(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095660
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】多重エマルジョン
(51)【国際特許分類】
A61K 9/113 20060101AFI20170306BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20170306BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20170306BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20170306BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20170306BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20170306BHJP
A61K 33/06 20060101ALI20170306BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20170306BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20170306BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20170306BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20170306BHJP
A61K 8/894 20060101ALI20170306BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20170306BHJP
C12N 15/00 20060101ALN20170306BHJP
【FI】
A61K9/113ZNA
A61K47/02
A61K47/14
A61K47/34
A61K31/711
A61K31/7088
A61K33/06
A61P29/00
A61K8/06
A61K8/86
A61K8/37
A61K8/894
A61Q19/00
!C12N15/00 Z
【請求項の数】20
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2014-524344(P2014-524344)
(86)(22)【出願日】2012年8月2日
(65)【公表番号】特表2014-527049(P2014-527049A)
(43)【公表日】2014年10月9日
(86)【国際出願番号】EP2012065200
(87)【国際公開番号】WO2013020899
(87)【国際公開日】20130214
【審査請求日】2015年7月31日
(31)【優先権主張番号】102011109868.6
(32)【優先日】2011年8月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512210102
【氏名又は名称】ステルナ ビオロジカルス ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ルンケル, フランク
(72)【発明者】
【氏名】シュミッツ, トーマス
【審査官】
山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】
仏国特許出願公開第02848420(FR,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0025363(US,A1)
【文献】
特表2008−530126(JP,A)
【文献】
特表2002−520348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/113
A61K 8/06
A61K 8/37
A61K 8/86
A61K 8/894
A61K 31/7088
A61K 31/711
A61K 33/06
A61K 47/02
A61K 47/14
A61K 47/34
A61P 29/00
A61Q 19/00
C12N 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤又は化粧品の少なくとも1種の活性成分を利用するための多重エマルジョンであって、
外水相W1、前記外水相W1中に分散する油相O、及び前記油相O中に分散する内水相W2、前記内水相W2中に供給される、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物、または、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の電解質及び少なくとも1種の親水性活性成分を含み、
・前記外水相W1は酸化エチレン及び酸化プロピレンの重合体である親水性乳化剤を有し、及び
・前記油相Oは、トリアシルグリセリドにより形成され、ジメチコーン群からの親油性乳化剤を有し、
前記少なくとも1種の親水性活性成分は、配列識別番号:1から配列識別番号:148、あるいは配列識別番号:150のうちの1つの配列を持つ少なくとも1種のオリゴヌクレオチドである
ことを特徴とする多重エマルジョン。
【請求項2】
前記親水性乳化剤は、ポロキサマーであることを特徴とする請求項1に記載の多重エマルジョン。
【請求項3】
前記親油性乳化剤は、ポリエーテル及びアルキル基を持った線形ジメチコーンであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多重エマルジョン。
【請求項4】
