特許第6095844号(P6095844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095844
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】テトラヒドロピロロチアジン化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 513/04 20060101AFI20170306BHJP
   A61K 31/542 20060101ALI20170306BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20170306BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   C07D513/04 375
   C07D513/04CSP
   A61K31/542
   A61P25/28
   A61P43/00 111
【請求項の数】8
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2016-500566(P2016-500566)
(86)(22)【出願日】2014年3月4日
(65)【公表番号】特表2016-512252(P2016-512252A)
(43)【公表日】2016年4月25日
(86)【国際出願番号】US2014020070
(87)【国際公開番号】WO2014143579
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2015年9月11日
(31)【優先権主張番号】61/776,819
(32)【優先日】2013年3月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147131
【弁理士】
【氏名又は名称】今里 崇之
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】グリーン,スティーブン ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】マーゴット,ダスティン ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ワトソン,ブライアン モルガン
(72)【発明者】
【氏名】ウィナーオスキ ジェーアール.,レオナルド ラリー
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/091016(WO,A1)
【文献】 特表2014−502987(JP,A)
【文献】 特表2014−506564(JP,A)
【文献】 特表2015−512445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 513/00−513/22
A61K 31/00−31/80
A61P 1/00−43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式の化合物:
【化1】

(式中、RはHまたはFであり、
Aは、
【化2】

である)
またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項2】
【化3】

である、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項3】
【化4】

である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
有効量の請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩を含む、患者におけるアルツハイマー病を治療するための医薬組成物。
【請求項5】
有効量の請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩を含む、アルツハイマー病を発症する危険性のある患者における進行を予防するための医薬組成物
【請求項6】
療法に使用するための請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項7】
アルツハイマー病の治療に使用するための請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項8】
1種以上の医薬的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤と共に、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的に許容可能な塩を含む、医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規テトラヒドロピロロチアジン化合物、その化合物を含む医薬組成物、生理学的障害を治療するためにその化合物を使用する方法、ならびにその化合物の合成に有用な中間体およびプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、アルツハイマー病ならびにアミロイドβ(Aベータ)ペプチド、神経毒性およびアミロイド前駆体タンパク質(APP)の高度に凝集したペプチド断片に関与する他の疾患および障害の治療の分野である。アルツハイマー病は世界中で数百万人の患者に影響を及ぼす破壊的な神経変性障害である。患者に一時的にのみ対症効果をもたらす市販の現在承認されている薬剤を考慮して、アルツハイマー病の治療において重大なまだ満たされていない必要性が存在している。
【0003】
アルツハイマー病は、脳内のAベータの生成、凝集および沈殿によって特徴付けられる。β−セクレターゼ(β−部位アミロイド前駆体タンパク質切断酵素;BACE)の完全または部分的な阻害は、マウスモデルにおいてプラークに関連したおよびプラーク依存性の病変に対して有意な効果を有することが示されており、Aβペプチドレベルのさらに少しの低下が、プラーク負荷およびシナプス欠損の長期間の有意な減少を生じ得るので、特にアルツハイマー病の治療において有意な治療的有用性を提供することを示唆している。
【0004】
特許文献1は、BACE阻害活性を有する縮合アミノジヒドロチアジン誘導体を開示しており、それはアルツハイマー型認知症などのAβペプチドによって引き起こされる神経変性疾患について有用な治療剤としてさらに開示されている。さらに、非特許文献1は、経口投与されるCNS活性BACE阻害剤である、(S)−4−(2,4−ジフルオロ−5−ピリミジン−5−イル−フェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イルアミンを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0209755号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.Neuroscience、31(46)、16507−16516ページ(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
十分にCNSに浸透する有効なBACE阻害剤は、アルツハイマー病などのAベータペプチド媒介性障害のための治療を提供することが望まれる。本発明はBACEの有効な阻害剤である特定の新規化合物を提供する。さらに、本発明はCNSに浸透する特定の新規化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、式Iの化合物:
【化1】

(式中、RはHまたはFであり、
Aは
【化2】

である)
またはその医薬的に許容可能な塩を提供する。
【0009】
本発明はまた、有効量の式Iの化合物、またはその医薬的に許容可能な塩を、このような治療を必要とする患者に投与することを含む、患者におけるアルツハイマー病を治療する方法を提供する。
【0010】
本発明はさらに、有効量の式Iの化合物、またはその医薬的に許容可能な塩を、このような治療を必要とする患者に投与することを含む、患者における軽度認識障害のアルツハイマー病への進行を予防する方法を提供する。
【0011】
本発明はまた、有効量の式Iの化合物、またはその医薬的に許容可能な塩を、このような治療を必要とする患者に投与することを含む、患者におけるBACEを阻害する方法を提供する。
【0012】
本発明はまた、有効量の式Iの化合物、またはその医薬的に許容可能な塩を、このような治療を必要とする患者に投与することを含む、アミロイド前駆体タンパク質のBACE媒介性切断を阻害する方法を提供する。
【0013】
本発明はさらに、有効量の式Iの化合物、またはその医薬的に許容可能な塩を、そのような治療を必要とする患者に投与することを含む、Aベータペプチドの産生を阻害する方法を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、療法に使用するため、特にアルツハイマー病を治療するため、または軽度認識障害のアルツハイマー病への進行を予防するための式Iの化合物またはその医薬的に許容可能な塩を提供する。なおさらに、本発明は、アルツハイマー病を治療するための医薬を製造するための、式Iの化合物、またはその医薬的に許容可能な塩の使用を提供する。本発明はまた、軽度認識障害のアルツハイマー病への進行を予防するための医薬を製造するための、式Iの化合物、またはその医薬的に許容可能な塩の使用を提供する。本発明はまた、BACEを阻害するための医薬を製造するための、式Iの化合物、またはその医薬的に許容可能な塩の使用を提供する。本発明はさらに、Aベータペプチドの産生を阻害するための医薬を製造するための、式Iの化合物、またはその医薬的に許容可能な塩の使用を提供する。
【0015】
本発明はさらに、1種以上の医薬的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせて式Iの化合物、またはその医薬的に許容可能な塩を含む、医薬組成物を提供する。特定の実施形態において、組成物はさらに、1種以上の他の治療剤を含む。本発明はまた、式Iの化合物を合成するための新規中間体およびプロセスを包含する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
軽度認識障害は、臨床所見および時間と共に軽度認識障害を示す患者からアルツハイマー型認知症への進行に基づいてアルツハイマー病に関連する認知症の潜在的な前駆期と定義されている(Morrisら、Arch.Neurol.、58、397−405(2001);Petersenら、Arch.Neurol.、56、303−308(1999))。「軽度認識障害からアルツハイマー病への進行の予防」という用語は、患者における軽度認識障害からアルツハイマー病への進行を遅延、停止または反転することを含む。
【0017】
好ましい化合物は、
【化3】

またはその医薬的に許容可能な塩であり、遊離塩基であることが特に好ましい。
【0018】
本明細書で使用される場合、「治療する」または「治療すること」という用語は、既存の症状または障害の進行または重症度を抑制、遅延、停止、または反転することを含む。
【0019】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、ヒトを指す。
【0020】
「Aベータペプチドの産生の阻害」という用語は、患者におけるAベータペプチドのインビボレベルの減少を意味すると解釈される。
【0021】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、患者へ単回または複数回投与すると、診断または治療下の患者に所望の効果を提供する、本発明の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩の量または用量を指す。
【0022】
有効量は、公知の技術の使用によって、および同様の条件下で得られた結果を観察することによって、当業者としての担当医によって容易に決定され得る。患者についての有効量を決定する際に、限定されないが、患者の種;その大きさ、年齢および全体的な健康;関与する特定の疾患または障害;疾患または障害の関与の程度または重症度;個々の患者の反応;投与される特定の化合物;投与様式;投与される製剤のバイオアベイラビリティ特性;選択される投与レジメン;併用薬の使用;および他の関連状況を含む、複数の要因が担当医によって考慮される。
【0023】
本発明の化合物は全体的に広い投薬範囲にわたって効果的である。例えば、1日当たりの投薬は、通常、約0.01〜約20mg/kg体重の範囲内である。一部の場合、上述の範囲の下限値以下の投薬レベルが十分以上であってもよく、一方、他の場合、さらに多い用量が許容可能な副作用で利用されてもよく、したがって、上記の投薬範囲は本発明の範囲を限定することを決して意図しているわけではない。
【0024】
本発明の化合物は、好ましくは、経口および非経口経路を含む、生物学的に利用可能な化合物を生じる、任意の経路によって投与される医薬組成物として製剤化される。最も好ましくは、このような組成物は経口投与用である。このような医薬組成物およびそれを調製するためのプロセスは当該分野において周知である(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(D.B.Troy編、第21版、Lippincott、Williams & Wilkins、2006)を参照のこと)。
【0025】
当業者は、本発明の化合物がスキームAに示されるように互変異性型で存在し得ることは理解するであろう。この適用において本発明の化合物の特定の互変異性体の1つに対して任意の参照が与えられる場合、互変異性型およびその全ての混合物の両方を包含することが理解される。
【化4】
【0026】
本発明の化合物、またはその塩は、当業者に知られている種々の手順によって調製でき、それらのいくつかは、以下のスキーム、調製例、および実施例に例示される。記載されている経路の各々についての特定の合成工程は、式Iの化合物、またはその塩を調製するために、異なる手段で、または異なるスキームからの工程と併用して組み合わされてもよい。以下のスキームにおける各工程の生成物は、抽出、蒸発、沈殿、クロマトグラフィー、濾過、粉砕、および結晶化を含む、従来の方法によって回収できる。
【0027】
特定の立体化学中心は特定されないままであり、特定の置換基は、明確さの目的のために以下のスキームにおいて取り除かれており、決してスキームの教示を限定することを意図しているわけではない。さらに、個々の異性体、光学異性体、またはジアステレオマーは、選択的結晶化技術またはキラルクロマトグラフィーなどの方法によって式Iの化合物の合成の任意の簡便な点で当業者により分離または分割されてもよい(例えば、J.Jacquesら、「Enantiomers,Racemates,and Resolutions」、John Wiley and Sons,Inc.、1981、およびE.L.Eliel and S.H.Wilen、「Stereochemistry of Organic Compounds」、Wiley−Interscience、1994を参照のこと)。「異性体1」および「異性体2」の指定は、最初および次にそれぞれキラルクロマトグラフィーから溶出する化合物を指し、キラルクロマトグラフィーが合成の初期に開始される場合、同じ指定がその後の中間体および実施例に適用される。さらに、以下のスキームに記載される中間体は複数の窒素保護基を含有する。可変保護基は、実施される特定の反応条件および特定の変換に応じて各出現において同じであってもよく、異なっていてもよい。保護および脱保護条件は当業者に周知であり、文献に記載されている(例えば、Peter G.M.Wuts and Theodora W.Greene、John Wiley and Sons,Inc.2007による「Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis」、第4版を参照のこと)。
【0028】
当業者は、本発明の化合物が、少なくとも2つのキラル中心:
【化5】

