(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
RETEVモチーフを含む30アミノ酸より少ないペプチドであって、ここで、該ペプチドのアミノ酸配列が配列番号1〜3、5及び7の少なくとも1つを含み、及びここで、該ペプチドが、4マイクロMより低いPTPN4のPDZについての親和性を有するペプチド。
請求項1〜6のいずれか一項記載のペプチド及び/又は請求項7記載の核酸及び/又は請求項8記載のベクター、及び/又は請求項9記載の宿主細胞及び/又は請求項10記載の化合物を含む、リポソームもしくはナノ粒子。
請求項1〜6のいずれか一項記載のペプチド、又は請求項7記載の核酸、又は請求項8記載のベクター、又は請求項9記載の宿主細胞、又は請求項10記載の化合物、又は請求項11記載のリポソームもしくはナノ粒子である、少なくとも1つのプロダクト、
場合により、少なくとも1つの抗新生物薬剤、
場合により、少なくとも1つの生理学的に許容可能な媒質
を含む、医薬的組成物。
請求項1〜6のいずれか一項記載のペプチド、又は請求項7記載の核酸、又は請求項8記載のベクター、又は請求項9記載の宿主細胞、又は請求項10記載の化合物、又は請求項11記載のリポソームもしくはナノ粒子、又は請求項12記載の医薬的組成物であるプロダクトであって、該プロダクトがヒト神経系の悪性新生物の処置における使用のためである、プロダクト。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一部のペプチドの配列アラインメント及びPTPN4−PDZについてのそれらの親和性。NMRにより測定された通りの、PTPN4−PDZについてのそれらのKd値に従って選別された9つのペプチドのC末端PDZ−BSの配列アラインメント(Prehaud et al., 2010):PTPN4−PDZ、GluN2A及びGluD2の内因性パートナーのC末端配列をそれぞれ包含するCyto8−RETEV(最適化配列;配列番号1);GluN2A−16(配列番号8)及びGluD2−13(配列番号10);ERA−NIV RABV株からのCyto13−att(配列番号11);CVS−NIV RABV株からのCyto13−vir(配列番号14);CVS−B2c RABV株からのEIRL−13(配列番号15);吸血コウモリRABV株からのDARL−13(配列番号16);Cyto13−attのコアを伴うPDZ−BS−RETEV
COOHをコードするキメラペプチドCyto9−ESDV(配列番号9);そのPDZ−BSから切断されたCyto13−attに対応するCyto9−Δ(配列番号17)。
【
図2A】U373MG星状細胞腫細胞における死の誘導は、PTPN4−PDZについてのペプチド親和性に関連する。U373 MG細胞はPTPN4を発現する。細胞を、一次PTPN4抗体、それに続くFITC共役二次抗体(線)又は二次抗体単独(灰色ヒストグラム)を用いて処理した。蛍光の特定のインデックス(SFI)=4SFI>1.25をポジティブと考えた。
【
図2B】U373MG星状細胞腫細胞における死の誘導は、PTPN4−PDZについてのペプチド親和性に関連する。ペプチド添加の動態。U373MG細胞を、25μM FITC−TAT−Cyto9−Δを用いて処理した。非透過処理生細胞中でのペプチド添加を、処置後10、20、40、60、120、及び180分にフローサイトメトリーにより分析した。灰色ヒストグラムは、未処理細胞のバックグラウンド蛍光に対応する。SFIはそれぞれ1.5、1.6、1.8、1.7、2.4、及び8.5であった。
【
図2C】U373MG星状細胞腫細胞における死の誘導は、PTPN4−PDZについてのペプチド親和性に関連する。細胞死を、3時間のペプチド処理により、n回の独立した実験において誘導した:Cyto9−Δ(n=9)、Cyto13−vir(n=4)、Cyto13−att(n=10)、Cyto9−ESDV(n=10)、GluN2A−16(n=4)、及びCyto8−RETEV(n=4)[それぞれ配列番号17、14、11、9、8、及び1]。細胞死(ペプチドを添加した細胞間での死細胞の%、青色星*)を1/Kd値に対してプロットする。
【表1】
【
図3A】Cyto13−att(配列番号11)及びGluN2A−16(配列番号8)に結合したPTPN4−PDZの構造。Cyto13−att(薄緑/緑、B)及びGluN2A−16(薄青/青、C)に結合したPTPN4−PDZの重ね合わせ。ペプチドは、β2ストランド、α2ヘリックス、及びカルボン酸結合ループ
526GRFGF
530(保存PDZ符号)により区切られたPDZ結合ポケットに入る。
【
図3B】Cyto13−att(配列番号11)及びGluN2A−16(配列番号8)に結合したPTPN4−PDZの構造。PTPN4−PDZ/ペプチド結合部位のクローズアップビュー。重要な残基を、CPK色のスティックとして示す。ペプチドは、分子間カノニカル骨格H結合(黒破線)の完全セットを介して、β2ストランドと逆平行βシートを形成する。他の分子間H結合をオレンジ破線で示す。
【
図3C】Cyto13−att(配列番号11)及びGluN2A−16(配列番号8)に結合したPTPN4−PDZの構造。PTPN4−PDZ/ペプチド結合部位のクローズアップビュー。重要な残基を、CPK色のスティックとして示す。ペプチドは、分子間カノニカル骨格H結合(黒破線)の完全セットを介して、β2ストランドと逆平行βシートを形成する。他の分子間H結合をオレンジ破線で示す。
【
図3D】Cyto13−att(配列番号11)及びGluN2A−16(配列番号8)に結合したPTPN4−PDZの構造。PTPN4−PDZ中の二次構造エレメント。
【
図4A】PTPN4−PDZ/Cyto13−attとPTPN4−PDZ/Cyto13−vir複合体の間のPTPN4−PDZアミドプロトン化学シフトにおける差、Δδ
HN = δ
HN(att) − δ
HN(vir)。PTPN4−PDZ/Cyto13−att複合体中の最も高磁場にシフトした残基を緑で標識し、対応するH結合の弱化に対応する。同様に、低磁場シフトはマゼンタで標識され、強化に対応する。約0.1ppmの高磁場シフトは、およそ2〜5pmのH結合伸長に対応する。残基K533、G534、V544、S545、及びG563は、ストランドβ2、β3、及びβ4により形成されたβシート中に位置付けられ、K587は、ペプチドに向けて指すα2ヘリックスの面上に位置付けられる。
【
図4B】ストランドβ2、β3、及びβ4により形成されたβシートを示すPTPN4−PDZ/Cyto13−att構造の領域(薄緑)及びCyto13−attペプチド(緑)、ならびに対応するH結合ネットワーク(黒及び赤点線)。窒素原子及び酸素原子はそれぞれ青と赤である。アミドプロトン化学シフトにおける変化によりモニターされた通り、緑点線により描写されたH結合は、PTPN4−PDZ/Cyto13−vir複合体と比較し、PTPN4−PDZ/Cyto13−att複合体において弱められ、そこでは、2つの荷電N531(Hδ22)・・・E−3(Oε2)・・・S545(Hγ)H結合(オレンジ/シアン残基及び赤点線)は、Q−3(Oε1)を含む非荷電結合により置換される。
【
図5A】死ペプチドにより誘発される細胞死の提案された機構。非感染細胞において、PTPN4−PDZとその内因性リガンドとの相互作用は、細胞をアポトーシスから保護する。
【
図5B】死ペプチドにより誘発される細胞死の提案された機構。プロ死RABV株(att)を用いた感染又はPTPN4−PDZを標的とする死ペプチドを用いた処理後、細胞は、PTPN4−PDZとその内因性リガンドの間での相互作用の破壊のため、死に対して保護されない。
【
図6】NMR 15N緩和データにより決定された通りの、Cyto13−att(緑)及びCyto13−vir(赤)との複合体中でのPTPN4−PDZ骨格ダイナミクス。15N縦方向(T1)及び横方向(T2)緩和時間(それぞれ上部と下部のパネルにプロット)は、600MHz 1H周波数及び25℃で標準的方法を使用して取得された(Kay et al, 1992)。二次構造エレメントを上部に示す。等方性回転相関時間は、非柔軟性残基のT
1/T
2比から推定し、Cyto13−att及びCyto13−vir複合体についてそれぞれ9.3及び8.3nsであった。これらの値は、両方の複合体の単量体状態を確認する、13.1kDaの分子量を伴う球状分子について予想された〜7.9nsの理論値と一致している。N末端アーム及びβ5に先行するS589−S594領域とは別に、T
1及びT
2値はかなり均一であり、それは球状の及び全体的に剛性の複合体を表示する。PTPN4−PDZの内部移動度は、Cyto13−att又はCyto13−virの結合により有意に影響されず、むしろ不変のT
1及びT
2プロファイルを伴う。この観察は、動的に同等な複合体の形成を示す。
【0009】
発明の詳細な説明
本願は、出願され、本明細書において記載する通りの特許請求の範囲において定義する主題に関する。
【0010】
本願は、ヒト神経系の新生物細胞及び/又は組織に対してプロアポトーシス又はプロ死効果を誘発しうる、ならびに/あるいは向神経性ウイルスの効果を阻害しうるプロダクトに著しく関する。本願のプロダクトは、ヒト神経系の新生物の、さらに特にヒト神経膠芽腫又はヒト脳幹グリオーマの処置及び/又は寛解及び/又は予防における抗増殖性又は殺腫瘍性薬剤としてとりわけ使用することができる。
【0011】
