(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
S元素を0.005〜1wt%含有し、繰り返し単位の95モル%以上がエチレンテレフタレートであるポリエステル繊維を含み、前記ポリエステル繊維の表面にn=4の末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分の量が、内部標準換算濃度2〜15μg/mlに相当し、n=3の環状オリゴマー成分の量が、内部標準換算濃度80μg/ml以下に相当し、かつ、JIS L0217 103 C法による洗濯30回後のJIS L1907 滴下法による吸水性が5秒以下である吸水性布帛。
前記S元素を0.005〜1wt%含有するポリエステル繊維が、エステル形成性スルホン酸塩化合物を0.5〜5モル%含有するポリエステル繊維である、請求項1または2に記載の吸水性布帛。
前記末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分のうち、n=8の末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分の、内部標準に対するピーク強度比が0.005〜0.100である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸水性布帛。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態の布帛を構成するポリエステル繊維は、表面に末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分が存在することを特徴としている。表面に末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分が存在することで吸水性の繰り返し洗濯耐久性が発現するものである。ここで、末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分は、例えば、以下の式(1):
【化1】
で表されるn=3〜10程度のものであることができる。
【0012】
このような末端カルボン酸直鎖オリゴマー成分が存在するポリエステル繊維を含む布帛は、優れた吸水性能を有する。
該オリゴマー成分は、以下に記す、2種の分析手法の組み合わせによって定性、定量することによって存在が確認できる。
かかる末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分のうち、比較的低分子のオリゴマー成分はTHFに溶解し、LC/MS(液体クロマトグラフィー質量分析法)で分析することができる。その代表的成分をn=4とすると、繊維表面に存在するn=4のオリゴマー成分は、以下の方法で測定することができる。
20mL容量のガラスサンプル瓶(AS ONE ラボランパック スクリュー管瓶 9−852−07 NO.5)中に、試料として布帛から取り出したポリエステル糸100mgを入れ、THF3mlを添加する。ヤマト マグミキサー 形式M−41を用いて回転数約800回/分で6時間撹拌した後、4日間静置し、THF溶液のLC/MSを行うことで試料から抽出した成分の分析を行う。THF溶液のサンプリングに際し、固形分が入らないようにして0.495mlの溶液を採取し、内部標準として、Methyl Benzoate 1mg/ml溶液を0.005ml添加し試料とした。LC/MS分析の条件は以下の表1に示すとおりである。
【0014】
図1に、該THF溶液のUVクロマトグラム(240nm)のチャート例を示す。
図1において、前記末端カルボン酸直鎖オリゴマー成分、及び後述する環状オリゴマー成分のピークが多数検出される。
図1におけるピークxがn=4の末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分(分子量786.24)由来ピークである。このことは、そのピークのESI−質量スペクトル(エレクトロスプレーイオン化、負イオン質量スペクトル)において、質量数(m/z)785のイオン([M−H]
−)が検出されることにより推定される。他のピークも同様に、ESI−質量スペクトルによって検出されるイオンの質量数から、構造を推定することができる。
UVクロマトグラムにおいて、前記オリゴマー由来のピークが明確でない場合には、質量数785のマスクロマトグラム(縦軸:特定質量数の検出強度、横軸:保持時間)を表示させ、UVスペクトル例から推定される保持時間(
図1では約4.5min.)付近に該質量数の検出強度ピーク(ピークzとする)が存在するか否かで、該オリゴマーが存在するか否かを判断できる。
【0015】
n=4の末端カルボン酸の直鎖オリゴマーの量は、UVクロマトグラムのピーク面積値で測定でき、内部標準として添加したMethyl BenzoateのUVクロマトグラムのピーク(ピークsとする)のピーク面積値との比率から濃度換算することができる。内部標準物質ピークsの位置は、該ピークのESI−質量スペクトルにおいて当該質量数のイオンが検出されることにより推定される。UVクロマトグラムにおいてピークxが他のピークと重なるなどして明確でない場合には、前述の質量数785のマスクロマトグラムピークzの面積を使い、ピークxとピークzの両方が明確に検出される別のサンプルを同じ条件で測定してxとzの強度比を求めておくことで、着目試料のピークzの面積をピークxの面積に換算できる。こうして求めた着目試料のピークxの面積を用いて、ピークsとの強度比を計算できる。
