特許第6095916号(P6095916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095916
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】超音波探傷方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/44 20060101AFI20170306BHJP
   G01N 29/22 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   G01N29/44
   G01N29/22
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-183736(P2012-183736)
(22)【出願日】2012年8月23日
(65)【公開番号】特開2014-41067(P2014-41067A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2015年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 豐
(72)【発明者】
【氏名】千葉 弘明
(72)【発明者】
【氏名】工藤 健
【審査官】 比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−248101(JP,A)
【文献】 特開昭64−039548(JP,A)
【文献】 特開平09−274019(JP,A)
【文献】 特開昭60−060506(JP,A)
【文献】 特開2008−298710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00−29/52
G01B 17/00−17/08
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の超音波探傷センサを用いる3次元超音波探傷方法において、
超音波の送信に用いる前記超音波探傷センサを送信センサとし、超音波の受信に用いる前記超音波探傷センサを受信センサとし、
前記超音波探傷センサ間の最短距離を超音波の送受信により測定し、前記最短距離の測定における前記送信センサから前記受信センサへの超音波の送信方向を求めるステップと、
前記ステップで得られた前記超音波探傷センサ間の前記最短距離の測定結果と前記最短距離の測定における前記送信センサから前記受信センサへの超音波の送信方向から前記超音波探傷センサ間の相対位置を評価するステップと、
前記送信センサから検査対象の上面に超音波を送信し前記上面で反射して前記受信センサで受信される超音波の伝搬の最短の距離を測定し、前記送信センサから前記検査対象の上面の一方及び他方の角に超音波を送信しそれぞれの前記角からの反射波を前記受信センサで受信することで、これら各々の超音波伝搬距離を測定し、前記超音波探傷センサ間の相対位置と前記最短の距離と前記超音波伝搬距離とから、前記検査対象上の前記超音波探傷センサの位置を評価するステップと、
を有することを特徴とする超音波探傷方法。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波探傷方法において、
前記検査対象を超音波探傷することで前記超音波探傷センサ間の相対位置を評価し、前記最短の距離と前記超音波伝搬距離とを測定する、
ことを特徴とする超音波探傷方法。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波探傷方法において、
超音波探傷センサ間の最短距離の測定における送信センサから受信センサへの超音波の送信方向と、送信センサの傾き方向に対する超音波の送信方向の差として、検査対象に対する超音波探傷センサの設置角を求めるステップを有することを特徴とする超音波探傷方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の超音波探傷方法において
電子的あるいは電子及び機械の組み合わせにより超音波を3次元走査することを特徴とする超音波探傷方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の超音波探傷方法において、
検査対象上の超音波探傷センサの位置の評価結果に基づき、超音波の送受信効率が高くなる超音波入射角となる位置に前記超音波探傷センサを移動するステップを設けたことを特徴とする超音波探傷方法。
【請求項6】
請求項5に記載の超音波探傷方法において、
センサ移動ステップが、センサ移動機構により前記超音波探傷センサ位置を調整することを特徴とする超音波探傷方法。
【請求項7】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の超音波探傷方法において、
超音波探傷センサ間の相対位置、検査対象上の前記超音波探傷センサ位置のうち1つ以上を画像表示することを特徴とする超音波探傷方法。
【請求項8】
