特許第6095780号(P6095780)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6095780車両の速度制御システムを操作する方法、および車両の速度を制御するシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095780
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】車両の速度制御システムを操作する方法、および車両の速度を制御するシステム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/14 20060101AFI20170306BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20170306BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20170306BHJP
   B60K 6/52 20071001ALI20170306BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20170306BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20170306BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20170306BHJP
【FI】
   B60W30/14
   B60T7/12 F
   B60T7/12 A
   B60L15/20 J
   B60K6/52ZHV
   B60W10/06 900
   B60W10/08 900
   B60W20/00
【請求項の数】11
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2015-526993(P2015-526993)
(86)(22)【出願日】2013年8月15日
(65)【公表番号】特表2015-532621(P2015-532621A)
(43)【公表日】2015年11月12日
(86)【国際出願番号】EP2013067095
(87)【国際公開番号】WO2014027071
(87)【国際公開日】20140220
【審査請求日】2015年4月7日
(31)【優先権主張番号】1214651.0
(32)【優先日】2012年8月16日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512308720
【氏名又は名称】ジャガー ランド ローバー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Jaguar Land Rover Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・フェアグリーブ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ウーリスクロフト
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・ケリー
【審査官】 有賀 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−020496(JP,A)
【文献】 特開平11−227492(JP,A)
【文献】 特開2003−320872(JP,A)
【文献】 特開2004−322764(JP,A)
【文献】 特開2007−176321(JP,A)
【文献】 特開2007−145201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00─50/16
B60K 6/20─ 6/547
B60T 7/12─ 8/1769
B60T 8/32─ 8/96
B60L 1/00─ 3/12
B60L 7/00─13/00
B60L 15/00─15/42
F02D 29/00─29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の速度制御システムを操作する方法であって、
車両を加速または減速させる効果を有する外力が車両に作用していることを検出するステップと、
車両を加速または減速させる外力の効果を補償するために、車両の1つまたはそれ以上の車輪に付加される正味トルクを構成する減速トルクまたは駆動トルクの変化率を自動的に調整するステップとを有し、
前記調整ステップは、車両の1つまたはそれ以上の車輪に付加される減速トルクまたは駆動トルクに所定のゲインを適用して、減速トルクまたは駆動トルクの変化率を増減させるステップを含み、
前記方法は、
速度制御システムの設定速度を最初の設定速度から、より低速の目標設定速度に変更する命令を受けるステップをさらに有し、
前記調整ステップは、目標設定速度に達するまで車両を減速させるために付加される減速トルクまたは駆動トルクの変化率を調整するステップを有し、
外力が、車両が坂道を上ることによる減速効果を有するとき、設定速度を変更するように受けた命令により、付加される減速トルクまたは駆動トルクの変化率では、車両が坂道を上り続けるには減速トルクまたは駆動トルクが不十分である場合、車両が坂道を下方へ移動することを防止するために、付加される減速トルクの増加率または駆動トルクの減少率を低減するステップをさらに有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記調整ステップは、所定の加速度プロファイルに従って車両を目標設定速度まで加速または減速させるために、付加される減速トルクまたは駆動トルクの変化率を調整するステップを含み、
加速度プロファイルは、所望加速度から最大所望加速度までの範囲を含む加速度変化幅を有することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記検出ステップは、
車両の縦方向加速度を所定の加速度プロファイルと比較するステップと、車両の縦方向加速度が所定の加速度プロファイルから逸脱したとき、外力が車両に作用していることを検出するステップか、
車両の1つまたはそれ以上の操作パラメータを評価するステップと、その評価結果に基づいて外力が車両に作用していることを検出するステップか、または
車両に作用する外力を発生させる地形上を車両が走行していることを検出するステップを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
車両の1つまたはそれ以上の車輪に付加される減速トルクまたは駆動トルクの変化率を調整する前記調整ステップは、車両に作用する外力の大きさに依存することを特徴とする請求項1〜のいずれか1に記載の方法。
【請求項5】
電子制御ユニット(ECU)を備えた車両の速度を制御するシステムであって、
電子制御ユニットは、
車両を加速または減速させる効果を有する外力が車両に作用していることを検出し、
車両を加速または減速させる外力の効果を補償するために、車両の1つまたはそれ以上の車輪に付加される正味トルクを構成する減速トルクまたは駆動トルクの変化率を自動的に調整し、
付加される減速トルクまたは駆動トルクに所定のゲインを適用することにより、付加される減速トルクまたは駆動トルクの変化率を調整して、減速トルクまたは駆動トルクの変化率を増減させるように構成され
電子制御ユニットは、
速度制御システムの設定速度を最初の設定速度から、より低速の目標設定速度に変更する命令を受けたとき、目標設定速度に達するまで車両を減速させるように、車両の1つまたはそれ以上の車輪に付加される減速トルクまたは駆動トルクの変化率を調整し、
外力が、車両が坂道を上ることによる減速効果を有するとき、設定速度を変更するように受けた命令により、付加される減速トルクまたは駆動トルクの変化率では、車両が坂道を上り続けるには減速トルクまたは駆動トルクが不十分である場合、車両が坂道を下方へ移動することを防止するために、付加される減速トルクの増加率または駆動トルクの減少率を低減するように構成されたことを特徴とするシステム。
【請求項6】
坂道発進支援システムは、車両が坂道を下方へ移動することを防止するか、坂道を上方へ移動することを再開させるための十分な正味トルクが生成されるまで、坂道上で車両の静止を維持するように構成されたことを特徴とする請求項に記載のシステム。
【請求項7】
電子制御ユニットは、車両の1つまたはそれ以上の車輪に付加される減速トルクまたは駆動トルクの変化率を所定の加速度プロファイルに従って調整するように構成され、
加速度プロファイルは、所望加速度から最大所望加速度までの範囲を含む加速度変化幅を有することを特徴とする請求項またはに記載のシステム。
【請求項8】
電子制御ユニットは、
車両の縦方向加速度を所定の加速度プロファイルと比較することにより外力が車両に作用していることを検出し、車両の縦方向加速度が所定の加速度プロファイルから逸脱したとき、外力が車両に作用していることを検出するか、
車両の1つまたはそれ以上の操作パラメータを評価することにより外力が車両に作用していることを検出し、その評価結果に基づいて外力が車両に作用していることを検出するか、または
車両に作用する外力を発生させる地形上を車両が走行していることを検出することにより、車両に作用する外力を検出するように構成されたことを特徴とする請求項5〜7のいずれか1に記載のシステム。
【請求項9】
電子制御ユニットは、付加される減速トルクまたは駆動トルクの変化率を車両に作用する外力の大きさに依存して調整するように構成されたことを特徴とする請求項5〜8のいずれか1に記載のシステム。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれか1に記載のシステムを備えた車両。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか1に記載の方法を実行するように車両を制御するコンピュータ可読コードを担持する担持媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に車両速度制御に関し、特にさまざまな異なる地形を縦走可能な車両の速度を制御し、車両加速度に影響を与える(車両を加速および減速させる)車両の加速外力を補償して、車両の速度を制御するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にクルーズコントロールシステムと呼ばれる既知の車両速度制御システムにおいて、車両に対する設定速度は、所望する速度まで車両速度を手動で上げた後、その速度を設定速度として設定するために、たとえばプッシュボタンを操作(押下等)して、ユーザ選択可能なユーザインターフェイスデバイスを操作することにより設定される。その後、ユーザが設定速度を変更したい場合、同一または異なるユーザ入力デバイスを操作して、設定速度を増減させてもよい。設定速度の変更の要求または要請に呼応して、制御速度システムは、たとえば車両のパワートレインサブシステムおよび/またはブレーキサブシステム等の1つまたはそれ以上の車両サブシステムに命令を送信することにより、車両を適宜加速または減速させて新しい設定速度に達し、または一致させる。
【0003】
しかしながら、こうした既知の速度制御システムの1つの問題点は、車両速度が目標設定速度より小さくなったとき、または目標設定速度に対する設定速度の変更が命令されたとき、車両は目標設定速度となるように加速または減速され、車両の加速に影響を与える車両に対する外力が十分に補償されない点にある。その結果、目標設定速度のオーバーシュート(目標設定速度を超えること)またはアンダシュート(目標設定速度に達しないこと)が生じ、1人またはそれ以上のユーザが期待する加速度または減速度、予定された加速度プロファイル、および所定の加速度変化幅とは一致しないことがある(たとえばユーザが予想または期待していた速度より早い速度または遅い速度に加速また減速されることがある。)。これらの外力とは、たとえば車両が坂道を上りまたは下るときに車両に作用する重力、車両走行中の路面の抵抗力が大きいことに起因した転がり抵抗力、および車両本体が水に浸かりながら走行しているとき(ウェーディング(浸水)走行中)の抵抗力等が含まれる。車両に作用する1つまたはそれ以上の力が十分に大きいときに、車両が加速され、または減速される場合、期待していた車両の加速度または減速度を不適切に(好ましくなく)増大または減少させるような悪影響が生じることがある。
【0004】
したがって、上記説明した1つまたはそれ以上の問題点を極力抑え、および/または解消する速度制御システムおよび速度制御方法に対する要請がある。
【発明の概要】
【0005】
保護を求める本発明に係る1つの態様によれば、車両の速度を制御する方法が提供される。この方法は、車両を加速または減速させる効果を有する外力が車両に作用していることを検出するステップと、車両を加速または減速させる外力の効果を補償するために、車両の1つまたはそれ以上の車輪に適用される正味トルクの少なくとも1つの構成要素の変化率を自動的に調整するステップとを有する。
【0006】
保護を求める本発明に係る別の態様によれば、車両のための速度制御システムが提供される。このシステムは電子制御ユニット(ECU)を備え、電子制御ユニットは、車両を加速または減速させる効果を有する外力が車両に作用していることを検出し、車両を加速または減速させる外力の効果を補償するために、車両の1つまたはそれ以上の車輪に適用される正味トルクの少なくとも1つの構成要素の変化率を自動的に調整するように構成される。
【0007】
保護を求める本発明に係るさらに別の態様によれば、上記システムを備えた車両が
提供される。
【0008】
保護を求める本発明に係る別の態様によれば、上記方法を実行するように車両を制御するコンピュータ可読コードを担持する担持媒体が提供される。
【0009】
本発明のさまざまな態様に係る任意的な特徴は、以下の従属クレームに記載されている。
【0010】
本発明に係る1つまたはそれ以上の上記態様の1つまたはそれ以上の実施例によれば、高速道路以外の状況で動作可能な速度制御システムが提供され、このシステムは、路面に対する所定の設定速度を維持するために車両の複数の車輪のうち少なくとも1つの車輪にトルクを適用(駆動または負荷)するための手段を制御する。
【0011】
このシステムは、現時点の設定速度から新しい目標設定速度に設定速度をユーザにより増減できるように動作可能である。すなわちユーザが設定速度の変更を命令したとき、速度制御システムは、新しい設定速度を実現するように(正または負の意味で)車両を加速することができるように、トルク適用手段を制御するものである。
