(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記桟木挟持部は、前記鉄筋の長手方向における一方側と他方側において桟木の面と対面するように広がった第1桟木挟持面部(12)および第2桟木挟持面部(13)と、前記第1桟木挟持面部から前記第2桟木挟持面部に向けて突出した第1固定爪部(12b)と、前記第2桟木挟持面部から前記第1桟木挟持面部に向けて突出した第2固定爪部(13b)と、を有している、
請求項1または2に記載の桟木固定具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述したように桟木をワイヤで巻き付けて杭に固定する場合には、固定作業が繁雑であり、ワイヤによる固定が不十分である場合には桟木が固定位置からズレたり脱落したりする問題がある。
【0005】
また、上述の鉛直部分とアーム部分とを備えた鉄筋を用いる場合には、このような特別な鉄筋を容易する必要がある。
【0006】
本発明の課題は、上述した点に鑑みてなされたものであり、鉄筋に対して桟木を簡易に固定することが可能な桟木固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1観点に係る桟木固定具は、桟木を鉄筋に固定するための桟木固定具であって、本体部と、鉄筋挟持部と、桟木挟持部と、を備えている。本体部は、板状である。鉄筋挟持部は、鉄筋を径方向外側から挟持する。桟木挟持部は、鉄筋の長手方向における一方側と他方側から桟木を挟持する。鉄筋挟持部と桟木挟持部とは、いずれも本体部から伸び出している。
【0008】
この桟木固定具は、鉄筋挟持部を用いて鉄筋に固定し、桟木を桟木挟持部に固定させることで、鉄筋に対する桟木の固定作業が簡易になる。
【0009】
第2観点に係る桟木固定具は、第1観点に係る桟木固定具であって、鉄筋は径方向外側に突出した凸部を長手方向における所定の間隔で有する異形棒鋼である。この桟木固定具は、固定穴を有している。固定穴は、鉄筋挟持部が鉄筋を径方向外側から挟持している状態で、鉄筋の凸部を貫通させる。また、固定穴の縁の一部は、鉄筋挟持部が鉄筋を径方向外側から挟持している状態で鉄筋の凸部に対する鉄筋の長手方向の一方側と他方側に沿うように設けられている。
【0010】
この桟木固定具は、固定穴が設けられていることで、異形棒鋼である鉄筋に固定された状態で、鉄筋の長手方向に対するズレを抑制させることが可能になっている。具体的には、桟木固定具の固定穴の縁の一部が、異形棒鋼の鉄筋に設けられている凸部の一方側と他方側において沿うように位置しているため、当該凸部と固定穴の縁が当接することにより、それ以上の桟木固定具の移動(鉄筋の長手方向における固定位置のズレ)を抑制することができている。
【0011】
第3観点に係る桟木固定具は、第1観点または第2観点に係る桟木固定具であって、桟木挟持部は、第1桟木挟持面部および第2桟木挟持面部と、第1固定爪部と、第2固定爪部と、を有している。第1桟木挟持面部および第2桟木挟持面部は、それぞれ、鉄筋の長手方向における一方側と他方側において桟木の面と対面するように広がっている。第1固定爪部は、第1桟木挟持面部から第2桟木挟持面部に向けて突出している。第2固定爪部は、第2桟木挟持面部から第1桟木挟持面部に向けて突出している。
【0012】
この桟木固定具では、第1桟木挟持面部および第2桟木挟持面部を有していることで、桟木を面で支持することが可能になるため、支持を安定的にすることができる。さらに、第1固定爪部と第2固定爪部を有していることで、支持された桟木の脱落を抑制することが可能になっている。
【0013】
第4観点に係る桟木固定具は、第1観点から第3観点のいずれかに係る桟木固定具であって、樹脂によって一体的に構成されている。
【0014】
この桟木固定具は、樹脂によって一体的に構成されているため、樹脂の弾性力を用いて挟持させることが可能であり、取り扱いも容易になる。
【0015】
付記に係る桟木固定具は、桟木を鉄筋に固定するための桟木固定具であって、鉄筋挟持部と、桟木挟持部と、を備えている。鉄筋挟持部は、鉄筋を径方向外側から挟持する。桟木挟持部は、鉄筋の長手方向における一方側と他方側から桟木を挟持する。鉄筋挟持部と桟木挟持部とが一体的に構成されている。
【0016】
この桟木固定具は、鉄筋挟持部を用いて鉄筋に固定し、桟木を桟木挟持部に固定させることで、鉄筋に対する桟木の固定作業が簡易になる。
【発明の効果】
【0017】
