(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095894
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】直流電源用電圧低下保護装置
(51)【国際特許分類】
H02J 9/06 20060101AFI20170306BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
H02J9/06 110
H02M3/155 H
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-6904(P2012-6904)
(22)【出願日】2012年1月17日
(65)【公開番号】特開2013-150380(P2013-150380A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】392026888
【氏名又は名称】京都電機器株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大川 和敏
(72)【発明者】
【氏名】竹内 晃
(72)【発明者】
【氏名】西川 秀樹
【審査官】
田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−250876(JP,A)
【文献】
特開平04−058737(JP,A)
【文献】
特開2009−261161(JP,A)
【文献】
特開平10−150773(JP,A)
【文献】
特開平01−239472(JP,A)
【文献】
特開平07−154933(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0174255(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/06
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力により駆動される、それぞれサーボモータを駆動する複数のサーボアンプに対し、商用交流電源から供給される交流電力から生成される直流電力の供給に障害が起きたときに代替直流電力を供給する直流電源用電圧低下保護装置であって、
a)電気エネルギーを蓄えるための蓄電手段と、前記商用交流電源から供給される交流電力を前記蓄電手段を充電するのに必要な第1直流電圧である直流電力に変換して該蓄電手段を充電する充電手段と、前記蓄電手段に蓄えられている電気エネルギーによる直流電圧を前記第1直流電圧よりも低く前記サーボモータを駆動するのに必要な所定の第2直流電圧に降圧して放電動作を行う変換手段と、前記商用交流電源から前記充電手段に供給される交流電力の電圧低下を検出し電圧低下がない正常時に前記充電手段による充電を行い、電圧低下が生じた異常時に前記変換手段による放電を行うように前記充電手段及び前記変換手段をそれぞれ制御する制御手段と、を有し、前記商用交流電源から供給される交流電力の電圧低下が生じた異常時に前記代替直流電力を生成する代替直流電力生成手段と、
b)前記複数のサーボアンプがそれぞれ有するP/N端子にそれぞれ接続される複数の直流電圧分配出力端と、
c)前記複数の直流電圧分配出力端と前記代替直流電力生成手段からの代替直流電力が入力される入力端との間をそれぞれ接続するように設けられた代替直流電力分配手段と、
を備え、
前記代替直流電力分配手段は、前記複数の直流電圧分配出力端毎に配置され、
c1)前記代替直流電力生成手段から前記複数の直流電圧分配出力端のそれぞれへ向かうとともに前記サーボアンプを経て前記代替直流電力生成手段へと戻って来る直流電流の流れを許容する一方、その各直流電圧分配出力端のそれぞれから前記代替直流電力生成手段へ向かうとともに該前記代替直流電力生成手段を経て各直流電圧分配出力端へと戻って来る直流電流の流れを遮断する電流方向制限手段と、
c2)サーボアンプにそれぞれ接続される前記複数の直流電圧分配出力端と該直流電圧分配出力端に接続された線路上に設けられた前記電流方向制限手段との間においてそれぞれ電圧を検知する複数の電圧検知手段と、