前記トリアシルグリセリドは、飽和脂肪酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多重エマルジョン。
【請求項5】
前記電解質は、NaCl、MgSO4又はNaClとMgSO4との混合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の多重エマルジョン。
【請求項6】
前記親水性活性成分は、MgSO4であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の多重エマルジョン。
【請求項7】
前記多重エマルジョンは1種以上の保存剤を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の多重エマルジョン。
【請求項8】
前記分散油相の前記滴径は、1μm〜100μmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の多重エマルジョン。
【請求項9】
飽和炭化水素は、前記油相中に存在することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の多重エマルジョン。
【請求項10】
前記親水性乳化剤は、前記外水相W1中に0.1〜5重量%の量で存在することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の多重エマルジョン。
【請求項11】
前記油相O及び前記内水相W2からなるW/O一次エマルジョンに基づき、前記親油性乳化剤は、0.1〜6重量%の量で存在することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の多重エマルジョン。
【請求項12】
前記油相O及び前記内水相W2からなるW/O一次エマルジョンに基づき、前記トリグリセリドは、5〜30重量%の量で存在することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の多重エマルジョン。
【請求項13】
前記油相O及び前記内水相W2からなるW/O一次エマルジョンに基づき、前記電解質は、0.1〜3重量%の量で存在することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の多重エマルジョン。
【請求項14】
前記親水性活性成分は、前記多重エマルジョンの総量に基づき、0.01〜10重量%の量で存在することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の多重エマルジョン。
【請求項15】
・前記親水性乳化剤は、前記外水相W1中に0.1〜5重量%の量で存在すること;及び
・前記油相O及び前記内水相W2からなるW/O一次エマルジョンに基づき、前記親油性乳化剤は、0.1〜6重量%の量で存在すること:及び
・前記W/O一次エマルジョンに基づき、前記トリグリセリドは、5〜30重量%の量で存在すること;及び
・前記油相O及び前記内水相W2からなるW/O一次エマルジョンに基づき、前記電解質が0.1〜3重量%の量で存在すること;及び
・前記多重エマルジョンの総量に基づき、前記親水性活性成分が0.01〜10重量%の量で存在すること;及び
・前記外水相W1中及び/又は前記内水相W2中に存在する保存剤は、0〜20重量%の量で存在すること
を特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の多重エマルジョン。
【請求項16】
薬剤、医薬品又は化粧品を製造するための、請求項1〜15のいずれか1項に記載の多重エマルジョンの使用。
【請求項17】
前記多重エマルジョンは、薬物媒体として使用されることを特徴とする請求項16に記載の使用。
【請求項18】
局所に適用するための、又は粘膜を介して前記活性成分を利用するための、又は前記活性成分を腹腔内で利用するための請求項1〜15のいずれか1項に記載の多重エマルジョンを含む薬剤。
【請求項19】
薬物媒体を有する薬剤であって、
前記薬物媒体は、請求項1〜15のいずれかに記載の多重エマルジョンからなる薬剤。
【請求項20】
炎症性疾患を治療するための請求項1〜15のいずれか1項に記載の多重エマルジョンを含む薬剤。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、請求項1の前提文(プレアンブル)に記載の多重エマルジョン、請求項17に記載の薬剤、医薬品又は化粧品を製造するための多重エマルジョンの利用、及び請求項19又は21に記載の多重エマルジョンを含む薬剤に関する。
【0002】
多重の水中油中水型エマルジョン(W/O/Wエマルジョン)は、外水相と、その中に分散した油中水型エマルジョンとを含み、そのため全体として油中水型エマルジョンと水中油型エマルジョンとが共存する複雑なシステムとなっている。
【0003】
多重エマルジョンは、その保有する特性によって、薬剤、又は化粧品活性成分の利用に適しており、また多重エマルジョンの内水相には、特に感度の高い活性成分を取り込むことができる。これによって活性成分を外部からの影響や劣化から守ることができるのみならず、外部への放出を遅らせることができる。
【0004】
すでに種々の多重エマルジョンが従来技術において開示されている。しかしながら、これら従来の多重エマルジョンにおける基本的な問題点の1つは、水相と油相との間の境界相に界面(インターフェイス)が存在するために、しばしば不安定となることである。その結果、粘性、層分離や層転換の急激な変化、又は多重性の喪失が時間の経過とともに発生する恐れがある。
【0005】