本願はペプチドに関し、そのアミノ酸配列は、前記の配列番号1〜13の少なくとも1つ、さらに特に配列番号1〜10、12〜13の少なくとも1つ、さらに特に配列番号1〜10の少なくとも1つ、よりさらに特に配列番号1〜9のペプチドの少なくとも1つ、よりさらに特に配列番号1〜8のペプチドの少なくとも1つ、よりさらに特に配列番号1〜7のペプチドの少なくとも1つ、よりさらに特に配列番号1〜6のペプチドの少なくとも1つ、よりさらに特に配列番号1〜5のペプチドの少なくとも1つ、よりさらに特に配列番号1〜4のペプチドの少なくとも1つ、よりさらに特に配列番号1〜3のペプチドの少なくとも1つ、よりさらに特に配列番号1〜2のペプチドの少なくとも1つ、よりさらに特に配列番号1のペプチドを含む。
【0012】
実施例において及び以下の図において例示する通り、前記の配列番号の配列は、以下の通りである:
SWESHKSGRETEV(配列番号1);
SWYERETEV(配列番号2);
SWEERETEV(配列番号3);
SWARVSKETPL(配列番号4);
SWERRETEV(配列番号5);
SWEERETEF(配列番号6);
SWEDRETEV(配列番号7);
SNRRVYKKMPSIESDV(配列番号8);
SWESHKSGGESDV(配列番号9);
LNLGNDPDRGTSI(配列番号10);
SWESHKSGGETRL(配列番号11);
SWPDRDRESIV(配列番号12);
SWRVDSKETEC(配列番号13)。
【0013】
前記ペプチドのアミノ酸配列は、34より少ないアミノ酸、さらに特に30より少ないアミノ酸、さらに特に29より少ないアミノ酸、さらに特に28より少ないアミノ酸、さらに特に27より少ないアミノ酸、さらに特に26より少ないアミノ酸、さらに特に25より少ないアミノ酸、さらに特に24より少ないアミノ酸、さらに特に23より少ないアミノ酸、さらに特に22より少ないアミノ酸、さらに特に21より少ないアミノ酸、さらに特に20より少ないアミノ酸、さらに特に19より少ないアミノ酸、さらに特に18より少ないアミノ酸、さらに特に17より少ないアミノ酸からなる。
【0014】
本願の実施態様に従い、前記ペプチドのアミノ酸配列は、16より少ないアミノ酸、さらに特に15より少ないアミノ酸、よりさらに特に14より少ないアミノ酸からなる。
【0015】
本願のペプチドのアミノ酸配列は、例えば、前記の配列番号の配列の1つ、2つ、又は3つを含みうる。
【0016】
前記の配列番号の配列のいくつかが、本願のペプチドのアミノ酸配列中に含まれる場合、前記の配列番号の配列は、同じでありうる又は互いに異なりうる。それらは、互いに直接的に連結することができる、又は分子リンカー、例えば数個のアミノ酸(例、3又は4のアミノ酸)を含むストレッチもしくはストレッチなどを介して各々に間接的に連結することができる。
【0017】
本願の実施態様に従い、本願のペプチドは、200マイクロMよりも低い、さらに特に160マイクロMよりも低い、さらに特に130マイクロMよりも低い、さらに特に90マイクロMよりも低い、さらに特に50マイクロMよりも低い、さらに特に45マイクロMよりも低い、さらに特に40マイクロMよりも低い、さらに特に30マイクロMよりも低い、さらに特に20マイクロMよりも低い、さらに特に10マイクロMよりも低い、さらに特に5マイクロMよりも低い、さらに特に4.9マイクロMよりも低い、さらに特に4マイクロMよりも低い、さらに特に3マイクロMよりも低い、さらに特に2.6マイクロMよりも低い、さらに特に2.1マイクロMよりも低い、さらに特に2マイクロMよりも低い、さらに特に1.7マイクロMよりも低い、さらに特に1.6マイクロMよりも低い、さらに特に1.5マイクロMよりも低い、さらに特に1.4マイクロMよりも低い、さらに特に1.3マイクロMよりも低い、さらに特に1.2マイクロMよりも低い、さらに特に1.1マイクロMよりも低いPTPN4のPDZについての親和性を有する。
【0018】
PTPN4(また、PTPMEG1として公知である)は、T細胞受容体(TCR)細胞シグナル伝達、学習、空間記憶の維持、及び小脳シナプス可塑性における機能を備えたヒト非受容体タンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)である。
【0019】
PDZ(PSD−95、Discs Large、ZO−1)ドメインは、パートナータンパク質のC末端配列を挿入することができるソケットを作製する6つのベータストランド及び2つのアルファヘリックス中に編成される80〜100アミノ酸の球状構造を形成する。
【0020】
本願において、当業者が、前記ペプチドの親和性を決定又は測定するために適切であると見出す任意の手段は使用し得る。例えば、核磁気共鳴(NMR)及び/又は等温滴定熱量測定(ITC)及び/又は表面プラズモン共鳴(SPR)による手段である。好ましい手段は、K
Dを決定又は測定する(例えば、NMRによる)ものを含み、例えば、以下の実施例において例示する通りである。K
D値が高いほど、親和性は低い。
【0021】
【表2】
【0022】
配列番号2〜3及び5〜7のペプチドを除き、(Prehaud et al., 2010に記載される方法に従い)NMR滴定により測定された親和性(ITC滴定により測定された親和性)。
【0023】
符号「−」は測定されていないことを意味する。
【0024】
「1285」は1200及び85を意味する。
【0025】
「1167」は1100及び67を意味する。
【0026】
本発明のペプチドのアミノ酸配列は、前記の配列番号の配列の1つからなりうる。
【0027】
本願のペプチドは、グリコシル化及び/又はビオチン化され得る。
【0028】
本願のペプチドは、Hisタグ(例、精製のために意図されたHisタグ)に連結され得る。
【0029】
本発明のペプチドは、合成により産生することができる。当業者に公知であるペプチド合成の任意の方法を使用することができる。合成方法の例(例えばMerrifield固相合成など)は、例えば、<<Solid Phase Peptide Synthesis>>(J.M. Steward & J. D. Young, 1969, Ed. W. H. Freeman Co., San Francisco)において、又は<<Peptide synthesiss(M. Bodansky et al.1976, John Wiley & Sons, 2nd Edition)において見出すことができる。本発明のペプチドは、あるいは、例えば、本願のベクター(以下参照)から、それをコードする核酸の組換え発現により産生することができる。
【0030】
本願は、また、本願のペプチドに特異的に結合する抗体に、及び、本願のペプチドに特異的に結合するそのような抗体のフラグメントに関する。
【0031】
前記抗体は、任意の免疫グロブリンクラス(IgG、IgM、IgE、IgA、IgD及びそれらの任意のサブクラスを含む)でありうる。
【0032】
前記抗体は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体、さらに特にモノクローナル抗体でありうる。本願のモノクローナル抗体は、例えば、Kohler and Milstein (1975) Nature 256:495-497;及び米国特許第4,376,110号のハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosbor et al.(1983) Immunology Today 4: 72;Cole et al.(1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 2026-2030)、及びEBVハイブリドーマ技術(Cole et al.(1985) Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp.77-96)により産生することができる。そのようなハイブリドーマは、また、本願の範囲内である。ハイブリドーマは、また、インビトロ又はインビボで培養されうる。
【0033】
前記抗体は、組換え抗体、さらに特にキメラ抗体、例えば:
− ヒト化抗体、さらに特に本発明の抗体の可変領域(本願の少なくとも1つのペプチドに対するヒト以外の哺乳動物の免疫化により入手可能)及びヒト抗体から由来する定常領域を含む抗体;
− H鎖又はL鎖のFvが適切なリンカーを用いて連結されている単一鎖Fv(scFv)
などでありうる。
【0034】
前記フラグメントは、例えば、Fv、Fab、F(ab’)2、又は1つのFab及び完全Fcを有するFab/cでありうる。本願の抗体又は抗体フラグメントは、例えば、本発明のペプチドを単離及び/又は精製する手段として、あるいは、本願のペプチドを、別の実体、部分、もしくは生物学的標的に又は固体支持体に連結する手段として有用でありうる。
【0035】
本願は、また、本願のペプチドをコードする核酸(普遍的な遺伝コードに従い、その縮重を十分に考慮する)に関する。
【0036】
本願は、また、核酸コンストラクトに関し、それは発現カセットであり、ここで、前記発現カセットが本発明のペプチドの発現をコードする。
【0037】
本願は、また、コード核酸を保有するベクターに関し、ここで、前記コード核酸は本願の核酸である、又は発現カセットを保有し、ここで、前記発現カセットは本願の発現カセットである。
【0038】
前記ベクターは、組換え核酸ベクター、特に発現ベクターである。そのような発現ベクターは、発現カセットを含み、その中に、発現させるべき核酸が挿入されている。そのようなベクターにおいて、本願の前記の少なくとも1つのペプチドをコードする核酸を、少なくとも1つのプロモーター及び/又は少なくとも1つの調節配列に、ならびに/あるいは、少なくとも1つの分泌もしくは排出シグナル配列及び/又は少なくとも1つのポリアデニル化シグナル配列に動作可能に連結することができる。
