特許第6095683号(P6095683)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エクスコ テクノロジーズ リミテッドの特許一覧

特許6095683押出金型予熱システム、装置、および方法
<>
  • 特許6095683-押出金型予熱システム、装置、および方法 図000002
  • 特許6095683-押出金型予熱システム、装置、および方法 図000003
  • 特許6095683-押出金型予熱システム、装置、および方法 図000004
  • 特許6095683-押出金型予熱システム、装置、および方法 図000005
  • 特許6095683-押出金型予熱システム、装置、および方法 図000006
  • 特許6095683-押出金型予熱システム、装置、および方法 図000007
  • 特許6095683-押出金型予熱システム、装置、および方法 図000008
  • 特許6095683-押出金型予熱システム、装置、および方法 図000009
  • 特許6095683-押出金型予熱システム、装置、および方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095683
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】押出金型予熱システム、装置、および方法
(51)【国際特許分類】
   B21C 31/00 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
   B21C31/00
【請求項の数】26
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-543734(P2014-543734)
(86)(22)【出願日】2012年12月3日
(65)【公表番号】特表2015-502259(P2015-502259A)
(43)【公表日】2015年1月22日
(86)【国際出願番号】CA2012001112
(87)【国際公開番号】WO2013078552
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2015年11月30日
(31)【優先権主張番号】61/566,515
(32)【優先日】2011年12月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514066435
【氏名又は名称】エクスコ テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EXCO TECHNOLOGIES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ロビンズ、 ポール ヘンリー
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−154818(JP,A)
【文献】 特開2006−167751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 31/00
B21D 37/04
B29C 47/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金型オーブンと、
ロボット型ホイストと、
前記ロボット型ホイストおよび前記複数の金型オーブンのそれぞれと通信を行う処理構造であって、前記ホイストを制御して、前複数の金型オーブンのそれぞれに1つの押出金型を搬入することと前記複数の金型オーブンのそれぞれから前記1つの押出金型を搬出することとを可能にするように構成され、さらに、前記複数の金型オーブンのそれぞれに搬入された前記押出金型を予熱するために、前記複数の金型オーブンのそれぞれプログラムに従って作動させるように構成された処理構造と、
を有する金型予熱システム。
【請求項2】
各金型オーブンが、ハウジングと、該ハウジングの蓋と、前記処理構造と通信を行うアクチュエータと、を有し、前記アクチュエータは、前記処理構造に応答して、前記ロボット型ホイストが押出金型を前記金型オーブンに収納したり前記金型オーブンから取り出したりできるように、前記蓋を開閉する、請求項に記載のシステム。
【請求項3】
前記ロボット型ホイストが、前記処理構造に応答する頭上式ロボット型ホイストであって、前記各金型オーブンの上方に配置可能なリフト機構を有する頭上式ロボット型ホイストである、請求項に記載のシステム。
【請求項4】
各押出金型が、金型クレードルに支持され、前記リフト機構が、前記金型クレードルに係合するように構成されている、請求項に記載のシステム。
【請求項5】
前記リフト機構が、互いにほぼ直交する3つの軸に沿って移動可能である、請求項に記載のシステム。
【請求項6】