多重エマルジョンの安定性は複数のパラメータによって影響を受ける。例えば、シュミットら(T.Schmidts,D.Dobler,P.schlupp,C.Nissing,H.Garn,F.Runkel,「薬学の国際ジャーナル(International Journal of Pharmaceutics)」 398(2010)107−113)は、油相内に分散した内水相の組成が多重エマルジョンの安定性に及ぼす影響について記載している。また乳化剤の選択は安定性に特に大きな影響を及ぼすのみならず、電解質の性質もまた明らかに影響を与えることが見出された。多層エマルジョンの組成が変化する場合には、変化するかどうか、またもし変化してもどのように変化するのかを判断するのは不可能であるが、多重エマルジョンの安定性、粘性、滴径などの特性は影響を受ける。この理由で、多重エマルジョンは、その成分及び組成が特定の使用に対して設計されており、通常はその構成材を修正又は置換しても他に使用することはできない。これは、特に乳化剤、電解質及び様々な相の一次成分など、不可欠な成分が影響を受ける場合に適用される。
【0006】
しかしながら、配合の安定性は、常に感性の高い活性成分を利用するために使用される多重エマルジョンにとっては特に重要である。これは、活性成分は、最も内側の相に捕捉され、かつこの相位置が相分離又は相反転によって変化しない場合にのみ、有害な外部の影響から効果的に保護を受けることができるからである。
【0007】
内水相W
2中に封入された活性成分を保護するためには、エマルジョンの相安定性を保つことが基本的な必須要件であるが、それに加えて、拡散特性のような他の性質もまた重要な要件となる。例えば、外部からの「有害物質」がこの相内に紛れ込んだ場合には、活性成分自体が内相に残らないとしても、封入された活性成分は変質してしまう。
【0008】
局所に適用する場合には、ある種の活性成分は予め皮膚に存在する天然成分によって損傷を受ける。このことは、例えば、皮膚上に存在する酵素による酵素消化によって変質するような場合に当てはまる。これらには、特にペプチド及び核酸基化合物(核酸基化合物をベースとするポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドなど)が含まれるが、偏在するヌクレアーゼ又はペプチダーゼにより早期に分解される。しかしながら、疾病の治療のためにこのような化合物を使用することは、ここ数年来重要性を高めている。アンチセンスーオリゴヌクレオチドや、またリボジーム、RNAi、siRNA及び特にDNAザイム(DNAzyme)は、例えば、蛋白質のRNAの翻訳を抑制することによって、標的細胞において蛋白質の形成を抑制するために使用することができる。DNAザイムは、自然には発生しないリボザイムとは反対に、酵素作用を示す一本鎖DNA分子を意味するものと理解されている。しかしながら、これらのヌクレオチド活性含有物は、環境条件に対して極めて敏感であり、適切な媒体の助けなしでは、しばしば劣化をせずに反応サイトに達することができない、という問題がある。
【0009】
このような感度の高い活性成分に対する効果的な保護を確実に継続して行うことのできる十分に長期安定性を持った多重W/O/Wエマルジョンは、少なくともこれまでは、従来技術では知られていない。
【0010】
さらに、今まで存在している従来のW/O/Wエマルジョンの問題点は、これらが困難性を伴う大規模生産にのみ適していることである。またしばしば細菌汚染に対するW/O/Wエマルジョンの保護もなされていない。その結果、少なくとも前記活性成分の1種のみを極端な条件付きで利用しているに過ぎない。
【0011】
従って、本発明の目的は、これらの従来技術の欠点を克服し、活性成分を利用する多重エマルジョンを提供することにある。多重エマルジョンは、特に高い安定性を持ちかつ活性成分を外部の影響から効果的に保護する必要があり、その一方エマルジョンを細菌汚染から保護することができなければならない。さらにエマルジョンは、大規模生産するのに容易で費用の点で効果的であるべきである。
【0012】
本発明の主な特徴は、請求項1、17、19及び21の特徴部分に記載されている。実施形態は従属請求項の主題となっている。
薬剤又は化粧品の少なくとも1種の活性成分を利用するための多重エマルジョンであって、多重エマルジョンは、外水相W
1、外水相W
1 中に分散する油相O、及び油相O中に分散する内水相W
2を含み、アルカリ金属及びアルカリ土類金属ハロゲン化物及び硫酸塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の電解質と、少なくとも1種の親水性活性成分とが内水相W
2中に供給され、本発明によれば、
・外水相W
1は酸化エチレン及び酸化プロピレンの重合体である親水性乳化剤を含み、
・油相Oは、トリアシルグリセリドにより形成され、ジメチコーン群からの親油性乳化剤を含む。
【0013】
本発明の多重エマルジョンは、特定の組成を有することにより特に高い安定性を有する。このことは、大規模生産に至るまで又は大規模生産での製造中における安定性、及び長期安定性の双方に対して当てはまる。
【0014】
別の利点は、本発明による多重エマルジョンは単純な組成であるので、少数の異なる構成材により単純で費用効果の高い生産を可能にする。さらに、本発明によるエマルジョンの全ての構成成分は、最大限に低刺激性であり、それらを皮膚に使用できることはすでに立証済みである。さらに、全ての構成成分は極めて高い純度で容易に入手可能である。
【0015】
さらに本発明による多重エマルジョンは、特定の組成を有するので、内水相W
2中に捕捉された感度の高い活性含有成分をとりわけ高度に保護する。
本発明により供給された特別な組合せの含有成分の結果として、特にトリアシルグリセリドからなる油相と共に供給された乳化剤の組合せの結果として、種々の他の添加物に対して比較的高い耐性を持つ多重W/O/Wエマルジョンを供給することができる。これは、任意で所望される改質及び/又は微調整について許容範囲を創出する。エマルジョンの安定性を損なうことなく、細菌汚染から保護するための種々の保存剤を添加することができるという点において、特に大きな利点がある。
