(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095666
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】内燃機関に用いられるピストンおよび該ピストンを製造する方法
(51)【国際特許分類】
F02F 3/18 20060101AFI20170306BHJP
F02F 3/00 20060101ALI20170306BHJP
F16J 1/01 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
F02F3/18
F02F3/00 302Z
F02F3/00 G
F16J1/01
【請求項の数】12
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-531101(P2014-531101)
(86)(22)【出願日】2012年9月14日
(65)【公表番号】特表2014-528040(P2014-528040A)
(43)【公表日】2014年10月23日
(86)【国際出願番号】DE2012000919
(87)【国際公開番号】WO2013041076
(87)【国際公開日】20130328
【審査請求日】2015年8月19日
(31)【優先権主張番号】102011113800.9
(32)【優先日】2011年9月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ビショフベアガー
【審査官】
木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭52−066126(JP,A)
【文献】
特開2005−127300(JP,A)
【文献】
特開2006−075756(JP,A)
【文献】
特開2007−100612(JP,A)
【文献】
実開平05−066247(JP,U)
【文献】
特開2009−114981(JP,A)
【文献】
特表2014−525536(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0087153(US,A1)
【文献】
特開昭60−045756(JP,A)
【文献】
特開平04−265451(JP,A)
【文献】
特表2007−507652(JP,A)
【文献】
特表2011−506830(JP,A)
【文献】
特表2011−514258(JP,A)
【文献】
特開2014−185522(JP,A)
【文献】
実開平6−49745(JP,U)
【文献】
特開昭62−96762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 3/16− 3/22
F01P 1/00−11/20
F16J 1/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に用いられるピストン(10)であって、該ピストン(10)が、ピストンヘッド(11)とピストンスカート(16)とを備えており、ピストンヘッド(11)が、環状に延びるリング部分(15)と、該リング部分(15)の領域に、環状に延びるクーリングチャンネル(23)とを有しており、ピストンスカート(16)が、それぞれボス孔(18)を備えた複数のピストンボス(17)を有しており、該ピストンボス(17)が、ボス結合部(19)を介してピストンヘッド(11)の下面(11a)に配置されており、ピストンボス(17)が、摺動面(21,22)を介して互いに結合されている、内燃機関に用いられるピストンにおいて、
前記ピストンボス(17)の内部に配置されているとともに、1つの摺動面(21,22)と1つのボス孔(18)との間に配置された、外部に対して閉鎖された少なくとも1つの孔(24a,24b,24c,24d)が設けられており、該少なくとも1つの孔(24a,24b,24c,24d)が、クーリングチャンネル(23)に開口しており、該クーリングチャンネル(23)と少なくとも1つの孔(24a,24b,24c,24d)とが、低融点の金属または低融点の金属合金の形態の冷媒(27)を含んでいることを特徴とする、内燃機関に用いられるピストン。
【請求項2】
低融点の金属として、ナトリウムまたはカリウムが含まれている、請求項1記載のピストン。
【請求項3】
低融点の金属合金が、ガリンスタン(登録商標)合金、低融点のビスマス合金およびナトリウム−カリウム合金を含むグループから選択されている、請求項1記載のピストン。
【請求項4】