2つ以上の超音波探傷センサを用いる3次元超音波探傷装置において、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の超音波探傷方法において、評価した前記超音波探傷センサ間の相対位置と、測定した前記最短の距離と、測定した前記超音波伝搬距離とから、前記検査対象上の前記超音波探傷センサの位置を評価する計算装置と、
前記評価結果を表示する表示装置を有することを特徴とする超音波探傷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波探傷センサを使用する超音波探傷方法に係り、特に探傷の信頼度を向上できる探傷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
初めに2次元走査を例にフェーズドアレイ超音波探傷方法の概要を説明し、その3次元化について説明する。
【0003】
非特許文献1に記載の2次元超音波探傷(2DUT)では、直方体の超音波素子31を1方向に配列し、保護ケース34に収納した2次元超音波探傷センサ35を使用する。2次元超音波探傷センサ35を構成する個々の超音波素子31は、検査対象に対面する底面に設けられた電極32と、各超音波素子の上面に設けられた電極32Bに電圧を印加する信号線(図示せず)を備えている。この電極32B上に、S/Nを向上するため、超音波送信時の残振を低減するためのバッキング33が設置されている。図15にはこの2次元超音波探傷センサ35を示す。図16には、この2次元超音波探傷センサ35を用いて超音波を2次元走査する方法の説明図を示す。各超音波素子から焦点に同時に超音波が届くように時間差をつけて超音波を発信する(以下、超音波発振時間差を電気的に制御して焦点36を変更することを電子走査と称す)。センサを構成する各超音波素子から焦点に同時に超音波が到達するため、焦点の音圧が高められて焦点の検出感度が向上する。2次元超音波探傷センサは超音波素子を1列配列しているため、配列方向を含む平面上で超音波の焦点距離と屈折角度が走査可能となる。
【0004】
非特許文献2に記載の3次元超音波探傷(3DUT)では、直方体の超音波素子31を2方向に配列してした3次元超音波探傷センサ1を使用する。図3に示すように3次元超音波探傷センサ1は、2方向に配列している。この超音波素子配列の場合、2つの配列方向に超音波を走査可能であり、焦点距離も調整可能であるため、図4に示す3次元走査が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−064577号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日立評論2010年4月号:エネルギーインフラを支える高度検査技術
【非特許文献2】Tom Nelligan、外1名、「超音波フェイズドアレイ技術について」、[online]、オリンパス株式会社、[平成24年7月20日検索]、インターネット<URL:http://www.olympus-ims.com/ja/ultrasonics/intro-to-pa/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の超音波探傷では、検査対象を挟んで送信センサ及び受信センサを設置した場合に下記のような課題がある。
【0008】
図19(a)は検査対象上の適正位置に超音波探傷センサが設置された場合の超音波の送受信状況で、送信された超音波が検査箇所に入射し、受信センサで送信された超音波が受信される。図19(b)に示すように、センサ間の相対位置がずれた場合には、検査箇所で反射された超音波が受信されない。また、図19(c)に示すように、検査対象上のセンサの位置がずれた場合、探傷箇所には超音波が入射されず、検査の信頼度が低下する。すなわち、センサ間の相対位置及びセンサと被検査対象の相対位置を適正位置とする必要がある。
【0009】
特許文献1では、2つの探触子がタービンの軸方向に沿って対称位置に設置されているかどうか確認し、必要に応じて前記対称位置に設置されるように調整している。しかし、検査対象上のセンサ位置は不明なため、探傷箇所へ超音波が送受信されているか否か不明である。
【0010】
本発明の課題は、センサ間の相対位置と、検査対象上のセンサ位置を評価することにより、検査の信頼度を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
2つ以上の超音波探傷センサを用いる超音波探傷法において、
(1)検査対象形状を超音波探傷装置の制御装置に入力するステップと、
(2)1つ以上のセンサから超音波を3次元走査するするステップと、
(3)センサ間で直接送受信された超音波の伝搬距離と屈折角から、センサ間の相対位置を評価するステップと、
(4)検査対象で反射された超音波の伝搬距離と屈折角から、検査対象上のセンサ位置を評価するステップと、
(5)センサ位置を調整するステップと、
(6)超音波探傷結果を評価するステップを設ける。
【0012】
このステップ(2)の3次元超音波走査は、超音波の電子走査、センサの機械走査、あるいは電子走査と機械走査の組み合わせとするのが良い。
【0013】
また、ステップ(3)とステップ(4)でセンサ間の相対位置と検査対象上のセンサ位置が適正と評価された場合、ステップ(5)は省略してもよい。
