(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095774
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】太陽光発電の出力を平滑化するためのハイブリッド型のウルトラキャパシタ電池貯蔵システムの適応制御
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20170306BHJP
H02S 10/20 20140101ALI20170306BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
H02J3/38 130
H02S10/20
H02J3/32
【請求項の数】18
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-516292(P2015-516292)
(86)(22)【出願日】2014年1月24日
(65)【公表番号】特表2015-520599(P2015-520599A)
(43)【公表日】2015年7月16日
(86)【国際出願番号】US2014012870
(87)【国際公開番号】WO2014116899
(87)【国際公開日】20140731
【審査請求日】2014年12月8日
(31)【優先権主張番号】61/756,296
(32)【優先日】2013年1月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/162,732
(32)【優先日】2014年1月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504080663
【氏名又は名称】エヌイーシー ラボラトリーズ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】NEC Laboratories America, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】イエ、ヤンジュウ
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ、 ラトネス
(72)【発明者】
【氏名】シー、 ディー
【審査官】
宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−129803(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/162722(WO,A1)
【文献】
特開2003−303627(JP,A)
【文献】
特開2006−333563(JP,A)
【文献】
特開2009−033862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L31/02、
31/0216−31/0224、
31/0236、
31/0248−31/0256、
31/0352−31/036、
31/0392−31/078、
31/18、
51/42−51/48
H02J3/00−7/12、
7/34−7/36
H02M7/42−7/98
H02S10/00−10/40、
30/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
ファジィ論理ベースの適応電力管理システムと、
太陽光発電システムと、
キャパシタベースの第1のエネルギー貯蔵システムと、
電池エネルギーベースの第2の貯蔵システムと、
当該システム内の装置に関連するエネルギー貯蔵の動作とシステム動作の知識の記憶装置と、を含み、