c3)前記複数の電圧検知手段のそれぞれにより検知された電圧に基づいて、前記複数の直流電圧分配出力端に接続されたサーボアンプの異常及び該サーボアンプに至る線路の異常を監視する異常監視手段と、
を備え、前記変換手段が放電動作を行う際に該変換手段から出力される前記第2直流電圧を有する代替直流電力を前記複数の直流電圧分配出力端にそれぞれ分配し、前記複数のサーボアンプのそれぞれのP/N端子を通して該複数のサーボアンプに前記代替直流電力生成手段からの代替直流電力を供給するととともに、前記複数の直流電圧分配出力端のそれぞれに接続された複数のサーボアンプのうち異常であると判断されたサーボアンプについて警告表示を行う、又は、該サーボアンプに至る複数の線路のうち異常であると判断された線路について警告表示を行うように構成されてなることを特徴とする直流電源用電圧低下保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用交流電力を直流電力に変換しその直流電力を基にして制御を行ったり他の機器を駆動したりする負荷装置に電力を供給する直流電源において、入力の交流電圧が一時的に(瞬間的又は或る程度の時間継続的に)低下したときでも直流電力を負荷装置に供給し続ける直流電源用電圧低下保護装置に関し、さらに詳しくは、複数の負荷装置に対する直流電力の供給を代替する直流電源用電圧低下保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
外部の商用交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換した後、この直流電力をさらに交流電力に変換して他の機器を制御する負荷装置の一例として、サーボモータを駆動制御するサーボアンプがある。
図4は、特許文献1などに記載の、サーボアンプ30を中心とするサーボモータ制御系の概略構成図である。
【0003】
図4において、サーボアンプ30は、商用交流電源2から供給される交流電力を直流に変換するダイオードブリッジ回路を含む整流部31と、交流/直流変換後の直流電圧を平滑化するコンデンサ32と、直流電圧をスイッチングすることで交流電圧に変換するインバータ部33と、インバータ部33による直流/交流変換後の交流電流を検出する出力電流検出部34と、インバータ部33に含まれる複数のスイッチング素子のオン・オフ動作を制御する制御回路部35と、を含む。このサーボアンプ30から出力される交流電流はサーボモータ3に供給され、サーボモータ3の回転速度は該モータ3に付設されたエンコーダ4から出力されるパルス信号を信号処理部5で処理することで検出され、上記制御回路部35にフィードバックされる。即ち、このサーボモータ制御系ではサーボアンプ30とサーボモータ3とを含むフィードバック制御閉ループが形成され、サーボアンプ30はサーボモータ3へ供給する交流電力を制御することで、該モータ3の回転速度を所定値になるように制御する。
【0004】
サーボアンプ30において、整流部31で交流/直流変換された後の直流電圧が掛かる直流電圧線は装置筐体に設けられたP/N端子36に接続されている。このP/N端子36は、主として、モータ回生用の回路を外部に接続することができるようにするためのものであり、市販されている多くのサーボアンプにごく一般的に設けられている。
【0005】
上記のようなサーボモータ及びサーボアンプは産業用ロボットなどの産業用装置に多用されている。このような産業用装置においては、商用交流電源電圧が一時的に低下したり遮断されたりした場合(いわゆる瞬低が生じた場合)でも、サーボモータの駆動が継続されることが望ましい。こうした目的を達成する一般的な手法は、AC/AC用瞬低保護装置を設置するか、或いは、サーボアンプの直流電圧線路に接続される蓄電機能を有するコンデンサ32の容量を増やし、瞬低発生時に、そのコンデンサ32に蓄えていた電気エネルギーを利用してインバータ部33から駆動電力を供給することである。
【0006】
コンデンサ32の両端はP/N端子36に直結しているから、具体的な構成としては、P/N端子36間に瞬低保護時間に対応した所定容量のコンデンサを接続すればコンデンサ32の容量を増加したのと等価である。このときに追加されるコンデンサの容量によって瞬低保護可能な時間が決まる。停電や電圧低下が或る程度長引いた場合にサーボモータを安全に停止させるために必要な制御を実行するには、数秒〜十数秒程度の時間に亘り、コンデンサに蓄積しておいた電気エネルギーによる代替電力の電力供給を行えるようにする必要がある。このためには、追加する蓄電部としてのコンデンサの容量をかなり大きくする必要がある。