本願発明に係る桟木固定具では、鉄筋に対する桟木の固定作業が簡易になる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、桟木固定具の一実施形態を例に挙げて説明するが、本願発明はこれに限定されるものではない。
【0020】
桟木固定具10について、
図1において外観斜視図を、
図2において正面図を、
図3において左側面図を、
図4において下面図を、それぞれ示す。また、
図7において、桟木固定具10が固定される鉄筋40を示す。
図8において、桟木30の外観斜視図を示す。
【0021】
桟木固定具10は、桟木30を鉄筋40に固定するための固定具である。
【0022】
鉄筋40は、
図7に示すように、略円筒形状の鋼材によって構成されている。鉄筋40は、鉄筋本体41と、リブ42と、複数の凸部43と、を有している。鉄筋本体41は、鉄筋40のうち、長手方向に沿って伸びた円筒形状部分を構成している。リブ42は、鉄筋本体41の径方向外側の一部と当該一部とは反対側の一部において径方向外側に突出して形成された部分が鉄筋本体41の長手方向に沿って伸びるように設けられている。凸部43は、リブ42以外の部分において鉄筋本体41の径方向外側を沿うように突出した形状を有しており、鉄筋本体41の長手方向において所定の間隔で複数設けられている。なお、凸部43は、特に限定されないが、例えば、リブ42を介して一方側と他方側において設けられている位置がずらされていてもよい。このような鉄筋40としては、所謂、異形棒鋼が好ましい。なお、異形棒鋼としては、特に限定されないが、D10やD13等が挙げられる。
【0023】
桟木30は、
図8に示すように、略直方体形状の木材によって構成されている。桟木30は、上面31、下面32、背面33、正面34、左側面35、右側面36を有している。桟木30の各辺の寸法については特に限定されないが、例えば、
図8において紙面の上下方向の辺が6cm、紙面の左右方向の辺が3cm、残りの辺が3m〜4m程度の大きさのものを用いることができる。
【0024】
桟木固定具10は、本体部11と、鉄筋40を径方向外側から挟持する鉄筋挟持部と、鉄筋の長手方向における一方側と他方側から桟木30を挟持する桟木挟持部と、を備えている。
【0025】
本体部11は、桟木固定具10の中心となる板状部材であり、固定される鉄筋40の長手方向に沿って伸びた形状を有している。ここで、本体部11は、本体部11の長手方向の中心近傍のうち鉄筋挟持部が伸び出している部分の一部において、板厚方向に貫通した固定穴11aを複数有している。固定穴11aの長手方向は、本体部11の長手方向に対して直行するように設けられている。本実施形態においては、固定穴11aは、本体部11の長手方向に並んで2つ設けられている。固定穴11aの長手方向の両端部は、本体部11を超えて鉄筋挟持部の一部にまで達している。
【0026】
鉄筋挟持部は、本体部11のうち、本体部11の長手方向中心付近の左側端部から正面側に伸び出した左鉄筋挟持部14と、右側端部から正面側に伸び出した右鉄筋挟持部15と、を有している。左鉄筋挟持部14は、
図14に示すように、本体部11から離れるにつれて僅かに左側に湾曲した後に右側に湾曲して構成される第1左鉄筋挟持部14aと、第1左鉄筋挟持部14aの本体部11から最も離れた部分からさらに本体部11から離れる方向に向かいつつ左側に折れ曲がるようにして伸びている第2左鉄筋挟持部14bと、を有している。右鉄筋挟持部15は、同様に、
図14に示すように、本体部11から離れるにつれて僅かに右側に湾曲した後に左側に湾曲して構成される第1右鉄筋挟持部15aと、第1右鉄筋挟持部15aの本体部11から最も離れた部分からさらに本体部11から離れる方向に向かいつつ右側に折れ曲がるようにして伸びている第2右鉄筋挟持部15bと、を有している。第1左鉄筋挟持部14aと第1右鉄筋挟持部15aとは、弾性変形することによる板バネを構成しており、鉄筋40を径方向外側から挟持することが可能になっている。ここで、第1左鉄筋挟持部14aと第2左鉄筋挟持部14bとの境界部分と、第1右鉄筋挟持部15aと第2右鉄筋挟持部15bとの境界部分と、の間の距離は、対象とする鉄筋40の外径(凸部43の外側の径)よりもわずかに小さくなるように構成されている。第2左鉄筋挟持部14bと第2右鉄筋挟持部15bとは、本体部11から離れるほど互いの距離が広がるように構成されているため、ユーザは、鉄筋40に対して、桟木固定具10のうち第2左鉄筋挟持部14bと第2右鉄筋挟持部15bとの間の部分を押し当てるようにすることで、第1左鉄筋挟持部14aと第1右鉄筋挟持部15aとの間に鉄筋40を入れ込んで、容易に固定することが可能になっている。