(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095671
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】流体処理制御システムおよび対応する方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/36 20060101AFI20170306BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
C12M1/36
C12M1/00 C
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-534789(P2014-534789)
(86)(22)【出願日】2012年10月5日
(65)【公表番号】特表2014-528246(P2014-528246A)
(43)【公表日】2014年10月27日
(86)【国際出願番号】US2012059013
(87)【国際公開番号】WO2013052836
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2015年9月11日
(31)【優先権主張番号】61/544,416
(32)【優先日】2011年10月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514085160
【氏名又は名称】ポール テクノロジー ユーケイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PALL TECHNOLOGY UK LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ペセ,ビシュワズ
【審査官】
小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/062621(WO,A2)
【文献】
国際公開第2010/115185(WO,A1)
【文献】
特開平05−123156(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/048417(WO,A2)
【文献】
特開平01−206988(JP,A)
【文献】
特開2009−278991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00− 3/10
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リザーバからの流体を処理するさいに使用するシステムにおいて、
前記流体を前記リザーバから受け取るために利用する複数のバイオリアクターと、
前記リザーバから前記流体を受け取るために利用し且つ前記複数のバイオリアクターに前記流体を移送するために利用する少なくとも一つの中間ベッセルと、
酸素濃度、溶存酸素、pH、栄養素レベル、温度、二酸化炭素、アンモニア、細胞バイオマス、ミキサー速度、スパージャー空気流量および流体流量のうちの少なくとも一つを第1のパラメータとして、前記リザーバの中の前記流体の前記第1のパラメータを検出する少なくとも一つの第1センサと、
酸素濃度、溶存酸素、pH、栄養素レベル、温度、二酸化炭素、アンモニア、細胞バイオマス、ミキサー速度、スパージャー空気流量および流体流量のうちの少なくとも一つを第2のパラメータとし、複数の第2センサの夫々毎に少なくとも一つの前記バイオリアクターを関連付けて、前記複数のバイオリアクターのうちの少なくとも一つの前記バイオリアクター内の前記流体の前記第2のパラメータを検出するために利用する複数の前記第2センサと、
前記パラメータを調節するためのレギュレータが複数あり、前記中間ベッセル内の前記流体に含まれる前記第1および第2のパラメータの少なくとも一つを個々に調整するために利用する複数の前記レギュレータと、
を備えたことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとが同じパラメータである請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとが異なるパラメータである請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記リザーバ内の流体を攪拌するためのミキサーを備えた請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記複数のバイオリアクターは可撓性のバッグを有する請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記中間ベッセルを前記複数のバイオリアクターの夫々に流体を配送するために利用する請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
複数の中間ベッセルをさらに含み、
前記複数のバイオリアクターがバイオリアクターの組を複数構成して、
