特許第6095734号(P6095734)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6095734-構造を製作する方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095734
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】構造を製作する方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20170306BHJP
   G03F 9/00 20060101ALI20170306BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   G03F7/20 501
   G03F7/20 521
   G03F9/00 Z
   G03F7/20 504
   G01B11/00 H
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-143132(P2015-143132)
(22)【出願日】2015年7月17日
(65)【公開番号】特開2016-38575(P2016-38575A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2015年8月5日
(31)【優先権主張番号】10 2014 215 439.1
(32)【優先日】2014年8月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511206401
【氏名又は名称】ナノスクライブ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Nanoscribe GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】イェルク ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ジモン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ティール
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ヘルマシュヴェイラー
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー フィッシャー
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0241291(US,A1)
【文献】 特開平06−204105(JP,A)
【文献】 特開昭63−237521(JP,A)
【文献】 特開2009−237334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィ材料で構造を製作する方法であって、
前記構造は露光装置の書込ビームによって複数の部分構造(10)がシーケンシャルに書込まれることによってリソグラフィ材料で定義され、部分構造(10)を書込むために前記露光装置の書込区画(12)がシーケンシャルに変位して位置決めされて、書込区画(12)で部分構造(10)がそれぞれ書込まれ、書込区画(12)を位置決めするために参照構造が撮像式の測定装置によってリソグラフィ材料で検知される、そのような方法において、
そのつど位置決めされる書込区画(12)で部分構造(10)の書込の途中に当該部分構造(10)に付属する少なくとも1つの参照構造要素(14)が書込ビームによってリソグラフィ材料で作成され、
この参照構造要素(14)は書込区画(12)の変位後に次の部分構造(10)の書込のために撮像式の測定装置によって検知されることを特徴とする方法。
【請求項2】
書込ビームの局所的な照射によって光学特性を変化させるリソグラフィ材料が使用され、前記参照構造要素(14)はリソグラフィ材料の局所的に変化した光学特性によって認識されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
事前に定義された参照構造要素(14)の位置および/または形状が書込区画(12)の変位後に検知され、書込区画(12)の位置決めおよび/または書込区画で書込まれるべき部分構造(10)が、前記参照構造要素(14)の認識された位置および/または形状に依存して修正されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
参照構造要素(14)を作成するための書込ビームは部分構造(10)を書込むための書込ビームよりも低い強度を有していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
参照構造要素(14)は次の部分構造(10)の書込のときに上書きされることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
書込まれたそれぞれ異なる部分構造(10)は互いに接しないように構成され、参照構造要素(14)はそれぞれ異なる部分構造(10)の間に配置されるように作成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