冷媒(27)が、リチウムおよび/または窒化リチウムを含んでいる、請求項1記載のピストン。
【請求項5】
冷媒(27)が、酸化ナトリウムおよび/または酸化カリウムを含んでいる、請求項1記載のピストン。
【請求項6】
4つの孔(24a,24b,24c,24d)が設けられており、該孔(24a,24b,24c,24d)が、摺動面(21,22)とボス孔(18)との間にそれぞれ1つずつ配置されている、請求項1記載のピストン。
【請求項7】
少なくとも1つの孔(24a,24b,24c,24d)が、閉鎖エレメント(26)によって閉鎖されている、請求項1記載のピストン。
【請求項8】
閉鎖エレメント(26)が、孔内に圧入されているかまたはピストンに溶接されている、請求項7記載のピストン。
【請求項9】
冷媒(27)が、クーリングチャンネル(23)の高さの半分までの充填高さを有している、請求項1記載のピストン。
【請求項10】
冷媒(27)が、クーリングチャンネル(23)の容積の3%〜5%の充填量を有している、請求項1記載のピストン。
【請求項11】
ピストン(10)が、主として、鉄ベースの材料から成っている、請求項1記載のピストン。
【請求項12】
鉄ベースの材料が、析出硬化型の鋼、調質鋼、高強度の鋳鉄および片状黒鉛を含んだ鋳鉄を含むグループから選択されている、請求項11記載のピストン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に用いられるピストンであって、該ピストンが、ピストンヘッドとピストンスカートとを備えており、ピストンヘッドが、環状に延びるリング部分と、該リング部分の領域に、環状に延びるクーリングチャンネルとを有しており、ピストンスカートが、それぞれボス孔を備えた複数のピストンボスを有しており、該ピストンボスが、ボス結合部を介してピストンヘッドの下面に配置されており、ピストンボスが、摺動面を介して互いに結合されている、内燃機関に用いられるピストンに関する。
【0002】
現代の内燃機関では、ピストンがピストン頂面の領域でますます高い熱負荷にさらされている。これによって、運転中に、ピストンヘッドとピストンスカートとの間に、著しい温度差が生じてしまう。また、これによって、冷間時の機関内のピストンの組込みクリアランスと、暖機時の機関内のピストンの組込みクリアランスとの間にも、差が生じてしまう。
【0003】
本発明の課題は、冒頭に記載のピストンを改良して、運転中に、ピストンヘッドとピストンスカートとの間に、より均一な温度分配が生じるようにすることである。
【0004】
解決手段は、1つの摺動面と1つのボス孔との間に配置された、外部に対して閉鎖された少なくとも1つの孔が設けられており、該少なくとも1つの孔が、クーリングチャンネルに開口しており、該クーリングチャンネルと少なくとも1つの孔とが、低融点の金属または低融点の金属合金の形態の冷媒を含んでいることにある。
【0005】
本発明に係るピストンは、ピストン頂面の領域に発生させられた熱が、ピストンヘッドを介してピストン内に導かれ、比較的大きな面積の摺動面を介して放出される点で優れている。これによって、運転中に、ピストン全体にわたって、より均一な熱分配が達成される。さらに、ピストン全体のより効果的な冷却が達成される。
【0006】
ピストンヘッドの下面が冷却オイルで付加的に冷却されると、オイルカーボンの形成が回避される。全体として、さらに、冷却オイル消費量が減じられている。
【0007】
ピストンボスとピストンスカートとの間の領域の付加的な加熱によって、ピストンスカートの付加的な熱膨張が生じ、これによって、ピストンとシリンダとの間の暖機クリアランスが減じられる。これは、特にピストン材料の熱膨張率よりも高い熱膨張率を有する軽金属材料、たとえばアルミニウムベースの材料から成るクランクケーシングが使用される場合に有利である。
【0008】
有利な改良態様は、従属請求項から明らかである。
【0009】
冷媒として使用するために適した低融点の金属は、特にナトリウムまたはカリウムである。低融点の金属合金として、特にガリンスタン(登録商標)合金、低融点のビスマス合金およびナトリウム−カリウム合金を使用することができる。
【0010】
ガリウム、インジウムおよびスズから成る、室温で液状である合金系が、いわゆる「ガリンスタン(登録商標)合金」と呼ばれる。この合金は、65質量%〜95質量%のガリウムと、5質量%〜26質量%のインジウムと、0質量%〜16質量%のスズとから成っている。好適な合金は、たとえば、68質量%〜69質量%のガリウムと、21質量%〜22質量%のインジウムと、9.5質量%〜10.5質量%のスズとを含んだ合金(融点−19℃)、62質量%のガリウムと、22質量%のインジウムと、16質量%のスズとを含んだ合金(融点10.7℃)ならびに59.6質量%のガリウムと、26質量%のインジウムと、14.4質量%のスズとを含んだ合金(三元共晶、融点11℃)である。