【0007】
工場の生産ライン等においては上述したサーボモータが数多く使用されており、従来、サーボモータを駆動するサーボアンプ毎にそれぞれ上記のような電力代替供給用のコンデンサを設けていた。そのため、それら多数のサーボアンプに対する瞬低保護機能を達成する装置は工場内で大きなスペースを占有することとなり、工場内のスペースの有効利用を阻むとともに工場内のレイアウトの自由度を低下させる一因ともなっていた。また、一般に工場内では様々な仕様のサーボモータ、サーボアンプが用いられるため、その仕様に合わせて必要なコンデンサ容量を計算する必要があり、設計が面倒であるとともに生産ラインの変更などに対する柔軟性が低かった。
【0008】
また、本願出願人は特許文献2においてバックアップ効率の高い直流電源用瞬低保護装置を提案しており、こうした装置をサーボアンプ毎に設置することも考えられるが、その場合でも、そうした瞬低下保護装置が大きなスペースを占有することは避けられず、またサーボアンプの台数が多いとコストもかなり高いものとなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−261161号公報
【特許文献2】特開2011−4478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、商用交流電力を交流/直流変換して駆動電力を生成するサーボアンプ等の負荷装置を多数駆動するシステムにおいて、商用交流電力の供給に支障が生じたときに代替電力を供給する直流電源用電圧低下保護装置において、装置の小型化を図り省スペースを実現することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために成された本発明は、直流電力により駆動される、それぞれサーボモータを駆動する複数のサーボアンプに対し、商用交流電源から供給される交流電力から生成される直流電力の供給に障害が起きたときに代替直流電力を供給する直流電源用電圧低下保護装置であって、
a)電気エネルギーを蓄えるための蓄電手段と、前記商用交流電源から供給される交流電力を
前記蓄電手段を充電するのに必要な第1直流電圧
である直流電力に変換して
該蓄電手段を充電する充電手段と、前記蓄電手段に蓄えられている電気エネルギーによる直流電圧を
前記第1直流電圧よりも低く前記サーボモータを駆動するのに必要な所定の第2直流電圧に降圧
して放電動作を行う変換手段と、前記商用交流電源から前記充電手段に供給される交流電力の電圧低下を検出し電圧低下がない正常時に前記充電手段による充電を行い、電圧低下が生じた異常時に前記変換手段による放電を行うように前記充電手段及び前記変換手段をそれぞれ制御する制御手段と、を有し、前記商用交流電源から供給される交流電力の電圧低下が生じた異常時に前記代替直流電力を生成する代替直流電力生成手段と、
b)前記複数のサーボアンプがそれぞれ有するP/N端子にそれぞれ接続される複数の直流電圧分配出力端と、
c)前記複数の直流電圧分配出力端と前記代替直流電力生成手段からの代替直流電力が入力される入力端との間をそれぞれ接続するように設けられた代替直流電力分配手段と、
を備え、
前記代替直流電力分配手段は、
前記複数の直流電圧分配出力端毎に配置され、
c1)前記代替直流電力生成手段から前記複数の直流電圧分配出力端のそれぞれへ向かうとともに前記サーボアンプを経て前記代替直流電力生成手段へと戻って来る直流電流の流れを許容する一方、その各直流電圧分配出力端のそれぞれから前記代替直流電力生成手段へ向かうとともに該前記代替直流電力生成手段を経て各直流電圧分配出力端へと戻って来る直流電流の流れを遮断する電流方向制限手段
と、
c2)サーボアンプにそれぞれ接続される前記複数の直流電圧分配出力端と該直流電圧分配出力端に接続された線路上に設けられた前記電流方向制限手段との間においてそれぞれ電圧を検知する複数の電圧検知手段と、
c3)前記複数の電圧検知手段のそれぞれにより検知された電圧に基づいて、前記複数の直流電圧分配出力端に接続されたサーボアンプの異常及び該サーボアンプに至る線路の異常を監視する異常監視手段と、