前記頭上式ロボット型ホイストが、長手方向に延びる少なくとも1つの第1のレールと、該第1のレールにほぼ垂直な第2のレールを支持し、前記第1のレールに沿って移動可能な第1のトロリーと、前記第2のレールに沿って移動可能な第2のトロリーと、を有し、前記リフト機構が、前記第2のトロリーに取り付けられ、ほぼ鉛直に移動可能である、請求項に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1のトロリーと前記第2のトロリーと前記リフト機構とが、電動である、請求項に記載のシステム。
【請求項8】
複数の押出金型を支持する複数の金型クレードルを収容する待機領域をさらに有し、前記ロボット型ホイストが、前記処理構造に応答して、金型クレードルを前記待機領域から取り出して予熱された金型オーブンに供給する、請求項からのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
金型クレードル搬送機構をさらに有し、前記ロボット型ホイストが、前記処理構造に応答して、予熱された押出金型を支持する金型クレードルを前記金型オーブンから取り出して前記金型クレードル搬送機構に供給する、請求項に記載のシステム。
【請求項10】
前記複数の金型オーブンが、互いに間隔を置いた複数のグループに分けられて配置され、前記待機領域と前記金型クレードル搬送機構とが、前記金型オーブンの前記グループ同士の間に配置されている、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
プログラムが、予熱される各押出金型に割り当てられ、前記プログラムが、選択された金型オーブンに押出金型を配置する前に、該選択された金型の予熱温度を指定する、請求項1から1のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記プログラムは、前記押出金型が前記選択され予熱された金型オーブン内で費やす期間をさらに指定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記押出金型が、金属押出金型である、請求項1から1のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
1つの押出金型をそれぞれが収容する複数の金型オーブンおよびロボット型ホイストと通信を行う処理構造に、金型識別情報を入力することと、
前記金型識別情報にプログラムを関連づけることと、
前記処理構造によって、前記複数の金型オーブンの1つに、前記プログラムで指定された設定温度まで予熱するように指示することと、
押出金型を予熱するために、前記処理構造によって、前記ロボット型ホイストに、前記押出金型を前記予熱された金型オーブンに搬入するように指示することと、
を含む、押出金型を予熱する方法。
【請求項15】
前記処理構造によって、前記ロボット型ホイストに、前記プログラムで指定された時刻に前記押出金型を前記金型オーブンから搬出するように指示することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記処理構造によって、前記ロボット型ホイストに、前記プログラムで指定された時刻かつオペレータ入力の受領時に前記押出金型を前記金型オーブンから搬出するように指示することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
複数の金型オーブンであって、それぞれの金型オーブンが、その内部に配置された1つの押出金型を予熱するように構成されている、複数の金型オーブンと、
押出金型の前記金型オーブンへの搬入と前記金型オーブンからの搬出とを行うとともに、予熱された押出金型を荷降ろし領域に供給するように構成された頭上式ロボット型ホイストと、
を有する金型予熱装置。
【請求項18】
各金型オーブンが、ハウジングと、該ハウジングの蓋と、アクチュエータと、を有し、前記アクチュエータは、前記ロボット型ホイストが押出金型を前記金型オーブンに収納したり前記金型オーブンから取り出したりできるように、前記蓋を開閉するように作動可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記ロボット型ホイストが、前記複数の金型オーブンのそれぞれの上方に配置可能なリフト機構を有する頭上式ロボット型ホイストである、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
各押出金型が、金型クレードルに支持され、前記リフト機構が、前記金型クレードルに係合するように構成されている、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記リフト機構が、互いにほぼ直交する3つの軸に沿って移動可能である、請求項2に記載の装置。
【請求項22】
前記頭上式ロボット型ホイストが、長手方向に延びる少なくとも1つの第1のレールと、該第1のレールにほぼ垂直な第2のレールを支持し、前記第1のレールに沿って移動可能な第1のトロリーと、前記第2のレールに沿って移動可能な第2のトロリーと、を有し、前記リフト機構が、前記第2のトロリーに取り付けられ、ほぼ鉛直に移動可能である、請求項2に記載の装置。