前記複数の中間ベッセルの夫々がバイオリアクターの複数の前記組の内の一つの前記組毎に流体を配送するために利用する請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
米国特許出願第61/544,416号明細書の記載を援用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は全体として流体処理技術に関し、より具体的にはバイオプロセシングを制御する制御システムに関する。
【背景技術】
【0003】
細胞には、例えば、酸素レベル、pHレベル、栄養素(糖分、微量養素など)レベル、および温度レベルを最適化した均質な培養培地が必要である。これは、通常は殺菌状態にある培養された細胞および培地を収容する、バイオリアクターと呼ばれている容器において実現することが可能である。従って、異なる条件下の異なる細胞、あるいは同一
の細胞
を多数のバッチ処理で培養する場合、個別に調節されたバイオリアクターを使用する必要がある。流体をマルチバイオリアクター
(multiple bioreactors:多数の生物反応器)に供給し、かつまた個々のバイオリアクターの確認
(validation:妥当性)に関して一つかそれ以上のパラメータおよび確認ファクターを個別的に制御できるリザーバ
(reservoir:液貯め容器)を設けることによってこの個別的なアプローチ
(approach:取組)を回避することが、効率の点およびコストの点からみて極めて好ましいと考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】USP8,137,959
【特許文献2】USP7,384,027
【発明の概要】
【0005】
本発明の流体処理に使用するシステムは、この流体を保持するリザーバおよびこのリザーバから当該流体を受け取る一つかそれ以上のバイオリアクターを有する。少なくとも一つのバイオリアクターの外部にある上記流体の第1パラメータを検出する少なくとも一つの第1センサを設けるとともに、バイオリアクター(複数の場合もある)の流体の第2パラメータを検出する少なくとも一つの第2センサを設ける。
【0006】
一つの実施態様の場合、本発明システムはさらに上記流体の第2パラメータに少なくとも部分的に基づいて上記流体の第1パラメータを制御するコントローラを有する。このコントローラの場合、上記リザーバの上記流体の第3パラメータを制御できるようになっていればよい。第1パラメータ、第2パラメータおよび第3パラメータのうち一つかそれ以上は、同じパラメータでもよく、あるいは異なるパラメータであればよい。
【0007】
本発明システムは、さらに、上記リザーバから流体を受けとり、そして流体を少なくとも一つのバイオリアクターに送り出す中間ベッセル(intermediate vessel)を有することができる。この中間ベッセルは、流体を複数のバイオリアクターに送り出すか、あるいは一つのバイオリアクターに送り出すようになっていればよい。上記コントローラは、上記中間ベッセルの流体の第3パラメータを制御できるようになっている。
【0008】
本発明システムはさらに、少なくとも一つの第1センサおよび少なくとも一つの第2センサから信号を受信するレシーバを有することができる。このレシーバは、流体がバイオリアクターに流入する前に、流体のパラメータを、少なくとも一つのバイオリアクターの流体のパラメータと比較するように構成することができる。
【0009】
上記の少なくとも一つの第1センサは、上記リザーバに対応し、このリザーバ内の流体の第1パラメータを検出することができる。また、このリザーバはミキサーを有することができ、本発明システムはポンプを有することができる。上記リザーバおよび上記バイオリアクターのうち少なくとも一つは可撓性のバッグを有することができる。上記バイオリアクターのうち少なくとも一つはローラボトルを有することができる。
【0010】
上記リザーバは、さらに、少なくとも一つのバイオリアクターの流出ラインから流体を受け取る少なくとも一つの受け取り口(port for receiving fluid)を有することができる。上記バイオリアクター(複数の場合もある)は、さらに、細胞成長を促進する基質(substrate)を有することができる。この基質は、固定パッキンを含む、細胞成長と両立する物質から構成することができる。
【0011】
流体を保持するリザーバと併用するバイオリアクターシステムは、このリザーバから流体を受け取る少なくとも一つのバイオリアクターを有する。第1のセンサがバイオリアクターの外部にある流体の第1パラメータを検出し、そして第2センサがこのバイオリアクター内の流体の第2パラメータを検出する。コントローラを設けて、センサ(複数の場合もある)の出力に基づいて流体の少なくとも第1パラメータを制御する。
【0012】
本発明システムは、第1センサおよび第2センサから出力信号を受信し、第1パラメータと第2パラメータを比較するレシーバを有することができる。バイオリアクターはさらに細胞成長と両立する物質などの細胞成長を促す基質を有することができる。一つの実施例では、この基質は組織スキャフォールド(tissue scaffold)を有することができる。