【0016】
本実施形態の布帛は、n=4の末端カルボン酸直鎖オリゴマーの量は、内部標準換算濃度2〜15μg/ml相当であることが好ましく、3〜10μg/ml相当であることがより好ましい。
このように末端カルボン酸の直鎖オリゴマーは、吸水性に寄与するが、例えば、以下の式(2):
【化2】
で表される環状オリゴマーは、吸水性がなく、むしろ吸水性を阻害する。式(2)に示される環状オリゴマーの量についても、比較的低分子の環状オリゴマーについてはTHFに溶解し、LC/MS(液体クロマトグラフィー質量分析法)で分析することができ、内部標準に対するピーク強度比から、内部標準換算濃度を求めることができる。その代表的成分をn=3とすると、n=3の環状オリゴマーの量は、内部標準換算濃度80μg/mL以下相当であることが好ましく、70μg/mL以下相当であることがより好ましい。
具体的には
図1のUVクロマトグラム(240nm)のチャートの例において、ピークbがn=3の環状オリゴマー成分のピークである。このピークが該環状オリゴマー成分(分子量576.18)由来であることは、そのピークのESI−質量スペクトル(エレクトロスプレーイオン化、正イオン質量スペクトル)において、質量数(m/z)594のイオン([M+NH4]
+)が検出されることにより確認できる。UVクロマトグラムにおいて、前記オリゴマー由来のピークが明確でない場合には、n=4末端カルボン酸直鎖オリゴマーと同様に、質量数594のマスクロマトグラムを表示させ、UVスペクトル例から推定される保持時間(
図1では約5.3min.)付近に該質量数の検出強度ピーク(ピークwとする)が存在するか否かで、該オリゴマーが存在するか否かを判断できる。
該オリゴマー成分の存在量は、UVクロマトグラムのピーク面積値で測定でき、内部標準として添加したMethyl BenzoateのUVクロマトグラムのピーク(ピークsとする)のピーク面積値との比率から濃度換算することができる。
【0017】
末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分のうち、比較的高分子のオリゴマー成分は、THFに溶解しにくいため、上述の方法では検出できない。本実施形態に係る布帛は、前記THFに可溶なオリゴマーを抽出した後にも、布帛を構成するポリエステル繊維の表面にTHFで抽出されない比較的高分子の末端カルボン酸の直鎖オリゴマーを保持していることが好ましい。該末端カルボン酸の直鎖オリゴマーは繊維との接着性が高く、繰り返し洗濯後にも、該オリゴマーは脱落しにくいことから、繰り返し洗濯後の吸水性により大きな効果を発揮していると考えられる。
【0018】
THF処理で抽出されない比較的高分子のオリゴマーはMALDI―TOF/MS測定で定量することができる。
THFでオリゴマーを抽出した後の試料を風乾したのち、2mgを採取し、20mL容量のガラスサンプル瓶に入れ、1mlのHFIP(ヘキサフロロイソプロパノール)を加え、試料を溶解させる。また、以下に示すマトリックス溶液も調整する。試料溶液20μLを取り、マトリックス溶液20μLを添加する。溶液を採取するガラス毛細管で撹拌、混合後、すぐに析出分が確認される。上層にある析出分ではなく、下層溶液を採取し、下記条件でMALDI―TOF/MS測定を行う。測定に際して、マトリックスの強度が50mV/Profiles以上2000mV/Profiles未満のレーザー強度で測定を行う。
【0019】
[測定条件]
装置:島津AXIMA CFR plus
レーザー:窒素レーザー(337nm)
検出器形式:リニアモード
イオン検出:正イオン(Positive mode)
:負イオン(Negative mode)
積算回数:500回
マトリックス溶液:CHCA(α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸)10mg/ml H
2O+CH
3CN
カチオン化剤:NaI 1mg/mlアセトン
スキャンレンジ:m/z 1〜8000
【0020】
図3〜5に、MALDI―TOF/MS測定における正イオンスペクトル例を示す。
図3〜5において、n=4〜10付近の末端カルボン酸直鎖オリゴマーや類似のオリゴマー類由来のピークが検出され、そのうち「■」印をつけたピークが、MSで検出された質量数から推定される、末端カルボン酸直鎖オリゴマーに該当するピークである。
本実施形態においては、式(1)のn=4〜10の末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分を有していることが吸水性の耐久性に非常に効果的である。n=4〜10の末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分の定量は以下の方法で行う。
