のことながら、温度はまた基礎の本体の各セラミック材料に左右される。例えば、東ソー(Tosoh)又はMZ111型の材料(当業者に知られている)、及び予備焼結された基礎の本体に対して、加熱処理b)の温度は異なる可能性がある。加熱処理の温度は好ましくは約250℃乃至約1650℃、より好ましくは約600℃乃至約1500℃、そして最も好ましくは約800℃乃至約1350℃である。
【0042】
本発明の文中において、用語“マグネシウム化合物”はセラッミク体に塗布されるマグネシウム種に使用される一方で、用語“マグネシウム成分”はセラミック体に拡散し、そ
してそれにより本体の表面領域に統合されるマグネシウム種に使用される。
【0043】
マグネシウムイオン又はMgOはセラミック体に拡散するための好ましい成分であるので、基礎のセラミック体の表面に塗布されるマグネシウム化合物は、好ましくは熱処理の間にMgOを形成する化合物である。さらに、マグネシウムイオンは同様にセラミック体に拡散することが好ましい。特に好ましい実施形態によれば、MgO、MgCO
3、Mg
(NO
3)
2及びMgSO
4の群から選ばれるマグネシウム塩が使用される。本発明に適し
ているさらなるマグネシウム化合物としては、例えば、クエン酸マグネシウムや酢酸マグネシウムが挙げられる。
【0044】
表面トポグラフィーに影響を与えることなく、マグネシウムをセラミック本体に拡散させるので、MgCO
3の使用が特に好ましい。歯科用インプラントへの使用を考慮すると
、表面を粗面化することによりもたらされる骨結合特性は、上で述べたように維持される。
【0045】
さらに好ましいマグネシウム成分として、MgCl
2は特に高い親水性をもたらすこと
が示されている。
【0046】
MgO、MgCO
3、Mg(NO
3)
2、MgSO
4やMgCl
2などの、マグネシウム化
合物の塗布は、例えば、浸漬(soaking)/液浸、浸し塗(dipping)又はドロップキャスティング(drop casting)によって、粉体への埋め込みによって、スピンコーティング、電気泳動法、サンドブラスティングの使用によって、又はプラズマ侵入イオン注入法(PIII)によって実施できる。
【0047】
上記方法に代えて、マグネシウム化合物の他の塗布方法としては、マグネシウム含有ゲルの塗布、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)及び原子層蒸着(ALD)が挙げられる。それに関して、PVDが特に好ましく、そのために好ましくは、MgOは表面上に直接スパッタされる。またMgOは酸素バックグラウンド圧力と組み合わせてマグネシウムをスパッタすることにより表面に形成される。
【0048】
マグネシウム成分はセラミック材料中に拡散するという事実を踏まえると、マグネシウム成分と基礎の本体との間には不連続なコーティングはなく、そしてそれ故不連続な境界はない。その結果として、追加材料の単独のコーティングがセラミック体に適用されたときに、マグネシウム成分は一般的に見られるので、マグネシウム成分を分離すること又は洗い落とすことはない。
【0049】
したがって、本発明の方法はとても簡単な方法でマグネシウム成分を本体の中へ統合することができる。本体の材料と統合したマグネシウム成分は、チタニウムや上で述べたように工程b)に従う熱処理によってマグネシウム成分の拡散が得られない材料に関して、欧州特許出願公開第1847278号の内容との違いが明確である。
【0050】
セラミック材料中へのマグネシウム成分の十分な拡散を実現する実際の温度は、使用される特定のセラミック材料及びマグネシウム成分によって決まる。述べたように、MgO及び/又はMgイオンは分散してセラミック体中に組み込まれるのに好ましい成分である。
【0051】
マグネシウム成分の拡散の深さは、工程b)に従う熱処理の温度及び時間を適切に設定することにより、調整できる。本発明の内容を知った当業者であれば、拡散の望ましい深さを得るための、これらのパラメーターの設定の仕方を知っている。
【0052】
一般に、本発明の本体は焼結処理を使用しながら調製される。この点において、方法の工程a)、すなわちマグネシウムの塗布は(予備焼結された)白色の本体上に行われ、その後、最終的な焼結温度に付され、また上で述べたように工程b)に従う熱処理にもまた同時に付されると考えられる。
【0053】
