(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来の逆打ち工事においては、構真柱にはH型鋼若しくはクロスH型鋼等の鋼材が広く使用され、構真柱の構真台柱への根入れ部分には、頭付スタッドが取り付けられていた。
この結果、
図11(A)〜
図11(D)に示すように、構真柱70に作用する軸力(鉛直荷重)Pは、構真柱70の外周面と構真台柱72のコンクリートとの間の付着抵抗N
f(kN)、スタッド74と構真台柱72との間のスタッド抵抗N
s(kN)、及び構真柱70の下端面と構真台柱72との間の支圧抵抗N
b(kN)とが合計された抵抗N(kN)により支持されていた。
【0003】
また、構真台柱72に作用した構真柱70からの軸力(鉛直加重)Pは、構真台柱72と地盤との間の周面摩擦抵抗、及び構真台柱の下端面と地盤との間の支圧抵抗により地盤に伝達される。このような軸力Pの伝達経路を考慮して、構真柱70の根入れ部の設計方法が提案されている(例えば、非特許文献1、2参照)。
【0004】
近年、建物の高層化に伴う建物重量の増加に対応するため、構真柱としてコンクリート充填鋼管柱(以下、CFT柱と記す)が利用されるようになってきている。CFT柱は、従来のRC柱(鉄筋コンクリート柱)やSRC柱(鉄骨鉄筋コンクリート柱)に比べ、大きな曲げ耐力及びせん断耐力を有する大断面(例えば一辺が700mm〜1000mm程度)の柱である。
【0005】
一方、構真柱からの軸力を受けて地盤に伝達する構真台柱は、構真台柱に用いるコンクリートの強度の増加や、拡径率(杭軸部の径に対する杭先端の径の比)が高い拡径杭の増加等により、軸部の外径が小さくなる(例えば外径が1400mm〜3000mm程度)傾向にある。
【0006】
CFT柱を用いた建物を逆打ち工法により構築する場合、CFT柱をそのままCFT構真柱として利用する場合が多い(例えば、特許文献1参照)。
ここに、特許文献1は、先端部にコンクリートを充填したCFT鋼管柱を、杭穴内に建て込んだ後に、杭コンクリートを打設して構真柱としての鉛直精度を確保する。次いで、CFT鋼管の中空内部にコンクリートを充填してCFT柱とする構成である。
【0007】
しかし、従来の方法に従って構築された構真台柱で特許文献1のCFT構真柱を支持させた場合、構真台柱の軸部の外径に対してCFT構真柱の幅(又は外径)が大きくなり、構真台柱の支持力(抵抗)が不足して、CFT構真柱に作用する軸力を構真台柱へ伝達できなくなる恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事実に鑑み、構真台柱の径に対してCFT構真柱の幅が大きくなった場合においても、CFT構真柱に作用する軸力を構真台柱へ伝達できるCFT構真柱と構真台柱の接合構造
の設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明に係るCFT構真柱と構真台柱の接合構造
の設計方法は、建物を支持し、根入れ部にスタッドが設けられたCFT構真柱と、前記根入れ部が挿入され、前記根入れ部
を抵抗Nで支持する構真台柱と、を有
するCFT構真柱と構真台柱の接合構造において、
下記(1)式で算出される前記抵抗Nを前記建物から前記CFT構真柱に伝達される軸力
より大きく
する、ことを特徴としている。
【数1】
【数2】
【数3】
ここに、
N :N
1及びN
2で求められた構真台柱の抵抗のうち値の小さい方(kN)
N
1 :N
f、N
b及びN
sから求められるCFT構真柱の根入れ部における構真台柱の抵抗(kN)
N
2 :コンクリートの許容圧縮応力度から求められるCFT構真柱の根入れ部における構真台柱の抵抗(kN)
N
f :CFT構真柱の外周面と構真台柱との間の付着抵抗(kN)
N
b :CFT構真柱の先端面と構真台柱との間の支圧抵抗(kN)
N
s :スタッドと構真台柱との間のスタッド抵抗(kN)
α :累加係数(通常0.5)
β :累加係数(通常0.8)
σ