【0013】
上記の少なくとも一つのバイオリアクターには、上記リザーバから流体を受け取る流入ラインおよび上記バイオリアクターから流体を送り出す流出ラインを配設することができる。この流出ラインの場合、流体を上記リザーバにリサイクルすることができる。
【0014】
本発明システムには、上記バイオリアクターの外部にある流体の複数の第1パラメータを測定する複数の第1センサおよび上記バイオリアクター内の複数の第2パラメータを測定する複数の第2センサを設けることができる。このリザーバは可撓性バッグを有することができ、そして上記の少なくとも一つのバイオリアクターも可撓性バッグを有することができる。本発明システムには複数のバイオリアクターを設けることができ、かつそれぞれがこれら複数のバイオリアクターのうち少なくとも一つに対応する複数の第2センサを設けることができる。
【0015】
本発明の一つのシステムは、バイオリアクター内の流体のパラメータを検出するセンサを有するバイオリアクターと併用することができ、このシステムは、上記流体を保持し、かつこれを上記バイオリアクターに送り出すリザーバ、および上記バイオリアクター内の上記流体の第2パラメータに少なくとも部分的に基づいて上記バイオリアクターの外部にある上記流体の第1パラメータを制御する少なくとも一つのレギュレータを有する。
【0016】
上記の本発明システムには、複数のレギュレータを設けることができる。各レギュレータは、上記流体の異なるパラメータを独立して制御することができ、かつ上記リザーバ内の上記流体のパラメータを制御することができる。また、各レギュレータは上記リザーバと少なくとも一つのバイオリアクターとの間における上記流体のパラメータを制御することができる。
【0017】
また、本発明はリザーバおよびこのリザーバと流体連絡する少なくとも一つのバイオリアクターを有するシステム内の流体パラメータを確認する方法を提供するものでもある。この方法は、上記リザーバおよび上記バイオリアクター内の共通パラメータを検出することからなる。さらに、本発明方法は上記リザーバ内で検出された第1パラメータを上記バイオリアクター内で検出された第2パラメータと比較するステップを有することができる。上記バイオリアクターおよび上記リザーバ内における検出は、同時に行ってもよく、逐次的に行ってもよい。
【0018】
また、本発明はリザーバを有するシステムと併用する少なくとも一つのバイオリアクターの流体パラメータを個別に制御する方法を提供する。この方法は、上記リザーバおよび上記バイオリアクターの外部にある流体のパラメータを調節することからなる。本発明方法は、さらにバイオリアクターから上記流体を廃棄するステップを有し、さらに上記リザーバに複数のバイオリアクターを接続する。
【0019】
本発明の一つのバイオプロセシング方法では、リザーバを少なくとも一つのバイオリアクターと流体連絡し、このリザーバ内の流体の第1パラメータを検出する第1センサを設けるとともに、上記リザーバの外部にある上記流体の第1パラメータを検出する第2センサを設ける。この方法の場合、上記の第1パラメータまたは第2パラメータに基づいて上記流体を調節するステップを設定することができる。また、この方法の場合、上記の第1パラメータまたは第2パラメータに基づいて上記流体を調節するだけでなく、上記バイオリアクターと第2センサを併用するステップを有することができる。
【0020】
また、本発明の一つバイオプロセシング方法では、リザーバ内の流体のパラメータを制御し、この流体をバイオリアクターに送り出し、そしてこのバイオリアクター内の上記パラメータを検出する。この方法の場合、さらに、上記バイオリアクター内の検出されたパラメータに少なくとも部分的に基づいて、流体のパラメータを調節してからこの流体を上記バイオリアクターに流入させるステップを設定することができる。送り出しステップでは、上記流体を複数のバイオリアクターに送り出し、そして上記検出ステップでは、これら複数のバイオリアクター内のパラメータを検出する。この本発明方法の場合、第2バイオリアクターに流入する流体のパラメータから独立して、第1バイオリアクターに流入する流体のパラメータを調節する工程を設定することができる。
【0021】
本発明の実施態様の場合、いずれも検出すべきパラメータは酸素濃度、pH、栄養素レベル、温度、CO
2、アンモニア、細胞バイオマス、およびこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0022】
本明細書の一部を構成する添付図面は、本明細書に開示するいくつかの態様を説明するもので、開示と一緒に本発明の原理を説明するものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】流体パラメータ確認システムを有する第1実施態様によるバイオリアクターシステムを示す概略図である。
【
図2】複数のバイオリアクターを有する
図1のシステムを示す概略図である。
【
図3】バイオリアクターの個別的な制御を行うシステムを示す概略図である。
【
図4】複数のバイオリアクターを有する