部分構造(10)の書込後に現像プロセスが実行されて、前記現像プロセスのときに参照構造要素(14)が除去されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
書込区画(12)の変位と位置決めは、位置決め装置により、リソグラフィ材料を受容している基板が定置の露光装置に対して相対的に変移させることによって行われ、および/または露光装置が定置の基板に対して相対的に変移させることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
書込区画(12)の内部で撮像式の測定装置による画像記録が行われて、参照構造要素(14)を認識するために画像評価プロセスが実行されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
参照構造要素(14)を検知するために書込区画(12)が書込ビームによって走査され、画像作成のために後方散乱された放射、反射された放射、透過した放射、または蛍光により生成された放射が測定光学系によって検知されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
参照構造要素(14)を検知するために書込区画(12)を含む視界が測定カメラによって撮影されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
書込区画(12)の中での参照構造要素(14)の位置および/または形状はそれぞれ異なる部分構造(10)について別様に選択されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
書込ビームにより、書込区画(12)の平面および書込区画(12)の平面に対して垂直な上下方向に沿って変位可能である焦点領域で局所的な照射が行われることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載されている構造を製作する方法に関する。このような種類の方法は、特にリソグラフィ法として構成されており、たとえば半導体工学やフォトニクスにおいて、特に二次元または三次元のミクロ構造やミクロ光学系を製作するために適用される。
【背景技術】
【0002】
このような種類の方法では、露光装置によって設定される書込区画が、全体として実現されるべき構造よりも小さいことがよくある。したがって、規模の大きい構造を製作するために構造全体が部分構造に分解されて、これらが順次書込まれる。そのために、基板表面上における書込区画の相対位置が段階的に変更されて、そのつど書込区画の位置で部分構造が書込まれる。
【0003】
したがって、さまざまな部分構造を正確に位置決めし、互いに相対的にアライメントして並べなくてはならない。
【0004】
そのために一方では、基板および/または露光装置を高度に正確に二次元で変位可能な作業テーブルの上に配置することが知られている。このように高度に正確なテーブルは、たとえば干渉方式の測定装置によって監視、制御することができる。しかし、このような種類の装置は技術的に複雑であって、動作環境条件の正確なコントロールと一定の保持をしばしば必要とし、このことは、当該方式を高い費用のかかるものにしかねない。
【0005】
さらに、それぞれの部分構造を書込むための書込区画の位置決めを、参照構造を用いて検査し、場合により誤差があるときに位置決めを修正することが知られている。たとえば特許文献1では、請求項1の前提部分の意味において、基板のための作業テーブルと連結された調節構造を用いて、書込区画の変位をキャリブレーションすることが記載されている。このとき調節構造は加工されるべき基板とは別個に設けられており、すなわち、基板そのものの上で作成されるのではない。
【0006】
従来技術では、すでに規模の大きな参照構造が上で定義されている特別に準備された基板を用いて、構造を製作する本来の方法を実施することも知られている。しかし、このような種類の参照構造は基板の上で恒久的に維持され、しばしば実現されるべき構造とは別の材料でできている。その限りでは、ここで参照構造は邪魔になり得る。さらに参照構造の構成と形状は不変であり、そのため、作成されるべき構造に合わせた適合化は可能ではない。しかも、別個の準備段階で参照構造が作成されるので加工時間が長くなり、方法が全体としていっそう高コストになる。基本的に、基板のアライメントと位置決めのために、たとえば顕微鏡によって検知することができる、あるいは既知である、基板にもともと存在する表面特性または表面構造を利用することもできる(「相関スティッチング」)。
【0007】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第102006036172A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、上述したように部分構造から規模の大きい構造を製作するときに、技術的にできる限り簡単な仕方により、従来技術に比べて低い環境条件のコントロールに関わる要求事項で、さまざまな部分構造の相互の正確な位置決めと適合化を保証し、その際に、構造化の構成にあたって高い柔軟性を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は請求項1に記載の方法によって解決される。その他の実施形態は、従属請求項ならびに以下の説明から明らかとなる。