n=4〜10の末端カルボン酸の直鎖オリゴマーのピークは、MALDI−TOF/MSの正イオンスペクトルにおいてNa付加体として検出される。該オリゴマー成分量は、該オリゴマーNa付加体のピーク強度をマトリックスピーク強度で規格化した値で評価できる。すなわち、該オリゴマーNa付加体ピーク高さを、マトリックスであるCHCAのNa付加体ピーク(m/z=212)高さで除した値を成分量の指標とし、n=4〜n=10のそれぞれのオリゴマーNa付加体ピーク高さをCHCAのNa付加体ピークの高さで除し、それらの総和で評価する。この値が0.07以上であるのが好ましく、0.10以上がさらに好ましい。総和値が0.5を超えると分解が進みすぎているため、好ましくない。
【0021】
特に、n=8〜10の末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分は耐久吸水性への寄与が非常に大きい。その代表例をn=8とすると、n=8の末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分の、内部標準に対するピーク強度比は、n=8のオリゴマーNa付加体ピーク高さ(
図5におけるピークD)をCHCAのNa付加体ピークの高さで除した値で求めることができ、0.005〜0.1であることが好ましく、0.008〜0.08であることがより好ましい。
【0022】
本実施形態の布帛は、THF可溶及び不溶の、n=3〜10の末端カルボン酸の直鎖オリゴマーが存在していることにより、吸水効果が発揮される。オリゴマーを存在させる方法は特に限定されず、末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分を布帛に塗布等の方法で付与したり、エステルポリマーに混合させてもよいが、特定のポリエステル繊維においては、特定のアルカリ処理を施すことによって、繊維表面付近に付与することができ、好ましい。
【0023】
例えば、S元素を0.005〜1wt%含有するポリエステル繊維を、特定のアルカリ処理を施すことで該末端カルボン酸の直鎖オリゴマーを付与することができる。S元素を0.005〜1wt%含有するポリエステル繊維の例としては、例えば、エステル形成性スルホン酸塩化合物を0.5〜5モル%含有するポリエステル繊維が挙げられる。
ポリエステル繊維に0.5〜5モル%含有させるエステル形成性スルホン酸塩化合物の例としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、4−ナトリウムスルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸、2−ナトリウムスルホ−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸テトラメチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸トリブチルメチルホスホニウム塩、2,6−ジカルボン酸ナフタレン−4−スルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、2,6−ジカルボン酸ナフタレン−4−スルホン酸テトラメチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸アンモニウム塩等又はこれらのメチル、ジメチルエステル等のエステル誘導体が挙げられる。これらのメチル、ジメチルエステル等のエステル誘導体はポリマーの白度、重合速度が優れる点で好ましく用いられる。ポリエステル繊維に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸等金属スルホネート基含有イソフタル酸成分を含有させることが好ましく、中でも5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルは特に好ましい。
【0024】
エステル形成性スルホン酸塩化合物が特に好ましい理由は、通常のポリエステル繊維の場合にはアルカリ処理により、末端が加水分解されるため、オリゴマーは殆ど生成しないのに対し、エステル形成性スルホン酸塩化合物を含有するポリエステル繊維の場合にはアルカリ処理によってS元素の部分にアルカリが優先的にアタックし分子鎖の途中での切断が起こるため末端にカルボキシル基を持つオリゴマーが増えるものと推測される。
【0025】
本実施形態に係るポリエステル繊維は、エステル非形成性スルホン酸塩化合物を含有するポリエステル繊維であることができる。エステル非形成性スルホン酸塩化合物とはスルホン酸塩化合物がポリエステルと直接エステル化反応し、重縮合してポリエステルを形成することなく、スルホン酸塩化合物を含有しているポリエステル繊維であり、スルホン酸塩化合物を0.5〜5モル%練り込んだマスターチップと通常のエチレンテレフタレート成分が95モル%以上のポリエステルチップを混合する方法で得られるポリエステル繊維や重合時に直接、スルホン酸塩化合物を0.5〜5モル%を添加して得られるポリエステル繊維などが挙げられる。
【0026】