【0016】
本発明の1つの重要な実施形態では、親水性の乳化剤は、ポロキサマーが用いられる。ポロキサマーは、酸化エチレンと酸化プロピレンのブロック重合体である。親水性の乳化剤としてポロキサマー407を使用することが特に好ましい。
【0017】
本発明の別の重要な実施形態では、親油性の乳化剤としては、ポリエーテル及びアルキル基を持つ線形ジメチコーンが用いられる。ジメチコーンは、ポリエチレングリコール(PEG)基及び/又はポリプロピレングリコール(PPG)基などのポリエーテル基、及びアルキル基を含むが、特に線形ジメチコーンが好ましい。セチルPEG/PPG−10/1ジメチコーン(商品名:Degussa ABIL(アビル)(商標登録)EM90)が親油性乳化剤である場合には、特に良い結果が得られる。上記のジメチコーンを親油性乳化剤として用いることによって、一次W/Oエマルジョンの滴径を極めて良好に調整することができ、またエマルジョンの安定性をかなり改善することができる。さらに、上記ジメチコーンを親油性乳化剤としての用いることは、W/O/Wエマルジョンの滴径を広い範囲にわたり良好に調整することを可能にし、またエマルジョンの安定を可能にする。さらに、このようなエマルジョンの滴径は、もはや長期安定性に影響を与えることはない。その上、必要な添加物に関しては高い耐性を達成することができる。
【0018】
本発明より供給されたトリアシルグリセリドが飽和脂肪酸のエステル、好ましくは中位鎖飽和脂肪酸のエステルであれば、さらに有利である。これらのうち、脂肪酸のエステルが4〜20の炭素原子を有する脂肪酸のエステル、及び特に6〜14の炭素原子を有する脂肪酸のエステルは有利であることが証明されている。
【0019】
特に安定したW/O/Wエマルジョンは以下に示す鎖長構成の1つを持つトリグリセリドによって得ることができる:
1)鎖長構成(ガスクロマトグラフィ):
C鎖長分布C10 20.0−50.0%
C鎖長分布C12<=3.0%
C鎖長分布C14<=1.0%
C鎖長分布C6<=2.0%
C鎖長分布C8 50.0−80.0%
2)鎖長構成(ガスクロマトグラフィ)
カプロン酸C6<=2.0% 0.1%
カプリル酸C8 50.0−80% 55.7%
カプリニン酸C10 20.0−50.0% 43.3%
ラウリン酸C12<=3.0% 0.6%
ミリスチン酸C14<=1.0% 0.0%
本発明の1つの好ましい実施形態では、電解質はNaCl、MgSO
4、又は
NaClとMgSO
4の混合物である。
【0020】
本発明の別の実施形態では、親水性活性成分はMgSO
4である。MgSO
4は、皮膚の状態(コンプレクション)に有利な影響を及ぼす。この活性成分からなる本発明の多重エマルジョンは、その結果、スキンケアを支援しまた神経性皮膚炎の治療に効果を有する。
【0021】
さらに別の重要な実施形態では、親水性活性成分としてオリゴヌクレオチドが提供される。そのようなオリゴヌクレオチドとしては、例えば、DNAザイム、特に触媒ドメインとして配列識別番号:149 ggctagctacaacga を含む10−23DNAザイムがある。触媒ドメインは、ドメインに結合する右及び左の基質に挟まれている。このドメインは、慢性炎症性疾患の情報伝達経路の1つとして含まれるファクタのmRNA配列に配向することが好ましい。例えば、網羅的ではないが、ドメインに結合する右及び左の基質は、以下のファクタの1つをコード化するmRNAに結合することができる:Srcキナーゼ(Src Kinase)、Tecキナーゼ(Tec Kinase)、Rlk、Itk RIBP(Rlk/Itk−結合プロテイン)、PLCg(ホスホリファーゼ Cyl)、MAPキナーゼ、ERK、JNK、P38、MKK、Rac2、GADD45、SOCS、CIS、JAK、NF−AT相互作用蛋白質。
【0022】
本発明による多重エマルジョン中の活性成分として使用するのが好ましいDNAザイムは、従って、一般的な配列識別番号150:nnnnnnnnnggctagctacaacgannnnnnnnnを含む。好ましい例示的な実施形態では、右及び左の基質結合領域は、それぞれ少なくとも基部の長さは9である。しかしながら、勿論、より短いか又はより長い配列も考えられる。
【0023】
蛋白質GATA−3及びT−betのmRNAと結合する基質結合ドメインは、特に好ましい。これらのプロテインの翻訳を阻害することで、T2細胞の反応を抑制し、それにより炎症性疾患を抑制する。
【0024】
親水性活性成分は、配列識別番号:1〜配列識別番号:148、又は上記の配列識別番号:150のうちの1つの配列を持つオリゴヌクレオチドであることが特に好ましい。勿論記載されるオリゴヌクレオチドの幾つかを同時に使用することも考えられる。DNAザイムの触媒ドメインは、小文字(英字)で、また結合ドメインは大文字(英字)で示される。配列識別番号:1〜配列識別番号:71まではGATA−3のmRNAと結合する。配列識別番号:72〜配列識別番号:148まではT−betのmRNAと結合する。
【0025】
親水性活性成分として、配列識別番号:40、配列識別番号:139、又は配列識別番号:140を持つオリゴヌクレオチドを使用することは特に好ましい。
細菌汚染からエマルジョンを確実に保護するために、1種以上の保存剤を含む多重エマルジョンが供給される。好ましい保存剤として、ソルビン酸カリウム、クエン酸を含むソルビン酸カリウム、ソルビン酸、ベンゾール酸、好ましくはペンチレングリコール、ブチレングリコール及び/又はプロピレングリコールのような多価アルコール、好ましくはメチルパラベン及び/又はプロピルパラベンのようなパラベン類、ならびにフェノキシエタノールがある。保存剤は、外水相W