【0011】
権利申請される方法は、リソグラフィ材料における、たとえば基板表面(たとえばウェーハの表面)にコーティングされたリソグラフィ材料における構造の製作に関するものである。構造は実質的に一次元または二次元で、1つの平面上に延びることができる。しかしながら構造は三次元の物体であってよい。構造は、露光装置の少なくとも1つの書込ビーム(たとえばレーザビームや電子ビーム)によってリソグラフィ材料での局所的な照射により、複数の部分構造がシーケンシャルに書込まれることによって書込むことができる。部分構造を書込むために、連続する位置決めステップで、露光装置の書込区画がリソグラフィ材料で(たとえば基板表面に関して)シーケンシャルに変位して位置決めされる。書込区画の変位と位置決めは、基本的にどの空間方向でも行うことができ、たとえば基板平面と平行に、あるいはこれに対して垂直に行うことができる。そして、そのつど位置決めされた書込区画で部分構造が書込まれ、次いで、書込区画が場合によりさらに変位する。それぞれの部分構造について書込区画の位置決めをするために、撮像式の測定装置によって参照構造が検知される。
【0012】
本発明によると、各々の位置決めステップで、すなわち書込区画が変位して位置決めされるときに、それぞれの部分構造の書込の前または途中または後に、当該部分構造に付属する(前述の参照構造に寄与する)少なくとも1つの参照構造要素が書込ビームによってリソグラフィ材料に作成されることが意図される。そして書込まれた参照構造要素が、次の部分構造を書込むための書込区画の変位後に、撮像式の測定装置によって検知される。特に、参照構造要素は書込区画の内部で検知される。しかしながら、書込区画の外部での検知も考えられる。
【0013】
本発明による方法は、特にマスクフリーのリソグラフィ方法として構成されていてよい。その場合、広い面積のマスクは使用されず、構造が正確なビーム管理によってマスクフリーで書込まれる。したがって、臨機応変に適合化可能な構造を、装置の複雑なコンフィギュレーション変更なしに書込むことができる。
【0014】
規模の大きい構造を作成するために、構造全体がたとえばソフトウェア工学的に部分構造に分解されるが、これらの部分構造はたとえば平面状に相並んで位置していてよく、あるいは層状に相上下して位置していてよい。部分構造は、段階的に(特に基板表面に対して相対的に)変位する書込区画へシーケンシャルに書込まれる。これに付属する参照構造要素は同一の書込区画へ、すなわちそれぞれの部分構造の書込の前、途中、または後に書込まれる。これに後続する部分構造のために、書込区画は、当該参照構造要素を用いて、または以前に書込まれた参照構造要素を用いて、位置決めまたはコンフィギュレーションされる。次の部分構造が書込まれるとき、必要に応じて同じく付属の参照構造要素が書込まれ、このようにして方法が継続されていく。その意味で、参照構造全体が、さまざまな部分構造のアライメントのために、そのつど段階的にその場で参照構造要素から作成される。この方法の利点は、相上下して位置する、一般には三次元で互いにずれている部分構造でも、確実に互いに相対的にアライメントすることができるという点にもある。このことは、たとえば事前に定義されたマーカーを有する基板が使用される場合には容易に可能でない。
【0015】
書込まれた参照構造要素は、区画対区画のアライメントを確実な仕方で可能にする。書込区画で参照構造が認識されると、これが変位した後に、それぞれの参照構造要素が書込区画そのものの座標系に現れる。このことは、たとえば座標変換、スケーリング、変位、座標系の基準変更などによって、書込区画で作成されるべき部分構造の修正を可能にする。この修正は常にそのつどの書込ステップのときに行われ、すなわちその場で行われる。したがって、リソグラフィ装置のさまざまなコンポーネント相互の厳密なキャリブレーション(たとえば作業テーブルに対して相対的な調節構造)が必要ない。
【0016】
基本的に、書込区画は露光装置の技術的条件によって規定され、特に、書込ビームを所要の精度で案内することができる基板表面の領域を含んでいる。
【0017】
書込ビームとしては、たとえばレーザリソグラフィとして構成された露光装置でレーザビームを適用することができる。しかしながら原則として本発明による方法は、リソグラフィ材料を構造化するために選択される技術には左右されない。したがって、たとえば電子ビームリソグラフィでの電子ビームの使用も考えられる。
【0018】
リソグラフィ材料と呼ぶのは、本件との関連では原則として、材料特性が、特に現像媒体中での可溶性が、書込ビームの照射に基づいて変化する物質である。その一例は、たとえばポリマーベースのリソグラフィレジストである。しかしながら、上述したような書込ビームによって特性が変化するガラスまたはガラス状のリソグラフィ材料の使用も考えられる。光学式のリソグラフィでは、たとえばフォトレジストが適用される。書込ビームによって誘起される変化の種類に応じて、いわゆるネガ型レジスト(照射によって現像媒体中での可溶性が低くなる)、といわゆるポジ型レジスト(照射によって現像媒体中での可溶性が高くなる)とにリソグラフィレジストを区別することができる。ネガ型レジストは、書込ビームによって誘導される重合により架橋してポリマーになるモノマーをしばしば有している。
