(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095797
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】光データ伝送の方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/516 20130101AFI20170306BHJP
H04L 27/34 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
H04B10/516
H04L27/34
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-548355(P2015-548355)
(86)(22)【出願日】2013年12月9日
(65)【公表番号】特表2016-506665(P2016-506665A)
(43)【公表日】2016年3月3日
(86)【国際出願番号】EP2013075900
(87)【国際公開番号】WO2014095445
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2015年8月14日
(31)【優先権主張番号】12306617.7
(32)【優先日】2012年12月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391030332
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルノーディエ,ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】リオ・ミューラー,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】シャルレ,ガブリエル
【審査官】
川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−155749(JP,A)
【文献】
特開2008−085942(JP,A)
【文献】
特開2005−086593(JP,A)
【文献】
特開2012−119759(JP,A)
【文献】
特表2011−527026(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/061784(WO,A1)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光データ伝送の方法であって、
データビットに依存し、2つ以上のコンスタレーション方式に従って光信号を変調することにより、前記データビットをデータシンボルの形で伝送するステップを含み、
前記光信号を第1のコンスタレーション方式に従って変調することにより、偶数個のデータビットを含むデータビットの組をそれぞれ表す第1のデータシンボルを生成するステップと、
前記光信号を第2のコンスタレーション方式に従って変調することにより、奇数個のデータビットを含むデータビットの組をそれぞれ表す第2のデータシンボルを生成するステップと、
前記第1および前記第2のデータシンボルが時間でインターリーブされるように、前記第1および第2のデータシンボルを既定のシンボル伝送速度で生成するステップと
をさらに含む、方法。
【請求項2】
前記第1のデータシンボルを、第1のパワーレベルで伝送するステップと、
前記第2のデータシンボルを、第2のパワーレベルで伝送するステップとをさらに含み、
前記第1および前記第2のパワーレベルのパワー比が既定の値に選択される、請求項1に記載の光データ伝送の方法。
【請求項3】
前記第1のデータシンボルが、それぞれN個のデータビットの組を表し、Nが偶数であり、
前記第2のデータシンボルが、それぞれN+1個のデータビットの組を表す、
請求項1または2に記載の光データ伝送の方法。
【請求項4】
前記第2のパワーレベルが前記第1のパワーレベルより約4dB高くなるように、前記第1および前記第2のパワーレベルの前記パワー比が選択される、請求項2に記載の光データ伝送の方法。
【請求項5】
前記光信号が第1の偏光面にある第1の光信号であり、
前記第1の偏光面と直交する第2の偏光面にある光信号である第2の光信号を、前記データビットに依存し、前記2つ以上のコンスタレーション方式に従って変調することにより、前記データビットをデータシンボルの形で伝送するステップをさらに含む、請求項2に記載の光データ伝送の方法であって、
