(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095912
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】真空冷却装置
(51)【国際特許分類】
F25D 7/00 20060101AFI20170306BHJP
A23L 3/36 20060101ALN20170306BHJP
【FI】
F25D7/00 A
!A23L3/36 Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-165057(P2012-165057)
(22)【出願日】2012年7月25日
(65)【公開番号】特開2014-25623(P2014-25623A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(72)【発明者】
【氏名】西山 将人
(72)【発明者】
【氏名】多田 聖司
(72)【発明者】
【氏名】明尾 伸基
【審査官】
横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】
特許第3173535(JP,B2)
【文献】
特開2004−069289(JP,A)
【文献】
特開2006−349287(JP,A)
【文献】
特開2004−121156(JP,A)
【文献】
米国特許第06158504(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 7/00
A23L 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物を収容する冷却槽、冷却槽に収容した被冷却物の温度を計測する温度計測装置、冷却槽内の圧力を計測する圧力計測装置、冷却槽内の空気を排出する真空発生装置を持ち、冷却槽の内部を真空化することで、冷却槽に収容した被冷却物の冷却を行う真空冷却装置であって、冷却運転時に減圧速度を低下させる徐冷運転を行えるようにしている真空冷却装置において、
徐冷運転を行う場合には冷却運転開始時の被冷却物温度を計測しておき、冷却槽内の圧力が冷却運転開始時の被冷却物温度に対応する飽和蒸気圧力に基づいて設定した設定圧力になった時点、又は被冷却物の温度が冷却運転開始時の温度から所定温度上昇した時点のいずれか早い方までは徐冷運転を行わずに冷却槽内の減圧を行い、冷却槽内の圧力が前記の設定圧力になる、又は被冷却物の温度が冷却開始時から所定温度以上上昇すると徐冷運転を開始するものであることを特徴とする真空冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理された食品などの被冷却物を冷却槽内に収容し、冷却槽内の減圧によって被冷却物内の水分を気化させることで、被冷却物を急速に冷却する真空冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許第3173535号に記載があるように、冷却槽内を減圧することで被冷却物から水分を蒸発させ、蒸発によって発生する気化熱によって被冷却物の冷却を行う真空冷却装置が知られている。給食センターなどにおいては、加熱調理食品を冷却する際に雑菌が繁殖する温度帯をできるだけ早く通過させることが要望されており、真空冷却装置であれば短時間で被冷却物の中心部までの冷却が可能であるために広く用いられている。しかし、液状の被冷却物を真空冷却する場合、減圧速度が速すぎることで被冷却物には突沸現象が発生することがある。その場合には、被冷却物が飛散し、歩留まりが低下することになる。
【0003】
真空冷却装置では、冷却槽に真空配管を介して真空発生装置を接続しておき、真空発生装置を作動することで冷却槽内の空気を排出するのであるが、冷却槽には途中に徐冷弁を設けた徐冷用配管を接続し、徐冷用配管を介して空気の取り込みを行えるようにしておく。真空発生装置による空気吸引時に徐冷弁を開くと、徐冷用配管を通して冷却槽へ空気が送られ、真空発生装置では冷却槽内の空気に加えて徐冷用配管からの空気も吸引することになる。そのために冷却槽内から排出される空気量が減少し、冷却槽内の減圧速度は低下する。徐冷弁から導入する空気量を増減することで、冷却槽での減圧速度の調節を行うこともでき、徐冷弁の開度を大きくして空気導入量を多くすれば減圧速度はより大きく低下し、徐冷弁の開度を小さくして空気導入量を少なくすれば減圧速度の低下は小さくなる。