を備え、前記変換手段が放電動作を行う際に該変換手段から出力される前記第2直流電圧を有する代替直流電力を前記複数の直流電圧分配出力端にそれぞれ分配し、前記複数のサーボアンプのそれぞれのP/N端子を通して該複数のサーボアンプに前記代替直流電力生成手段からの代替直流電力を供給する
ととともに、前記複数の直流電圧分配出力端のそれぞれに接続された複数のサーボアンプのうち異常であると判断されたサーボアンプについて警告表示を行う、又は、該サーボアンプに至る複数の線路のうち異常であると判断された線路について警告表示を行うように構成されてなることを特徴としている。
【0014】
各サーボアンプのP/N端子には該サーボアンプ内部において平滑用コンデンサ等が接続されているが、本発明に係る直流電源用電圧低下保護装置と複数のサーボアンプとが接続された状態でも、代替直流電力分配手段に含まれる電流方向制限手段により複数のサーボアンプのP/N端子は互いに電気的に分離され、並列接続状態となることが避けられる。また、サーボアンプのP/N端子から本発明に係る直流電源用電圧低下保護装置へ向けての直流電流の流れは遮断されるので、商用交流電源から各サーボアンプへの電力供給が正常である場合に、各サーボアンプから本発明に係る直流電源用電圧低下保護装置へ電気エネルギーが漏出することもない。
【0015】
一方、商用交流電源から交流電力が正常に供給されているとき
、充電手段は制御手段の制御の下に、例えば供給された交流電力を交流/直流変換して得られた直流電力の電圧を第1直流電圧に昇圧し蓄電手段を充電する。このときの第1直流電圧、つまり充電電圧は、蓄電手段の耐圧に応じて適宜に定めておけばよいが、エネルギー効率は電圧の二乗に比例するから、可能な限り高い充電電圧としたほうがエネルギー効率の点では有利である。
【0016】
瞬時電圧低下や停電等により商用交流電源電圧が急に下がると、制御手段はこの電圧低下を検出し、変換手段で放電動作を実行するように制御する。すると、その直前まで蓄電手段に保持されていた電気エネルギーによる直流電圧が、変換手段により第2直流電圧まで降
圧され、代替直流電力分配手段を介して複数の直流電圧分配出力端に分配される。そして、P/N端子を通してサーボアンプに対しそれぞれ必要な代替直流電力が供給され、サーボアンプの動作が継続されることになる。放電動作時には、第2直流電圧を略一定に維持するように変換手段の動作は制御される。そして、商用交流電源電圧が回復すると、入力端子に現れる電圧が上昇するから、制御手段はこれを検出して変換手段による放電動作を停止し再び充電手段による充電動作を実行し蓄電手段に電気エネルギーを蓄積する。このようにして、蓄電手段に保持されている電気エネルギーの量に応じた時間だけ、商用交流電源の瞬低や停電時のバックアップを行うことができる。なお、第2直流電圧は、直流電圧分配出力端に接続される機器の動作直流入力電圧範囲に応じて予め適宜に決めておけばよい。
【0018】
また本発明に係る直流電源用電圧低下保護装置において、直流電圧分配出力端に
はサーボアンプのP/N端子が接続されているので、電圧検知手段は各サーボアンプ内部で平滑化された直流電圧の値を検知する。したがって、この検知電圧を予め定められた閾値と比較することによりサーボアンプに故障等の異常が発生したり誤配線が行われたりしたことを認識することができる。また、検知電圧によりサーボアンプの接続の有無も認識することができる。そこで、異常監視手段による監視結果に基づいた表示やブザー鳴動などを行う構成とすることにより
、サーボアンプ側の異常、配線異常などの警告報知を行うことが可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る直流電源用電圧低下保護装置によれば、商用交流電力の電圧が低下したり停電が生じたりした場合に、代替直流電力分配手段を通して複数の
サーボアンプにそれぞれ直流電力が適切に分配・供給される。複数の
サーボアンプの仕様が異なる場合であっても、各
サーボアンプにそれぞれ必要な直流電力が供給されるので、電圧低下中や停電中に各
サーボアンプの運転や制御を継続させたり安全に停止させたりすることができる。また、本発明に係る直流電源用電圧低下保護装置によれば、複数の