前記第2の光信号が前記第1の偏光面と直交する第2の偏光面にある光信号であり、
前記第2の光信号を前記第2のコンスタレーション方式に従って変調することにより、前記奇数個のデータビットを含むデータビットの組をそれぞれ表す第3のデータシンボルを生成するステップと、
前記光信号を前記第1のコンスタレーション方式に従って変調することにより、前記偶数個のデータビットを含むデータビットの組をそれぞれ表す第4のデータシンボルを生成するステップと、
前記第3および前記第4のデータシンボルが時間でインターリーブされるように、前記第3および前記第4のデータシンボルを前記既定のシンボル伝送速度で生成するステップとをさらに含み、
前記第1のデータシンボルおよび前記第3のデータシンボルがそれぞれ同じ時刻に伝送され、前記第2のデータシンボルおよび前記第4のデータシンボルがそれぞれさらに同じ時刻に伝送されるよう前記データシンボルが伝送される、請求項2に記載の光データ伝送の方法。
【請求項6】
前記第3のデータシンボルを、前記第2のパワーレベルで伝送するステップと、
前記第4のデータシンボルを、前記第1のパワーレベルで伝送するステップとをさらに含み、
前記第1および前記第2のパワーレベルのパワー比が既定の値に選択される、請求項5に記載の光データ伝送の方法。
【請求項7】
前記第3のデータシンボルが、それぞれN+1個のデータビットの組を表し、
前記第4のデータシンボルが、それぞれN個のデータビットの組を表す、
請求項5または6に記載の光データ伝送の方法。
【請求項8】
前記第2のパワーレベルが前記第1のパワーレベルより約4dB高くなるように、前記第1および前記第2のパワーレベルの前記パワー比が選択される、請求項6に記載の光データ伝送の方法。
【請求項9】
データビットに依存し、2つ以上のコンスタレーション方式に従って光信号を変調することにより、前記データビットをデータシンボルの形で伝送するよう動作可能な光データ伝送装置であって、
前記光信号を第1のコンスタレーション方式に従って変調することにより、偶数個のデータビットを含むデータビットの組をそれぞれ表す第1のデータシンボルを生成し、
前記光信号を第2のコンスタレーション方式に従って変調することにより、奇数個のデータビットを含むデータビットの組をそれぞれ表す第2のデータシンボルを生成し、
前記第1および前記第2のデータシンボルが時間でインターリーブされるように、前記第1および前記第2のデータシンボルを既定のシンボル伝送速度で生成することにより変調を行う、光データ伝送装置。
【請求項10】
前記光信号が第1の偏光面にある第1の光信号であり、
さらに前記データビットに依存し、前記2つ以上のコンスタレーション方式に従って第2の光信号を変調することにより、前記データビットをデータシンボルの形で伝送するように動作可能な、請求項9に記載の光データ伝送装置であって、
前記第2の光信号が前記第1の偏光面と直交する第2の偏光面にある光信号であり、
前記第2の光信号を前記第2のコンスタレーション方式に従って変調することにより、前記奇数個のデータビットを含むデータビットの組をそれぞれ表す第3のデータシンボルを生成し、
前記光信号を前記第1のコンスタレーション方式に従って変調することにより、前記偶数個のデータビットを含むデータビットの組をそれぞれ表す第4のデータシンボルを生成し、
前記第3および前記第4のデータシンボルが時間でインターリーブされるように、前記第3および前記第4のデータシンボルを前記既定のシンボル伝送速度で生成することにより変調を行い、
前記第1のデータシンボルおよび前記第3のデータシンボルがそれぞれ同じ時刻に伝送され、前記第2のデータシンボルおよび前記第4のデータシンボルがそれぞれさらに同じ時刻に伝送されるよう前記データシンボルを伝送する、請求項9に記載の光データ伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光データ伝送の方法および光データ伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
データを伝送するための、最近の重要な解決策は、光データ伝送に頼ることである。データビットを伝送するには、1つまたは複数のシンボルを、光伝送信号を使用して伝送してもよく、ここでデータシンボルは1組のデータビットを表す。
【0003】