エステル非形成性スルホン酸塩化合物の例としては、例えば、アルキルスルホン酸のアルカリ金属塩又はアルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩が挙げられる。アルキルスルホン酸のアルカリ金属塩の例としては、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ウンデシルスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩の例としてはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ウンデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、テトラデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。加工安定性の観点からドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0027】
S元素を0.005〜1wt%含有するポリエステル繊維に特定のアルカリ処理を行うことで、吸水効果が得られ、洗濯を繰り返してもその効果がほとんど変わらない布帛となる。S元素の含有量が0.005wt%未満ではアルカリ処理後の吸水性の耐久効果が小さく、また、ポリエステル繊維中にS元素を1wt%以上含む場合には繊維の強度が低下し、紡糸が困難となる。ポリエステル繊維中のS元素は0.01〜0.8w%がより好ましく、0.015〜0.7wt%がさらに好ましい。尚、S元素を定量する方法としてはICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を用いる。
【0028】
エステル形成性スルホン酸塩化合物を含有させる場合には、含有量が0.5モル%未満ではアルカリ処理後の吸水性の耐久効果が小さく、また、ポリエステル繊維中にエステル形成性スルホン酸塩化合物を5モル%より多く含む場合には繊維の強度が低下し、紡糸が困難となる。ポリエステル繊維中のエステル形成性スルホン酸塩化合物は1〜4.5モル%がより好ましく、1.5〜4モル%がさらに好ましい。尚、ポリエステルに含有されているS元素がエステル形成性スルホン酸塩化合物由来であるのか、エステル非形成性スルホン酸塩化合物由来であるのかは、例えば、アルカリ加水分解により、モノマーに分解し、そのモノマーをLC/MS等で分析し、エステル形成性スルホン酸塩化合物が検出されるかで否かで判断できる。必要に応じて誘導体化して分析してもよい。
吸水性を発現させるために、アルカリ処理の条件としては該ポリエステル繊維の減量率を好ましくは0.6〜9%、より好ましくは1〜8%、さらに好ましくは1.5〜7%にすることが好ましい。減量率はアルカリ処理前後のポリエステル糸の重量から算出できる。エステル形成性スルホン酸塩化合物を0.5〜5モル%含有するポリエステル繊維の場合は通常のポリエステル繊維に比べアルカリ減量の速度が速いため、アルカリを低濃度に調整し、処理することが好ましい。
【0029】
減量率が0.6%未満の場合にはアルカリ処理による末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分形成効果が小さく、吸水性の耐久性に劣る。減量率が9%より大きいとアルカリ減量が進みすぎるため、吸水性の耐久性に劣る。一旦形成された繊維表面の末端カルボン酸の直鎖オリゴマーが過剰な減量により落ちてしまうためと推定される。また、繊維表面に沢山のしかも大きく深いピットが発生し、繊維強度が低下するため、好ましくない。減量率を0.6〜9%にするには、例えば、水酸化ナトリウムを1g/L〜20g/Lの濃度で90〜100℃で5分〜100分処理するアルカリ処理方法が好適に用いられ、さらに好ましくは水酸化ナトリウムを5g/L〜15g/Lの濃度で90〜95℃で5分〜60分処理するのがよい。アルカリ処理濃度と時間を濃度(g/L)×時間(min)が100〜800(g/L・min)とするのが好ましく、さらに好ましくは200〜600(g/L・min)である。
【0030】
また、アルカリ処理時の昇温スピードも重要で1〜2℃/分のスピードでゆっくり昇温するのが好ましい。これはゆっくり昇温することにより、オリゴマーの生成が促されるためと推定される。
通常、アルカリ処理の後には酸で中和し、水洗するが、本発明においては特定のオリゴマー除去処理を行うことが非常に重要である。特定のオリゴマー除去処理により、吸水性を阻害する環状オリゴマーを除去することができる。オリゴマー除去の方法はいくつか挙げられる。たとえばオリゴマー除去剤を使用する方法や水洗を強化する方法などである。このうち、アルカリ処理後の水洗を強化する方法が、吸水性を阻害する環状オリゴマーを除去し、吸水性に寄与するn=4〜10の末端カルボン酸の直鎖オリゴマーが除去されにくいことから特に好ましい。水洗の条件としては、例えば、10〜30分間を2回以上行うことが好ましい。2回以上とは一度水を排水し、水を入れ替えることを2回以上行うことを意味する。40℃〜60℃の温水を1回以上使用することがさらに好ましい。尚、中和時の酸には揮発性の酢酸等が好適に用いられる。設備によってはアルカリ溶液を回収し、その後に中和し、水洗を強化してもよい。
【0031】
他の素材との交編や交織の布帛の場合には繊維の種類ごとの減量速度を予め確認し、混合割合から該ポリエステル繊維の減量率を計算する必要がある。
アルカリ処理の他の方法としてはS元素を0.005〜1wt%含有するポリエステル繊維を糸の状態で0.6〜9%の減量率になるようにチーズ染色機を用いる方法などでアルカリ処理を施し、該ポリエステル繊維を一部に用いて布帛を形成する方法が好適に用いられる。この場合においても減量率は、好ましくは0.6〜9%、より好ましくは1〜8%、さらに好ましくは1.5〜7%にすることが好ましい。また、上述の十分な水洗を行うことが好ましい。