を含有するコアから構成されることを理解するであろう。本発明は、前記化合物の全ての個々の光学異性体、およびラセミ体を含む光学異性体の混合物を意図するが、スキームBに例示されるように1および2で標識した炭素原子において絶対配置である化合物が本発明の好ましい化合物である。
【0029】
本明細書に使用される略語は、Aldrichimica Acta、Vol.17、No.1、1984に従って定義される。他の略語は以下の通りに定義される:「APP」はアミロイド前駆体タンパク質を指し;「BOC」はtert−ブチルオキシカルボニルを指し;「CSF」は脳脊髄液を指し;「DCC」は1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドを指し;「DIC」はジイソプロピルカルボジイミドを指し;「DMEM」はダルベッコ改変イーグル培地を指し;「DMSO」はジメチルスルホキシドを指し;「EDCI」は1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩を指し;「ee」は鏡像体過剰率を指し;「EtOAc」は酢酸エチルを指し;「Ex」は実施例を指し;「F12」はHam’s F12培地を指し;「FBS」はウシ胎仔血清を指し;「FRET」は蛍光共鳴エネルギー移動を指し;「HEK」はヒト胚腎臓を指し;「HOAc」は酢酸を指し;「HOAt」は1−ヒドロキシ−7−アゾベンゾトリアゾールを指し;「HOBt」は1−ヒドロキシルベンゾトリアゾール水和物を指し;「HPLC」は高速液体クロマトグラフィーを指し;「hr」は時間を指し;「IC50」は薬剤についての可能な最大阻害反応の50%を生じるその薬剤の濃度を指し;「min」は分を指し;「MTBE」はメチルtert−ブチルエーテルを指し;「PDAPP」は血小板由来アミロイド前駆体タンパク質を指し;「Prep」は調製例を指し;「RFU」は相対蛍光単位を指し;「R」は反応時間を指し;「RT」は室温を指し;「SCX」は強カチオン交換を指し;「SFC」は超臨界流体クロマトグラフィーを指し;「THF」はテトラヒドロフランを指す。
【0030】
以下のスキームにおいて、全ての置換基は、他に示されない限り、上記に定義されている。試薬および開始物質は一般に当業者に容易に利用可能である、他のものは、既知の構造的に類似した化合物の合成と同様である有機および複素環化学の標準的な技術、ならびに任意の新規手順を含む、以下の調製例および実施例に記載される手順によって作製できる。
【0031】
【化6】

スキーム1はオキシム(4)および(8)の形成を示す。オキシムは、各々、二環式イソオキサゾール(5)を形成するために使用できる。置換芳香族基は、スキーム1、工程1および工程7に示されるように合成の異なる点に挿入できる。「PG」は、カルバメートおよびアリルなどのアミノ基について開発された保護基である。このような基は周知であり、当該分野において理解されている。
【0032】
2工程の反応において、ベータハロゲン(1)を有するケトンは、炭酸カリウムなどの無機塩基を使用して保護アリルアミン(2)でアルキル化し(3、工程1)、次いでエタノールなどの極性プロトン性溶媒中でヒドロキシルアミン塩酸塩およびピリジンなどの有機塩基で処理して、オキシムを得ることができる(4、工程2)。次いでオキシム(4)は、トルエンまたはキシレンなどの非極性溶媒中でオキシム(4)を加熱することなどのいくつかの方法によって3+2環化において二環式イソオキサゾール(5)に変換して、二環式イソオキサゾールを形成できる(5、工程3)。あるいは、オキシムはギ酸などの酸で処理されるジメチルアセタール(6)から開始して、アルデヒドを形成できる(7、工程4)。工程5において、次いでアルデヒド(7)はヒドロキシルアミン塩酸塩および酢酸ナトリウム三水和物などの塩基でオキシム(8)に変換できる。二環式イソオキサゾール(9)は次亜塩素酸ナトリウム水溶液を使用して工程6に示されるようにオキシム(8)から形成できる。工程7において、次いで保護二環式イソオキサゾール(9)は、芳香族有機リチウム試薬またはグリニャール試薬と反応して、保護二環式イソオキサゾール(5)を得ることができる。
【0033】
【化7】

スキーム2は保護ピロロチアジン(12)についての異なる経路を例示する。保護二環式イソオキサゾール(5)は、酢酸中の粉末Znで処理して、または圧力水素化条件下でエタノールなどの極性溶媒中のラネーニッケルによって、アミノピロリジンメタノール(13、工程11)を得ることができる。次いでアミノピロリジンメタノール(13)は、THFなどの極性溶媒中のベンゾイルイソチオシアネートで反応し、続いて1,1カルボニルジイミダゾール(CDI)を添加して、縮合保護ピロリジンチアジン(12、工程12)を得ることができる。あるいは、二環式イソオキサゾール(5)のアミンはベンゾイルイソチオシアネートと反応して、チオ尿素(10、工程8)を得ることができ、次いで工程9において、イソオキサゾール環は酢酸中の粉末亜鉛で開き、ヒドロキシル化合物(11)を得ることができる。次いでヒドロキシル化合物(11)は、THFなどの極性非プロトン性溶媒中のCDIまたはDCM中の1−クロロ−N,N,2−トリメチルプロペニルアミンで処理して、縮合保護ピロリジンチアジン(12、工程10)を得ることができる。縮合ピロリジンチアジン(12)はまた、トリフェニルホスフィンおよびジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)を使用することなど光延反応から形成できる。
【0034】
【化8】

スキーム3は、ピロロチアジン(12)のアニリン(14、工程13)への変換を示し、次いでアニリンはアシル化され、続いてピロリジンの脱保護およびヘテロアリール化が行われ得る。チアジンアミンの脱保護は式Iの化合物を生じる。
【0035】
アジド脱ハロゲン化が、アジ化ナトリウムなどのアジド源の存在下で適切なピロロチアジン(12)で実施される。このようなアジド脱ハロゲン化反応は周知であり、当該分野において理解されている。得られるアジド中間体のアニリン(14、工程13)への還元は、周知であり、当該分野において記載されている水素化条件によって、またはLiAlH、NaBH、PPhなどの当該分野において周知の還元剤によって行われ得る。
【0036】
BOC保護ピロリジンは当該分野において周知の酸性条件下で脱保護できる(工程14の工程1)。次いで脱保護ピロリジンは、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、またはN,N,N,N’−テトラメチルグアニジンなどの有機塩基を使用して置換芳香族ピリミジンで求核芳香族置換(SNAr)においてヘテロアリール化して、化合物15を得ることができる(工程14の工程2)。アニリン(15)はカップリング条件下で複素芳香族カルボン酸(16)とカップリングできる(工程15の工程1)。当業者は、カルボン酸およびアミンの反応から得られるアミド形成についての複数の方法および試薬が存在することを認識するであろう。例えば、カップリング試薬およびDIPEAまたはトリエチルアミンなどのアミン塩基の存在下で化合物16の適切な酸との適切なアニリン(15)の反応は、チアジンアミンの脱保護後、式Iの化合物を生じる。カップリング試薬としては、DCC、DIC、EDCIなどのカルボジイミド、ならびにHOBtおよびHOAtなどの芳香族オキシムが挙げられる。さらに、HBTU、HATU、PyBOP、およびPyBrOPなどの非求核アニオンのウロニウムまたはホスホニウム塩が、多くの従来のカップリング試薬の代わりに使用されてもよい。DMAPなどの添加剤が反応を向上させるために使用されてもよい。あるいは、保護アニリンアミン(15)はトリエチルアミンまたはピリジンなどの塩基の存在下で置換塩化ベンゾイルを使用してアシル化できる。次いで保護チアジンアミンは、エタノールなどの極性非プロトン性溶媒中のピリジンおよびメチルヒドロキシルアミン塩酸塩などの有機塩基またはメタノール中の水酸化リチウムなどの無機塩基と脱保護して、式Iの化合物を得ることができる。
【0037】
任意の工程において、式Iの化合物の医薬的に許容可能な塩は、標準条件下で適切な溶媒中の適切な医薬的に許容可能な酸との式Iの適切な遊離塩基の反応により形成できる。さらに、このような塩の形成は窒素保護基の脱保護と同時に起こる。このような塩の形成は周知であり、当該分野において理解されている。例えば、Gould,P.L.、「Salt selection for basic drugs」、International Journal of Pharmaceutics、33:201−217(1986);Bastin,R.J.ら、「Salt Selection and Optimization Procedures for Pharmaceutical New Chemical Entities」、Organic Process Research and Development, :427−435(2000);and Berge,S.M.ら、「Pharmaceutical Salts」、Journal of Pharmaceutical Sciences、66:1−19、(1977)を参照のこと。当業者は、式Iの化合物が容易に変換され、塩酸塩などの医薬的に許容可能な塩として単離できることを理解するであろう。
【実施例】
【0038】
調製例および実施例
以下の調製例および実施例は本発明をさらに例示する。反対に示されない限り、本明細書に例示される化合物は、Symyx(登録商標)Drawバージョン3.2またはバージョン4.0(Symyx Solution,Inc.)またはIUPACNAME ACDLABSを使用して命名され、番号付けされる。
【0039】
調製例1
1−(3−ブロモフェニル)−2−(ジアリルアミノ)エタノン
【化9】