【0019】
本発明のさらに別の態様の要諦は、書込ビームによる局所的な照射によって光学特性のうちの1つが局所的に変化する、特に屈折率が変化するリソグラフィ材料が使用され、ないしは、そのような種類のリソグラフィ材料で基板表面がコーティングされることにある。そして参照構造要素は、局所的に変化した光学特性を用いて認識することができる。たとえば局所的な屈折率変化によって定義される参照構造要素は、光学的な画像(たとえば反射光、透過光または散乱光)で認識可能な構造として現れる。
【0020】
さらに発展させた構成のために、書込区画の変位後に、事前に定義された参照構造要素の位置および/または形状が検知され、引き続いて書込区画の位置決めおよび/または書込区画に書込まれるべき部分構造のコンフィギュレーションが、参照構造要素の認識された位置および/または形状に依存して修正される。このように本発明の1つの利点は、書込区画を高度に正確に位置決めするために、技術的に複雑な機構(たとえば干渉方式の測定システム)が必ずしも必要でないことにある。参照構造要素のその場での認識を用いて、それぞれの部分構造を相応に変形ないし修正することができ、そのようにして、位置決め誤差を補正することができる。
【0021】
参照構造要素の検知された位置および/または形状に依存して、書込区画の変位を変更し、および/または部分パターンを適合化することが考えられる。このような修正のために、基本的に周知の方法を適用することができる。特に書込区画の変位の後、目標位置および/または目標コンフィギュレーションが参照構造要素について判定されて(たとえばソフトウェア工学的に)、目標位置および/または目標コンフィギュレーション(たとえば輪郭、形状)が、検知された参照構造要素の実際の位置および/または実際のコンフィギュレーションと比較され、そこから位置誤差および/またはコンフィギュレーション誤差が判定される。そして位置誤差および/またはコンフィギュレーション誤差に依存して、誤差が最低限に抑えられるように、位置決めの修正および/または書込まれるべき部分構造の変換が行われるのが好ましい。たとえば部分構造が(特にソフトウェア工学的に)変換されて、認識された参照構造要素に対して相対的に、希望されるコンフィギュレーションで部分構造が存在するようにされることが考えられる。部分構造の可能な変換としては、たとえばスケーリング、座標変換、圧縮、伸長、拡張などがある。
【0022】
さらに発展させた構成のために、参照構造要素を作成するための書込ビームは、部分構造を書込むための書込ビームよりも時間平均で低い強度を有していることが意図される。特に、参照構造要素を作成するための強度は、照射によってリソグラフィ材料の光学特性の変化が引き起こされるものの、後の現像ステップで材料構造化が行われるようにリソグラフィ材料が恒久的に化学変化することはないように選択される。たとえばネガ型レジストの場合、強度は、ポリマー構造をなすのに十分な架橋が行われることがなく、したがって、後の現像のときに参照構造要素が現像媒体により除去される程度に低く選択されていてよい。したがって、参照構造要素が邪魔になる構造として維持されることがない。
【0023】
原則として、部分構造は互いに直接的に接するように位置決めし、アライメントし、書込むことができる。しかしながら、参照構造要素を必要に応じて位置決めすることができ、さまざまな書込ステップでさまざまに構成されていてよいので、部分構造を互いに間隔をおいて作成することもできる。
【0024】
本発明による方法は、原則として、連続するパターンの作成だけに限定されるものではない。たとえば、書込まれたさまざまに異なる部分構造が互いに接するのではなく、互いに間隔をおいて配置されていることが考えられ、このとき参照構造要素は、さまざまに異なる部分構造の間に位置するように作成される。
【0025】
特定の部分構造の書込のときに作成される参照構造要素は、たとえば後のステップで書込まれる別の部分構造の内部に位置するように配置、構成されていてもよい。参照構造要素を部分構造に組み込むことも考えられる。特に、作成された参照構造要素は、順次書込まれる部分構造要素によって上書きされる。しかしながら、作成された構造が使用される基板から機械的または化学的に消去されるが、構造に組み込まれていない参照構造要素は基板の上に残ることも考えられる。
【0026】
原則として、構造の書込後に、リソグラフィ材料の構造を固化させるための現像プロセスを実施することができる。本発明による方法は、現像プロセスのときに除去されるように参照構造要素を構成することを可能にする。そのために、たとえば参照構造要素を前述したように低い強度で書込むことができ、それにより、参照構造要素は(部分構造とは違って)現像液によって洗い落とされる。しかしながら、参照構造要素は残りの構造と結合されておらず、したがって現像浴の中ですすぎ落とすことができると考えられる。
【0027】