前記ファジィ論理ベースの適応電力管理システムは、パワーエレクトロニクス装置の詳細な制御ループより前にエネルギー変動に影響を与えるために、前記太陽光発電システム、前記キャパシタベースの第1のエネルギー貯蔵システム、前記電池エネルギーベースの第2の貯蔵システム、および、知識の記憶装置と通信し、前記ファジィ論理ベースの適応電力管理システムは、前記キャパシタベースの第1のエネルギー貯蔵システムと前記電池エネルギーベースの第2の貯蔵システムとの間の電力調整のためのフィルタベースの電力調整層であって、前記太陽光発電システムの出力電力を平滑化し、前記平滑化された電力と前記太陽光発電システムの実際の出力電力との差異を前記第1のエネルギー貯蔵システムおよび前記第2の貯蔵システムの放電または充電によってまかなうためのローパスフィルタを備えるフィルタベースの電力調整層と、全てのエネルギー貯蔵システムの動作状態を監視し続け、それらの動特性を考慮し、当該システムの制御設定としての前記ローパスフィルタのパラメータと当該システム内の最適な電力またはエネルギー分布の影響とを適応的に微調整するファジィ論理ベースの制御調整と、を含む、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記フィルタベースの電力調整は、電池が平滑化電力プロファイルをカバーしている間、前記キャパシタベースの第1のエネルギー貯蔵システムが、急速に変動している太陽光発電の出力電力の突然の変化を補償し、通常の動作期間時には、前記キャパシタベースの第1のエネルギー貯蔵システムまたは電池エネルギーベースの第2の貯蔵システムのためのリファレンスが、全体的なシステム効率を改善するために、変更可能なリファレンスとして十分に機能することを特定の条件の下で保証する、システム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムにおいて、
前記ファジィ論理ベースの制御調整は、システムの動作の間、エネルギー貯蔵システムが、異なる動作モード間の切り替えを継続して異なるダイナミクスを提供し、各動作モードの滑らかな変更を成し遂げるとともに、それらの変更に応じて制御のチューニングを含む一貫性のあるシステム性能を維持し、特定の状況において正確な数学的モデルまたは高度な計算を要求せずに、線形システム制御の利点を提供してなる、システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記ファジィ論理ベースの制御調整は、ファジィ論理ベースの平滑化制御、ファジィ論理ベースの電池電力制御およびファジィ論理ベースのウルトラキャパシタ電力制御を有する、システム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記ファジィ論理ベースの制御調整は、平滑化電力プロファイルに影響を及ぼすローパスフィルタリングを含み、平滑化された前記太陽光発電システムの出力電力と実際の前記太陽光発電システムの出力電力との差異はハイブリッド型の電気エネルギーシステムの放電または充電によってまかなわれ、平滑化制御のパラメータは、当該パラメータが大きくなるほど、エネルギー貯蔵から要求されるエネルギーおよび電力が多くなる、つまり、ハイブリッド型の電気エネルギーシステムによって補償される必要がある変動電力が大きくなるように平滑化制御を左右する、システム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記ファジィ論理ベースの制御調整は、エネルギー容量の飽和または枯渇を防ぐことと、異なる太陽光発電能力が前記太陽光発電システムに適用されたときに更新され得る電池エネルギーおよびウルトラキャパシタの容量に対する充電率で維持可能なシステム動作を保証することとを有し、電力集約ストレージを用いて、ウルトラキャパシタは、エネルギーが枯渇および飽和する傾向がある比較的変動する充電率プロフィールを提供するため、正に大きい範囲および負に大きい範囲は当該システムの電池よりも大きな範囲を占める、システム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記ファジィ論理ベースの制御調整は、偏差値を加えることによって、シミュレートされたウルトラキャパシタ基準電流を調整するファジィ論理ベースのウルトラキャパシタ電流制御と、コンバータ電流制御ループに直接適用できるウルトラキャパシタの基準電流の出力と、および前記ウルトラキャパシタをエネルギーが枯渇または飽和しないようにするためのファジィ規則とを有する、システム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記ファジィ論理ベースの制御調整は、偏差値を加えることによって、シミュレートされた電池の基準電流を調整するファジィ論理ベースの電池電力制御と、コンバータ電流制御ループに直接適用できる電池の基準電流の出力と、を有する、システム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記ファジィ論理ベースの適応電力管理システム内のファジィ制御は、前記知識の記憶装置内のシステム動作の発見的知識から構成され、前記ファジィ制御は、持続可能な動作状態でシステムを維持し、かつ、エネルギー貯蔵システムの許容可能なライフサイクルを維持することで、システムのシミュレーションおよび前記適応電力管理システムの構成を介して前記ファジィ制御をチューニングする、システム。