【0014】
また、ステップ(4)で求めたセンサ間の相対位置と検査対象上のセンサ位置を画像表示するのが良い。
【0015】
また、センサの設置位置精度が高い場合には探傷終了後に探傷結果を用いてステップ(3)とステップ(4)を実施するのがよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、センサと検査対象の相対位置を評価することが可能なため、検査の信頼度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施例の超音波探傷方法の説明図である。
図2】第1実施例の超音波探傷システムのブロック図である。
図3】3次元超音波探傷センサの構成図である。
図4】3次元超音波走査方法の説明図である。
図5】第1実施例のセンサの配置図である。
図6】センサ間距離測定の説明図である。
図7】センサ検査対象間距離測定の説明図である。
図8】他のセンサ検査対象間距離測定の説明図である。
図9】他のセンサ検査対象間距離測定の説明図である。
図10】センサ設置角計算方法の説明図である。
図11】第1実施例における超音波探傷方法のフローチャートである。
図12】第2実施例における超音波探傷センサの配置の図である
図13】第3実施例の超音波探傷方法の説明図である。
図14】第3実施例の超音波探傷システムのブロック図である。
図15】2次元超音波探傷センサの構成図である。
図16】2次元超音波走査方法の説明図である。
図17】センサ移動機構の説明図である。
図18】第3実施例における超音波探傷方法のフローチャートである。
図19】送受分離超音波探傷法の問題点の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0019】
図1〜11、数式(1)〜(6)を用いて、2つの3次元超音波探傷センサを用いてセンサ間の相対位置と検査対象上のセンサ位置を測定する第1実施例について説明する。
【0020】
図1に第1実施例の超音波探傷方法の概念図を示す。検査対象上に2つの3次元超音波探傷センサ1及び3次元超音波探傷センサ2を設置し、センサ間で直接送受信する超音波の伝播距離と送受信方向からセンサ間の相対位置を評価する。また、一方の3次元超音波探傷センサ1から超音波を送信し、検査対象で反射させて、もう1方の3次元超音波探傷センサ2で受信した場合の超音波の送受信距離と送受信方向から、検査対象上の3次元超音波探傷センサ位置を評価する。
【0021】
図2に第1実施例の超音波探傷システムのブロック図を示す。この超音波探傷には超音波を送受信するための超音波探傷装置8、3次元超音波探傷センサ1、超音波探傷装置を制御するとともに、センサ間の相対位置、センサと検査対象の相対位置を評価するために用いるパソコン9より構成される。
【0022】
図3には3次元超音波探傷センサ1の構成図を示す。図4には3次元超音波走査法を示す。これらの概要は背景技術に記述したとおりである。
【0023】
図5図10でセンサ間の相対位置とセンサと検査対象の相対位置を測定する方法について説明する。
【0024】
図5に高さH幅W長さLの直方体の検査対象上へのセンサ配置を示す。検査対象の高さをz軸、幅をx軸、長さをy軸と一致させている。3次元超音波探傷センサ1はy=0におけるx−z面上の(x1,0、z1)の位置で、z軸に対し角度θ1傾いて配置されている。x1、z1、θ1が未知のパラメータとなる。3次元超音波探傷センサ2は、y=Lにおけるx−z面上の(x2,L、z2)の位置で、z軸に対し角度θ2傾いて配置されている。x2、z2、θ2が未知のパラメータとなる。
【0025】
図6はセンサ間距離測定の説明図で、3次元超音波探傷センサ1から超音波を送信して3次元超音波探傷センサ2で受信する場合の最短の伝搬距離としてセンサ間距離L1が求められる。L1はセンサの位置座標を用いて数式(1)で記述される。
【0026】
L1={(x1−x2)+(L)+(z1−z2)0.5 ・・・数式(1)
図7はセンサ検査対象間距離測定の説明図で、3次元超音波探傷センサ1から検査対象の上面に超音波を送信し、3次元超音波探傷センサ2で受信される最短の距離を測定したものである。このときの伝搬距離L2は数式(2)で記述される。
L2={(x1−x2)+(L)+(2h−z1−z2)0.5 ・・・数式(2)
【0027】
図8は他のセンサ検査対象間距離測定の説明図で、3次元超音波探傷センサ1から検査対象の上面の角に超音波を送信し、3次元超音波探傷センサ2で受信される距離を測定したものである。角では面反射以外に回折波も発生するため、反射波強度の極大点として角で反射した時の超音波送受信経路が特定される。このときの伝搬距離L3は数式(3)で記述される。
L3={(x1+x2)+(L)+(2h−z1−z2)0.5・・・数式(3)
【0028】
図9は他のセンサ検査対象間距離測定の説明図で、もう1つの検査対象上面の角を通る超音波伝搬経路の距離を測定したものである。このときの伝搬距離L4は数式(4)で記述される。
L4={(2w−x1−x2)+(L)+(2h−z1−z2)0.5・・・数式(4)
【0029】