【0012】
トルク適用手段は、より詳細に以下説明するように、パワートレインを備え、任意的にはブレーキシステムを備える。
【0013】
新しい設定速度に一致させるように車両の速度を変更する際、車両を(正または負の意味で)加速するように、車両に作用する外力を検出し、これを考慮するように動作可能である。速度制御システムは、1つまたはそれ以上の車輪に適用されるように命令されたトルク量を変更する際、新しい目標設定速度に対するオーバーシュートのリスクを低減するように外力の存在を補償する。いくつかの実施形態では、このシステムは、新しい目標設定速度に対するオーバーシュートまたはアンダーシュートを実質的に防ぐために動作可能である。速度制御システムは、パワートレインを制御し、任意的にはブレーキシステムを制御するように動作可能である。いくつかの実施形態では、パワートレインは、たとえば発電機として機能する1つまたはそれ以上の電気マシン等の1つまたはそれ以上の電気マシンを用いて、摩擦ブレーキシステムを利用することなく、比較的に速やかに負のトルクを1つまたはそれ以上の車輪に負荷する手段を有するものであると理解される。
【0014】
理解されるように、車両を加速するように車両に作用する外力は、車両の負の加速度を与える(車両を減速させる)ように作用する減速力であるか、または車両の正の加速度を与えるように作用する加速度である。
【0015】
理解されるように、正または負の方向に車両を加速するように作用する力は、車両の進行方向に平行にまたはこれに沿って作用する構成要素(成分)を含む力である。車両が坂道を上っている場合、外力は進行方向とは逆方向に作用するため、制動力すなわち減速力である。いくつかの実施形態では、通常の進行方向は、車両の長手方向軸に平行にまたはこれに沿った方向である。
【0016】
速度制御システムは、1つまたはそれ以上の車輪に適用されるように命令されたトルク量を増減するように動作可能であり、トルク量を外力の大きさに依存した増減率で増減させることができる。すなわち、いくつかの実施形態では、(制動力すなわち減速力または正の加速力の)外力が大きいほど、トルク適用手段により1つまたはそれ以上の車輪に適用されるトルク量は、より小さい増減率で変更されるように命令される。
【0017】
正の加速力は、たとえば車両が坂道を下っているときに受け、負の外力は、車両が坂道を上っているときに受ける。
【0018】
いくつかの実施形態では、車輪の速度に加え、(たとえば車両姿勢を基準とする)走行路面の勾配、選択ギア、タイヤ摩擦力、ホイールアーティキュレーション、転がり抵抗力、および車両の選択された地形応答(TR)モードの中から選択された少なくとも1つのものに関するデータがシステムに提供される。
【0019】
いくつかの実施形態では、走行路面の勾配に関する情報が提供され、システムは、車両を加速または減速させるように作用する力の大きさと方向に依存して、1つまたはそれ以上の車輪に適用されるトルク量の変化率を制御するように動作可能である。
【0020】
いくつかの実施形態では、車両が進行方向に対して正の方向に加速するように作用する外力を受けた場合、速度制御システムは、設定速度の増大が命令されると、トルク適用手段による適用トルク量の変化率を小さくするように動作可能であり、外力が大きくなるほど、より大きな程度で変化率を小さくする。(車両速度が設定速度を超えた場合)新しい目標設定速度に対するオーバーシュートを抑制または防止する。理解されるように、車両が坂道を下っている場合、勾配が急峻であるほど、正の加速度をもたらす傾向がある重力成分は大きいため、1つまたはそれ以上の車輪に対するトルク適用手段からの加速トルクはより少なくて済む。トルク適用手段は、エンジン、電気マシン、または1つまたはそれ以上の車輪に対して駆動トルクを適用するための他の任意の適当な手段を含む。
【0021】
理解されるように、いくつかの状況では、定義された加速度変化幅(たとえば0.1G〜0.2Gの範囲内の変化率)の範囲内で、新しい目標設定速度まで車両を加速するように、パワートレインのトルク増大が要求される。勾配が急峻である状況では、所定の加速度変化幅の範囲内の加速度で車両を加速するために、ブレーキトルクの低減が要求される。いずれの場合でも、勾配が大きいほど、パワートレイントルクおよび/または制動またはブレーキトルクの変化率が小さくなるように構成される。
【0022】
逆に、車両に作用する力が正の加速をもたらす場合、設定速度を小さくするように要求されると、速度制御システムは、1つまたはそれ以上の車輪に適用されるトルク量を、外力が大きいほど増大させるような変化率で変化させるように動作可能である。これは外力が設定速度の減速方向とは逆方向に作用するためである。
【0023】
たとえば重力に逆らって坂道を上る場合や砂地形の組成物に起因する抵抗力に対抗して砂地形上を走行する場合、車両が意図した進行方向に負の加速度をもたらすような方向の力を受けた状況において、速度制御システムは、設定速度の増大が要求されたとき、1つまたはそれ以上の車輪に適用されるトルクの増加率を大きくし、設定速度の低減が要求されたとき、予定された変化値幅の範囲で車両の加速度を維持するために、1つまたはそれ以上の車輪に適用されるトルクの減少率を小さくするように動作可能である。
【0024】
換言すると、車両が坂道を上っているとき、設定速度の低減が命令された場合(減速力が車両に作用する場合)、システムは、車両が坂道を上りきるための車輪トルクが十分でなく、車両が坂道を下方に逆行するというリスクを抑制するために、車輪トルクを低減する率を小さくするように構成される。理解されるように、比較的に急峻な坂道を上っているときに車輪トルクをあまりにも大きく減らすと(たとえば車輪トルクをゼロにすると)、車両速度の減少が新しい目標設定速度に対して過剰にアンダーシュートし、すなわち車両速度が新しい目標設定速度より下回ってしまう。いくつかの状況では、車両は、坂道を下方へ転がり落ちてしまう。したがって、車輪トルクは、水平な路面を走行している場合と比較して、より緩やかに低減される。
【0025】
いくつかの実施形態では、車両が坂道を下っているときに、設定速度の増大が要求された場合、システムは、1つまたはそれ以上の車輪に適用されるトルク量を勾配の急峻度の関数として小さくなるような低減率で変化させるように動作可能である。
【0026】
いくつかの実施形態では、車両は、車両が走行している地形タイプまたは環境に起因して車両に作用していると判断された外力の大きさに応じて車輪トルクを変化させる率を制御するように構成される。砂、泥、水等の地形は比較的に大きな減速力を車両に負荷することが理解される。車両が水平な砂地または泥地を走行し、設定速度の低減が要求された場合、システムは、車両速度を新しい設定速度まで低減するために、車両に作用する抵抗力が大きくなるほど小さくなる率で1つまたはそれ以上の車輪に適用されるトルク量を変化させる。
【0027】
理解されるように、パワートレイントルク量があまりにも急激に低減したとき、車両に作用する抵抗力により車両速度は、一人またはそれ以上の乗員が不快と感じるような量(または率)で減速し、車両を停止させることになる。一旦、車両が停止すると、車両を静止状態から再び走行させ始めること(走行を開始させるのに十分な牽引力を得ること)は困難である。
【0028】
逆に、車両の設定速度の増大が要求されたとき、速度制御システムは、車両に作用する抵抗力の大きさとともに大きくなる増大率で、パワートレイントルクの増大を要求するように動作可能である。これは、新しい設定速度を実現するために、車両の慣性力と同様、車両の加速度とは反対の方向の抵抗力に打ち克つ必要があるためである。
【0029】
本発明に係る実施形態の車両によれば、本発明に係る速度制御システムを具備しない車両に比して、車両がより高い安定性および信頼性で地形の上を走行できるという利点を有する。本発明に係る実施形態は、路面上の車両走行を抑制または促進するように作用する外力の大きさに関係なく、比較的に迅速に新しい設定速度を実現し、システムに対するユーザ信頼を改善することができる。
【0030】
本発明に係る1つまたはそれ以上の態様に関する1つまたはそれ以上の実施例によれば、高速道路以外の状況で動作可能な速度制御システムが提供され、このシステムは、1つまたはそれ以上の車輪にトルクを適用する手段に命令して、要求されたトルクを1つまたはそれ以上の車輪に要求されたトルクを供給し、地面に対する予定の設定速度を維持するものであり、ユーザが現時点での設定速度から目標設定速度まで設定速度を増減することを可能にするように動作可能であり、1つまたはそれ以上の車輪に適用されるように命令されるトルク量を変更する際、車両に作用する外力を考慮して車両を加速させることにより、目標設定速度に対するオーバーシュートまたはアンダーシュートを防ぐように動作可能である。
【0031】
トルク適用手段は、パワートレインを備え、任意的にはブレーキシステムを備えてもよい。
【0032】
本発明に係るいくつかの実施形態において、速度制御システムは、高速道路以外の速度制御モードで操作する際、ブレーキペダルの軽い踏み込みを、低速を速度制御モードで維持したいとするユーザの所望であることを示すものとして認識し、ブレーキペダルの十分な踏込を、車両を速度制御モードから解除して、再起動するまで設定速度の制御を中断状態にしたいとするユーザの希望を示すものとして認識するように構成されてもよい。このように、ユーザがペダルに触れ、ステアリングホイールに対して反復的に制御する必要なく、車両をオフロードで低速駆動(30マイル/時(約50km/時))することができる。これにより、ユーザの負担が大幅に軽減され、車両安定性が改善される。理解されるように、凹凸の大きい路面上を走行しているとき、車両が轍や深い穴等のオフロード障害物を回避しながら走行しているときに、ユーザが自らを支え、安定させるので、フットペダルを一定の軽い圧力で維持することは困難であることが多い。
【0033】
想定されるように、オフロード速度制御システムは、ATPC(全地形推進制御)システムの一部を構成してもよく、これは、車両構成を車両走行中の所与の地形に対して最適化するように構成された1つまたはそれ以上の車両制御システムとは独立または協働して機能するように構成されてもよい。こうしたシステムの具体例は地形応答システム(登録商標)である。
【0034】
提案された速度制御システムの1つの実施形態において、ユーザが速度制御を開始して、車両が閾値速度以下の速度で走行する場合および/または(たとえばTRモードを選択し、または低速ギアを選択することにより)車両がオフロード走行モードに設定された場合、または車両がオフロードで駆動されていると判断した場合、速度制御システムは、オフロード走行モードで操作し、速度制御モードがアクティブ状態に維持されているとき、ブレーキペダルまたはアクセルペダルを介して速度調整命令を認識する。
【0035】
オフロード速度制御システムは、車両姿勢、車輪速度、ホイールアーティキュレーション、選択ギア、タイヤ摩擦力、転がり抵抗力、および選択された地形応答(TR)モードの中から選択された少なくとも1つのものが提供される。理解されるように、ユーザがオフロード速度制御を用いて低速(たとえば3マイル/時(約5km/時))でオフロードをドライブし、車両が急峻な坂道を上っているとき、ユーザがクルージング設定速度を低減するように要求した場合、車両が走行している坂道が急峻であること等を考慮しなければ、進行を維持するには十分なトルクが出ないことがある。このような場合、オフロード速度制御システムは、要求された減速により、坂道の下方に逆走することを予想することができ、坂道の勾配が大きいほど、これに応じてトルクは小さくなる。車輪に与えられるトルクをわずかに小さくしても、坂道を上っている場合には、車両が平坦な路面を走行している場合より大きく車両は減速することが理解される。このように、車両が走行している勾配および地形に関わらず、所望の設定速度を実現するように正確にトルクを制御することができる。これによりドライバは、車両応答を予想した通りに直感的に体感され、オフロード走行では経験されないものである。
【0036】
車両ユーザがオフロード速度制御モードで車両を走査しているときに、急峻な坂道上で車両を停止させ、またはほぼ静止させると、オフロード速度制御システムは、車両ブレーキを掛け、坂道発進支援システムからサポート(トルク)を追加的に要求しながら、適当なレベルのエンジントルクの効果と調和させることができる。坂道発進支援システムは、坂道発進時に、車両の不必要な動きを回避するため、すなわち車両が坂道を下方へ移動することを防ぐためにパワートレインサブシステムから得られるトルクが十分であるときのみ、車両ブレーキを解除するように構成された自動ブレーキ機能である。
【0037】
いくつかの実施形態では、オフロード速度制御システムは、エンジン失速(エンスト)を回避し、適当な推進を維持するために適当なギアで車両が低速オフロード走行できるように、ギアおよび選択ギア比を制御またはこれに影響を与えることができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、提案されたオフロード速度制御システムは、車両がオフロード速度制御モードで急峻な坂道を下っているとき、坂道発進支援システムは、ヒルディセント制御(HDC)システムの操作を自動的に制御し、またはこれに影響を与えて、車両にブレーキを掛けることができる。この状況において、このシステムは、車両エンジンの回転を確実に維持するものであるが、所望の設定速度より設定速度を大きくすることに限定されるものではない。
【0039】
理解されるように、いくつかの実施形態では、車両は、前進または後進の走行時においてオフロード速度制御モードで操作することができる。
【0040】
オフロード速度制御システムは、トラクション(牽引力)制御システムまたは安定制御システムからの入力値を能動的に参照して、車両がオフロードで依然として走行しているか否か判断し、走査を中断するのではなく、スリップ状況における車両の走行および運動量を維持しつつ、車両の設定速度を1つまたはそれ以上の車輪のスリップ事象により牽引力(駆動力)が制限されるときの設定速度に調整することができる。理解されるように、速度制御は、従来式の速度制御システムの場合のようにスリップ事象に呼応して自動的に突然に中断された場合、たとえばトラクション制御システムがアクティブ状態になって、速度制御の中断に起因して車両速度の突然の変化により、車両の駆動力が失われ、動かなくなってしまう。
【0041】