図3のシステムの第1実施態様を示す概略図である。
【
図4a】
図3のシステムの第2実施態様を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1について説明すると、流体リザーバ12を一つかそれ以上のプロセスベッセルに接続したバイオプロセシングシステムを示す図である。一つの実施態様では、このプロセスベッセルは、培地(media)を受け取り、細胞を培養するバイオリアクター14からなる。なお、流体を処理する他のベッセルまたは容器も単独で、あるいはバイオリアクター14と組み合わせて使用することが可能である。
【0025】
リザーバ12は、可撓性ベッセル(例えば一部が剛性を示すバッグ)などの使い捨て式の容器から構成することができるが、廃棄してもよく、あるいは再使用してもよい全体が剛性を示す容器から構成することも可能である。さらに、このリザーバ12に導入される基質などを受け取る一つかそれ以上の受け取り口(図示省略)を設けることができる。さらに、リザーバ12には受け取り口の少なくとも一つに対応して一つかそれ以上のフィルターを設けて、リザーバ内に殺菌状態を維持することが可能である。一つの実施態様では、リザーバ12内での細胞成長を行わない。このために、リザーバ12を殺菌処理することができ、殺菌された流体を受け取ることができる。
【0026】
また、一つかそれ以上のバイオリアクター14も使い捨て式のベッセルで構成することができる。例えば、バイオリアクター14は普通“バッグ”と呼ばれる可撓性ベッセルの形を取ることができ、このバッグは全体が可撓性を示すものでもよく、あるいは一部が可撓性を示すものでもよい(例えば、剛性を示す底部をもつものでもよい)。なお、バイオリアクター14は全体が剛性を示す容器、例えばローラボトルで構成することも可能である。
【0027】
システム10、特に個々のバイオリアクター14を確認するために、センサ構成を設けることができる。一つの実施態様では、このセンサ構成は、リザーバ12に内部の流体のパラメータを検出する少なくとも一つの第1センサ16および目的のバイオプロセシング方法に応じてバイオリアクター14内の同じパラメータあるいは異なるパラメータのいずれかを検出する第2センサ22を設けることによって実現できる。このパラメータには、酸素濃度(即ち溶存酸素)、pH、栄養素レベル、温度、CO
2、アンモニア、細胞バイオマスなどの流体の特性、ミキサー速度、スパージャー空気流量または流体流量などのシステム特性、あるいはこれらの組み合わせがある。
【0028】
リザーバ12にはパラメータ(複数の場合もある)を測定するためにセンサ16、17、18などの一つかそれ以上の第1センサを設けることができ、そしてバイオリアクター14にはそれぞれ(例えばリザーバ12の対応する第1センサ16、17、18によって測定された各パラメータの比較値などであればよい)パラメータ(複数の場合もある)を測定するセンサ22、23、24などの一つかそれ以上の第2センサを設けることができる。これら第1センサおよび第2センサは、リザーバ12の壁に取り付けることができ、流体の無菌状態に関与しないように検出を行うことが可能である(例えば光学センサまたは音響素子など)。使用するセンサは使用後に廃棄される使い捨て式装置としてもよく、あるいはリサイクル可能な装置としてもよい。
【0029】
また場合に応じて、上記システム10には第1センサ16からの信号、および(同一でもよく、あるいは異なるパラメータでもよい)リザーバ12およびバイオリアクター14の測定されたパラメータの値に対応する第2センサ22からの信号を受信するレシーバ20を設けることができる。このレシーバ20は観察者による比較対象のそれぞれの値を出力することができればよく、あるいはリザーバ12のパラメータの値をバイオリアクター14のパラメータの値と比較するプロセッサと対応できるようになっていればよい。なお、この場合パラメータは同じである(例えば温度)。この比較は、上記値がリザーバおよびバイオリアクターの両者において対応することを確認するために行うことができる。即ち、確認の尺度である。上記値が同じであるかを確認すればよく、あるいは2つの値間の相違が許容範囲内にあることを確認すればよい(例えば、リザーバ12内の溶存酸素とバイオリアクター14内の溶存酸素が比較可能である)。
【0030】
一つの実施態様の場合、上記システム10にはさらに流体をリザーバ12からバイオリアクター14に導くポンプ28などの手段を設けることができる。このポンプ28によって流体をリザーバ12からバイオリアクター14に連続的に、あるいは選択的に送り出すことができる。あるいは、重力流れ(gravity flow)などの他の手段によって流体をリザーバからバイオリアクターに送り出すように上記システム10を構成してもよい。好適な弁/配管構成を利用して、流れを望ましい方法で制御することも可能である。
【0031】