【請求項10】
システムが行う方法であって、
電気エネルギーシステム内のファジィ論理ベースの適応電力管理システムを使用し、
太陽光発電システムを前記電力管理システムに接続し、
キャパシタベースの第1のエネルギー貯蔵システムを前記電力管理システムに接続し、
電池エネルギーベースの第2の貯蔵システムを前記電力管理システムに接続し、
前記電気エネルギーシステム内の装置に関連するエネルギー貯蔵の動作とシステム動作の知識の記憶装置を前記電力管理システムに接続し、
前記ファジィ論理ベースの適応電力管理システムは、パワーエレクトロニクス装置の詳細な制御ループより前にエネルギー変動に影響を与えるために、前記太陽光発電システム、前記キャパシタベースの第1のエネルギー貯蔵システム、前記電池エネルギーベースの第2の貯蔵システム、および、知識の記憶装置と通信し、前記ファジィ論理ベースの適応電力管理システムは、前記キャパシタベースの第1のエネルギー貯蔵システムと前記電池エネルギーベースの第2の貯蔵システムとの間の電力調整のためのフィルタベースの電力調整層であって、前記太陽光発電システムの出力電力を平滑化し、前記平滑化された電力と前記太陽光発電システムの実際の出力電力との差異を前記第1のエネルギー貯蔵システムおよび前記第2の貯蔵システムの放電または充電によってまかなうためのローパスフィルタを備えるフィルタベースの電力調整層と、全てのエネルギー貯蔵システムの動作状態を監視し続け、それらの動特性を考慮し、当該システムの制御設定としての前記ローパスフィルタのパラメータと当該システム内の最適な電力またはエネルギー分布の影響とを適応的に微調整するファジィ論理ベースの制御調整と、を含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記フィルタベースの電力調整は、電池が平滑化電力プロファイルをカバーしている間、前記キャパシタベースの第1のエネルギー貯蔵システムが、急速に変動している太陽光発電の出力電力の突然の変化を補償し、通常の動作期間時には、前記キャパシタベースの第1のエネルギー貯蔵システムまたは電池エネルギーベースの第2の貯蔵システムのためのリファレンスが、全体的なシステム効率を改善するために、変更可能なリファレンスとして十分に機能することを特定の条件の下で保証する、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
前記ファジィ論理ベースの制御調整は、システムの動作の間、エネルギー貯蔵システムが、異なる動作モード間の切り替えを継続して異なるダイナミクスを提供し、各動作モードの滑らかな変更を成し遂げるとともに、それらの変更に応じて制御のチューニングを含む一貫性のあるシステム性能を維持し、特定の状況において正確な数学的モデルまたは高度な計算を要求せずに、線形システム制御の利点を提供してなる、方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法において、
前記ファジィ論理ベースの制御調整は、ファジィ論理ベースの平滑化制御、ファジィ論理ベースの電池電力制御およびファジィ論理ベースのウルトラキャパシタ電力制御を有する、方法。
【請求項14】
請求項10に記載の方法であって、
前記ファジィ論理ベースの制御調整は、平滑化電力プロファイルに影響を及ぼすローパスフィルタリングを含み、平滑化された前記太陽光発電システムの出力電力と実際の前記太陽光発電システムの出力電力との差異はハイブリッド型の電気エネルギーシステムの放電または充電によってまかなわれ、平滑化制御のパラメータは、当該パラメータが大きくなるほど、エネルギー貯蔵から要求されるエネルギーおよび電力が多くなる、つまり、ハイブリッド型の電気エネルギーシステムによって補償される必要がある変動電力が大きくなるように平滑化制御を左右する、方法。
【請求項15】
請求項10に記載の方法であって、