1及び/又は内水相W
2の中に供給することが好ましく、水量で0〜20重量%を超える量を含ませることが好ましい。
【0026】
さらに1つの重要な実施形態では、分散油相の滴径が、1μm〜100μm、好ましくは5μm〜60μm、特に好ましくは10μm〜30μmとなるように添加される。
使用に際しては、油相に飽和炭化水素が存在すれば有利である。飽和炭化水素は、パラフィン、特に粘性パラフィンが好ましい。
【0027】
外水相W
1中に親水性乳化剤が、0.1〜5重量%、好ましくは、0.3〜3重量%、さらに好ましくは0.5〜1.5重量%、最も好ましくは0.8重量%含まれる場合に、特に有利なエマルジョンを得ることができる。
【0028】
さらに、油相O及び内水相W
2からなるW/O一次エマルジョンでは、親油性乳化剤が、0.1〜6重量% 好ましくは0.5〜4重量%、より好ましくは1〜3重量%、最も好ましくは3重量%含まれる場合に、多重エマルジョンの安定性は極めて高い。
【0029】
トリグリセリドに関して述べれば、油相O及び内水相W
2からなるW/O一次エマルジョンでは、トリグリセリドが、5〜30重量% 好ましくは0〜25重量%、より好ましくは15〜20重量%、最も好ましくは17重量%含まれる場合に、極めて有利である。
【0030】
好ましい実施形態では、油相O及び内水相W
2からなるW/O一次エマルジョンでは、電解質が、0.1〜3重量% 特に好ましくは0.3〜1.5重量%、最も好ましくは0.7重量%含まれる。この電解質の量が活性成分の量に適合される場合には、有利な効果を奏することができる。
【0031】
多重エマルジョンの総量に基づき、親水性活性成分は、0.01〜10重量% 特に好ましくは0.1〜5重量%、最も好ましくは0.4重量%含まれる。
この意味において、本発明による好ましい多重エマルジョンは次の通りである:
・外水相W
1中の親水性乳化剤の含有量は、0.1〜5重量%である;さらに
・油相O及び内水相W
2からなるW/O一次エマルジョンに基づき、親油性乳化剤の含有量は、0.1〜6重量%である;さらに
・W/O一次エマルジョンに基づき、トリグリセリドの含有量は、5〜30重量%である;さらに
・油相O及び内水相W
2からなるW/O一次エマルジョンに基づき、電解質の含有量は、該エマルジョンの0.1〜3重量%である;さらに
・多重エマルジョンの総量では、親水性活性成分の含有量は、0.01〜10%である;さらに
・外水相W
1及び/又は内水相W
2中に含まれる保存剤は、0〜20重量%である。
【0032】
活性成分の高い安定性及び効果的な保護は、特に本発明による多重エマルジョンにより達成されるが、それは、
W/O一次エマルジョンに基づき、
3重量%の親油性乳化剤、特にAbilEM90;
17重量%の油、特に中鎖脂肪;
0.7重量%の電解質、特にMgSO
4*7H
2O;
全部で100重量%となるような水
が存在し、多重エマルジョンに基づき、
80重量%のW/Oエマルジョン;
0.8重量%の親水性乳化剤、特にポロキサマー;
全部で100重量%までとなるような水が存在し、
最終的な多重W/O/Wエマルジョンは、0.4重量%の親水性活性成分、特に上記のDNAザイムのうちの1種のナトリウム塩を含む。
【0033】
さらに、本発明は、薬剤、医薬品又は化粧品を製造するための本発明による多重エマルジョンの使用に関する。多重エマルジョンは、薬物媒体として使用される場合には、特に有利である。薬物とは、医薬用又は化粧品用の活性成分であってもよい。このような方法で、高感度でかつ極めて特定な活性成分を投与するために適切である薬剤を、例えば局所に適用することで、あるいは他の好都合な形態で、提供することができる。このように構成した薬剤は、例えばGATA−3又は他の上記のファクタの1つのような、極めて特定の分子生物学的ファクタによる機能不全に由来する疾病を治療するために、特に大変都合よくできている。
【0034】
別の様相として、本発明はまた、局所に使用をするための、あるいは粘膜を介して活性成分を利用するための、あるいは活性成分を腹腔内で利用するための、本発明による多重エマルジョンからなる薬剤に関する。同様に、多重エマルジョンが薬物媒体である場合には、特に有利である。1つの好ましい実施形態は、炎症性疾患を治療するための薬剤に関する。
【0035】
本発明のさらなる特徴、詳細及び利点については、特許請求の範囲の記述から、及び以下に述べる例示的な実施形態と図面から明らかになるであろう。
以下は図面と配列についてである。
【0036】
配列識別番号:1〜配列識別番号:148
GATA−3又はT−betに結合する10−23DNAザイムの例示的実施形態を示す。
【0037】
配列識別番号:149
10−23DNAザイムの触媒ドメインである。
配列識別番号:150
触媒ドメイン10−23DNAザイムからなるDNAザイムである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明によるエマルジョンの保護機能を立証するための測定データを示す。
【
図2】比較する多重エマルジョンの内部構造を示す。
【
図3】基本配合WOW_1による多重エマルジョンの内部構造を示す(組成については例示的な実施形態、項目2)を参照)。
【発明を実施するための形態】
【0039】
[例示的実施形態]
以下の成分は、指示がない限り、以下に示す例示的実施形態で用いられた。
【0041】
1)一般的な製造方法
以下に記載するエマルジョンは、以下の一般的な製造方法で調製された:
最初に、A、B、Cの3つの相が製造される。A相の製造には、エマルジョンの内水相W