【0039】
そのようなベクターは、前記ペプチドを組換え産生する(ならびに、場合により、精製及び/又は単離によりそれを回収する)ためにとりわけ有用であり、例えば、プラスミド、バクテリオファージ、バキュロウイルスでありうる。
【0040】
そのようなベクターは、コードされたペプチドを、それを必要とするヒト生物中に、さらに特にそれを必要とするヒト神経系に、さらに特にそれを必要とするヒト交感神経系(SNS)に及び/又はヒト中枢神経系(CNS)に、さらに特にそれを必要とするヒトCNS(以下を参照のこと)に送達するためにとりわけ有用である。
【0041】
そのようなベクターは、例えば、前記ヒト生物の細胞(さらに特に前記ヒトSNS及び/又はCNSの細胞、特に前記ヒトCNSの細胞、さらに特に前記ヒト脳の細胞、さらに特にヒトニューロン及び/又はグリア細胞、特にヒトグリア細胞)の原形質膜を透過及び/又は通過するために及び/又は前記ヒト生物の血液脳関門を通過するために有用でありうる。
【0042】
適切なベクターは、例えば、組換えプラスミド、組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクター、組換えアデノ関連ウイルス(AAV)ベクター、組換えアデノウイルス(Ad)ベクター、組換えレトロウイルスベクター、組換えレンチウイルス(LV)ベクター、組換えポックスウイルスベクター、ならびにそれらのハイブリッドベクター(それらは、少なくとも2つの異なるウイルスベクターからの成分を組み合わせる)、及び前記ウイルスベクターの偽型形態でありうる。
【0043】
本願は、また、本願の核酸及び/又は本願のベクターを含む宿主細胞に関する。そのような宿主細胞は、組換え宿主細胞でありうる。宿主細胞の例は、原核細胞、例えば大腸菌又は枯草菌など、真核細胞、例えば酵母細胞など(例、Sセレビシエ)、植物細胞(例、タバコ細胞)又は動物細胞、例、昆虫細胞、哺乳動物細胞、非ヒト哺乳動物細胞、ヒト細胞をとりわけ含む。
【0044】
本願は、単離された又は実質的に精製された形態における前記ペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞に関する。
【0045】
本願は、また、他の成分に連結されている、又は、それらの中に挿入されている形態における前記ペプチド、核酸、ベクターに関する。
【0046】
結果として得られた化合物は、それが、以下に直接的もしくは間接的に連結された、又はその中に挿入された、本願の少なくとも1つのペプチド又は本願の少なくとも1つの核酸又は本願の少なくとも1つのベクターを含む化合物として定義することができる:
− 少なくとも1つの向神経性成分であって、前記の少なくとも1つの向神経性成分が、向神経性ペプチド、向神経性ポリペプチド、向神経性タンパク質、向神経性糖タンパク質、向神経性抗体、向神経性抗体フラグメント、もしくは向神経性核酸;及び/又は
− 細胞特異性及び/又は分子特異性を加える又は増加させる、少なくとも1つの成分;及び/又は
− 細胞原形質膜浸透を加える又は増加させる、少なくとも1つの成分;及び/又は
− 血液脳関門(BBB)通過を加える又は増加させる、少なくとも1つの成分;及び/又は
− 人体への毒性を減少させる、少なくとも1つの成分;及び/又は
− 少なくとも1つの抗新生物薬剤。
【0047】
用語「に連結された」及び「中に挿入された」は、この分野におけるそれらのそれぞれの意味に従って意図される。
【0048】
「に連結された」により、それは、一般的に、前記ペプチド、核酸、又はベクターが、前記の少なくとも1つの向神経性成分又は前記の少なくとも1つの抗新生物薬剤の構造に、前記の少なくとも1つの向神経性成分又は前記の少なくとも1つの抗新生物薬剤の一次又は線状構成を破壊することなく、連結されることを意味する。前記連結は、当業者が適切であると見出しうる前記の少なくとも1つの向神経性成分又は前記の少なくとも1つの抗新生物薬剤の構造の任意の位置で達成することができる。
【0049】
「中に挿入された」により、それは、一般的に、挿入されたペプチド、核酸、又はベクターが、前記の少なくとも1つの向神経性成分又は前記の少なくとも1つの抗新生物薬剤の構造的成分の間に導入され、本明細書において、前記の構造的成分に連結されていることを意味する。好ましくは、前記挿入は、前記の少なくとも1つの向神経性成分又は前記の少なくとも1つの抗新生物薬剤が、向神経性又は抗新生物活性をそれぞれ保持するようにする。
【0050】
前記連結は、共有結合的な連結又は非共有結合的な連結、さらに特に共有結合的な連結でありうる。
【0051】
本願は、さらに特に、本願の化合物に関し、ここで、前記の少なくとも1つのペプチド、核酸、又はベクターは、前記の少なくとも1つの向神経性成分又は前記の少なくとも1つの抗新生物薬剤に直接的又は間接的に連結される。
【0052】
本願は、さらに特に、本願の化合物に関し、それは、以下に直接的もしくは間接的に連結される、又は、その中に挿入される、本願の少なくとも1つのペプチドを含む:
− 少なくとも1つの向神経性成分であって、前記の少なくとも1つの向神経性成分は、向神経性ペプチド、向神経性ポリペプチド、向神経性タンパク質、向神経性糖タンパク質、向神経性抗体、向神経性抗体フラグメント、又は向神経性核酸である;及び/又は
− 少なくとも1つの抗新生物薬剤。
【0053】
そのような化合物は、本明細書において、「本願のペプチド含有化合物」として言及される。
【0054】
本願は、さらに特に、本願のそれらのペプチド含有化合物に関し、それらにおいて、本願の前記の少なくとも1つのペプチドが、少なくとも1つの抗新生物薬剤に、直接的もしくは間接的に連結される、又はその中に挿入される。
【0055】
本願は、特に、本願のそれらのペプチド含有化合物に関し、ここで、本願の前記の少なくとも1つのペプチドが、少なくとも1つの抗新生物薬剤に、直接的もしくは間接的に連結される。
【0056】
本願の実施態様に従い、前記の少なくとも1つの向神経性成分は、狂犬病ウイルスGタンパク質でもその向神経性フラグメント(例、狂犬病ウイルスGタンパク質の少なくとも4つのアミノ酸の(さらに特に少なくとも5つのアミノ酸の、さらに特に少なくとも6つのアミノ酸の、さらに特に少なくとも7つのアミノ酸の)フラグメントであって、ここで、前記フラグメントは、ヒトニューロンについての向性を保持している)でもない。本願の実施態様に従い、前記の少なくとも1つの向神経性成分は、PTPN4のPDZのリガンド(例えばGluD2又はGluN2Aなど)ではない。前記の2つの実施態様のいずれか1つに従い、前記ペプチドのアミノ酸配列は配列番号11を含みうる、前記核酸はそのようなペプチドをコードする核酸でありうる、及び、前記ベクターはそのようなコード核酸を保有するベクターでありうる。
【0057】
本願の実施態様に従い、前記の少なくとも1つの向神経性成分は、狂犬病ウイルスGタンパク質又はその向神経性フラグメント(例、狂犬病ウイルスGタンパク質の少なくとも4つのアミノ酸の(特に少なくとも5つのアミノ酸の、さらに特に少なくとも6つのアミノ酸の、さらに特に少なくとも7つのアミノ酸の)フラグメントであって、ここで、前記フラグメントは、ヒトニューロンについての向性を保持している)である。本願の実施態様に従い、前記の少なくとも1つの向神経性成分は、PTPN4のPDZのリガンド(例えばGluD2又はGluN2Aなど)である。前記の2つの実施態様のいずれか1つに従い、前記ペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1〜10、12〜13の少なくとも1つを含みうる、前記核酸は、そのようなペプチドをコードする核酸でありうる、前記ベクターは、そのようなコード核酸を保有するベクターでありうる。
【0058】
本願の実施態様に従い、前記の少なくとも1つの向神経性成分は、
− 細胞透過性ペプチド(CPP)、特にポリカチオン性CPP又は両親媒性CPP、例えば、TAT又はPep−1;
− トランスフェリン(例、前記ペプチド又は核酸に、少なくとも1つのポリカチオンを介して連結されたトランスフェリンであって、ここで、前記の少なくとも1つのポリカチオンは、例えば、カチオン性ポリマー、例えばリポポリアミンポリマー、ポリアミドアミンポリマー、カチオン性ポリマーポリエチレンイミン(PEI)などでありうる);
− トランスフェリン受容体抗体、又はFab、F(ab’)2、もしくはそのFvフラグメント;
− カチオン化アルブミン
である。
【0059】
前記の少なくとも1つのポリカチオンは、例えば、カチオン性ポリマー、例えばリポポリアミンポリマー、ポリアミドアミンポリマー、カチオン性ポリマーポリエチレンイミン(PEI)などでありうる。
【0060】
本願は、また、ヒト神経系の新生物の処置におけるその使用のための、本願の少なくとも1つのペプチド、核酸、又はベクターを含む、本願の化合物に関し、ここで、前記化合物は、前記ペプチド、核酸、又はベクターを、血液脳関門を通じて運ぶ。
【0061】
