特許第6095907号(P6095907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 6095907-水門扉開閉装置 図000002
  • 6095907-水門扉開閉装置 図000003
  • 6095907-水門扉開閉装置 図000004
  • 6095907-水門扉開閉装置 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095907
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】水門扉開閉装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/20 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
   E02B7/20 110
   E02B7/20 109
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-139526(P2012-139526)
(22)【出願日】2012年6月21日
(65)【公開番号】特開2014-1610(P2014-1610A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】501126478
【氏名又は名称】水機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 秀昭
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−223210(JP,A)
【文献】 実開昭64−027584(JP,U)
【文献】 実開昭58−165022(JP,U)
【文献】 実開昭59−061329(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3037484(JP,U)
【文献】 米国特許第04726709(US,A)
【文献】 特開昭55−20835(JP,A)
【文献】 特開平08−120652(JP,A)
【文献】 特開2010−24724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/20−13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベベルギヤと当該ベベルギヤにベベルピニオンを直交噛合させた、かさ歯車伝達機構からなる水門扉開閉装置であって、
下端部に連結した扉を支持するスピンドルと、当該スピンドルを上下に移動支持するステムナットとを備え、
前記ステムナットはハウジング内にベアリング支持されているとともに当該ステムナットに同心円状に連結固定したベベルギヤを有し、
前記ベベルギヤは円錐形状であって、歯面幅及び歯溝幅が外周部から中心部に向けて徐々に小さくなっており、
扉を開閉操作するハンドルに連結したハンドル軸を有し、
前記ハンドル軸はハンドル軸ケース内にスラスト方向移動可能で且つラジアル方向には移動が規制された状態で回転自在にベアリング支持されているとともに当該ハンドル軸の先端部にベベルピニオンが連結固定されており、
前記ベベルピニオンは円錐形状であって歯面幅及び歯溝幅が外周部から中心部に向けて徐々に小さくなっているとともにハンドル軸の周囲に配設したスプリングからなる弾性部材によりベベルギヤに向けて弾性付勢され、セルフロック機能を有していることを特徴とする水門扉開閉装置。
【請求項2】
スピンドルのねじ効率ηの値を0.5以上に設定したことを特徴とする請求項1記載の水門扉開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川等の水路に設置される水門における扉開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水門に設けた水密扉を上下に開閉する装置としてベベルギヤ式扉開閉装置が採用されている。
この種の扉開閉装置は、扉をスピンドルで支持し、スピンドルにステムナットを噛合し、このステムナットに固定連結したベベルギヤにハンドル側のベベルピニオンを噛合させることでハンドルの回転操作で扉を上下動させるものである。
スピンドルには扉の重量が負荷されるの扉が自重で降下するのを防ぐ必要があり、手動式の場合にスピンドルのねじ溝のリード角を大きくとることができずに、ねじ効率ηの値が0.15〜0.35の範囲に設定されていた。
したがって扉の上昇にはハンドルの廻す回数が多くなり、操作時間が長くなる問題があるだけでなく、ステムナットのねじ面磨耗が著しく、その寿命が短い技術的課題もあった。
特許文献1に扉の自重降下を防ぐためのブレーキ装置を開示するが、構造が複雑になり高価な装置になることから実用的ではなかった。
また、上下動が速いラック式巻上機を用いた水門も知られているが、チェーン等によるブレーキ機構が故障すると、扉が急降下し事故発生の恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61−135930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はスピンドルのねじ効率が高く、扉の自重降下を防止した水門扉の開閉装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、 ベベルギヤと当該ベベルギヤにベベルピニオンを直交噛合させた、かさ歯車伝達機構からなる水門扉開閉装置であって、下端部に連結した扉を支持するスピンドルと、当該スピンドルを上下に移動支持するステムナットとを備え、前記ステムナットはハウジング内にベアリング支持されているとともに当該ステムナットに同心円状に連結固定したベベルギヤを有し、前記ベベルギヤは円錐形状であって、歯面幅及び歯溝幅が外周部から中心部に向けて徐々に小さくなっており、扉を開閉操作するハンドルに連結したハンドル軸を有し、前記ハンドル軸はハンドル軸ケース内にスラスト方向移動可能で且つラジアル方向には移動が規制された状態で回転自在にベアリング支持されているとともに当該ハンドル軸の先端部にベベルピニオンが連結固定されており、前記ベベルピニオンは円錐形状であって歯面幅及び歯溝幅が外周部から中心部に向けて徐々に小さくなっているとともにハンドル軸の周囲に配設したスプリングからなる弾性部材によりベベルギヤに向けて弾性付勢され、セルフロック機能を有していることを特徴とする。