本発明の特定の実施形態を単なる具体例として以下説明する。車両が第1のAの位置から第2の位置まで坂道を上っているとき、位置Bにおける勾配が位置Aにおける勾配より急峻である場合を想定する。
【0042】
ユーザが位置Aで第1の設定速度からより低速の第2の設定速度に減速するように要求した場合、車両の低速推移(LSP)制御システムは、車両の速度を新しい設定速度に一致させるために、パワートレインシステムにより車両の車輪に供給されるトルク量を第1の率(レート)で低減するように構成されている。第1の率は、所与の路面タイプに対して走行表面が平坦である場合に採用される率より小さい。これは、進行方向とは反対方向に車両を坂道上で加速させるような重力に起因する減速力が車両に作用するためである。LSP制御システムは、パワートレイントルクを低減し、任意的にはブレーキシステムを用いて、予定された変化値幅の範囲で車両の減速度を維持しようとする。いくつかの実施形態では、加速度変化値幅は、±0.1G〜0.2Gの範囲である。
【0043】
車両が継続して坂道を上っているとき、車両は位置Bでより急峻な勾配に遭遇する。同様に、ユーザが位置Aで第1の設定速度から第2の設定速度に減速するように要求した場合、車両の低速推移(LSP)制御システムは、車両の速度を新しい設定速度に一致させるために、パワートレインシステムにより車両の車輪に供給されるトルク量を、第1の率より小さい第2の率(レート)で低減するように構成されている。車両を下方へ加速するように車両に作用する減速力は、位置Aでの減速力に比して相対的に大きく、車両速度はパワートレイントルクの減速力に相当に迅速に呼応するため、パワートレイントルクの低減のより小さい率が用いられる。LSP制御システムは、車両の減速度を予定の変化幅(±0.1G〜0.2G)の範囲に維持することができるように、パワートレイントルク(およびブレーキシステムトルク)を制御する。理解されるように、加速度変化幅の他の値も同様に有用であり、上記変化幅(±0.1G〜0.2G)に限定して解釈されるものではない。理解されるように、いくつかの状況においては、システムがユーザの命令に迅速に呼応しているというユーザの信頼を促すために、加速度変化幅より急峻な減速度変化幅を有することが好適である。
【0044】
本発明に係る実施形態は、車両に加わる外力加速力の値に応じた減少トルク要求信号と比較して、増大トルク要求信号に適用されるゲイン量を変化させることにより、車両安定性の向上を支援する。理解されるように、加速力は正または負のものであってもよく、本発明に係る実施形態は、加速力の正または負の値に適応可能である。本発明の実施形態によれば、車両の加速度を予定された変化率幅(たとえば±0.1G〜0.2Gの範囲)内に維持することにより、加速事象または減速事象の際の乗客の快適性を確保することができる。
【0045】
理解されるように、(たとえば、坂道を上っているときの重力の影響または砂地形上を走行しているときの抵抗力の作用に起因して)外力が車両の路面上の走行に逆らうように作用するとき、オフロード速度制御システムは、車輪に加える正のトルク要求に対して、より大きなゲインを適用し(ひいては車両を駆動するために、パワートレインが1つまたはそれ以上の車輪に加えるトルクの増大率を大きくし)、1つまたはそれ以上の車輪に負荷する負のトルク要求に対して、より小さいゲインを適用する(ひいては車両を減速させるために適用される減速力の増大率をより小さくする)ように構成される。これは、こうした状況において、外力減速力が、車両の加速に逆らうように作用し、パワートレインが逆方向のトルクを負荷するが、車両を減速させることを支援するブレーキトルクと同様の意味で作用するためである。
【0046】
対照的に、(たとえば、坂道を下っているときの重力の影響に起因して)外力が車両の路面上の走行を促進するように作用する場合、オフロード速度制御システムは、車輪に加える正のトルク要求に対して、より小さなゲインを適用し(ひいては車両を駆動するために、パワートレインが1つまたはそれ以上の車輪に加えるトルクの増大率を小さくし)、1つまたはそれ以上の車輪に負荷する負のトルク要求に対して、より大きいゲインを適用する(ひいては車両を減速させるために負荷される減速力の減速率をより大きくする)ように構成される。これは、外力が車両の加速を促すように作用し、パワートレインが加えるトルクと同様の意味で作用するが、車両を減速させるブレーキトルクに逆らうように作用するためである。
【0047】
理解されるように、上記説明したようにゲインを調整することにより、車両が走行する地形に関係なく、車両の挙動の一貫性を維持することができる。
【0048】
本発明の実施形態は、手動運転操作に対するユーザの負荷を大幅に低減するとともに、車両が坂道の途上にあるとき、パワートレインが車輪に加えるトルクが十分でないことに起因して、車両が前進または後進するように状況を回避することにより、車両の摩耗および磨滅を最小限に抑えることができるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
以下の添付図面を参照しながら、単なる具体例として、本発明の1つまたはそれ以上の実施形態について以下説明する。
図1】車両の概略的なブロック図である。
図2図1に示す車両の別のブロック図である。
図3図1および図2に示す車両等の車両とともに用いられるステアリングホイールの概略図である。
図4図1および図2に示す車両等の車両の速度制御システムの操作の具体例を示す概略的なブロック図である。
図5図1および図2に示す車両等の車両の速度を制御する方法を示すフローチャートである。
図6】本発明に係る実施形態の車両であって、坂道上の異なる勾配を有する2つの異なる位置にある車両を示す
図7】車両操作中に時間の関数としての駆動トルクおよび減速トルクを示すグラフであって、設定速度が調整されるとき、加速または減速のための外力が車両に作用する。
図8図8A図8Fは、異なるオフロード運転状態における時間の関数としての特定の車両パラメータを示すグラフであって、本発明に係る実施形態による速度制御システムの操作を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本願で開示する方法およびシステムを用いて、車両の速度を制御することができる。1つの実施形態では、本願に係る方法およびシステムは、車両が目標設定速度になるまで加速または減速しているときに、車両に作用する外力を検出し、外力は車両の加速度または減速度に影響を与えるので、車両の1つまたはそれ以上の車輪に適用されるトルクの態様を調整し、車両の加速度または減速度に対する影響を補償して、目標設定速度に調整するものである。
【0051】
本願において、機能ブロック等のブロックを参照することには、1つまたはそれ以上の入力信号に応じた出力信号で特定される機能または動作を実行するためのソフトウェアコードを参照することを含むものと理解されたい。ソフトウェアコードは、メインコンピュータプログラムにより呼び出されるソフトウェアルーチンまたはソフトウェア機能の形態であってもよいし、または独立しないソフトウェアルーチンまたはソフトウェアのフローコードの一部を構成するコードであってもよい。本発明の実施形態による制御システムの動作を方法について簡便に説明するために、機能ブロックを参照する。
【0052】
図1および図2を参照すると、本発明に係る方法およびシステムに用いられる車両10のいくつかの構成部品が図示されている。以下の説明は、図1および図2に示す特定の車両10に関するものであるが、理解されるように、この車両は単なる具体例であり、当然に他の車両を代わりに使用することかできる。さまざまな実施形態において、いくつかの具体例を挙げると、たとえば、従来型車両、ハイブリッド電気自動車(HEV)、航続距離延長型(レンジエクステンダ)電気自動車(EREV)、バッテリ型電気自動車(BEV)、スポーツ用多目的自動車(SUV)、クロスオーバーSUV自動車、およびトラックを含む、オートマチックトランスミッション、マニュアルトランスミッション、または無段階変速可能トランスミッションを備えた任意のタイプの車両に本願に記載の方法およびシステムを用いることができる。1つの実施形態によれば、車両10は、図示も説明もしない数多くの構成部品、システム、および/またはデバイスの中でも、概略、複数のサブシステム12、複数の車両センサ14、および車両制御ユニット16(VCU16)を備える。
【0053】
車両10のサブシステム12は、図2に示すように車両に関するさまざまな機能および操作を制御するように構成され、数多くのサブシステムを備え、そのサブシステムとしては、ほんのいくつかの具体例を挙げると、たとえばパワートレインサブシステム12、シャーシ制御(またはシャーシ管理)サブシステム12、ブレーキサブシステム12、ドライブラインサブシステム12、およびステアリングサブシステム12がある。
【0054】
当業者に広く知られたように、パワートレインサブシステム12は、車両を推進するために用いられるパワーまたはトルクを生成するように構成されている。パワートレインサブシステムで生成されたトルク量を調整して、車両の速度を制御することができる(たとえば車両の速度を上げるためには、トルク出力を増大させる。)。異なるパワートレインサブシステムは異なる最大トルク出力能力を有し得るため、パワートレインサブシステムにより出力可能なトルク量は、特定のタイプまたは仕様のサブシステムに依存する。ただし1つの実施形態によれば、パワートレインサブシステム12の最大トルク出力能力は600Nmのオーダであってもよい。当業者に広く知られているように、パワートレインの出力トルクは、以下に説明する1つまたはそれ以上の車両センサ14(たとえばエンジントルクセンサおよびドライブライントルクセンサ等)、または他の適当な検出手段を用いて測定されるとともに、パワートレインサブシステム12に加え、たとえば限定されるものではないが、車両10の1つまたはそれ以上の構成部品、モジュール、またはサブシステムによりさまざまな目的で用いられる。当業者には理解されるように、パワートレインサブシステム12は、数多くのさまざまな実施形態で提供され、数多くの異なる構成で連結され、出力トルクセンサ、制御ユニット、および/または当業者に知られた任意の他の構成部品等の数多くの異なる構成部品を有していてもよい。たとえば1実施形態では、パワートレインサブシステム12は、1つまたはそれ以上の電気マシンを有し、たとえばブレーキサブシステムを利用して、または利用することなく、車両のパワートレインサブシステムおよび/または1つまたはそれ以上の車輪の一部に抑制トルクを負荷して、車両を減速させるように構成された発電機として動作可能な1つまたはそれ以上の電気マシンを有する。したがって本発明は、特定のパワートレインサブシステムに限定されるものではない。
【0055】
シャーシ管理サブシステム12は、数多くの重要な機能を実行し、その性能に貢献するように構成され、その機能として、いくつか例を挙げると、たとえばトラクション制御(TC)、ダイナミック制御システム(DSC)等の安定性制御システム(SCS)、ヒルディセント制御、およびステアリング制御に関するものがある。すなわち当業者に広く知られているように、さらにシャーシ管理サブシステム12は、後述の1つまたはそれ以上のセンサ14および/または車両サブシステム12から得た測定値、信号、または情報を用いて、車両のさまざまな態様または動作パラメータをモニタおよび/または制御するように構成されている。たとえばシャーシ管理サブシステム12は、各タイヤに付随した車両のタイヤ圧センサからタイヤ圧に関する測定値または他の情報を受信するように構成してもよい。すなわちシャーシ管理サブシステム12は、必要に応じてタイヤ圧をモニタし、この場合、車両に搭載されたエアコンプレッサを用いて、圧力を自動的に調整するようにしてもよい。同様に、シャーシ管理サブシステム12は、車両の周りに配置された1つまたはそれ以上のエアサスペンションセンサから得られた車両の最低地上高に関する測定値または他の情報を受信するように構成してもよい。こうした具体例において、シャーシ管理サブシステム12は、車両の最低地上高をモニタし、必要に応じて最低地上高をモニタし、この場合、車両に搭載されたエアコンプレッサ(サスペンションコンプレッサ)を用いて、最低地上高を自動的に調整するように構成してもよい。さらにシャーシ管理サブシステム12は、車両の姿勢をモニタするように構成してもよい。とりわけシャーシ管理サブシステム12は、後述する1つまたはそれ以上のセンサ14(ジャイロセンサおよび車両加速度センサ等)および/またはサブシステム12からの測定値または他の情報を受信して、車両(および/または特に車両本体)に関するピッチ、ロール、ヨー、横方向加速度、振動(大きさと振動数)を評価して、ひいては車両の全体的な姿勢を評価するように構成してもよい。各具体例において、これらの情報は、シャーシ管理サブシステム12のみで受信または決定されるものであってもよいし、択一的には、任意の目的で利用される他の車両サブシステム12または車両構成部品(たとえばVCU16)と共有されるものであってもよい。シャーシ管理サブシステム12がモニタおよび/または制御する車両の動作パラメータおよび/または動作態様に関するほんのいくつかの具体例が提供され、理解されるように、シャーシ管理サブシステム12は、任意の数多くの他のまたは追加的な車両の動作パラメータおよび/または動作態様を、上記説明した手法と同一または同様の手法でモニタおよび/または制御するように構成してもよい。すなわち本発明は、モニタおよび/または制御する動作パラメータおよび/または動作態様を特定のものに限定するものではない。さらに、理解されるように、シャーシ管理サブシステム12は、任意の数多くの異なる実施形態に関連して提供され、任意の数多くの異なるセンサ、制御ユニット、および/または当業者に知られた任意の他の適当な構成部品を有してもよい。すなわち本発明は、特定のシャーシ管理サブシステムに限定されるものではない。
【0056】