本願の実施態様に従い、前記の少なくとも1つの抗新生物薬剤は、アルキル化薬剤、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、植物アルカロイド、又はトポイソメラーゼ阻害剤である。本願の実施態様に従い、本願の化合物は、200マイクロMよりも低い、さらに特に160マイクロMよりも低い、さらに特に130マイクロMよりも低い、さらに特に90マイクロMよりも低い、さらに特に50マイクロMよりも低い、さらに特に45マイクロMよりも低い、さらに特に40マイクロMよりも低い、さらに特に30マイクロMよりも低い、さらに特に20マイクロMよりも低い、さらに特に10マイクロMよりも低い、さらに特に5マイクロMよりも低い、さらに特に4.9マイクロMよりも低い、さらに特に4マイクロMよりも低い、さらに特に3マイクロMよりも低い、さらに特に2.6マイクロMよりも低い、さらに特に2.1マイクロMよりも低い、さらに特に2マイクロMよりも低い、さらに特に1.7マイクロMよりも低い、さらに特に1.6マイクロMよりも低い、さらに特に1.5マイクロMよりも低い、さらに特に1.4マイクロMよりも低い、さらに特に1.3マイクロMよりも低い、さらに特に1.2マイクロMよりも低い、さらに特に1.1マイクロMよりも低いPTPN4のPDZについての親和性を有する。
【0062】
本願において、当業者が、前記ペプチドの親和性を決定又は測定するために適切であると見出す任意の手段は、例えば、核磁気共鳴(NMR)及び/又は等温滴定熱量測定(ITC)及び/又は表面プラズモン共鳴(SPR)により使用できる。好ましい手段は、K
Dを決定又は測定する(例えば、NMRによる)ものを含み、例えば、以下の実施例において例示する通りである。K
D値が高いほど、親和性は低い。
【0063】
本願は、また、ナノ粒子及びリポソームに関する。
【0064】
本願の前記ペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞、又は化合物を、ナノ粒子中に及び/又はその上に含むことができる。
【0065】
本願の前記ペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞、又は化合物を、リポソーム中に及び/又はその上に含むことができ、例えば、それを、リポソーム内部にカプセル化する、又は、リポソーム送達系に会合することができる。前記リポソームは、例えば、カチオン性リポソーム、ペグ化リポソームでありうる。前記リポソームを、ナノ粒子を用いて添加することができる。
【0066】
本願のペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞、又は化合物のナノ粒子及び/又はリポソーム製剤は、血液脳関門の改善された通過のために及び/又は血清分解に対する保護のために著しく有用である。
【0067】
本願は、前記ナノ粒子に及び前記リポソームに関する。
【0068】
本願は、また、
− 本願のペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞、化合物、又はリポソームもしくはナノ粒子である、少なくとも1つのプロダクト、
− 場合により、少なくとも1つの抗新生物薬剤、
− 場合により、少なくとも1つの生理学的に許容可能な媒質
を含む組成物に関する。
【0069】
前記組成物は、例えば、医薬的組成物、医薬、又は薬物でありうる。
【0070】
前記の少なくとも1つの抗新生物薬剤は、例えば、アルキル化薬剤、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、植物アルカロイド、又はトポイソメラーゼ阻害剤でありうる。
【0071】
本発明の組成物は、さらに、少なくとも1つの医薬的及び/又は生理学的に許容可能な媒質(希釈剤、賦形剤、添加剤、pH調整剤、乳化剤又は分散薬剤、保存剤、界面活性剤、ゲル化薬剤、ならびに緩衝化薬剤及び他の安定化薬剤及び可溶化薬剤など)を含みうる。本発明の組成物は、例えば、液体溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、ピル、カプセル、徐放性製剤、又は粉末でありうる。好ましくは、それは、非経口投与のために適した形態下で製剤化される。本発明の組成物は、非免疫原性の医薬的組成物もしくは薬物、又は免疫原性の医薬的組成物もしくは薬物、例えば、ワクチンでありうる。当業者が適切であると見出しうる任意の投与様式が、本発明により包含される。本発明のプロダクトがどのように製剤化されるのかに依存し、それは、非経口又は経腸(例、経口)投与により、好ましくは非経口投与により、より好ましくは非経口注射により投与することができる。
【0072】
本願は、また、それを必要とする被験者の、さらに特にヒトの処置の方法に関し、それは、前記の被験者又はヒトに、上に記載する通りの本願の少なくとも1つのペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞、化合物、リポソーム、又はナノ粒子を投与することを含む。
【0073】
本願は、また、医薬的組成物を産生する方法に関し、それは、本願のペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞、化合物、又はリポソーム、又はナノ粒子を、少なくとも1つの医薬的に、生理学的に許容可能な媒質、担体、又は希釈剤を用いて製剤化することを含む。
【0074】
本願のペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞、化合物、リポソーム、又はナノ粒子は、ヒト神経系の不十分な細胞変性を含む疾患、障害、又は状態、さらに特に交感神経系(SNS)の不十分な細胞変性を含む疾患、障害、又は状態ならびに/あるいは中枢神経系(CNS)の不十分な細胞変性を含む疾患、障害、又は状態、さらに特にCNSの不十分な細胞変性を含む疾患、障害、又は状態、よりさらに特に脳の不十分な細胞変性を含む疾患、障害、又は状態、よりさらに特にヒトニューロン及び/又はヒトグリア細胞の不十分な細胞変性を含む疾患、障害、又は状態の処置及び/又は寛解及び/又は予防(例、それを必要とするヒトへの投与による)においてとりわけ有用である。そのような疾患、障害、又は状態は、とりわけ、非所望の細胞、例えば、:
− 腫瘍もしくは新生物細胞、又は
− 感染細胞、特にウイルス感染細胞(例、向神経性ウイルス、例えば狂犬病ウイルス、HSV−1、又はインフルエンザウイルスなどによる感染)の存在又は拡散を含む、疾患、障害、又は状態を含む。
【0075】
本願のペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞、化合物、リポソーム、又はナノ粒子は、ヒト神経系細胞の、さらに特にヒトSNS及び/又はヒトCNSの細胞の、さらに特にヒトCNSの細胞の、さらに特にヒト脳の細胞の、さらに特にヒトニューロン及び/又はヒトグリア細胞の、さらに特にヒトグリア細胞のアポトーシス及び/又は膜破裂を刺激する際に有用である。
【0076】
本願のペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞、化合物、リポソーム、又はナノ粒子は、そのようなヒト細胞のアポトーシス及び/又は膜破裂を刺激する際に著しく有用である(前記ヒト細胞が分裂細胞である場合)。
【0077】
そのような分裂細胞は、腫瘍又は新生物細胞をとりわけ含む。
【0078】
腫瘍又は新生物は、原発腫瘍又は新生物として、あるいは二次腫瘍又は新生物として、さらに特に原発腫瘍又は新生物としてヒト神経系に影響する腫瘍又は新生物である。腫瘍又は新生物は、例えば、固形腫瘍でありうる。
【0079】
故に、本願のペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞、化合物、リポソーム、又はナノ粒子は、ヒト神経系の、さらに特にヒトSNS及び/又はヒトCNSの、さらに特にヒトCNSの、さらに特にヒト脳の、さらに特にヒトニューロン及び/又はヒトグリア細胞の、さらに特にヒトグリア細胞の腫瘍又は新生物細胞の処置及び/又は寛解及び/又は予防のためを意図した組成物中での活性成分として有用である。
【0080】
前記の腫瘍又は新生物細胞は、例えば、悪性又は前悪性又は潜在的に悪性の細胞、さらに特に悪性細胞でありうる。
【0081】
ヒトSNSの例示的な腫瘍又は新生物細胞は、神経芽腫細胞をとりわけ含む。
【0082】
ヒトCNSの例示的な腫瘍又は新生物細胞は、神経膠芽腫細胞(例、神経膠芽腫多形細胞)、乏突起神経膠腫細胞、脳幹グリオーマ細胞、さらに特に神経膠芽腫細胞をとりわけ含む。
【0083】
SNSの不十分な細胞変性を含む前記の疾患、障害、又は状態は、頭蓋外固形腫瘍(例えば神経芽腫など)でありうる。
【0084】
CNSの不十分な細胞変性を含む前記の疾患、障害、又は状態は、例えば、頭蓋内固形腫瘍(例えば神経膠芽腫など)でありうる。
【0085】
本願のペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞、化合物、リポソーム、又はナノ粒子は、また、向神経性ウイルス、例えば狂犬病ウイルス、HSV−1又はインフルエンザウイルスなどによるヒトの感染、特にヒト神経系(さらに特にSNS及び/又はCNS、さらに特にCNS、よりさらに特に脳)の感染の処置及び/又は寛解及び/又は予防のためを意図した組成物中での活性成分として有用でありうる。実際に、本願のペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞、化合物、リポソーム、又はナノ粒子は、例えば、向神経性ウイルスと競合し、およびその効果を阻害しうる。
【0086】
