【実施例】
【0022】
(実施例1)
塩基性アモノサーマルプロセスによって合成された窒化バナジウム粒子を、アノード電極およびカソード電極の両方のために使用する。粒径は100nm未満であり、これは10m
2/gより大きい比表面積を提供する。窒化バナジウム粒子を、通常の伝導性粉末材料(例えば、黒鉛粉末)および結合剤と混合し、溶媒に分散させ、そして電気端子ワイヤと共にアルミ箔上でコーティングする。任意のコーティング方法、例えば、ディップコーティング、スプレーコーティング、および印刷を使用することができる。電極/アルミ箔をベーキングした後、窒化バナジウム粒子を含有するコーティングされた膜は、当初の粉末に近い比表面積を有する多孔性膜を形成する。2つの電極は、これらの間のコンデンサグレードの多孔性紙のセパレーターと係合される。絶縁シートを、アノード箔の裏面に付着させる。絶縁シートを使用する代わりに、アルミ箔の裏面上に絶縁酸化膜を形成することができる。次いで、全アセンブリーを、希KOH中に浸漬し、ローリングし、アルミニウムでできた円柱状ハウジング中に置く。電極端子リードワイヤを、適当なゴムまたはプラスチックのブッシングを使用してハウジングから取り出し、ハウジングを注意深く蓋で密封する。必要に応じて、孔を空けたゴムまたはプラスチックのキャップを使用した通気機構を使用し得る。
【0023】
(実施例2)
実施例1において全アセンブリーをローリングする代わりに、複数のセットのコンデンサアセンブリーを、電気的にこれらを接続することによって積み重ね、希薄KOH中に浸漬し、ボックスハウジング中に置く。適当なゴムまたはプラスチックのブッシングを使用して最外側の電気端子ワイヤをハウジングの外側に取り出した後、蓋を注意深く締め付ける。必要に応じて、孔を空けたゴムキャップを使用した通気機構を使用し得る。
【0024】
(実施例3)
窒化バナジウムを使用する代わりに、窒化バナジウム−窒化ニオブ(vanadium−niobium nitride)粒子を使用して、電極材料の安定性を増強する。
【0025】
本発明における遷移金属窒化物の合成の方法は、超臨界アンモニアを利用し得る。132.4℃および11.28MPaの臨界点を超えて、アンモニアは超臨界状態となり、これは液体と気体との間の状態である。任意選択で、しかし望ましくは、強力な還元性鉱化剤、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアルミニウムを有する超臨界アンモニアは、遷移金属窒化物を形成することができることを本発明者らは見出した。
【0026】
遷移金属を含有する原料物質は、特定の目的を達成するのに有効な量の遷移金属を含有する。例えば、基材は、窒化物に変換し得る遷移金属の層でコーティングされてもよく、その結果、表面層は、熱バリアまたは摩耗保護表面として有効であり得る。別の例は、粒子が、窒化物への変換によって触媒活性であるか、またはウルトラキャパシタ内に形成されたときに特定の量の電荷を担持する、ある量の遷移金属を含有し得る。原料物質は、10重量パーセント超の遷移金属を含有し得る。
【0027】
この工程は、ある場合においては、閉鎖した反応器における1ステップ工程でよく、一定流量のアンモニアを必要としない。工程温度、圧力、鉱化剤および時間を変化させることによって、層厚さまたは粒径を、ナノスケールからミクロンスケールに制御することが期待される。したがって、このようなバッチ工程によって、反応材料の全てを高圧反応器中に置き、反応が完了した後、生成物を反応器から分離することを可能とし得る。
【0028】
上記工程は、別の場合において、アンモニアの一定流量によって、または高圧反応器へのアンモニアの周期的添加によって行ってもよい。したがって、このようなセミバッチ工程によって、反応材料、例えば、原料物質および任意選択の鉱化剤のいくらかを、反応器に最初に加え、アンモニアを連続的または周期的に反応の間に加えることを可能とし得る。さらに、供給源または鉱化剤は、代わりにまたはさらに、連続的または周期的に、反応の間に反応器に加え得る。
【0029】
図4において図示するような標準的工程を、
図3に示す。記載したような標準的工程は、高圧反応器3100を使用する。遷移金属3600を含有する原料物質を、鉱化剤と一緒に高圧反応器3100中に置く。鉱化剤は酸素と高度に反応性であるため、窒素またはアルゴンで充填されたグローブボックスにおいて作動させることが好都合である。蓋3200は、ガス吸入ポート3201を有し、これは高圧バルブ3202に接続している。原料物質3600および鉱化剤を高圧反応器3100中にチャージした後、ガスケット3300を使用して蓋3200を閉鎖し、高圧でのアンモニアの漏れを防止する。高圧バルブ3202をまた閉鎖する。次いで、高圧反応器3100をグローブボックスから取り出し、高圧バルブ3202をガス/真空ラインに接続する。高圧バルブ3202を開放することによって、高圧反応器3100を、ガス吸入ポート3201を通してポンピングする。