炭酸カリウム(38.8g、281mmol)をアセトニトリル(430mL)中の3−ブロモフェナシルブロミド(60g、216mmol)に加え、混合物を窒素下で0℃に冷却する。ジアリルアミン(34.6mL、280.63mmol)を1時間にわたって滴下して加え、反応物を一晩22℃に加温する。粗反応混合物を濃縮し、残渣を水(300mL)およびMTBE(300mL)中に分配する。水層を捨て、有機層を水(100mL、2×)およびブライン(100mL)で洗浄する。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を一定重量まで蒸発させて、標題化合物(62g、98%)を得る。ES/MS(m/e):294(M+1)。
【0040】
調製例2
ベンジルN−(2,2−ジメトキシエチル)カルバメート
【化10】

トルエン(120mL)中のアミノアセトアルデヒドジメチルアセタール(25mL、229mmol)の溶液を、4.85Mの水酸化ナトリウム水溶液(70.8mL、343.5mmol)により0℃で処理する。混合物を0℃にて10分間撹拌し、添加の間、20℃未満の内部温度を維持しながらクロロギ酸ベンジル(33.8mL、229mmol)を加える。混合物を4時間にわたって室温に加温する。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮乾固して標題化合物(54g、98%)を得る。ES/MS(m/e):240(M+H)。
【0041】
調製例3
ベンジルN−アリル−N−(2,2−ジメトキシエチル)カルバメート
【化11】

トルエン(180mL)中のベンジルN−(2,2−ジメトキシエチル)カルバメート(50g、208.9mmol)の溶液を、窒素下で固体水酸化カリウム(51.6g、919.69mmol)で処理する。10分後、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(0.8g、3.1mmol)を加える。さらに10分後、トルエン(50mL)中の臭化アリル(33g、272.8mmol)の溶液を10分にわたって滴下して加える。得られた混合物を50℃にて48時間撹拌する。混合物を室温に冷却し、水でクエンチする。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮乾固して標題化合物(44g、75%)を得る。ES/MS(m/e):280(M+H)。
【0042】
調製例4
ベンジルN−アリル−N−(2−オキソエチル)カルバメート
【化12】

ギ酸(36.8mL、860mmol)および水(4.84mL)中のベンジルN−アリル−N−(2,2−ジメトキシエチル)カルバメート(30g、107mmol)の溶液を室温にて一晩撹拌する。混合物を濃縮し、ヘキサン/酢酸エチル(1:2)および水で希釈する。有機層を分離し、pH=6になるまでブライン溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒を蒸発させて、標題化合物(25g、99%)を得る。ES/MS(m/e):234(M+H)。
【0043】
調製例5
1−(3−ブロモフェニル)−2−(ジアリルアミノ)エタノンオキシム
【化13】

エタノール(720mL)およびピリジン(24.8mL、307mmol)中の1−(3−ブロモフェニル)−2−(ジアリルアミノ)エタノン(60g、204.7mmol)の溶液を22℃にて15分撹拌する。ヒドロキシルアミン塩酸塩(17g、246mmol)を1時間にわたって溶液に小分けして加える。反応物を2時間50℃に加温し、次いで16時間70℃に加熱する。溶媒を蒸発させ、残渣を水(300mL)およびメチルtert−ブチルエーテル(300mL)中に分配する。有機層を分離し、水(100mL、2×)およびブライン(100mL)で洗浄する。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発乾固して標題化合物(75.5g、79%)を得る。ES/MS(m/e):309(M+1)。
【0044】
調製例6
ベンジルN−アリル−N−[2−ヒドロキシイミノエチル]カルバメート
【化14】

アセトニトリル(150mL)中のベンジルN−アリル−N−(2−オキソエチル)カルバメート(25g、107mmol)の溶液を、ヒドロキシルアミン塩酸塩(9.68g、139mmol)および酢酸ナトリウム三水和物(16g、117.9mmol)の水溶液(75mL)で処理する。混合物を室温にて一晩撹拌する。アセトニトリルを蒸発させ、水溶液を酢酸エチルで抽出する。有機層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮して、標題化合物(24g、90%)を得る。ES/MS(m/e):249(M+H)。
【0045】
調製例7
5−アリル−6a−(3−ブロモフェニル)−3,3a,4,6−テトラヒドロ−1H−ピロロ[3,4−c]イソオキサゾール
【化15】

粗1−(3−ブロモフェニル)−2−(ジアリルアミノ)エタノンオキシム(75.5g、195.34mmol)をトルエン(600mL)に溶解し、12時間還流する。溶媒を真空中で蒸発させ、残渣を水性1N HCl(1L)とメチルtert−ブチルエーテル(300mL)の混合物に溶解する。混合物を15分間撹拌し、珪藻土(10g)を加える。混合物をさらに20分間撹拌し、珪藻土で濾過する。濾過ケーキをさらに水性1N HCl(200mL)およびメチルtert−ブチルエーテル(200mL)で洗浄する。有機層を分離し、1N HCl(2×100mL)で洗浄する。水層を合わせ、pHをNaOH50%w/wで9に調整する。水性混合物をメチルtert−ブチルエーテル(3×250mL)で抽出する。有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過する。濾液を蒸発させ、真空下で乾燥させて、赤色の固体(60g)を得る。赤色の固体をヘプタン(600mL)で希釈し、混合物を20分間加熱して還流する。炭(2g)を加え、混合物を珪藻土で濾過する。
【0046】
濾液を大気圧下で濃縮して300mLの最終体積に調整する。溶液を22℃に冷やし、3時間撹拌する。淡黄色の固体を濾過により回収し、一定重量まで真空下で乾燥させて、標題化合物(40g、60%)を得る。ES/MS(m/e):309(M+1)。
【0047】
調製例8
ベンジル3,3a,4,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]イソオキサゾール−5−カルボキシレート
【化16】

ジクロロメタン(338mL)中のベンジルN−アリル−N−[2−ヒドロキシイミノエチル]カルバメート(24g、96.6mmol)の溶液を、次亜塩素酸ナトリウム(106.08mmol、143.06mL)の5%w/w水溶液で10分にわたって滴下して処理する。得られた混合物を室温にて一晩撹拌する。反応を亜硫酸水素ナトリウム(7g)の40%水溶液でクエンチする。有機層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮する。粗生成物をヘキサン中の5%酢酸エチルで溶出するシリカゲルで精製して標題化合物(18g、75%)を得る。ES/MS(m/e):247(M+H)。
【0048】
調製例9
ベンジル6a−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−3,3a,4,6−テトラヒドロ−1H−ピロロ[3,4−c]イソオキサゾール−5−カルボキシレート
【化17】

n−ブチルリチウム(25.4mL、40.6mmol)の1.6Mヘキサン溶液を、テトラヒドロフラン(60mL)中の4−ブロモ−1−フルオロ−2−ヨードベンゼン(12.22g、40.6mmol)の−78℃の溶液に滴下して加えて黄色の溶液を得、それを15分間、−78℃で撹拌する。三フッ化ホウ素エーテル(5.14mL、40.6mmol)を、テトラヒドロフラン(60mL)中のベンジル3,3a,4,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]イソオキサゾール−5−カルボキシレート(5g、20.3mmol)の別の−78℃の溶液に加え、混合物を−78℃にて5分間撹拌する。この溶液を以前に調製した−78℃の有機リチウム混合物にカニューレにより加える。合わせた混合物を−78℃にて30分間撹拌する。混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチし、室温に加温する。混合物を酢酸エチル(3×)で抽出し、有機抽出物を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を真空中で除去する。粗生成物を、35分、ヘキサン勾配中の5%〜100%酢酸エチルを用いてシリカゲルで精製して、標題化合物(2.27g、27%)を得る。ES/MS(m/e):(79Br/81Br)421/423(M+H)。
【0049】
調製例10
ベンジル1−(ベンゾイルカルバモチオイル)−6a−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−3,3a,4,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]イソオキサゾール−5−カルボキシレート
【化18】

ベンゾイルイソチオシアネート(2.87mL、21.28mmol)を、テトラヒドロフラン(95mL)中のベンジル6a−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−3,3a,4,6−テトラヒドロ−1H−ピロロ[3,4−c]イソオキサゾール−5−カルボキシレート(5.977g、14.2mmol)の溶液に滴下して加え、窒素下で一晩撹拌する。溶媒を真空中で除去する。粗生成物を、30分、ヘキサン勾配中の5%〜100%EtOAcを用いてシリカゲルで精製して、標題化合物(6.05g、73%)を得る。ES/MS(m/e):(79Br/81Br)584/586(M+H)。
【0050】
調製例11
[1−アリル−4−アミノ−4−(3−ブロモフェニル)ピロリジン−3−イル]メタノール
【化19】

酢酸(400mL)中の5−アリル−6a−(3−ブロモフェニル)−3,3a,4,6−テトラヒドロ−1H−ピロロ[3,4−c]イソオキサゾール(40g、129.4mmol)の22℃の溶液を、一度に亜鉛末(42.3g、646.8mmol)で処理する。反応物を室温にて1時間激しく撹拌する。酢酸エチル(400mL)を加え、混合物を珪藻土で濾過する。濾液を蒸発させ、残渣を真空下で乾燥させる。残渣を水(300mL)およびMTBE(300mL)中で分配する。pHを水酸化ナトリウム50%w/wで8に調整し、有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過する。濾液を蒸発させ、残渣を真空下で乾燥させて標題化合物(41g、97%)を得る。ES/MS(m/e):311(M+1)。
【0051】
調製例12
ベンジル3−(ベンゾイルカルバモチオイルアミノ)−3−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−4−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−カルボキシレート
【化20】

