【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は請求項1に記載の方法によって解決される。その他の実施形態は、従属請求項ならびに以下の説明から明らかとなる。
【0011】
権利申請される方法は、リソグラフィ材料における、たとえば基板表面(たとえばウェーハの表面)にコーティングされたリソグラフィ材料における構造の製作に関するものである。構造は実質的に一次元または二次元で、1つの平面上に延びることができる。しかしながら構造は三次元の物体であってよい。構造は、露光装置の少なくとも1つの書込ビーム(たとえばレーザビームや電子ビーム)によってリソグラフィ材料での局所的な照射により、複数の部分構造がシーケンシャルに書込まれることによって書込むことができる。部分構造を書込むために、連続する位置決めステップで、露光装置の書込区画がリソグラフィ材料で(たとえば基板表面に関して)シーケンシャルに変位して位置決めされる。書込区画の変位と位置決めは、基本的にどの空間方向でも行うことができ、たとえば基板平面と平行に、あるいはこれに対して垂直に行うことができる。そして、そのつど位置決めされた書込区画で部分構造が書込まれ、次いで、書込区画が場合によりさらに変位する。それぞれの部分構造について書込区画の位置決めをするために、撮像式の測定装置によって参照構造が検知される。
【0012】
本発明によると、各々の位置決めステップで、すなわち書込区画が変位して位置決めされるときに、それぞれの部分構造の書込の前または途中または後に、当該部分構造に付属する(前述の参照構造に寄与する)少なくとも1つの参照構造要素が書込ビームによってリソグラフィ材料に作成されることが意図される。そして書込まれた参照構造要素が、次の部分構造を書込むための書込区画の変位後に、撮像式の測定装置によって検知される。特に、参照構造要素は書込区画の内部で検知される。しかしながら、書込区画の外部での検知も考えられる。
【0013】
本発明による方法は、特にマスクフリーのリソグラフィ方法として構成されていてよい。その場合、広い面積のマスクは使用されず、構造が正確なビーム管理によってマスクフリーで書込まれる。したがって、臨機応変に適合化可能な構造を、装置の複雑なコンフィギュレーション変更なしに書込むことができる。
【0014】
規模の大きい構造を作成するために、構造全体がたとえばソフトウェア工学的に部分構造に分解されるが、これらの部分構造はたとえば平面状に相並んで位置していてよく、あるいは層状に相上下して位置していてよい。部分構造は、段階的に(特に基板表面に対して相対的に)変位する書込区画へシーケンシャルに書込まれる。これに付属する参照構造要素は同一の書込区画へ、すなわちそれぞれの部分構造の書込の前、途中、または後に書込まれる。これに後続する部分構造のために、書込区画は、当該参照構造要素を用いて、または以前に書込まれた参照構造要素を用いて、位置決めまたはコンフィギュレーションされる。次の部分構造が書込まれるとき、必要に応じて同じく付属の参照構造要素が書込まれ、このようにして方法が継続されていく。その意味で、参照構造全体が、さまざまな部分構造のアライメントのために、そのつど段階的にその場で参照構造要素から作成される。この方法の利点は、相上下して位置する、一般には三次元で互いにずれている部分構造でも、確実に互いに相対的にアライメントすることができるという点にもある。このことは、たとえば事前に定義されたマーカーを有する基板が使用される場合には容易に可能でない。
【0015】
書込まれた参照構造要素は、区画対区画のアライメントを確実な仕方で可能にする。書込区画で参照構造が認識されると、これが変位した後に、それぞれの参照構造要素が書込区画そのものの座標系に現れる。このことは、たとえば座標変換、スケーリング、変位、座標系の基準変更などによって、書込区画で作成されるべき部分構造の修正を可能にする。この修正は常にそのつどの書込ステップのときに行われ、すなわちその場で行われる。したがって、リソグラフィ装置のさまざまなコンポーネント相互の厳密なキャリブレーション(たとえば作業テーブルに対して相対的な調節構造)が必要ない。
【0016】
基本的に、書込区画は露光装置の技術的条件によって規定され、特に、書込ビームを所要の精度で案内することができる基板表面の領域を含んでいる。
【0017】
書込ビームとしては、たとえばレーザリソグラフィとして構成された露光装置でレーザビームを適用することができる。しかしながら原則として本発明による方法は、リソグラフィ材料を構造化するために選択される技術には左右されない。したがって、たとえば電子ビームリソグラフィでの電子ビームの使用も考えられる。
【0018】
リソグラフィ材料と呼ぶのは、本件との関連では原則として、材料特性が、特に現像媒体中での可溶性が、書込ビームの照射に基づいて変化する物質である。その一例は、たとえばポリマーベースのリソグラフィレジストである。しかしながら、上述したような書込ビームによって特性が変化するガラスまたはガラス状のリソグラフィ材料の使用も考えられる。光学式のリソグラフィでは、たとえばフォトレジストが適用される。書込ビームによって誘起される変化の種類に応じて、いわゆるネガ型レジスト(照射によって現像媒体中での可溶性が低くなる)、といわゆるポジ型レジスト(照射によって現像媒体中での可溶性が高くなる)とにリソグラフィレジストを区別することができる。ネガ型レジストは、書込ビームによって誘導される重合により架橋してポリマーになるモノマーをしばしば有している。