【0011】
低融点のビスマス合金は数多く知られている。これらのビスマス合金には、たとえば、LBE(鉛ビスマス共晶合金、融点124℃)、ローズメタル(50質量%のビスマス、28質量%の鉛および22質量%のスズ、融点98℃)、オリオンメタル(42質量%のビスマス、42質量%の鉛および16質量%のスズ、融点108℃);簡易はんだ(52質量%のビスマス、32質量%の鉛および16質量%のスズ、融点96℃)、ダルセーメタル(50質量%のビスマス、25質量%の鉛および25質量%のスズ)、ウッドメタル(50質量%のビスマス、25質量%の鉛、12.5質量%のスズおよび12.5質量%のカドミウム、融点71℃)、リポウィッツメタル(50質量%のビスマス、27質量%の鉛、13質量%のスズおよび10質量%のカドミウム、融点70℃)、ハーパーメタル(44質量%のビスマス、25質量%の鉛、25質量%のスズおよび6質量%のカドミウム、融点75℃)、セロロー117(44.7質量%のビスマス、22.6質量%の鉛、19.1質量%のインジウム、8.3質量%のスズおよび5.3質量%のカドミウム、融点47℃);セロロー174(57質量%のビスマス、26質量%のインジウム、17質量%のスズ、融点78.9℃)、フィールドメタル(32質量%のビスマス、51質量%のインジウム、17質量%のスズ、融点62℃)ならびにウォーカー合金(45質量%のビスマス、28質量%の鉛、22質量%のスズおよび5質量%のアンチモン)が属している。
【0012】
適切なナトリウム−カリウム合金は40質量%〜90質量%のカリウムを含有していてよい。78質量%のカリウムと22質量%のナトリウムとを含んだ共晶合金NaK(融点−12.6℃)が特に適している。
【0013】
冷媒は付加的にリチウムおよび/または窒化リチウムを含有していてよい。充填時に保護ガスとして窒素が利用される場合には、この窒素がリチウムと反応して、窒化リチウムを生成し、こうして、クーリングチャンネルから窒素を除去することができる。
【0014】
さらに、充填の間に場合により存在する乾燥した空気が冷媒と反応する場合には、冷媒が酸化ナトリウムおよび/または酸化カリウムを含有していてよい。
【0015】
好ましくは、摺動面とボス孔との間にそれぞれ1つずつ配置された4つの孔が設けられており、これによって、ピストン内での特に均一な温度分配が達成される。
【0016】
少なくとも1つの孔が、好適には、たとえば孔内に圧入されたかまたはピストンに溶接された閉鎖エレメントによって閉鎖されており、これによって、冷媒が流出することが回避される。
【0017】
クーリングチャンネル内もしくは少なくとも1つの孔内に収容される冷媒の量は、この冷媒の熱伝導率と、所望される温度制御の程度とに関連している。好ましくは、冷媒が、クーリングチャンネルの高さの半分までの充填高さを有しており、これによって、シェーカ効果ひいてはピストン内での特に有効な熱分配が達成される。
【0018】
特に機関運転の間にピストン内に流れ込む燃焼熱の割合を制限したい場合、このことは、注入される冷媒の量によって制御することができる。ピストンの機能を確保するためには、時として、冷媒によるクーリングチャンネル容積の3%〜5%の充填ですでに十分であることが判った。
【0019】
本発明に係るピストンは、好ましくは、主として、鉄ベースの材料、たとえば析出硬化型の鋼、調質鋼、高強度の鋳鉄および片状黒鉛を含んだ鋳鉄を含むグループから選択された材料から成っている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係るピストンの実施の形態の部分的な断面図である。
【
図3】
図1のIII−IIIに沿った断面図である。
【0021】
以下に、本発明の実施の形態を添付の図面に基づき詳しく説明する。図面は、本実施の形態を概略的に示したものであり、正確な縮尺で示したものではない。
【0022】
図1〜
図4には、本発明に係るピストン10の実施の形態が示してある。このピストン10は、一体型のピストンであってもよいし、複数の部分から成る組立型のピストンであってもよい。ピストン10は、鉄ベースの材料および/または軽金属材料から製造することができる。本実施の形態では、鉄ベースの材料が好適である。
【0023】
図1〜