前記ファジィ論理ベースの制御調整は、エネルギー容量の飽和または枯渇を防ぐことと、異なる太陽光発電能力が前記太陽光発電システムに適用されたときに更新され得る電池エネルギーおよびウルトラキャパシタの容量に対する充電率で維持可能なシステム動作を保証することとを有し、電力集約ストレージを用いて、ウルトラキャパシタは、エネルギーが枯渇および飽和する傾向がある比較的変動する充電率プロフィールを提供するため、正に大きい範囲および負に大きい範囲は当該システムの電池よりも大きな範囲を占める、方法
【請求項16】
請求項10に記載の方法であって、
前記ファジィ論理ベースの制御調整は、偏差値を加えることによって、シミュレートされたウルトラキャパシタ基準電流を調整するファジィ論理ベースのウルトラキャパシタ電流制御と、コンバータ電流制御ループに直接適用できるウルトラキャパシタ基準電流の出力と、および前記ウルトラキャパシタをエネルギーが枯渇または飽和しないようにするためのファジィ規則とを有する、方法。
【請求項17】
請求項10に記載の方法において、
前記ファジィ論理ベースの制御調整は、偏差値を加えることによって、シミュレートされた電池の基準電流を調整するファジィ論理ベースの電池電力制御と、コンバータ電流制御ループに直接適用できる電池の基準電流の出力と、を有する、方法。
【請求項18】
請求項10に記載の方法において、
前記ファジィ論理ベースの適応電力管理システム内のファジィ制御は、知識の記憶装置内のシステム動作の発見的知識から構成されることと、持続可能な動作状態でシステムを維持し、かつ、エネルギー貯蔵システムの許容可能なライフサイクルを維持している間、システムのシミュレーションおよび前記適応電力管理システムの構成を介して前記ファジィ制御をチューニングすること、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2013年1月24日に出願された米国仮出願番号61/756296、名称「PV出力を平滑化するためのハイブリッド型のウルトラキャパシタ電池貯蔵システムの適応制御(Adaptive control of hybrid Ultracapitor-Battery Storage System for PV Output Smoothing)」に基づく優先権を主張し、当該米国仮出願に記載された内容を援用するものである。
本発明は、一般的には、エネルギーシステムに関し、より具体的には、太陽光発電によるPV出力を平滑化するためのハイブリッド型のウルトラキャパシタ電池貯蔵システムの適応制御に関する
【背景技術】
【0002】
電力グリッドにおける再生可能エネルギー資源(例えば、太陽光発電(PV))の普及が高度に進んだことにより、システムは、電力品質や電圧影響などのような課題に直面している。懸念されていることの一つは、予期できない突然の天候変化時における太陽光発電量の短期的な高周波変動に由来しており、それはいくつかの中央発電所で報告されている。従来、一般的に平滑化またはランプレート制御と呼ばれる、太陽光発電量の短期的変動の緩和に対して力が注がれている。解決策として考えられていることは、短期的な変動の影響を緩和するために、適切なエネルギー貯蔵バッファとアクティブな管理システムを追加することである。最も一般的なエネルギー貯蔵装置である電池は、高いエネルギー密度を有しているが、電力密度は比較的低い。通常、太陽光発電の電力出力の平滑化は、貯蔵装置からの高い電力の充放電を頻繁に要求するため、一般的に電池の寿命が短くなる。
【0003】
文献では、単一型またはハイブリッド型のエネルギー貯蔵システムのために、様々な制御技術が研究者によって提案されている。電力管理システムは、発電や異なるエネルギー貯蔵装置間の消費をスケジューリングすることによって、太陽光発電の電力変動を平滑化する。