【0032】
本実施形態においては、ポリエステル繊維に特定のオリゴマー成分を含有させることにより、吸水加工を施さない場合でも耐久的な吸水性を得ることができる。耐久的とは洗濯を繰り返しても吸水性の低下が起こり難いことをいう。アルカリ処理によりオリゴマーを付与する場合には、アルカリ処理、中和、水洗後の布帛は通常の方法で染色、仕上げ加工を行うことができる。また、染色後のソーピング時にアルカリ処理を行うことも可能である。
【0033】
本実施形態の布帛は、JIS L0217 103 C法による洗濯30回後の吸水性(JIS L1907 滴下法)が5秒以下である。洗濯30回後の吸水性は3秒以下が好ましく、2秒以下がより好ましく、1秒以下がさらに好ましい。同法による洗濯1回後の吸水性も5秒以下であることが好ましく、3秒以下がより好ましく、2秒以下が更に好ましく、1秒以下が特に好ましい。本実施形態の布帛は、該洗濯回数50回、100回後も吸水性を保持することができ、50回、100回後も吸水性が5秒以下となるのがさらに好ましい。洗濯時の洗剤は中性洗剤、弱アルカリ性洗剤等通常の洗剤が好適に用いられる。
【0034】
また、本実施形態の布帛は、工業洗濯時にも吸水効果を持続する効果に優れる。工業洗濯とは作業着、ユニフォームなどの洗濯に適用されている、家庭洗濯よりも厳しい条件での洗濯で、例えば、JIS L1096 8.39.5 b) 2.2.2)F−2中温ワッシャー法に規定されている方法が挙げられ、通常、洗剤成分の他、過酸化水素や珪酸ソーダなどの助剤が添加される。本実施形態の布帛は、JIS L1096 F−2による60℃30分の洗濯30回後の吸水性も5秒以下であることが好ましい。
【0035】
本実施形態の布帛において、特定のアルカリ処理により特定のオリゴマーを付与する場合には、S元素を0.005〜1wt%含有するポリエステル繊維の表面には、100μm
2の表面内に(又は当たり)長さ0.5〜5μmのピットが0.1〜30個形成されていることが好ましく、より好ましくは0.2〜2個である。ピットとは繊維表面に存在する微細な窪みであり、アルカリ処理によって形成される。通常のアルカリ処理ではピットが多く形成され、連通して長さが5μmを超える筋状の溝となることがあるが、本実施形態では、長さが5μmを超える筋状の溝は少ないことが好ましい。ここで、100μm
2の表面内のピットの個数とは、当該繊維の任意の10μm×10μmの表面を50か所、電子顕微鏡を用いて1000倍程度に拡大してピットの個数を計測した平均値である。同様に、同表面における長さ5μmを超える筋状の溝数を計測したときに、溝の平均個数が1個以下であることが好ましく、より好ましくは0.1個以下である。ここで長さとは1つのピットの最大長さを言う。本実施形態のポリエステル繊維の表面には非常に小さいピットが形成されていることにより耐久的な吸水性に寄与しているものと推定される。
【0036】
長さ0.5μm以下のピットは、吸水効果が乏しく、長さ5μmを超える筋状の溝が存在することは過剰にアルカリ処理が進み、分解が進みすぎたことを意味するため、好ましくない。また、長さ0.5〜5μmのピットが30個を超える場合も、過剰にアルカリ処理が進んだことを意味し、好ましくない。本実施形態では、アルカリ減量を行っても長さが5μmを超える筋状の溝や連通孔などの発生が無いことから強度の低下率が小さい。さらにピットの形状は、タテ/ヨコが1.0〜2.5が好ましく、1.0〜2.0がより好ましい。ここで、タテは最大長さをいい、ヨコはタテの方向と直交する方向での最大長さをいう。尚、ピットの計測は試料の汚れによる計測ミスを防ぐため、試料を十分水洗してから実施する。JIS法で洗濯を1回以上行い、20分以上水洗するのが好ましい。
【0037】
本実施形態の布帛は、特定のオリゴマーが付着されたポリエステル繊維を少なくとも布帛の片表面の25%以上、好ましくは40%以上含むことが望ましい。ここで、25%以上とは、全面積に占める割合を意味する。本実施形態の布帛を製品として使用する場合には上述のS元素を0.005〜1wt%含有するポリエステル繊維面を肌側に使用することでドライ感が感じられ望ましい。
【0038】
丸編地の場合、特定のオリゴマーが付着されたポリエステル繊維を含む糸が少なくとも8コースに1コースの割合でコース方向に繋がることが好ましい。S元素を0.005〜1wt%含有するポリエステル繊維がコース方向に繋がっていない場合、少なくとも4ウエールに1ウエールの割合で、S元素を0.005〜1wt%含有するポリエステル繊維が繋がっていることが好ましい。「繋がる」とはニット又はタックで連結していることをいう。
経編地の場合、特定のオリゴマーが付着されたポリエステル繊維のループが繋がるように配置するのが好ましい。
【0039】
本実施形態の布帛を構成する際には、特定のオリゴマーが付着されたポリエステル繊維と、特定のオリゴマーが付着されないポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリウレタン繊維等の合成繊維、あるいは、綿、レーヨン、キュプラ、アセテート等のセルロース繊維との混用が可能である。