書込区画の変位と位置決めは、特に位置決め装置を用いて行われる。位置決め装置は、必要に応じて基板または露光装置に作用することができる。たとえば位置決め装置は、基板をたとえば1つの平面上で位置調節可能な作業テーブルの上で、定置の露光装置に対して変移させることができるように構成されていてよい。その一方で、露光装置を位置調節可能な保持装置で、定置の基板に対して相対的に変移させることもできる。相対運動の両方の可能性を組み合わせることも考えられる。原則として、位置決め装置が高度に正確に構成されている必要はない。実際には、マイクロエレクトロニクスまたはフォトニクスの目的のためには、たとえば1μmの誤差許容範囲で十分であり得る。本発明の方式でなければ、このような精度は部分構造を相並べるときに著しい不具合個所を生じさせることになる。しかし、それぞれ変移した書込区画での、本発明によるその場での参照構造要素の認識に基づき、および、次の部分構造の可能なキャリブレーションに基づき、参照構造について実現可能かつ認識可能な構造サイズの範囲にまで、構造化の精度を改善することができる。実際には、このようにして100nmの誤差許容範囲を実現することができる。
【0028】
本方法の1つの好ましい実施形態の要諦は、部分構造の書込の前および/または参照構造要素の書込の前に、または書込工程前の書込区画の変位の後に、書込区画の中で、または書込区画の外部でも、撮像式の測定装置による画像記録が行われることにある。その後、参照構造要素を認識するために、画像評価プロセスが実行されるのが好ましい。そのために、撮像式の測定装置により撮影された画像を、画像評価装置へと伝送することができる。画像評価装置はたとえばソフトウェア工学に、たとえば基本的に従来技術から知られている画像評価プロセスで、参照構造要素の位置および形状ないしコンフィギュレーションを決定することができる。
【0029】
撮像式の測定装置は、たとえば露光装置の書込ビームそのものをスキャンビームとして利用するスキャンシステムであってよい。書込ビームは低いスキャン強度で書込区画を走査するのが好ましく、このスキャン強度は、参照構造要素が作成されることがなく、リソグラフィ材料での構造化も定義されないように低く選択されるのが好ましい。そして画像作成のために、後方散乱された放射、反射された放射、透過した放射、または蛍光により生成された放射を、測定光学系によって検知することができる。測定光学系は、書込ビームを生成する装置(たとえばビームガイド光学系)に対して共焦点に構成されているのが好ましい。書込ビームそのものによる書込区画のこのような走査は、画像作成をする追加の装置が必要ないという利点がある。さらに、参照構造要素が書込ビームの参照システムそのもので直接結像され、そのようにして、直接的なキャリブレーションを可能にする。
【0030】
しかしながら、参照構造を検知するために、書込区画を含む視野を撮影する測定カメラを設けることも考えられる。このことは、特に書込工程中であっても、その場での監視を可能にする。カメラは特に露光装置の書込区画に関して固定的にキャリブレーションされていてよい。このようなキャリブレーションは、すでに製造者の側で行っておくことができる。測定カメラを用いる実施形態は、スキャンシステムを用いた場合よりも迅速な画像認識が可能であるという利点をもたらすことができる。スキャンシステムと測定カメラとの組み合わせも可能である。その場合、たとえば測定カメラが書込区画全体を撮影することができ、書込ビームは、たとえば参照構造要素が認識された部分だけを走査することができる。
【0031】
参照構造は、固定的なマスクによってではなく、書込ビームそのものによって書込まれるので、基本的に、参照構造要素の構成に関して自由が存在する。それぞれの参照構造要素は、次の構造のための書込区画の位置決めに合わせて適合化された構成と配置を有しているのが好ましい。たとえば、異なる部分構造のための異なる参照構造要素は、それぞれ互いに別様に構成されていてよい。このことは必要性に即した設計を可能にする。たとえば参照構造要素は、次の部分構造の具体的な構成に応じて、次の部分構造にとって邪魔にならない領域に配置されていてよい。
【0032】
1つの好ましい実施形態の要諦は、書込ビームによって、特に三次元でほぼ集束された焦点領域で局所的な照射が行われることにあり、この焦点領域は、一方では書込区画の平面で、および他方では書込区画の平面に対して垂直な上下方向で変位可能であるのが好ましい。このことは、三次元構造を作成することを可能にする。このとき特に、一般に書込ビームによる励起に対するリソグラフィ材料の非線形応答が利用される、非線形リソグラフィの原理を適用することができる。特に、2フォトン吸収またはマルチフォトン吸収のプロセスをリソグラフィ材料の露光のために利用することができる。その場合、書込ビームの波長は、2つまたはそれ以上のフォトンの同時吸収によって材料構造化のために必要な化学反応(たとえば重合)が引き起こされる程度の大きさに選択される(それに伴って、フォトンエネルギーがその程度の低さに選択される)。そのようなプロセスが起こる確率は、原理的な考察に基づき、焦点領域においては高くなる強度に基づき明らかに高い。そのように全体として、一方では三次元構造を作成することができ、他方では参照構造要素を、実現されるべき構造と材料結合しないように位置決めすることができる。後の現像プロセスのとき、そのような参照構造要素は除去されて、構造には残らない。