【0004】
徐冷運転を行う場合には、経過時間とその時点における冷却槽内圧力を目標圧力として設定しておき、目標圧力になるように徐冷弁の開度を調節しながら運転を行う。徐冷用に設定しておいた目標圧力に対し、実際に計測した槽内圧力が高いという場合は、徐冷弁による空気取り込み量が多いために減圧速度が足りないということであり、その場合には徐冷弁の開度を小さくすることで空気取り込み量を減らし、減圧速度を速める。逆に徐冷用に設定しておいた目標圧力に対し、実際に計測した槽内圧力が低いという場合には、徐冷弁による空気取り込み量が少ないために減圧速度が速すぎるということであり、その場合には徐冷弁の開度を大きくすることで空気取り込み量を増やし、減圧速度を遅くする。
【0005】
徐冷は冷却速度を抑えるものであるため、徐冷運転を行えば冷却運転時間は当然長くなる。特許3173535号公報の発明では、冷却槽内の圧力を被冷却物の初期温度に対する飽和蒸気圧力までは徐冷を行わずに急速に減圧し、その後は徐冷運転を行って徐々に減圧させるようにしている。冷却槽内の圧力が被冷却物の飽和蒸気圧力よりも高い間は、被冷却物が沸騰することはないため、被冷却物の温度を測定しておいて、徐冷運転は被冷却物の温度に対応する圧力まで低下した後に行うことで、冷却運転時間の増加を最小限に抑えることができる。
【0006】
このとき、被冷却物に温度むらがあり、被冷却物の温度計測箇所が被冷却物の平均より低温の部分であったために、被冷却物の温度を正しく認識できていなかったという場合には、徐冷の開始が遅れることで突沸を発生することがある。被冷却物に低温部と高温部があった場合、低温部の温度から定まる飽和蒸気圧力は高温部の温度から定まる飽和蒸気圧力より低くなる。そのため、低温部に基づく飽和蒸気圧力まで急速に減圧した場合、その圧力は高温部での飽和蒸気圧力よりも低い圧力値となるために突沸が発生してしまう。被冷却物の温度測定箇所は、被冷却物の高温部分で行えればよいが、実際には高温部分を選択して測温するということは難しく、そのために突沸が発生することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許3173535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、被冷却物に温度むらがある場合でも適切なタイミングで徐冷を開始することで、冷却運転時間の短縮と突沸の発生を防止することのできる真空冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
被冷却物を収容する冷却槽、冷却槽に収容した被冷却物の温度を計測する温度計測装置、冷却槽内の圧力を計測する圧力計測装置、冷却槽内の空気を排出する真空発生装置を持ち、冷却槽の内部を真空化することで、冷却槽に収容した被冷却物の冷却を行う真空冷却装置であって、冷却運転時に減圧速度を低下させる徐冷運転を行えるようにしている真空冷却装置において、徐冷運転を行う場合には冷却運転開始時の被冷却物温度を計測しておき、冷却槽内の圧力が冷却運転開始時の被冷却物温度に対応する飽和蒸気圧力に基づいて設定した設定圧力になった時点、又は被冷却物の温度が冷却運転開始時の温度から所定温度上昇した時点のいずれか早い方までは徐冷運転を行わずに冷却槽内の減圧を行い、冷却槽内の圧力が前記の設定圧力になる、又は被冷却物の温度が冷却開始時から所定温度以上上昇すると徐冷運転を開始する。
【0010】