特に、糸にフッ素系処理剤を付着させるなど撥水加工を施した撥水糸との組合せにより、布帛内の水分保持の配置や移動を自在にコントロールすることができる。例えば、肌面に撥水糸を配置し、かつ少量の特定のオリゴマーが付着されたポリエステル繊維を配置し、該ポリエステル繊維を表面側に繋げば、該ポリエステル繊維から水を吸い上げ表側に水を移行することが可能になり、肌面には汗が残らず、汗処理性に優れた布帛を設計することが可能になる。
【0040】
本実施形態に用いる繊維の総繊度は、8〜167デシテックス(dtex)が好ましく、22〜110dtexがより好ましい。単糸繊度も特に限定されないがオリゴマーが生成しやすいという観点から小さい方が好ましく、0.5〜2.5dtexが好ましく、0.5〜1.5dtexが特に好ましい。肌触りや風合いの観点からも、単糸繊度が小さいことは好ましい。
本実施形態に用いる繊維には、二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、フュームドシリカ等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
【0041】
本実施形態の布帛には、仮撚糸等の捲縮を有する繊維を用いることもでき、肌触りの観点から、捲縮伸長率が0〜150%のものが好ましい。なお、仮撚糸の捲縮伸長率は、下記条件にて測定したものである。
捲縮糸の上端を固定し、下端に1.77×10
-3cN/dtexの荷重をかけ、30秒後の長さ(A)を測定する。次いで、1.77×10
-3cN/dtexの荷重を取り外し、0.088cN/dtexの荷重をかけ、30秒後の長さ(B)を測定し、下記式(3):
捲縮伸長率(%)={(B−A)/A}×100 (3)
により捲縮伸長率を求める。
【0042】
本実施形態の布帛は、織物でも編物でもよい。
織物の場合の織組織としては平織組織、綾織組織、朱子織組織、及びそれらから誘導された各種変化組織を適用することができる。肌側に耐久的な吸水性を付与するためには2重織り組織で肌側の25%以上に特定のオリゴマーが付着されたポリエステル繊維を配置するのが好ましい。
編物の場合は丸編、経編のいずれでもよく、編機としては、緯編機やダブル丸編機、トリコット編機、ラッセル編機等を使用できる。使用する編機の編ゲージとしては10〜60GGが好ましい。編組織も特に限定されない。肌側に耐久的な吸水性を付与するためには表裏面に異なる糸を配置できる組織で肌側の25%以上に特定のオリゴマーが付着されたポリエステル繊維を配置するのが好ましい。
【0043】
本実施形態の布帛の目付は特に限定されないが、30〜300g/m
2が好ましく、より好ましくは50〜250g/m
2である。
また、本発明の布帛には吸水加工を施してもよい。
【0044】
本実施形態の布帛は、繊維製品の中でも衣料、特に、スポーツウエアやインナー等の汗処理機能が必要な衣料用途に好適であるがこれに限定されず、アウターや裏地等の衣料や、シーツ等の寝具、さらには失禁パンツ等の衛生物品にも適用でき、好適な吸水効果を発揮する。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。無論、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例で得た編地を、以下の方法で評価した。
(1)n=4の末端カルボン酸の直鎖オリゴマーの定量(THF可溶成分)
上述の方法を用いた。
(2)n=8の末端カルボン酸の直鎖オリゴマー)の定量(THF不溶成分)
上述の方法を用いた。
(3)n=3の環状オリゴマーの定量(THF可溶成分)
上述の方法を用いた。
【0046】
(4)繊維表面のピットの定量
試料をJIS L0217 付表1の103 C法で洗濯を1回行い、20分水洗し、電子顕微鏡を用いて2000倍の表面画像を取得し、上述の方法でピットを計測し、50か所の平均値とした。
【0047】
(5)着用試験
S元素を0.005〜1wt%含有するポリエステル繊維が表面に多く露出している面が肌側になるように作製されたTシャツを作成し、洗濯をJIS L0217 付表1の103法で行い、洗剤には花王(株)製 アタックを用いて、30回実施した。30回後のTシャツを着用し、30℃、50%RH環境の人工気候室にて10分間安静にした後に、大武・ルート工業社製トレッドミルORK−3000にて時速7kmで20分の走行運動を行い、再び10分間安静にした。走行運動前の肌触り、快適感、そして走行運動後のベタツキ感を、それぞれ、以下の評価基準に従い官能評価した:
○:肌触りや風合いが良い;快適である;ベタツキ感を感じない
△:肌触りや風合いがやや悪い;概ね快適である;ややベタツキ感を感じる
×:肌触りや風合いが悪い;不快である;ベタツキ感を感じる
【0048】
(6)吸水性
JIS L1907 滴下法 の方法による。
【0049】
(7)洗濯処理
JIS L0217 付表1の103 C法により、洗剤は弱アルカリ性洗剤(商品名花王(株) アタック)を使用して洗濯処理を行った。
【0050】
(8)工業洗濯試験
工業洗濯試験を想定し、JIS L1096 8.39.5 b) 2.2.2)F−2中温ワッシャー法の条件で洗浄剤として石鹸0.8%owf、過酸化水素0.8%owf、珪酸ソーダ0.8%owfを用いた。
【0051】
[実施例1]