【0019】
本発明のさらに別の態様の要諦は、書込ビームによる局所的な照射によって光学特性のうちの1つが局所的に変化する、特に屈折率が変化するリソグラフィ材料が使用され、ないしは、そのような種類のリソグラフィ材料で基板表面がコーティングされることにある。そして参照構造要素は、局所的に変化した光学特性を用いて認識することができる。たとえば局所的な屈折率変化によって定義される参照構造要素は、光学的な画像(たとえば反射光、透過光または散乱光)で認識可能な構造として現れる。
【0020】
さらに発展させた構成のために、書込区画の変位後に、事前に定義された参照構造要素の位置および/または形状が検知され、引き続いて書込区画の位置決めおよび/または書込区画に書込まれるべき部分構造のコンフィギュレーションが、参照構造要素の認識された位置および/または形状に依存して修正される。このように本発明の1つの利点は、書込区画を高度に正確に位置決めするために、技術的に複雑な機構(たとえば干渉方式の測定システム)が必ずしも必要でないことにある。参照構造要素のその場での認識を用いて、それぞれの部分構造を相応に変形ないし修正することができ、そのようにして、位置決め誤差を補正することができる。
【0021】
参照構造要素の検知された位置および/または形状に依存して、書込区画の変位を変更し、および/または部分パターンを適合化することが考えられる。このような修正のために、基本的に周知の方法を適用することができる。特に書込区画の変位の後、目標位置および/または目標コンフィギュレーションが参照構造要素について判定されて(たとえばソフトウェア工学的に)、目標位置および/または目標コンフィギュレーション(たとえば輪郭、形状)が、検知された参照構造要素の実際の位置および/または実際のコンフィギュレーションと比較され、そこから位置誤差および/またはコンフィギュレーション誤差が判定される。そして位置誤差および/またはコンフィギュレーション誤差に依存して、誤差が最低限に抑えられるように、位置決めの修正および/または書込まれるべき部分構造の変換が行われるのが好ましい。たとえば部分構造が(特にソフトウェア工学的に)変換されて、認識された参照構造要素に対して相対的に、希望されるコンフィギュレーションで部分構造が存在するようにされることが考えられる。部分構造の可能な変換としては、たとえばスケーリング、座標変換、圧縮、伸長、拡張などがある。
【0022】
さらに発展させた構成のために、参照構造要素を作成するための書込ビームは、部分構造を書込むための書込ビームよりも時間平均で低い強度を有していることが意図される。特に、参照構造要素を作成するための強度は、照射によってリソグラフィ材料の光学特性の変化が引き起こされるものの、後の現像ステップで材料構造化が行われるようにリソグラフィ材料が恒久的に化学変化することはないように選択される。たとえばネガ型レジストの場合、強度は、ポリマー構造をなすのに十分な架橋が行われることがなく、したがって、後の現像のときに参照構造要素が現像媒体により除去される程度に低く選択されていてよい。したがって、参照構造要素が邪魔になる構造として維持されることがない。
【0023】
原則として、部分構造は互いに直接的に接するように位置決めし、アライメントし、書込むことができる。しかしながら、参照構造要素を必要に応じて位置決めすることができ、さまざまな書込ステップでさまざまに構成されていてよいので、部分構造を互いに間隔をおいて作成することもできる。
【0024】
本発明による方法は、原則として、連続するパターンの作成だけに限定されるものではない。たとえば、書込まれたさまざまに異なる部分構造が互いに接するのではなく、互いに間隔をおいて配置されていることが考えられ、このとき参照構造要素は、さまざまに異なる部分構造の間に位置するように作成される。
【0025】
特定の部分構造の書込のときに作成される参照構造要素は、たとえば後のステップで書込まれる別の部分構造の内部に位置するように配置、構成されていてもよい。参照構造要素を部分構造に組み込むことも考えられる。特に、作成された参照構造要素は、順次書込まれる部分構造要素によって上書きされる。しかしながら、作成された構造が使用される基板から機械的または化学的に消去されるが、構造に組み込まれていない参照構造要素は基板の上に残ることも考えられる。
【0026】
原則として、構造の書込後に、リソグラフィ材料の構造を固化させるための現像プロセスを実施することができる。本発明による方法は、現像プロセスのときに除去されるように参照構造要素を構成することを可能にする。そのために、たとえば参照構造要素を前述したように低い強度で書込むことができ、それにより、参照構造要素は(部分構造とは違って)現像液によって洗い落とされる。しかしながら、参照構造要素は残りの構造と結合されておらず、したがって現像浴の中ですすぎ落とすことができると考えられる。
【0027】