ベンジル1−(ベンゾイルカルバモチオイル)−6a−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−3,3a,4,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]イソオキサゾール−5−カルボキシレート(6.05g、10.4mmol)および亜鉛(粉末、<10ミクロン)(6.77g、103.5mmol)を窒素下で一晩室温にて酢酸(52mL)中で撹拌する。反応物を酢酸エチルで希釈し、珪藻土で濾過する。溶媒を真空中で除去し、残渣を酢酸エチル、水および飽和炭酸水素ナトリウムで希釈する。混合物を酢酸エチル(3×)で抽出し、合わせた有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を真空中で除去する。粗生成物を、30分、ヘキサン勾配中の5%〜100%EtOAcを用いてシリカゲルで精製して標題化合物(5.222g、86%)を得る。ES/MS(m/e):(79Br/81Br)586/588(M+H)。
【0052】
調製例13
[(3R,4S)−1−アリル−4−アミノ−4−(3−ブロモフェニル)ピロリジン−3−イル]メタノール;(2R,3R)−2,3−ビス[(4−メチルベンゾイル)オキシ]ブタン二酸
【化21】

イソプロピルアルコール(914mL)中の[1−アリル−4−アミノ−4−(3−ブロモフェニル)ピロリジン−3−イル]メタノール(77g、235mmol)の溶液を70℃で加熱する。ジ−p−トルオイル−L−酒石酸(86.2g、223mmol)を加え、混合物を2時間にわたって22℃に冷やし、一晩撹拌する。スラリーを濾過して、淡黄色の固体を回収し、イソプロピルアルコールで洗浄する。固体を真空下で乾燥させて、標題化合物(63g、36%)を得る。ES/MS(m/e):311(M+1)。生成物を逆相キラルクロマトグラフィーにより分析する:最初の溶出異性体の分析(カラム:Chiralpak ID−3 4.6×50mm;溶出液:70:30、水性20mM炭酸水素アンモニウム:アセトニトリル;流量:UV215nmにて1.5mL/分)により、R=1.26分で鏡像異性的に過剰(96%ee)な鏡像異性体を確認する。
【0053】
調製例14
[(3R,4S)−1−アリル−4−アミノ−4−(3−ブロモフェニル)ピロリジン−3−イル]メタノール
【化22】

[(3R,4S)−1−アリル−4−アミノ−4−(3−ブロモフェニル)ピロリジン−3−イル]メタノール;(2R,3R)−2,3−ビス[(4−メチルベンゾイル)オキシ]ブタン二酸(63g、85.8mmol)を水性1N HCl(800mL)および酢酸エチル(400mL)と合わせ、混合物を22℃にて15分間撹拌する。層を分離し、水層のpHを水酸化ナトリウム50%w/wで10に調整する。水性混合物をメチルtert−ブチルエーテル(3×250mL)で抽出する。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、蒸発乾固して、標題化合物(27g、99%)を得る。ES/MS(m/e):311(M+1)。
【0054】
調製例15
N−[(4aR,7aS)−6−アリル−7a−(3−ブロモフェニル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド
【化23】

テトラヒドロフラン(270mL)中の[(3R,4S)−1−アリル−4−アミノ−4−(3−ブロモフェニル)ピロリジン−3−イル]メタノール(27g;86.7mmol)を窒素雰囲気下で−5℃に冷却する。ベンゾイルイソチオシアネート(12.3mL、91mmol)を0℃未満に温度を維持しながら滴下して加える。反応物を1時間にわたって22℃に加温する。1,1’−カルボニルジイミダゾール(28.1g、173.5mmol)を一度に加え、反応物を22℃にて1時間撹拌し、次いで16時間加熱して還流する。溶媒を真空中で除去し、残渣を真空下で乾燥させる。粗物質をメチルtert−ブチルエーテル(500mL)および水(250mL)中に分配する。有機層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、蒸発乾固する。粗物質を90/10〜60/40塩化メチレン/酢酸エチルのシリカゲル勾配で精製して標題化合物(27g、68%)を得る。ES/MS(m/e):456(M+1)。
【0055】
調製例16
ベンジル2−ベンズアミド−7a−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−6−カルボキシレート
【化24】

1,1’−カルボニルジイミダゾール(2.87g、17.7mmol)を、テトラヒドロフラン(52mL)中のベンジル3−(ベンゾイルカルバモチオイルアミノ)−3−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−4−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−カルボキシレート(5.198g、8.86mmol)の溶液に加える。混合物を室温にて1.5時間撹拌し、次いで反応物を窒素下で一晩還流にて加熱する。反応物を冷却し、水で希釈し、酢酸エチル(3×)で抽出する。有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を真空中で除去する。粗生成物を、30分、ヘキサン勾配中の5%〜100%EtOAcを用いてシリカゲルで精製して標題化合物(2.93g、58%)を得る。ES/MS(m/e):(79Br/81Br)。568/570(M+H)
【0056】
調製例17
N−[(4aR,7aS)−7a−(3−ブロモフェニル)−4a,5,6,7−テトラヒドロ−4H−ピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド
【化25】

室温のクロロホルム(22mL)中のN−[(4aR,7aS)−6−アリル−7a−(3−ブロモフェニル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド(1g、2.19mmol)およびN,N−ジメチルバルビツール酸(0.868g、5.48mmol)の混合物を、室温にて5分間、得られたスラリーに窒素を通して泡立てることによって脱気する。混合物をテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.261g、219μmol)で処理し、窒素下で1.5時間撹拌する。
【0057】
別のフラスコ中で、クロロホルム(486mL)中のN−[(4aR,7aS)−6−アリル−7a−(3−ブロモフェニル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド(22.2g、48.6mmol)およびN,N−ジメチルバルビツール酸(19.28g、121.6mmol)の混合物を、室温にて5分間、得られたスラリーに窒素を通して泡立てることによって脱気する。混合物をテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(5.79g、4.86mmol)で処理し、窒素下で2時間撹拌する。
【0058】
2つの反応物を合わせ、溶媒を真空中で除去して、粗生成物を得る。粗物質を、30分、ジクロロメタン勾配中の0.5%〜10%メタノールを用いてシリカゲルで精製して、標題化合物(22.4g、100%)を得る。ES/MS(m/e):(79Br/81Br)416/418(M+H)。
【0059】
調製例18
N−[7a−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−4a,5,6,7−テトラヒドロ−4H−ピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド
【化26】

ヨードトリメチルシラン(2.21mL、15.46mmol)を、室温のアセトニトリル(44mL)中のベンジル2−ベンズアミド−7a−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−6−カルボキシレート(2.93g、5.15mmol)の溶液に滴下して加える。反応物を室温にて2時間撹拌し、溶媒を真空中で除去する。粗生成物を、3:1のジクロロメタン:メタノールおよび次いで2:1のジクロロメタン:メタノール中の7Nアンモニアを使用してSCXカラムで精製して、標題化合物(2.098g、94%)を得る。ES/MS(m/e):(79Br/81Br)434/436(M+H)。
【0060】
調製例19
tert−ブチル(4aR,7aS)−2−ベンズアミド−7a−(3−ブロモフェニル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−6−カルボキシレート
【化27】

室温のジクロロメタン(367mL)中のN−[(4aR,7aS)−7a−(3−ブロモフェニル)−4a,5,6,7−テトラヒドロ−4H−ピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド(22.4g、36.69mmol)の溶液を、ジ−t−ブチルジカルボネート(8.81g、40.36mmol)、続いてトリエチルアミン(7.67mL、55.04mmol)で処理し、反応物を窒素下で室温にて1時間撹拌する。溶媒を真空中で除去し、粗生成物を、25分、ヘキサン勾配中の5%〜100%酢酸エチルを用いてシリカゲルで精製して標題化合物(20.22g、100%)を得る。ES/MS(m/e):(79B/81Br)516/518(M+H)。
【0061】
調製例20
tert−ブチル2−ベンズアミド−7a−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−6−カルボキシレート
【化28】

ジ−t−ブチルジカルボネート(1.16g、5.31mmol)およびトリエチルアミン(1.01mL、7.25mmol)を、ジクロロメタン(48mL)中のN−[7a−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−4a,5,6,7−テトラヒドロ−4H−ピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド(2.098g、4.83mmol)の溶液に加える。反応物を窒素下で室温にて1時間撹拌する。溶媒を真空中で除去し、粗生成物を、30分、ヘキサン勾配中の5%〜100%EtOAcを用いてシリカゲルで精製して、標題化合物(2.556g、99%)を得る。ES/MS(m/e):(79Br/81Br)534/536(M+H)。
【0062】
調製例21
tert−ブチル(4aR,7aS)−7a−(3−アミノフェニル)−2−ベンズアミド−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−6−カルボキシレート
【化29】

エタノール(100mL)中のtert−ブチル(4aR,7aS)−2−ベンズアミド−7a−(3−ブロモフェニル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−6−カルボキシレート(5g、9.7mmol)およびtrans−N,N’−ジメチル−1,2−シクロヘキサンジアミン(220.3mg、1.5mmol)の溶液を、アジ化ナトリウム(1.30g、19.4mmol)で処理する。L−アスコルビン酸ナトリウム塩水溶液(0.66M、3.2mL、2.1mmol)および水(10mL)を加え、フラスコの上部を窒素でパージする。混合物を硫酸銅(II)五水和物水溶液(0.33M、3.2mL、1.1mmol)で処理し、混合物を、窒素下で80℃にて1.5時間、予熱したホットプレート上で即座に加熱する。加熱すると均質の混合物が得られる。反応物を冷却し、氷水を加える。混合物を酢酸エチル(3×)で抽出する。有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を真空中で除去して、粗アジド生成物を得る。粗アジド生成物を冷エタノール(150mL)中の10%パラジウム炭素(2g)と合わせ、真空/窒素および次いで真空/水素を使用して混合物をパージする。混合物を、2時間、30psiの水素下で室温にて撹拌する。反応物を通気し、ジクロロメタンを使用して混合物を珪藻土で濾過して、濾過ケーキをリンスする。溶媒を真空中で濾液から除去し、粗生成物を、ジクロロメタン中の50%酢酸エチルを用いてシリカゲルで精製して、標題化合物(4g、91%)を得る。ES/MS(m/e):453(M+H)。
【0063】
調製例22
tert−ブチル7a−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−2−ベンズアミド−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−6−カルボキシレート
【化30】