c:構真台柱コンクリートの許容圧縮応力度(kN/m2)
A
c :構真台柱の断面積からスタッドを含むCFT構真柱の投影断面積を差し引いた断面積(m
2)
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、構真台柱における、CFT構真柱の根入れ部を支持する抵抗N
を(1)式により算出
する。また、建物からCFT構真柱に伝達される軸力に対し、抵抗N
を大きく
する。
ここに(1)式は、(2)式と(3)式で算出されたCFT構真柱の根入れ部の抵抗N
1、N
2のうち、小さい方を選択して抵抗Nとする。
【0012】
これにより、実際の抵抗値により近い、CFT構真柱の根入れ部
における構真台柱の抵抗Nを算出することができる
。建物からCFT構真
柱に伝達
される軸力
に対し抵抗Nを大きい値に調整することで、CFT構真柱に作用する軸力を構真台柱へ伝達できるCFT構真柱と構真台柱の接合構造を提供することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のCFT構真柱と構真台柱の接合構造
の設計方法において、前記CFT構真柱の幅(D)に対する前記構真台柱の径(Φ)の比R(R=Φ/D)
を2.0以
上、且つ3.0未満
とする
、ことを特徴としている。
即ち、比Rが2.0以上で、且つ3.0未満の範囲において、CFT構真柱に作用する軸力を構真台柱へ伝達することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明に係るCFT構真柱と構真台柱の接合構造
の設計方法は、建物を支持し、根入れ部にスタッドが設けられたCFT構真柱と、前記CFT構真柱が根入れされる根入れ部
に補強部材が設けられている構真台柱と、を有するCFT構真柱と構真台柱の接合構造
において、前記補強部材を、下記(4)式を満たす強度とする、ことを特徴としている。
【数4】
ここに、
P
w :構真台柱の面積に対する補強部材の断面積の割合(%)
σ
sy:補強部材の降伏強度(kN/m
2)
σ
ct:建物からCFT構真柱に伝達される軸力に基づいて算出される構真台柱に作用する引張応力(kN/m
2)
請求項3に記載の発明によれば、構真台柱における、CFT構真柱が根入れされる根入れ部に
設けられている補強部材を(4)式を満たす強度
とする。また、CFT構真柱の根入れ部には、スタッドが設けられている。
この補強部材が、構真台柱に作用する圧縮応力を分担することにより、構真台柱の径に対してCFT構真柱の幅が大きくなった場合においても、CFT構真柱に作用する軸力を構真台柱へ伝達できる、CFT構真柱と構真台柱の接合構造
の設計方法を提供することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のCFT構真柱と構真台柱の接合構造
の設計方法において
、前記構真台柱の断面積(A
1)に対する前記補強部材の断面積(A
2)の割合P
w(P
w=A
2/A
1)
を0.45%以上
とする
、ことを特徴としている。
この結果、補強部材により、CFT構真柱と構真台柱の接合強度を高く維持することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上記構成としてあるので、構真台柱の径に対してCFT構真柱の幅が大きくなった場合においても、CFT構真柱に作用する軸力を構真台柱へ伝達させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
図1〜
図5を用いて、第1の実施形態に係るCFT構真柱と構真台柱の接合構造10について説明する。
ここに、
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るCFT構真柱と構真台柱の接合構造の基本構成を示す図であり、
図2は、模型実験の試験体1〜試験体3の横断面図及び縦断面図であり、
図3は、試験体1〜試験体3の代表寸法を示す図であり、