図1に示すように、ドライブラインサブシステム12は、その推進機構(たとえば図1の符号202で示すドライブラインサブシステム12のエンジンまたは電気モータ)の出力シャフトに機械的に連結された多段比トランスミッション(マルチレシオトランスミッション)またはギアボックス200を有する。トランスミッション200は、前輪ディファレンシャル204および一対の前輪ドライブシャフト206,206を介して車両10の前輪を駆動するように構成される。図示された実施形態では、ドライブラインサブシステム12は、同様に、補助ドライブシャフトまたは推進シャフト210、後輪ディファレンシャル212および一対の後輪ドライブシャフト214,214を介して車両10の後輪を駆動するように構成された補助ドライブライン部品208を備える。さまざまな実施形態において、ドライブラインサブシステム12は、前輪もしくは後輪のみを駆動するように構成されてもよく、または2輪駆動または4輪駆動を選択できるように構成してもよい。図1に示す実施形態では、トランスミッション200は、伝達ケースまたはパワー伝達ユニット216を介して補助ドライブライン部品208に着脱可能に接続され、2輪駆動操作または4輪駆動操作を選択することができる。特別の具体例では、当業者に知られたように、パワー伝達ユニット216は、ドライブラインサブシステム12自体および/またはVCU16等の別の車両構成部品により調整可能な高速回転(HI)ギア比または低速回転(LO)ギア比で動作するように構成されてもよい。当業者には理解されるように、ドライブラインサブシステム12は、任意の数多くの異なる実施形態に関連して提供され、任意の数多くの異なるセンサ(たとえばHI/LO比センサ。トランスミッションギア比センサ等)、制御ユニット、および/または当業者に知られた任意の他の適当な構成部品を有してもよい。すなわち本発明は、特定のドライブラインサブシステムに限定されるものではない。
【0057】
上述のサブシステムに加え、車両10は、たとえばブレーキサブシステム12およびステアリングサブシステム12等の任意の数多くの他のまたは追加的なサブシステムを備えてもよい。本発明の目的のために、上記各サブシステム12およびこれに対応する機能は、当業者にとって従来式のものである。すなわち、特定された各サブシステム12の構成および機能は当業者にとって明らかであるので、これらについては説明しない。
【0058】
1つの実施形態では、1つまたはそれ以上のサブシステム12は、少なくともある程度、VCU16により制御される。こうした実施形態において、これらのサブシステム12は、VCU16に電気的に接続され、通信して、車両の動作パラメータに関してVCU16にフィードバックし、VCU16から指令または命令を受信するように構成されている。パワートレインサブシステム12を一例とすると、パワートレインサブシステム12は、たとえばトルク出力およびエンジン速度もしくはモータ速度等の特定の動作パラメータに関する様々なタイプの情報を収集した後、その情報をVCU16に通信するように構成されている。この情報は、たとえば後述する1つまたはそれ以上の車両センサ14から収集してもよい。パワートレインサブシステム12は、たとえば状況変化がこうした変化(ブレーキペダル(図1のペダル18)またはアクセルペダル(図1のペダル20)による車両速度の増減が要求された場合等)を指示するものであるとき、VCU16からの命令を受信して、特定の動作パラメータを調整する。パワートレインサブシステム12を特に参照して上記説明したが、理解されるように、情報/命令をVCU16との間でやり取りするように構成された他のサブシステムに対して、同様の原理が適用される。
【0059】
各サブシステム12は、VCU16により提供される指令または命令を受信および実行し、および/またはVCU16とは独立した特定の機能を実行または制御するように構成された専用の制御ユニット(ECU)を有してもよい。択一的には、2つまたはそれ以上のサブシステム12が単一の専用制御ユニットを共用してもよい。サブシステム12がVCU16および/または他のサブシステム12と通信する実施形態では、たとえばコントローラエリアネットワーク(CAN)バス、システム管理バス(SMBus)、専有通信リンク、または当業者に知られた他の装置等の任意の適当な接続手段を用いて、こうした通信を支援してもよい。
【0060】
理解されるように、上記説明は、車両10に採用され得る特定のサブシステム、およびVCU16に付随するサブシステムの構成に関するいくつかの可能性を示したに過ぎない。したがって、その他のまたは追加的なサブシステムおよびサブシステム/VCU構成を備えた車両10の実施形態は、本発明の精神および範囲内に含まれることをさらに理解されたい。
【0061】
車両センサ14は、任意の数多くのさまざまなセンサ、構成部品、デバイス、モジュール、システム等を有してもよい。1つの実施形態では、いくつかのまたはすべてのセンサ14は、サブシステム12および/またはVCU16に、本発明に係る方法に用いられる情報または入力信号を提供することができ、VCU16、1つまたはそれ以上のサブシステム12、またはいくつかの車両10の他の適当なデバイスに(無線または有線で)電気的に接続され、これらと通信するように構成されている。センサ14は、車両10に関するさまざまなパラメータをモニタし、検知し、検出し、測定し、または決定するように構成され、これに限定されるものではないが、当業者に知られたものの中でも、たとえば車輪速度センサ、周辺温度センサ、大気圧センサ、タイヤ圧センサ、車両のヨー/ロール/ピッチを検出するジャイロセンサ、車両速度センサ、縦方向加速度センサ、エンジントルクセンサ、ドライブライントルクセンサ、スロットルバルブセンサ、ステアリング角センサ、ステアリングホイール速度センサ、勾配センサ、安定性制御システム(SCS)等に搭載される横方向加速度センサ、ブレーキペダル位置センサ、ブレーキペダル圧力センサ、アクセルペダル位置センサ、エアサスペンションセンサ(最低地上高センサ)、車輪位置センサ、車輪安定センサ、車両本体振動センサ、(水に浸かって走行(ウェイディング走行)する際の水溜りとの接近度および水溜りの深度の両方のための)水検知センサ、トランスファケースのHI/LO比センサ、吸気経路センサ、車両占有センサ、縦方向モーションセンサ、横方向モーションセンサ、および鉛直方向モーションセンサが含まれる。
【0062】
上述のセンサは、本発明に係る方法に用いることができる情報を提供する他の任意のセンサとともに、ハードウェア、ソフトウェア、またはこれらの組合せにより具現化してもよい。センサ14は、これらが提供される状況を直接的に検知または測定するか、または他のセンサ、構成部品、デバイス、モジュール、システム等により提供される情報に基づいて状況を間接的に評価してもよい。さらに、これらのセンサは、VCU16および/または1つまたはそれ以上の車両サブシステム12に直接的に接続されるか、または他の電子デバイス、車両通信バス、ネットワーク等を介して間接的に接続されるか、もしくは当業者に知られた他の装置を用いて接続されてもよい。いくつかの、またはすべてのセンサは、1つまたはそれ以上の上記車両サブシステム12に統合(一体化)されるか、独立した構成部品であるか、他の装置とともに提供されてもよい。最後に、本発明に係る方法に用いられる任意のさまざまなセンサの測定値は、実際のセンサ部品から直接的に提供されるのではなく、車両のいくつかの他の構成部品、モジュール、デバイス、サブシステム等により提供することができる。たとえばVCU16は、センサ14から直接的に所定の情報を受信する代わりに、サブシステム12の専用制御ユニット(ECU)から所定の情報を受信してもよい。理解されるように、車両10は特定のセンサまたはセンサ構成に限定されるものではなく、むしろ任意の適当な実施形態が用いられるので、上述の状況は、ほんのいくつかの可能性を示唆したものに過ぎない。
【0063】
車両制御ユニット(VCU)16は、任意の適当な専用制御ユニット(ECU)を備え、さまざまな電子処理デバイス、メモリデバイス、入出力(I/O)デバイス、および/または他の既知の構成部品を有し、さまざまな制御および/または通信に関する機能を実行する。1つの実施形態では、VCU16は、さまざまな情報、センサ測定値(車両センサ14による測定値等)、参照テーブルや他のデータ構造(後述する方法を実行するために用いられるもの等)、アルゴリズム(後述する方法で具現化されるアルゴリズム等)を記憶する電子メモリデバイス22を有する。1つの実施形態では、メモリデバイス22は、車両を制御して、後述する方法を実行するコンピュータ可読コードを担持する担持媒体を有する。メモリデバイス22は、車両10およびサブシステム12に関連する特徴および背景情報を格納できる。またVCU16は、ソフトウェア、ファームウェア、プログラム、アルゴリズム、スクリプト、アプリケーション等のための指令を実行する電子処理デバイス24(マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、カスタム集積回路(ASIC)等)を有してもよく、上記ソフトウェア等は、メモリデバイス22に格納され、本願にかかる方法を制御する。上述のように、VCU16は、好適な車両通信バスを介して、他の車両デバイス、モジュール、サブシステム、および構成部品(センサ等)に電気的に接続され、必要時または必要に応じて相互通信する。本願に記載されるVCU16により実行可能な機能に加え、特に、サブシステム12が上記説明したさまざまな機能において制御能力を有するように構成されない場合、VCU16がこれらの機能に対して制御能力を有する(責任がある)。ほんのいくつかのVCU16の可能性のある装置、機能、および性能を開示するが、当然に、他の実施形態も同様に利用することができる。特定の実施形態に依存するが、VCU16は、スタンドアローン型(独立型)の車両電子モジュールであってもよく、別の車両電子モジュール(上記説明した1つまたはそれ以上のサブシステム12等)に組み込まれるか、または含まれるものであってもよいし、当業者に知られた手法で配置および構成されたものであってもよい。すなわちVCU16は、特定の実施形態または配置構成に限定されない。
【0064】
上記説明した構成部品およびシステムに加え、1つの実施形態では、車両10は、1つまたはそれ以上の車両速度制御システムをさらに備える。さらに図2を参照すると、1つの実施形態では、車両10は、たとえばクルーズコントロールシステム26と、および低速推進(LSP)制御システム28とさらに備え、クルーズコントロールシステムは「高速道路」クルーズコントロールシステムまたは「オンロード」クルーズコントロールシステムとも呼ばれ、低速推進(LSP)制御システムは「非高速道路」クルーズコントロールシステムまたは「オフロード」クルーズコントロールシステムとも呼ばれる。
【0065】
「高速道路」クルーズコントロールシステム26は、当業者に広く知られた任意の数多くの従来式のクルーズコントロールシステムであってもよいが、ユーザにより設定された所望の「設定速度」に車両速度を自動的に維持するように動作可能である。こうしたシステムは、動作可能であるために、一般に、車両が所定の最低閾値速度(30マイル/時、すなわち50km/時)より大きな速度で走行する必要がある場合に限定して用いられる。すなわち、これらのシステムは、高速走行時、または少なくとも発進と停止の反復の頻度があまり多くない走行時の使用に特に適しており、車両を比較的に高速で走行させることができる。当業者に知られているように、「高速道路」クルーズコントロールシステム26は、システムの機能を実行および実施するように構成された専用のまたは独立型のECUを備えていてもよく、択一的には、(図2に示すように)クルーズコントロールシステム26の機能を車両10の別のサブシステム12(パワートレインサブシステム12等)に統合(一体化)してもよい。
【0066】
さらに当業者に知られたように、特定の実施形態では、クルーズコントロールシステム26は、そのシステム26(そのECU)をユーザが操作するために用いられる1つまたはそれ以上のユーザインターフェイスデバイス30を有してもよい。たとえばいくつかの例を挙げると、これらのデバイスを用いて、システム26を起動/停止し、システムの設定速度を設定および/または調整することができる。これらのデバイスのそれぞれは、任意の数多くの形態をとることができ、これに限定されるものではないが、たとえば1つまたはそれ以上のプッシュボタン、スイッチ、タッチスクリーン、視覚的ディスプレイ、スピーカ、ヘッドアップディスプレイ、キーパッド、キーボード、または任意の他の適当なデバイスであってもよい。追加的には、これらのデバイスは、車両キャビン内の任意の数多くの位置であって、ユーザに比較的に近い位置(ステアリングホイール、ステアリングコラム、ダッシュボード、中央コンソール等)に配置することができる。たとえば図3を参照すると、車両10のステアリングホイール(図1のステアリングホイール32)は、クルーズコントロールシステム26の複数のユーザインターフェイスデバイス(プッシュボタンの形態を有する)を用いて構成される。こうした1つのデバイスは、特定の手法で操作されたとき、クルーズコントロールシステム26の動作を起動し、所望の設定速度を設定できる「設定速度」ボタン30であってもよい。クルーズコントロールシステム26は、ユーザがシステムの設定速度を増減させることができるように、1つまたは他のユーザ選択可能なインターフェイスデバイス(ボタン等)をさらに有してもよい。たとえば「+」ボタン30は、ユーザが離散的な増加速度(たとえば1マイル/時(または1km/時))だけ設定速度を増大させ、「−」ボタン30は、ユーザが同一のまたは異なる離散的な減速速度だけ設定速度を低減させることができる。択一的には、「+」ボタン30および「−」ボタン30は、単一のユーザ選択可能デバイスに統合(一体化)してもよい。システム26の追加的なユーザ選択可能インターフェイスデバイスは、たとえばシステムを中断または停止させるための「キャンセル」ボタン30とともに、システム機能の一時的な中断または停止の後にシステムを再起動させる「再開」ボタン30を有してもよい。
【0067】
理解されるように、上記状況は、クルーズコントロールシステム26およびユーザインターフェイスデバイスのほんのいくつかの可能性を示すものに過ぎず、車両10は、特定のクルーズコントロールシステムまたはインターフェイスデバイスまたは装置に限定されることはなく、任意の適当な実施形態で用いることができる。
【0068】
低速推進(LSP)制御システム28は、たとえばこれを備えた車両のユーザが要求するペダル入力がなくても車両が推進できる非常に小さい目標速度または設定速度を選択することを可能にする速度制御システムを提供するものである。この低速推進制御機能は、クルーズコントロールシステム26の制御機能とは異なり、システムを動作可能状態とするために車両が比較的に大きな速度(30マイル/時(約50km/時))で走行している必要はない(ただし、LSPシステム28は、停車状態から約30マイル/時(約50km/時)までの速度または約30マイル/時より大きい速度での自動速度制御を支援するように構成してもよいが、「低速」操作に限定されるものではない。)。さらに既知の高速道路クルーズコントロールシステムは、たとえばユーザがブレーキペダルまたはクラッチペダルを踏み込んだときに、高速道路クルーズコントロール機能は解除され、車両はマニュアル操作モードに戻り、車両速度を維持するためにはユーザのペダル入力が必要となる。追加的に、少なくとも特定のクルーズコントロールシステムは、牽引力の損失を招くホイールスリップ事象が検出されると、クルーズコントロール機能を解除する機能を有していてもよい。LSP制御システム28は、少なくとも1つの実施形態において、上記事象に呼応して、その速度制御機能を解除または停止しない点においてクルーズコントロールシステムとは異なるものである。1つの実施形態では、LSP制御システム28は、とりわけオフロード走行または非高速道路走行での利用に適している。