電力のスケジューリング手法には、周波数スペクトラムベース、定電力ベース、知識ベース、ルールベースなどが含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、ハイブリッド型のエネルギー貯蔵システムは、ウルトラキャパシタ(UC)のような高い電力密度と比較的低いエネルギー密度を特徴とする異なる貯蔵装置の特徴を効率的に利用することが必要であり、それにより、電池システムを補償でき、電池システム上の高い電力負荷を軽減することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、システムであって、ファジィ論理ベースの適応電力管理システムと、太陽光発電システムと、キャパシタベースの第1のエネルギー貯蔵システムと、電池エネルギーベースの第2のエネルギー貯蔵システムと、当該システム内の装置に関連するエネルギー貯蔵装置の動作とシステム動作の知識の記憶装置と、を含み、管理貯蔵システムは、パワーエレクトロニクス装置の詳細な制御ループより前にエネルギー変動に影響を及ぼすために、太陽光発電システム、第1のキャパシタおよび電池ベースのエネルギーシステム、および、知識の記憶装置と通信し、ファジィ論理ベースの適応システムは、エネルギーベースのシステム間の電力調整のためのフィルタベースの電力調整層と、当該システム内の最適な電力またはエネルギー分布に影響を与え、かつ、当該システムの制御設定を適応的に微調整する動特性を考慮しながら全てのエネルギー貯蔵装置の動作状態を監視するためのファジー論理ベースの制御調整と、を含むシステムを対象とする。
【0006】
本発明の別の表現は、方法であって、電気エネルギーシステム内のファジィ論理ベースの適応電力管理システムを使用し、太陽光発電システムを前記電力管理システムに接続し、キャパシタベースの第1のエネルギー貯蔵システムを前記電力管理システムに接続し、電池エネルギーベースの第2の貯蔵システムを前記電力管理システムに接続し、前記電気エネルギーシステム内の装置に関連するエネルギー貯蔵の動作とシステム動作の知識の記憶装置を前記電力管理システムに接続し、前記管理貯蔵システムは、パワーエレクトロニクス装置の詳細な制御ループより前にエネルギー変動に影響を与えるために、前記太陽光発電システム、第1のキャパシタおよび電池ベースのエネルギーシステム、および、知識の記憶装置と通信し、前記ファジィ論理ベースの適応システムは、前記エネルギーベースのシステム間の電力調整のためのフィルタベースの電力調整層と、前記システム内の最適な電力またはエネルギー分布に影響を与え、かつ、当該システムの制御設定を適応的に微調整する動特性を考慮しながら全てのエネルギー貯蔵装置の動作状態を監視するためのファジー論理ベースの制御調整と、を含む、方法。
【0007】
これらの利点および他の利点については、以下の詳細な説明および添付の図面を参照することによって当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明によるハイブリッド型のUC電池エネルギー貯蔵システムの一例を示すシステム構成図である。
【
図3】本発明によるファジィ論理ベースのPMSの図である。
【
図4】本発明による、ファジィ論理平滑制御装置1のブロック図である。
【
図5】(a)および(b)は、制御装置1の入力変数および出力変数のメンバーシップ関数を示す。
【
図6】ファジィUC電力制御装置のブロック図である。
【
図7】(a)および(b)は、UC制御装置の入力変数および出力変数のメンバーシップ関数を示す。
【
図8】ファジィBE電力制御装置を示すブロック図である。
【
図9】(a)および(b)は、BE制御装置の入力変数および出力変数のメンバーシップ関数を示す。
【
図10】本発明を実行するためのコンピュータの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、変動問題を解決する一助となるPVシステムに統合されているハイブリッド型のウルトラキャパシタ電池(UC電池)エネルギー貯蔵システムを対象としている。本発明は、パワーエレクトロニクス装置(例えば、コンバータやインバータ)の詳細な制御ループの代わりに、複数のエネルギー貯蔵装置間で共有する電力とエネルギーを対処する電力管理システム(PMS)を設計することに焦点を当てている。ファジィ論理ベースの適応PMSは、電力/エネルギー分布の最適化を可能にする。提案するPMSは2つの層を有する。第1のフィルタベースの電力調節層は、ハイブリッド型の貯蔵システム間の電力調節のための基本的な段階として働く。第2のファジィ論理ベースの制御調整層は、全てのエネルギー貯蔵装置の動作状態を監視し続け、それらの動特性を考慮して、適応的に制御設定を微調整する。
【0010】
ここで