本願のペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞、化合物、リポソーム、又はナノ粒子は、免疫原性又は非免疫原性でありうる。そのような化合物の主な作用様式は、非免疫原性であり、それはウイルスと競合することによる。故に、本願のそのようなペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞、化合物、リポソーム、又はナノ粒子は、非免疫原性組成物である医薬的組成物中に活性成分として含むことができる。そのような組成物中で、前記化合物は非免疫原性である。
【0087】
所望の場合、本願のそのようなペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞、化合物、リポソーム、又はナノ粒子は、しかしながら、免疫原性であるように選ばれうる、又は免疫原性にされうる(例、それを、免疫原性エンハンサー又はアジュバントと連結する、又は、他には、会合させることによって)。あるいは、本願のそのようなペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞、化合物、リポソーム、又はナノ粒子は、非免疫原性であることができ、そして、それにもかかわらず、免疫原性のものである別の活性成分との同時又は異なる投与のために使用されうる。
【0088】
従って、本願のそのようなペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞、化合物、リポソーム、又はナノ粒子は、免疫原性組成物又はワクチンである組成物、さらに特に医薬的組成物中に活性成分として含まれうる。そのような組成物中で、前記化合物は免疫原性でありうる、又は非免疫原性でありうる。
【0089】
本願は、また、
− 少なくとも1つのPTPN4又はその少なくとも1つのPDZ含有フラグメントであって、以下への非共有結合的な連結により共役される
− 本願の少なくとも1つのペプチド又は本願の少なくとも1つのペプチド含有化合物
を含む複合体に関する。
【0090】
本願において、前記複合体は、本明細書において、「本願のPTPN4複合体」として言及されている。
【0091】
本願は、また、
− 本願の少なくとも1つのペプチド、あるいは
− 本願の少なくとも1つのペプチド含有化合物、特に本願の少なくとも1つのペプチド含有化合物であって、ここで、本願の前記の少なくとも1つのペプチドが、少なくとも1つの抗新生物薬剤に直接的もしくは間接的に連結されている、又はその中に挿入されている、あるいは
− 本願の少なくとも1つのPTPN4複合体、あるいは
− 本願の少なくとも1つの抗体又は抗体フラグメント
を含む結晶に関する。
【0092】
原子座標及び構造因子は、
− PTPN4−PDZ/Cyto13−att複合体(Cyto13−att=配列番号11)についてのアクセッションコード3NFK、
− PTPN4−PDZ/GluN2A−16複合体(GluN2A−16=配列番号8)についてのアクセッションコード3NFK
のBrookhaven Protein Data Bank中に寄託されている。
【0093】
当業者は、また、世界的なProtein Data Bank(wwPDB)、さらに特に「Protein Data Bank Contents Guide: Atomic coordinate Entry Format Description」、例、バージョン3.20及びwwPDB Processing Procedures and Policies Document March 2009、例、バージョン2.3.(http://www.wwpdb.org/docs.html)から入手可能なガイドライン及び情報を参照することができる。
【0094】
本願の結晶は、さらに、複合体が結晶化した溶液から生じる分子を含み、例えば、
− 溶媒(例、有機溶媒、例えばメチル−2−ペンタンジオール−2,4(MPD)、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトン、ジオキサン、2−プロパノール、アセトニトリル、DMSO、エチレングリコール、n−プロパノール、三級ブタノール、酢酸エチル、ヘキサン−1,6−ジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1−プロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、クロロホルム、DMF、エチレンジオール、ヘキサン−2,5−ジオール、ヘキシレン−グリコール、N,N−ビス(2−ヒドロキシメチル)−2−アミノメタン、N−ラウリル−N,N−ジメチルアミン−N−オキシド、n−オクチル−2−ヒドロキシエチルスルホキシド、ピリジン、飽和オクタントリオール、sec−ブタノール、トリエタノールアミンHClなど)、
− 塩(例、マグネシウム塩、例えばMgCl2、アンモニウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、又は他の塩など)、
− 長鎖ポリマー(例、PEG、例えばPEG4000、PEG6000、PEG8000など;PEG3350;ポリガラクツロン酸;ポリビニルピロリドン)、
− 緩衝液(例、TRIS緩衝液、例えば0.1M Tris緩衝液pH8.5など)、
− 沈殿薬剤、
− 水、
− 小さな結合タンパク質;
− 不純物
の分子などを含む。
【0095】
本願は、また、
− 原子座標を保存する保存手段;及び
− 前記原子座標に基づいてリガンドを同定又は発生するためのソフトウェア
を含むコンピューターデバイス又はコンピューターデバイスシステムに関する。
前記原子座標は、有利には、本願のペプチド又は複合体の少なくとも原子座標である。
前記コンピューターシステムデバイスは、さらに、分子表示(及び/又は3D立体構造)を呈する手段及び/又は結合親和性を算出するための手段を含みうる。
例えば、前記コンピューターシステムデバイスは、
− PTPN4のPDZに結合しうる候補リガンド、及び
− PTPN4又はそのPDZ含有フラグメント
の表示(及び/又は3D立体構造)を呈する手段、
及び/又は
− 前記候補リガンド、及び
− 前記PTPN4又はそのPDZ含有フラグメント
間の結合親和性を算出するためのプロセシング手段
をさらに含みうる。
【0096】
本願は、また、本願の少なくとも1つのペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞、抗体、化合物、リポソームもしくはナノ粒子、又は複合体が、共有結合的又は非共有結合的連結により結合される固体支持体に関する。
【0097】
前記の固体支持体は、例えば、有機分子のスクリーニングのために適した固体支持体、好ましくはチップでありうる。
【0098】
前記の固体支持体は、例えば、本質的にポリマー材料、又は、本質的にプラスチック材料、著しくは、ポリスチレン材料、又はガラス材料、又はシリコン材料、又は磁気材料、又は非磁気材料でありうる。
【0099】
前記の固体支持体は、特に、分子結合分析のために適したいくつかのウェルを含む、プラスチックプレート、とりわけポリスチレンプラーク、例えばタンパク質タイトレーション又はマイクロタイトレーションプレート(例、ELISAプレート)などでありうる。
【0100】
前記の固体支持体は、特にマイクロビーズ、例えば、磁気マイクロビーズ又は非磁気マイクロビーズ、さらに特に、例えば、Luminex(登録商標)技術(12212 Technology Blvd.; Austin, TX 78727; United States of America)に従った、マイクロタイトレーションのために適したマイクロビーズでありうる。本願の前記の少なくとも1つのペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞、抗体、化合物、リポソームもしくはナノ粒子、又は複合体を、前記の固体支持体に直接的に結合する、又は前記の固体支持体に付着した少なくとも1つの捕捉又は連結薬剤を介して間接的にそれに結合することができる。前記の少なくとも1つの捕捉又は連結薬剤は、前記の固体支持体に付着している部分及びリガンドを含む部分を含みうるが、それは、本願の前記の少なくとも1つのペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞、抗体、化合物、リポソームもしくはナノ粒子、又は複合体に特異的に結合する。前記リガンドは、例えば、抗体、モノクローナル抗体、又は前記の結合特異性を保持しているそのフラグメント(例、Fv、FabもしくはそのF(ab’)2フラグメント、又はその1つもしくはいくつかのCDRを含むポリペプチド)でありうる。
【0101】
本願は、また、本願の少なくとも1つの固体支持体又はチップを含むキットに関する。
【0102】
本願において、他に特定しない場合、又は文脈が他を指示しない場合、全ての用語は、関連分野におけるそれらの通常の意味を有する。
【0103】
用語「含む(comprising)」は、それが「含む(including)」又は「含む(containing)」と同義であり、オープンエンドであり、追加の、列挙されていないエレメント、成分、又は方法工程を除外しないのに対し、用語「からなる(consisting of)」はクローズドタームであり、それは、明示的に列挙されていない任意の追加のエレメント、工程、又は成分を除外する。
【0104】
用語「から本質的になる(essentially consisting of)」は、部分的にオープンエンドであり、それは、追加の、列挙されていないエレメント、工程、又は成分を除外しない(これらの追加のエレメント、工程、又は成分が、本発明の基本的な新規特性に物質的に影響しない限り)。