【0069】
1つの実施形態では、LSP制御システム28は、可能性のある他の構成部品の中でも、(VCU16を備える場合、後に図示し、説明する実施形態および理由で)専用制御ユニット(ECU)42、および1つのまたはそれ以上のユーザ入力デバイス44を有する。ECU42は、さまざまな電子処理デバイス、メモリもしくは記憶デバイス、入出力(I/O)デバイス、および任意の他の既知の構成部品を有し、LSP制御システム28の任意の数多くの機能を実行することができる。すなわちECU42は、(車両センサ14、車両サブシステム12、ユーザ入力デバイス44等の)さまざまなソースから情報を受信し、その情報を評価し、分析し、および/または処理して、車両10の1つまたはそれ以上の動作態様を制御またはモニタするように構成してもよい。ECU42は、情報処理等により、たとえば車両に作用し、車両の加速/減速に影響を与える外力を検出し;車両加速時に加わる外力の影響を補償するために車両の1つまたはそれ以上の車輪に加わるトルクを自動的に調整し;車両10が走行中の地形のタイプおよび/または特性を判断するように構成してもよい。説明のため、および明確にするため、図2に示すようにVCU16がLSP制御システム28のECUを有する場合等、ECU42の機能がVCU16に統合または採用される実施形態に関して以下説明する。すなわちこのような実施形態では、VCU16およびそのメモリデバイス(メモリデバイス24等)または周辺デバイスは、特に、後述する方法を具現化するLSP制御システム28の機能を実行するために必要なさまざまな情報データ(所定の設定速度等)、センサ測定値、参照テーブルまたは他のデータ構造、アルゴリズム、ソフトウェア等を記憶する。
【0070】
上記説明した高速道路クルーズコントロールシステム26のように、LSP制御システム28は、このシステムとユーザとの相互作用ために用いられ、特定の実施形態では、ユーザが相互作用できる1つまたはそれ以上のユーザインターフェイスデバイス44をさらに有する。これらのデバイスを用いて、ユーザは、たとえばLSP制御システム28を起動し、停止させ、システムの設定速度を設定および/または調整し、複数の所定の設定速度のうちから所望の設定速度を選択し、2つまたはそれ以上の設定速度の間で切り換え、後述するようにLSP制御システム28と相互作用することができる。これらのユーザインターフェイスにより、LSP制御システム28は、所定の通知、警告、メッセージ、リクエスト等をユーザに提供することができる。これらのデバイスのそれぞれは、これに限定するものではないが、たとえばタッチスクリーン、可視化ディスプレイ、スピーカ、ヘッドアップディスプレイ、キーパッド、または他の任意の適当なデバイス等の任意の数多くの形態を有し得る。追加的に、これらのデバイスは、車両キャビン内の任意の数多くの位置に配置してもよく、ユーザに近接した位置(ステアリングホイール、ステアリングコラム、ダッシュボード等)に配置してもよい。1つの実施形態では、高速道路クルーズコントロールシステム26およびLSP制御システム28のユーザインターフェイスデバイス30,44はそれぞれ、車両内において互いに隣接して配置され、1つの実施形態では、車両10のステアリングホイール32上に配置される。しかしながら、別の実施形態では、たとえば本願に記載されたように、高速道路クルーズコントロールシステム26およびLSP制御システム28は、いくつかのまたはすべての同一のユーザインターフェイスを共有してもよい。こうした実施形態において、スイッチ、プッシュボタン、または任意の他の適当なデバイス等の追加的なユーザ選択可能デバイスを設けて、2つの速度制御システムを切り換えてもよい。すなわち図3に示す実施形態において、クルーズコントロールシステム26に関して上記説明したこれらのユーザインターフェイス30〜30は、LSP制御システム28の操作のために用いることができるので、システム28に関する説明において、ユーザインターフェイス44〜44とも呼ばれる。
【0071】
例示する目的で、後述するLSP制御システム28の機能に加え、1つの例示的な実施形態に係るLSP制御システム28の一般的な操作について以下説明する。第1に、本願の実施形態に係るVCU16は、車両が走行すべき所望の速度(以下、「所望の設定速度」という。)を決定する。これは、ユーザインターフェイスデバイス44を介してユーザにより選択された設定速度であってもよいし、択一的には、ユーザが関与することなく、VCU16は所定の条件または要因に基づいて所望の設定速度を自動的に決定または選択するように構成してもよい。いずれの場合でも、所望の設定速度を選択したことを受けて、VCU16は、パワートレイン、牽引コントロール、および/または車両の車輪に対するブレーキ操作を全体または個別に選択的に適用することにより、所望の設定速度に応じて車両を操作し、所望の設定速度を達成するか、維持するように構成されている。1つの実施形態では、これは、適当なサブシステム12(パワートレインサブシステム12およびブレーキサブシステム12等)に適当な命令を生成し、送信するステップ、および/またはたとえば、車両10の1つまたはそれ以上の構成部品、モジュール、またはサブシステムの操作を直接的におよび/または間接的に制御するステップを有するVCU16を備えたものであってもよい。
【0072】
とりわけ図4を参照すると、所望の設定速度が決定された後、車両シャーシまたはドライブラインに関連する(図4のセンサ14で示す)車両速度センサは、車両速度を示す信号をVCU16に送信する。1つの実施形態では、VCU16は、(図4の符号49で示す)所望の設定速度と、測定速度46とを比較するコンパレータ48を有し、比較結果を示す出力信号50を出力する。出力信号50は評価ユニット52に出力され、評価ユニットは、所望の設定速度を維持または達成するために車両速度を増大または低減させる必要があるかに依存して、たとえばパワートレインサブシステム12により車両の車輪に対する追加的なトルクを増大させるべき命令であるか、またはたとえばブレーキサブシステム12により車両の車輪に対するトルクを低減させるべき命令であるかを判断し、車両速度を増大または低減させる場合、所定の加速度プロファイル(加速度変化曲線)、加速度変化量(たとえば±0.1〜0.2G)、またはその両方に基づいてトルクを増減させるべき命令であるかを判断する。評価ユニット52からの出力信号54は、1つまたはそれ以上のサブシステム12に出力され、評価ユニット52から正または負のトルク要求に依存して、車輪に適用されるトルクを調整する。必要とされる正または負のトルクを車両に適用するために、評価ユニット52は、追加的なパワーを車両の車輪に加えるように命令し、および/またはブレーキ力を車両の車輪に加えるように命令し、いずれかの命令または両方の命令を用いて、所望の車両設定速度を達成または維持するために必要なトルクを増減させる。正および負のトルクを同期させて車輪に適用することは、車輪に対する正味のトルクを制御することであり、1つまたはそれ以上の車輪に生じるスリップ事象において特に、車両の安定性および快適性を維持し、各車軸に適用されるトルクを調整するように、LSP制御システム28により命令される。特別の実施例において、VCU16は、車輪に生じたスリップ事象を示す信号56を受信することができる。こうした実施形態では、車輪がスリップしている間、VCU16は、所望の設定速度で車両の速度を維持して、スリップ事象を管理調整するように、測定された車両速度を所望の設定速度と比較し続け、車両の車輪に適用されるトルクを自動的に制御し続ける。
【0073】
上記説明した機能に加え、1つの実施形態では、LSP制御システム28は、車両10が走行中の地形に関する情報(路面タイプ、地形の種別、地形または路面の凹凸等)を検出し、検知し、測定し、または決定するように構成されている。1つの実施形態によれば、VCU16は、この機能を実行し、数多くの手法で行うように構成してもよい。1つの手法は、2013年1月16日付けで公開された英国特許出願公開第2492748号に記載され、その内容の全体が参考としてここに一体に統合される。特に、1つの実施形態では、車両に関するさまざまな異なるパラメータに関する情報が、たとえば上記説明したいくつかのまたはすべてのセンサ14およびサブシステム12を含む複数の車両センサおよび/またはさまざまな車両サブシステムから送信または供給される。受信した情報は、評価され、1つまたはそれ以上の地形指標、特別の実施例では、地形の種別または凹凸等の1つまたはそれ以上の特徴を特定するために利用される。
【0074】
とりわけ、1つの実施形態では、速度制御システム(たとえばVCU16)は、推定モジュールの態様を有する評価手段を有してもよく、1つまたはそれ以上のセンサ14および/またはサブシステム12から取得し、受信した情報(以下総称して、「センサ/サブシステム出力信号」という。)が評価手段に出力される。推定モジュールの第1の段階において、センサ/サブシステム出力信号を用いて、数多くの地形指標が求められる。第1の段階では、車両速度が車両速度センサから求められ、車両加速度が車両速度センサから求められ、車両に加わる縦方向の力が車両縦方向加速度センサから求められ、(車輪スリップが生じた場合)車輪スリップが生じるトルクがパワートレイントルク信号、追加的にはもしくは択一的にはドライブラインサブシステム(たとえばトランスミッション)から出力されるトルク信号、およびヨー、ピッチ、ロールを検知するモーションセンサから求められる。推定モジュールの第1の段階で実施される他の計算には、車輪慣性トルク、「走行運転の連続性(たとえば岩石地形を走行しているときに生じ得るように、車両が突然に始動し、停止するか否かの評価)」、空気力学的抵抗、および車両の横方向加速度の計算が含まれる。
【0075】
推定モジュールは、以下の地形指標を計算する第2の段階を有する。すなわち地形指標には、(車輪の慣性トルク、車両の縦方向力、空気力学的抵抗、車輪の縦方向力に基づいた)表面転がり抵抗;(横方向加速度およびステアリングホイールセンサならびに/もしくはステアリングホイールセンサからの出力信号に基づいた)ステアリングホイールに対するステアリング力;(車輪の縦方向力、車輪加速度、縦方向スリップ、車輪加速度、安定性制御システム(SCS)の動作および車輪スリップが生じたか否かを示す信号に基づいた)車輪縦方向スリップ;(測定された横方向摩擦力および予想された横方向加速度およびヨーに対するヨーから計算された)横方向摩擦力;および凹凸検出(短い周期で鉛直方向に小さい振れで振動する場合には波状(洗濯板状)路面を示す。)が含まれる。SCS動作信号は、安定性制御システム(SCS)のECUからの複数の出力信号から求められ、動的安定性制御(DSC)機能、地形制御(TC)機能、アンチロックブレーキシステム(ABS)、およびヒルディセント制御(HDC)アルゴリズムを含み、DSC動作、TC動作、ABS動作、個々の車輪に対するブレーキ介入、およびSCSのECUからパワートレインに対するパワートレイントルク低減要求を示す。これらのすべての出力信号はスリップ事象が生じたこと、およびSCSのECUからスリップ事象を制御する動作を取ったことを示す。推定モジュールは、車輪速度センサからの出力信号を用い、4つの車輪に対して前後左右の各軸の出力信号を比較し、車両速度の変化を決定し、波(洗濯板)検出信号を決定する。
【0076】
1つの実施形態では、推定モジュールに加え、エアサスペンションセンサ(車高センサまたはサスペンション安定性センサ)および車輪加速度に基づいて地形凹凸を計算するための路面凹凸モジュールを設けてもよい。こうした実施形態において、凹凸出力信号の形態を有する地形指標信号が路面凹凸モジュールから出力される。
【0077】
車輪縦方向スリップおよび横方向摩擦力の推定値は、推定モジュール内で確度チェックとして互いに比較される。車輪速度変化および凹凸出力信号、路面転がり抵抗推定値、路面縦方向スリップ、および凹凸検出の計算は、摩擦力確度チェックとともに、推定モジュールから出力され、車両が走行している地形の特性を示す地形指標出力信号が出力された後、さらにVCU16により処理される。たとえば車両が走行している地形のタイプを示す地形指標に基づいて、複数の車両サブシステム制御モードのうちの最も適したものを決定して、適当なサブシステム12を自動的に制御することができる。
【0078】
別の実施形態では、上記説明した地形検知/検出機能を実行するLSP制御システム28ではなく、車両10の別の構成部品、モジュール、または(LSP制御システム28の機能を実行しない場合)たとえばVCU16等のサブシステム、シャーシ制御サブシステム12または別の適当な構成部品がその機能を実行するように適当に構成されてもよく、その他の実施形態は本発明の精神および範囲に含まれるものである。
【0079】
理解されるように、LSP制御システム28の上記説明した構成、機能、および性能は、具体例および説明のためにのみ提供されたものであって、本質的に限定しようとするものではない。すなわちLSP制御システム28は、任意の特定の実施形態または構成に限定されることを意図したものではない。
【0080】
繰り返しになるが、車両10に関する上記説明および図1ならびに図2は、1つの潜在的な車両装置を説明することのみを意図したものであり、通常の手法で説明するものである。図1および図2に示すものとは実質的に異なる任意の数多くの他の車両構成および車両構造を択一的に用いてもよい。
【0081】
ここで図5を参照すると、速度制御システムの操作(処理)を介して車両の速度を制御する方法100の具体例が図示されている。説明および明確性のため、図1および図2に示し、上記説明した車両10の文脈において方法100を説明する。とりわけ車両10の低速推進(LSP)制御システム28の文脈において方法100を説明する。LSPシステム28は、分かり易く説明するために、VCU16に統合されるものとして説明する(すなわちVCU16は車両10のLSP制御システム28のECU42を備える。)。ただし理解されるように、本発明に係る方法は、こうした構成のみに限定したことを意図したものではなく、(たとえば車両のVCUに統合されないもの、および/またはVCUが速度制御システムのECUを有さない場合等)たとえば上記以外のLSP制御システム、上述のクルーズコントロールシステム28等の特定の実施例に係る従来式「高速道路」クルーズコントロールシステム等の任意の数多くの他の速度制御装置に、この方法100は応用することができる。すなわち本発明は、任意の特定の装置または任意のタイプの制御システムに限定することを意図したものではない。したがって、理解されるように、この方法は、ステップの任意の特定の順序またはシーケンスに限定することを意図したものではない。