【請求項23】
前記第1のトロリーと前記第2のトロリーと前記リフト機構とが、電動である、請求項2に記載の装置。
【請求項24】
複数の押出金型を支持する複数の金型クレードルを収容する待機領域をさらに有し、前記ロボット型ホイストが、金型クレードルを前記待機領域から取り出して予熱された金型オーブンに供給するように作動可能である、請求項19から2のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
金型クレードル搬送機構をさらに有し、前記ロボット型ホイストが、予熱された押出金型を支持する金型クレードルを前記金型オーブンから取り出して前記金型クレードル搬送機構に供給するように作動可能である、請求項2に記載の装置。
【請求項26】
前記複数の金型オーブンが、互いに間隔を置いた複数のグループに分けられて配置され、前記待機領域と前記金型クレードル搬送機構とが、前記金型オーブンの前記グループ同士の間に配置されている、請求項2に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、押出に関し、特に、押出金型予熱システム、装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
押出は、押出機を用いてワークピースを強制的に押出金型に通すことによって、ワークピースの成形を行うものである。この工程中に、押し出されたワークピースの断面形状は、一般に、押出金型開口部の形状に一致する。金属および金属合金の押出は、押出が行われる温度に応じて、「熱間押出」か「冷間押出」のいずれかを用いて行うことができる。熱間押出を行っている間、ワークピースおよび押出金型は共に高温に維持される。例えば、アルミニウムおよびアルミニウム合金は、典型的には、摂氏約350度(℃)から約500℃の範囲の温度で熱間押出が行われる。
【0003】
熱間押出の工程において、押出金型は、典型的には、押出機に設置される前に別個のオーブンで所望の押出温度に予熱される。押出金型のこのような予熱により、押出機を運転条件に到達させるために必要な時間が低減され、それにより、押出機のスループットが向上することになる。
【0004】
押出金型を予熱する装置が、以前から考えられている。例えば、シュワルツの米国特許第7393205号明細書には、押出機に設置する前に押出金型を加熱して、それにより、押出金型を所定の温度まで温めてその温度に維持する装置が開示されている。この装置は、オーブンカバーを備えた少なくとも1つの出入開口部を有する気密・断熱オーブンハウジングを有し、オーブンハウジングの内部には衝撃ノズルフィールドがあり、その中に押出金型を配置することができる。この装置は、衝撃ノズルフィールドの開口部を通過して流れる流体を加熱する加熱手段を備えている。
【0005】
ブラッシュらの米国特許第6884969号明細書には、金型を保持する金型クレードルを有する赤外線金型オーブンが開示されている。金型クレードルの内部には、金型との直接接触を維持するように熱電対が配置されている。熱電対に接続されたコントローラにより、金型の温度が連続的に読み取られる。金型が閾値温度に達すると、オーブン内での赤外線発熱体の強度が低減される。金型が所望の温度に達すると、コントローラは、金型を所望の温度に維持するように、加熱強度を連続的に調整する。
【0006】
ペデルソリの欧州特許出願公開第0529198号明細書には、アルミニウムおよびアルミニウム合金の押出用の金型を予熱するための制御された雰囲気炉が開示されている。この炉は、外部環境に対して密閉可能な少なくとも1つのチャンバを側壁の一部で区切る支持フレームと、外側に向かって開放可能なチャンバドアであって、予熱される部分のための支持フレームを有するチャンバドアと、チャンバを加熱する抵抗器とを有している。
【0007】
押出金型のための自動処理装置も、以前から考えられている。例えば、ズール(Zurru)らの欧州特許出願公開第0274366号明細書には、水平軸押出機のための金型交換装置が開示されている。この装置は、支持柱であって、支持柱に沿って延びるガイドを備えた支持柱と、それぞれが各金型保持スライド用の2つの受け棚を備え、ガイドに沿って移動可能なキャリッジと、押出機の押出作業位置に近接した金型交換位置に各棚を配置させる駆動手段と、金型交換位置から押出作業位置まで、またはその逆に金型保持スライドを移動させる押し込み手段とを有している。
【0008】
ポリマー射出成形金型のための自動処理および予熱システムも、以前から考えられている。例えば、ヒューズらの米国特許第6893600号明細書には、部品を製造するための金型をより迅速に準備するために、射出成形機に挿入される金型が、その挿入前に電気的および流体的に加熱される、金型の準備および交換方法が開示されている。
【0009】
