(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
メチル(メタ)アクリラート、エチル(メタ)アクリラート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリラート、ブチル(メタ)アクリラート、ベンジル(メタ)アクリラート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリラート、もしくはイソボルニル(メタ)アクリラート、ビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリラート、ビス−GMA、UDMA、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、もしくはテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリラート、グリセロールジ(メタ)アクリラート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリラート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリラート、
および/または
1以上のN−単置換アクリルアミドもしくはN−二置換アクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、1以上のN−単置換メタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、1以上の架橋アリルエーテル、
および/または
1以上の架橋ピロリドン、1,6−ビス(3−ビニル−2−ピロリドニル)−ヘキサン、1以上の架橋ビスアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミドもしくはエチレンビスアクリルアミド、1以上の架橋ビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジエチル−1,3−ビス(アクリルアミド)−プロパン、1,3−ビス(メタクリルアミド)−プロパン、1,4−ビス(アクリルアミド)−ブタン、1,4−ビス(アクリロイル)−ピペラジン、
および/または
1以上の熱不安定性架橋モノマー
またはそれらの混合物
を含む、請求項7に記載の歯科修復材料。
マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物、10−メタクリロイルオキシデシルマロン酸、N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)−N−フェニルグリシン、4−ビニル安息香酸、
および/または
ビニルホスホン酸、4−ビニルフェニルホスホン酸、4−ビニルベンジルホスホン酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホン酸、2−メタクリルアミドエチルホスホン酸、4−メタクリルアミド−4−メチル−ペンチル−ホスホン酸、2−[4−(ジヒドロキシホスホリル)−2−オキサ−ブチル]−アクリル酸、2−[4−(ジヒドロキシホスホリル)−2−オキサ−ブチル]−アクリル酸エチル−もしくは−2,4,6−トリメチルフェニルエステル、
および/または
リン酸一水素2−メタクリロイルオキシプロピルもしくはリン酸二水素2−メタクリロイルオキシプロピル、リン酸水素2−メタクリロイルオキシエチルフェニル、ジペンタエリスリトール−ペンタメタクリロイルオキシホスフェート、リン酸二水素10−メタクリロイルオキシデシル、リン酸モノ−(1−アクリロイル−ピペリジン−4−イル)−エステル、リン酸二水素6−(メタクリルアミド)ヘキシル、リン酸二水素1,3−ビス−(N−アクリロイル−N−プロピル−アミノ)−プロパン−2−イル、
および/または
ビニルスルホン酸、4−ビニルフェニルスルホン酸、3−(メタクリルアミド)プロピルスルホン酸、
またはそれらの混合物
を含む、請求項9に記載の歯科修復材料。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ある実施形態において、少なくとも1個のZ
1またはZ
2が重合性基であり、少なくとも1個のZ
1またはZ
2が接着性基である。この文脈において、Z
1およびZ
2の一方が重合性基を表し、Z
1およびZ
2の他方が接着性基を表す式Iの化合物が好ましい。kおよびlは、それぞれ独立に、1、2または3であることがさらに好ましい。別の実施形態において、Z
1およびZ
2の両方とも重合性基を表す。別の実施形態において、Z
1およびZ
2の一方または両方が欠けている状態であり得る。
【0014】
ラジカルに、例えば−O−などの基が割り込み得るという表示は、基がラジカルの炭素鎖に挿入される、即ち炭素原子が両側で隣接することと理解されたい。したがってこれらの基の数は、炭素原子数よりも少なくとも1小さく、この基は末端にはあり得ない。本発明によれば、指定の基が割り込まないラジカルが好ましい。
【0015】
本発明によれば、化学価理論に適合する化合物のみが考慮される。
【0016】
各場合において互いに独立に、
Z
1およびZ
2の一方が、各場合において独立に、CH
2=CR
1−CO−O−およびCH
2=CR
1−CO−NR
2−から選択される重合性基を表し、Z
1およびZ
2の他方が、各場合において独立に、CH
2=CR
1−CO−O−およびCH
2=CR
1−CO−NR
2−から選択される重合性基を表すか、好ましくは−Si(OR)
3、−COOH、−O−PO(OH)
2、−PO(OH)
2、−SO
2OHおよび−SHから選択される接着性基を表し、
Q
1が、各場合において独立に、欠けているかまたは、−O−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NR
3−もしくは−NR
3−CO−が割り込み得る(m+1)価の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族C
1−C
10ラジカルを表し、
Q
2が、各場合において独立に、欠けているかまたは、−O−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NR
3−もしくは−NR
3−CO−が割り込み得る(n+1)価の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族C
1−C
10ラジカルを表し、
XおよびYが、各場合において独立に、欠けているかまたは、−O−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NR
3−もしくは−NR
3−CO−を表し、
Rが、各場合において独立に、H、CH
3またはC
2H
5であり、
R
1が、各場合において独立に、HまたはCH
3であり、
R
2が、各場合において独立に、H、CH
3またはC
2H
5であり、
R
3が、各場合において独立に、H、CH
3またはC
2H
5であり、そして/あるいは
k、l、mおよびnが、各場合において独立に、1または2である、
式Iの化合物が特に好ましい。
【0017】
可変要素全てそれぞれが上記で定められる好ましい意味の1つを有する化合物が特に好ましい。