図4は、模型実験の実験結果を示す図であり、
図5は、他の展開例を示す接合部の横断面図である。
【0019】
図1に示すように、第1の実施形態に係るCFT構真柱と構真台柱の接合構造10は、根入れ部36にスタッド16が設けられたCFT構真柱12を有している。
CFT構真柱12は、一辺がDの正方形の角形鋼管の内部に、コンクリート18が充填されたコンクリート充填鋼管である。CFT構真柱12の下部は根入れ部36とされ、構真台柱14に深さHで根入れされている。CFT構真柱12の根入れ部36の外周面には、頭付きスタッド16が複数本、所定の間隔を開けて設けられている。
【0020】
構真台柱14は、地中に埋設され、CFT構真柱12を支持する外径Φの鉄筋コンクリート製の柱体である。構真台柱14には、CFT構真柱12の根入れ部36が深さHで根入れされ、CFT構真柱12から伝達される鉛直荷重Pは、構真台柱14を介して周囲の地盤へ伝達される。
【0021】
このような構成において、CFT構真柱12が根入れされる構真台柱14の抵抗N(kN)は、下記(1)式で算出することができる。
【数1】
【数2】
【数3】
ここに、
N :N
1及びN
2で求められた構真台柱の抵抗のうち値の小さい方(kN)
N
1:N
f、N
b及びN
sの和から求められるCFT構真柱の根入れ部における構真台柱の抵抗(kN)
N
2:コンクリートの許容圧縮応力度から求められるCFT構真柱の根入れ部における構真台柱の抵抗(kN)
N
f :CFT構真柱の外周面と構真台柱との間の付着抵抗(kN)
N
b :CFT構真柱の先端面と構真台柱との間の支圧抵抗(kN)
N
s :スタッドと構真台柱との間のスタッド抵抗(kN)
α :累加係数(通常0.5)
β :累加係数(通常0.8)
σ
c :構真台柱コンクリートの許容圧縮応力度(kN/m
2)
A
c :構真台柱の断面積からスタッドを含むCFT構真柱の投影面積を差し引いた断面積(m
2)
【0022】
次に、抵抗Nの具体的な算出方法について説明する。
先ず(2)式で構真台柱14の抵抗N
1(kN)を算出する。
ここに(2)式は、上述した非特許文献1、2に記載された式であり、従来から広く使用されている。(2)式を用いることで、構真柱12の外周面と構真台柱14のコンクリートとの間の付着抵抗N
f(kN)、スタッド16と構真台柱14との間のスタッド抵抗N
s(kN)、及び構真柱12の下端面と構真台柱14との間の支圧抵抗N
b(kN)とが合計された構真台柱14の抵抗N
1(kN)が算出される。
【0023】
次に、(3)式で構真台柱14の抵抗N
2(kN)を算出する。
ここに(3)式は新たに提案された式であり、(3)式を用いることで、構真台柱14を構成するコンクリートの許容圧縮応力度σ
cと、構真台柱14の断面積からスタッド16を含むCFT構真柱12の投影面積を差し引いた断面積A
c(m
2)との積から、構真台柱14の抵抗N
2(kN)が算出される。
【0024】
最後に(1)式により、(2)式で算出された抵抗N
1(kN)と(3)式で算出された抵抗N
2(kN)が比較され、小さい方の値が選択され抵抗N(kN)とされる。
この抵抗N(kN)により、構真柱12から構真台柱14に作用する軸力(荷重)P(kN)が支持される。
【0025】
次に、(1)式〜(3)式の適用範囲について説明する。
(1)式〜(3)式の適用範囲としては、CFT構真柱12の幅Dに対する構真台柱14の径Φの比R(R=Φ/D)が、2.0以上で、且つ3未満(2.0≦R<3.0)が望ましい。
【0026】
上限である比Rが3.0未満という条件については、(2)式は、従来から用いられている式であり、後述すように、比Rが3.0以上の範囲では、(2)式で実際の抵抗とほぼ等しい値を算出することができるため、この範囲を除外するため比Rが3.0未満とした。
一方、下限である比Rが2.0以上という条件については、根切り部36の角部において、CFT構真柱12を囲むコンクリートの被り厚さKが絶対量が不足し(例えば、比Rが2.0ではコンクリートの最小被り厚さKが約0.3Dとなる)、構真台柱14として要求される安全率を物理的に確保できなくなるため、比Rの下限を2.0以上とした。