【0006】
本発明における特徴は、ベベルピニオンをベベルギヤに向けてスプリング等で弾性付勢力を作用させた点にある。
ベベルギヤとベベルピニオンからなるかさ歯車伝達機構にあっては、ベベルギヤの回転軸とベベルピニオンの回転軸とが直交していることから、歯車の形状が円錐状であり、噛み合う歯の歯面及び歯溝の幅寸法が歯車の外周部から中心部に向けて徐々に狭くなっている。
したがって、例えば、ベベルピニオンを連結したハンドル軸の外周部にコイルスプリングを配設する等して、ベベルピニオンがベベルギヤ側に向けて押し出されるように弾性付勢力を働かせると、ベベルピニオンの歯がベベルギヤの歯溝に対して、いわば楔状に押し込まれる力が作用する。
これにより扉の自重によりスピンドルが降下するのを抑えるセルフロック機能が出現する。
扉を降下させる場合はスピンドルが下がる方向にハンドルを軽く廻すとベベルピニオンが弾性部材の付勢力に対抗して少し後退することでロックが解除し、このベベルピニオンの歯が1つ廻り、次の歯溝のときにベベルピニオンが弾性部材の付勢力で前進し、セルフロック機能が働く。
よって、ハンドルを軽く廻し続けると、上記の動作が繰り返され、かさ歯の歯先が当たる断続音を出しながら扉が降下しハンドルを廻すのを途中で停止すると、その位置でセルフロック機能により扉の降下が停止する。
一方、扉を上昇させることで水門を開門する方向にハンドルを廻すとベベルピニオンの形状が円錐形状になっているので、このベベルピニオンに後退方向のベクトル成分が発生し、弾性部材の付勢力に対抗しながら少し後退する。
その状態でハンドルを廻し続けることになるので今度は断続音が発生することなく滑らかに扉が上昇する。
【0007】
本発明において、かさ歯車の伝達機構にセルフロック機能を付与したので、スピンドルのねじ効率ηの値を0.5以上に設定することが可能になり扉の開閉効率が向上する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る水門扉開閉装置においては、ベベルピニオンをベベルギヤ側に向けて弾性部材で付勢させたので扉の降下時にセルフロック機能が働き、扉が自重で急降下することがないので安全である。
また、これによりスピンドルのねじ効率を従来より大きく設定できる。
スピンドルのねじピッチを従来よりも大きくすることができるので、ステムナットのねじ面磨耗による寿命が向上する。
さらには、仮にブレーキ部に故障が生じて自重降下したとしても、従来のラック式巻上機に比較して速度がつきにくく安全である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る水門扉開閉装置の構造例を示す。
図2】かさ歯車及びハンドル軸部の拡大図を示す。
図3】かさ歯車伝達機構部の拡大図を示す。
図4】水門の構造例を示し、(a)は側面図、(b)は正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る水門扉開閉装置にあっては、スピンドルにて扉を開閉する各種水門に適用できるが、以下、実施例として図4に示した門構え水門に適用した例を説明する。
【0011】
水路を塞ぐように門構えのゲート1の左右内側に戸溝を形成し、この戸溝に沿って水密性を確保しながら扉2が上昇及び下降動作することで水門の開閉が行われる。
扉の上端にスピンドル12が連結されており、ゲートの上部梁に設けた水門扉開閉装置10によりスピンドル12が上下動する。
【0012】
水門扉開閉装置10は図1及び図2に示すようにハウジング11内にベアリング16bにて支持したステムナット16のねじ部16aにスピンドルのねじ溝12aを螺合させてある。
ステムナット16は同心円状にベベルギヤ18が連結固定されている。
ハウジング11の側部にハンドル軸ケース14を設け、ハンドル軸ケース内にハンドル軸13aがベアリング14aにて回転自在に支持されている。
ハンドル軸の先端にはベベルピニオン17がハンドル軸に対してスラスト方向にはスライド移動可能でラジアル方向には移動が規制されるようにベベルピニオンが配設されている。
ベベルピニオン17はハンドル軸に沿って前進方向(ベベルギヤ18側に向けて)に付勢力を働かせたスプリング等の弾性部材15を配設してある。
この位置関係を図3に示す。
ベベルギヤ18及びベベルピニオン17は円錐形状を有し、ベベルギヤの歯面幅及び歯溝幅は外周部(18d,18b)から中心部(18c,18d)に向けて徐々に小さくなっている。
ベベルピニオン17も同様に、歯面幅及び歯溝幅が外周部(17b,17d)から中心部(17a,17c)に向けて徐々に小さくなっている。
これによりベベルピニオン17が弾性部材15により押し出され、ベベルギヤ18に対して楔状の分力による摩擦力が働く。
これにより簡単な構造でありながら扉の下降時にはセルフロック機能が作用し、扉の上昇時にはハンドルの回転力にてベベルピニオンが弾性部材の付勢力に対抗しつつ後退するので楔効果が働かなくなる。
本発明者は試作機を製作し評価したところ扉に、この扉の重さと同等のおもりをつけても扉が自重で降下することはなく、ハンドルを軽く廻すと扉が下降し、ハンドル操作を止めると、その状態で扉が停止した。
また、弾性部材の付勢力は小さくても楔効果で充分にセルフロック機能が生じるので扉を上昇させるハンドル操作力は従来とほとんど変わらなかった。
試作機はスピンドルのねじ効率ηの値が0.55になるように設定したので扉の上昇効率も向上した。
【符号の説明】
【0013】
1 ゲート
2 扉
10 水門扉開閉装置
11 ハウジング
12 スピンドル
12a ねじ溝
13 ハンドル
13a ハンドル軸
14 ハンドル軸ケース
14a ベアリング
15 弾性部材
16 ステムナット
16a ねじ部
16b ベアリング
17 ベベルピニオン
18 ベベルギヤ
図1
図2
図3
図4