サーボアンプに対する直流電源のバックアップを集約的に行うことができる。特に、代替直流電力生成手段において蓄電手段を充電する直流の充電電圧を蓄電手段の耐圧に応じてできるだけ高く設定することで、高いエネルギー効率を達成して、従来と同じバックアップ時間を実現するために必要な蓄電手段の容量を小さくし、装置自体を小型化して省スペース性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施例による直流電源用電圧低下保護装置を含むシステム全体の概略構成図。
【
図4】サーボアンプを中心とするサーボモータ制御系の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施例である直流電源用電圧低下保護装置について添付図面を参照して説明する。
図1は本実施例の直流電源用電圧低下保護装置を含むシステム全体のブロック図、
図2は
図1中のバックアップ電源部の概略構成図、
図3は
図1中の電力分配部の概略構成図である。
【0022】
図1に示すように、本実施例の直流電源用電圧低下保護装置1は、商用交流電源2から各サーボアンプ30に供給される交流電力の電圧が低下したり一時的に停止したりしたときに、それぞれサーボモータ3を駆動する複数のサーボアンプ30のP/N端子36に接続された線路を通して各サーボアンプ30に代替直流電力を供給するものである。サーボアンプ30を含むサーボ制御系の構成はすでに説明した
図4と同じであるが、
図1では一部を簡略化して記載してある。
【0023】
本実施例の直流電源用電圧低下保護装置は、バックアップ電源部10と電力分配部20とを備え、バックアップ電源部10に対して交流電圧入力端101を通して商用交流電力が供給され、複数の直流電圧分配出力端202a、202b、…を通して電力分配部20から各サーボアンプ30に代替直流電力が供給されるようになっている。
【0024】
バックアップ電源部10は、
図2に示すように、昇圧トランス(図示せず)やその一次側巻線に直列接続されたスイッチング素子(図示せず)を含む充電昇圧部11と、ダイオードブリッジ回路を含む整流回路12と、電解コンデンサ14と、コンデンサ131、チョークコイル132、133、直列接続されたスイッチング素子134及びダイオード素子135、からなるDC/DCコンバータ13と、スイッチング素子134をオン・オフ動作させるスイッチング駆動部15と、交流入力電圧Vacが所定値以下に低下したことを検出する電圧低下検出部17と、昇圧後の電圧(つまり電解コンデンサ14の端子電圧VB)及び降圧後の電圧(つまり電圧低下時の出力電圧Vdc)をそれぞれ検出して監視する電圧モニタ部16と、スイッチング駆動部15を制御したり監視モニタ電圧入力端103から得られる信号に基づいて警告報知等を表示部192に行ったりする制御部18と、を含む。
【0025】
充電昇圧部11及び整流回路12は本発明における充電手段であり、制御部18による制御の下に電解コンデンサ14を充電したりその動作を停止したりする。また、DC/DCコンバータ13はチョッパ方式のDC/DCコンバータであり、スイッチング素子134をオン・オフさせて降圧を行う。この降圧の動作の実行/停止も、制御部18により制御される。なお、放電時に降圧の代わりに昇圧するような構成、動作とすることも可能である。
【0026】
交流電圧入力端101の入力電圧Vacの範囲は例えばAC85V〜480Vである。一方、電圧低下時にバックアップ電源部10の直流電圧出力端102から出力される直流電圧Vdcは例えばDC120〜460Vの範囲で任意に、つまりユーザが適宜に決めた値を入力部191により予め設定しておくものとする。また、電解コンデンサ14の充電電圧、つまり端子電圧VBは電解コンデンサ14の定格耐圧の制約の下に任意に決めることができるが、例えば耐圧が450Vである場合に充電電圧をDC420Vと決めて入力部191により設定しておく。
【0027】
電力分配部20は、