図1を参照すると、本発明によるハイブリッド型のUC電池エネルギー貯蔵システムの一例が示されている。ファジィ論理ベースの適応電力管理システムは、現在の状態および電力指令情報を太陽光発電システムおよびエネルギー貯蔵ユニット1、2と双方向に通信し、システム動作の発見的知識や構成要素の動作制約などのような情報にアクセスする。
【0011】
図2を参照すると、本発明の態様の図が示されている。ファジィ論理ベースの適応電力管理システムC1は、フィルタベースの電力/エネルギー調節面C1.1と、ファジィ論理ベースの制御システム調整面C1.2とを含む。ファジィ論理ベースの制御システム調整面は、平滑化制御C1.2.1と、UC電力制御C1.2.2と、BE電力制御C1.2.3とを含む。
【0012】
C.1:ハイブリッド型のESS制御のためのファジィ論理ベースの適応電力管理システム
PVの電力出力を平滑化するハイブリッド型のESS制御のための電力管理システムは、2つの主要な層を有する。第1の層は、エネルギー貯蔵装置間のフィルタベースの電力調節である。第2は、給電を調整したり、パラメータ設定を制御したりするファジィ論理ベースの調整層である。電力管理システムPMSは、
図3に示されている。太陽光発電(PV)システムからのPV信号P
PVは、平滑化されたP
PVとウルトラキャパシタ(UC)および電池エネルギー電力(BE)信号P
UCおよびP
BEとのそれぞれのためのローパスフィルタLPF1、LPF2とフィードバックループを含むフィルタベースの電力調節に接続される。ファジィ論理ベースの制御システム調整は、P
UCおよびP
BEの入力に応答して、ファジィ制御装置1にBEおよびUC状態信号を供給する電池およびウルトラキャパシタのための電力制御装置2、3を使用する。
【0013】
C1.2フィルタベースの電力調節
フィルタベースの電力調節のアプローチは、ハイブリッド型の貯蔵システムの動作のための基本的な段階として働く。これは、電池が平滑化電力プロファイルをカバーしながら、ウルトラキャパシタ貯蔵装置が急速に変動するPVの出力電力の突然の変化を補償することを保証する。通常の動作期間中には、異なるエネルギー貯蔵装置のためのリファレンスは、ある程度機能する。しかしながら、システム全体の効率を改善するために、特定の条件の下でリファレンスを変更する必要がある。そこで、別の制御層(C1.3)が追加され、C1.2からの入力を受け付ける。
【0014】
関連するエネルギー貯蔵装置により多くの種類が存在する場合、付加的に適切なフィルタを設計および追加してもよい。エネルギー貯蔵装置の異なる種類は、それ自身の動特性に基づいて、電力変動の異なる部分を補償する。
【0015】
C1.3:ファジィ論理ベースの制御システム調整
エネルギー貯蔵要素の異なる種類は、それに特有の動特性と動作関係を有する。システム動作中では、エネルギー貯蔵装置は異なる動作モード間で切り替えられ、異なるダイナミクスを提供する。各動作モードの滑らかな変更を成し遂げるとともに一貫性のあるシステム性能を維持するために、その変更に伴って制御スキームをチューニングすることが不可欠である。ファジィ論理は、非線形システム制御におけるユニークな利点を有しており、ほとんどの場合、正確な数学的モデルまたは高度な計算を必要としない。ファジィ論理ベースの制御システム調整層は、3つの主要なファジィ論理制御装置(すなわち、ファジィ論理ベースの平滑化制御、ファジィ論理ベースの電池電力制御、ファジィ論理ベースのUC電力制御)を備える。
【0016】
C1.2.1:ファジィ論理ベースの平滑化制御
図3のローパスフィルタ(LPF1)は平滑化電力プロファイルを決定する。P
PV,smoothと実際のPV電力(P
PV)との差異は、ハイブリッド型のESSを放電または充電することによってまかなわれる。パタメータT
1は、平滑化の性能を大きく左右し、T
1が大きいほど、ハイブリッド型のESSによって補償される必要のある変動が大きくなり、それにより、より多くのエネルギーおよび電力がエネルギー貯蔵装置に要求されることとなる。貯蔵装置の限られたエネルギー容量では、システム動作は、貯蔵装置のエネルギー容量が枯渇または飽和されてしまい、長時間維持することができないかもしれない。
【0017】
図4は、ファジィ論理ベースの平滑化制御を示す。入力と出力のメンバーシップ関数のそれぞれは、
図5(a)および(b)に示されたような5グレードおよび7グレードのそれぞれを含む。出力スケーリング係数はK