レシーバ20によって比較の結果をユーザーに通知することが可能であり、また(例えば温度がパラメータの場合における加熱または冷却などの)パラメータ全体を自動的に制御して、所定のあるいは目的の結果を得ることも可能である。例えば、コントローラ21の場合、リザーバ12内の流体の少なくとも一つのパラメータを制御することができる。一例としてリザーバ12には、酸素を内部の流体に供給するスパージャーなどのエアレーション装置(aeration device)を設けることができ、またコントローラ21はスパージャーに供給される空気流を制御することができる。コントローラ21に対応する他の構成成分には、リザーバに(栄養素やpH調節剤などの)添加剤を供給する任意の数の素子、温度制御素子や目的のパラメータを制御する他の素子がある。
【0032】
リザーバ12にはさらに内容物を撹拌するミキサー25を設けることができる。このミキサー25はリザーバ内の流体を撹拌する羽根車やその他の適当な素子から構成することができる。例えば、ミキサー25は一つかそれ以上のブレードを有する使い捨て式磁気羽根車から構成してもよく、あるいは殺菌状態を維持できる(例えばパドルまたはロッドを有し、リザーバ12の区画室内で回転して流体を含有させるスリーブなど)他の形式のミキサーを利用することができる。このコントローラ21の場合、任意のセンサまたはオペレータからの入力を受けて、例えば(モータから構成することができる)対応する駆動装置と連動するなどによってミキサー25の回転速度全体を制御することができる。
【0033】
また、バイオリアクター14には流出ライン19を配管することができる。一つの実施態様では、流出ライン19がシステム10から流体を排出する。別な実施態様では、流出ライン19がバイオリアクター14から流体をリサイクルし、リザーバ12に戻す。
【0034】
また、バイオリアクター14にはミキサーを設けることができる。例えば、このミキサーは殺菌状態を維持できる羽根車などから構成することが可能である。また、バイオリアクター14にはスパージャー(sparger)(図示省略)を設けることも可能である。このバイオリアクター14は、USP7,384,027に記載されているタイプのものであればよく、この公報の開示内容はここに援用するものとする。
【0035】
一つの実施態様では、バイオリアクター14にはさらに細胞成長を促進する基質26を投入することができる。この基質26は無機キャリヤ(例えばシリケート類やリン酸カルシウムなど)、多孔質炭素などの有機化合物、キトサンなどの天然物質、あるいは細胞成長と両立できるポリマーまたはバイポリマーなどの任意の適当なキャリヤから構成することができる。基質26は、規則的な構造または不規則な構造をもつビーズの形を取ってもよく、あるいは細胞成長と両立する他の物質の形を取ってもよい。あるいは、基質26は多孔質および/またはチャネルを有する独立した基質でもよい。一つの実施態様では、バイオリアクター14はローラボトルから構成することができる。別な実施態様では、バイオリアクター14は、USP8,137,959、USP7,384,027に記載されているものでもよく、これら公報の開示内容についてはここに援用するものとする。
【0036】
図2に示すもう一つの実施態様であるシステム30は流体を保持するリザーバ12および、この流体を共通リザーバ12から受け取る複数のバイオリアクター14a〜14nからなる。このシステム30は例えばそれぞれが流体の目的のパラメータを検出するセンサ22a〜22dに対応する4基のバイオリアクター14a、14b、14c、14dなどの複数のバイオリアクターに適用された状態の上記確認構成を有する。リザーバ12は流体の同じパラメータを検出する対応するセンサ16を有し、ポンプ28によってバイオリアクター14a〜14dに対する流体転移を容易にする。バイオリアクターからの流体は廃棄してもよく、あるいは再循環させてリザーバ12に戻してもよい。
【0037】
図3に示すさらに別な実施態様であるシステム40の場合、流体がリザーバ12を出てから、バイオリアクター14などの外部ベッセルに達する前に流体パラメータを調節できる。一つの実施態様では、これはリザーバ12からバイオリアクター14に流体を送り出すライン中の流体パラメータを調節するレギュレータ32を設けることによって実施できる。このレギュレータ32は流体パラメータを調節できる任意の素子、例えば酸素源、pH源、栄養素源や温度を変更する熱レギュレータ(例えば加熱器または冷却器)から構成することができる。本システム40には、バイオリアクター14に流入する前に流体の複数のパラメータを制御する複数のレギュレータ32、33、34を設けることができる。流体はバイオリアクター14から廃棄してもよいが、再循環させてもよい。
【0038】
上記システム40にはさらに、バイオリアクター14に流入する前に、流体のパラメータ値を検出する少なくとも一つの中間センサ35を設けることができる。このセンサ35はレギュレータ32と連絡し、パラメータを調節すべきかどうかを、および/または調節度を決定することができる。この中間センサ35は、前述した確認システム10とほぼ同様に使用することができる。具体的には、リザーバ12の第1センサ16および中間センサ35はプロセッサと連絡し、各位置におけるパラメータ(複数の場合もある)の一つかそれ以上の値を比較することができる。パラメータ値の差分が所定の範囲内に収まっていない場合には、レギュレータ32が、バイオリアクター14に流体が流入する前に流体のパラメータ(複数の場合もある)の値を調節することができる。また、複数の中間センサ35、36、37は、複数の第1センサ16、17、18によって測定され、かつ複数のレギュレータ32、33、34によって調節された複数の流体パラメータ値を測定するために使用することができる。