【0082】
1つの実施形態では、方法100は、車両の設定速度を変更し、最初の(すなわち現在の)設定速度から第2の目標設定速度に速度制御システムを変更する命令を受信するステップ102を有する。この命令は数多くのソースから受信することができ、このステップは数多くの手法で行うことができる。
【0083】
1つの実施形態では、ステップ102は、所望の目標設定速度に対応するユーザ入力信号を受信するステップを有する。こうした実施形態では、ユーザは、1つまたはそれ以上のユーザインターフェイスデバイス(ユーザインターフェイスデバイス44)を用いて目標設定速度を選択してもよい。このステップは、たとえば速度制御システムのメモリデバイス(VCU16のメモリデバイス22)または速度制御システムからアクセス可能なメモリデバイスに記憶された複数の所定の設定速度の中から目標設定速度を選択するステップを有するか、択一的には、1つまたはそれ以上のユーザインターフェイスデバイスを操作して、設定速度を目標設定速度に徐々に調整するステップを有してもよい。目標設定速度を1つまたはそれ以上の所定の設定速度から選択されるか、徐々に調整されるかに関わらず、速度制御システムは、ユーザが選択した設定速度を示す1つまたはそれ以上の電気信号を受信し、利用して、目標設定速度を決定する。
【0084】
理解されるように、上記説明したものの他の目標設定速度を選択または定義するステップは、たとえばブレーキペダルおよびアクセルペダルの一方または両方を上記説明した手法と同一または同様の手法で利用する上で適しており、本発明は、ユーザが目標設定速度を選択または定義する手段としての任意の特定の技術に限定されない。
【0085】
別の実施形態では、ユーザが手動で所望の速度を選択することを可能にすることに加えて、またはこれに代えて、ステップ102は、速度制御システムが自動的に目標設定速度を選択するステップを含んでもよい。とりわけ、いくつかの実施形態では、車両に関する1つまたはそれ以上の所定条件に基づいて、所望の設定速度を自動的に選択するステップを有する。こうした条件は、車両走行中の地形に関するものであってもよく、ステップ102は、現在の設定速度に関連しないか、現在の設定速度が不適切もしくは最適でない地形または地形特徴に車両が移動したと判断されたとき、新しい目標設定速度を自動的に選択するステップを有する。1つの実施形態では、このステップは、たとえば上記説明したものと同一または同様の手法で地形関連情報を取得または決定した後、設定速度を地形に関連付けるデータ構造(参照テーブル等)またはいくつかの他の地形/設定速度のプロファイル(相関)を用いて、その地形に関連付けられた1つまたはそれ以上の設定速度を決定するステップを含んでもよい。コンパレータまたは別の既知の技術を用いて、現在の設定速度と新しい地形に関連付けられた設定速度とを比較して、速度変更が必要か否か判断し、必要である場合には、適当な新しい設定速度を選択してもよい。別の実施形態では、上記説明した条件と協働して、またはこれらから独立して、他の条件を用いてもよく、他の条件は、たとえばこれに限定されないが、車両が現在操作している特定モード(地形モード等)、車両安定性(たとえば車両の横方向および縦方向の加速度、車両ドライブライン(トランスミッションまたはPTU)のギア比、最低地上高、ホイールアーティキュレーション、および車両座席占有状態等)に関する要因または条件を含む。したがって、理解されるように、任意の多数の条件/要因又はこれらの組合せをステップ102で評価し、利用することができ、本発明の精神および範囲に含まれる。1つの実施形態では、上記説明したステップ102の機能は、車両のVCU16または別の適当な構成部品であってもよい。
【0086】
過去に定義された最初の設定速度と目標設定速度との間で車両が加速または減速するときの車両速度を制御する場合とは異なり、方法100を用いて車両速度を維持する実施形態において、ステップ102は任意的なものであってもよい。したがって、方法100がステップ102を含まない実施形態は、本発明の精神および範囲に含まれる。
【0087】
ステップ102等で目標設定速度が選択されると、車両は、目標設定速度に基づいて操作され、1つの実施形態では、所望加速度と最大の所望加速度との間の範囲を含む加速度推移幅を有する所与のアクセルプロファイル(加速度変化曲線)に従って実行される。1つの実施形態では、加速度変化幅は、±0.1〜0.2Gのオーダであってもよい。1つの実施形態において一般的な用語として、目標設定速度に基づいた車両操作は、目標設定速度を示す1つまたはそれ以上の電気信号を生成するステップと、その1つまたはそれ以上の電気信号を適当な車両サブシステム(パワートレインサブシステム12等)に送信して、目標設定速度に合致するように車両を加速または減速させるステップとを有し、このステップは車両速度を目標設定速度に維持するステップ(たとえば、外力が車両速度を増大させ、減少させる場合、システムは1つまたはそれ以上の車輪の正味のトルクを変更して、車両を加速または減速させ、設定速度に戻す、または設定速度に合致させる。)、および/または車両速度を最初の設定速度から目標設定速度に増大または減少させるステップを含んでもよい。車両が比較的に平坦な地形および車両走行に対して最小限の転がり抵抗力を有する地形(平坦な舗装された道)の上を走行している場合、目標設定速度に一致するように車両速度を調整するプロセス、および所定または予定の加速度プロファイルおよび/または加速度変化幅に従ってプロセスを実行することは比較的に容易である。しかしながら、これは、車両を不必要に加速または減速させるように車両に作用する外力が働く環境で車両を走行させる場合には当てはまらない。たとえば図6は、坂道を上る車両10の2つの異なる位置A,Bを示す。位置A,Bの両方において、坂道を上る車両10の動きまたは進行を減速させる効果を有する重力が車両10に作用しており、位置Bの勾配が位置Aの勾配より急峻であるため、重力による作用は大きい。こうした事例において、外力に起因する加速または減速が、たとえばパワートレインサブシステムおよび/またはブレーキサブシステムにより車両の1つまたはそれ以上の車輪に適用されるトルクと組み合わされ、目標設定速度のオーバーシュート(目標設定速度を超えること)またはアンダシュート(目標設定速度に達しないこと)が車両に生じることがある。さらに車両に作用する他の外力を考慮せずに、車両を加速または減速させるために一定の割合でトルクを変化させると、スリップ事象が生じることがある。
【0088】
ステップ102において、たとえば設定速度を最初の設定速度からより小さい目標設定速度に減少させる場合を想定する。その結果、新しい目標設定速度まで車両を減速させるために必要な所定量の減速トルクを負荷し、所定のまたは予定の加速度プロファイル(加速度変化曲線)および/または加速度変化幅に従って減速トルクを適用するように、車両のブレーキサブシステム(および/または特定の実施形態では、パワートレインサブシステム)が命令される。しかし、(図6に示すように)車両が勾配を上っている場合、または設定速度を変更するように命令され、その目標設定速度に一致するように車両を減速させるときに大きな牽引力/大きな転がり抵抗力が加わる環境で走行している場合をさらに想定する。車両が上り坂を走行しているとき、重力は進行方向とは反対の方向に車両に対して作用するため、減速力が車両に作用する。車両が大きな牽引力/大きな転がり抵抗力が加わる環境で(砂地や泥地の上、または水に浸かりながら)走行しているとき、同様に、減速力が車両に作用する。いずれの場合も、この減速力と、たとえば1つまたはそれ以上の車輪に負荷する減速力とが組み合わされて、新しい目標設定速度に対してアンダシュートが生じる(目標設定速度に達しない)ことがあり、これは、数多くの理由において好ましくなく、これだけではないが、速度がより小さく、減速力が十分に大きいとき、車両が実際には進行方向とは逆の方向に勾配を下り(転がり落ち)、大きな牽引力/大きな転がり抵抗力が加わる地形(砂地や泥地、水中)で車両が立ち止まってしまうことがある。択一的には、アンダシュートが生じない場合であっても、減速トルクおよび外力の合力により、車両が所望の減速度を超える減速度で、またはユーザまたはドライバが予期した減速度より大きく減速し、ドライバにとって苛立ちの原因となることがある。
【0089】
別の実施形態において、車両が勾配を上っているとき、および/または大きな牽引力/大きな転がり抵抗力が加わる環境で走行しているとき、ただし、ステップ102において車両の設定速度を最初の設定速度からより高い目標設定速度に増大させる場合を想定する。その結果、車両のパワートレインサブシステムは、新しい設定速度に達するまで車両速度を増大させるために必要な所定量の駆動トルクを適用し、所定のまたは予定の加速度プロファイル(加速度変化曲線)および/または加速度変化幅に従って駆動トルクを適用するように命令される。車両が坂道を上り、および/または大きな牽引力/大きな転がり抵抗力が加わる環境で走行しているため、車両に減速力が作用する。この減速力が1つまたはそれ以上の車輪に加えられる駆動トルクにより生じる車両の加速力と組み合わされたとき、車両速度が新しい設定速度より小さくなるか、または加速度変化幅から外れてしまい、上記具体例で説明したものを含む数多くの不必要な効果が生じることがある。これにより、たとえば加速度がユーザ/ドライバが予期していたものより小さくなることがあり、車両制御に対する問題を生じさせるものではないが、ドライバの体感を向上させるものではなく、ドライバの苛立ちの原因となり得る。
【0090】
さらに別の実施例では、ここで車両が勾配を下っているか、車両に加速力が作用している環境で走行している場合を想定する。さらにステップ102において車両の設定速度を最初の設定速度からより高い目標設定速度に増大させる場合を想定する。その結果、車両のパワートレインサブシステムは、新しい設定速度に達するまで車両速度を増大させるために必要な所定量の駆動トルクを適用し、所定のまたは予定の加速度プロファイル(加速度変化曲線)および/または加速度変化幅に従って駆動トルクを適用するように命令される。重力その他に起因して車両に作用する加速力が1つまたはそれ以上の車輪に加えられる駆動トルクにより生じる車両の加速力と組み合わされたとき、車両速度のオーバーシュート(目標設定速度を超えること)が生じ、これに限らないが、ユーザを警戒させ、車両の安定性に悪影響を与える等、数多くの理由により好ましくない(不必要な)効果が生じることがある。
【0091】
最後に、さらに別の実施例では、車両が勾配を下るか、または加速力が車両に作用する環境において走行しているとき、ステップ102において車両の設定速度を最初の設定速度からより小さい目標設定速度に減速させる場合を想定する。その結果、車両のブレーキサブシステムは、新しい設定速度に達するまで車両速度を減少させるために必要な所定量の抑制トルクを適用し、所定のまたは予定の加速度プロファイル(加速度変化曲線)および/または加速度変化幅に従って減速トルクを適用するように命令される。重力その他に起因して車両に作用する加速力が1つまたはそれ以上の車輪に負荷される抑制トルクにより生じる車両の加速力と組み合わされたとき、車両速度が目標設定速度より小さくなるか、または加速度変化幅から外れてしまい、上記具体例で説明したものを含む数多くの不必要な効果が生じることがある。
【0092】
たとえば車両速度がある設定速度から別の設定速度に調整された場合または車両速度を目標設定速度に維持する場合、上記説明した状態を防止または少なくとも最小限に抑えて、ユーザ快適性ならびに車両安定性を改善し、および/または速度制御システムがより体感されるものとするために、車両に作用する外力に起因する加速度及び減速度を補償することが好都合である。
【0093】
したがって図5を参照すると、1つの実施形態に係る方法100は、車両を加速または減速させるように車両に対して加速効果または減速効果を与える外力を検出するステップ104を有する。すなわちステップ104は、車両を操作する外的環境の結果としての車両に作用する加速力または減速力を検出する。ステップ104は、数多くの手法により実施することができる。
【0094】
1つの実施形態では、車両10の縦方向加速度および1つまたはそれ以上の車輪に適用されるトルクは、所定のまたは予定の加速度プロファイルに基づいて考慮してもよい。とりわけ、標的設定速度に一致するように車両速度が調整された(増大または減少させた)とき、車両の縦方向加速度および1つまたはそれ以上の車輪に適用されるトルクは、駆動トルクであるか、減速トルクであるかに関わりなく、所定の加速度プロファイルに照らしてモニタされる。たとえば1つまたはそれ以上の車両センサ(縦方向加速度の場合には車輪速度センサ、縦方向加速度センサ、車両速度センサ等、トルクの場合にはトルクセンサ等)、1つまたはそれ以上の車両サブシステム12(パワートレインサブシステム12、ブレーキサブシステム12等)、および/または他の適当な車両の構成部品から得られた情報または測定値を用いて、車両の縦方向加速度および1つまたはそれ以上の車輪に適用されるトルクの両方がモニタされる。所与の適用トルクで、縦方向加速度が加速度プロファイルを追随し、加速度プロファイルに沿って移行するとき、車両は期待されるとおりに加速されるので、何らかの処理が行われることはない。しかし択一的に、車両の縦方向加速度が加速度プロファイルから逸脱する(または少なくとも予定された値以上、または所定時間以上、逸脱する)場合、または期待された加速度ではない場合、車両加速度に影響を与える外力が車両に作用していると判断するとことができる。たとえば、縦方向加速度が加速度プロファイルから期待される加速度を超えた場合、加速力が車両に作用している(たとえば車両が坂道を下っているか、車両に加速力を加えるような地形の上を走行している)と特定および検出することができる。逆に、縦方向加速度が加速度プロファイルから期待される加速度を下回る場合、減速力が車両に作用している(たとえば車両が坂道を上っているか、車両に減速力を加えるような大きな抵抗力を有する地形の上を走行している)と特定および検出することができる。1つの実施形態では、この機能は、VCU16により、PIDコントローラのソフトウェアとして具現化された処理の一部として実行され、とりわけ他の実施形態では、車両10の別の好適な構成部品により実行されてもよい。当業者により理解されるように、上記説明したもの以外の技術を同様に用いて車両に作用する外力の存在を検出することができる。これらの技術は、上記説明したものに加え、またはこれに代えて、さまざまな車両関連情報を利用することを含んでもよい。たとえば特定の実施形態では、車両の1つまたはそれ以上の操作パラメータに関連する情報は、評価され(たとえばそれぞれの閾値と比較され)、車両に作用する外力を検出するために用いられる。これらのパラメータは、これに限定するものではないが、いくつかの具体例を上げると、たとえば、タイヤ摩擦力、車輪速度、選択ギア比、ホイールアーティキュレーション、車両本体の姿勢(ピッチ等)に関するパラメータを含んでもよい。別の実施形態では、上記説明したものに加え、またはこれに代えた車両関連情報を評価し、用いてもよい。たとえば車両が走行中の地形に関する情報を用いてもよい。これは、たとえば特定の地形タイプ(砂地や草地の上、または水中)、地形の勾配、地形表面の凹凸等を含んでもよい。付随する車両関連情報を示す1つまたはそれ以上の電気信号を、たとえば1つまたはそれ以上の車両センサ(センサ14等)、1つまたはそれ以上の車両サブシステム(サブシステム12)、および/またはメモリデバイス(VCU16のメモリデバイス22)等から受信されてもよい。この情報は、その後評価され、従来技術を用いて外力の存在を検出するために用いてもよい。上記説明した実施形態と同様、この機能は、VCU16または車両10の別の適当な構成部品により実行してもよい。