シンボルは、データシンボルとも呼ばれ、光搬送波信号の位相および/または振幅を、このシンボルにより表されるデータビットの組に依存して変調することにより伝送される。光搬送波信号の変調は、それぞれの変調フォーマットのコンスタレーション方式に従って行われる。
【0004】
位相変調に頼る変調フォーマットの1つの重要な候補は、二相位相シフトキーイング(BPSK)のフォーマットである。BPSKでは、光搬送波信号の位相が、2つの離散した位相値のうち1つの値をとるように変調される。よって、BPSKでは、1つのシンボルは1つのデータビットを表す。
【0005】
位相変調を行う変調フォーマットの、もう1つの重要な候補は、四相位相シフトキーイング(QPSK)であり、四相振幅変調(4QAM)とも呼ばれる。QPSKでは、光搬送波信号の位相は、4つの離散した位相値のうち1つをとるように変調される。よって、QPSKでは、1つのシンボルは、伝送される2つのデータビットを表す。
【0006】
もう1つの重要な変調フォーマットの候補は8QAMで、この場合は、光搬送波信号の位相および振幅がデータビットの組に依存して変調され、データビットの組はデータシンボルで表される。光搬送波信号の位相および振幅は、対応するコンスタレーション方式の8つの離散した値のうち1つをとるように変調される。よって、8QAMでは、1つのシンボルは3つのデータビットを表す。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】W.A.Sethares、G.A.ReyおよびJr.C.R.Johnson、「Approach to Blind Equalization of Signal with Multiple Modulus」、IEEE Proc.、ICASSP、1989年4月、972−975頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
光データ伝送の方法を提案する。提案される方法では、データビットに依存し、2つ以上のコンスタレーション方式に従って光信号を変調することにより、データビットがデータシンボルの形で伝送される。
【0009】
データビットは、偶数個のデータビットを含むデータビットの組をそれぞれ表す第1のデータシンボルを生成することにより伝送される。第1のデータシンボルは、光信号を第1のコンスタレーション方式に従って変調することにより生成される。
【0010】
さらに、データビットは、奇数個のデータビットを含むデータビットの組をそれぞれ表す第2のデータシンボルを生成することにより伝送される。第2のデータシンボルは、光信号を第2のコンスタレーション方式に従って変調することにより生成される。
【0011】
好ましくは、光信号は光搬送波信号である。
【0012】
第1および第2のデータシンボルは既定のシンボル伝送速度で生成され、第1および第2のデータシンボルが時間でインターリーブされる。
【0013】
提案される方法の利点を把握するために、以下の態様を考慮することが必要である。
【0014】
1つのデータシンボルが特定数のデータビットを表す特定の変調フォーマットを使用してデータビットを伝送し、特定のシンボル伝送速度で伝送を行うとき、データ伝送は、結果として得られるそれぞれのデータ伝送速度で行われる。伝送のデータ伝送速度を向上したいが、同時に同じシンボル伝送速度を維持したい場合は、向上したデータ伝送速度でのデータ伝送を、対応する、より多くのコンスタレーション点をもつコンスタレーション方式での変調フォーマットが使用されるように行われなければならない。コンスタレーション点が増加することにより、1つのデータシンボルが表すデータビットの数も増加する。
【0015】
対応する特定数のコンスタレーション点をもつ、ある特定の変調フォーマットと、より多くのコンスタレーション点をもつ別の特定の変調フォーマットの転送能力を比較すると、後者の変調フォーマットでのコンスタレーション点相互の距離は、前者の変調フォーマットでのコンスタレーション点相互の距離に比べて減少している。よって、後者の変調フォーマットは、光伝送信号に影響するノイズアーティファクトなどのアーティファクトに影響されやすい。
【0016】
したがって、受信側で同じビット誤り率を達成しようとする場合、光伝送距離が長くなるにつれて伝送アーティファクトが増加するので、より多くのコンスタレーション点をもつ後者の変調フォーマットの使用は、前者の特定変調フォーマットと比較して短い光伝送範囲でのみ適切に動作する。この効果は、範囲縮小とも呼ばれる。
【0017】