【0039】
一つの実施態様では、レギュレータ32はリザーバ12から流体を受け取り、かつ流体をバイオリアクター14に送り出す中間ベッセル38に対応させることができる。この中間ベッセル38には、バイオリアクター14に流入する前に流体を撹拌するミキサーを設けることができる。さらに、中間ベッセル38には、リザーバ12とバイオリアクター14との間に流体を一時的に保持する、全体が剛性を示す容器、可撓性バッグあるいはその他の容器を設けることができる。
【0040】
本システム40には、流体をリザーバ12からバイオリアクター14に供給するポンプ28などの少なくとも一つの手段を設けることができる。ひとつの実施態様では、流体をバイオリアクターから取り出すためにさらに別な送り出し手段を設けることができる。中間ベッセル38を設ける場合、システムにはリザーバ12から中間ベッセル38に流体を送り出す第1ポンプ28、および流体をバイオリアクター14に送り出す第2ポンプ(図示省略)を設けることができる。
【0041】
図4aに、
図3に示した調節機構を備えた別な実施態様であるシステム50を示す。このシステム50の場合、リザーバ12が流体を複数のバイオリアクターに供給する。なお、バイオリアクターの基数は例示として4(14a〜14d)であるが、この基数は任意に設定することができる。複数のレギュレータ32a、32b、32c、32dが、中間ベッセル38a、38b、38c、38dとともに、それぞれのバイオリアクター14a〜14dに流体が流入する前に流体のパラメータを調節する。各レギュレータ32a、32b、32c、32dが一つのバイオリアクター14a〜14dに送られる流体のパラメータを制御するため、ユーザーが共通の均質流体を利用する複数のバイオリアクターを制御できるとともに、少なくとも一つの具体的なパラメータを各バイオリアクター間で変更できる。これは、特に各種パラメータを厳密な制限内で操作して細胞成長条件を最適化する研究環境において重要である。
【0042】
図4bは別な実施態様のシステム60を示す図である。このシステム60では、複数のバイオリアクター14a〜14nのそれぞれが一つのレギュレータによって制御されるパラメータをもつ流体を受け取ることができる。例えば、
図4bに示すように、レギュレータ32aがバイオリアクター14a、14cに送られる流体を制御し、レギュレータ32bがバイオリアクター14b、14dに送られる流体を制御する。レギュレータ32a、32bそれぞれが各中間ベッセル38a、38bに対応し、各ベッセルには対応するバイオリアクター14a〜14nに送られる前に流体を均質化するミキサーを設けることができる。
【0043】
この実施態様の場合、研究分野において
図4aの実施態様と同様な作用効果を示すが、工業的な製造用途においても一定の作用効果を示す。例えば、似ているが顕著な差異がある細胞成長環境で培養される培養物の場合、流体源として共通なリザーバ12を利用することができ、各レギュレータ32a、32bによってリアクターの複数の異なる状態における細胞成長の条件を独立して調節することができる。同様に、複数の異なる細胞タイプを培養するために利用することができるリザーバ12において共通な流体を生成することができる。この場合、上記システム60では各レギュレータによって各リアクターセットにおいて具体的な細胞タイプに対して最適化された培地を独立して制御することができる。
【0044】
上記のいくつかの実施態様に関する説明は、例示を目的としている。上記実施態様は、本発明を記載してきた正確な形態に制限するものではない。以上の説明から変更などが可能である。例えば、いくつかの流体パラメータに関して検出に応答して調節できると説明してきたが、パラメータの調節については、ミキサーの動作、ガス供給容量やその他のバイオプロセシング操作を変える可能性があるシステムの物理的特性などのシステムの物理的特性を変更することによって実施可能である。以上の実施態様の場合、本発明の原理およびその実際的な応用の最良な説明を与えるように選択したもので、当業者ならば本発明を各種の実施態様で実施でき、具体的な用途に応じて変更を加えることができるはずである。このような変更などはいずれも、公正、法的かつ公平に賦与された範囲に従って解釈される本発明の範囲内に包含されるものである。
【符号の説明】
【0045】
10,30,40,50,60 システム
12 リザーバ
14,14a,14b,14c,14d バイオリアクター
16,17,18 第1センサ
19 流出ライン
20 レシーバ
21 コントローラー
22,23,24 第2センサ
22a,22b,22c,22d センサ
25 ミキサ
26 基質
28 第1ポンプ
32,33,34 レギュレータ