エタノール(50mL)中のtert−ブチル2−ベンズアミド−7a−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−6−カルボキシレート(2.556g、4.8mmol)およびtrans−N,N’−ジメチル−1,2−シクロヘキサンジアミン(150mg、1.1mmol)の溶液をアジ化ナトリウム(933mg、14.3mmol)で処理する。L−アスコルビン酸ナトリウム塩水溶液(0.66M、3.2mL、2.1mmol)および水(1mL)を加え、フラスコの上部を窒素でパージする。混合物を硫酸銅(II)五水和物水溶液(0.33M、3.2mL、1.1mmol)で処理し、混合物を、予熱したホットプレート上で、窒素下、80℃にて1.5時間、即座に加熱する。加熱すると均質な混合物が得られる。反応物を冷却し、氷水で希釈し、混合物を酢酸エチル(3×)で抽出する。有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を真空中で除去して、粗アジド生成物を得る。粗アジド生成物を、冷エタノール(150mL)中の10%パラジウム炭素(1g)と合わせ、真空/窒素および次いで真空/水素を使用して混合物をパージする。混合物を5時間、30psiの水素下で室温にて撹拌する。反応物を通気し、珪藻土で濾過し、濾過ケーキをジクロロメタンでリンスする。真空中で濾液から溶媒を除去し、ジクロロメタン中の50%酢酸エチルを用いてシリカゲルで粗生成物を精製して、標題化合物(2.014g、89%)を得る。ES/MS(m/e):471((M+H)。
【0064】
調製例23
tert−ブチル(4aR,7aS)−2−ベンズアミド−7a−[3−[(5−フルオロピリジン−2−カルボニル)アミノ]フェニル]−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−6−カルボキシレート
【化31】

ジメチルホルムアミド(1ml)を含有するジクロロメタン(4mL)中のtert−ブチル(4aR,7aS)−7a−(3−アミノフェニル)−2−ベンズアミド−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−6−カルボキシレート(93mg、0.21mmol)、5−フルオロピリジン−2−カルボン酸(31.9mg、0.23mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(56.7mg、0.41mmol)および1−(2−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(40mg、0.21mmol)のスラリーをジイソプロピルエチルアミン(179.2μL、1.03mmol)で処理し、得られた混合物を室温にて一晩撹拌する。反応混合物をジクロロメタン(5mL)および飽和炭酸水素ナトリウム(15mL)で希釈する。有機層を分離し、飽和塩化ナトリウム水溶液(10mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を真空中で除去して、粗標題化合物(105mg、89%)を得る。ES/MS(m/e):576(M+H)。
【0065】
調製例24
N−[3−[(4aR,7aS)−2−ベンズアミド−4a,5,6,7−テトラヒドロ−4H−ピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]フェニル]−5−フルオロ−ピリジン−2−カルボキシアミド;2,2,2−トリフルオロ酢酸
【化32】

tert−ブチル(4aR,7aS)−2−ベンズアミド−7a−[3−[(5−フルオロピリジン−2−カルボニル)アミノ]フェニル]−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−6−カルボキシレート(105mg、0.18mmol)をジクロロメタン(2mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸(500μL、6.6mmol)で処理する。得られた黄色の溶液を室温にて4時間撹拌し、溶媒を真空中で除去して、粗標題生成物(190mg、100%)を得る。ES/MS(m/e):476(M+H)。
【0066】
調製例25
N−[(4aR,7aS)−7a−(3−アミノフェニル)−4a,5,6,7−テトラヒドロ−4H−ピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド
【化33】

トリフルオロ酢酸(25mL)を、ジクロロメタン(100mL)中のtert−ブチル(4aR,7aS)−7a−(3−アミノフェニル)−2−ベンズアミド−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−6−カルボキシレート(4g、8.84mmol)の溶液に加え、混合物を窒素下で4時間、室温にて撹拌する。溶媒を真空中で除去し、粗生成物を、3:1のジクロロメタン:メタノールおよび次いで2:1のジクロロメタン:メタノール中の7Nアンモニアを使用したSCXカラムで精製して、標題化合物(2.49g、80%)を得る。ES/MS(m/e):353(M+H)。
【0067】
調製例26
N−[7a−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−4a,5,6,7−テトラヒドロ−4H−ピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド
【化34】

トリフルオロ酢酸(10mL)を、ジクロロメタン(30mL)中のtert−ブチル7a−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−2−ベンズアミド−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−6−カルボキシレート(2.013g、4.28mmol)の溶液に加え、混合物を窒素下で4時間、室温にて撹拌する。溶媒を真空中で除去し、粗生成物を、3:1のジクロロメタン:メタノールおよび次いで2:1のジクロロメタン:メタノール中の7Nアンモニアを使用したSCXカラムで精製して、標題化合物(1.555g、98%)を得る。ES/MS(m/e):371(M+H)。
【0068】
調製例27
N−[(4aR,7aS)−7a−(3−アミノフェニル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド
【化35】

1,4−ジオキサン(60mL)中のN−[(4aR,7aS)−7a−(3−アミノフェニル)−4a,5,6,7−テトラヒドロ−4H−ピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド(2.49g、7.06mmol)、5−フルオロ−2−クロロピリミジン(3.74g、28.26mmol)、およびジイソプロピルエチルアミン(6.16mL、35.32mmol)の溶液を窒素下で4時間加熱して還流する。反応物を冷やし、水で希釈し、酢酸エチル(3×)で抽出する。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を真空中で除去して粗生成物を得る。粗生成物を、25分、ヘキサン勾配中の5%〜100%酢酸エチルを用いてシリカゲルで精製して、標題化合物(2.51g、79%)を得る。ES/MS(m/e):449(M+H)。
【0069】
調製例28
N−[3−[(4aR,7aS)−2−ベンズアミド−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]フェニル]−5−フルオロ−ピリジン−2−カルボキシアミド
【化36】

N−[3−[(4aR,7aS)−2−ベンズアミド−4a,5,6,7−テトラヒドロ−4H−ピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]フェニル]−5−フルオロ−ピリジン−2−カルボキシアミド;2,2,2−トリフルオロ酢酸(150mg、254μmol)、5−フルオロ−2−クロロピリミジン(68mg、51μmol)およびジイソプロピルエチルアミン(98μL、56μmol)の溶液を、ジメチルスルホキシド(5mL)中で40℃にて一晩加熱する。さらに5−フルオロ−2−クロロピリミジン(68mg、51μmol)およびジイソプロピルエチルアミン(98μL、56μmol)を加え、混合物を50℃にて一晩加熱する。さらに5−フルオロ−2−クロロピリミジン(68mg、51μmol)およびジイソプロピルエチルアミン(98μL、56μmol)を加え、混合物を3日目の夜に50℃にて一晩加熱する。反応物を冷やし、飽和炭酸ナトリウム水溶液(50mL)で希釈してスラリーを得、それを濾過し、50℃にて4時間、真空オーブン中で乾燥させて標題化合物(60mg、41%)を得る。ES/MS(m/e):449(M+H)。
【0070】
代替調製例28
N−[(4aR,7aS)−7a−(3−アミノフェニル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド(282mg、628.73μmol)および5−フルオロピリジン−2−カルボン酸(106.46mg、754.47μmol)をジクロロメタン(3mL)およびジメチルホルムアミド(0.5mL)中で合わせる。1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(112.70mg、817.35μmol)および次いで1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(159.07mg、817.35μmol)を加え、得られた混合物を窒素下で室温にて5時間撹拌する。反応混合物を水で希釈し、pHを1N NaOHで約12に調整する。混合物を酢酸エチル(3×)で抽出する。有機抽出物を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を真空中で除去して粗生成物を得る。粗生成物を、20分、ヘキサン勾配中の5%〜100%酢酸エチルを用いてシリカゲルで精製して標題化合物(327mg、91%)を得る。ES/MS(m/e):571(M+H)。
【0071】
調製例29
N−[7a−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド
【化37】

N−[7a−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−4a,5,6,7−テトラヒドロ−4H−ピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド(705mg、1.90mmol)、5−フルオロ−2−クロロピリミジン(1.01g、7.61mmol)、およびジイソプロピルエチルアミン(1.66mL、9.52mmol)の溶液を1,4−ジオキサン(20mL)中で加熱して窒素下で4時間還流する。反応物を冷却し、水で希釈し、酢酸エチル(3×)で抽出する。有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を真空中で除去して粗生成物を得る。粗生成物を、25分、ヘキサン勾配中の5%〜100%酢酸エチルを用いてシリカゲルで精製して標題化合物(590mg、66%)を得る。ES/MS(m/e):467(M+H)。
【0072】
調製例30
N−[3−[(4aR,7aS)−2−ベンズアミド−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキシアミド
【化38】

N−[(4aR,7aS)−7a−(3−アミノフェニル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド(400mg、891.81μmol)および5−メトキシピラジン−2−カルボン酸(165mg、1.07mmol)をジクロロメタン(4mL)およびジメチルホルムアミド(0.5mL)中で合わせる。1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(160mg、1.16mmol)および次いで1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(226mg、1.16mmol)を加え、得られた混合物を窒素下で室温にて5時間撹拌する。反応混合物を水で希釈し、pHを1N NaOHで約12に調整する。混合物を酢酸エチル(3×)で抽出する。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を真空中で除去する。粗生成物を、20分、ヘキサン勾配中の5%〜100%酢酸エチルを用いてシリカゲルで精製して標題化合物(482mg、92%)を得る。ES/MS(m/e):585(M+H)。
【0073】
調製例31
N−[3−[2−ベンズアミド−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−フルオロ−ピリジン−2−カルボキシアミド
【化39】