2に提供する組成物、すなわち、例えば、以下のリストに記載される分量で、蒸留水、硫酸マグネシウム七水化物、DNAザイム、ソルビン酸カリウム、及びクエン酸などが混合される。B相の製造には、エマルジョンの油相Oに提供する組成物、すなわち、例えば、以下のリストに記載される分量で、中鎖脂肪酸、及びAbil(登録商標)EM 90などが混合される。C相の製造には、エマルジョンの外水相Cに提供する組成物、すなわち、例えば、以下のリストに記載される分量で、蒸留水、ソルビン酸カリウム、クエン酸及びポロキサマー407などが混合される。
【0042】
その後、A相及びB相は、それぞれ約60℃から70℃まで加熱される。次に、A相をB相に添加し、3分間均一化(ホモジナイザー:約11500rpm)を施し、W/O一次エマルジョンが形成された。W/O一次エマルジョンを撹拌しながら(攪拌機:約500rpm)室温まで冷却し、次にC相と混合した。C相が添加された後、混合物は、一様なエマルジョンが得られるまで撹拌(攪拌機:約1200rpm)及び/又は均一化される(約10分間)。
【0043】
多重エマルジョンを製造するためには、例えば、記載の製造方法を用いるが、その方法では:
・外水相W
1中の親水性乳化剤の含有量は、0.1から5重量%;及び
・油相O及び内水相W
2からなるW/O一次エマルジョンに基づく、親油性乳化剤の含有量は、0.1から6重量%;及び
・W/O一次ベースエマルジョンに基づく、トリグリセリドの含有量は、5から30重量%;及び
・油相O及び内水相W
2からなるW/O一次エマルジョンに基づく、電解質の含有量は、0.1から3重量%;及び
・多重エマルジョンの全質量に基づく、親水性活性成分の含有量は、0.01から10重量%;及び
・保存剤は、0から20重量%の含有量で、外水相W
1及び/又は内水相W
2に存在する。
【0044】
特に、配合は前記製造方法で製造される:
W/O一次エマルジョンに基づき、
3重量%の油ベース乳化剤、特にAbil EM 90;
17重量%の油、特に中鎖トリグリセリド;
0.7重量%の電解質、特にMgSO
4*7H
2O;
100重量%となる水
が、存在し、多重エマルジョンに基づき、
80重量%のW/Oエマルジョン;
0.8重量%の油ベース乳化剤、特にポロキサマー;
100重量%とする水が存在し、
及び、完成した多重W/O/Wエマルジョンは親水性活性成分、特に、本発明の例示的実施形態の項目4)中で以下に述べるDNAザイムの1つであるナプタラムを0.4重量%含む。
【0045】
以下の多重エマルジョンの製造を、例示として記載する:
WOW_A1(100gスケール)
A MgSO
4・7H
2O 0.56g 0.56重量%
a
蒸留水 63.307g 63.307重量%
a
ソルビン酸カリウム 0.089g0.089重量%
a
クエン酸 0.044g0.044重量%
a
B 中鎖トリグリセド 13.6g 13.6%重量%
a
セチルPEG/PPG−10/1ジメチコ−ン 2.4g 2.4%重量%
a
C 蒸留水 9.160g19.160%重量%
a
ソルビン酸カリウム 0.027g0.027%重量%
a
クエン酸 0.013g0.013%重量%
a
ポロキサマー407 0.8g 0.8%重量%
a
重量%
aは、多重エマルジョンの全質量に基づく。
【0046】
WOW_A2(12000gスケール)
A MgSO
4・7H
2O 7.2g 0.56重量%
a
蒸留水 7596.813g 63.307重量%
a
ソルビン酸カリウム 10.658g 0.089重量%
a
クエン酸 5.329g0.044重量%
a
B 中鎖トリグリセド 1632g 13.6%重量%
a
セチルPEG/PPG−10/1ジメチコ−ン 288g2.4%重量%
a
C 蒸留水 2299.162g 19.160%重量%
a
ソルビン酸カリウム 3.226g 0.027%重量%
a
クエン酸 1.612g 0.013%重量%
a
ポロキサマー407 96g 0.8%重量%
a
重量%
aは、多重エマルジョンの全質量に基づく。
【0047】
WOW_A3(100gスケール)
A MgSO
4・7H
2O 0.56g 0.56重量%
a
蒸留水 62.907g 62.907重量%
a
DNAザイムのNa塩 0.4g 0.4%重量%
a
ソルビン酸カリウム 0.089g0.089重量%
a
クエン酸 0.044g0.044重量%
a
B 中鎖トリグリセド 13.6g 13.6%重量%
a
セチルPEG/PPG−10/1ジメチコーン 2.4g2.4%重量%
a
C 蒸留水 19.160g19.160%重量%
a
ソルビン酸カリウム 0.027g 0.027%重量%
a
クエン酸 0.013g 0.013%重量%
a
ポロキサマー407 0.8g 0.8%重量%
a
重量%
aは、多重エマルジョンの全質量に基づく。
2)本発明による多重エマルジョンWOW_1の基礎配合
【0049】
本発明で示される実施形態では、電解質及び親水性活性成分は共にMgSO
4
である。ジメチコーン、すなわちAbil EM 90は、油ベース乳化剤として用いられる。トリアシルグリセリド、すなわち中鎖トリグリセリドは、油を形成する。親水性乳化剤は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの重合体であり、すなわちポロキサマー407である。
【0050】
上記の一般的製造方法に基づいて、基礎配合WOW_1は製造される。
多重エマルジョンWOW_1の分散油相の滴径は、30μmで、粘度は1.2Pasである。
【0051】
例えば、9ヶ月間の長期間安定的な測定が行われる場合には、エマルジョンはこの期間中安定している。滴径と粘度に著しい変化は見られない。
3)安定性に対する組成の影響
3.1)W/O/Wエマルジョンの安定性に対する親油性乳化剤の影響
親油性乳化剤の影響を分析するために、例示的な実施形態1)による多重エマルジョンWOW_1を製造した。Abil 90 EMに加えて、さらなる親油性乳化剤としてモノオレイン酸ソルビタンが一次エマルジョンに添加される。