【0095】
ステップ104において、加速効果または減速効果を有する外力が車両10に作用したことが検出された場合、方法100はステップ106に移行し、このステップは外力およびその効果を補償しようとする。特に、ステップ106は、車両に対する外力の加速効果/減速効果を補償して、より期待されたとおりに(たとえば所定の加速度プロファイルおよび/または加速度変化幅に従って)車両を加速または減速させ、オーバーシュートまたはアンダシュートを極力抑え、または排除するために、1つまたはそれ以上の車両車輪に適用される1つまたはそれ以上のトルクを調整するステップを有する。ステップ106は、数多くの手法で実行してもよい。
【0096】
1つの実施形態では、ステップ106で調整されるトルクの態様は、1つまたはそれ以上の車両車輪に適用される正味のトルクを構成する少なくとも1つの構成要素(構成トルク)が変更(増減)されるレート(トルク変化率またはトルク増減率)である。理解されるように、調整される正味のトルクの構成要素は、たとえばパワートレインサブシステムにより生成される駆動トルク;たとえばブレーキシステム、および/または車両が適当に構成されている場合、パワートレインサブシステム、ヒルディセント制御(HDC)システム、または別の適当な構成部品等により生成される減速トルク:またはこれらの両方である。したがって1つの実施形態では、ステップ106における調整は、正味のトルクの構成要素を調整するレートを増大または減少させるステップ、たとえば車両10の車輪に加わる駆動トルクおよび減速トルクの一方または両方を増大または減少させるステップを含んでもよい。トルクの割合を変化させる手法は、トルク変化の割合(トルク変化率またはトルク増減率)を増大または減少させるように機能する命令またはトルクにゲイン(利得)を与えることである。
【0097】
第1の状況において、(たとえば車両が勾配を下っていることに起因した)加速効果を有する外力が車両に作用し、車両速度が増大している場合を想定する。こうした実施形態では、車両に作用する外力が加速力であり、車両は新しい設定速度まで加速する必要があるので、車両に作用する力が減速力である場合に比して、正味トルクをあまり大きく増大させる必要はなく、パワートレインサブシステムが車両の車輪に加える正味トルクの増大させるレート(率)は、車両に作用する加速力を考慮して低減させてもよく、加速力が大きいほど、この割合をさらに小さくしてもよい。したがって、命令または適用された駆動トルクにゲイン(係数)を適用して、駆動トルクを増大させる割合を小さくして、これを反映させる信号をパワートレインサブシステムに送信してもよい。この事例では、適用されるゲインは、たとえば以下の実施例で後述するように、車両に作用する力が中立(ニュートラル)である場合に適用されるゲインより小さく、またはたとえば車両に作用する力が減速力である場合、より大きいレートが必要とされる。特別の実施例では、駆動トルクのレートを小さくすることに加え、またはそれに代えて、減速トルクが減少する低減レートを同様に小さくしてもよい。図7を参照すると、この状況を示す実施例が図示されている。図7において、軌跡(グラフ)Pは、時間の関数としての命令(命令された)パワートレイン駆動トルクPを反映するもので、異常な外力が作用することなく、車両が平坦な路面を走行している場合に相当するものである。軌跡(グラフ)Pは、時間の関数としての命令パワートレイン駆動トルクPを反映するもので、車両が坂道を下っており、時刻t=tにおいて設定速度を増大させるように要求されたものである。車両が平坦な地面を走行しているとき、または坂道を上っているときに適用されるゲインと比較して小さいゲインが、車両を加速させるための増大駆動トルクに対する命令に適用される。時刻t=tにおいて駆動トルク量が新しい目標設定速度の走行を維持するのに十分な量まで低減される。勾配が十分に急峻である場合、駆動トルクを増大させる必要はまったくなく、むしろ新しい目標設定速度まで車両を加速するように減速トルクを低減させるだけで十分である。このように、安定して進行させながら、ユーザの要求に素早く反応するように地形を考慮してもよい。
【0098】
別の実施例では、(たとえば車両が坂道を上っている場合や抵抗力の大きい地形の上を走っている場合等)車両に作用する減速効果を有する外力があった場合、および車両の設定速度を大きくした場合を想定する。こうした実施形態では、車両に作用する力が減速力であるか、または新しい設定速度まで車両を加速させる必要があるため、車両に作用する外力が加速力である場合より大きな駆動トルクが必要となる。すなわち、パワートレインサブシステムが車両車輪に対する駆動トルクを増大させるレートは、車両に作用する減速力を考慮して大きくし、外力が大きくなるほどレートもさらに大きくする必要がある。したがって、命令または適用された駆動トルクにゲインが適用されて、増大トルクを増大させるレートを大きくし、これに応じた信号をパワートレインサブシステムに送信してもよい。この実施例では、適用されるゲインは、上記実施例のように車両に作用する力が中立(ニュートラル)であるか、上述のように加速力を考慮して、より小さいトルク変化率を必要とする加速力である場合に加えられるゲインより大きくてもよい。特定の実施例では、駆動トルクのレートを大きくすることに加え、またはこれに代えて、減速トルクを小さくまたは減少させるレートを同様に大きくしてもよい。再び図7を参照すると、この状況を示す具体例が図示されている。図7に示し、上記説明したように、軌跡(グラフ)Pは、時間の関数としての命令パワートレイン駆動トルクPを反映するもので、異常な外力が作用することなく、車両が平坦な路面を走行している場合に相当するものである。軌跡(グラフ)Pは、時間の関数としての命令パワートレイン駆動トルクPを反映するもので、車両が坂道を上っており、時刻t=tにおいて設定速度を増大させるように要求されたものである。車両が平坦な地面を走行しているとき、または坂道を上っているときに適用されるゲインと比較して相当に大きなゲインが、車両を加速させるための増大駆動トルクに対する命令に適用される。時刻t=tにおいて駆動トルク量が新しい目標設定速度の走行を維持するのに十分な量まで低減される。
【0099】
さらに別の実施例において、車両に作用する減速効果を有する外力があり、かつ車両の設定速度を低減させようとする場合を想定する。こうした実施形態において、車両に作用する力が減速力であり、新しい設定速度まで車両を減速させる必要があるため、車両に作用する外力が加速力である場合より小さな駆動トルクが必要となる。すなわち、ブレーキサブシステム(および/または減速トルクを生成または負荷できる別のサブシステム、たとえばパワートレインサブシステム)が車両車輪に対する減速トルクを大きくするレートは、車両に作用する減速力を考慮して小さくし、減速力が大きくなるほどレートもさらに小さくする必要がある。したがって、命令または負荷された減速トルクにゲインが適用されて、減速トルクを大きくするレートを小さくし、これに応じた信号をブレーキサブシステムに送信してもよい。この実施例では、適用されるゲインは、たとえば車両に作用する力が中立(ニュートラル)であるか、加速力を考慮して、より大きいトルク変化率を必要とする加速力である場合に加えられるゲインより小さくてもよい。特定の実施例では、減速トルクのレートを小さくすることに加え、またはこれに代えて、駆動トルクを低減するレートを同様に小さくして、坂道で車両が転がり落ちることを防止するようにしてもよい。図7を参照すると、この状況を示す具体例が図示されている。図7において、軌跡(グラフ)Bは、時間の関数としての命令減速トルクまたは命令ブレーキトルクBを反映するもので、異常な外力が作用することなく、車両が平坦な路面を走行している場合に相当するものである。軌跡(グラフ)Bは、車両が坂道を上っており、設定速度を減少させるように要求されたときの時間の関数としての減速トルクまたはブレーキトルクBを示すものである。車両を減速させるために大きな減速トルクを要求するために、相当に小さいゲインが適用される。
【0100】
最後に、さらに別の実施例において、車両に作用する加速効果を有する外力があり、かつ車両の設定速度を低減させようとする場合を想定する。こうした実施形態において、車両に作用する力が加速力であるか、または新しい設定速度まで車両を減速させる必要があるため、車両に作用する外力が減速力である場合より大きな減速トルクまたはブレーキトルクが必要となる。すなわち、ブレーキサブシステム(および/または減速トルクを生成または負荷できる別のサブシステム、たとえばパワートレインサブシステム)が車両車輪に対する減速トルクを大きくするレートは、車両に作用する加速力を考慮して大きくし、外力が大きくなるほどレートもさらに大きくする必要がある。したがって、命令または負荷された減速トルクにゲインが適用されて、トルクを大きくするレートを大きくし、これに応じた信号をブレーキサブシステムに送信してもよい。この実施例では、適用されるゲインは、たとえば車両に作用する力が中立(ニュートラル)であるか、上述のように、より小さいトルク変化率を必要とする減速力である場合に加えられるゲインより大きくてもよい。特定の実施例では、減速トルクのレートを大きくすることに加え、またはこれに代えて、駆動トルクを低減するレートを同様に小さくしてもよい。再び図7を参照すると、この状況を示す具体例が図示されている。図7に示し、上記説明したように、軌跡(グラフ)Bは、時間の関数としての命令減速トルクまたは命令ブレーキトルクBを反映するもので、異常な外力が作用することなく、車両が平坦な路面を走行している場合に相当するものである。軌跡(グラフ)Bは、車両が坂道を下っており、設定速度を減少させるように要求されたときの時間の関数としての減速トルクまたはブレーキトルクBを示すものである。車両を減速させるための軌跡(グラフ)Bと比較したとき、に大きな減速トルクを要求するために、相当に大きいゲインが適用される。
【0101】
適用または命令されたトルク(駆動トルク、減速トルク、またはこれらのトルクであってもよい)の構成要素(構成トルク)にゲインが適用された実施形態において、適用された特定のゲイン(大きさ等)は数多くの手法で選択することができる。1つの実施形態では、速度制御システムの内蔵メモリ(VCU16のメモリ22等)または速度制御システムからアクセス可能なメモリに記憶された複数の所定のゲインのうちから1つのゲインを選択してもよい。これらのゲインは経験的に求められ、車両10の設計、製造、および/または実装の際にメモリデバイス内にプログラムしてもよい。1つの実施形態では、適用するために選択された特定のゲインは、車両に作用する外力の大きさに依存してもよい。したがって、1つの実施形態において、車両の縦方向加速度が所定または予定の加速度プロファイル(加速度変化曲線)から逸脱し、その逸脱度の大きさが外力の大きさと関連付けることができる場合、適用される特定のゲインを加速度プロファイルからの逸脱度の大きさに基づいて選択してもよい。したがって、1つの実施形態において、命令されたトルクの特定の構成要素に適用されたゲインは、逸脱度の大きさ、およびたとえば外力または加速度プロファイルからの逸脱とゲインとを関連付ける参照テーブル等のデータ構造を用いて決定してもよい。理解されるように、他の実施形態において、適用される特定のゲインを決定するための異なる技術を用いてもよい(たとえば、車両の加速度/減速度が予期された加速度/減速度により近づくまでゲインを徐々に増減させてもよく、または転がり抵抗、ピッチ、ヨー、ロール等を含む車両姿勢データ等の検出された車両データに基づいてゲインを決定してもよい。)。こうした異なる技術は、本発明の範囲に含まれるものである。
【0102】
車両10が坂道を上っており、たとえば速度制御システムがアクティブ状態にあるときにユーザが車両を停止または静止状態に操作する特定の実施例または状況において、速度制御システムは、車両が意図した進行方向とは逆の方向に坂道を転がり落ちることを防ぐように構成してもよい。とりわけ速度制御システムは、たとえばブレーキサブシステムまたはパワートレインサブシステム(減速トルクを負荷できるように構成された場合)から減速トルクの負荷を命令し、減速トルクの効果を適当なレベルの駆動トルクまたはエンジントルクに調和させる(減速トルクと駆動トルクとのバランスを取る)ように構成してもよい。速度制御システムは、さらなる支援のために、たとえば車両の坂道発進支援システムを動作状態(アクティブ状態)にするように構成してもよい。当業者に知られているように、坂道発進支援システムは、坂道発進時に、車両の不必要な動きを回避するためにパワートレインサブシステムから得られるトルクが十分であるときのみ、車両のブレーキを解除するように構成された自動ブレーキ機能である。換言すると、坂道発進支援システムは、車両が意図せずに坂道または勾配を後方へ移動することを防ぎ、または勾配上方へ発進できるような十分なトルクが生成されるまで車両を静止させるように動作可能である。したがって、速度制御システムは、車両を手動で停止させるときに、自動的に非動作状態(アクティブ状態)にされるのではなく、車両が不必要で意図しない勾配下方へ移動することを防止するように能動的に支援するものである。