図3に示すように、直流電圧入力端201に接続された正負の線路が複数の電流方向制限部22a、22b、…に並列に接続される構成となっている。電流方向制限部22aは、正極性の直流電圧入力端201から正極性の直流電圧分配出力端202aに向かって順方向接続された第1ダイオード23aと、負極性の直流電圧入力端201から負極性の直流電圧分配出力端202aに向かって逆方向接続された第2ダイオード24aと、各ダイオード23a、24aと正負の直流電圧分配出力端202aとの間の電位差を検出する電圧検出部25aと、を含む。図示しない他の電流方向制限部22b、…の構成も同様である。また、各電流方向制限部22a、22b、…に含まれる電圧検出部25a、…による検出値はそれぞれ通信処理部26に入力される。通信処理部26は複数の検出値を例えば所定形式に変換して監視モニタ電圧出力端203から出力する。この出力信号はバックアップ電源部10の監視モニタ電圧入力端103を介して制御部18に入力される。
【0028】
直流電圧分配出力端202a、202b、…は、
図1に示したように、それぞれ別のサーボアンプ30のP/N端子36に接続される。サーボアンプ30のP/N端子36は、
図4に示したように、サーボアンプ30内部のコンデンサ32の両端に直結されている。このため、電力分配部20において電流方向制限部22a、22b、…が設けられていないとすると、複数のサーボアンプ30のコンデンサ32が並列接続されてしまうことになる。これに対し、本実施例の構成では、第1ダイオード23aと第2ダイオード24aとを含む電流方向制限部22a、22b、…によって複数のサーボアンプ30のP/N端子36は互いに分離されることになり、サーボアンプ30内部のコンデンサ32側からバックアップ電源部10への不所望の電流の流れを阻止することが可能である。また、コンデンサ32に蓄えられる直流電圧がバックアップ電源部10から出力される直流電圧より低いサーボアンプ30に向けて優先的に直流電力を供給することができるため、効率的に直流電力を供給することができる。
【0029】
次に、本実施例の直流電源用電圧低下保護装置を含むシステム全体の動作を説明する。
商用交流電源2から商用交流電力が正常に供給されている場合には、各サーボアンプ30はその商用交流電力に基づく直流電力によりサーボモータ3を駆動する。これは従来と同じ動作である。
【0030】
一方、直流電源用電圧低下保護装置1のバックアップ電源部10おいては、充電昇圧部11で昇圧され整流回路12で交流/直流変換されて得られた約420Vの直流電圧が電解コンデンサ14に印加され、これにより充電がなされる。電圧モニタ部16により検出される電解コンデンサ14の端子電圧VBが420Vに達すると、制御部18はこの電圧を維持するように充電昇圧部11に含まれるスイッチング素子の動作を制御する。
【0031】
直流電源用電圧低下保護装置1の直流電圧分配出力端202a、202b、…は各サーボアンプ30のP/N端子36に接続されているため、商用交流電源2が正常であるときに電圧検出部25a、25b、…により検出される電圧は各サーボアンプ30のコンデンサ32の両端電圧、つまりはインバータ部33を駆動する直流電圧である。したがって、例えばサーボアンプ30に何らかの異常があってコンデンサ32の両端電圧が異常値になる場合、電圧検出部25a、25b、…はこれを検知することができる。また、直流電圧分配出力端202a、202b、…にサーボアンプ30が接続されない筈であるのに接続されている場合や逆に直流電圧分配出力端202a、202b、…にサーボアンプ30が接続される筈であるのに接続されていない場合についても、電圧検出部25a、25b、…はこれを検知することができる。
【0032】
そこで、制御部18は通信処理部26を通し、監視モニタ電圧出力端203及び監視モニタ電圧入力端103を介して受け取った各電圧検出部25a、25b、…による電圧の検出値が例えば所定閾値を超えているか否かを判定することにより、接続されたサーボアンプ30の異常の有無を判断し、異常があると断定された場合には表示部192により警告表示を行う。これにより、サーボアンプ30の異常を直流電源用電圧低下保護装置1において集中的に監視することができる。また、ユーザが予め各直流電圧分配出力端202a、202b、…についてサーボアンプの接続/非接続を入力部191により設定可能としておき、制御部18は検出された電圧値に基づいてサーボアンプの接続/非接続を判定し、設定された状態と相違する場合に表示部192により警告表示を行う。これにより、ユーザによる誤接続や誤配線を直流電源用電圧低下保護装置1において集中的にチェックすることができる。