へールの米国特許第4518338号明細書には、射出成形金型のプログラム制御可能な交換を行う装置であって、射出成形機の型締めユニットへの挿入前および挿入時に、射出成形金型の連続的な前処理を行う装置が開示されている。この装置は、金型クランプスペースと横一列に並んで交互に移動可能な2つの金型台座を備えた移動テーブルであって、金型アセンブリを連行する駆動ラックおよび複数の駆動ピンを備えたエンドレスローラチェーンによって金型アセンブリを移送する移動テーブルを有している。各金型台座は、柔軟性のある温度調節ラインのための連結ヘッドを運搬する係留駆動ラックを有し、各金型アセンブリは、連結バルブと多導体接続に組み込まれた識別コードとを備えた整合連結ヘッドを有し、すべての接続は、金型アセンブリを金型台座の上に単に下降させることによって確立されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
公知の押出金型予熱システムおよび方法は十分であるかもしれないが、一般には、改良が望まれている。したがって、本発明の目的は、新規な金型予熱システム、装置、および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、一態様では、少なくとも1つの金型オーブンと、ロボット型ホイストと、ロボット型ホイストおよび少なくとも1つの金型オーブンと通信を行う処理構造であって、ホイストを制御して、押出金型の少なくとも1つの金型オーブンへの搬入と少なくとも1つの金型オーブンからの搬出とを可能にするように構成され、さらに、少なくとも1つの金型オーブンに搬入された押出金型を予熱するために、少なくとも1つの金型オーブンを生産処方に従って作動させるように構成された処理構造と、を有する金型予熱システムが提供される。
【0012】
一実施態様では、少なくとも1つの金型オーブンは、複数の金型オーブンを有している。各金型オーブンは、ハウジングと、ハウジングの蓋と、処理構造と通信を行うアクチュエータと、を有している。アクチュエータは、処理構造に応答して、ロボット型ホイストが押出金型を金型オーブンに収納したり金型オーブンから取り出したりできるように、蓋を開閉する。
【0013】
一形態では、ロボット型ホイストは、処理構造に応答する頭上式ロボット型ホイストであって、各金型オーブンの上方に配置可能なリフト機構を有する頭上式ロボット型ホイストである。各押出金型は、金型クレードルに支持され、リフト機構は、金型クレードルに係合するように構成されている。リフト機構は、互いにほぼ直交する3つの軸に沿って移動可能である。一実施態様では、頭上式ロボット型ホイストは、長手方向に延びる少なくとも1つの第1のレールと、第1のレールにほぼ垂直な第2のレールを支持し、第1のレールに沿って移動可能な第1のトロリーと、第2のレールに沿って移動可能な第2のトロリーと、を有している。リフト機構は、第2のトロリーに取り付けられ、ほぼ鉛直に移動可能である。
【0014】
一実施態様では、押出金型予熱システムは、押出金型を支持する金型クレードルを収容するスケジュール領域をさらに有している。ロボット型ホイストは、処理構造に応答して、金型クレードルをスケジュール領域から取り出して予熱された金型オーブンに供給する。押出金型予熱システムは、金型クレードル搬送機構をさらに有している。ロボット型ホイストは、処理構造に応答して、予熱された押出金型を支持する金型クレードルを金型オーブンから取り出して金型クレードル搬送機構に供給する。
【0015】
一実施態様では、生産処方は、予熱される各押出金型に割り当てられ、生産処方は、選択された金型オーブンに押出金型を配置する前に、選択された金型の予熱温度を指定する。生産処方は、押出金型が選択され予熱された金型オーブン内で費やす期間をさらに指定する。
【0016】
別の態様によれば、少なくとも1つの金型オーブンおよびロボット型ホイストと通信を行う処理構造に、金型識別情報を入力することと、金型識別情報に生産処方を関連づけることと、処理構造によって、少なくとも1つの金型オーブンに、生産処方で指定された設定温度まで予熱するように指示することと、押出金型を予熱するために、処理構造によって、ロボット型ホイストに、押出金型を予熱された少なくとも1つの金型オーブンに搬入するように指示することと、を含む、押出金型を予熱する方法が提供される。
【0017】
一実施態様では、この方法は、処理構造によって、ロボット型ホイストに、生産処方で指定された時刻かつ任意にはオペレータ入力の受領時に押出金型を少なくとも1つの金型オーブンから搬出するように指示することをさらに含んでいる。
【0018】
さらに別の態様によれば、複数の金型オーブンであって、それぞれの金型オーブンが、その内部に配置された押出金型を予熱するように構成されている、複数の金型オーブンと、押出金型の金型オーブンへの搬入と金型オーブンからの搬出とを行うとともに、予熱された押出金型を荷降ろし領域に供給するように構成された頭上式ロボット型ホイストと、を有する金型予熱装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】金型予熱システムの部分概略斜視図である。