例えば、前述したように光搬送波信号を介してシンボルの形でデータを伝送しようとする場合、特定のビット誤り率のためにカバーすべき必要な伝送距離は、例えば4QAMなどの特定の第1の変調フォーマットでカバーできる最大伝送距離より短いことがある。同時に、この伝送距離は、例えば8QAMなどの第2の変調フォーマットでカバーできる最大伝送距離より長いこともある。その結果、カバーすべき伝送距離が、例えば4QAMなどの第1の変調フォーマットによってカバーできる最大伝送距離よりも短いにもかかわらず、第1の変調フォーマットが使用されることになる。例えば8QAMなどの第2の変調フォーマットでは、対応するコンスタレーション方式のコンスタレーション点は、より伝送アーティファクトに影響されやすく、ビット誤り率が許容最大ビット誤り率を超えることになるので、第2の変調フォーマットを使用するデータ伝送は実現不可能である。
【0018】
換言すれば、すべてのデータシンボルの伝送に、対応するコンスタレーション方式をもつただ1つの変調フォーマットが使用されるデータ伝送に頼る場合は、特定の粒度で第1と第2の変調フォーマットの間を切り替わる可能性のみがある。所与の例では、第1の変調フォーマットが4QAMで第2の変調フォーマットが8QAMであり、この粒度は4QAMの2ビットから8QAMの3ビットへの増加により与えられ、これは50%すなわち1.5倍のデータ増加に等しい。
【0019】
本明細書で提案される方法は、光データ伝送において、すべてのデータシンボルの伝送に同じ変調フォーマットを使用するという原理から離れる。その代わり、第1のデータシンボルが、第1の変調フォーマットの第1のコンスタレーション方式に従って生成され、第2のデータシンボルが、第2の変調フォーマットの第2のコンスタレーション方式に従って生成され、ここで第1の変調フォーマットは第2の変調フォーマットとは異なっており、結果として得られる第1および第2のデータシンボルはインターリーブされる。第1のデータシンボルは偶数個のデータビットを表し、第2のデータシンボルは奇数個のデータビットを表す。
【0020】
獲得される利点は、データ伝送に変調フォーマットを混在させて使用することにより、データ伝送の異なる粒度を増加させられることである。詳細には、前述の例に関係して、第1のコンスタレーション方式をもつ第1の変調フォーマットは4QAMのフォーマットでもよく、その場合、第1のデータシンボルは2つのデータビットを表す。第2のコンスタレーション方式をもつ8QAMの第2の変調フォーマットでは、第2のデータシンボルは3つのデータビットを表す結果になる。よって、1つのデータシンボルが2つのデータビットを表す、ただ1つの4QAMの変調フォーマットを使用するデータ伝送と比較して、データ伝送速度は1.25倍に向上する。
【0021】
提案される方法は、より細かい粒度でデータ伝送速度を向上させるという利点をもつだけではなく、提案されるデータ伝送は平均して、コンスタレーション方式の次に多くのコンスタレーション点をもつ次に高位な変調フォーマットを使用してデータを伝送する場合ほどには伝送アーティファクトの影響を受けにくい。所与の例では、本明細書で提案される、交互に入れ替わる2つの異なる変調フォーマット4QAMおよび8QAMのデータシンボルをもつデータ伝送は、変調フォーマット8QAMのみを使用するデータ伝送ほどには、例えば交差位相変調やその他のアーティファクトなどの伝送アーティファクトに影響されにくい。よって、提案される方法によって達成され得るカバー可能な伝送距離は、次に高位な変調フォーマットを利用することによるカバー可能な伝送距離より長いが、この例では4QAMである最初の変調フォーマットによってカバー可能な伝送距離よりは短く、データ伝送速度は向上する。
【0022】
よって、提案される伝送方法では、より高位な変調フォーマットを利用するデータ伝送ではカバーできない可能性のある特定の伝送距離にわたる伝送について、データ伝送速度を向上させることができる。同時に、提案される伝送方法では、例えば4QAMなどの最初の変調フォーマットを利用する伝送よりも高いデータ伝送速度が達成される。よって、提案される伝送方法では、より粒度の細かいデータ伝送速度の光データ伝送および、より細かいカバー可能な伝送距離の粒度が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施形態による、提案される光データ伝送装置を示す図である。
【
図2】第1および第2のデータシンボルを示す図である。
【
図3】異なる変調フォーマットのコンスタレーション方式を示す図である。