図3には、一体型のスリッパスカートピストン10が例示してある。このピストン10はピストンヘッド11を有している。このピストンヘッド11は、燃焼キャビティ13を有するピストン頂面12と、環状に延びるトップランド14と、ピストンリング(図示せず)を収容するためのリング部分15とを備えている。このリング部分15の高さには、環状に延びるクーリングチャンネル23が設けられている。さらに、ピストン10はピストンスカート16を有している。このピストンスカート16は、複数のピストンボス17と、それぞれピストンピン(図示せず)を収容するためのボス孔18とを備えている。ピストンボス17はボス結合部19を介してピストンヘッド11の下面11aに結合されている。ピストンボス17は、摺動面21,22を介して互いに結合されている(特に
図2参照)。
【0024】
ピストンスカート16は、本実施の形態では、4つの孔24a,24b,24c,24dを有している。これらの孔24a〜24dは、本実施の形態では、ほぼ軸方向にかつピストン中心軸線Mに対して平行に延びている。しかし、孔24a〜24dは、ピストン中心軸線Mに対して所定の角度を成して傾けられて延びていてもよい。孔24a〜24dは、1つの摺動面21,22と1つのボス孔18との間に配置されている、つまり、摺動面21,22とボス孔18との間にそれぞれ1つずつ配置されている。孔24a〜24dはクーリングチャンネル23に開口している。
【0025】
本実施の形態では、ピストン10を、たとえば自体公知の形式で鋳造することができる。その際、クーリングチャンネル23と孔24a〜24dとを自体公知の形式で塩中子によって加工することができる。少なくとも1つの孔24aが外部に向かって開口25を有していることが重要である。本発明によれば、この開口25を通して孔24a内に冷媒27、つまり、すでに列挙して上記したような低融点の金属または低融点の金属合金が充填される。そこから、冷媒27がクーリングチャンネル23内ならびに別の孔24b〜24d内に分配される。次いで、開口25が、本実施の形態では、鋼球26の圧入によって密に閉鎖される。開口25は、たとえばカバーの溶接またはキャップの圧入によって閉鎖されてもよい(図示せず)。
【0026】
孔24a〜24dのサイズと冷媒27の充填量とは、ピストン10のサイズおよび材料に左右される。平均すると、ピストン10あたり約10g〜40gの冷媒27が必要になる。冷却能力は、追加される冷媒27の熱伝導率を考慮して、冷媒27の量に基づいて制御することができる。たとえば、クーリングチャンネル23の高さの半分にほぼ相当するクーリングチャンネル23内の充填レベルが適している。この場合、運転中に、ピストン10内での特に有効な熱分配のために、自体公知のシェーカ効果を付加的に利用することができる。運転中に220℃の温度を伴う冷媒27としてのナトリウムでは、350kW/m
2の冷却能力で約260℃のピストン10の最大の表面温度が生じる。
【0027】
付加的には、ピストンヘッド11の下面11aが冷却オイルの吹きかけによって冷却されてよい。
【0028】
孔24aへの冷媒27の充填のためには、開口25を通してランスが導入され、窒素、別の適切な不活性ガスまたは乾燥した空気によってパージが行われる。冷媒27を導入するためには、この冷媒27が保護ガス(たとえば窒素、不活性ガスまたは乾燥した空気)下で開口25を通して案内され、これによって、冷媒27が孔24a内もしくはクーリングチャンネル23内に収容される。
【0029】
孔24aに冷媒27を充填するための別の方法は、窒素、不活性ガスまたは乾燥した空気によるパージ後、孔24a〜24dとクーリングチャンネル23とが排気され、冷媒27が真空内で供給される点で優れている。これによって、冷媒27をより容易に、クーリングチャンネル23内では周方向に流通させることができ、孔24a〜24d内では上下動させることができる。なぜならば、冷媒27が既存の保護ガスによって邪魔されないからである。
【0030】
クーリングチャンネル23もしくは孔24a〜24dから保護ガスを除去するための別の可能性は、窒素または乾燥した空気(すなわち、主として、窒素と酸素とから成る混合物)を保護ガスとして利用し、冷媒27に少量のリチウム、経験により、ガス室(すなわち、クーリングチャンネル23の容積+孔24a〜24dの容積)1cm
3あたり約1.8mg〜2.0mgのリチウムを添加することにある。たとえば、ナトリウムおよびカリウムが酸素と反応して、酸化物を生成するのに対して、リチウムは窒素と反応して、窒化リチウムを生成する。したがって、保護ガスが実際には完全に固形物として冷媒27内で合成される。