図2図1の金型予熱システムの一部を形成する金型予熱装置の上面図である。
図3図2の金型予熱装置の正面図である。
図4図2の金型予熱装置の側面図である。
図5図2の金型予熱装置の一部を形成するロボット型ホイストの斜視図である。
図6図2の金型予熱装置の一部の斜視図である。
図7図2の金型予熱装置の他の部分の後方斜視図である。
図8図1の金型予熱システムで使用される金型情報入力方法のステップを示すフローチャートである。
図9図1の金型予熱システムで使用される金型予熱方法のステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付された図面を参照して、いくつかの実施形態を詳細に説明する。
【0021】
図1から図7を参照すると、押出金型を処理および加熱する押出金型予熱システムが示されており、それは全体として参照番号20によって特定されている。押出金型予熱システム20は、汎用コンピュータ装置24との通信を行う金型予熱装置22を有している。汎用コンピュータ装置24は、金型予熱装置22を制御し、それによって、プログラム可能で自動化された押出金型の処理および予熱を可能にするように構成されている。そして、予熱された押出金型は、例えば金属押出機などの金属押出装置(図示せず)で使用可能である。
【0022】
金型予熱装置22は、それぞれが押出金型30を収容して予熱する複数の金型オーブン28を有している。図示した実施形態では、金型予熱装置22は、16個の金型オーブン28を有している。これらの金型オーブン28は、横方向に互いに間隔を置いた、8個の金型オーブン28からなる2つのグループに分けられて配置されている。各グループの金型オーブン28は、2列に配置されている。各金型オーブン28は、ほぼ矩形状の金型オーブンハウジング28aを有し、金型オーブンハウジング28aは、開放された上部が上蓋34によって覆われている。各金型オーブン28の上蓋34は、上蓋34に作用する金型オーブンハウジング28aの油圧アクチュエータ36の動きによって、押出金型を金型オーブン28に出し入れする際に開閉される。各金型オーブン28は、後述するように、汎用コンピュータ装置24と通信して、生産処方(production formula)に従って作動する。
【0023】
金型オーブン28のそれぞれは、金型予熱装置22の内部に押出金型30を搬送するように構成されたロボット型ホイスト38によってアクセス可能である。本実施形態では、ロボット型ホイスト38は、互いに平行な一対の頭上式ガントリーレール44を有し、ガントリーレール44は、ほぼ金型予熱装置の長さにわたって延び、直立した複数の支柱45によって支持されている。ガントリーレール44の端部には、ストッパ44aが設けられている。電動トロリー42が、ガントリーレール44上に支持され、ガントリーレール44に沿って移動可能であり、それによって、電動トロリー42は、金型予熱装置22の長さにわたって移動することができる。電動トロリー42は、互いに平行な第2の対のガントリーレール46を支持しており、これらは、ガントリーレール44に対してほぼ垂直に延びている。ガントリーレール46の端部には、ストッパ46aが設けられている。別の電動トロリー48が、ガントリーレール46上に支持され、ガントリーレール46に沿って移動可能である。電動トロリー48は、ガントリーレール44とガントリーレール46の両方に垂直な軸に沿って鉛直に移動するように構成された可動シャフト52を有する電動リフト機構を支持している。シャフト52の下端には、電動グリップ装置56が設けられている。グリップ装置56は、外側を向いた2組の格納式フック58を有し、格納式フック58は、押出金型30を支持するように構成された金型クレードル60に係合するような形状を有している。汎用コンピュータ装置24は、生産処方に従ってロボット型ホイスト38と電動部品とを稼働させるように構成されている。本実施形態では、電動トロリー42と電動トロリー48とシャフト52とが、互いに直交する3つの軸に沿ってそれぞれ移動可能であるため、ロボット型ホイスト38は、金型予熱装置22の内部の実質的に任意の方向に金型クレードル60を搬送することができる。スクリーンSによって、金型予熱装置22の3つの側面が囲われている。
【0024】
図示した実施形態では、各金型クレードル60はベースを有し、ベースは、両端に脚部を備えた、互いに平行な2つのベース部材62であって、押出金型30が載置される2つのベース部材62と、それぞれがベース部材62の端部に隣接して、横方向に間隔を置いて配置された一対の直立したサイドレール64であって、それぞれがベース部材62同士に架け渡された一対のサイドレール64とを有している。各サイドレール64は、グリップ装置56の格納式フック58の各組によって係合されるような形状を有している。理解されるように、金型クレードル60を使用することで、押出金型30を、ロボット型ホイスト38に直接接触させることなく、金型予熱装置22の内部に運ぶことができ、このことは、有利なことに、処理中に押出金型30に損傷を与える可能性を低下させる。さらには、金型クレードル60の使用により、金型予熱装置22が既存の押出金型30に適合可能になり、有利には、金型予熱装置22で処理するために押出金型30を改良する必要がなくなる。