ここで、桟木固定具10を鉄筋40に固定した状態では、鉄筋40の凸部43が桟木固定具10の固定穴11aを貫通した状態となるように桟木固定具10が構成されている。ここで、桟木固定具10の2つの固定穴11aは、それぞれ鉄筋40の凸部43の1つを貫通させている。桟木固定具10の固定穴11aは、鉄筋40に固定された状態では、対応する鉄筋40の凸部43の縁(鉄筋40の長手方向の上方の縁と下方の縁)の外側を沿うように位置する。これにより、桟木固定具10が鉄筋40に固定された状態では、桟木固定具10が鉄筋40の長手方向にずれてしまうことを抑制することができている。
【0027】
桟木挟持部は、本体部11のうち、本体部11の長手方向(鉄筋40の長手方向)における一方側と他方側から桟木30を挟持するための、上面桟木挟持部12と下面桟木挟持部13とを有している。
【0028】
上面桟木挟持部12は、本体部11の長手方向の上方端部から、左鉄筋挟持部14や右鉄筋挟持部15が伸び出している側とは反対側に向けて伸び出しており、主として法線方向が上下方向である板状部分を構成している。上面桟木挟持部12の中央から本体部11側にずれた位置には、板厚方向に貫通した円形の上面円形貫通孔12cが設けられている。上面桟木挟持部12のうち上面円形貫通孔12cの左右には、それぞれ板厚方向に貫通した矩形の上面矩形貫通孔12aが設けられている。上面桟木挟持部12は、上面桟木挟持部12の下面側であって各上面矩形貫通孔12aの本体部11側とは反対側の部分から下面側に向けて突出した第1固定爪部12bが設けられている。
【0029】
下面桟木挟持部13は、本体部11の長手方向の下方端部から、左鉄筋挟持部14や右鉄筋挟持部15が伸び出している側とは反対側に向けて伸び出しており、主として法線方向が上下方向である板状部分を構成している。下面桟木挟持部13の中央から本体部11側にずれた位置には、板厚方向に貫通した円形の下面円形貫通孔13cが設けられている。下面桟木挟持部13のうち下面円形貫通孔13cの左右には、それぞれ板厚方向に貫通した矩形の下面矩形貫通孔13aが設けられている。下面桟木挟持部13は、下面桟木挟持部13の下面側であって各下面矩形貫通孔13aの本体部11側とは反対側の部分から上面側に向けて突出した第2固定爪部13bが設けられている。
【0030】
第1固定爪部12bと第2固定爪部13bとは、桟木30を挟んだ状態で、桟木固定具10に対する桟木30の移動を抑制することが可能になっている。
【0031】
ここで、
図4に示すA−A断面における第2固定爪部13bおよびその周囲の様子を
図5に示す。また、
図4に示すB−B断面における第2固定爪部13bおよびその周囲の様子を
図6に示す。ここに示すように、第2固定爪部13bは、下面桟木挟持部13の上面からさらに上面側に向けて距離dだけ突出するように設けられている。特に限定されないが、本実施形態では、桟木30の固定安定性を確保して桟木30の取り外しが可能となるように、距離dを1〜2mm、より好ましくは1.2mmとしている。なお、第2固定爪部13bは、
図5に示すように、本体部11側における下面桟木挟持部13に略垂直な面と、本体部11側とは反対側における傾斜面と、を有するように構成されている。これにより、桟木固定具10のうち上面桟木挟持部12と下面桟木挟持部13との間に対して背面側から、桟木30を挿入しやすく引き抜きにくいようにすることができている。また、第2固定爪部13bは、
図6に示すように、下面桟木挟持部13から最も離れた部分の左右両端の角が丸みを帯びるように構成されたR部13xをそれぞれ有している。しかも、各第2固定爪部13bの下面桟木挟持部13から最も離れた部分は、いずれも左右方向に並ぶように設けられている。これにより、桟木固定具10に対して桟木30が固定された状態であっても、桟木固定具10の左右方向については桟木30をスライド移動させやすくすることが可能になっている。すなわち、桟木固定具10に対して桟木30を固定した状態であっても、左右方向についての桟木30の位置の微修正を行いやすくすることができている。なお、上述の点については、いずれも上面桟木挟持部12の第1固定爪部12bについても同様である。
【0032】
なお、桟木固定具10は、金属または樹脂によって一体的に構成させることができるが、錆びを抑制する観点からは樹脂が好ましい。
【0033】
桟木固定具10は、板状部分の厚みを1.5〜2.5mmとすることができ、1.8mmとすることが好ましい。
