特許第6095754号(P6095754)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6095754-トンネル消火栓装置 図000002
  • 特許6095754-トンネル消火栓装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095754
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】トンネル消火栓装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/20 20060101AFI20170306BHJP
   A62C 3/00 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   A62C35/20
   A62C3/00 J
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-234606(P2015-234606)
(22)【出願日】2015年12月1日
(62)【分割の表示】特願2012-238178(P2012-238178)の分割
【原出願日】2012年10月29日
(65)【公開番号】特開2016-47313(P2016-47313A)
(43)【公開日】2016年4月7日
【審査請求日】2015年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本郷 裕文
【審査官】 小笠原 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭51−135773(JP,A)
【文献】 特開2010−162257(JP,A)
【文献】 特開平11−123248(JP,A)
【文献】 特開2008−065405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 35/20
A62C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面を開口とする箱形の筐体と、
上記開口を塞口するように上記筐体の前面に取り付けられた前面パネルと、
ホース収納部に巻かれて上記筐体内に配設された消火用ホースと、
上記消火用ホースの収納部の幅方向一側に、上記前面パネルに対して前面側に突出するように配設された赤色表示灯と、
上記消火用ホースの収納部の幅方向他側に配設された火災検知器と、
を備え
上記火災検知器は、上記消火用ホースの収納部を挟んで、上記赤色表示灯と反対側に配置されているトンネル消火栓装置。
【請求項2】
上記火災検知器は、火災の炎から発する光が入射される受光部を、上記前面パネルに対して前面側に突出させて配設されることを特徴とする請求項1記載のトンネル消火栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば高速自動車道等のトンネルに設置されたトンネル消火栓装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高速自動車道のトンネルでは、車線の路面に対して蒲鉾状のコンクリート躯体が構築され、一方の路肩には、所定の高さをもった監視員通路が構築されている。そして、トンネル内で発生する火災事故から人身および車両を守るため、火災の監視のための火災検知器、火災の消火のための消火栓装置などの非常用設備が設置されている。火災検知器は、コンクリート躯体の壁面に所定の間隔毎に設置されている。消火栓装置は、監視員通路から操作可能なコンクリート躯体の壁面に凹設された箱抜き内に配置されて、所定の間隔毎に設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−9053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のトンネルでは、火災検知器および消火栓装置を設置するためには、それぞれ、コンクリート躯体の壁面にアンカーボルトなどを用いて個別に固定する必要があり、設置作業が煩雑で設置コストが高くなるという課題があった。