【0025】
金型クレードル搬送機構68は、金型オーブン28の2つのグループの間で金型予熱装置22の内部のほぼ中央に配置されており、金型クレードル60を運ぶように構成された車輪付きキャリッジ72を支持する一対のレール70を有している。車輪付きキャリッジ72は、モータ74と関連するドライブトレイン76とによってレール70に沿って駆動され、それにより、レール70の両端にそれぞれ配置された荷役領域78,80の間を移動することができる。スケジュール領域82は、金型クレードル搬送機構68のそばで荷役領域78に隣接して配置され、金型クレードル60が置かれるトレイ84を収容している。
【0026】
汎用コンピュータ装置24は、プロセス制御およびデータ収集を実行することができる適切な処理構造およびハードウェアを有している。したがって、汎用コンピュータ装置24は、例えば、中央処理装置(CPU)と、システムメモリ(揮発性および/または不揮発性)と、他の非リムーバブルおよびリムーバブルメモリ(例えば、ハードディスクドライブ、RAM、ROM、EEPROM、CD−ROM、DVD、フラッシュメモリなど)と、さまざまな構成要素を中央処理装置に接続するシステムバスとを有している。汎用コンピュータ装置24は、共用装置または遠隔装置と、1つ以上のネットワークコンピュータ装置と、他のネットワーク装置との少なくともいずれかにアクセスするためのネットワーク接続を有していてもよい。
【0027】
本実施形態では、汎用コンピュータ装置24は、米国ペンシルベニア州ミドルタウンのフェニックス・コンタクト社製の産業用パーソナルコンピュータ(IPC)と、IPCと通信を行うプログラマブルロジックコントローラ(PLC)であって、アレン・ブラドリーの「Compactlogix PLC」の形態として提供される、米国ウィスコンシン州ミルウォーキーのロックウェル・オートメーション社製のプログラマブルロジックコントローラ(PLC)とを有している。汎用コンピュータ装置24は、金型予熱装置22の監視と制御の両方を行う自動化アプリケーションを実行するように構成されている。本実施形態の自動化アプリケーションは、米国ウィスコンシン州ミルウォーキーのロックウェル・オートメーション社提供の「FactoryTalk(登録商標) Transaction Manager」である。自動化アプリケーションは、一般に、PLCと生産処方リストが格納された構造化照会言語(SQL)データベースとの間のインタフェースとして機能する。SQLデータベースは、押出金型を区別するための金型番号のリストと、生産処方が金型番号に割り当てられている場合、関連する生産処方へのポインタとをさらに格納している。SQLデータベースは、スケジュール領域82に配置された押出金型のリストと、押出金型を予熱するために利用可能な金型オーブン28のリストとをさらに格納している。自動化アプリケーションは、一般に、金型予熱装置22とやりとりされてPLCによって処理されるプロセスデータがまとめられている、入力データ/出力データSQLデータベースと、PLCとの間のインタフェースとしても機能する。汎用コンピュータ装置24には、各金型オーブン28の動作とロボット型ホイスト38の動作とを指示するために必要なドライバがインストールされている。本実施形態では、ドライバは、ロボット型ホイスト38の電動部品、すなわち、トロリー42、トロリー48、シャフト52、およびグリップ装置56を動かすためのドライバを含んでいる。シャフト52は、閉ループ磁束ベクトル制御とトルク供給/ブレーキ供給アプリケーションとを用いて操作されるように構成され、これにより、シャフト52の起動と停止との間の円滑な移行が可能になる。
【0028】
汎用コンピュータ装置24は、自動化アプリケーションのユーザインターフェースが表示されるディスプレイ64をさらに有している。汎用コンピュータ装置24は、少なくとも1つの入力装置をさらに有し、この入力装置は、オペレータによって、例えば金型識別番号や熱プログラム用のデータなどの情報を入力するために使用可能であり、他の点では、自動化アプリケーションと対話するために使用可能である。図示した実施形態では、汎用コンピュータ装置24は、オペレータが使用するためのキーボード66とマウス68とを有している。
【0029】