発明のさらに好ましい実施態様によれば、熱処理後に非特異的に結合された、残留マグネシウム化合物の歯科用インプラントを洗浄する。この洗浄工程は好ましくは純粋又は例えば、NaCl溶液のような水溶液、又は他の液体で歯科用インプラントを洗い流すことにより行われる。特に塗布されたマグネシウム化合物が固形である場合、気流、ブラッシング及び/又は研磨などの、他の洗浄方法は除去のために行われる。
【0054】
洗浄工程の効率は超音波を使用することにより向上される。それによって、表面上に軽く付着する粒子、粒子の塊又は反応生成物は効果的に除去される。別法として、酸洗浄も可能である。
【0055】
熱処理され、そして上記の洗浄工程に付される歯科用インプラントは親水性表面を有し、また生物活性がある。
【0056】
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、方法はマグネシウム化合物を塗布する前に本体の表面の少なくとも一部をサブトラクティブ処理により粗面化する工程を含む。サブトラクティブ処理は2つの連続的に粗面化する工程:例えば、酸エッチングによって、微視的な表面粗さをもたらす第二工程前に、例えば、サンドブラスティングによって、巨視的な表面粗さをもたらす第一工程を含むことが、この文中においてさらに好ましい。この点において、サブトラクティブ処理は欧州特許出願公開第1982670号の段落[0055]乃至[0064]に従う方法に言及され、それらの開示内容は参照することにより本書に含まれる。
【0057】
特に、粗面化する工程は最終的な焼結工程後に行われ、そして最終的な焼結工程は予備焼結された白色の本体上にカルシウム化合物を塗布した後に実行される。
【0058】
上記のように、本発明によって達成される目的はインプラント学、特に口腔インプラント学の分野で特に有用である。本発明は上で述べたようにインプラント、特に歯科用インプラントとしての本体の使用にさらに関する。
【0059】
本発明は同様にそのようなインプラント用のアバットメント(abutment)としての本体の使用に関する。インプラント、特に歯科用インプラントに対して上述した全ての特徴及び利点は、同様にアバットメント(abutment)にも当てはまる。
【0060】
本発明は以下の実施例を通じてさらに説明される。
【実施例】
【0061】
試料の調整
機械加工された表面、約1mmの厚さ及び約5mmの直径を有するイットリア安定化ジルコニアのディスク(CeramTec AG製のMZ111 HIP)を使用した。
ディスクを、超音波を使用しながらDeconex 15 PFで5分間清浄し、プラズマ処理に付した。具体的には、プラズマ処理は次のパラメーター:出力35W、6sccm酸素ガスフロー[sccm:立方センチメートル毎分;1sccm=常圧(すなわち、1013mbar)で1cm
3/分、圧力≒0.1mbar、時間2.5分]を使用し
ながら、“フェムト(Femto)”(Diener Electronics Gmb
H + Co.KG,Ebhausen)型の装置を用いて行った。
1:1の質量比でMgCO
3を水と混合して調製したMgCO
3スラリーを約1乃至2mmの厚さでディスクに塗布した。
その表面に塗布されたスラリーを付けたディクスを2時間1150℃で加熱し、その後空気中で冷却した。冷却した試料をその後、純粋を使用しながら洗い流し、アルゴン気流下乾燥した。
ディスクの表面の化学組成及び表面領域を、X線光電子分光法(XPS)を使用しながら測定した。XPS分析には、材料の深さの関数として正規化された原子百分率の測定が含まれる。この目的を達成するために、試料の表面材料を、アルゴンスパッタガンを使用しながら取り去り、そして異なる深さでXPSスペクトルを取った。スパッタリングの間、材料を均質に取り去るため、試料を回転した。
【0062】
接触角(CA)
3つの試料に対して、接触角を液滴法(EasyDrop DSA20 E,Kruss GmbH)に従い、純粋を用いて測定した。0.3μLの滴径を選んだ。接触角は円形断片関数(circular segment function)を表面上に置かれた液滴の外形に適合することにより計算した[“円適合法(circle fitting method)”]。
実験室の空気に暴露した時間の関数としての接触角の結果を以下に示す:
【0063】
【表1】
【0064】
化学組成
XPSによって決定された通りに、ディスクの化学組成(すなわち、表面から所定の深さでの各元素の原子百分率)を以下に示す:
【0065】
【表2】