【0052】
油ベースエマルジョンを変化させることでW/O/Wエマルジョンは不安的化する。
3.2)さらなる変形
【0055】
評価基準: +++ 大変良好
++ 良好
+ 満足できる
− 不良
示される実験結果では、エマルジョンM1からM7のみが良い結果をもたらす。これは本発明によるエマルジョンが、様々な添加物に対して高い許容性があることを示している。
4)多重エマルジョンの保護作用
多重エマルジョンの保護作用を検証するために、DNAザイム(ヌクレオチドベース高感度活性成分の1つの例として言及する)を含む様々な配合がヌクレアーゼ溶液に混合される。
【0056】
実験結果は表1の図表に示す。
実験の実行
各配合20mgをDNase(デオキシリボヌクレアーゼ)I溶液(皮膚自体のDNase)1mlと混合する。次に、1分間培養してから、DNaseの活性を止めるために、混合物を加熱シェーカに入れて99℃で10分間軽く振る。エマルジョンを壊すために、バッチを超音波浴50℃で10分間培養する。バッチは、0.45μmシリンジフィルタを通して濾過し、HPLC分析を用いて無傷の活性成分量を決定する。
【0057】
全ての配合は、0.4%のDNAザイム(ナトリウム塩)を含む。配合1、2(コラム2及び3)は、内水相W
2中にDNAザイムを含む。比較として、DNAザイムは配合3に、内水相W
2中で一度添加され(コラム4)、外水相W
1で一度添加された(コラム5)。コラム1は、DNAザイムの単純水溶液で得られた実験結果を示し、コラム6は、サブミクロン・エマルジョンで得られた実験結果を示す。
【0058】
各ケースで用いられたDNAザイムは、以下の配列の1つを有するDNAザイムである:
配列識別番号:150:nnnnnnnnnggctagctacaacgannnnnnnnn。好ましい例示的な実施形態において、ドメインに結合している右の基質及び左の基質について、少なくとも、それぞれの基部の長さは9である。
【0059】
親水性活性成分として配列識別番号:40、配列識別番号:139又は配列識別番号:140を有するオリゴヌクレオチドは特に好ましい。
さらに、分析された配合1から配合3及びサブミクロン・エマルジョンは、以下の組成を有する(WO=W/O一次エマルジョンの組成;WOW:多重エマルジョンの組成):
【0064】
図1の図表には、内水相W
2中にDNAザイムを含む多重エマルジョンは、DNアーゼ(デオキシリボヌクレアーゼ)の劣化から、組成(コラム2〜コラム4)によりオリゴヌクレオチドの70%まで保護することが明確に示されている。DNAザイムが単に水溶液としてDNアーゼと接触するようになれば、劣化は100%(コラム1)となる。
【0065】
これらの結果に基づいて、DNAザイムが多重エマルジョン(活性成分が捕捉されている)の内水相W
2中に存在する場合にのみ、保護が行われることがわかる;DNAザイムが外水相W
1中に組み込まれる場合には、サブミクロン・エマルジョンと同様に、100%の劣化が起きる(コラム5及びコラム6参照)。
【0066】
従って、実験の全般的実施で記載されたように、エマルジョンが2段階の工程で製造される場合にのみ捕捉を達成できる。この場合、W/O一次エマルジョンは、関連する乳化剤を含むように油相及び水溶性DNAザイム溶液(W
2)の構成成分から製造される。このようにして得られたW/O一次エマルジョンは、次に第2ステップで、任意に提供されるさらなる補助剤(アジュバント)とともに、第2の(DNAザイムの無い)外水相W
1に添加され、水中油中水型多重エマルジョンが形成される。
5)大規模実験
本発明による多重エマルジョンの大量生産能力を評価するために、異なる規模で基礎エマルジョWOW_1の種々の変異体を製造した。
【0069】
+++ 大変良好
++ 良好
+ 満足できる
− 不良
このようにして得られたエマルジョンについて、長期安定性を解析したところ、6ケ月までの耐用試験にも拘わらず、基準配合WOW_1によるエマルジョンには安定性の低下は認められない。解析された基礎配合に基づく多重エマルジョンは、従って、全て極めて高い安定性を有する。
【0070】
比較配合1では安定した多重エマルジョンは全く得られない;比較配合2では数週間の安定が得られただけである。
6)本発明による基礎配合のエマルジョンへの種々の保存剤の添加
6.1)エマルジョンの安定性への影響
種々の保存剤を添加した場合の、本発明によるエマルジョンの安定性を評価するために、項目2)に記載した基礎配合のWOW_1を異なる保存剤と混合する。この目的のために、エマルジョンの製造中に、それぞれの保存剤を2つの水相W
1及びW
2に添加する。その後、滴径、粘性及び相分離について解析を行う。
【0071】
以下に示す添加物を保存剤として用いることができる(以下に示す%情報は、水量に基づく重量%である):ソルビン酸カリウム、クエン酸、ブチレングリコール、安息香酸、プロピレン酸、ソルビン酸及びグリセリン、特に:
・0.07%のクエン酸を伴った0.14%のソルビン酸カリウム;
・0.1%のクエン酸を伴った0.2%のソルビン酸カリウム;
・10%のブチレングリコール;
・3%のグリセリンを伴った11%のブチレングリコール;
・0.05%の安息香酸;
・20%のプロピレングリコール;
・3%のグリセリンを伴った0.1%のソルビン酸;及び
・3%のグリセリンを伴った0.12%ソルビン酸。
【0072】
実験で示されるように、多重エマルジョンの安定性に否定的な影響を及ぼすことのない種々の保存剤及び保存剤混合物を用いることができる。これは、本発明のエマルジョンは、種々の保存剤又は保存剤の混合物を使用することによって、エマルジョンの安定性を損なうことなく、細菌汚染から保護されることを示している。
【0074】
評価基準: +++ 大変良好
++ 良好
+ 満足
− 不良
6.2)細菌誘発試験