【0033】
一時的な停電等により商用交流電源2から供給される交流電力の電圧が低下すると、直流電源用電圧低下保護装置1において電圧低下検出部17はこの電圧低下を検出する。この検出信号を受けた制御部18はDC/DCコンバータ13を放電動作させるべくスイッチング駆動部15を介してスイッチング素子134を動作させる。すると、電解コンデンサ14に蓄えられている電気エネルギーがDC/DCコンバータ13に供給され、制御部18に設定されている、例えば約200Vまで降圧された直流電圧がDC/DCコンバータ13から出力される。この直流電圧が直流電圧出力端102を通して電力分配部20に送られる。DC/DCコンバータ13による降圧後の電圧の値は電圧モニタ部16で検出されて制御部18にフィードバックされ、制御部18は降圧後の直流電圧が約200Vに維持されるように、DC/DCコンバータ13のチョッパを制御する。電解コンデンサ14に保持される電気エネルギーは放電に伴って減少するが、その充電電圧が420Vから200V近くに下がるまでは、直流電圧出力端102から約200Vの直流電圧が出力され続ける。
【0034】
電力分配部20において直流電圧入力端201に上記のような直流電圧が印加されると、並列に接続された電流方向制限部22a、22b、…を通して各サーボアンプ30にそれぞれ直流電力が供給される。サーボモータ3の仕様が異なる場合であっても、各サーボアンプ30にはそれぞれ必要な直流電力が供給されるので、商用交流電源2からの電力供給が途絶えた場合であっても、各サーボアンプ30はサーボモータ3の駆動を継続することができる。
【0035】
当然のことながら、バックアップ電源部10の電解コンデンサ14に蓄積されている電気エネルギーに相当する分しか各サーボアンプ30に代替直流電力を供給することはできないから、商用交流電源2からの電力供給停止が長引いた場合にはサーボモータ3を安全に停止させる必要がある。そこで、例えば電圧低下検出部17による電圧低下検出信号を受けて、その電圧低下が所定時間(1秒間など)以上継続したことを検知したならば各サーボモータ3の運転を安全に停止させるようにサーボアンプ30に指令を与える制御装置を別途設けたり、或いはそうした機能を制御部18に持たせたりするとよい。
【0036】
以上のようにして、本実施例の直流電源用電圧低下保護装置1では、商用交流電源2による電力供給の一時的な遮断が起こった場合でも、代替直流電力を複数のサーボアンプ30に供給することができる。それによって、サーボアンプ30に接続されたサーボモータ3は特に瞬時電圧低下の影響を受けることなく、動作を継続することができる。
【0037】
上記実施例では蓄電手段として電解コンデンサ14を用いているが、これに代えて電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタなどのほか、バッテリ等の2次電池を利用することもできる。
【0038】
また上記実施例は本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることも当然である。
【符号の説明】
【0039】
1…直流電源用電圧低下保護装置
2…商用交流電源
3…サーボモータ
4…エンコーダ
5…信号処理部
10…バックアップ電源部(代替直流電力生成手段)
101…交流電圧入力端
102…直流電圧出力端
103…監視モニタ電圧入力端
11…充電昇圧部(充電手段)
12…整流回路(充電手段)
13…DC/DCコンバータ(変換手段)
131…コンデンサ
132…チョークコイル
134…スイッチング素子
135…ダイオード素子
14…電解コンデンサ(蓄電手段)
15…スイッチング駆動部
16…電圧モニタ部
17…電圧低下検出部
18…制御部
191…入力部
192…表示部
20…電力分配部(代替直流電力分配手段)
201…直流電圧入力端(入力端)
202a、202b…直流電圧分配出力
端
203…監視モニタ電圧出力端
22a、22b…電流方向制限部
23a、24a…ダイオード(電流方向制限手段)
25a、25b…電圧検出部(電圧検知手段)
26…通信処理部
30…サーボアンプ
31…整流部
32…コンデンサ
33…インバータ部
34…出力電流検出部
35…制御回路部
36…P/N端子