【
図4】さらに別の実施形態による、提案される光データ伝送装置を示す図である。
【
図5a】時間を合わせたデータシンボルのインターリーブおよび、異なって偏光された光信号の異なる偏光面を示す図である。
【
図5b】時間を合わせたデータシンボルのインターリーブおよび、異なって偏光された光信号の異なる偏光面を示す図である。
【
図5c】時間を合わせたデータシンボルのインターリーブおよび、異なって偏光された光信号の異なる偏光面を示す図である。
【
図7】異なるコンスタレーション方式に対する達成可能なビット誤り率を示す図である。
【
図8】異なる伝送方法に対する結果のQ
2値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、提案される光伝送装置OTDを示す。装置OTDは符号化ユニットEUを備え、このユニットは情報ビットIBを受信し、情報ビットIBをデータビットDBの列に符号化する。データビットDBは、シリアライザSERによりデータビットの組に分割されてから、ビットからシンボルへのマッピングユニットMAPに提供される。ある時刻に、シリアライザSERは、偶数個のデータビットを含むデータビットの組を提供する。次に続く時刻に、シリアライザSERは、奇数個のデータビットを含むデータビットの組を提供する。好ましくは、最初の組にはN個のデータビットが含まれ、ここでNは偶数であり、次に続く組にはN+1個のデータビットが含まれる。
【0025】
ある時刻から次の時刻の間に、シリアライザSERにより提供されるそれぞれのデータビットの組は、データビットの数が交互に偶数個と奇数個に切り替わる。マッピングユニットMAPは、提供されたデータビットの組をそれぞれの変調フォーマットのそれぞれのシンボルにマッピングする。最初の時刻に、マッピングユニットMAPは第1のデータシンボルを生成し、このシンボルは偶数個のデータビットを含む第1の組を表す。次の時刻に、マッピングユニットMAPは第2のデータシンボルを生成し、このシンボルは奇数個のデータビットを含む第2の組を表す。マッピングユニットMAPは、直交信号成分QXおよび同相信号成分IXをそれぞれ生成することによって、データシンボルを生成する。信号成分QXおよびIXは、好ましくはデジタル値であり、次にデジタル−アナログ変換器DACによって、それぞれ電気的成分QXEおよびIXEに変換される。変調ユニットMODは、光信号生成ユニットOSGにより提供される光搬送波信号OCSを、信号成分QXEおよびIXEを使用して変調する。よって、装置OTDは、光信号OCSを第1のコンスタレーション方式に従って変調することによって第1のデータシンボルを生成し、装置OTDはまた、光信号OCSを第2のコンスタレーション方式に従って変調することによって第2のデータシンボルを生成する。変調結果の光信号OSは、次に光インタフェースOIFに提供される。
【0026】
次に、第1および第2のデータシンボルの生成について、
図2を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
図2は、
図1に関して説明した装置により生成される、データシンボルS1、…、S8からなるシリーズSER1を示す。データシンボルS1、…、S8は、それぞれの時刻t1、…、t8に生成される。
図2は、これらのシンボルS1、…、S8の時間tにわたるパワーPを示す。
【0028】
図1のシリアライザSERが、最初の時刻t1に、この例では2個のデータビットである偶数個のデータビットをマッピング装置MAPに提供するので、マッピング装置MAPは第1のデータシンボルS1を生成し、このシンボルは偶数個のデータビットを含むデータビットの組を表す。さらに、シリアライザSERが、この例では3個のデータビットである奇数個のデータビットをもつデータビットの組をマッピング装置MAPに提供するので、装置MAPは、奇数個のデータビットを表す第2のデータシンボルS2を生成する。
【0029】
シリアライザSERは、連続する時刻t1、…、t8にわたって偶数個のデータビットと奇数個のデータビットの間を交互に切り替わる。並行して、マッピング装置MAPもまた、連続する時刻t1、…、t8の間で使用する変調フォーマットを交互に切り替える。このことにより、時間でインターリーブされた第1のデータシンボルS1、S3、S5、S7および第2のデータシンボルS2、S4、S6、S8が生成される。
【0030】