保存作用を評価するために、項目7.1)に示された多重エマルジョンB、C、H及びIを例証として細菌誘発試験を実施することができる。誘発試験は、欧州薬局方(Pharmacopoea(Eur.Ph))に準拠して実施されている標準方式で行われる。全てのエマルジョンについて極めて良好な結果が得られる。またこの結果は、本発明による多重エマルジョンは、保存剤を添加することで、細菌汚染に対して効果的に保護されることを示す。
7)本発明による多重エマルジョンの内部構造
図2及び
図3に示す画像は、コヒーレント反ストークス・ラマン分光法(CAR
S)により記録された。検知されたものは2845cm
―1 での対称CH
2伸縮振動であるので、それぞれの試料の脂質分布を本明細書に示す。
【0075】
前記解析は、例示的実施形態の項目2)に記載された基礎配合WOW_1と、別の多重エマルジョンの両者を含み、別の多重エマルジョンは、本発明によるエマルジョンとは反対に、内相としてモノオレイン酸、外相として親油性乳化剤及びステアレス−20、親水性乳化剤、パラフィン及びレシチンで作られた油相からなる。
【0076】
基礎配合WOW_1によって得られる多重エマルジョンは、内部乳化剤としてソルビタンモノオレイン酸塩、また外部乳化剤としてステアレス−20、また油相としてパラフィン及びレシチンを含んだ比較エマルジョン(
図2)に比べて、より多くの微細分布内部水滴(
図3)を持った極めて均一性の高い内部構造を有することが、CARSの画像から明らかである。本発明による多重エマルジョンに基づく基礎配合のこの改善された内部構造は、本発明のエマルジョンの非常に高い安定性と保護機能の原因であると思われる。この効果は主として親水性乳化剤のセチルPEG/PPG−10/1に起因するものである。さらにまたこの有利な均一構造は、本発明によるエマルジョンにとって、エマルジョンの内水相W
2 中に大量の活性成分、特に大量のDNAザイムを捕捉させ得る原因となると思われる。
8)DNAザイムの回収
例示的な実施形態である項目2)に記載された基礎配合のWOW_01の組成に基づき、以下に示す本発明によるエマルジョンの2つの例示的実施形態V1及びV2が実施例として製造されることができる。製造後のエマルジョンに存在するDNAザイムの量をHPLCで分析した場合に、以下の結果を得る:
分析したV1の組成:
基礎配合WOW_01及び添加物の組成
・内水相W
2中:0.4%のDNAザイム(Na塩)、保存剤としてのソルビン酸カリウム
*/クエン酸
**、及び
・外水相W
1中:保存剤としてのソルビン酸カリウム
*/クエン酸
*。
【0077】
*ソルビン酸カリウムの量:水量に基づき14重量%
**クエン酸の量:水量に基づき0.07重量%
活性成分(DNAザイム)(HPLCにより定量化した活性成分量)の回収率96.67+/−2.89%が見られた。
【0078】
分析したV2の組成:
基礎配合WOW_01及び添加物の組成
・内水相W
2中:0.4%のDNAザイム(Na塩)、保存剤としてのソルビン酸カリウム
*/クエン酸
**/グリセリン
***、及び
・外水相W
1中:保存剤としてのソルビン酸カリウム
*/クエン酸
**/グリセリン
***。
【0079】
*ソルビン酸カリウムの量:水量に基づき14重量%
**クエン酸の量:水量に基づき0.07重量%
***グリセリンの量:水量に基づき3重量%
活性成分(DNAザイム)(活性成分の量はHPLCによって定量)の回収率102.00+/−6.10%が見られた。
【0080】
本発明は、上記の実施形態のうちの1つに限定されるものではなく、様々な方法で修正することができる。
使用の目的によって、例えば、本発明による多重エマルジョンに、スキンケア特性、一貫性、粘性及び/又は活性成分の浸透性を改善させるような、付加的構成成分を含めることが考えられる。
【0081】
付加的構成成分には、すでに活性剤として添加されている場合を除いて、例えば湿潤剤、調節剤及びミネラル要素であって、グリセリン、尿素、アラントイン、イノシトール、糖、アミノ酸、乳酸ソーダ、水溶性マグネシウム、ナトリウム塩及び/又はカリウム塩などのミネラル栄養素が、多重エマルジョンに基づき、好ましくは0.1〜8重量%、特に好ましくは3重量%含まれ、またレチノール、チアミン、アスコルビン酸、カルシフェロール、リボフラビン、トコフェロール、コバルミン、パントテニック酸、ビオチン、ピリドキシン、ニアシン、及び/又は葉酸のようなビタミン類が、多重エマルジョンに基づき、好ましくは0.01〜5重量%含まれ、さらに月見草及び/又はアボカド油などの栄養天然油、ならびに単独で又は中鎖トリグリセリドと混合して吸蔵するパラフィン油、カルボマー、セルロース誘導体、クサンサン、高分子及び/又はポリエチレングリコールなどの増粘剤などが含まれる。
【0082】
浸透性を増加させる物質は油相中で用いることが好ましい。これらの物質には以下が含まれる:多重エマルジョンに基づき、好ましくは0.1〜3重量%のレシチン、及び/又は多重エマルジョンに基づき、0.1〜5重量%のオレイン酸の脂肪酸エステルで好ましくはデシルオレアート又はオレイルオレアート、多重エマルジョンに基づき、0.1〜20重量%の1種以上の一価アルコール又は多価アルコールで特にプロピレングリコールが含まれる。
【0083】
本発明で添加される活性成分に加えて、多重エマルジョンは付加的な活性成分を含むことができる。これらの付加的な活性成分は、全てを内水相W
2に含む必要はなく、油相O又は外水相W
1中に含んでもよい。また、本発明で添加される親水性活性成分に加えて、多重の親油性活性成分及び/又はさらなる親水性活性成分を含むこともできる。
【0084】
特許請求の範囲、明細書、及び設計の詳細、空間配置及び方法のステップなどを含む図面から明白である全ての特徴及び利点は、単独で及び多種多様な組合せで、本発明にとって非常に重要なものである。