1である。それらのファジィ規則の適応後、T1は、貯蔵装置のSoc状態に基づいて調整される。例えば、ハイブリッドESSが枯渇または飽和に近い場合、出力ΔT
1は負となる。
【0018】
ファジィ規則は、エネルギー容量の飽和または枯渇を防止するための優先順位を取り、適切なシステム動作を保証する。ルールは、以下のように記載される。
1)SoC
ucがNBまたはSoC
beがNBの場合、ΔT
1はNB,
2)SoC
ucがPBまたはSoC
beがPBの場合、ΔT
1はNB,
3)SoC
ucがNSまたはSoC
beがNSの場合、ΔT
1はNS,
4)SoC
ucがPSまたはSoC
beがPSの場合、ΔT
1はNS,
5)SoC
ucがZOかつSoC
beがZOの場合、ΔT
1はPBまたはZO。
【0019】
異なるユニットサイズがPVシステムに適用される場合、SoC
beおよびSoC
ucのメンバーシップ関数は、更新できる。例えば、電力集約ストレージとして、UCは通常、比較的変動するSoCプロファイルを提示し、エネルギーが枯渇および飽和しやすく、そのため、PBおよびNBの範囲は電池よりも大きな範囲を占める。
【0020】
C1.2.2:ファジィ論理ベースのUC電力制御
図6は、ファジィ論理ベースのUC電力制御を示す。入力変数および出力変数のスケーリング係数はそれぞれK
2およびK
3である。K
2は、単にUC動作電流の最大値を取る。入力変数および出力変数のメンバーシップは
図7(a)および
図7(b)に示されている。
【0021】
制御装置は、シミュレートされたUC基準電流(I
uc,sim)を、偏差値(ΔI
uc)を加えることにより調整する。UC基準電流の出力(I
uc*)は、変換器電流制御ループに直接適用することができる。ファジー規則は、エネルギーの枯渇または飽和からUCを守るように設計される。ルールは、以下のように記載される。
1)SoC
ucがNBの場合、ΔI
ucはNB,
2)SoC
ucがNSかつI
uc,simがPBの場合、ΔIucはNM,
3)SoC
ucがNSかつI
uc,simがPMの場合、ΔIucはNS,
4)SoC
ucがNSかつI
uc,simがPSの場合、ΔIucはZO,
5)SoC
ucがZOかつI
uc,simがNB(PB)の場合、ΔIucはPS(NS),
6)SoC
ucがPBの場合、ΔI
ucはPB,
7)SoC
ucがPSかつI
uc,simがNBの場合、ΔIucはPM,
8)SoC
ucがPSかつI
uc,simがNMの場合、ΔIucはPS,
9)SoC
ucがPSかつI
uc,simがNSの場合、ΔIucはZO,
【0022】
C1.2.3;ファジィ論理ベースの電池電力制御
電池部は、電池容量の過剰使用や早い充放電速度が回避されると、良好に保護される。また、UCシステムと比較して電池の応答速度が相対的に遅いことを考慮すると、比較的安定した(変動が少ない)充放電電流を受けることが好ましい。
【0023】
SoCおよび電池電流は、制御装置の設計要素として選択される。
図8は、ファジィ論理ベースの電池電力制御装置を示す。入力変数および出力変数のスケーリング係数はK
4およびK
5である。入力変数および出力変数のメンバーシップ関数は
図9(a)および(b)に示される。
【0024】
制御装置は、シミュレートされた電池基準電流(I
be,sim)を、偏差値(ΔI
be)を加えることにより調整する。電池基準電流の出力(I
be*)は、変換器電流制御ループに直接適用することができる。ファジー規則は、エネルギーの枯渇または飽和からUCを守るように設計される。ルールは、以下のように記載される。
1)SoC
beがNBの場合、ΔI
beはNB,
2)SoC
beがNSかつI
be,simがPBの場合、ΔIucはNM,
3)SoC
beがNSかつI
be,simがPMの場合、ΔIucはNS,
4)SoC
beがNSかつI
be,simがPSの場合、ΔIucはZO,
5)SoC
beがZOかつI
be,simがNB(PB)の場合、ΔIucはPS(NS),
6)SoC
beがPBの場合、ΔI
beはPB,
7)SoC
beがPSかつI
be,simがNBの場合、ΔIucはPM,
8)SoC
beがPSかつI
be,simがNMの場合、ΔIucはPS,
9)SoC
beがPSかつI
be,simがNSの場合、ΔIucはZO,
【0025】