冷却開始時の被冷却物温度を計測することで被冷却物から定まる飽和蒸気圧力を算出しておき、冷却槽内圧力がその飽和蒸気圧力となれば徐冷運転を開始するとしていた場合、被冷却物温度の計測箇所によっては突沸が発生することがある。被冷却物温度の計測箇所が温度むらのある被冷却物であっても、被冷却物の温度測定位置が被冷却物の平均温度以上の箇所であれば、被冷却物温度から定める飽和蒸気圧力値は適切な値となるため、適切な時期に徐冷を開始することができる。しかし、被冷却物温度の計測箇所が被冷却物の低温部であると、その飽和蒸気圧力まで急速に減圧した場合には、被冷却物の高温部にとっては飽和蒸気圧力未満となるために突沸が発生することになる。
【0011】
被冷却物温度の計測箇所が被冷却物の低温部であった場合でも、被冷却物が突沸を発生する前にその兆候を検出して徐冷運転を行うようにすれば、突沸を防止できる。減圧中の被冷却物では、冷却槽内が被冷却物の飽和蒸気温度に近づくと、対流が活発となり被冷却物の温度は均一化する。この時、被冷却物の低温部では温度の上昇が発生するため、温度計測装置での温度検出箇所が低温部であっても、被冷却物の温度変化を検出して徐冷運転を開始することで、突沸の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明を実施することで、被冷却物に温度むらがある場合であっても、徐冷運転を適切な時期に開始することができ、冷却運転時間が不必要に長くなったり、徐冷の開始が遅れることで突沸が発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】冷却運転時の冷却槽内圧力変化と被冷却物温度変化について説明する説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。
図1は本発明を実施する真空冷却装置のフロー図、
図2は冷却運転時の被冷却物温度変化と冷却槽内圧力変化について説明する説明図である。真空冷却装置は、被冷却物7を収容する冷却槽2と、冷却槽2内の空気を排出する真空発生装置1を持つ。真空冷却装置は、冷却槽内を減圧することで被冷却物内の水分を蒸発させるものであり、蒸発時の気化熱によって冷却槽2に収容した被冷却物7の冷却を行う。
【0015】
真空発生装置1は真空配管9で冷却槽2と接続しており、冷却槽2内の空気は真空発生装置1を作動することで真空配管9を通して排出する。真空配管9の途中には、冷却槽2から吸引してきた空気を冷却するための熱交換器10を設けておく。冷却槽から吸引している空気は蒸気を含んでおり、水は蒸気になると体積が大幅に大きくなるため、そのままでは大容積の蒸気を真空発生装置1へ送ることになり、それでは真空発生装置1の運転効率が悪くなる。そのために真空配管9に熱交換器10を設けており、熱交換器10で空気の冷却を行うことで蒸気を凝縮させて気水分離することで空気の体積を縮小する。熱交換器1で分離した凝縮水は、熱交換器10の下方に設置している凝縮水タンク8にためておき、冷却運転終了後に凝縮水タンク8から排出する。
【0016】
また、被冷却物7が液体であった場合、冷却槽2内を急激に減圧すると被冷却物7に突沸が発生し、被冷却物が飛び散ることになるため、冷却時に冷却速度を緩やかにする徐冷運転を行えるようにしている。徐冷運転は、途中に徐冷弁3を設けた徐冷用配管4を冷却槽2に接続しておき、冷却運転中に徐冷弁3を開くことで冷却槽2内に外気を導入することによって行う。徐冷弁3を通じて外気の導入を行うと、真空発生装置1が冷却槽2から吸引する空気量が減少するために冷却槽2内の減圧速度は低下することになる。
【0017】
また、冷却槽2には、冷却槽内に収容した被冷却物7の温度を計測する温度計測装置11と、冷却槽内の圧力を計測する圧力計測装置5を設けておく。温度計測装置11で計測した被冷却物7の温度と、圧力計測装置5で計測した冷却槽内の圧力は、真空冷却装置の運転を制御する運転制御装置6へ出力する。運転制御装置6は、真空発生装置1や徐冷弁3など、真空冷却装置の各機器を作動制御することで真空冷却装置の運転を制御するものである。運転制御装置6では、経過時間と温度計測装置11及び圧力計測装置5で計測している被冷却物温度や槽内圧力に基づいて各装置の作動を制御する。
【0018】