【0027】
従って、(1)式〜(3)式を用いることにより、構真台柱14の軸部の径Φに対し、CFT構真柱12の幅Dが相対的に大きくなり、(2)式では、構真台柱14の抵抗N(支持力)が過大に算出される範囲(比Rが2.0以上で且つ3未満)において、後述するように、構真台柱14の実際の抵抗とほぼ等しい抵抗Nを算出することができる。
【0028】
次に、(1)式〜(3)式の妥当性について実証実験結果を用いて説明する。
実証実験は、CFT構真柱の根入れ部の抵抗を把握するため、実際の構真柱の根入れ部の1/5程度のスケールの構造模型を用いて実施した。
試験体は
図2に示す3種類(試験体1〜3)とした。試験体1〜3は、径Φの異なる3種類の構真台柱28、30、32を用いて行った。また、試験体1〜3の構真台柱28、30、32には、いずれも一辺の幅がD1のCFT構真柱26が根入れされている。
【0029】
実証実験は、試験体1〜3のそれぞれについて、構真柱26の上部に鉛直荷重Pを加え、鉛直荷重Pを徐々に大きくし、鉛直荷重Pに対する構真台柱28、30、32の変位量δを計測した。
【0030】
図3に試験体1〜3の各部の代表寸法を示す。
構真柱26の幅D1は試験体1〜3ですべて同じ寸法(200mm)とした。構真柱26が根入れされた試験体1の構真台柱28の径Φ1は600mm、試験体2の径Φ2は500mm、試験体3の径Φ3は400mmとした。
この結果、試験体1〜3の構真柱26の幅D1に対する構真台柱28、30、32の径Φ1〜Φ3の比R(R=Φ/D)は、R=2.0〜3.0の範囲となった。また、試験体1〜3の構真柱26を囲む構真台柱28、30、32のコンクリートの最小被り厚さK1〜K3は、0.3D〜0.8Dの範囲であった。
【0031】
図4(A)に検証実験の結果を、
図4(B)に検証結果を示す。
図4(A)の横軸は構真台柱の変位量δ(mm)であり、縦軸は構真柱に加えた鉛直荷重P(kN)である。
図4(A)の特性Q1は試験体1のP-δ特性であり、特性Q2は試験体2のP-δ特性であり、特性Q3は試験体3のP-δ特性である。
【0032】
特性Q1は、最も大きな鉛直荷重P(最大約4200kN)に耐えることができた。また、この時の変位量δは最も小さな値であった。これは、試験した3種類の試験体の中で、試験体1の構真台柱28の径Φ1が最も大きいためと思われる。
特性Q2は、次に大きな鉛直荷重P(最大約2700kN)に耐えることができた。また、この時の変位量δは、次に小さな値であった。これは、試験体2の構真台柱30の径Φ2が、試験体1に次いで大きいためと思われる。
特性Q3は、最も小さな鉛直荷重P(最大約1800kN)に耐えることができた。また、この時の変位量δは、最も大きな値であった。これは、試験した3種類の試験体の中で、試験体3の構真台柱32の径Φ3が最も小さいためと思われる。
【0033】
図4(A)の横軸に平行な特性Uは、上述した(2)式で算出した構真台柱の抵抗N
1である。すべての試験体1〜3で同じ値(約4100kN)となっている。
また、
図4(A)の横軸に平行な特性S1は、(3)式で算出した試験体1の構真台柱28の抵抗N
2である。抵抗N
2は約4600kNであった。特性S2は、(3)式で算出した試験体2の構真台柱30の抵抗N
2である。抵抗N
2は約2600kNであった。特性S3は、(3)式で算出した試験体3の構真台柱32の抵抗N
2である。抵抗N
2は約1700kNであった。
【0034】
図4(B)には、最大鉛直荷重の実測値、及び(1)〜(3)式の算出結果を示している。最大鉛直荷重をCFT構真柱12の根入れ部の抵抗と考えると、これらの結果から、(1)式の算出結果は、実際に測定した実測値と試験体1〜3のいずれにおいてもよく一致しているといえる。