PMSのファジィ制御装置はシステム動作の発見的知識から設計される。それらはシステムのシミュレート学習を介して微調整される。PMSの適切な設計を通して、システムは適切な動作状態を維持することができ、それらのエネルギー貯蔵装置は良好なライフサイクルの中で保存される。
【0026】
本発明は、ハードウェア、ファームウェアまたはソフトウェア、あるいはこれら3つの組合せで実施することができる。好ましくは、本発明は、プロセッサ、データ記憶システム、揮発性および不揮発性のメモリおよび/または記憶素子、少なくとも一つの入力装置、および少なくとも一つの出力装置を有する、プログラム可能なコンピュータ上で実行されるコンピュータプログラムで実施される。さらなる詳細は、米国特許8380557に記載され、その内容は参照により組み込まれる。
【0027】
一例として、システムを支援するためのコンピュータのブロック図が
図10に示されている。コンピュータは、好ましくは、プロセッサ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、プログラムメモリ(好ましくは、フラッシュROMのような書き込み可能な読み出し専用メモリ(ROM))、および入出力(I/O)制御装置を含み、それらはCPUバスで接続されている。コンピュータは、必要に応じて、ハードディスクおよびにCPUバスに接続されたハードドライブコントローラを含んでもよい。ハードディスクは、本発明では、アプリケーションプログラムやデータを記憶するために使用することができる。代わりに、アプリケーションプログラムはRAMまたはROMに記憶されることができる。I/O制御装置は、I/Oバスを介してI/Oインタフェースに接続される。I/Oインタフェースは、シリアルリンク、ローカルエリアネットワーク、無線リンクおよびパラレルリンクのような通信リンクを介して、アナログまたはデジタルでデータを受信および送信する。必要に応じて、ディスプレイ、キーボードおよびポインティングデバイス(マウス)がI/Oバスを介して接続されていてもよい。代わりに、個別の接続(個別のバス)がI/Oインタフェース、ディスプレイ、キーボードおよびポインティングデバイス(マウス)に使用されてもよい。プログラム可能なプロセッサシステムは予めプログラムされていてもよいし、別のソース(例えば、フロッピーディスク、CD−ROMまたは他のコンピュータ)からプログラムをダウンロードすることによってプログラムされてもよい。
【0028】
各コンピュータプログラムは、一般的または特別な目的のプログラム可能なコンピュータによって読み込み可能な機械可読記憶媒体または機械可読記憶装置(例えば、プログラムメモリまたは磁気ディスク)が本明細書で記載された手順を実行するためにコンピュータによって読み込まれたときに、コンピュータの動作を構成および制御するために、その機械可読記憶媒体または機械可読記憶装置に実体的に記憶される。本発明のシステムは、コンピュータプログラムで構成され、コンピュータにて読み取り可能な記憶媒体で実現されることも考えられる。このように構成された記憶媒体は、本明細書で記載された機能を実行するために、特定かつ所定の方法で動作させられる。
【0029】
上述したことから理解できるように、本発明の特徴および利点は、例えば、複雑さの低減化、高速化、低コスト化、高品質化など、本発明によって到達される解決策の特定の競合的/商業的価値である。本発明は、正確な数学的モデルまたは高度な計算を必要とせず、主に、オンラインシステムの測定に依存し、エネルギー貯蔵装置の異なる種類や、異なる要素構成(例えば、異なるユニットサイズ、異なる動作制約など)に適用されたときに容易に更新でき、貯蔵装置においてより少ないエネルギー容量でよく、エネルギー貯蔵装置に関する力学的特徴および動作に直接関連することができる制御対象としてより実用的な信号を選択することができる。
【0030】
上記は、あらゆる点で例証的および例示的であるが、限定的ではないと理解されるべきであり、ここで説明された発明の範囲は、発明の詳細な説明から決定されるのではなく、むしろ特許法によって許容される最大限の解釈に従って特許請求の範囲から決定されるものである。本明細書に記載および示された実施形態は、本発明における単なる原理の説明であって、当業者は本発明の範囲および精神から逸脱しない限り様々な修正を行うことができると理解されるべきである。当業者は、本発明の範囲および精神から逸脱しない限り、様々な他の特徴を組み合わせることができる。