徐冷を行わない冷却運転の場合、目標圧力の設定はせず、徐冷弁3は閉じた状態で真空発生装置1の能力をそのまま使用して減圧を行い、被冷却物7を目標温度まで冷却すると冷却運転を終了する。被冷却物7が突沸の発生を起こさないものであれば、徐冷運転を行わずに冷却する方がより早く冷却することができるが、急速な減圧を行うと被冷却物に突沸が発生するものであれば徐冷運転が必要となる。被冷却物7の突沸を防ぐ徐冷運転を行う場合は、運転制御装置6に経過時間とその時点における冷却槽内の目標圧力を設定しておき、圧力計測装置5で計測している槽内圧力が目標圧力になるように徐冷弁3の開度を調節することにより、減圧速度を調節しながら冷却運転を行う。
【0019】
徐冷運転を行う場合でも、冷却運転の最初から徐冷を行うのではなく、圧力計測装置5で計測している冷却槽内の圧力が冷却開始時の被冷却物温度から算出した飽和蒸気圧力になった時点、又は温度計測装置11で計測している温度が冷却開始時の被冷却物温度からX℃変化した時点のいずれか早い方で開始する。徐冷運転を行うと突沸の発生は防止できるが、圧力低下速度は遅くなるために必要以上に徐冷運転を行うことは冷却運転時間の増加を招くことになる。冷却運転開始直後の場合、冷却槽内の圧力は被冷却物の温度から定まる飽和蒸気圧力よりも高いものであり、冷却槽内の圧力が飽和蒸気圧力に低下するまでは被冷却物7に沸騰は発生しない。そのため冷却運転開始直後の場合には徐冷運転を行う必要はなく、真空発生装置1の能力そのまま使用して減圧することで冷却運転時間を短縮することができる。
【0020】
図2は、被冷却物温度と冷却槽内圧力の変化を示したものであり、冷却運転の初期は徐冷なしでの減圧を行い、途中から冷却槽内の圧力を目標圧力に調節しながら冷却槽内を減圧する徐冷運転を行うようにしている。この場合、冷却運転開始時点で被冷却物7の温度を計測しておき、その時の温度から飽和蒸気圧力を算出しておく。減圧を開始しても、冷却槽2内の圧力が被冷却物7の温度から定まる飽和蒸気圧力になるまでは、被冷却物7での沸騰は発生しない。そのため、圧力計測装置5で検出している冷却槽内圧力が被冷却物の飽和蒸気圧力になるまでは徐冷運転を行う必要がない。ただし、被冷却物7に温度むらがあり、温度計測装置11で計測しているのは被冷却物7の低温部であった場合、温度計測装置11での計測品温に基づいて定めた飽和蒸気圧力で徐冷運転を開始することにしたのでは、被冷却物に突沸が発生することがある。
【0021】
被冷却物に温度むらがあっても、温度計測装置11での温度測定位置が被冷却物の平均温度以上の箇所であれば、冷却槽内の圧力が被冷却物温度から定める飽和蒸気圧力値となってから徐冷を開始しても突沸は発生しない。しかし、温度計測装置11での温度測定位置が被冷却物の低温部であると、その品温から定まる飽和蒸気圧力まで急速に減圧した場合には、被冷却物全体での飽和蒸気圧力よりも低くなることになるために突沸が発生する。
【0022】
被冷却物温度の計測箇所が被冷却物の低温部であった場合でも、被冷却物が突沸を発生するまでにその兆候を検出し、突沸が発生する前に徐冷運転を開始することで、突沸の発生を防止できる。減圧中の被冷却物では、冷却槽内が被冷却物の飽和蒸気温度に近づくと、対流が活発となって被冷却物の温度は均一化する。この時、被冷却物の低温部では温度の上昇が発生することになる。運転制御装置6では、温度計測装置11で計測している被冷却物の温度が、冷却開始時の温度からX℃変化した時点でも徐冷を開始するとしている。そのため、温度計測装置11では被冷却物内での低温部の温度を計測していたとしても、被冷却物7内での対流による温度均一化によって低温部での温度上昇が検出された時点で徐冷運転を開始することになり、突沸の発生を防止することができる。
図2では、被冷却物温度の上昇が発生しており、温度上昇を検出して徐冷運転を開始する。徐冷運転開始以降は冷却槽内圧力が目標温度になるように調節しながら減圧していく。温度計測装置11で検出している被冷却物温度が目標温度に到達すると冷却運転を終了する。
【0023】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 真空発生装置
2 冷却槽
3 徐冷弁
4 徐冷用配管
5 圧力計測装置
6 運転制御装置
7 被冷却物
8 凝縮水タンク
9 真空配管
10 熱交換器
11 温度計測装置