【0005】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本体内の空きスペースに火災検知器を配置するようにし、コンクリート躯体への火災検知器の煩雑な設置作業を不要とし、設置コストを低減できるトンネル消火栓装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明によるトンネル消火栓装置は、前面を開口とする箱形の筐体と、上記開口を塞口するように上記筐体の前面に取り付けられた前面パネルと、ホース収納部に巻かれて上記筐体内に配設された消火用ホースと、上記消火用ホースの収納部の幅方向一側に、上記前面パネルに対して前面側に突出するように配設された赤色表示灯と、上記消火用ホースの収納部の幅方向他側に配設された火災検知器と、を備え、上記火災検知器は、上記消火用ホースの収納部を挟んで、上記赤色表示灯と反対側に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、火災検知器が筐体と前面パネルで構成される本体に配設されているので、火災検知器をコンクリート躯体に設置する煩雑な作業が不要となり、トンネル内の非常用設備の設置コストを低減できる。また、火災検知器が、前面パネルに対して前面側に突出する赤色表示灯に対して消火用ホースの収納部を挟んで反対側に配設されているので、火災検知器と赤色表示灯と間の距離が長くなる。そこで、前面パネルに対して前面側に突出する赤色表示灯に起因する火災検知器の監視エリアの縮小などの悪影響が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の一実施の形態に係るトンネル消火栓装置を示す正面図である。
図2】この発明の一実施の形態に係るトンネル消火栓装置を示す一部破断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のトンネル消火栓装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0010】
図1はこの発明の一実施の形態に係るトンネル消火栓装置を示す正面図、図2はこの発明の一実施の形態に係るトンネル消火栓装置を示す一部破断側面図である。
【0011】
図1および図2において、トンネル消火栓装置1は、火災の消火の機能に加えて、火災の監視と通報の機能を備えた非常用設備であり、前面に開口する直方体の箱形に作製された筐体2と、筐体2の前面に締着固定され、筐体2の前面開口を塞口する前面パネル3と、を備えている。先端に消火用ノズルを有し、ホース収納部としてのホースバケット6に内巻きに巻かれた消火用ホース5が、筐体2と前面パネル3とからなる本体の内部中央部に収納されている。消火器(図示せず)および各種電気機器(図示せず)が本体内の消火用ホース5の収納部の幅方向一側に収納されている。自動調圧弁8および消火栓弁9などを備えた配管系統7が、本体内の消火用ホース5の収納部の本体幅方向他側の下部側に収納され、消火栓弁9の二次側が消火用ホース5に接続されている。
【0012】
前面パネル3には、消火用ホース5および配管系統7などに面する、開口形状を長方形とする開口部3a、および消火器に面する開口部3bが設けられている。そして、消火栓扉10が開口部3aの下端縁部に幅方向を回転軸方向とする蝶番(図示せず)により開閉可能に取り付けられ、消火栓弁9を開閉する消火栓弁開閉レバー(図示せず)が消火栓扉10の裏面に設置されている。また、保守扉11が開口部3aの上端縁部に幅方向を回転軸方向とする蝶番(図示せず)により開閉可能に取り付けられている。なお、消火栓扉10と保守扉11は前面パネル3と略面一となり、開口部3aを塞口している。
【0013】
また、電気機器取付板12が、四隅を前面パネル3に締着固定され、開口部3bの開口部3a側(幅方向他側)に上下方向に延びるように配設されている。この電気機器取付板12には、赤色表示灯13、非常用発信器14等が取り付けられ、電話ジャック、非常用コンセントなどの電気機器を備えている。赤色表示灯13は、トンネル消火栓装置1の設置位置を明示するものであり、電気機器取付板12の上方位置に突設され、前面パネル3の前面から突出している。非常用発信器14は、火災事故の際に押しボタン操作を行うと、監視センター(図示せず)に対し火災の通報が行われる。監視センターで非常用発信器14からの火災通報が受信されると、点滅信号が送信されて、常時点灯状態にあった赤色表示灯13が点滅するようになる。
【0014】
消火器扉15が、開口部3bの幅方向の一側縁部に上下方向を回転軸方向とする蝶番(図示せず)により開閉可能に取り付けられている。なお、電気機器取付板12と消火器扉15は前面パネル3と略面一となり、開口部3bを塞口している。
【0015】
火災検知器20は、検知器本体21と、ラグビーボール状、半球状などの凸状に成形され、検知器本体21の前面に突設された受光ガラス22と、検知器本体21の前面の受光ガラス22の上部両側に突設されたグローブ23と、を備え、検知器本体21を保守扉11の背面に締着固定され、受光ガラス22およびグローブ23を保守扉11に形成された穴から前面側に突出させて、保守扉11の幅方向他側に配設されている。この火災検知器20には、例えば、特開2003−296849号公報に記載されているような周知の検知器が用いられるので、その詳細な構成の説明を省略するが、火災の炎から発する波長を検出する検出素子および検出回路からなる火災検出部が受光ガラス22の内部に配設され、受光ガラス汚損確認試験用発光部がグローブ23の内部に配設され、火災検知器20の全体を制御するマイクロコンピュータ、ROM、RAM、出力回路、入力回路、定電圧部などが検知器本体21内に収納されている。