ナトリウムイソフタル酸ジメチル- 5 -スルホン酸を4.5モル%含有するポリエステルチップと通常のエチレンテレフタレート成分が99モル%以上のポリエステルチップをブレンドし、S元素の含有量を0.30wt%に調整したチップを用いて、84dtex/36fの糸を紡糸し、仮撚り加工を行い、丸型断面の加工糸を得た。この加工糸と、S元素を含有しないレギュラー糸として84dtex/36fのポリエステル丸型断面加工糸、および、84dtex/72fのポリエステル丸型断面加工糸とを用いて、28ゲージダブル丸編機を使用し、
図7に示す編組織(図中の丸数字は編成順を示す)に示すように給糸し、生機を得た。この生機を液流染色機にて80℃×20分で精練、水洗した後に、ピンテンターにて幅出し率20%で180℃×90秒のプレセットを行った。その後、液流染色機にて水酸化ナトリウム濃度9g/Lで2℃/minの条件で昇温し、95℃で45分間アルカリ処理を施し、酢酸を用いて中和し十分に水洗した。水洗条件は注水後60℃まで昇温し15分間洗浄する。その後、一旦排水し、再度、注水後60℃まで昇温し、15分間洗浄し、排水する(水洗条件A)。84dtex/36fのS元素含有の加工糸の減量率は4.8%であった。その後、130℃でのポリエステル染色、水洗を行い、ピンテンターにて、しわが取れる程度に伸長し、150℃×90秒のファイナルセットを行い、目付130g/m
2、厚み0.62mmの編地を得た。本編地のJIS L0217 付表1の103 C法とJIS L1096 F−2中温ワッシャー法での洗濯30回後の吸水性は、それぞれ、1秒未満と2秒であり、この編地を用いたシャツ(肌側にS元素を含有した加工糸を配置させた)の着用試験ではやわらかく快適で、発汗後もベタツキ感がないという結果が得られた。また、JIS L0217 付表1の103 C法による洗濯100回後の吸水性も1秒未満であった。
【0052】
[実施例2]
28GGのトリコット編み機を用いて、フロントに56dtex/24fのナトリウムイソフタル酸ジメチル- 5 -スルホン酸を2.5モル%含有するポリエステル丸型断面糸(S元素含有量0.17wt%)、バックにポリウレタン糸44dtexを用いてハーフトリコット組織にて編地を編成した。80℃にてリラックス、精練を行い、190℃で熱セットを行い、液流染色機にて水酸化ナトリウム濃度10g/Lで2℃/minの条件で昇温し、95℃で45分間アルカリ処理を施し、酢酸で中和し、十分に水洗した。水洗条件は60℃で15分を2回繰り返した(水洗条件A)。減量率は6.5%であった。さらに130℃で染色、170℃で仕上げセットを実施して、目付180g/m
2、厚み0.58mmの編物を得た。本編地のJIS L0217 付表1の103 C法とJIS L1096 F−2中温ワッシャー法での洗濯30回後の吸水性は、それぞれ、1秒未満と2秒であり、この編地で作製したスパッツの着用試験ではやわらかく、快適で、発汗後もベタツキ感のないものであった。
【0053】
[実施例3]
56dtex/72fのS元素非含有ポリエステル加工糸を経糸に用い、167dtex/72fのナトリウムイソフタル酸ジメチル- 5 -スルホン酸を2.5モル%含有するポリエステル丸型断面糸の加工糸(S元素含有量0.17wt%)と84dtex/72f双糸のS元素非含有ポリエステル加工糸を緯糸に配糸して、
図8の2重織物を作製した。80℃にて精練を行い、190℃で熱セットを行い、液流染色機にて水酸化ナトリウム濃度7g/Lで2℃/minの条件で昇温し、95℃で60分間アルカリ処理を施し、酢酸で中和し、十分に水洗した。水洗条件は60℃で15分を2回繰り返した(水洗条件A)。減量率は3.9%であった。さらに130℃で染色、170℃で仕上げセットを実施して、目付155g/m
2、厚み0.40mmの織物を得た。本織物のJIS L0217 付表1の103 C法とJIS L1096 F−2中温ワッシャー法での洗濯30回後の吸水性は、それぞれ、1秒と5秒であり、この織物から得たウエアの着用試験ではやわらかく、快適で、発汗後もベタツキ感のないものであった。
【0054】
[実施例4]
アルカリ処理時の濃度を5g/L、処理時間を20分とした他は実施例1と同様にして、目付138g/m2、厚み0.63mmの編地を得た。この編地のJIS L0217 付表1の103 C法とJIS L1096 F−2中温ワッシャー法での洗濯30回後の吸水性は、それぞれ、2秒と5秒であり、この編地を用いたシャツの着用試験ではやわらかく快適で、発汗後もベタツキ感がないという結果が得られた。また、JIS L0217 付表1の103 C法による洗濯100回後の吸水性も2秒であった。
【0055】
[実施例5]
56dtex/24fのナトリウムイソフタル酸ジメチル- 5 -スルホン酸を2.5モル%含有するポリエステル丸型断面糸の代わりに、56dtex/24fの4 −ナトリウムスルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸を2.5モル%含有するポリエステル丸型断面糸(S元素含有量0.18wt%)を用いた以外は実施例2と同様にして、目付175g/m
2、厚み0.59mmの編地を得た。この編地のJIS L0217 付表1の103 C法とJIS L1096 F−2中温ワッシャー法での洗濯30回後の吸水性は、それぞれ、1秒と6秒であり、この編地を用いたシャツの着用試験ではやわらかく快適で、発汗後もベタツキ感がないという結果が得られた。
【0056】