【0033】
次に、添付の図面を参照しながら本発明についてさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、半導体ウェーハのような基板の表面に規模の大きい構造を製作する方法における、さまざまな状況を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、たとえば半導体ウェーハのような基板の表面に規模の大きい構造を製作する方法における、さまざまな状況を模式的に示している。そのために基板の表面は、図示しないリソグラフィ材料によって、特にリソグラフィレジストによってコーティングされる。リソグラフィ材料はスピニングプロセスで基板に塗布されてよい。しかしながら、リソグラフィ材料のスピニング塗布を行うのではなく、リソグラフィ材料をたとえば粘性媒体として基板表面に載せる方法も考えられる。
【0036】
構造を製作するために、冒頭で説明したとおり、図1では符号10が付されている複数の部分構造に構造が分解される。部分構造10は、詳しくは図示しない露光装置(たとえばレーザリソグラフィシステム)の書込ビームによってリソグラフィ材料で順次作成され、その意味において基板表面の上で定義される。このとき露光装置の書込ビームは、書込区画12の内部で、構造化の目的のために必要な精度で制御可能である。
【0037】
部分図a)には、一例として選択された初期状況が示されている。書込区画12が希望される位置に配置される。書込ビームのコントロールされた案内により、第1の部分構造10がリソグラフィ材料で定義される。
【0038】
希望される全体構造を作成するためには、書込まれた部分構造に対して相対的に正確に定義された位置で、次の部分構造が作成されなければならない。ここでは一例として、すでに書込まれた部分構造に次の部分構造が直接的に接するように定義されるべき全体構造について考察する(スティッチング)。
【0039】
そのために、基本的に周知の仕方により、第1の部分構造の書込後に(部分図a))書込区画12が基板表面の上で変位することが意図されており、それにより、すでに書込まれている部分構造10に接するように、次の部分構造10’を定義することができる。書込区画12を変位させるために用いられる位置決め装置(図示せず)が必要な精度を有していないと、次の書込ステップのための書込区画12の位置決めのときに、著しい位置決めの不正確性が生じる可能性がある。すると次の部分構造10’は最終的に、すでに書込まれている部分構造10に希望通りに継目なく後続するのでなく、部分図b)に示すように、これに対してオフセットを有することになる。
【0040】
こうした問題を解決するために、その場で、すなわち第1の部分構造(部分図a))を書込む方法ステップの前、途中、または後に、参照構造要素14がリソグラフィ材料で定義される。参照構造要素14は、図1aに示すように、本来の部分構造10に対して間隔をおいて定義されていてよい。
【0041】
冒頭で述べたとおり参照構造要素14は、撮像式の測定装置(図示せず)によって認識することができるように作成される。参照構造要素14の認識は、次の部分構造の書込のために書込区画12を位置決めするために、および、すでに存在する部分構造10に希望通り後続するように部分構造をキャリブレーションするために利用される。
【0042】
そのために、たとえばまず書込区画12が位置決め装置によって変位させられる。このとき位置決め装置は、たとえば周知の仕方により、たとえば2D位置調節可能な基板テーブルとして機械式に施工されていてよい。このような装置は、高度に正確な位置決めに関わる要求事項を必ずしも満たさなくてよい位置決め装置を使用することを可能にする。
【0043】
書込区画12の変位後、図1に示す本発明の実施形態では、まず、先行するステップ(図1a)で定義された参照構造要素14が撮像式の測定装置により認識される。この認識は、変位した書込区画12で行われるのが好ましい。
【0044】
部分図c)に示す状況では、上述した位置決めの不正確性に基づき、書込区画12の位置は、参照構造要素14の実際位置16が書込区画12の座標系において、参照構造要素14の予想される目標位置18から外れるようになっている。同様に、書込区画12の回動や傾動が生じることも考えられる(図示せず)。
【0045】
そして、認識された参照構造要素14から決定される目標位置と実際位置との間の誤差を利用して、作成されるべき部分構造10を書込区画12で変換し、場合により存在する書込区画12の位置の不正確さにもかかわらず、すでに書込まれている部分構造10に希望通り直接的に後続するようにすることができる。その様子は部分図d)に略示されている。
【0046】
認識された参照構造要素14に依存して、書込まれるべき部分構造10の確実な認識とキャリブレーションを可能にするために、参照構造要素は、回転対称の形状とは相違する形態を有しているのが好ましい。図1に示すような十字形の形状を適用することができる。しかしながら矢印形の構造や、複雑な多角形の構造も考えられる。
【符号の説明】
【0047】
10・・・部分構造
12・・・書込区画
14・・・参照構造要素
16・・・実際位置
18・・・目標位置
図1