【0018】
適切な熱不安定性基はそれ自体公知である。これらは、本発明によれば、水素結合、配位結合、金属−配位子相互作用、π−π相互作用、ドナー−アクセプタ相互作用、双極子間相互作用、イオン対相互作用、ファンデルワールス相互作用、親水性相互作用および/または疎水性相互作用などの非共有相互作用に基づく、1以上の熱不安定性結合を含有することを特徴とする。好ましい熱不安定性基としては、2−ウレイド−4[1H]−ピリミドン基(UPy基)などの水素結合−形成モチーフ間に熱不安定性水素結合を有する基またはそれらの誘導体、2,6−ビス−ベンゾイミダゾール−ピリジン基または2,2’:6’,2’’−テルピリジン基の、特に遷移金属またはランタノイドイオンとの錯体などの熱不安定性配位結合または金属−配位子相互作用を有する基、ならびに、電子不足ジイミドリッチおよび電子リッチであるピレン基の付加物などの、π−π相互作用および/またはドナー−アクセプタ相互作用に基づく熱不安定性付加物が挙げられる。非共有相互作用を有する熱不安定性基の例はまた、R.J.Wojteckiら、Nature Materials 2011,10,14−27;J.D.Foxら、Macromolecules 2009,42,6823;S.Sivakovaら、Chem.Soc.Rev.2005,34,9−21およびS.J.Rowanら、Faraday Discussions 2005,128,43にも記載されている。
【0019】
ある実施形態において、熱不安定性単位Tは熱不安定性基である。熱不安定性基は、好ましくは、式−T
1・・T
2−(式中、T
1およびT
2は、熱不安定性非共有相互作用により互いに連結される相補性基を表す。)を有する。
【0020】
この文脈において、式II:
[(Z
1)
m−Q
1−X)]
k−T−[Y−Q
2−(Z
2)
n]
l
式II
(式中、Tは熱不安定性基を表し、
Z
1およびZ
2が、各場合において独立に、ビニル基、CH
2=CR
1−CO−O−およびCH
2=CR
1−CO−NR
2−から選択される重合性基、または−O−PO(OH)
2、−PO(OH)
2および−SO
2OHから選択される酸基を表し、少なくとも1個のZ
1またはZ
2が、重合性基であり、少なくとも1個のZ
1またはZ
2が接着性基であり、
Q
1が、各場合において独立に、欠けているかまたは、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NR
3−もしくは−NR
3−CO−が割り込み得る(m+1)価の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族C
1−C
10ラジカルを表し、
Q
2が、各場合において独立に、欠けているかまたは、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NR
3−もしくは−NR
3−CO−が割り込み得る(n+1)価の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族C
1−C
10ラジカルを表し、
XおよびYが、各場合において独立に、欠けているかまたは、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NR
3−もしくは−NR
3−CO−を表し、
R
1、R
2およびR
3が、各場合において独立に、HまたはC
1−C
7アルキルラジカルを表し、
k、l、mおよびnが、各場合において独立に、1、2または3である。)
の熱不安定性重合性化合物に基づく歯科修復材料が特に好ましい。
【0021】
この文脈において、Z
1およびZ
2の一方が重合性基を表し、Z
1およびZ
2の他方が酸基を表す式IIの化合物が好ましい。
【0022】
各場合において、互いに独立に、
Z
1およびZ
2の一方が、各場合において独立に、CH
2=CR
1−CO−O−およびCH
2=CR
1−CO−NR
2−から選択される重合性基を表し、Z
1およびZ
2の他方が、各場合において独立に、−O−PO(OH)
2および−PO(OH)
2および−SO
2OHから選択される酸基を表し、
Q
1が、各場合において独立に、欠けているかまたは、−O−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NR
3−もしくは−NR
3−CO−が割り込み得る(m+1)価の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族C
1−C
10ラジカルを表し、
Q
2が、各場合において独立に、欠けているかまたは、−O−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NR
3−もしくは−NR
3−CO−が割り込み得る(n+1)価の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族C
1−C
10ラジカルを表し、
XおよびYが、各場合において独立に、欠けているかまたは、−O−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NR
3−もしくは−NR
3−CO−を表し、
R
1が、各場合において独立に、HまたはCH
3であり、
R
2が、各場合において独立に、H、CH
3またはC
2H
5であり、
R
3が、各場合において独立に、H、CH
3またはC
2H
5であり、そして/あるいは
k、l、mおよびnが、各場合において独立に、1または2である、
式IIの化合物が、特に好ましい。
【0023】
可変要素全てそれぞれが上記で定められる好ましい意味の1つを有する化合物が特に好ましい。
【0024】
別の実施形態において、熱不安定性単位Tは、少なくとも1個の熱不安定性基および少なくとも1個のオリゴマー性、ホモポリマー性またはヘテロポリマー性鎖Pを含有するオリゴマー性またはポリマー性単位である。適切な鎖Pの例は、ビニル、ジエン、重縮合および重付加オリゴマー、およびポリマー、コポリマー、ならびにこれらの混合物である。鎖Pは、好ましくは200から20000g/mol、好ましくは1000から10000g/molの数平均モル質量を有する。例えばエチレン/ブチレンコポリマー、ポリエチレンオキシドまたはポリテトラヒドロフランなど、ガラス転移点が0℃または0℃より下である非晶質のオリゴマー性、ホモポリマー性およびヘテロポリマー性鎖が特に好ましい。
【0025】
特に、熱不安定性単位Tが、式IIIまたはIV:
[−P−(X
1−Q−Y
1−T
1・・T
2−Y
2−Q−X
2−)
q]
p
式III
[−P−(X
1−Q−Y
1−T
1−Y
2−Q−X
2−)
q]
p
[(−X
2−Q−Y
2−T
2−Y
1−Q−X
1)
q−P−]
p
式IV
(式中、
Pは、各場合において独立に、好ましくは200から20000g/molの数平均モル質量を有する、オリゴマー性、ホモポリマー性またはヘテロポリマー性鎖を表し、
T
1およびT
2は、同一であるかまたは異なり得、熱不安定性非共有相互作用により互いに連結される基を表し、
Qは、各場合において独立に、欠けているかあるいは、完全もしくは部分不飽和および/または芳香族性であり得、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NR