【0105】
用語「含む(comprising)」(又は「含む(comprise(s))」)は、故に、用語「からなる(consisting of)」(「からなる(consist(s) of)」)、ならびに用語「から本質的になる(essentially consisting of)」(から本質的になる「essentially consist(s) of」)を含む。したがって、用語「含む(comprising)」(又は「含む(comprise(s))」)は、本願において、特に、用語「からなる(consisting of)」(「からなる(consist(s) of)」)、及び用語「から本質的になる(essentially consisting of)」(から本質的になる「essentially consist(s) of」)を包含するとして意味する。
【0106】
本願において、nエレメント(ここで、xはゼロとは異なり、nはxよりも高い数字である)のセット又は群に関する用語「少なくともx」は、各々の値(それはxとnの間に含まれる)を明示的に包含する。例えば、6つのエレメントの群又はセットに関する用語「少なくとも1つ」は、前記エレメントの1、2、3、4、5及び6、ならびに前記エレメントの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つを明示的に包含する。
【0107】
本願の読者を助ける試みにおいて、記載は、種々のパラグラフ又はセクションにおいて分離されている。これらの分離は、パラグラフ又はセクションの物質を、別のパラグラフ又はセクションの物質から切り離すとして考えるべきではない。反対に、本記載は、熟慮することができる種々のセクション、パラグラフ、及びセンテンスの全ての組み合わせを包含する。
【0108】
本明細書において引用される全ての参考文献の関連する開示の各々が、参照により具体的に組み入れられる。以下の実施例を、限定の方法ではなく、例示の方法により与える。
【0109】
実施例
実施例1:
実験手順
細胞
ヒトグレードIII U373MG星状細胞腫細胞(ATCC、HTB17)を、以前に記載された通りに伝播した(Lafon et al., 2005)。
【0110】
ATCCはAmerican Type Culture Collectionである[10801 University Blvd.; Manassas, Virginia 20110-2209; United States of America]。
【0111】
合成ペプチド移行及び細胞死の検出
ペプチドを、以前に記載された通りに、HIV−1 Tatドメインに共役し、FITC分子を用いて標識した(Prehaud et al., 2010)。U373MG細胞(1mL培養培地中250,000個細胞/ウェル)を、FITC共役ペプチド(25マイクロM)を用いて処理した。処理後3時間に、細胞をトリプシン処理により剥がし、リン酸緩衝液(SPB)Ca
2+Mg
2+中で洗浄し、ペプチド移行及び細胞死についてアッセイした。膜透過(細胞死のマーカー)を、PI(R&D system Annexin Vキット)の通過を検出することにより測定した。細胞を、フローサイトメトリーにより分析した。30,000個の細胞を、各々の分析のためにサンプリングした。結果を、ペプチド添加細胞間の死細胞のパーセンテージとして与えた。
【0112】
サンプル調製
ペプチドを、Fmoc戦略(Covalab)を使用して固相中で合成した。
【0113】
NMR及び結晶生成用のPTPN4−PDZサンプルの発現及び精製を、以下の通りに実施した。PTPN4−PDZ(また、PTPMEG1として公知である)が当業者に公知であり、例えば、UniProtKB:P29074の下で入手可能である。PTPN4−PDZ(残基G499−N604、G499はTEV切断部位に起因する非天然残基である)は、pDEST15発現プラスミド(Gateway System, Invitrogen)中のN末端グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)タグ付きタンパク質としてコードされた。ベクターを使用し、Escherichia coli BL21(DE3)star(Invitrogen)を形質転換した。細胞を、安定同位体標識M9最少培地(NMR実験のための唯一の窒素供給源として1.0g/L 15NH
4Clを含む)又は高密度培地のいずれかの1.6Lバイオリアクター中で成長させた。タンパク質発現を、OD600nm 2.5で、0.5mM IPTGを用いて、30℃で3時間にわたり誘導した。回収細胞を、2mM β−メルカプトエタノール及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を伴う緩衝液A(50mM Tris−HCl、150mM NaCl、pH7.5)中に再懸濁し、次に、フレンチプレス中で破壊した。清澄化した細胞溶解物を、次に、2mMジチオスレイトール(DTT)を含む緩衝液Aを用いて平衡化したGSTカラム(GSTrap HP、GE)上に添加した。GSTタグをTEVプロテアーゼ(1% M/M)により切断し、それは、カラム上に一晩4℃で直接に注入した。PTPN4−PDZを含むサンプルをプールし、1.0mlに濃縮し、次に、2mM DTTを含む緩衝液Aを用いて平衡化したサイズ排除カラム(Sephacryl S-100 HP 16/60, GE)上に添加した。全ての精製工程を、4℃で、及び、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)の存在において実施した。PTPN4−PDZサンプルのサイズ、純度、及び配列を、SDS−PAGE、質量分析、及びエドマン分解を使用したマイクロシークエンシングによりチェックした。タンパク質濃度を、280nmでの吸光度から推定した(110℃で24時間にわたる6N HCl加水分解後、公知の吸光度の精製PTPN4−PDZ溶液からのアリコートのアミノ酸分析により決定された通り、算出された吸光係数1850M
-1cm
-1を仮定する)。D
2O(12%)をNMRサンプルに加えた。
【0114】
結晶化、データ収集、及び構造決定
初期結晶化スクリーニングを、Cartesian(商標)ナノリットル分注システムを使用した蒸気拡散方法により行った(Santarsiero et al., 2002)。200nLのタンパク質複合体(6mg/mL)及び200nLの結晶化溶液を含むシッティングドロップを、Greinerプレート中の150mLの緩衝溶液に対して平衡化した。スクリーニング試行(576条件)を、商業的に入手可能なスパースマトリックスキットを使用して実施した。結晶化条件を、Emerald BioSystemsからのMatrix Maker自動化製剤システムにより生成された結晶化溶液を使用し、再現及び最適化した。
【0115】
結晶を、シッティングドロップ蒸気拡散方法を使用し、18℃で成長させた。タンパク質溶液を結晶化緩衝液と混合し、結晶化緩衝液のリザーバーに対して平衡化した。PDZペプチド共結晶化のために使用したCyto13−att及びGluN2A−16ペプチド(それぞれ配列番号11及び8)を過剰に加え、95%を上回る複合体を形成した。結晶化条件及びタンパク質と結晶化緩衝液の混合比率を表3に与える。結晶は、液体窒素中にそれらを沈めることにより低温冷却し、X線データは、窒素流を使用し、100Kで収集した。適切な場合、結晶は、低温冷却される前に、結晶化条件+グリセロール(表3)からなる凍結防止剤溶液中に最初に移した。X線データは、Soleilシンクロトロン(St. Aubin, France)でのビームラインProxima I上のPTPN4−PDZ/Cyto13−att複合体について収集した;回折像は、0.918Åの波長で1画像当たり1°の回転を用いて測定した(表3)。X線データは、高分解能回折計設定を使用し、PTPN4−PDZ/GluN2A−16複合体用のSwiss Light SourceのビームラインPX1上のPTPN4−PDZ/GluN2A−16複合体について収集した;回折像は、0.9795Åの波長での1画像当たり0.25°の回転を用いて測定した(表3)。データを、MOSFLM又はXDS、SCALA、及びCCP4スイート(1994)からの他のプログラムを用いてプロセシングした。構造を、PHASER(McCoy, 2007)及びPTPN4−PDZ(PDBアクセッションコード2VPH)の原子モデルを使用した分子置換により解析した。結合ペプチドの位置を、Fo−Fc差の電子密度マップから決定した。モデルを、COOT(Emsley & Cowtan, 2004)を使用して再構築し、精密化を、REFMAC5(Murshudov et al., 1997)及びBUSTER(Blanc et al., 2004)を使用して実施した。モデル品質の全体的な評価を、MolProbity(Lovell et al., 2003)を使用して実施した。
【0116】
【表3】
【0117】
NMR実験
NMRデータは、極低温で冷却した三重共鳴パルス磁場勾配プローブを備えたVarian Inova 600-MHz分光計上で、298Kで記録した。PTPN4−PDZ/ペプチド親和性を測定するためのNMR滴定実験を、以前に記載された通りに(Prehaud et al., 2010)、0.16mMの
15N標識PTPN4−PDZを使用し、非標識ペプチドの段階的な添加を伴い実施した。
【0118】
データ収集及び構造決定