即ち、試験体1については(2)式の算出結果を採用し、試験体2については(3)式の算出結果を採用し、試験体3については(3)式の算出結果を採用することで、構真台柱の根入れ部の抵抗を正しく求めることができる。
【0035】
ここに、試験体1の構真柱12の幅(D)に対する構真台柱14の径(Φ)の比R(R=Φ/D)は3.0であり、試験体2の比Rは2.5であり、試験体3の比Rは2.0である。
このことから、比Rが2.0〜3.0の範囲において、(1)〜(3)式でCFT構真柱の根入れ部の抵抗を評価できるといえる。
【0036】
なお、比Rが3.0以上の範囲では、従来から(2)式で抵抗を評価してきた。今回の実験でも、上述したように、比Rが3.0において(2)式で抵抗を評価できることが証明された。
一方、比Rが3.0より小さい範囲では、(2)式の算出値と実測値は大きく乖離しており、(2)式では、比Rが3.0より小さい範囲では算出値は過大となり、正しく評価することはできない。
【0037】
この(2)式では過大と算出される範囲においては、(3)式を用いることにより実測値とほぼ等しい抵抗を算出することができる。即ち、本実施の形態の(1)式〜(3)式を用いれば、比Rが2.0〜3.0の範囲で、CFT構真柱の根入れ部の抵抗を正しく評価することができる。
【0038】
次に、効果について説明する。
以上説明したように、CFT構真柱と構真台柱の接合構造10において、構真台柱14の径Φに対し、CFT構真柱12の幅Dが大きくなった場合(CFT構真柱12の幅Dに対する構真台柱14の径Φの比R(R=Φ/D)が2以上で、且つ3未満)においても、構真台柱14の抵抗Nを正しく把握することができる。この抵抗Nを用いて鉛直荷重Pを調整することで、CFT構真柱12に作用する軸力を構真台柱14へ伝達できるCFT構真柱と構真台柱の接合構造10を提供することができる。
【0039】
即ち、従来の(2)を用いた根入れ部の抵抗Nの算定方法では、根入れ部の抵抗を過大に評価する範囲(比Rが3.0未満)が存在するため、この範囲において、構真台柱14にクラック等が発生するという問題を解決できる。
更に、構真台柱14に生じたクラック等により、CFT構真柱12が予想以上に沈下し、その後の逆打ち躯体の作業に悪影響を及ぼすという問題を解決できる。
【0040】
また、本実施形態によるCFT構真柱と構真台柱の接合構造10を用いる事により、構真柱12の根入れ部分の抵抗を正しく評価することができ、構真台柱14や逆打ち躯体の品質が確保され、逆打ち工事を安全に行うことができる。
更に、CFT構真柱12に作用する軸力が、構真台柱14の根入れ部分の抵抗より大きい場合、本実施形態によるCFT構真柱と構真台柱の接合構造10を用いることにより、構真台柱の径Φを大きくする、若しくは構真台柱14のコンクリート強度を増加させるなどの対策を簡易に計画することができる。
【0041】
なお、CFT構真柱12は、断面が矩形の角形鋼管で説明したが、
図5(B)に示す断面が円形のCFT鋼管38であっても良い。この場合には、幅DをCFT鋼管38の直径Dとすればよい。
【0042】
また、本実施形態の適用範囲は、CFT構真柱12の幅Dに対する構真台柱14の径Φの比R(R=Φ/D)が2以上3未満と表現した。しかし、CFT構真柱12の根入れ部の最小被り厚さKで表現してもよい。
即ち、断面が矩形の、CFT構真柱12を覆う根入れ部における構真台柱14の最小被り厚さをK(
図5(A)参照)、CFT構真柱12の幅をDとしたとき、最小被り厚さKは0.3D以上、0.8D未満(0.3D≦K<0.8D)と表現される。
なお、断面が円形のCFT鋼管38では、最小被り厚さK4は、0.5D以上、1.0D未満(0.5D≦K4<1.0D)と表現される(
図5(B)参照)。
【0043】
(第2の実施形態)
図6〜
図10を用いて、第2の実施形態に係るCFT構真柱と構真台柱の接合構造40について説明する。構真台柱42が補強部材としての補強鉄筋48を有している点において、第1の実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0044】
ここに、