ここで、図8および図9を特に参照して、押出金型予熱システム20の動作について説明する。図8は、押出金型予熱システム20で使用される金型情報入力方法のステップを示すフローチャートであり、それは全体として参照番号120で示されている。この方法に際し、オペレータは、最初に、押出金型30を荷役領域80まで運び、例えばウインチや金型ホイストなどの適切なツール(図示せず)を用いて、キャリッジ72上に支持された空の金型クレードル60に手動で押出金型30を積み込む。そして、オペレータは、キーボード66または他の入力装置を用いて、汎用コンピュータ装置24に、押出金型30を識別する固有の金型番号を入力する(ステップ122)。それに応じて、汎用コンピュータ装置24は、SQLデータベースに格納された金型番号リスト内の金型番号を検索し、ポインタの存在を確認することにより、生産処方がすでに金型番号に割り当てられているかどうかを判断する(ステップ124)。生産処方がすでに金型番号に割り当てられている場合、汎用コンピュータ装置24は、ポインタを使用して、SQLデータベースから生産処方を取り出し、その後、その生産処方を実行する(ステップ126)。ステップ124において、生産処方が金型番号に割り当てられていない場合、オペレータは、リストからの既存の生産処方を金型番号に割り当てるかどうかを確認するように指示される(ステップ128)。リストからの既存の生産処方を金型番号に割り当てる場合、オペレータは、金型番号に割り当てられる既存の生産処方を選択するように指示される(ステップ130)。選択されると、リスト内の金型番号エントリが、金型番号に割り当てられている生産処方を識別するポインタを含むように更新される。ステップ128において、既存の生産処方を金型番号に割り当てない場合、オペレータは、金型番号に割り当てられる新たな生産処方を作成するように指示される(ステップ132)。作成されると、作成された生産処方が、SQLデータベース内の生産処方リストに追加され、リスト内の金型番号エントリが、金型番号に割り当てられている作成された生産処方を識別するポインタを含むように更新される。ステップ130またはステップ132に続いて、生産処方が金型番号に割り当てられた後で、汎用コンピュータ装置24は、割り当てられた生産処方を実行する(ステップ126)。
【0030】
金型クレードル60に置かれた押出金型30に割り当てられた生産処方の実行中に、汎用コンピュータ装置24は、キャリッジ72を荷役領域78まで運ぶように、モータ74と関連するドライブトレイン76とに指示する。そして、汎用コンピュータ装置24は、ロボット型ホイスト38を制御して、グリップ装置56をキャリッジ72の上方に配置する。配置されると、汎用コンピュータ装置24は、ロボット型ホイスト38に指示してシャフト52を下降させ、その後、フック58が金型クレードル60のサイドレール64に係合するように、グリップ装置56を作動させる。金型クレードル60が係合された後で、汎用コンピュータ装置24は、生産処方に定義されているように、ロボット型ホイスト38が、シャフト52を上昇させることで、キャリッジ72から金型クレードル60を持ち上げ、ロボット型ホイスト38が、レール44に沿って移動して、金型クレードル60とそれに支持された押出金型30とをスケジュール領域82の上方に配置した後で、金型クレードル60をスケジュール領域82内のトレイ84の1つに置くように、ロボット型ホイスト38に指示する。そして、汎用コンピュータ装置24は、押出金型30を予熱する前に、押出金型30が生産に必要であることを示すオペレータからの入力を待つ。
【0031】
押出金型30が生産に必要である場合、金型予熱システム20は、図9に図示され、全体として参照番号220で示された金型予熱方法を用いて、押出金型30を予熱する。この金型予熱方法に際し、オペレータは、汎用コンピュータ装置24のディスプレイ64上に表示された、スケジュール領域82内のトレイ84に載置された利用可能な押出金型のリストから、押出金型30を選択する(ステップ222)。その後、オペレータは、コンピュータ装置24のディスプレイ64上に表示された利用可能な金型オーブンのリストから、金型オーブン28を選択する(ステップ224)。そして、押出金型30と金型オーブン28とが選択されたことによって、汎用コンピュータ装置24は、選択された押出金型に割り当てられている生産処方の熱プログラムを実行するように、選択された金型オーブンに指示する(ステップ226)。この段階で、選択された金型オーブン28は、加熱を開始するように操作される。金型オーブン28が熱プログラムで定義された予熱温度Tに到達した後で、汎用コンピュータ装置24は、金型オーブン28の油圧アクチュエータ36を操作して上蓋34を開放し、ロボット型ホイスト38が、スケジュール領域82内の選択された押出金型30の場所まで移動して、押出金型30を支持する金型クレードル60を持ち上げ、それを金型オーブン28まで移動させて金型オーブン28に搬入するように、ロボット型ホイスト38に指示する(ステップ228)。金型クレードル60と押出金型30とが金型オーブン28に搬入された後で、汎用コンピュータ装置24は、油圧アクチュエータ36を操作して上蓋34を閉鎖する。
【0032】