書込区画の変位と位置決めは、特に位置決め装置を用いて行われる。位置決め装置は、必要に応じて基板または露光装置に作用することができる。たとえば位置決め装置は、基板をたとえば1つの平面上で位置調節可能な作業テーブルの上で、定置の露光装置に対して変移させることができるように構成されていてよい。その一方で、露光装置を位置調節可能な保持装置で、定置の基板に対して相対的に変移させることもできる。相対運動の両方の可能性を組み合わせることも考えられる。原則として、位置決め装置が高度に正確に構成されている必要はない。実際には、マイクロエレクトロニクスまたはフォトニクスの目的のためには、たとえば1μmの誤差許容範囲で十分であり得る。本発明の方式でなければ、このような精度は部分構造を相並べるときに著しい不具合個所を生じさせることになる。しかし、それぞれ変移した書込区画での、本発明によるその場での参照構造要素の認識に基づき、および、次の部分構造の可能なキャリブレーションに基づき、参照構造について実現可能かつ認識可能な構造サイズの範囲にまで、構造化の精度を改善することができる。実際には、このようにして100nmの誤差許容範囲を実現することができる。
【0028】
本方法の1つの好ましい実施形態の要諦は、部分構造の書込の前および/または参照構造要素の書込の前に、または書込工程前の書込区画の変位の後に、書込区画の中で、または書込区画の外部でも、撮像式の測定装置による画像記録が行われることにある。その後、参照構造要素を認識するために、画像評価プロセスが実行されるのが好ましい。そのために、撮像式の測定装置により撮影された画像を、画像評価装置へと伝送することができる。画像評価装置はたとえばソフトウェア工学に、たとえば基本的に従来技術から知られている画像評価プロセスで、参照構造要素の位置および形状ないしコンフィギュレーションを決定することができる。
【0029】
撮像式の測定装置は、たとえば露光装置の書込ビームそのものをスキャンビームとして利用するスキャンシステムであってよい。書込ビームは低いスキャン強度で書込区画を走査するのが好ましく、このスキャン強度は、参照構造要素が作成されることがなく、リソグラフィ材料での構造化も定義されないように低く選択されるのが好ましい。そして画像作成のために、後方散乱された放射、反射された放射、透過した放射、または蛍光により生成された放射を、測定光学系によって検知することができる。測定光学系は、書込ビームを生成する装置(たとえばビームガイド光学系)に対して共焦点に構成されているのが好ましい。書込ビームそのものによる書込区画のこのような走査は、画像作成をする追加の装置が必要ないという利点がある。さらに、参照構造要素が書込ビームの参照システムそのもので直接結像され、そのようにして、直接的なキャリブレーションを可能にする。
【0030】
しかしながら、参照構造を検知するために、書込区画を含む視野を撮影する測定カメラを設けることも考えられる。このことは、特に書込工程中であっても、その場での監視を可能にする。カメラは特に露光装置の書込区画に関して固定的にキャリブレーションされていてよい。このようなキャリブレーションは、すでに製造者の側で行っておくことができる。測定カメラを用いる実施形態は、スキャンシステムを用いた場合よりも迅速な画像認識が可能であるという利点をもたらすことができる。スキャンシステムと測定カメラとの組み合わせも可能である。その場合、たとえば測定カメラが書込区画全体を撮影することができ、書込ビームは、たとえば参照構造要素が認識された部分だけを走査することができる。
【0031】
参照構造は、固定的なマスクによってではなく、書込ビームそのものによって書込まれるので、基本的に、参照構造要素の構成に関して自由が存在する。それぞれの参照構造要素は、次の構造のための書込区画の位置決めに合わせて適合化された構成と配置を有しているのが好ましい。たとえば、異なる部分構造のための異なる参照構造要素は、それぞれ互いに別様に構成されていてよい。このことは必要性に即した設計を可能にする。たとえば参照構造要素は、次の部分構造の具体的な構成に応じて、次の部分構造にとって邪魔にならない領域に配置されていてよい。
【0032】
1つの好ましい実施形態の要諦は、書込ビームによって、特に三次元でほぼ集束された焦点領域で局所的な照射が行われることにあり、この焦点領域は、一方では書込区画の平面で、および他方では書込区画の平面に対して垂直な上下方向で変位可能であるのが好ましい。このことは、三次元構造を作成することを可能にする。このとき特に、一般に書込ビームによる励起に対するリソグラフィ材料の非線形応答が利用される、非線形リソグラフィの原理を適用することができる。特に、2フォトン吸収またはマルチフォトン吸収のプロセスをリソグラフィ材料の露光のために利用することができる。その場合、書込ビームの波長は、2つまたはそれ以上のフォトンの同時吸収によって材料構造化のために必要な化学反応(たとえば重合)が引き起こされる程度の大きさに選択される(それに伴って、フォトンエネルギーがその程度の低さに選択される)。そのようなプロセスが起こる確率は、原理的な考察に基づき、焦点領域においては高くなる強度に基づき明らかに高い。そのように全体として、一方では三次元構造を作成することができ、他方では参照構造要素を、実現されるべき構造と材料結合しないように位置決めすることができる。後の現像プロセスのとき、そのような参照構造要素は除去されて、構造には残らない。
【0033】
次に、添付の図面を参照しながら本発明についてさらに説明する。