図6は第2の実施形態に係るCFT構真柱と構真台柱の接合構造の基本構成を示す図であり、
図7は構真台柱に作用する引張応力の算定方法を示す図であり、
図8は模型実験の試験体4〜試験体7の構成を示す図であり、
図9は模型実験の試験体4〜試験体7の代表寸法を示す図であり、
図10は模型実験の実験結果を示す図である。
【0045】
図6に示すように、第2の実施の形態に係るCFT構真柱と構真台柱の接合構造40は、根入れ部にスタッド16が設けられたCFT構真柱12を有し、CFT構真柱12は、構真台柱42に深さHで根入れされている。
ここに、CFT構真柱12とスタッド16は、第1の実施の形態で既に説明したCFT構真柱12及びスタッド16と同じ寸法、同じ構成であり説明は省略する。
【0046】
構真台柱42は、主筋44と帯筋46からなる補強部材としての補強鉄筋48を有している。補強鉄筋48は、構真台柱42の外周に、CFT構真柱12を囲んで所定の被り厚さで設けられている。更に、補強鉄筋48は、構真台柱42の長さ方向の全長に渡り配筋されている。
【0047】
補強鉄筋48は、下記(4)式〜(6)式を満たす強度を有している。
【数4】
【数5】
【数6】
ここに、
P
w :構真台柱の断面積に対する補強部材の断面積の割合(%)
σ
sy :補強部材の降伏強度(kN/m
2)
σ
ct :構真台柱に作用する引張応力(kN/m
2)
σ
cc :構真台柱に作用する圧縮応力(kN/m
2)
Φ :構真台柱の径(m)
D :構真柱の幅(m)
x :構真柱根入れ先端深度からの距離(m)
β :形状係数(−)
【0048】
上式において、補強鉄筋48の量は(4)式により算出される。なお、構真台柱42に作用する引張り応力σ
ctは、非特許文献1に記されている割裂引張り応力の算定方法に基づいて
図7、(5)式及び(6)式により算定される。
図7は、横軸に構真柱根入れ先端深度からの距離x(m)と構真台柱の径Φ(m)の比(x/Φ)をとり、縦軸に構真台柱42に作用する引張応力σ
ct(kN/m
2)と圧縮応力σ
cc(kN/m
2)の比(σ
ct/σ
cc)をとっている。
図7を用いることで、形状係数βごとの縦軸と横軸の関係を求めることができる。
【0049】
また、CFT構真柱と構真台柱の接合構造40において、補強鉄筋48は、構真台柱42の断面積(A
1)に対する補強鉄筋48の断面積(A
2)の割合P
w(P
w=A
2/A
1)が0.45%以上とされている。
これにより、補強鉄筋48に要求される強度が確保される。
【0050】
本構成とすることにより、補強鉄筋48が、構真台柱42に作用する圧縮応力を分担することができる。この結果、構真台柱42の径Φに対してCFT構真柱12の幅Dが大きくなった場合においても、補強鉄筋48により、CFT構真柱12に作用する軸力を構真台柱42へ伝達できるCFT構真柱と構真台柱の接合構造を提供することができる。
【0051】
次に、補強鉄筋の強度検証実験について説明する。
CFT構真台柱42の根入れ部に設けられた補強鉄筋48による効果を把握するため、実際の構真柱の1/5程度のスケールの構造模型を用いて強度検証実験を実施した。
【0052】
図8(A)〜(D)に示すように、模型実験は、4種類の試験体(試験体4〜7)を用いて行った。
図8(A)に示す試験体4は、既述の試験体3と同じ寸法、構成であり、CFT構真柱26の根入れ部が構真台柱32に根入れされている。CFT構真柱26の径はD(mm)であり、構真台柱32の径はΦ(mm)である。構真台柱32には、補強鉄筋48は設けられていない。
【0053】
図8(B)に示す試験体5は、試験体4と同じ基本的に寸法、構成とされている。試験体5の構真台柱58には、鉄筋量比0.2%の補強鉄筋48が、CFT構真柱26を囲んで設けられている。
図8(C)に示す試験体6は、試験体4と同じ基本的に寸法、構成とされている。試験体6の構真台柱60には、鉄筋量比0.45%の補強鉄筋48が、CFT構真柱26を囲んで設けられている。