3−、−NR
3−CO−、−O−CO−NR
3−、−NR
3−CO−O−または−NR
3−CO−NR
3−が割り込み得る、二価の直鎖状、分岐状および/または環状のC
1−C
20ラジカルを表し、
X
1およびX
2は、各場合において独立に、欠けているかまたは、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NR
3−、−NR
3−CO−、−O−CO−NR
3−、−NR
3−CO−O−もしくは−NR
3−CO−NR
3−を表し、
Y
1およびY
2は、各場合において独立に、欠けているかまたは、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NR
3−、−NR
3−CO−、−O−CO−NR
3−、−NR
3−CO−O−もしくは−NR
3−CO−NR
3−を表し、
pは、独立に1から100であり、
qは、独立に1、2、3または4である。)
を有する式Iの化合物が好ましい。
【0026】
式IIIおよびIVにおいて、各場合において互いに独立に、
Pが、各場合において独立に、1000から10000g/molの数平均モル質量を好ましくは有する、オリゴマー性、ホモポリマー性またはヘテロポリマー性鎖を表し、
Qが、各場合において独立に、欠けているかまたは、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NR
3−、−NR
3−CO−、−O−CO−NR
3−、−NR
3−CO−O−もしくは−NR
3−CO−NR
3−が割り込み得る、二価の直鎖状もしくは分岐状のC
1−C
10ラジカルを表し、
X
1およびX
2が、各場合において独立に、欠けているかまたは、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NR
3−、−NR
3−CO−、−O−CO−NR
3−、−NR
3−CO−O−もしくは−NR
3−CO−NR
3−を表し、
Y
1およびY
2が、各場合において独立に、欠けているかまたは、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NR
3−、−NR
3−CO−、−O−CO−NR
3−、−NR
3−CO−O−もしくは−NR
3−CO−NR
3−を表し、
pが独立に1から50、特に5から50、特に好ましくは10から50であり、
qが独立に1または2、特に1である、
単位Tが特に好ましい。
【0027】
可変要素全てそれぞれが上記で定められる好ましい意味の1つを有する化合物が特に好ましい。
【0028】
本発明によれば、熱不安定性単位Tが超分子モチーフを形成可能である式Iの化合物が好ましい。このような超分子モチーフは、非共有分子間相互作用による2以上の化学種の会合によって形成され得る(Supramolecular Chemistry,J.−M.Lehn,Wiley−VCH,1995およびSupramolecular Chemistry:From Molecules to Nanomaterials,P.A.GaleおよびJ.W.Steed(Eds.),Wiley,2012)。このような会合過程は、個々のポリマー鎖が上述の非共有結合により結び付けられる超分子ポリマーの形成に対する基盤となる(Tom F.A.de Greefら、Nature 2008,453,171−173;T.Aidaら、Science 2012,335,813−817)。該して、非共有結合は共有結合よりも弱く、より動的である。したがって、これらの形成は可逆的であることが多く、その結果、例えば、温度を上昇させるか、濃度を低下させるかまたは溶媒の極性を上昇させることによって、これらは必要に応じて度々、破壊および再形成され得る。このような超分子モチーフは熱不安定性単位として特に適切である。
【0029】
特に、熱不安定性基−T
1・・T
2−が、以下からなる群から選択される、式Iの化合物が好ましい:
【0031】
(式中、
R
4が、HまたはC
1−C
10アルキルラジカルであり、
Mが、遷移金属イオンまたはランタノイドイオン、例えばZn
2+、La
3+またはEu
3+などを表す)。
【0032】
驚くべきことに、少なくとも1個の式Iの熱不安定性化合物を含む本発明による歯科修復材料は、一方で優れた機械的特性ならびに歯構造および歯科用セラミックへの優れた接着性を示しながら、他方で熱の直接的または間接的導入によって基材から容易に剥離され得ることが見出された。
【0033】
熱不安定性基を含有する熱不安定性重合性化合物は、適切に官能化されている基T
1またはT
2と相補的に官能化されているモノマーとの反応によって調製され得る。
【0034】
したがって、例えば2−ウレイド−4[1H]−ピリミドン(UPy)誘導体UPy−CH
2CH
2OC(O)C(CH
3)CH
2は、2−イソシアナトエチルメタクリラートおよび6−メチルイソシトシン(2−アミノ−4−ヒドロキシ−6−メチルピリミドン):
【0037】
2,6−ビス(1−メチルベンゾイミダゾリル)−4−ヒドロキシピリジン(Mebip)誘導体[Zn(Mebip−CH
2CH
2OC(O)C(CH
3)CH
2)
2](ClO
4)
2を調製するために、最初に2,6−ビス−(1−メチルベンゾイミダゾリル)−4−ヒドロキシピリジンを、例えばK
2CO
3の存在下でジメチルホルムアミド中で加熱することによって、ブロモエタノールでエーテル化し得、次いで、このようにして調製されるMebip−CH
2CH
2OHに、例えばジクロロメタン中のトリエチルアミンの存在下で、メタクリロイルクロリドを添加し得る。次に、熱不安定性基を有する所望の生成物:
【0039】
を得るために、このようにして得られるMebip−CH
2CH
2OC(O)C(CH
3)CH
2に、遷移金属またはランタノイドの塩、例えばZn(ClO
4)
2などを添加し得る。
【0040】
この熱不安定性基の特性は、金属塩の選択によって、標的化において影響を受け得る。
【0041】
オリゴマー性またはポリマー性の熱不安定性単位Tを有する、本発明による式Iの化合物は、それ自体公知の合成方法と同様に調製され得る。
【0042】
したがって、α,ω−OH−末端オリゴマーまたはポリマー、例えばポリシロキサン、ポリエーテル、ポリエステルまたはポリカーボネートなどを、ヒドロキシル基と反応し得る官能基、例えばイソシアナート基に基T
1またはT
2が共有結合されている過剰量の化合物と、反応させ得る。
【0043】
例:水素結合の形成に適切である2−ウレイド−4[1H]−ピリミジノン基によって各場合において末端が官能化されたポリマーを形成させるための、過剰量の2−(6−イソシアナトヘキシルアミノカルボニルアミノ)−6−メチル−4[1H]ピリミジノンとのα,ω−OH−末端ポリマーの反応(B.J.B.Folmerら、Adv.Mater.2000,12,874)。
【0044】
逆に、ヒドロキシル基と反応し得る官能基、例えばイソシアナート基、の両端にリンカー基が結合している過剰量の化合物と、α,ω−OH−末端オリゴマーまたはポリマーを最初に反応させ得る。次に、このようにして得られるα,ω−OH−官能化オリゴマーまたはポリマーを、基T
1またはT
2がヒドロキシル基などの官能基に共有結合されている化合物と反応させ得る。
【0045】