【0016】
このように構成されたトンネル消火栓装置1は、図示していないが、高速自動車道のトンネルの一方の路肩に構築された監視員通路から操作可能なコンクリート躯体の壁面に凹設された箱抜き内に配置されて、所定の間隔(例えば、50m)毎に設置される。このとき、トンネル消火栓装置1は、赤色表示灯13および火災検知器20の受光ガラス22がコンクリート躯体の壁面から突出するように、設置される。そして、図示していないが、監視員通路の下部に構築されたダクト内に敷設された配水本管から分岐した分岐配管が配管系統7に接続される。
【0017】
このトンネル消火栓装置1では、赤色表示灯13が、電気機器取付板12の上方位置に突設され、コンクリート躯体の壁面から突出するように、設置され、常時点灯している。
そして、トンネル内で火災が発生すると、火災の炎から発する光が受光ガラス22から入射され、検知器本体21内の回路部が受光ガラス22から入射光に基づいて火災の発生を判定する。そして、火災発生と判定されると、火災検知信号が火災検知器20から監視センターに出力される。そして、監視センターでトンネル内での火災発生の確認が行われると、点滅信号が送信されて、常時点灯状態にあった赤色表示灯13が点滅する。
【0018】
そこで、取扱者が、トンネル消火栓装置1の設置場所に急行し、消火栓扉10を開けて消火用ノズルを取り出し、消火栓弁開閉レバーを手前に引く。これにより、消火栓弁9が開放し、消火用ノズルから消火水の放水が開始される。そこで、取扱者は、消火用ノズルを持ちながら火災現場に向けて消火用ホース5を引き出し、消火を行う。
【0019】
この発明によれば、トンネル消火栓装置1の本体内の配管系統7の上部側の空きスペースを利用して、火災検知器20を本体内に設置しているので、火災検知器20をコンクリート躯体に取り付ける煩雑な作業が不要となり、トンネル内の非常用設備の設置コストを低減できる。
【0020】
ここで、火災検知器20の受光ガラス22と監視員通路に設けられた手摺りとを結ぶ線分の延長方向から受光ガラス22に向かう光は、手摺りで遮られる。また、受光ガラス22と前面パネル3から前面側に延出している赤色表示灯13とを結ぶ線分の延長方向から受光ガラス22に向かう光は、赤色表示灯13で遮られる。このように、受光ガラス22と手摺りとを結ぶ線分の延長方向、および受光ガラス22と赤色表示灯13とを結ぶ線分の延長方向が死角に入って、火災監視できない。
【0021】
この発明によれば、火災検知器20が本体の上部側に設置されているので、手摺りに起因する死角が車線の監視員通路近傍となり、火災検知器20による監視エリアの実質的な縮小が抑えられる。また、受光ガラス22が消火用ホース5の収納部を挟んで赤色表示灯13と反対側に配置されているので、赤色表示灯13と火災検知器20との間の距離が長くなる。そこで、赤色表示灯13による、火災検知器20による監視エリアの縮小が抑えられる。
【0022】
なお、上記実施の形態では、火災検知器20の検知器本体21が保守扉11の背面に固着するものとしているが、保守扉11の幅方向他側の領域を削除し、検知器本体21を筐体2又は前面パネル3に固着して、検知器本体21の前面を保守扉11の前面に略面一として、火災検知器20を保守扉11の削除領域に位置させてもよい。この場合、火災検知器20が静止部材に固着され、保守点検時に保守扉11を開けても、火災検知器20が移動しないので、火災検知器20の火災検知の信頼性が確保される。
【0023】
また、上記実施の形態では、トンネル天井側に設置される水噴霧ヘッドに給水される消火水を所定の二次圧に調圧する自動弁装置を備えていないトンネル消火栓装置1に適用するものとして説明しているが、本発明は、当該自動弁装置を備えたトンネル消火栓装置に適用してもよい。この場合、自動弁装置は、本体内の配管系統7の収納部の幅方向他側に収納されるので、本体内の自動弁装置の収納部の幅方向他側の上部側に火災検知器20を設置し、火災検知器20を赤色表示灯13から離間させることが好ましい。この場合、本体としては、消火器の収納部、消火用ホース5の収納部および配管系統7の収納部を備えた本体と、自動弁装置の収納部を備えた本体とを、別体又は一体で構成して、幅方向に併設することで、煩雑な設置作業が不要となる。
【符号の説明】
【0024】
1 トンネル消火栓装置、2 筐体(本体)、3 前面パネル(本体)、5 消火用ホース、6 ホースバケット、13 赤色表示灯、20 火災検知器、22 受光ガラス。
図1
図2