図2に示す例では、第1のデータシンボルS1、S3、S5、S7を生成するために使用される、対応する第1のコンスタレーション方法をもつ第1の変調フォーマットは4QAMのフォーマットであり、第1のデータシンボルS1、S3、S5、S7の1つは2個のデータビットを表す。さらに、第2のデータシンボルS2、S4、S6、S8を生成するために使用される、対応する第2のコンスタレーション方法をもつ第2の変調フォーマットは8QAMのフォーマットであり、第2のデータシンボルS2、S4、S6、S8の1つは3個のデータビットを表す。
【0031】
4QAMの変調フォーマットのみを利用する伝送と比較して、
図2に示される伝送方法の平均データ伝送速度は、1.25倍に向上する。4QAMおよび8QAMの例は、これらに制限されない例としてのみ挙げられている。
【0032】
図2に示す提案される伝送方法を4QAMの変調フォーマットのみを利用する伝送と比較すると、データ伝送速度は1.25倍に向上するが、同時に、提案される方法によって達成可能なカバー可能伝送範囲は、4QAMの変調フォーマットのみを利用する伝送と比較して縮小される。それでも、提案される光伝送方法では、同じビット誤り率および同じ伝送条件を与えられた場合、8QAMの変調フォーマットのみを利用する伝送方法よりも、長い伝送距離をカバーすることができる。これは、伝送されるシンボルS1、…、S8の平均的な感度が、提案された伝送方式では、8QAMの変調フォーマットのみを利用する場合のデータシンボルの感度よりも小さいことに起因する。よって、提案される方法では、同じビット誤り率において、この例の8QAMなどの次に高位な変調フォーマットに完全に切り替える場合よりも長い光伝送距離を達成しながら、データ伝送速度を向上させることができる。
【0033】
第1のデータシンボルS1、S3、S5、S7は、好ましくは、第1のパワーレベルで送信され、第2のデータシンボルS2、S4、S6、S8は、第2のパワーレベルで送信される。さらに、第1と第2のパワーレベルのパワー比は、好ましくは、既定の値に選択される。この値は、好ましくは、第1および第2のデータシンボルシーケンスが既定の長さの同じ光伝送チャネルまたは光伝送リンクの上を伝送される場合に、第1のデータシンボルS1、S3、S5、S7のビット誤り率が第2のデータシンボルシーケンスS2、S4、S6、S8と同じになるように選択される。
【0034】
第1のデータシンボルS1、S3、S5、S7を生成するためにQPSK、つまり4QAMを使用し、第2のデータシンボルS2、S4、S6、S8を生成するために8QAMを使用する場合、第2のパワーレベルは、第1のパワーレベルより約4dB高く選択される。その利点について、次に、
図3を参照しながら詳細に説明する。
【0035】
図3の右側は、この例では4QAMの方式である第1の変調方法のコンスタレーション方式CS1を示す。さらに、
図3の左側は、この例では8QAMの方式である第2の変調方法のコンスタレーション方式CS2を示す。コンスタレーション方式CS1およびCS2で最大パワーレベルとして使用されるパワーレベル間のパワー比は、既定のパワー比となるように選択される。好ましくは、4QAMと8QAMの例では、コンスタレーション方式CS2をもつ第2の変調フォーマットの第2のパワーレベルが、第1のコンスタレーション方式CS1をもつ第1の変調フォーマットの第1のパワーレベルより約4dB高くなるようにパワー比が選択される。
【0036】
特定の既定パワー比を達成するようにパワーレベルを選択する場合は、第1の変調方法のためのコンスタレーション方式CS1のコンスタレーション点CP1は、第2の変調方法のための第2のコンスタレーション方式CS2の内側のコンスタレーション点CP2と一致する。第1のコンスタレーション方式CS1のコンスタレーション点CP1と第2のコンスタレーション方式CS2の内側リング上のコンスタレーション点CP2が一致するという事実には、受信側で、偏光多重分離にただ2つのリングのみを使用するマルチモジュラスアルゴリズムが使用可能であるという利点がある。
【0037】
図4は、さらに別の実施形態による、提案される光データ伝送装置OTD2を示す。装置OTD2は、符号化ユニットEUで情報ビットIBを受信し、符号化ユニットEUは、情報ビットIBをデータビットDBに符号化する。前述したように、シリアライザSER2が、偶数個のデータビットからなる第1の組および奇数個のデータビットからなる第2の組をマッピングユニットMAPに提供する。変調ユニットMODが光搬送波信号OCSxを受信し、この信号は本質的に第1の偏光面内にある。信号OCSxは、信号OCSを、第1の偏光面にある第1の偏光信号OCSxと、第1の偏光面と直交する第2の偏光面にある第2の偏光信号OCSyに分解することによって生成される。この分解は、偏光多重化装置PMによって行われる。変調ユニットMODは信号OCSxを変調し、結果の変調信号MOSxを偏光ビーム結合器PBCに提供する。