例:電子不足ジイミド基とのπ−π相互作用および/またはドナー−アクセプタ相互作用を形成し得るピレン基により各場合において末端が官能化されたポリマーを形成させるための、過剰量のジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアナート(MDI)とのα,ω−OH−末端ポリマーの反応および得られるα,ω−イソシアナート末端ポリマーと2−アミノメチルピレンとの反応(S.Burattiniら、J.Am.Chem.Soc.2010,132,12051)。
【0046】
あるいは、ヒドロキシル基などの官能基に基T
1またはT
2が共有結合される化合物と、例えば光延反応によって、α,ω−OH−末端オリゴマーまたはポリマーを反応させ得る。
【0047】
例:遷移金属またはランタノイドイオンの錯体化に付随する配位結合の形成に適切である2,6−ビス(1’−メチルベンゾイミダゾリル)ピリジン基によって各場合において末端が官能化されたポリマーを形成させるための、2,6−ビス(1’−メチルベンゾイミダゾリル)−4−ヒドロキシ−ピリジンとのα,ω−OH−末端ポリマーの反応(Burnworth,M.ら、Nature 2011,472,334)。
【0048】
同様にして、さらなるα,ω−OH−末端オリゴマーまたはポリマーを一方の末端で基T
1またはT
2により最初に官能化し得、次いで他方の末端で重合性基または接着性基により官能化し得るか、またはその逆を行い得る。次に、このようにして得られる混合官能化オリゴマーまたはポリマーを、基T
1またはT
2で両末端が官能化されたオリゴマーまたはポリマーと一緒に、それ自体公知の様式で式Iの化合物に変換し得る。
【0049】
あるいは、オリゴマー性またはポリマー性熱不安定性単位Tを有する式Iの本発明による化合物を調製するために、上述のように熱不安定性基を含有する熱不安定性重合性化合物を調製し、例えばコポリマー化によって単官能性メタクリラートモノマーと反応させ得る。
【0050】
本発明による歯科材料は、好ましくは、式Iの熱不安定性化合物に加えて、1以上のさらなるラジカル重合性モノマー(コモノマー)、特に単官能性または多官能性(メタ)アクリル酸誘導体を含む。単官能性(メタ)アクリル酸誘導体とは、1個の(メタ)アクリル酸基がある化合物を意味し、多官能性(メタ)アクリル酸誘導体とは、2以上、好ましくは2から4個の(メタ)アクリル酸基がある化合物を意味する。多官能性モノマーは、架橋効果を有する。
【0051】
本発明による好ましい単官能性または多官能性(メタ)アクリル酸誘導体は、メチル(メタ)アクリラート、エチル(メタ)アクリラート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリラート、ブチル(メタ)アクリラート、ベンジル(メタ)アクリラート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリラート、イソボルニル(メタ)アクリラート、ビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリラート、ビス−GMA(メタクリル酸およびビスフェノール−A−ジグリシジルエーテルの付加生成物)、UDMA(2−ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)および2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートの付加生成物)、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリラートもしくはテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリラート、グリセロールジ(メタ)アクリラート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリラートおよび1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリラートである。
【0052】
特に好ましい単官能性または多官能性(メタ)アクリル酸誘導体は、N−単置換アクリルアミドまたはN−二置換アクリルアミド、例えばN−エチルアクリルアミド、N,N−ジメタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドまたはN−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドなど、N−単置換メタクリルアミド、例えばN−エチルメタクリルアミドまたはN−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミドなど、ならびにN−ビニルピロリドンおよびアリルエーテルである。これらのモノマーは、高い加水分解安定性を特徴とし、それらの粘性が比較的低いため、希釈モノマーとして特に適切である。
【0053】
高い加水分解安定性を有する好ましい多官能性(メタ)アクリル酸誘導体は、対応するジアミンを(メタ)アクリル酸クロリドと反応させることにより合成され得る、架橋ピロリドン、例えば1,6−ビス(3−ビニル−2−ピロリドニル)−ヘキサンなど、ビスアクリルアミド、例えばメチレンビスアクリルアミドまたはエチレンビスアクリルアミドなど、およびビス(メタ)アクリルアミド、例えばN,N’−ジエチル−1,3−ビス(アクリルアミド)−プロパン、1,3−ビス(メタクリルアミド)−プロパン、1,4−ビス(アクリルアミド)−ブタンまたは、1,4−ビス(アクリロイル)−ピペラジンなどである。
【0054】
本発明によれば、熱不安定性架橋モノマーもコモノマーとして特に適切である。、2個の重合性基間に少なくとも1個の熱不安定性共有基を有する架橋モノマーがこれにより意味される。例としては、2個の(メタ)アクリル基の間に少なくとも1個の熱不安定性基を有する、多官能性(メタ)アクリラートまたは(メタ)アクリルアミドがある。熱不安定性共有基として考慮されるものは、特に熱不安定性付加環化付加物、例えばディールス・アルダー付加物、ヘテロ−ディールス・アルダー付加物ならびに熱不安定性アルコキシアミン、オキシム−エステル、オキシム−ウレタンまたはアゾ基である。例としては、ディールス・アルダー付加物、例えば、フルフリルメタクリラートおよびN−(3−(メタクリロイルオキシ)プロピル)−マレイミドからのディールス・アルダー付加物、ジ−またはトリイソシアナート、例えばヘキサメチレン−1,6−ジイソシアナート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン−1,6−ジイソシアナートまたはHDIトリマーなどとのN−ヒドロキシ−(メタ)アクリルアミドの反応生成物ならびに、1−ヒドロキシメチルアクリル酸エステル、例えば1−ヒドロキシメチルエチルアクリラートなどとの、またはβ−ケトエステル(メタ)アクリラート、例えば2−アセトアセトキシエチルメタクリラートなどとのジ−またはトリイソシアナートの化学量論反応により得られる生成物がある。ガス放出性の熱不安定性架橋モノマーも特に適切である。例としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリラート、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリラートまたはヒドロキシプロピル(メタ)アクリラートなどとの、またはN−(ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、例えばN−(5−ヒドロキシペンチル)メタクリルアミドまたはN−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドなどとの、アゾビス(4−シアノ吉草酸)のエステル化生成物がある。