[実施例6]
ナトリウムイソフタル酸ジメチル- 5 -スルホン酸を2.5モル%含有する84dtex/36fのポリエステル丸型断面加工糸を、チーズ染色機を用いて水酸化ナトリウム濃度10g/Lで2℃/minの条件で昇温し、これに95℃で45分間アルカリ処理を施し、酢酸を用いて中和し十分に水洗した。水洗条件は60℃で15分を2回繰り返した(水洗条件A)。加工糸の減量率は5.1%であった。このS元素含有加工糸(S元素含有量0.17wt%)と84dtex/36fのS元素非含有ポリエステル丸型断面加工糸、および、84dtex/72fのS元素非含有ポリエステル丸型断面加工糸とを用いて、28ゲージダブル丸編機を使用し、
図3に示す編組織で編成し、生機を得た。この生機を液流染色機にて80℃×20分で精練、水洗した後に、ピンテンターにて幅出し率20%で180℃×90秒のプレセットを行った。その後、130℃でのポリエステル染色、水洗を行い、ピンテンターにて、しわが取れる程度に伸長し、150℃×90秒のファイナルセットを行い、目付135g/m
2、厚み0.63mmの編地を得た。この編地のJIS L0217 付表1の103 C法とJIS L1096 F−2中温ワッシャー法での洗濯30回後の吸水性は、それぞれ、1秒と2秒であり、この編地を用いたシャツの着用試験ではやわらかく快適で、発汗後もベタツキ感がないという結果が得られた。また、JIS L0217 付表1の103 C法による洗濯100回後の吸水性も1秒であった。
【0057】
[
参考例7]
アルカリ処理後の水洗条件を20℃15分で1回とした(水洗条件B)以外は実施例1と同様にして、目付134g/m
2、厚み0.63mmの編地を得た。この編地のJIS L0217 付表1の103 C法とJIS L1096 F−2中温ワッシャー法での洗濯30回後の吸水性は、それぞれ、5秒と180秒以上であり、前者条件における洗濯繰返し後の吸水性に優れる。この編地を用いたシャツの着用試験では吸水性を有さない布帛に比べ概ね快適であるが、発汗時にベタツキ感がややあったという結果が得られた。また、JIS L0217 付表1の103 C法による洗濯100回後の吸水性は10秒であった。
【0058】
[比較例1]
ナトリウムイソフタル酸ジメチル- 5 -スルホン酸を4.5モル%含有するポリエステルチップと通常のエチレンテレフタレート成分が95モル%以上のポリエステルチップをブレンドして作製したポリエステル丸型断面糸の加工糸の代わりに84dtex/36fのレギュラー(S元素非含有)ポリエステル丸型断面糸の加工糸を用いた以外は実施例1と同様にして、目付135g/m
2、厚み0.65mmの編地を得た。この編地のJIS L0217 付表1の103 C法とJIS L1096 F−2中温ワッシャー法での洗濯30回後の吸水性は、それぞれ、180秒以上と180秒以上であり、この編地を用いたシャツの着用試験では発汗時にベタツキ感があったという結果が得られた。
【0059】
[比較例2]
ナトリウムイソフタル酸ジメチル- 5 -スルホン酸を4.5モル%含有するポリエステルチップと通常のエチレンテレフタレート成分が95モル%以上のポリエステルチップをブレンドして作製したポリエステル丸型断面糸の加工糸の代わりに84dtex/36fのレギュラー(S元素非含有)ポリエステル丸型断面糸の加工糸を用い、アルカリ処理を施さずに、染色時に高松油脂製SR1000を2%owf加えた以外は実施例1と同様にして、目付136g/m
2、厚み0.65mmの編地を得た。この編地のJIS L0217 付表1の103 C法とJIS L1096 F−2中温ワッシャー法での洗濯30回後の吸水性は、それぞれ、15秒以上と180秒以上であり、この編地を用いたシャツの着用試験では発汗時にベタツキ感があったという結果が得られた。
【0060】
[比較例3]
アルカリ処理における水酸化ナトリウム濃度を0.5g/Lにした以外は実施例1と同様にして、目付133g/m
2、厚み0.64mmの編地得た。この編地のJIS L0217 付表1の103 C法とJIS L1096 F−2中温ワッシャー法での洗濯30回後の吸水性は、それぞれ、180秒以上と180秒以上であり、この編地を用いたシャツの着用試験では発汗時にベタツキ感があったという結果が得られた。
【0061】
[比較例4]
アルカリ処理における水酸化ナトリウム濃度を24g/Lにした以外は実施例1と同様にして、目付118g/m
2、厚み0.53mmの編地を得た。この編地のJIS L0217 付表1の103 C法とJIS L1096 F−2中温ワッシャー法での洗濯30回後の吸水性は、それぞれ、180秒以上と180秒以上であり、この編地を用いたシャツの着用試験では発汗時にベタツキ感があったという結果が得られた。
【0062】
[比較例5]
アルカリ処理における水酸化ナトリウム濃度を50g/Lにした以外は比較例1と同様にして、目付124g/m
2、厚み0.59mmの編地を得た。生地の減量率は13%であった。この編地のJIS L0217 付表1の103 C法とJIS L1096 F−2中温ワッシャー法での洗濯30回後の吸水性は、それぞれ、180秒以上と180秒以上であり、この編地を用いたシャツの着用試験では発汗時にベタツキ感があったという結果が得られた。
【0063】
以上の実施例
、参考例及び比較例の結果を以下の表2に纏める。
【表2】