【0103】
同様に、坂を上っているときに設定速度の低減を命令する特定の実施形態において、速度制御システムは、車両速度の低下率(すなわち減速度)では、車両が勾配を上方に移動し続けるための正味トルクをやがて十分に維持できなくなり、勾配を意図しない逆方向へ転がり落ちる可能性のあることを判断するように構成してもよい。たとえば車両の減速度が予定した加速度/減速度プロファイルおよび/または加速度/減速度推移から逸脱した場合、または少なくとも所定の閾値から逸脱した場合、進行を維持するための取るトルクが十分ではないと判断してもよい。このように判断されると、速度制御システムは、逆行を防ぐために車両10を静止させるために、たとえば車両ブレーキサブシステムまたは別の減速トルクソース(たとえば適当に構成されたパワートレインサブシステム、坂道発進支援システム等)から減速トルクを負荷するように動作可能であってもよい。すなわち速度制御システムは、ブレーキトルクまたは減速トルクを自動的に負荷するように命令してもよい。速度制御システムは、静止状態から(速度制御システムの所定の最低設定速度等の)新しい目標設定速度まで車両10を加速させる上で必要な十分な駆動トルクまたはエンジントルクを生成または発生させるようにパワートレインサブシステムを制御または命令してもよい。上記実施形態では、速度制御システムは、駆動トルク量が十分に生成されるまで、車両10を停止させ、静止させるものであり、理解されるように、他の実施形態に係る速度制御システムは、逆方向の走行を防ぐために、車両10を静止させる必要はない。
【0104】
したがって、車両が坂道を上り、設定速度の減少または低減が命令された実施例では、速度制御システムは、要求された設定速度の低減が車両の1つまたはそれ以上の車輪に適用される正味トルクの少なくとも1つの構成要素の変化率をもたらしたため、車両が坂道を上り続けるには正味トルクが不十分であると判断した場合、正味トルクの少なくとも1つの構成要素の変化率を小さくして、坂道発進支援システムもしくは車両の上記説明した同様の構成部品、またはこれらの両方を起動(アクティブ状態に)して、車両の坂道での下方移動を防止するように速度制御システムを構成してもよい。
【0105】
図8A図8Fを参照すると、上記説明した本発明に係るさまざまな態様がより十分に理解されるように、いくつかの又はすべての上記設類した態様の応用例を説明するために、数多くの非限定的な具体例または状況について以下説明する。
【0106】
図8Aおよび図8Bは、速度制御システムの操作手法を説明する実施例において、時間の関数としての特定の車両パラメータ値を概略的に示すものである。
【0107】
図8Aは、車両10がたとえば図6の位置Bにあって、相当に急峻な勾配を上っているときの時間の関数としての車両速度(v)を示すグラフである。時刻t=tのとき、車両10は速度vで走行している。また時刻t=tのとき、ユーザは、速度制御システムの設定速度vsetを時刻t=tから時刻t=tまでの期間で低減させるのに適当な所定量だけブレーキペダルを踏み込む。設定速度vsetの低減に応じて、速度制御システムは、車両速度vを新しい設定速度vsetに向かって減速するように、パワートレイン駆動トルク、および必要ならばブレーキトルクまたは減速トルクを制御する。すなわち設定速度vsetは、図8Aに示すように、実施された速度vの減速に応じて小さくなる。たとえば速度制御システムは、予定された加速度推移範囲(この具体例では±0.1G〜0.2Gの範囲に相当)での減速度を実現するように、たとえばパワートレインサブシステムおよびブレーキサブシステムを制御する。
【0108】
速度制御システムは、この期間中、アクティブ状態に維持され、速度制御システムの状態フラグFは、図8Bに示すようにF=1に設定される。
【0109】
図8Cおよび図8Dは、択一的な実施例に係る状況における図8Aおよび図8Bで示す車両パラメータの値を概略的に示すものである。
【0110】
とりわけ図8Cは、同様の相当に急峻な勾配を上っているときの時間の関数としての車両速度(v)を示すグラフである。時刻t=tのとき、車両10は速度vで走行している。また時刻t=tのとき、ユーザは、速度制御システムの設定速度vsetを時刻t=tから時刻t=tまでの期間で低減させるのに適当な所定量だけブレーキペダルを踏み込む。時刻t=tにおいて、設定速度が値vsetminに達したとき、ドライバはブレーキペダルを解放する。理解されるように、値vsetminは、許容可能な最小または最低の車両設定速度に相当するものである。いくつかの実施形態では、許容可能な最低設定速度は、およそ1〜3マイル/時(約1〜5km/時)または別の適当な値であってもよい。
【0111】
設定速度vsetが小さくなるのにつれて、設定速度システムは、車両速度vを新しい設定速度vsetminに向かって減速するように、パワートレイン駆動トルク、および必要ならばブレーキトルクまたは減速トルクを制御する。設定速度システムは、±0.1G〜0.2Gの予定された加速度推移範囲での減速度を実現するようにパワートレインサブシステムおよびブレーキサブシステムを制御する。
【0112】
図示された実施例では、速度制御システムは、予定された加速度推移範囲の変化率で車両速度vを減速させるために、ブレーキサブシステムを用いる必要はないと判断する。しかし図示した実施例では、車両速度vは、勾配が急峻であるため、新しい設定速度vsetminより小さくなる(アンダーシュート状況)。車両速度は設定速度vsetminより小さくなるが、速度制御システムは、車両速度を上げて設定速度vsetminに戻し、新しい設定速度vsetminで推移し続けるように制御する。図8Dから明らかなように、速度制御システムの状態フラグFは、設定速度の減速操作中、F=1に設定、維持される。換言すると、速度制御システムは、車両速度が値vsetminより小さくなっても、速度制御システムの設定速度が値vsetminより小さくなることはないので、車両の操作推移の制御を自動的に中断することはない。
【0113】
上記説明したいくつかの状況において、速度vの減速率(減速度)では、車両が坂道を上り続ける上で、やがてはトルクが十分でなくなると速度制御システムが判断することは可能である。このように判断されたとき、速度制御システムは、逆走を防止するために、車両基本ブレーキシステムを用いて車両を静止させるように動作可能である。すなわちブレーキトルクまたは減速トルクが自動的に負荷される。速度制御システムは、車両を静止状態から新しい設定速度vまで加速するために十分なトルクを発生させるようにパワートレインサブシステムを制御することもできる。
【0114】
図8Eおよび図8Fは、さらに別の実施例の状況における図8A図8Dの車両パラメータの値を概略的に示し、速度制御システムのさらなる操作を示すものである。この状況は、図8Cおよび図8Dに示す状況に類似するものであり、設定速度vsetが最小設定速度vsetminより小さくなった後にのみ、この実施例では、車両速度が図示された実施例でゼロになるまで小さくなった場合にのみ、ユーザがブレーキペダルを解放する点が図8Cおよび図8Dに示す状況とは異なる。
【0115】
図8Eは、車両10がたとえば図6の位置Bにあって、同様の相当に急峻な勾配を上っているときの時間の関数としての車両速度(v)を示すグラフである。時刻t=tのとき、車両10は速度vで走行している。また時刻t=tのとき、ユーザは、時刻t=tから時刻t=tまでの期間で、設定速度vsetを値vから値vsetminまで低減させるような相当に小さい圧力に相当する所定量だけブレーキペダルを踏み込む。時刻t=tにおいて、設定速度が値vsetminに達したとき、ユーザはブレーキペダルに対する小さい圧力を維持する。この実施例では、圧力の大きさは、比較的に小さいものであるが、ブレーキシステムを適用するのに十分なものであり、ブレーキシステムはブレーキトルクまたは減速トルクを車輪に負荷する。車両速度がゼロまで減速され、または値vsetminより小さい予定された値まで減速されると、速度制御システムは、時刻t=tにおいて、速度制御システムによる車両制御を無効化または停止することをユーザが希望していると認識する。このとき速度制御システムの状態フラグFはF=1からF=0に変更される。
【0116】
時刻t=tにおいて、ユーザはブレーキペダルを解放する。必要と判断されるならば、車両の逆走のリスクがある場合、これを防止するために、坂道発進支援システムまたは同様のものがブレーキシステムを起動(アクティブ状態に)する。時刻t=tにおいて、ユーザは、適当なユーザインターフェイスデバイス(たとえばユーザインターフェイスデバイス44)を操作することにより速度制御システムの操作を選択する。択一的には、ユーザが脚をブレーキペダルから持ち上げるか、または所定のユーザインターフェイスデバイスを操作したとき、速度制御システムは車両速度の制御を再開する。ユーザ入力に応じて、速度制御システムは、車両を静止状態から最低設定速度vsetminまで加速するように制御し、他の実施形態では、速度制御システムは、ユーザが過去に用いた、メモリ内に記憶されたユーザ定義された設定速度を選択することを許容してもよい。速度制御システムは、可能ならば予定された加速度推移範囲内で加速度を制御する。
【0117】
1つの実施形態では、ステップ106の機能はVCU16により実行してもよく、特に、たとえばそのソフトウェアに具現化されたPIDコントローラの一部の操作として実行してもよく、他の実施形態では車両10の別の適当な構成部品により実行してもよい。したがって本発明は、車両10の任意の1つの構成部品またはデバイスによるステップ106の性能に限定されるものではない。
【0118】
ステップ106で適用されるトルクの態様に調整がなされる場合、1つの実施形態に係る方法100は、その調整の後に終了し、たとえばステップ102において目標設定速度に対して新たな変更が命令された場合、繰り返し行われる。ただし別の実施形態では、方法100は反復的である。方法100が反復的である実施形態において、方法100は、ステップ106の後、ステップ104に元に戻り、この手法が上記説明したように反復される。こうした反復的または連続的プロセスを用いて、車両の速度調整において、所定のまたは予定の加速度プロファイルおよび/または所定加速度変化幅(たとえば±0.1G〜0.2G)に沿って精緻に制御して、ユーザの期待通りに制御することができる。このように、車両に作用する外力が既知であるとき、トルク変更の要求に応じて直接的にトルク変化率に対して調整を行う。
【0119】
上記説明から理解されるように、本発明に係るシステムおよび方法の利点は、中でも、たとえば最初の設定速度から目標設定速度に車両速度を変更する際に、車両を加速または減速させるように車両に作用する外力を検出して補償することができる点にある。その結果、外力が作用する場合であっても、車両の加速度もしくは減速度、または車両の設定速度の維持をより正確に制御して、設定速度のオーバーシュートまたはアンダーシュートを少なくとも最小限に抑えることができる。また、この加速度または減速度を、所定のまたは予定の加速度プロファイルおよび/または加速度変化幅により合致させることができ、車両安定性を維持または改善し、および/または車両ユーザのより期待通りのものとすることができる。
【0120】
理解されるように、上記説明した実施形態は、単なる具体例であって、本発明および添付したクレームに定義される発明の範囲を制限することを意図するものではない。本発明は、上記説明した特定の実施形態に限定されず、むしろクレームのみにより定義されるものである。さらに上記説明に含まれる記載は、特定の実施形態に関し、本発明の範囲または、用語または記載が明確に定義されている場合を除いて、クレームで用いられる用語の定義を減縮するように解釈すべきでない。開示された実施形態に対する他のさまざまな実施形態、変形例、および変更例が当業者にとっては明らかである。たとえば、複数のステップの組み合わせおよび順序は、単なる1つの可能性であって、本発明に係る方法は、ここに開示したステップより数少ない、または数多いステップの組み合わせを含んでもよい。こうした他の実施形態、変形例、および変更例のすべては、添付クレームの範囲に含まれることを意図したものである。
【0121】
明細書およびクレームで用いられた「たとえば(for example)」、「たとえば(e.g.)」、「たとえば(for instance)」、「等(such as)」、ならびに「等(like)」の用語、「備える(comprising)」、「有する(having)」、ならびに「有する(including)」の動詞、および他の動詞形態を用いて、1つまたはそれ以上の構成部品または他の物品を列挙する場合、オープン形式の意味を有するものであって、列挙されたものは、他の追加的な構成部品または物品を排除すると解釈すべきではない。さらに、「電気的に接続された(electrically connected)」もしくは「電気的に接続された(electrically coupled)」およびこれらの変形は、無線式の電気接続と、1つまたはそれ以上のワイヤ、ケーブル、または導電体(ワイヤ接続)を介した電気接続の両方含むことを意図したものである。他の用語は、異なる解釈を必要とする文脈で用いられる場合を除き、合理的に最も広い意味で解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0122】
10…車両、12…サブシステム、12…パワートレインサブシステム、12…シャーシ制御(またはシャーシ管理)サブシステム、12…ブレーキサブシステム、12…ドライブラインサブシステム、12…ステアリングサブシステム、14…車両センサ、16…車両制御ユニット(VCU)、18…ブレーキペダル、20…アクセルペダル、24…電子処理デバイス、26…クルーズコントロールシステム、28…低速推進(LSP)制御システム、30…ユーザインターフェイスデバイス、32…ステアリングホイール、42…制御ユニット(ECU)、44…ユーザ入力デバイス、46…測定速度、48…コンパレータ、50…出力信号、52…評価ユニット、54…出力信号、200…トランスミッションまたはギアボックス、204…前輪ディファレンシャル、206…前輪ドライブシャフト、208…補助ドライブライン部品、210…推進シャフト、212…後輪ディファレンシャル、214…後輪ドライブシャフト、216…パワー伝達ユニット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F