図8(D)に示す試験体7は、試験体4と同じ基本的に寸法、構成とされている。試験体7の構真台柱62には、鉄筋量比0.7%の補強鉄筋48が、CFT構真柱26を囲んで設けられている。
【0054】
強度検証実験は、試験体4〜7に、それぞれ鉛直荷重P(kN)を加え、鉛直荷重P(kN)に対する構真台柱32、58、60、62の変位量δ(mm)を計測した。
図9に試験体4〜7の代表寸法を示す。
【0055】
図9に示すように、試験体4〜7において、CFT構真柱26の幅Dはいずれも同一寸法200mmであり、構真台柱32、58、60、62の直径Φも、いずれも同一寸法400mmである。これから、構真柱の幅Dに対する構真台柱の直径Φの比Rは、いずれも2.0となっている。また、最小被り厚さKは、いずれも0.3Dとなっている。
【0056】
図10に強度検証実験の結果を示す。
図10の横軸は構真台柱の変位量δ(mm)であり、縦軸は構真柱に加えた鉛直荷重P(kN)である。
図10(A)の特性Q4は試験体4のP-δ特性であり、特性Q5は試験体5のP-δ特性であり、特性Q6は試験体6のP-δ特性であり、特性Q7は試験体7のP-δ特性である。
【0057】
特性Q4は、最も小さな最大鉛直荷重P(最大約1500(kN))しか耐えることができず、変位量δも大きい。これは、試験体4の構真台柱32には、補強鉄筋48が設けられていない(P
wが0.0%)ためと考えられる。
特性Q5は、次に小さな最大鉛直荷重P(最大約3200(kN))にしか耐えることができない。また変位量δは特性Q4より小さい。これは、試験体5の構真台柱58には、補強鉄筋48(P
wが0.2%)が設けられているものの、鉄筋量が少ない(P
wが0.2%)ためと思われる。
【0058】
特性Q6は、大きな最大鉛直荷重P(最大約4000(kN))に耐えることができた。また、変位量δは特性Q4より小さい。これは、試験体6の構真台柱60には、十分な量の補強鉄筋48(P
wが0.45%)が配筋されているためと思われる。
特性Q7は、最も大きな最大鉛直荷重P(最大約4100(kN))に耐えることができた。また、変位量δは特性Q4より小さい。これは、試験体7の構真台柱62には、十分な量の補強鉄筋48(P
wが0.7%)が配筋されているためと思われる。
【0059】
更に、
図10(A)に示す横軸に平行な特性Uは、既述した(2)式で求めた、構真台柱32の根入れ部の抵抗である。特性Q4と特性Q5は、この特性Uの値に到達していないが、特性Q6と特性Q7の最大抵抗Nは、この値とほぼ等しい値に到達している。
【0060】
即ち、適正な鉄筋量比P
wが確保されれば、補強鉄筋48の作用により、補強鉄筋48が鉛直荷重Pを分担して支持する。この結果、CFT構真柱の幅Dに比して構真台柱の径Φが十分に大きい場合の値4100(kN)の抵抗が確保される。ここに、適正な鉄筋量比P
wは、試験体6、7のP
wが0.45%以上であることから、P
wが0.45%以上ということができる。
なお、今回の試験体4〜7において、(5)式により算定される構真台柱に発生する引張り応力σ
t=2.0N/mm
2程度であった。
【0061】
上述したように、補強鉄筋48による補強を行なえば、CFT構真柱26に作用する軸力が構真柱根入れ部の抵抗より大きい場合、構真台柱の抵抗を同じ寸法のまま増加させ、構真台柱にCFT構真柱26を支持させることができる。
また、本補強方法では、構真台柱の径Φを大きくする、若しくは構真台柱のコンクリート強度を増加させる等の方法で対応する必要がないため、構真台柱を構築するための掘削量の削減、コンクリート量の削減、更にはセメント量の削減が可能となる。
【0062】
また、本実施の形態による補強鉄筋量の算定方法を用いることにより、構真柱根入れ部の抵抗を増加させる対策を、簡易に計画することができる。
なお、図示は省略するが、補強鉄筋48の代わりに、構真台柱の外周部の補強鉄筋48の位置に鋼管を埋め込んでも、補強鉄筋48と同等の効果を得ることができる。
他は、第1の実施形態と同じであり説明は省略する。