【0038】
シリアライザSER2は、奇数個のデータビットを含む第3のデータビットの組をマッピングユニットMAP2に提供する。さらに、シリアライザSER2は、偶数個のデータビットを含む第4のデータビットの組をマッパーMAP2に提供する。マッパーMAP2は、第3のデータビットの組を第3のデータシンボルにマッピングし、第4のデータビットの組を第4のデータシンボルにマッピングする。結果の直交信号値Qyおよび同相信号値Iyは、対応する電気的直交信号成分Qyeおよび対応する電気的同相信号成分Iyeを生成するデジタル−アナログ変換器DACに提供される。成分QyeおよびIyeは、次に、変調信号MOSyを生成するために、偏光信号OCSyを変調する変調ユニットMOD2に使用される。次に信号MOSyが偏光ビーム結合器PBCに提供され、偏光ビーム結合器PBCは信号MOSxとMOSyを結合して、結合光信号PMOSを生成する。信号PMOSは次に、光インタフェースOIFに提供される。
【0039】
次に、
図5aおよび
図5bを参照しながら、シリアライザSER2からマッパーMAP2への第3のデータビットの組および第4のデータビットの組の提供ならびに、マッパーMAP2による第3のデータシンボルおよび第4のデータシンボルの生成について詳細に説明する。
【0040】
図5aは、
図2を参照して前述したように、シンボルのシリーズSER1を示す。
図5bには、シリアライザSER2と
図4のマッパーMAP2が共同して生成するデータシンボルS11、…、S18が、時刻t1、…、t8にわたって示されている。
図5bの時刻t1、…、t8は、
図5aの時刻t1、…、t8と一致する。よって、
図5bは、シンボルS11、…S18からなるシリーズCR2を示す。
【0041】
前述したように、
図4のシリアライザSER2は、第1の時刻t1に、奇数個のデータビットを含む、あるデータビットの組を提供する。これは、
図5bに、8QAMを変調フォーマットとする例によって示されており、ここでデータシンボルは奇数個のデータビットを表す。さらに、マッパーMAP2は、この時刻t1に、シンボルS11を生成する。
【0042】
次の時刻t2に、
図4のシリアライザSER2は、前述の、偶数個のデータビットをもつ第4のデータビットの組を
図4のマッパーMAP2に提供する。これは、
図5bに、時刻t2で使用される変調フォーマット4QAMの表示で示されている。
図4のマッパーMAP2は、この時刻t2に、
図5bに示されるデータシンボルS12を生成し、このデータシンボルは偶数個のデータビットを表す。データビットを含むデータビットの組と偶数個のデータビットを含む他方のデータビットの組の提供は、時刻t、…、t8にわたって発生する。さらに、それぞれのデータシンボルS11、…、S18の生成は、光信号OCSyが、第1および第2のコンスタレーション方式を交互に使用して変調されるように行われる。よって、前述の第3および第4のデータシンボルは既定のシンボル伝送速度で生成され、ここで第3のデータシンボルS11、S13、S15、S17と第4のデータシンボルS12、S14、S16、S18は時間でインターリーブされる。
【0043】
図5cは、データシンボルS11、…、S18の伝送と同じ時刻t1、…、t8の第1のデータシンボルS1、…、S8の伝送の調整を示す。第1のデータシンボルS1、S3、S5、S7は、第3のデータシンボルS11、S13、S15、S17とそれぞれ同じ時刻t1、t3、t5、t7に伝送される。さらに、第2のデータシンボルS2、S4、S6、S8は、第4のデータシンボルS12、S14、S16、S18とそれぞれ同じ時刻t2、t4、t6、t8に伝送される。
【0044】
好ましくは、第3のデータシンボルのパワーレベルは、前述した第2のパワーレベルとして選択され、第4のデータシンボルのパワーレベルは前述した第1のパワーレベルとして選択され、ここで第1と第2のパワーレベルのパワー比は、既定の値に選択される。このことの利点については、
図2のシンボルS1、…、S8に関して詳細に前述した。
【0045】
さらに、異なるデータシンボルを同期することには、