【0034】
以下、上述した桟木固定具10の使用例を説明するが、桟木固定具10の使用例はこれに限定されるものではなく任意の型枠作成時等に用いることができる。
【0035】
ここでは、マンション建設時において玄関と室内との段差を設けるために桟木30を利用する場合であって、
図9に示すように、鉄筋40の下端が地中に埋められており、鉄筋40の一部がコンクリートスラブ70により覆われるようにして、鉄筋40が立設されている場合を例に説明する。コンクリートスラブ70は、
図9紙面において、鉄筋40付近よりも左側における玄関面71と、鉄筋40付近よりも右側であって玄関面71よりも低いスラブ面72と、を有して構成されている。玄関面71は玄関を構成しており、スラブ面72はその上方に室内の床面81を構成する床部80が設けられる。
【0036】
ここで、鉄筋40は、
図9の紙面奥行き方向に複数並んで設けられている。
【0037】
コンクリートスラブ70のスラブ面72の上には、複数本のポリバタ50が配置され、当該ポリバタによってパネル60が支えられている。このパネル60は、コンクリートを流し込む型枠の底面として用いられる。なお、コンクリートスラブ70のスラブ面72とパネル60との間のポリバタ50が位置している空間は、下水配管や電気配線等を張り巡らせる空間として用いられる。
【0038】
ユーザは、コンクリートを流し込む型枠の側面を構成する桟木30を、鉄筋40に対して取り付ける。ここで、まず、複数の鉄筋40に対して垂直な方向に並んで同じ高さ位置に桟木固定具10が固定できるように、複数の鉄筋40における桟木固定具10の取付高さ位置の特定を行う。ここで、取付高さ位置の特定は、特に限定されないが、例えば、レーザー光によって同一の高さ位置を示し、当該レーザー光が示す位置に対してそれぞれ桟木固定具10を取り付けていってもよい。また、レーザー光に限らず、テンションを掛けた紐や棒状物を用いて取付高さ位置を特定してもよい。このようにして、各鉄筋40に対してそれぞれ桟木固定具10が取り付けられる。具体的には、桟木固定具10のうちの左鉄筋挟持部14と右鉄筋挟持部15によって鉄筋40が径方向外側から挟持されることになる。
【0039】
そして、桟木30は、鉄筋40に取り付けられている桟木固定具10に対して固定される。具体的には、桟木30は、桟木固定具10のうち上面桟木挟持部12と下面桟木挟持部13との間に挿入されることで固定される。桟木30は、桟木固定具10の本体部11に対して正面34が面するように挿入され、
図9において左側面35が紙面手前側を向いた状態で挿入される。桟木固定具10に固定された桟木30は、第1固定爪部12bおよび第2固定爪部13bにより実質的に固定された状態となるが、上述したように、桟木30の長手方向(鉄筋40が並んでいる方向)に対しては第1固定爪部12bおよび第2固定爪部13bが当該方向に平行に伸びるように設けられているため、桟木30に力を加えることで移動させることも可能である。このように、桟木30を桟木固定具10に取り付けた後であっても、桟木30の長手方向(鉄筋40が並んでいる方向)に対しては位置の微調整を行うことが可能になっている。
【0040】
床部80は、上述のようにして作成された型枠に対してコンクリートが流し込まれることで形成される。このようにして形成された床部80の上面は、床面81として室内を構成する。
【0041】
以上のように、桟木固定具10を用いて鉄筋40に桟木30を簡便に固定することができるため、従来のように、桟木30を鉄筋40に対してワイヤで巻き付けて固定する等の煩雑な作業が不要となっている。そして、桟木30は、桟木固定具10によって十分に固定されるため、例えば、ポリバタ50等を用いて桟木30を下から支える必要もない。
【0042】
なお、上述の例のように桟木固定具10が用いられる場合には、型枠にコンクリートが流し込まれることで床部80が形成されると、桟木固定具10の一部についてもコンクリート内に埋まってしまうことになるが、桟木30を取り外した後に、桟木固定具10の上面桟木挟持部12や下面桟木挟持部13を折り曲げる等により切断してもよい。当該桟木固定具10が残った部分については、さらに外側から化粧パネル等で覆われることとなる。
【0043】
なお、上記例では、桟木30は、玄関と室内の床面との段差を設けるものとして用いられる場合を例に挙げて説明したが、これに限られるものではなく、例えば、ベランダと室内の段差や、階段の段差等の任意の段差を設ける際に用いることができる。