X線データ収集、プロセシング、PTPN4(PDBコード2VPH)の原子モデルを使用した分子置換、及び精密化に関するさらなる詳細を表3に与える。原子座標及び構造因子は、Brookhaven Protein Data Bank中に、PTPN4−PDZ/Cyto13−attについてのアクセッションコード3NFK及びPTPN4−PDZ/GluN2A−16についての3NFLの下で寄託されている。
【0119】
【表4】
a括弧内の値は、最も高いビン中の統計値を指す。
bR
マージ=Σ|(I−<I>)/Σ(I)
cR因子=Σ|F
obs−F
calc|/ΣF
obs
dR
遊離を、精密化から除外されたデータの5%を用いて算出した。
eカテゴリーをMolProbityにより定義した。
【0120】
結果
PTPN4−PDZについてのペプチド親和性及び殺傷効率
本発明者らは9つのペプチドを合成した:
− 4つのウイルスペプチド:Cyto13−att(配列番号11)、Cyto13−vir(配列番号14)、EIRL−13(配列番号15)、DARL−13(配列番号16)、
− PTPN4−PDZの2つの既に公知の内因性パートナーのC末端配列:GluN2A−16(配列番号8)及びGluD2−13(配列番号10)、
− GluN2AのPDZ−BS及びCyto−attのコアをコードするキメラペプチド(Cyto9−ESDV;配列番号9)、
− そのPDZ−BSから切断されたCyto13−att(Cyto9−Δ;配列番号17)及び
− 最適化ペプチド配列Cyto8−RETEV(配列番号1)。
【0121】
PTPN4−PDZについてのこれらのペプチドの親和性を、NMR滴定により測定した(
図1)。PTPN4−PDZについて種々の親和性を示す5つのTat共役ペプチドの殺傷効率を、U373 MG(PTPN4を発現するヒト神経膠芽腫細胞株)において推定した(
図2A)。
【0122】
ペプチドへのU373MGの3時間曝露(最大ペプチド移行を許す期間)後(
図2B)、細胞死の誘導を、ヨウ化プロピジウム(PI)アッセイによりアッセイした。全てのペプチドが、細胞に入る同様の能力を呈した。Cyto9−Δ(最後の4つのアミノ酸を欠くペプチドは、それがPDZ−BSを欠くため、PTPN4−PDZと相互作用しない)は、低い死亡レベル(7%)を誘導した;Cyto13−virは、PTPN4−PDZについての低親和性(解離定数、Kd、560μM)を有し、このベースラインレベル(8%)を上回り細胞死を増加しなかったのに対し、Cyto13−att(Kd=160μM)は細胞の14%より多くの死を誘発した。従って、単一Q>E変異が、結合親和性を増加し、細胞透過性ペプチドによる神経膠芽腫細胞の死を有意に促進するために十分である。GluN2A−16は、インビトロでより高い親和性(Kd=42μM)を伴いPTPN4−PDZに結合し、神経膠芽腫細胞集団の29%において死を誘発した(Cyto13−attと比較した2倍増加)。位置−3の上流の残基が親和性及び機能に影響するか否かをテストするために、キメラペプチドCyto9−ESDVを試験した。PTPN4−PDZについてのCyto9−ESDVのKd値は42μM(親ペプチドGluN2A−16のKd)から85μMに増加し、死を誘発する能力は半分だけ減少した。神経膠芽腫は、また、抗新生物薬剤シェファーディン(shepherdin)を用いて処置した。シェファーディンは、抗アポトーシス・有糸分裂レギュレーターサバイビンと分子シャペロンHSP90との間に形成された複合体に拮抗することにより腫瘍細胞死を誘発する細胞透過性ペプチド模倣体である(Plescia et al., 2005)。50μMシェファーディンを用いた5時間の処置は、Cyto13−attを用いて得られたものと同様の範囲において神経膠芽腫死を誘導する(データは示さず)。
【0123】
全体では、これらのデータは、PTPN4−PDZについての推定PDZ−BSの最後の4残基の親和性が、細胞死の誘導のための決定的な決定因子であることを示す。本発明者らは、ペプチドの殺傷効率が、PTPN4−PDZについてのそれらのそれぞれの親和性により密接に反映されることを確立した。
図5において描写するシナリオに従い、PTPN4のPDZドメインについての競合ペプチドの親和性における閾値に達しなければならないように見え、およそ、200μMより低いKdに対応する。
【0124】
ペプチドを伴う複合体中でのPTPN4−PDZの結晶構造
PTPN4−PDZ/Cyto13−att構造
非対称単位中の2つの分子は、ジスルフィド結合している。各々の分子は、PTPN4−PDZ(鎖A及びB)及びCyto13−attペプチド(鎖C及びD)により形成された複合体に対応する。複合体のオリゴマー状態をチェックするために、NMR実験(
図5)及び分析的超遠心(データは示さず)を還元条件(2mM DDT)下で実施した。本発明者らは、溶液中でのPTPN4−PDZ/Cyto13−att複合体の安定なモノマー形態を確認したが、分子間ジスルフィド結合が結晶状態に起因していることを意味する。1つの複合体(鎖B/D)において、Cyto13−att(鎖D)の5つの残基だけの電子密度が十分に定義されたのに対し、他の複合体(鎖A/C)中での結晶充填のため、鎖C中でのCyto13−attの13残基の全てが十分に順序付けられた。鎖A及びBは、0.25ÅのCα RMSDと非常に十分に重なり、結晶充填がPDZドメインの全体構造において影響を有さないことを示している。B鎖及びD鎖により形成されたPTPN4−PDZ/Cyto13−att複合体が、以下に記載される。
【0125】
PTPN4−PDZ/GluN2A−16構造
4つの分子が非対称単位中に見出され、4つのモノマーを構成した。各々の分子は、PTPN4−PDZ(鎖A〜D)及びGluN2A−16ペプチド(鎖E〜H)により形成された複合体に対応する。鎖Aは鎖Dにジスルフィド結合され、鎖Bは鎖Cにジスルフィド結合される。NMR実験及び分析的超遠心(データは示さず)でも、ジスルフィド結合が、結晶条件に起因することが確認された。全てのペプチド鎖において、16残基の5つだけの電子密度が、結晶中で十分に定義された。全てのPTPN4−PDZ鎖の重なりが、0.3Åより少ないCα RMSDを呈したが、結晶充填がPDZドメインの全体構造中に存在しないことを示している。ペプチド鎖Eは、任意の結晶接触を経験しないため、本発明者らは、A鎖及びE鎖により形成されたPTPN4−PDZ/GluN2A−16複合体を記載した。
【0126】
PTPN4−PDZ/ウイルスペプチド複合体の構造
弱毒化RABV Gタンパク質についてのPTPN4−PDZ特異性を研究するために、PTPN4−PDZ及びCyto13−attにより形成された複合体の結晶構造を、1.4Å分解能での分子置換により解析した(表4)。
【0127】
PTPN4−PDZは、5つのβストランド及び2つのαヘリックスを含む典型的なPDZフォールドを採用する(
図3A及び3D)。Cyto13−att(−GETRL
COOH)の最後の5つのC末端ペプチド残基だけが、結晶中で十分に順序付けられ、ペプチドは、PDZ結合ポケット中に、従来の様式において挿入された(
図3B)。
【0128】
PTPN4−PDZは、クラスIのPDZドメインに特異的な相互作用ネットワークを持ち、コンセンサスペプチド配列XS/TX−Φ
COOHを認識する(ここで、Xは任意の残基であり、Φは疎水性残基である)。位置−1に、R残基のCγ原子を越えた電子密度が、明らかには割り当てられていない。このカチオン性側鎖は、溶剤に完全に暴露され、正荷電残基(R527、R546、及びK587)により囲まれ、任意のPTPN4−PDZ残基と接触しない。位置−3は、PTPN4−PDZ/Cyto13−att相互作用の決定的な決定基である。E−3の側鎖カルボキシルは、S545及びN531アミン基のヒドロキシルと二分枝H結合を形成する。E−3は、また、PTPN4−PDZに高く構造的に関連するPDZドメイン、α1及びβ2シントロフィン−PDZ(それぞれPDB移行2PDZ及び2VRF)を含む複合体について観察された結合パターンを非常に暗示する様式においてそのCβ−Cγ炭素鎖及びK533の長い脂肪族側鎖を含む疎水性接触により強く安定化される。最後に、G−4のカルボニル酸素は、Q538のアミド窒素とH結合を形成する。
【0129】
PDZドメイン分類は、本質的に、位置0及び−2に基づいているが、多数の試験で、PDZ/PDZ−BS相互作用のために決定的である、他の位置−1、−3、及び−4の重要性が強調されてきた。実際に、上に記載する通り、E−3は、PTPN4−PDZβシートとの伸長した相互作用ネットワークに含まれる。対照的に、Cyto13−attの位置−1及び−4を占める残基は、PTPN4−PDZ(Kd=160μM)との相互作用のために最適に見えず、全体的な親和性が、PDZ/PDZ−BS相互作用についてかなり弱いままであり、より一般的には1〜10μMの範囲中にあるとの事実を説明する可能性が高い。
【0130】
E/Q変異の構造的結果
PTPN4−PDZについてのCyto13−vir及びCyto13−attペプチドの親和性を比較した場合、Kdにおける4倍の差が注目され、Q−3はE−3よりも高いKdを有した(
図1)(Prehaud et al., 2010)。本発明者らはNMR分光法を使用し、2つのウイルスペプチドの間の親和性におけるこの差を説明しうる潜在的な構造/親和性関係を特徴付けた。最初に、
15N緩和測定からの骨格ダイナミクスは、PTPN4−PDZの全体的な剛性構造及び2つのCyto13−att及びCyto13−vir複合体の動的挙動における検出可能な無変化を明らかにした(