【0055】
式Iの熱不安定性化合物および場合によっては上記で指定されるコモノマーに加えて、本発明による歯科修復材料は、好ましくはラジカル重合性の酸基含有モノマー(接着剤モノマー)も含み得る。好ましい酸基は、カルボン酸基、ホスホン酸基、リン酸基およびスルホン酸基である。
【0056】
重合性カルボン酸を有する好ましいモノマーは、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物、10−メタクリロイルオキシデシルマロン酸、N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)−N−フェニルグリシンおよび4−ビニル安息香酸である。
【0057】
重合性ホスホン酸基を有する好ましいモノマーは、ビニルホスホン酸、4−ビニルフェニルホスホン酸、4−ビニルベンジルホスホン酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホン酸、2−メタクリルアミドエチルホスホン酸、4−メタクリルアミド−4−メチル−ペンチルホスホン酸、2−[4−(ジヒドロキシホスホリル)−2−オキサ−ブチル]−アクリル酸、2−[4−(ジヒドロキシホスホリル)−2−オキサ−ブチル]−アクリル酸エチルおよび−2,4,6−トリメチルフェニルエステルである。
【0058】
重合性リン酸基を有する好ましいモノマーは、リン酸一水素2−メタクリロイルオキシプロピルまたはリン酸二水素2−メタクリロイルオキシプロピル、リン酸一水素2−メタクリロイルオキシエチルまたはリン酸二水素2−メタクリロイルオキシエチル、リン酸水素2−メタクリロイルオキシエチルフェニル、ジペンタエリスリトールペンタメタクリロイルオキシホスフェート、リン酸二水素10−メタクリロイルオキシデシル、リン酸モノ−(1−アクリロイル−ピペリジン−4−イル)−エステル、リン酸二水素6−(メタクリルアミド)ヘキシルおよびリン酸二水素1,3−ビス−(N−アクリロイル−N−プロピル−アミノ)−プロパン−2−イルである。
【0059】
重合性スルホン酸基を有する好ましいモノマーは、ビニルスルホン酸、4−ビニルフェニルスルホン酸および3−(メタクリルアミド)プロピルスルホン酸である。
【0060】
好ましくは、式I、特に式IIの化合物と上記で指定されるモノマーとの混合物が使用される。混合物の総重量に基づき、好ましい混合物は:
1から90wt.−%、好ましくは5から80wt.−%、特に好ましくは5から70の式Iのの化合物と、
0から70wt.−%、好ましくは1から60wt.−%、特に好ましくは5から50、特に非常に好ましくは10から30wt.−%のコモノマー、特に単官能性および/または多官能性(メタ)アクリラートと、
0から70wt.−%、好ましくは1から60wt.−%、特に好ましくは5から50wt.−%の熱不安定性架橋モノマーと、
0から40wt.−%、好ましくは1から30wt.−%、特に好ましくは5から20wt.−%の接着性モノマーと、を含む。
【0061】
特に好ましい混合物(各場合において、混合物の総重量に基づく。)を次の表で与える。
【0063】
さらに、本発明による歯科修復材料はまた、好ましくはラジカル重合のための開始剤も含む。
【0064】
好ましくは、ベンゾフェノン、ベンゾインおよびそれらの誘導体またはα−ジケトンもしくはそれらの誘導体、例えば9,10−フェナントレンキノン、1−フェニル−プロパン−1,2−ジオン、ジアセチルもしくは4,4’−ジクロロベンジルなどが、ラジカル光重合を開始するために使用される。カンファキノンおよび2,2−ジメトキシ−2−フェニル−アセトフェノンが特に好ましく使用され、特に非常に好ましくは、還元剤としての、アミン、例えば4−(ジメチルアミノ)−ベンゾアート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリラート、N,N−ジメチル−sym.−キシリジンまたはトリエタノールアミンなどと合わせたα−ジケトンが使用される。ノリッシュI型光開始剤、特にアシルまたはビスアシルホスフィンオキシド、モノアシルトリアルキル−またはジアシルジアルキルゲルマニウム化合物、例えばベンゾイルトリメチルゲルマニウム、ジベンゾイルジエチルゲルマニウムまたはビス−(4−メトキシベンゾイル)ジエチルゲルマニウムも特に適切である。例えばカンファキノンおよび4−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルと合わせたジベンゾイルジエチルゲルマニウムなど、様々な光開始剤の混合物も使用され得る。
【0065】
好ましくは、酸化還元−開始剤の組み合わせ、例えばN,N−ジメチル−sym.−キシリジンまたはN,N−ジメチル−p−トルイジンとの過酸化ベンゾイルの組み合わせなどが、室温で行われる重合のための開始剤として使用される。さらに、過酸化物および還元剤、例えばアスコルビン酸、バルビツレートまたはスルフィン酸などからなる酸化還元系も特に適切である。
【0066】
本発明による歯科修復材料はまた、熱によりガスを放出する添加剤(thermisch gasfreisetzendes Additiv)も含み得る。適切なガス放出性添加剤は、例えばアゾ化合物、例えばアゾジカルボンアミド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルまたは2,2’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、N−ニトロソ化合物など、ヒドラジド、例えばベンゼンスルホニルヒドラジドなど、過酸化物、例えばジクモール過酸化物など、またはアセトンジカルボン酸などである。このような化合物の例は、例えばSt.Quinn,Plastics,Additives & Compounding 2001,3,16−21に記載されている。分解温度は、例えばアゾ化合物の場合、置換基パターンによりそれ自体公知の様式で設定され得る(D.Braun,R.Jakobi,Monatshefte Chemie 1982,113,1403−1414参照)。
【0067】
さらに、本発明による歯科修復材料は、放射電磁線を熱に変換し得る添加剤を含み得る。このようないわゆる放射線から熱への変換剤は、熱不安定性基を切断するために、UV、NIRまたはIR放射線、可視光、マイクロ波または電波放射線を熱に変換することができる、有機物質、無機物質または有機金属物質またはハイブリッド成分である。この例は、UV、NIRまたはIR放射線を吸収する染料および顔料である。IR範囲において吸収する染料の例は、アゾ、メチン、アンスラキノンまたはポルフィリン染料である。NIR線を吸収する顔料の例は、アンチモンおよびインジウムスズ酸化物、フタロシアニン顔料、煤、NiおよびPtジチオレン錯体である。UV範囲で吸収する化合物の例は、ベンゾトリアゾール、トリアジン、ベンゾフェノン、シアノアクリラート、サリチル酸誘導体およびヒンダードアミン系光安定剤(HALS)である。マイクロ波(1から300GHz)または電波(10kHzから1GHz)の周波数範囲で吸収する添加剤の例は、強磁性セラミック物質、いわゆる、酸化鉄ヘマタイト(Fe