N−[7a−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド(302mg、647μmol)および5−フルオロピリジン−2−カルボン酸(110mg、777μmol)をジクロロメタン(3mL)およびジメチルホルムアミド(0.5mL)中で合わせる。1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(116mg、842μmol)および次いで1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(164mg、842μmol)を加え、混合物を窒素下で室温にて一晩撹拌する。反応混合物を水で希釈し、pHを1N NaOHで約12に調整し、次いで酢酸エチル(3×)で抽出する。有機層を合わせ、濾過して不溶性材料を収集する。固体を水および酢酸エチルで洗浄し、真空下で乾燥させて標題化合物を得る。濾液から有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を真空中で除去する。残渣を、20分、ヘキサン勾配中の5%〜100%酢酸エチルを用いてシリカゲルで精製して、合わせた収率(275mg、72%)でさらなる標題化合物を得る。ES/MS(m/e):590(M+H)。
【0074】
調製例32
N−[(4aR,7aS)−7a−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド、(異性体1)
【化40】

ラセミ体N−[7a−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド(1.694g、3.63mmol)をHPLC(カラム:Chiralcel OJ、8×35cm;溶出液:90%メタノール(0.2%ジメチルエチルアミン)および10%アセトニトリル;UV280nmにて流量400mL/分)によりキラル精製する。第1の溶出異性体の分析(カラム:Chiralcel OJ−H 0.46×15cm;溶出液:10:90のアセトニトリル:メタノール(0.2%ジメチルエチルアミンを有する);UV280nmにて流量:0.6mL/分)により、R=6.70分で鏡像異性的に過剰(99%ee)な鏡像異性体(723mg、43%)を確認する。ES/MS(m/e):467(M+H)。
【0075】
調製例33
N−[3−[(4aR,7aS)−2−ベンズアミド−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキシアミド(異性体1)
【化41】

N−[(4aR,7aS)−7a−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド(0.361g、0.77mmol、異性体1)を、ジクロロメタン(4mL)およびDMF(0.5mL)の混合物に溶解する。5−メトキシピラジン−2−カルボン酸(240mg、1.55mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(210mg、1.55mmol)および1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(300mg、1.55mmol)を混合物に加え、混合物を室温にて一晩撹拌する。反応溶液を12gのシリカゲルを充填したカラムに直接加え、40gのシリカゲルカラムを使用して精製し、0〜100%酢酸エチル/ヘキサン勾配で溶出する。生成物を酢酸エチル(200mL)に溶解し、1N NaOH(2×50mL)、およびブライン(1×50mL)で洗浄する。シリカゲル精製を上記のように反復して標題化合物(350mg、74%)を得る。ES/MS(m/e):603(M+H)。
【0076】
調製例34
N−[3−[(4aR,7aS)−2−ベンズアミド−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]フェニル]−5−シアノ−ピリジン−2−カルボキシアミド
【化42】

N−[(4aR,7aS)−7a−(3−アミノフェニル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド(0.30g、0.67mmol)をジクロロメタン(10mL)および5−シアノピリジン−2−カルボン酸(129mg、0.87mmol)に溶解し、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(185mg、1.34mmol)および1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(169mg、0.87mmol)を加える。ジイソプロピルエチルアミン(0.35mL、2mmol)を加え、反応物を室温にて一晩撹拌する。物質を、0〜100%酢酸エチル/ヘキサン勾配で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーで直接精製して標題化合物(360mg、88%)を得る。ES/MS(m/e):579(M+H)。
【0077】
調製例35
N−[3−[(4aR,7aS)−2−ベンズアミド−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]フェニル]−3,5−ジフルオロ−ピリジン−2−カルボキシアミド
【化43】

N−[(4aR,7aS)−7a−(3−アミノフェニル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド(0.30g、0.67mmol)をジクロロメタン(10mL)および3,5−ジフルオロピリジン−2−カルボン酸(138mg、0.87mmol)に溶解し、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(185mg、1.34mmol)および1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(169mg、0.87mmol)を加える。ジイソプロピルエチルアミン(0.35mL、2mmol)を加え、反応物を室温にて一晩撹拌する。反応物を、0〜100%酢酸エチル/ヘキサン勾配で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーで直接精製して標題化合物(330mg、84%)を得る。ES/MS(m/e):590(M+H)。
【0078】
調製例36
N−[3−[(4aR,7aS)−2−ベンズアミド−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−シアノ−ピリジン−2−カルボキシアミド、(異性体1)
【化44】

N−[(4aR,7aS)−7a−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド(0.180g、0.39mmol、異性体1)を、ジクロロメタン(2mL)およびDMF(0.25mL)の混合物に溶解する。5−シアノピリジン−2−カルボン酸(114mg、0.77mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(106mg、0.77mmol)および1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(150mg、0.77mmol)を加え、反応物を室温にて一晩撹拌する。混合物を水(10mL)、酢酸エチル(10mL)で希釈し、1N NaOH(100mL)の溶液に加える。混合物をEtOAc(2×100mL)で抽出し、有機層を合わせ、ブラインで洗浄する。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮する。残渣を、0〜100%酢酸エチル/ヘキサン勾配を使用したシリカゲルクロマトグラフィーで精製して標題化合物(133mg、57%)を得る。ES/MS(m/e):597(M+H)。
【0079】
調製例37
N−[3−[(4aR,7aS)−2−ベンズアミド−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−3,5−ジフルオロ−ピリジン−2−カルボキシアミド、(異性体1)
【化45】

N−[(4aR,7aS)−7a−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド(0.180g、0.39mmol、異性体1)をジクロロメタン(2mL)およびDMF(0.25mL)の混合物に溶解する。5−シアノピリジン−2−カルボン酸(114mg、0.77mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(106mg、0.77mmol)および1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(150mg、0.77mmol)を加え、反応物を室温にて一晩撹拌する。混合物を水(10mL)および酢酸エチル(10mL)で希釈し、次いで1N NaOH(100mL)の溶液中に注ぐ。混合物をEtOAc(2×100mL)で抽出し、有機抽出物を合わせ、ブラインで洗浄する。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮する。残渣を、0〜100%酢酸エチル/ヘキサン勾配を使用したシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して標題化合物(190mg、80%)を得る。ES/MS(m/e):608(M+H)。
【0080】
実施例A
N−[3−[2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−フルオロ−ピリジン−2−カルボキシアミド
【化46】

N−[3−[2−ベンズアミド−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−フルオロ−ピリジン−2−カルボキシアミド(293mg、497μmol)、O−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩(430mg、4.97mmol)およびピリジン(402μL、4.97mmol)の混合物を、蓋の付いたフラスコ中で2.5時間、エタノール(13mL)中で70℃まで加熱する。ジメチルスルホキシド(3mL)を加え、混合物を70℃にて一晩加熱する。さらなるジメチルスルホキシド(10mL)を加え、加熱を70℃にて4時間継続する。さらなるO−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩(208mg、2.48mmol)およびピリジン(201μL、2.48mmol)を加え、混合物を3時間60℃まで加熱し、混合物を室温にて3日間撹拌する。別のフラスコ中で、N−[3−[2−ベンズアミド−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−フルオロ−ピリジン−2−カルボキシアミド(276mg、468μmol)、O−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩(405mg、4.68mmol)およびピリジン(478μL、4.68mmol)の混合物を、蓋の付いたフラスコ中で一晩70℃にて、エタノール(15mL)およびジメチルスルホキシド(4mL)中で加熱する。さらなるジメチルスルホキシド(10mL)を加え、加熱を70℃にて4時間継続する。さらなるO−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩(195mg、2.34mmol)およびピリジン(189μl、2.34mmol)を加え、70℃にて3時間、加熱を継続し、続いて室温にて3日間、混合物を撹拌する。2つの反応混合物を合わせ、溶媒のほとんどを真空中で除去する。粗生成物を、3:1のジクロロメタン:メタノールおよび次いで2:1のジクロロメタン:メタノール中の7Nアンモニアを使用したSCXカラムで精製する。粗生成物を、20分、0.5%〜10%勾配のジクロロメタン中の7Nアンモニアメタノール勾配を用いてシリカゲルでさらに精製して標題化合物(451mg、96%)を得る。ES/MS(m/e):486(M+H)。
【0081】
実施例1
N−{3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4a,5,6,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a(4H)−イル]フェニル}−5−フルオロピリミジン−2−カルボキシアミド塩酸塩
【化47】

エタノール(15mL)中のN−[3−[(4aR,7aS)−2−ベンズアミド−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]フェニル]−5−フルオロ−ピリジン−2−カルボキシアミド(320mg、560μmol)、O−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩(485mg、5.60mmol)およびピリジン(453μL、5.60mmol)の混合物を、5時間、蓋のついたバイアル中で65℃にて加熱する。反応物を冷却し、溶媒を真空中で除去する。粗生成物を、30分、0.5%〜10%勾配のメタノールジクロロメタン中の7Nアンモニア勾配を用いてシリカゲルで精製して、N−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]フェニル]−5−フルオロ−ピリジン−2−カルボキシアミド(219mg、84%)を得る。この物質をジクロロメタン(1mL)およびメタノール(0.5mL)に溶解し、ジエチルエーテル(0.47mL、470μmol)中の1M塩化水素を加える。溶媒を真空中で除去して標題化合物(228mg、81%)を得る。ES/MS(m/e):468(M+H)。
【0082】
実施例2
N−{3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4a,5,6,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a(4H)−イル]フェニル}−5−メトキシピラジン−2−カルボキシアミド塩酸塩
【化48】