押出金型30は、熱プログラムで定義された予熱期間tにわたって、金型オーブン28内で予熱温度Tに保たれる。期間tが終わると、汎用コンピュータ装置24は、押出金型を金型オーブン28から搬出するかどうかを判断するように、オペレータに指示する(ステップ230)。オペレータが「yes」を選択すると、汎用コンピュータ装置24は、油圧アクチュエータ36を操作して上蓋34を開放し、ロボット型ホイスト38が、金型オーブン28から押出金型30を支持する金型クレードル60を搬出し、それを金型クレードル搬送機構68まで移動させてキャリッジ72に積み込むように、ロボット型ホイスト38に指示する(ステップ232)。その後、モータ74と関連するドライブトレイン76とが操作されて、キャリッジ72がレール70に沿って荷役領域80まで移動し、それにより、オペレータが、適切なツール(図示せず)によって、予熱された押出成形30を金型クレードル60から降ろすことが可能になり、予熱された押出成形30を例えば金属押出装置まで搬送することが可能になる。
【0033】
オペレータがステップ230で「no」を選択すると、汎用コンピュータ装置24は、熱プログラムを一時停止して、予熱温度Tを維持するように金型オーブン28に指示し(ステップ234)、これにより、押出金型30は、熱プログラムで定義された予熱時間tを超過してこの温度に保たれる。予熱期間を延長している間、汎用コンピュータ装置24は、押出金型を金型オーブン28から搬出するかどうかを判断するように、オペレータに指示する(ステップ236)。オペレータが「yes」を選択すると、コンピュータ装置24は、熱プログラムの一時停止をキャンセルし、油圧アクチュエータ36を操作して上蓋34を開放し、ロボット型ホイスト38が、金型オーブン28から押出金型30を支持する金型クレードル60を搬出させ、それを金型クレードル搬送機構68まで移動させてキャリッジ72に積み込むように、ロボット型ホイスト38に指示する(ステップ232)。
【0034】
予熱期間を延長している間に、同じ生産処方が割り当てられた別の押出金型30が金型オーブン28に搬入される場合には、汎用コンピュータ装置24は、油圧アクチュエータ36を操作して上蓋34を開放し、ロボット型ホイスト38が、金型オーブン28から押出金型30を支持する金型クレードル60を取り出し、それを加熱保持オーブンまで移動させて加熱保持オーブンに搬入するように、ロボット型ホイスト38に指示し、それにより、他の押出金型30を金型オーブン28に搬入することができる。
【0035】
理解されるように、金型予熱システム20によって、オペレータが押出金型30を手動で金型オーブン28に搬出入する必要がなくなり、これにより、有利なことに、効率が改善され、ワークピースの安全性が高められる。金型予熱システム20によって、金型予熱に関連した人為的エラーの可能性が低減され、金型ごとに測定される予熱の均一性が高められることも有利である。さらに、金型予熱システム20によって、別の面では、オペレータによる手動搬入のために必要な金型オーブンよりも、金型オーブン28をよりコンパクトに構成することができ、これにより、有利なことに、占有床面積をより少なくすることができる。
【0036】
ロボット型ホイストおよび金型クレードル搬送機構の構成は上述したものに限定されるものではなく、他の適切なホイストおよび金型クレードル搬送機構を使用できることが、当業者には理解されるであろう。
【0037】
上述した実施形態では、金型情報入力方法および金型予熱方法は、別々の方法として記載されているが、その代わりに、金型情報入力方法が、金型予熱方法の一部を形成していてもよい。また、関連する実施形態では、汎用コンピュータ装置は、押出金型を予熱する前に、オペレータからの入力を待たなくてもよい。
【0038】
押出金型を識別する金型番号は、キーボードを用いて汎用コンピュータ装置に入力されるものとして記載されているが、その代わりに、例えば、マウス、バーコードスキャナ、音声認識装置など、代替の入力装置を用いて、金型番号を入力することもできる。
【0039】
上述した実施形態では、オペレータが、予熱される押出金型を選択しているが、その代わりに、予熱される押出金型を、その押出金型の金型番号に割り当てられた生産処方で定義することもできる。金型予熱方法は、オペレータによって手動で開始されてもよく、あるいは、押出金型の金型番号に割り当てられた生産処方で指定された開始時刻に従って、自動的に開始されてもよい。
【0040】
また、上述した実施形態では、オペレータが、使用される金型オーブンを選択しているが、その代わりに、使用される金型オーブンを生産処方で定義することもできる。
【0041】
上述した実施形態では、汎用コンピュータ装置が、押出金型を金型オーブンから搬出するかどうかについてオペレータに指示しているが、その代わりに、生産処方に従って金型オーブンから押出金型を自動的に搬出することもできる。
【0042】
添付された図面を参照して、いくつかの実施形態を説明したが、添付された特許請求の範囲によって定められる範囲から逸脱することなく変形および変更が可能であることが、当業者には理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9