2O
3)またはマグネタイト(Fe
3O
4)およびさらなる酸化物、例えば金属、Zn、MnまたはNiの酸化物から構成されるフェライトであり、粉末として市販されている。
【0068】
本発明による歯科修復材料は、さらに好ましくは、機械的特性を向上させるために、または粘度を調整するために、有機または無機充填剤粒子も含む。好ましい無機粒子状充填剤は、酸化物、例えばZrO
2およびTiO
2など、または、平均粒径が0.005から2μm、好ましくは0.1から1μmのSiO
2、ZrO
2および/またはTiO
2の混合酸化物など、ナノ粒子状または超微粒充填剤、例えば平均粒径が5から200nm、好ましくは10から100nmである、焼成ケイ酸または沈降シリカなど、ミニ充填剤、例えば平均粒径が0.01から10μm、好ましくは0.1から1μmである、石英、ガラスセラミックまたはガラス粉末ならびにX線−不透過充填剤、例えば平均粒径が10から1000nm、好ましくは100から300nmである、三フッ化イッテルビウムまたはナノ粒子状酸化タンタル(V)または硫酸バリウムなどに基づく、非晶質球状材料である。
【0069】
さらに、本発明による歯科修復材料は、さらなる添加剤、特に溶媒、例えば水またはエタノールまたは対応する溶媒混合液、ならびに例えば安定化剤、香味料、色素、殺菌活性成分、フッ素イオン放出性添加剤、光学的光沢剤または可塑剤を含み得る。
【0070】
次の成分:
a)0.1から50wt.−%、特に1から40wt.−%、好ましくは2から30wt.−%、特に好ましくは5から30wt.−%の式I、特に式IIの化合物と、
b)0.01から10wt.−%、好ましくは0.1から3.0wt.−%、特に好ましくは0.2から2wt.−%の開始剤と、
c)0から80wt.−%、好ましくは1から60wt.−%、特に好ましくは5から50wt.−%のコモノマーと、
d)0から30wt.−%、好ましくは0.5から15wt.−%、特に好ましくは1から5wt.−%の接着性モノマーと、
e)0から80wt.−%の充填剤と、
f)0から70wt.−%の溶媒と、
を含む、式I、特に式IIの熱不安定性化合物に基づく歯科修復材料が特に好ましい。
【0071】
好ましい充填剤含量は、所望の用途に依存する。接着剤は、好ましくは0から20wt.−%、セメントおよび複合材は、好ましくは20から80wt.−%の充填剤を含む。
【0072】
同様のことが溶媒含量にも適用される。接着剤は、好ましくは0から60wt.−%、特に好ましくは1から50wt.−%の溶媒を含む。溶媒として水を含む歯科材料が好ましい。0から20wt.−%、特に1から10wt.−%の水を含む歯科材料が特に好ましい。
【0073】
本発明による歯科修復材料の剥離特性は、本材料の組成により、標的化されて影響を受け得る。特定の目的のための適切な組成の調整は、当業者の一般的知識および能力に属する。したがって、加熱することによる、必要に応じた剥離能は、熱不安定性成分、即ち特に式Iの熱不安定性化合物ならびに場合によっては熱不安定性架橋モノマーおよびガス放出性添加剤の使用濃度とともに向上する。さらに、剥離特性はまた、コモノマーの選択によっても変動し得、架橋密度、したがって強度および弾性係数も、架橋モノマーの割合とともに、または、単官能性モノマーの付加により、変動し得る。
【0074】
式Iの熱不安定性化合物に基づく本発明による歯科材料は、特に、例えばブラケット、冠またはベニアを可逆的に取り付けるために使用され得る。好ましくは接合は、最初に、式Iの熱不安定性化合物に基づく材料(接着剤またはセメント)を硬化させることにより形成される。あるいは、式Iの本発明によるオリゴマー性またはポリマー性熱不安定性化合物は、例えば粉末の形態で、直接使用することもでき、この場合、接合を形成させるために、熱不安定性結合の切断が始まる温度を上回る温度にこれらを短時間加熱する。電磁放射によってエネルギーを導入し得る。このために、式Iのオリゴマー性またはポリマー性熱不安定性化合物は、好ましくは、放射電磁線を熱に変換し得る添加剤と合わせられる。好ましい実施形態によれば、IR放射線源またはレーザーを介して、標的化されたエネルギー導入が行われる。別の好ましい実施形態によれば、エネルギーは、UV放射によって、特に320から390nmの範囲の波長で、好ましくはUV吸収剤の存在下で導入される。さらに、強磁性粒子、例えば強磁性ナノ粒子などが本発明による歯科材料に組み込まれる場合、交番磁界の作用によって、誘導加熱を達成し得る。剥離するためには、接着接合された部分を、同様に、特に上述のように、熱不安定性結合の切断が始まる温度を上回る温度に短時間加熱しなければならない。
【0075】
本発明の主題はまた、歯科修復材料としての、または、歯科修復材料、好ましくは接着剤またはセメント、特に好ましくはセルフエッチング接着剤またはセメントの調製のための、上記で記載のような、式Iの熱不安定性化合物または組成物の使用でもある。
【0076】
本発明の主題は、さらにまた、可逆性接着剤もしくは自己回復性塑性材料としての、または可逆性接着剤または自己回復性塑性材料を作製するための、上記で記載のような、式Iの熱不安定性化合物または組成物の使用でもある。
【0077】
実施例によって下記で本発明をより詳細に説明する。
【実施例】
【0078】
実施例1
オリゴマー性熱不安定性水素結合化合物UPy−Kratonの合成
【0079】
【化4】
【0080】
ヒドロキシ末端水素化ポリ(エチレン−コ−ブチレン)(Krasol HLBH−P3000、Cray Valley、平均モル質量3500g/mol、10.0g)を真空乾燥炉中で2日間、65℃および400mbarで乾燥させ、次いで、窒素囲気下で撹拌することによって100mLの無水クロロホルム中で溶解した。2(6−イソシアナトヘキシルアミノカルボニルアミノ)−6−メチル−4[1H]ピリミジン(UPy イソシアナート、3.32g、11.3mmol)を30mLの乾燥クロロホルム中で溶解し、Krasol溶液に添加し、反応混合物を40℃に加熱した。次に、2滴のジラウリン酸ジブチルスズを触媒として添加し、混合物を加熱し、還流下で16時間撹拌した。50℃に冷却後、3gの3−アミノプロピルシリケートを添加し、反応混合物を再加熱し、還流下で3時間撹拌した。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、一晩撹拌した。混合物を室温で遠心し(7000rpm、5分間)、固形成分を分離し、残渣をクロロホルムで2回洗浄した。有機相を合わせ、ロータリーエバポレーターで溶媒を分離した。次いで粗製生成物を高真空、室温で一晩乾燥させた。9.78g(76%収率)のUPy−Kratonを透明な弾力のある固形物として得た。
【0081】
1H−NMR(360 MHz, CDCl
3):δ=13.14(s, 1H), 11.88(s, 1H), 10.12(s, 1H), 5.86(s, 1H), 4.84(s, 1H), 4.06(s, 3H), 3.20(m, 8H), 2.23(s, 6H, CH3), 1.67−0.92(m, 436H), 0.92−0.50(m, 132H).