十分な真空レベルを達成した後、高圧反応器3100を液体窒素で外部から冷却し、ガス吸入ポート3201を通してガス状アンモニアで充填する。高圧反応器3100において、ガス状アンモニアを液相に濃縮させる。代わりに、十分な圧力を加えることによって、液体アンモニアを高圧反応器3100に直接導入し得る。所定の量の液体アンモニアを満たした後、高圧バルブ3202を閉鎖し、ガス/真空ラインから切り離す。高圧反応器3100を炉に移し、外部から加熱する。高圧反応器3100は密封してあるため、加熱したアンモニアにより自己加圧され、アンモニアは超臨界状態に達する。鉱化剤をアンモニアに溶解し、アンモノ塩基性溶液3500を生じさせる。高圧反応器3100内の遷移金属3600を含有する原料物質を、アンモノ塩基性溶液3500で窒化する。所定の時間の後、高圧バルブ3202を開放することによってアンモニアを放出する。高圧反応器3100を冷却した後で、遷移金属窒化物を高圧反応器3100から取り出す。遷移金属窒化物を水ですすぎ、鉱化剤を除去する。最後のステップによって、遷移金属窒化物の上面上に酸化薄層が生じる。
【0030】
合成される金属窒化物に基づいて、鉱化剤を選択することができる。ナトリウム金属を一般に使用するが、より高い反応性が必要とされる場合、カリウムベースの鉱化剤を選択してもよい。逆に、より穏やかな反応性が好ましい場合、リチウムベースの鉱化剤を選択してもよい。さらにより穏やかな反応性が好ましい場合、マグネシウムまたはカルシウムベースの鉱化剤を選択し得る。また、酸素の除去が鉱化剤の第一の目的である場合、金属カルシウム、アルミニウムまたはマグネシウムが、鉱化剤に適切であり得る。これらの材料の混合物をまた使用して、反応を制御し得る。
【0031】
(実施例4)
概ね直径13mmのバナジウム箔および2.6gのNaを、グローブボックスにおいて127ccの内部体積を有する高圧反応器中に置いたが、その中で酸素および水分濃度を0.1ppm未満にレギュレートする。次いで、高圧反応器を密封し、反応器中の窒素を、ガス吸入ポートを通してターボ分子ポンプによって排除した。反応器を10
−6ミリバール未満にポンピングした後、液体窒素中に反応器を浸すことによって反応器を冷却し、ガス吸入ポートを通してガス状無水アンモニアを反応器中に導入した。概ね43.7gの液体無水アンモニアを反応器中で濃縮した。次いで、密封した反応器を炉に移し、530〜535℃で5日間加熱した。このように得られた圧力は、167MPa(24,170psi)であった。工程の後、バナジウム箔は、金色がかった色を示したが、これはバナジウム箔の表面が窒化されたことを示す。V
2O
5の黄色がかった粉末を出発材料として使用したとき、黒色の粉末(VNであると予測される)が得られた。
【0032】
(実施例5)
実施例1と同様の実験を、モリブデンおよびチタンについて行い、これらの金属において色の変化を確認した。
【0033】
(実施例6)
実施例1と同様の実験を、ガス吸入ポートおよび高圧バルブを有する高圧反応器で行う。工程の間に、加圧アンモニアを供給し、工程の間に消費されたアンモニアを補充する。
【0034】
(実施例7)
同様の高圧反応器を使用して、バナジウムを含有するツールまたはパーツを、金属の表面を窒化することによって遷移金属窒化物でコーティングする。また、これらのツールまたはパーツを、アモノサーマルプロセスの前に金属バナジウムでコーティングし、遷移金属窒化物のより厚い保護層を形成する。
【0035】
(実施例8)
高圧反応器は、逐次的に鉱化剤およびアンモニアと共にその中に置かれた下記の粒子を有する。ニオブ、スズ、インジウム、白金、タンタル、ジルコニウム、銅、鉄、タングステン、クロム、モリブデン、ハフニウム、チタン、バナジウム、コバルト、マンガン、セリウム、水銀、プルトニウム、金、銀、イリジウム、パラジウム、イットリウム、ルテニウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムおよびニッケル。反応器を加熱し、アンモニアを、高圧反応器内で超臨界状態に置く。それぞれの窒化ニオブ、窒化スズ、窒化インジウム、窒化白金、窒化タンタル、窒化ジルコニウム、窒化銅、窒化鉄、窒化タングステン、窒化クロム、窒化モリブデン、窒化ハフニウム、窒化チタン、窒化バナジウム、窒化コバルト、窒化マンガン、窒化セリウム、窒化水銀、窒化プルトニウム、窒化金、窒化銀、窒化イリジウム、窒化パラジウム、窒化イットリウム、窒化ルテニウム、窒化ランタン、窒化セリウム、窒化プラセオジム、窒化ネオジム、窒化プロメチウム、窒化サマリウム、窒化ユウロピウム、窒化ガドリニウム、窒化テルビウム、窒化ジスプロシウム、窒化ホルミウム、窒化エルビウム、窒化ツリウム、窒化イッテルビウム、窒化ルテチウムおよび窒化ニッケルのナノ粒子を得る。工程温度を調節することによって、遷移金属窒化物の好ましい相を得ることができた。