エタノール(20mL)中のN−[3−[(4aR,7aS)−2−ベンズアミド−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキシアミド(479mg、819μmol)、O−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩(709mg、8.19mmol)およびピリジン(663μL、8.19mmol)の混合物を、蓋の付いたフラスコ中で一晩、50℃にて加熱する。ジメチルスルホキシド(4mL)を加え、混合物を70℃で4時間加熱して溶液を得る。反応物を冷却し、溶媒のほとんどを真空中で除去する。水を加え、pHを1N水酸化ナトリウムで約12に調整する。混合物を酢酸エチル(5×)で抽出する。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を真空中で除去する。粗生成物を、30分、0.5%〜10%勾配のジクロロメタン中の7Nアンモニアメタノール勾配を用いてシリカゲルで精製する。混合物を、3:1のジクロロメタン:メタノールおよび次いで2:1のジクロロメタン:メタノール中の7Nアンモニアを使用したSCXカラムで再び精製して、残留ジメチルスルホキシドを除去する。混合物を最後に、20分、0.5%〜10%勾配のジクロロメタン中の7Nアンモニアメタノールを用いてシリカゲルで精製してN−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキシアミドを得る。この物質をジクロロメタン(1mL)およびメタノール(0.5mL)に溶解し、ジエチルエーテル(0.66mL、660μmol)中の1M塩化水素を加える。溶媒を真空中で除去して標題化合物(329mg、78%)を得る。ES/MS(m/e):481(M+H)。
【0083】
実施例3
N−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−フルオロ−ピリジン−2−カルボキシアミド塩酸塩
【化49】

ラセミ体N−[3−[2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−フルオロ−ピリジン−2−カルボキシアミド(451mg、929μmol)をSFC(カラム:Chiralcel OD−H(5um)、2.1×25cm;溶出液:CO中の40%メタノール(0.2%イソプロピルアミン);UV225nmにて流量70mL/分)によりキラル精製する。第1の溶出異性体のキラル分析:カラム:Chiralcel OD−H(5μm)、4.6×150mm;溶出液:CO中の40%メタノール(0.2%イソプロピルアミン);UV225nmにて流量5mL/分により、R=1.01分で鏡像鏡異性体過剰(>99%ee)の鏡像異性体(175mg、360μmol)を確認する。この物質(遊離塩基、異性体1)をジクロロメタン(1mL)およびメタノール(0.5mL)に溶解し、ジエチルエーテル(0.36mL、360μmol)中の1M塩化水素を加える。溶媒を真空中で除去して標題化合物(183mg、38%)を得る。ES/MS(m/e):486(M+H)。
【0084】
実施例4
N−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキシアミド塩酸塩
【化50】

N−[3−[(4aR,7aS)−2−ベンズアミド−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキシアミド(0.350g、0.58mmol、異性体1)をTHF(2mL)に溶解し、次いでメタノール(4mL)およびエタノール(4mL)を加える。O−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩(495mg、5.81mmol)およびピリジン(470μL、5.81mmol)を混合物に加え、反応物を50℃に加温し、一晩撹拌する。シリカゲル(約10g)を反応物に加え、混合物を濃縮する。シリカゲル上で乾燥させた試料を空のカートリッジに充填し、0〜10%勾配のジクロロメタン中の7Nアンモニアメタノールで溶出して精製する。生成物を2回目に、3:1のジクロロメタン:メタノールおよび次いで2:1のジクロロメタン:メタノール中の7Nアンモニアを使用したSCXカラムで精製する。生成物を最後に、0%〜10%勾配のジクロロメタン中の7Nアンモニアメタノールを用いてシリカゲルで精製して標題化合物の遊離塩基を得る。この物質をジクロロメタン(5mL)に溶解し、ジエチルエーテル(0.20mL、660μmol)中の1M塩化水素を加える。溶媒を真空中で除去して標題化合物(71mg、23%)を得る。ES/MS(m/e):498(M+H)。
【0085】
実施例5
N−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]フェニル]−5−シアノ−ピリジン−2−カルボキシアミド塩酸塩
【化51】

N−[3−[(4aR,7aS)−2−ベンズアミド−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]フェニル]−5−シアノ−ピリジン−2−カルボキシアミド(360mg、0.59mmol)をエタノール(10mL)およびジクロロメタン(2mL)に溶解する。O−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩(504mg、5.91mmol)およびピリジン(478μL、5.91mmol)を加え、反応物を室温にて週末(70時間)にわたって撹拌する。反応物を60℃に加温し、24時間撹拌する。反応物を濃縮して粗生成物を得、0〜10%勾配のジクロロメタン中の7Nアンモニアメタノールを使用したシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して標題化合物の遊離塩基を得る。この物質をジクロロメタン(5mL)に溶解し、ジエチルエーテル(0.54mL、540μmol)中の1M塩化水素を加える。溶媒を真空中で除去して標題化合物(240mg、75%)を得る。ES/MS(m/e):475(M+H)。
【0086】
実施例6
N−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]フェニル]−3,5−ジフルオロ−ピリジン−2−カルボキシアミド塩酸塩
【化52】

N−[3−[(4aR,7aS)−2−ベンズアミド−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]フェニル]−3,5−ジフルオロ−ピリジン−2−カルボキシアミド(330mg、0.53mmol)をTHF(10mL)に溶解し、エタノール(10mL)で希釈する。O−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩(453mg、5.32mmol)およびピリジン(430μL、5.91mmol)を加え、反応物を週末(70時間)にわたって室温にて撹拌する。反応物を60℃に加温し、24時間撹拌する。混合物をシリカゲル(約10g)上で濃縮し、0〜10%勾配のジクロロメタン中の7Nアンモニアメタノールを使用したシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して標題化合物の遊離塩基を得る。この物質をジクロロメタン(5mL)に溶解し、ジエチルエーテル(0.49mL、490μmol)中の1M塩化水素を加える。溶媒を真空中で除去して標題化合物(159mg、54%)を得る。ES/MS(m/e):486(M+H)。
【0087】
実施例7
N−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−シアノ−ピリジン−2−カルボキシアミド塩酸塩
【化53】

N−[3−[(4aR,7aS)−2−ベンズアミド−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−シアノ−ピリジン−2−カルボキシアミド(133mg、0.22mmol、異性体1)をTHF(1mL)に溶解し、メタノール(3mL)およびエタノール(3mL)で希釈する。O−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩(190mg、2.2mmol)およびピリジン(180μL、2.2mmol)を加える。反応物を50℃に加温し、一晩撹拌する。混合物をシリカゲル(約10g)上で濃縮し、0〜10%勾配のジクロロメタン中の7Nアンモニアメタノールで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。この物質を2回目に、3:1のジクロロメタン:メタノールおよび次いで2:1のジクロロメタン:メタノール中の7Nアンモニアを使用したSCXカラムで精製する。混合物を最後に、0%〜10%勾配のジクロロメタン中の7Nアンモニアメタノールを用いたシリカゲルで精製して標題化合物の遊離塩基を得る。この物質をジクロロメタン(5mL)に溶解し、ジエチルエーテル(0.27mL、270μmol)中の1M塩化水素を加える。溶媒を真空中で除去して標題化合物(114mg、97%)を得る。ES/MS(m/e):493(M+H)。
【0088】
実施例8
N−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−3,5−ジフルオロ−ピリジン−2−カルボキシアミド塩酸塩
【化54】