13C−NMR(91 MHz, CDCl
3):δ=183.06, 148.47, 135.73, 107.11, 103.50, 39.27, 38.81, 38.27, 36.50, 33.89, 33.64, 31.08, 30.62, 30.16, 27.18, 26.99, 26.83, 26.44, 26.27, 11.28, 11.05, 10.95, 10.78, 10.67, 10.35.
IR(cm
−1):2959, 2921, 2872, 2852, 2270, 1700, 1666, 1589, 1527, 1460, 1379, 1304, 1254, 1139, 1041, 942, 843, 761, 744, 721, 621, 612, 602, 593, 586.
GPC:M
n=4000g/mol、M
w=7600g/mol、多分散性(M
w/M
n):1.90。
【0082】
実施例2
実施例1からのUPy−Kratonでの歯冠のセメント接着
5つのStraumann Anatomical IPS e.max橋脚歯(Ivoclar Vivadent AG)をそれぞれセメント接着および取り外し式義歯用のラボアナログ上に載せ、残根の高さが4mmになるように切り、残根の末端を丸くした。これらを適合させるために、100μmのセメントギャップを設定して、e.max ZirCAD(Ivoclar Vivadent AG)から切削冠を5個作製した。実施例1からのUPy−Kratonを冷却しながら粉末になるように粉砕した。この冠に20mgの微粉UPy−Kratonを満たし、80℃の温度で5分間維持した。この過程中にUPy Kratonが融解した。次に、同様に80℃の温度で維持した橋脚歯を、穏やかに回転させながら上記からの冠に挿入した。接合を完了させるために、セメント接着した冠に80℃で3分間、20Nを負荷し、次いで、負荷を維持しながら少なくとも10分間、室温に冷却した。試料調製から1時間後できるだけ早く、剥離力を測定した。
【0083】
剥離力を測定するために、冠をユニバーサル引張試験機(Zwick−Roell Z010)中に固定した。次に、1.0mm/分の一定速度で冠を橋脚歯から引き剥がし、各場合で生じた最大の力を記録した。103.0±23.7Nの剥離力が測定された。
【0084】
セメント接着した冠を80℃に加熱することによって、力を入れずにこれらを残根から除去することができた。
【0085】
実施例3A(比較):
実施例1からのUPy−Kratonと透明基材の光学的接合
実施例1からのUPy−Kratonを加工処理して、およそ90μmの薄膜を形成させ、これを2枚の石英硝子間のおよそ10x10mmの面上に置いた。接合させようとする部位に点光源から2x60秒のパルスでUV光を照射した(Dr.Hoenle、波長範囲λ=320〜390nm、強度900mW cm
−1)。接着接合は達成されなかった。
【0086】
実施例3B
実施例1からのUPy−KratonおよびUV吸収剤の混合物と透明基材の光学的接合
実施例1からのUPy−Kratonを0.25wt.−%のUV吸収剤2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール(Tinuvin 326、Ciba)と混合した。この混合物を加工処理して、およそ90μmの薄膜を形成させ、これを2枚の石英硝子間のおよそ10x10mmの面上に置いた。接合させようとする部位に点光源から2x60秒のパルスでUV光を照射した(Dr.Hoenle、波長範囲λ=320〜390nm、強度900mW cm
−1)。2つの基材間で良好に接着して気泡のない接合が達成された。ユニバーサル引張試験機(Zwick−Roell Z010)において剥離力を測定した。およそ1MPaの剥離力が測定された。
【0087】
図1は、実施例1からのUPy−Kraton製のおよそ90μmの薄膜(「純粋」)、および0.25wt.−%のUV吸収剤Tinuvin 326と実施例1からのUPy−Kratonとの混合物(「Tinuvin 326入り」)、ならびにクロロホルムとアセトニトリルの混合物中0.02mg/mLのTinuvin 326の溶液(「Tinuvin 326」)のUV−Vis吸収スペクトルを示す。
【0088】
図2は、実施例3Bからの接着接合に対する引張試験の結果を示す。
【0089】
実施例3C(比較)
実施例1からのUPy−Kratonと透明基材の接着接合の光学的剥離
実施例1からのUPy−Kratonを加工処理して、およそ90μmの薄膜を形成させ、これを2枚の石英硝子間のおよそ10x10mmの面上に置いた。気泡のない接合が形成されるまで、接合させようとする部位をヒートガンによって加熱した。2つの基材間の良好な接着が達成された。ユニバーサル引張試験機(Zwick−Roell Z010)において剥離力を測定した。およそ1.1MPaの剥離力が測定された。
【0090】
次に試料をユニバーサル引張試験機(Zwick−Roell Z010)中に固定し、およそ53Nの力が接着連結部上で作用するように張力をかけた。接着連結部に300秒間、点光源からUV光を照射した(Dr.Hoenle、波長範囲λ=320〜390nm;強度900mW cm
−1)。しかし、接着接合は剥離しなかった。
【0091】
実施例3D
実施例1からのUPy−KratonおよびUV吸収剤の混合物と透明基材の接着接合の光学的剥離
実施例1からのUPy−Kratonを0.25wt.−%のUV吸収剤2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール(Tinuvin 326、Ciba)と混合した。この混合物を加工処理して、およそ90μmの薄膜を形成させ、これを2枚の石英硝子間のおよそ10x10mmの面上に置いた。気泡のない接合が形成されるまで、接合させようとする部位をヒートガンによって加熱した。2つの基材間の良好な接着が達成された。
【0092】