図5cにシリーズSER3として示すように、異なるシンボルの全体的なパワーレベルPx+Pyが一定のパワーレベルになるという利点がある。このことにより、光システムの監視についてパワー変動の問題を回避できる。さらに、伝送される偏光の間のパワー差を防ぐことにより、一般に監視目的についての問題の発生が回避される。換言すれば、伝送される2つの信号MOSxおよびMOSyの合計の光パワープロファイルが一定なので、パワー変動が回避される。
【0046】
図6は、受信サイトで使用されてもよい受信装置RXの一実施形態を示す。受信装置RXは、受信される光信号ROSを受信し、信号ROSはコヒーレントミキサCM内で、ローカルの発振器信号LOが生成する信号と混合される。信号LOは、フォトダイオードPDOによって電気領域から光領域へ変換される。コヒーレントミキサCMが結果として提供する信号成分は、次に光領域から電気領域に、それぞれのフォトダイオードPDを使用して変換される。次に、電気領域で、これらの信号成分は、アナログ−デジタル変換装置ADCによるアナログ−デジタル変換のためにサンプリングされる。これにより、1つの偏光面のための直交信号成分QXおよび同相信号成分IX、ならびに他方の直交する偏光面のための直交信号成分QYおよび同相信号成分IYが生成される。さらなるステップDRで、歪み補正および再サンプリングが行われる。好ましくは、ステップTRでタイミングリカバリが行われる。
【0047】
偏光多重分離は、文献、W.A.Sethares、G.A.ReyおよびJr.C.R.Johnson、「Approach to Blind Equalization of Signal with Multiple Modulus」、IEEE Proc.、ICASSP、1989年4月、972−975頁に記載のマルチモジュラスアルゴリズムを使用して、ステップPDMXで行われる。
【0048】
偏光多重分離のステップPDMXは、シンボル値のシーケンスV1、V2、V3、V4を提供する。シンボルシーケンスV1は、第1のデータシンボルのために推定された値から成る。シンボルシーケンスV2は、第2のデータシンボルのために推定された値から成る。シンボルシーケンスV3は、第3のデータシンボルのために推定された値から成る。シンボルシーケンスV4は、第4のデータシンボルのために推定された値から成る。
【0049】
生成されたシーケンスV1、…、V4のシンボル値は、ステップFOで行われる周波数オフセットリカバリならびにステップPRで行われる位相リカバリの対象となることができる。
【0050】
結果のデータシンボルおよびデータビットは、次に、ステップFECDで行われる前方誤り復号化の対象となることができる。
【0051】
図7は、ある光信号対雑音比SNRについて異なる変調フォーマットに達成される対数ビット誤り率LBを示す。
【0052】
第1のビット誤り率曲線BERC1は、変調フォーマットQPSKを使用する伝送で達成される対数ビット誤り率LBを示す。他方の、第2のビット誤り率曲線BERC2は、データ変調フォーマット8QAMを使用するデータ伝送で達成される対数ビット誤り率LBを示す。
【0053】
ビット誤り率を、例えば対数ビット誤り率−3などの既定の閾値より下に維持しようとする場合、QPSKの方法では、8QAMの方法で処理し得る信号対雑音比よりも約4dB低い信号対雑音比SNRを処理することができる。
【0054】
図8は、光伝送距離ODT上での異なる変調フォーマットのdBのQ
2値Qを示す。第1の曲線C1は、各偏光信号にQPSKで偏光多重化を行った場合に達成されるQ
2値を示す。曲線C2は、各偏光信号に8QAMの変調方法で偏光多重化を行った場合に達成されるQ
2値を示す。
【0055】
曲線C3は、提案される方法を利用した場合に達成されるQ
2値を示し、この方法では、偏光多重化は、偏光された各光信号が、連続する時刻について、この例では4QAMおよび8QAMである変調方式を交互に切り替えて変調されるように行われる。曲線C3によれば、提案される方法では、明らかに、8QAMのみを利用する偏光多重化の方法と同じQ
2値での伝送距離よりも長い伝送距離ODTに対して同じQ
2値が達成される。また、曲線C3によれば、提案される方法は、偏光される各光信号の変調に4QAMまたはQPSKでの偏光多重の方法を使用する場合よりも短い伝送距離ODTに対しても、同じQ
2値が達成される。提案される方法では、各偏光信号にQPSKのみを利用する場合よりも高いデータ伝送速度が達成されるということに留意されたい。