N−[3−[(4aR,7aS)−2−ベンズアミド−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−3,5−ジフルオロ−ピリジン−2−カルボキシアミド(190mg、0.31mmol、異性体1)をTHF(1mL)に溶解し、メタノール(3mL)およびエタノール(3mL)で希釈する。O−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩(267mg、3.1mmol)およびピリジン(253μL、3.1mmol)を加え、反応物を50℃に加温し、一晩撹拌する。反応物を、3:1のジクロロメタン:メタノールおよび次いで2:1のジクロロメタン:メタノール中の7Nアンモニアを使用したSCXカラムで精製する。この物質を最後に、0%〜10%勾配のジクロロメタン中の7Nアンモニアメタノールを用いたシリカゲルで精製して標題化合物の遊離塩基を得る。この物質をジクロロメタン(5mL)に溶解し、ジエチルエーテル(0.20mL、200μmol)中の1M塩化水素を加える。溶媒を真空中で除去して標題化合物(101mg、60%)を得る。ES/MS(m/e):504(M+H)。
【0089】
インビトロアッセイ手順:
インビトロ酵素および細胞アッセイのために、試験化合物をDMSO中で調製して10mMのストック溶液を作製する。このストック溶液をDMSO中で連続希釈して、インビトロ酵素および全細胞アッセイを行う前に、96ウェル丸底プレート中で10mM〜0.05nMの範囲の最終化合物濃度で10点希釈曲線を得る。
【0090】
インビトロプロテアーゼ阻害アッセイ:
ヒトBACE1の発現
ヒトBACE1(受託番号:AF190725)を、RT−PCRによって全脳cDNAからクローニングする。アミノ酸配列#1〜460に対応するヌクレオチド配列を、ヒトIgG(Fc)ポリペプチドをコードするcDNA内に挿入する(Vassarら、1999)。huBACE1:Fcと名付けた、BACE1(1〜460)およびヒトFcのこの融合タンパク質をpJB02ベクター内に構築する。ヒトBACE1(1〜460):Fc(huBACE1:Fc)をHEK293細胞内で一時的に発現する。各構築物の250μgのcDNAをFugene6と混合し、1リットルのHEK293細胞に加える。トランスフェクションの4日後、馴化培地を精製のために収集する。
【0091】
huBACE1:Fcの精製
huBACE1:FcをプロテインAクロマトグラフィーにより精製する。酵素を少しのアリコートで−80℃にて保存する。
【0092】
BACE1 FRETアッセイ
試験化合物の連続希釈を上記のように調製する。KHPO緩衝液中で化合物をさらに20倍に希釈する。10μLの各希釈液を、反応混合物(25μLの50mM KHPO、pH4.6、1mM TRITON(登録商標)X−100、1mg/mLのウシ血清アルブミン、および15μMのFRET基質)(Yangら、J.Neurochemistry、91(6)1249−59(2004)を参照のこと)を含有する対応する低タンパク質結合ブラックプレートの列A〜Hで各ウェルに加える。内容物を10分間、プレートシェーカーで十分に混合する。KHPO緩衝液中の15μLの200pMヒトBACE1(1〜460):Fc(Vasserら、Science、286、735−741(1999)を参照のこと)を、基質および試験化合物を含有するプレートに加えて反応を開始する。プレートシェーカーで簡単に混合した後、0時における混合物のRFUを355nmの励起波長および460nmの発光波長で記録する。反応プレートをアルミニウム箔で覆い、室温にて16〜24時間、暗所の加湿したオーブン中に維持する。インキュベーションの終わりにRFUを0時で使用したのと同じ励起および発光設定で記録する。0時とインキュベーションの終わりにおけるRFUの差異は化合物処理下でのBACE1の活性を表す。RFUの差異を阻害剤濃度に対してプロットし、曲線を4パラメータロジスティック式に適合してEC50およびIC50値を得る(Sinhaら、Nature、402、537−540(2000)を参照のこと)。
【0093】
以下の例示した化合物を実質的に上記のように試験し、BACE1について以下の活性を示した:
【0094】
【表1】
【0095】
これらのデータにより、表1の化合物が、精製した組換えBACE1酵素活性をインビトロで有効に阻害することが実証される。
【0096】
ベータ−セクレターゼ活性の阻害を測定するための全細胞アッセイ
HEK293Swe全細胞アッセイ
ベータ−セクレターゼ活性の阻害を測定するための慣用の全細胞アッセイは、一般にSwedish変異(HEK293Sweと示される)と呼ばれている、天然に発現する二重突然変異Lys651Met652からAsn651Leu652を含有するヒトAPP751 cDNAを安定に発現するヒト胚腎臓細胞株HEK293p(ATCC受託番号CRL−1573)を利用し、Aベータを過剰生産することが示される(Citronら、Nature、360、672−674(1992))。インビトロでのAベータ減少アッセイは文献に記載されている(Doveyら、Journal of Neurochemistry、76、173−181(2001);Seubertら、Nature、361、260(1993);およびJohnson−Woodら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94、1550−1555(1997)を参照のこと)。
【0097】
細胞(200μLの培養培地を含有する、3.5×10細胞/ウェルのHEK293Swe、10%FBSを含有するDMEM)を、所望の濃度にて阻害剤(DMSOで希釈した)の存在/非存在下で4〜24時間、37℃にてインキュベートする。インキュベーションの終わりに、馴化培地を、例えば、Aベータペプチドの分析によって、ベータ−セクレターゼ活性の証拠のために分析する。全Aベータペプチド(Aベータ1〜x)を、捕捉抗体としてモノクローナル266および報告抗体としてビオチン化3D6を使用して、サンドイッチELISAによって測定する。あるいは、Aベータ1〜40およびAベータ1〜42ペプチドを、Aベータ1〜40についての捕捉抗体としてモノクローナル2G3、およびAベータ1〜42についての捕捉抗体としてモノクローナル21F12を使用して、サンドイッチELISAによって測定する。Aベータ1〜40およびAベータ1〜42ELISAの両方は報告抗体としてビオチン化3D6を使用する。化合物処理後に馴化培地中に放出されるAベータの濃度はこのような条件下でBACE1の活性に対応する。10点阻害曲線をプロットし、4パラメータロジスティック式に適合して、Aベータ低下効果についてEC50およびIC50値を得る。以下の例示した化合物を実質的に上記のように試験し、Aベータ低下効果について以下の活性を示した:
【0098】
【表2】
【0099】
これらのデータにより、表2の化合物が全細胞において天然のAベータ産生を有効に阻害することが実証される。
【0100】
PDAPP初代ニューロンアッセイ
確認全細胞アッセイもまた、PDAPPトランスジェニック胚マウスから生成した初代神経細胞培養で実施する。初代皮質ニューロンを16日のPDAPP胚である胚から調製し、96ウェルプレート(DMEM/F12(1:1)プラス10%FBS中の15×10細胞/ウェル)で培養する。インビトロで2日後、培養培地を、B27補足物および2μM(最終)のAra−C(Sigma、C1768)を含有する無血清DMEM/F12(1:1)と置き換える。インビトロで5日目に、所望の濃度にて阻害剤(DMSO中で希釈した)の存在/非存在下でニューロンを37℃にて24時間インキュベートする。インキュベーションの終わりに、馴化培地を、例えば、Aベータペプチドの分析によって、ベータ−セクレターゼ活性の証拠について分析する。全Aベータペプチド(Aベータ1〜x)を、捕捉抗体としてモノクローナル266および報告抗体としてビオチン化3D6を使用して、サンドイッチELISAによって測定する。あるいは、Aベータ1〜40およびAベータ1〜42ペプチドを、Aベータ1〜40についての捕捉抗体としてモノクローナル2G3、およびAベータ1〜42についての捕捉抗体としてモノクローナル21F12を使用して、サンドイッチELISAによって測定する。Aベータ1〜40およびAベータ1〜42ELISAの両方は報告抗体としてビオチン化3D6を使用する。化合物処理後に馴化培地中に放出されるAベータの濃度はこのような条件下でBACE1の活性に対応する。10点阻害曲線をプロットし、4パラメータロジスティック式に適合して、Aベータ低下効果についてEC50およびIC50値を得る。以下の例示した化合物を実質的に上記のように試験し、Aベータ低下効果について以下の活性を示した:
【0101】
【表3】
【0102】
これらのデータにより、表3の化合物が全細胞においてAベータ産生を有効に阻害することが実証される。
【0103】
ベータ−セクレターゼのインビボでの阻害
マウス、モルモット、イヌおよびサルを含む、数匹の動物モデルを、化合物処理後、インビボでのベータ−セクレターゼ活性の阻害をスクリーニングするために使用できる。本発明に使用した動物は、野生型、トランスジェニック、または遺伝子ノックアウト動物であり得る。例えば、Gamesら、Nature373、523−527(1995)に記載されているように調製したPDAPPマウスモデル、および他の非トランスジェニックまたは遺伝子ノックアウト動物が、阻害化合物の存在下でAベータおよびsAPPベータ産生のインビボでの阻害を分析するのに有益である。一般に、2〜12月齢のPDAPPマウス、遺伝子ノックアウトマウスまたは非トランスジェニック動物に、コーンオイル、シクロデキストラン、リン酸緩衝液、PHARMASOLVE(登録商標)、または他の適切なビヒクルなどのビヒクル中で製剤化した化合物を投与する。化合物投与の1〜24時間後、動物を屠殺し、脳ならびに脳脊髄液および血漿を、Aベータ、C99、およびsAPP断片の分析のために除去する(Mayら、Journal of Neuroscience、31、16507−16516(2011)を参照のこと)。
【0104】
標準的なインビボでの薬理学的研究のために、種々の濃度の化合物を動物に投与し、同じ時間に投与したビヒクルで処置した対照群と比較する。いくつかの時間経過研究のために、脳組織、血漿、または脳脊髄液を、ベースラインを確立するために0時に開始して、選択した動物から得る。化合物または適切なビヒクルを他の群に投与し、投与後、種々の時間に屠殺する。脳組織、血漿、または脳脊髄液を、選択した動物から得、例えば、特定のサンドイッチELISAアッセイによって、Aベータペプチド、sAPPベータ、および他のAPP断片を含む、APP切断産物の存在について分析する。試験時間の終わりに、動物を屠殺し、脳組織、血漿、または脳脊髄液を、必要に応じて、Aベータペプチド、C99、およびsAPPベータの存在について分析する。APPトランスジェニック動物の脳組織もまた、化合物処理後、ベータ−アミロイドプラークの量について分析できる。本明細書で使用される場合、「Aベータ1〜xペプチド」とは、残基1で開始し、残基28より多いC末端で終了するAベータ種の合計を指す。これは大部分のAベータ種を検出し、しばしば「全Aベータ」と呼ばれる。
【0105】
阻害化合物を投与した動物(PDAPPまたは他のAPPトランスジェニックもしくは非トランスジェニックマウス)は、ビヒクルで処置した対照またはゼロ時の対照と比較して、脳組織、血漿または脳脊髄液中でAベータまたはsAPPベータの減少および脳組織中でベータアミロイドプラークの減少を実証し得る。例えば、若いメスのPDAPPマウスへの1、3、または10mg/kgの経口用量の実施例1の化合物の投与の3時間後、Aベータ1〜xペプチドレベルは、ビヒクルで処置したマウスと比較して、それぞれ、脳海馬中で約34%、48%、および53%、ならびに大脳皮質中で約43%、59%および66%減少する。
【0106】
例えば、実施例3の化合物の1または3mg/kgの経口用量の投与の3時間後、Aベータ1〜xペプチドは、ビヒクルで処置したマウスと比較して、それぞれ、脳海馬中で約38%および50%、ならびに大脳皮質中で約34%および53%減少する。
【0107】
インビトロでBACE酵素に対する実施例1および3の活性を考慮して、これらのAベータ低下効果はインビボでのBACE阻害と一致し、実施例1および3のCNS浸透がさらに実証される。
【0108】
これらの研究により、本発明の化合物がBACEを阻害し、したがってAベータレベルを減少させるのに有用であることが示される。
本発明は以下を提供する。
[1]
以下の式の化合物:
【化1】

(式中、RはHまたはFであり、
Aは、
【化2】

である)
またはその医薬的に許容可能な塩。
[2]
【化3】

である、請求項1に記載の化合物または塩。
[3]
【化4】

である、請求項2に記載の化合物。
[4]
有効量の請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩を、そのような治療を必要とする患者に投与することを含む、患者におけるアルツハイマー病を治療する方法。
[5]
有効量の請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩を、そのような治療を必要とする患者に投与することを含む、アルツハイマー病を発症する危険性のある患者における進行を予防する方法。
[6]
療法に使用するための請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的に許容可能な塩。
[7]
アルツハイマー病の治療に使用するための請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的に許容可能な塩。
[8]
1種以上の医薬的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤と共に、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的に許容可能な塩を含む、医薬組成物。