【0036】
利点および改善
本発明は、無視できる量のハロゲン化物不純物を有する遷移金属窒化物を使用したウルトラキャパシタを開示する。遷移金属窒化物は好ましくは、ハロゲン化物を含有しない塩基性アモノサーマルプロセスによって合成され、ここでは遷移金属供給源は、反応器中に給送されるときに遷移金属ハロゲン化物を殆ど含有しないか、または全く含有せず、溶媒は、今日商業的に購入され得るようなハロゲン化物を含有しないアンモニアを含み、任意選択の鉱化剤は、ハロゲン化物を殆ど含有しないか、または全く含有しない。この構成の利点は、下記の通りである。
1)電極材料のために遷移金属窒化物粒子を使用することによって高い比エネルギー密度を達成すること。
2)ハロゲン化物不純物による金属部品の潜在的腐食を回避することによって高い信頼性を達成すること。
【0037】
本発明はまた、下記の利点の1つまたは複数を有する遷移金属窒化物を生成する新規な方法を開示する。
1)閉鎖した反応器システムによって高度にコスト競争力がある。
2)超臨界アンモニアの高い反応性によって、複雑な構造の表面上に窒化物層を形成することができる。
3)超臨界アンモニアの高い反応性によって、窒化物粒子を形成することができる。
4)好ましくない不純物、例えば、ハロゲンが存在しない。
【0038】
参照文献
本願において考察した全ての参照文献は、参照により本明細書中に援用される。
[1]米国特許出願第2008−0180881A1号。
[2]米国特許出願第2011−0149473A1号。
[3]Patrice SimonおよびYury Gogots、Nature Materials、第7巻(2008年)、845頁。
[4]D.Choi、G.E.BlomgrenおよびP.N.Kumta、Advanced Materials、18巻(2006年)1178頁。
[5]米国特許出願第US2010−0019207A1号。
【0039】
結論
これで、本発明の好ましい実施形態の記載を終了する。下記は、本発明を達成するためのいくつかの代替の実施形態を記載する。
【0040】
実施例は、窒化バナジウムまたは窒化バナジウム−窒化ニオブの粒子を含有する電極を記載したが、他の遷移金属窒化物、例えば、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化クロム、窒化モリブデン、窒化マンガン、窒化鉄、窒化コバルト、窒化ニッケルを使用することができる。
【0041】
実施例は、金属箔のためのアルミ箔を記載したが、他の金属箔、例えば、銅箔および銀箔を使用することができる。
【0042】
実施例は、多孔性紙のコンデンサグレードのシートをセパレーターとして記載したが、他のポリマー材料、例えば、セルロースメッシュを使用することができる。
【0043】
実施例は、希KOHを電解質として記載したが、他の一般に使用される物質、例えば、炭酸プロピレン、アセトニトリル、ホウ酸、ホウ酸ナトリウムまたは他の弱酸(ジプロピルケトン、氷酢酸、乳酸、プロピオン酸、酪酸、クロトン酸、アクリル酸、フェノール、クレゾールなど)を、塩(酢酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、酢酸アルミニウム、乳酸カルシウム、シュウ酸アンモニウム、過ホウ酸ナトリウム、リン酸三ナトリウムなど)、および溶媒(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレングリコール、グリセロールなど)を加えて使用することができる。実施例は、窒化バナジウム、窒化モリブデンおよび窒化チタンを合成する方法を記載するが、他の遷移金属窒化物、例えば、窒化クロム、窒化スカンジウム、窒化ジルコニウムを同じ方法で合成することができる。また、遷移金属窒化物の合金を、同じ方法で合成することができる。
【0044】
実施例は、窒化バナジウム、窒化モリブデン、および窒化チタンの箔の合成を記載するが、遷移金属窒化物の他の形態、例えば、ナノ結晶性粒子、微結晶性粒子、薄層、およびバルク単結晶を、同じ方法で生成することができる。また、遷移金属窒化物の低温相、例えば、Fe
16N
2を好ましくは、合成し得る。
【0045】
実施例は、Naを鉱化剤として使用した合成方法を記載するが、他のアルカリ金属、アルカリ土類金属またはアルミニウムを、鉱化剤として使用することができる。また、2種または2種より多い鉱化剤の混合物を使用することができる。
【0046】
好ましい実施形態は、特定の温度および圧力における合成方法を記載するが、アンモニアが超臨界状態である限り、他の温度および圧力の設定を使用することができる。
【0047】
好ましい実施形態は、特定の形状の高圧反応器を使用した合成方法を記載するが、他のタイプの高圧反応器、例えば、2つの蓋を有するもの、外部高圧ポンプを有するもの、供給源、鉱化剤またはアンモニアの一定の給送を可能とする高圧吸入ポートを有するものを使用することができる。