次に、試料をユニバーサル引張試験機(Zwick−Roell Z010)中に固定し、およそ30Nの力が接着連結部上で作用するように張力をかけた。接着連結部に点光源からUV光を照射した(Dr.Hoenle、波長範囲λ=320〜390nm;強度900mW cm
−1)。わずかおよそ30秒後、接着接合が剥離した。
【0093】
実施例4
熱不安定性金属−配位子錯体[Zn
0.8BKB](NTf
2)
1.6の合成
工程1:二官能性配位子BKB([2,6−ビス−(1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−ピリジン−4−イルオキシ]末端水素化ポリ(エチレン−コ−ブチレン))の合成
【0094】
【化5】
【0095】
−40℃での乾燥THF(120mL)中の2,6−ビス−(1−メチル−1H−ベンゾイミダゾリル)−4−ヒドロキシピリジン(2.30g、6.47mmol)、トリフェニルホスフィン(3.40g、13.0mmol)およびヒドロキシ末端水素化ポリ(エチレン−コ−ブチレン)(Krasol HLBH−P3000、Cray Valley、平均モル質量3500g/mol、9.1g)の溶液にジエチルアゾジカルボキシラート(DEAD、5mL、トルエン中40wt.−%)を添加し、混合物を撹拌した。4時間後、温度をゆっくりと25℃まで上昇させ、反応混合物をさらに44時間撹拌した。次いで溶媒を真空下で除去し、熱ヘキサン(150mL)中で粗製生成物を溶解した。溶液をメタノールで3回、1M NaOHで3回洗浄した。クロマトグラフィー(CH
2Cl
2、SiOH)によって粗製生成物を精製し、一晩乾燥させ、その結果としてBKBを白色の粘着性の固形物として得た(9.0g、81%収率)。
【0096】
1H−NMR(360 MHz, CDCl
3):δ=8.05(s, 4H), 7.94(s, 4H), 7.54−7.37(m, 13H), 4.39−4.16(m, 18H), 1.96−0.95(m, 477H), 0.95−0.54(m, 148H).
13C−NMR(91 MHz, CDCl
3):δ=175.60, 167.14, 151.83, 148.96, 142.45, 136.42, 126.95, 121.79, 110.29, 107.24, 39.02, 38.52, 38.04, 36.26, 33.39, 30.81, 30.36, 29.90, 26.93, 26.74, 26.26, 26.19, 26.02, 11.03, 10.82, 10.79.
GPC:M
n=3700g/mol、M
w=4700g/mol、多分散性(M
w/M
n)=1.27。
【0097】
UV−Vis滴定:M
n=4400g/mol。
【0098】
NMR分光法:M
n=4800g/mol。
【0099】
工程2:ポリマー性金属−配位子錯体[Zn
0.8BKB](NTf
2)
1.6の合成
【0100】
【化6】
【0101】
乾燥アセトニトリル(MeCN、10mL)中で亜鉛(II)トリフルオロメタンスルホンアミド(Zn(NTf
2)
2、116.6mg)を溶解した。C
12BIP(2,6−ビス−(1−メチル−1H−ベンゾイミダゾリル)−4−ドデシルオキシ−ピリジン)でのUV−Vis滴定により溶液中のZn
2+の正確な濃度を求めた。クロロホルム(7mL、塩基性Al
2O
3で乾燥)中でBKB(2.01g)を溶解し、慎重に撹拌しながら、対応する量のZn(NTf
2)
2溶液を滴下して添加した。10分間のさらなる撹拌後、真空下で溶媒を除去し、生成物をさらに一晩乾燥させた。フィルムを得るために、得られた生成物を加熱圧搾した。そのUVスペクトルを記録した。
図3はこのようにして得られたフィルムのUV−VIS吸収スペクトルを示す。
【0102】
実施例5
実施例4からの[Zn
0.8BKB](NTf
2)
1.6での歯冠のセメント接着
実施例2と同様に、e.max ZirCAD製の切削冠をStraumann Anatomical IPS e.max橋脚歯にセメント接着させ、この冠に[Zn
0.8BKB](NTf
2)
1.6を満たし、180℃の温度で維持した。接合を完了させるために、セメント接着した冠に180℃で3分間、20Nを負荷し、次いで、負荷を維持しながら少なくとも10分間、室温に冷却した。試料調製から1時間後できるだけ早く、剥離力を測定した。33.0±8.7Nの剥離力が測定された。
【0103】
セメント接着した冠を180℃に加熱することによって、力を入れずにこれらを残根から除去することができた。
【0104】
実施例6A
実施例4からの[Zn
0.8BKB](NTf
2)
1.6との透明基材の光学的接合
実施例4からの[Zn
0.8BKB](NTf
2)
1.6を加工処理して、およそ90μmの薄膜を形成させ、これを2枚の石英硝子間のおよそ10x10mmの面上に置いた。接合させようとする部位に点光源から5x60秒のパルスで光を照射した(Dr.Hoenle、波長範囲λ=320〜390nm、強度900mW cm
−1)。2つの基材間の良好な接着が達成された。ユニバーサル引張試験機(Zwick−Roell Z010)において剥離力を測定した。1MPaを超える剥離力が測定された。
【0105】
図4は、実施例6Aからの接着接合に対する引張試験の結果を示す。
【0106】
実施例6B
実施例4からの[Zn
0.8BKB](NTf
2)
1.6と透明基材の接着接合の光学的剥離
実施例4からの[Zn
0.8BKB](NTf
2)
1.6を加工処理して、およそ90μmの薄膜を形成させ、これを2枚の石英硝子間のおよそ10x10mmの面上に置いた。気泡のない接合が形成されるまで、接合させようとする部位をヒートガンによって加熱した。2つの基材間の良好な接着が達成された。
【0107】
次に、試料をユニバーサル引張試験機(Zwick−Roell Z010)中に固定し、およそ53Nの力が接着連結部上で作用するように張力をかけた。接着連結部に点光源からUV光を照射した(Dr.Hoenle、波長範囲λ=320〜390nm;強度900mW cm
−1)。わずかおよそ30秒後、接着接合が剥離した。