図6)。PTPN4−PDZ/Cyto13−att複合体の結晶構造において、残基N531、K533、及びS545は、Cyto13−att E−3との接触にある。荷電H結合は、一般的に、非荷電結合よりも強い。従って、本発明者らは、H結合の強度と相関する、H結合アミドプロトン(HN)のNMR化学シフトを注意深く検証した。驚くべきことに、この分析は、E/Q変異に近接するβ2/β3/β4カノニカルH結合ネットワークが、Cyto13−att複合体と比較し、Cyto13−virにおいて局所的に強化されることを明らかにした(
図4A、B)。この微調整された構造再配置は、好ましいエネルギー分布に導き、それは、等配電子残基Q−3を含む中性のものを用いた、分岐した荷電N531(Hδ22)・・・E−3(Oε2)・・・S545(Hγ)H結合の好ましくない置換を部分的に調和させる。そのような代償効果は、Cyto13−attと比較し、Cyto13−virとの複合体形成の結合自由エネルギーにおける小さな変動を説明しうる(ΔΔG0 = RT ln(Kd(Cyto13−vir)/Kd(Cyto13−att)) = 0.76kcal.mol
-1、親和性における4倍の差に対応する)。
【0131】
結論として、PDZ結合部位での相互作用ネットワークにおけるわずかな改変は、E>Q変化について観察された劇的な機能効果に導き、それは、PTPN4を動員するためのPDZ−BSの能力を抑止し、病原性株が細胞死を誘発する能力を否定するために十分である。RABVの吸血コウモリ株は、アポトーシスを誘発しない別のRABV株である(データは示さず)。本発明者らは、この株のGタンパク質のC末端配列を伴うPTPN4−PDZにより形成された複合体を分析し、それは、クラスIIモチーフ(X−Φ−X−Φ
COOH)に対応する、PDZ−BS、−DARL
COOH−により終結する。このPDZ−BSは、PTPN4−PDZと非常に弱く相互作用し(1285マイクロMのKdを伴う)、位置−2の疎水性残基は複合体を強く不安定化する(
図1)。PTPN4−PDZについての同様の低親和性が、クラスIIモチーフ−EIRL
COOHにも対応する位置−2でIをコードする別のウイルスC末端配列(CVS−B2C RABV株から)について測定されてきた。全体では、これらのデータは、PTPN4−PDZが、クラスIのPDZ−BS配列と特異的に相互作用することを示す。
【0132】
PTPN4−PDZ/内因性ペプチド複合体の構造
PTPN4−PDZの2つの内因性パートナーが公知である:オーファンイオンチャネル型グルタミン酸受容体、−RGTSI
COOHにより終結するGluD2及び−ESDV
COOHにより終結するGluN2A。それらの末端ペプチド(それぞれGluD2−13及びGluN2A−16)は、ウイルスペプチドCyto13−attについて観察されたものよりもわずかに良い、PTPN4−PDZについての親和性を呈する(
図1)。対応する解離定数は、前者についての128μM及び後者についての42Μmに等しい。相互作用における改善が認められうるペプチド位置を定義するために、これらの2つのペプチドのより多くのアフィンと複合体化されたPTPN4 PDZ ドメインの構造GluN2A−16を決定した。
【0133】
1.9Å分解能で解析されたPTPN4−PDZ/GluN2A−16複合体の構造が、PTPN4−PDZ/Cyto13−att複合体と非常に似ていることが見出され、0.21ÅのRMSDを伴った(
図3A、C)。PTPN4−PDZの全体的構造は、ペプチド結合により影響されなかった。GluN2A−16の最後の5つのC末端残基だけが分解された。
【0134】
位置−1で、D側鎖が十分に定義されたが、Cyto13−attのR−1とは対照的であった。D−1は、PDZドメインのQ531側鎖アミン基とH結合を形成する。従って、酸性残基は、ペプチドの最後から2番目の位置でより好ましい。位置−1での残基の性質は、恐らくは、PTPN4−PDZについてのCyto13−attとGluN2A−16の間の親和性における4倍増加に有意に関与する。さらに、保存されたE−3残基の相互作用ネットワークは、両方の場合において類似していた。I−4は結晶中で十分に定義された;その側鎖は、H579のイミダゾール基のファンデルワールス距離であり、そのカルボニル基は、Q538側鎖のアミノ基にH結合している。位置−4でのカチオン性残基が、高度に構造的に関連するPDZドメインにおいて強く好まれる。α1シントロフィンの場合において、イオン結合は、リガンドのK−4とα2ヘリックスのN末端のD151(PTPN4−PDZ(D580)中で保存されたアニオン性位置)の間で生じる。最後に、GluN2AのPDZ−BSがCyto−attコア中に挿入されているキメラペプチドCyto9−ESDVにおいて、PTPN4−PDZについての親和性は、天然GluN2Aペプチドと比較し、2倍だけ下落した。位置−4及び−5でのグリシンダブレットの存在に起因するCyto9−ESDVの柔軟性、ならびにグリシン残基によるI−4の置換は、この効果について責任がある可能性が高い。
【0135】
構造分析による最適ペプチドの調製
PTPN4−PDZによるリガンド認識の最も決定的な決定基の同定は、本発明者らを、ホスファターゼとのより堅固な相互作用に、及び、結果的に、細胞死の増強された能力に導く最適化ペプチドを着想することに導いた。位置0、−2、及び−3が、PTPN4−PDZの残基との伸長した相互作用ネットワーク中に含まれることを考慮し、本発明者らは、位置−1及び−4上での本発明者らの配列最適化に焦点を合わせた。本発明者らは、位置−1の長い酸性残基及び位置−4のカチオン性残基が、PDZドメインの周辺残基との追加の決定的な接触を誘導しうること、及びPDZ−BS−RETEV
COOHが、PTPN4−PDZについての最適化された結合パートナーでありうることを着想した。Cyto13−att(Cyto8−RETEV)のコアを伴うPDZ−BS−RETEV
COOHをコードするキメラペプチドは、1μMに劇的に減少するPTPN4−PDZについてのKdを呈する(
図1)。PTPN4−PDZについてのCyto8−RETEVのより高い親和性(開始ウイルス配列Cyto−attと比較した160倍増加及び最もアフィンな内因性PTPN4リガンドGluN2A−16と比較した40倍増加)は、神経膠芽腫細胞死を誘導するのにペプチドの効率を相関的に増強する。:GluN2A−16は細胞の29%において死を誘発したが、Cyto8−RETEVを用いてこの値は2倍だけ増強され、66%に達した(
図2C)。
【0136】
考察
本発明者らは、PTPN4−PDZについてのペプチドの親和性と神経膠芽腫細胞死を惹起するそれらの能力の間の関係を確立した。ウイルスペプチド及び内因性ペプチドに複合体化したPTPN4−PDZの構造は、本発明者らに、リガンド認識のために要求される構造的な決定因子を同定し、PTPN4−PDZについてのより高い親和性を呈する新たな配列をデザインすることを許した。この実施例においてテストしたペプチドの間で、この最適化ペプチドは、実際に、最良のPTPN4−PDZ結合パートナー及び細胞死の最良のインデューサーである。これらの知見によって、腫瘍細胞において死を制御する機構におけるPTPN4 PDZドメインの重要な役割が同定される。それらは、単純な機構(
図5に描写する)を強く支持し、それにより、ペプチドはこの機能を消失しうる。
【0137】
非受容体ホスホチロシンホスファターゼファミリーの2つの他のメンバーは、1つの(PTPN3)又は5つの(PTPN13)PDZドメインを含む。興味深いことに、それらは、両方が、腫瘍細胞死の制御に含まれる。PTPN13(また、PTP−BAS、PTPL1、PTP1E、又はFAP−1と呼ばれる)は、ヒト膵臓腺癌及び結腸癌細胞に含まれるCD95(Fas)媒介性アポトーシスのネガティブレギュレーターである。PTPN13−PDZとCD95のPDZ−BSの間での相互作用は、恐らくは、CD95の脱リン酸化を許すことにより、及び、その膜局在を変えることにより、PTPN13活性のために決定的である。また、CD95のPDZ−BSを模倣するペプチドによる第2のPTPN13 PDZドメインの動員は、結腸癌細胞株でのFas媒介アポトーシスを促進するために十分である。PTPN3(また、PTPH1と呼ばれる)は、結腸直腸癌細胞におけるRAS発癌のアクチベーターとして記載されている。これらの結果は、アポトーシス又は発癌を制御するために、ホスファターゼPDZドメインの、それらのそれぞれのリガンドのPDZ−BSとの相互作用により果たされる重要な役割を指摘する。
【0138】
PTPN4の抗アポトーシス機能の増強された特異的な抑止は、相互作用のPDZ部位及び触媒中心の両方を標的とすることにより得られうる。この実施態様は研究中である。任意の場合において、この結果は、特異的なPTP−PDZ/リガンド相互作用の効率的な破壊が、構造的デザインの助けを用いた、候補プロ死配列の単純な最適化を介して得ることができ、抗増殖治療のための新たな道を既に開くことを示す。
【0139】
実施例2:
8つのキメラペプチドが、実施例1に記載する通りに合成された。PTPN4−PDZについてのこれらのペプチドの親和性の値を、上の表2に与える。U373MG細胞を、上の実施例1において記載する通りに、これらのペプチドを用いて処理した。これらの8つのキメラペプチドは、SWYERETEV(配列番号2);SWEERETEV(配列番号3);SWARVSKETPL(配列番号4);SWERRETEV(配列番号5);SWEERETEF(配列番号6);SWEDRETEV(配列番号7);SWPDRDRESIV(配列番号12);SWRVDSKETEC(配列番号13)であった。
【0140】
【表5】