L1〜L4の測定結果と数式(1)〜(4)を用いることにより3次元超音波探傷センサ1と3次元超音波探傷センサ2の位置座標、x1、x2、z1、z2が求められる。また、検査対象に超音波反射源となる凹凸形状がある場合、角のかわりに凹凸部とセンサとの距離を測定してもよい。
【0030】
図10はセンサ設置角計算方法の説明図で、検査対象のz軸に対する3次元超音波探傷センサ1の中心軸がなす角度θ1は、こうして求めたx1、x2、z1、z2と3次元超音波探傷センサ1から3次元超音波探傷センサ2へのx−z平面における送信角ζ1を用いて、数式(5)で記述される。
θ1=ζ1−tan−1{(z1−z2)÷(x1−x2)}・・・数式(5)
ここで、tan−1は正接の逆関数を表す。また、3次元超音波探傷センサ2の設置角は3次元超音波探傷センサ2から3次元超音波探傷センサ1へ超音波を送信することにより求めることが可能である。
【0031】
このようにセンサ間で直接超音波を送受信させるとともに、検査対象で超音波を反射させて送受信することで、検査対象上のセンサ位置を評価することが可能である。
【0032】
図11に第1実施例の超音波探傷方法のフローチャートを示す。以下、このフローチャート及び図2の超音波探傷システムのブロック図を用いて超音波探傷方法を説明する。
【0033】
ステップ101で、パソコンのキーボード26あるいは記録メディア27のうち1つ以上の入力装置を用いて検査対象の形状を入力する。記録メディアとしては、DVD、ブルーレイディスク、MO等を用いる。検査対象の形状はI/Oポート25を経由して中央演算処理装置(CPU)21に伝達するとともに、ハードディスクドライブ(HDD)22、ランダムアクセスメモリ(RAM)23のうち、1つ以上の記憶媒体に記憶する。
【0034】
ステップ102で検査対象上に2つの3次元超音波探傷センサを設置する。
【0035】
ステップ103で、3次元超音波探傷を実施する。探傷は、キーボードから超音波探傷開始信号を入力することで開始する。この開始信号はI/Oポートを介してCPUに伝達され、CPUで探傷開始信号に基づきパソコンのI/Oポート、超音波探傷装置のI/Oポート25、D/Aコンバータ30を介してセンサの圧電素子に電圧を印加する。電圧印加により圧電素子が振動して超音波が送信され、受信センサの圧電素子で送信波を振動として受信する。受信された振動は電圧に変換されてA/Dコンバータ29、超音波探傷装置のI/Oポート、パソコンのI/Oポートを介してパソコンのCPUに伝達される。CPUは超音波の送信角、集束距離、及び、受信強度の時間変化をRAM、HDDのうち1つ以上の記憶装置に記憶させる。CPUにおいて、この探傷結果とリードオンリーメモリ(ROM)24、RAM、HDDのうち1つ以上の記憶装置に記憶させた数式(1)から(5)を解くプログラムを用い、超音波探傷結果から、センサ間の相対位置と検査対象上におけるセンサ位置を評価する。こうして評価されたセンサ位置は、RAM、HDDのうち1つ以上の記憶装置に記憶する。
【0036】
ステップ104で、ステップ103で求めた検査対象上のセンサ位置をI/Oポートを介してモニタ28に表示する。センサ位置が不適切である場合、センサ位置測定結果に基づいてセンサ設置位置を変更し、ステップ103を行う。センサ位置が適切な場合、ステップ105に進む。ここでいう適切なセンサ位置とは、検査箇所への超音波入射角が超音波の反射効率が高くなる位置である。すなわち、縦波の場合0〜20°あるいは70〜90°、横波の場合35〜55°となるようセンサを設置することが好ましい。
【0037】
ステップ105で、モニタに表示された探傷結果から欠陥信号を弁別する。欠陥信号は、健全な検査対象の反射波との差異として評価される。また、センサ設置面積が小さいなどの理由により設置位置の誤差が小さいと想定される場合、ステップ104を省略してステップ105を行い、探傷結果を用いてステップ104を実施して、設置位置に問題が無いことを確認してもよい。この場合超音波探傷の信頼度を確保しつつ高速化が可能となる。
【0038】
また、直接送受された超音波による探傷結果を使用しなくても、角部での反射超音波、検査対象面での反射超音波のみを用いてもセンサ間の相対位置と検査対象上のセンサ位置を評価することが可能である。ただし、検査対象によっては、角部での反射超音波や検査対象面での反射超音波が十分に得られない場合もある。したがって、検査対象によっては、センサ間の直接送受された超音波の伝搬距離と走査方向からセンサ間の相対位置を求め、検査対象からの反射波の伝搬距離と走査方向から検査対象上の超音波探傷センサの位置を求めることが重要になる。
【0039】
本発明は以上説明したように構成されているため、センサ間の相対位置と検査対象上のセンサ位置を評価することが可能であるため、超音波探傷の信頼度が向上する。また、超音波探傷が高速化される。
【実施例2】
【0040】
図12を用いて3次元超音波探傷センサを3つ用いる第2実施例について説明する。本実施例における検査対象は、段がある構造である。3次元超音波探傷センサ1から送信された超音波は検査対象で反射される。しかし、この反射波は段にさえぎられて3次元超音波探傷センサ2では測定されないシャドーゾーン50が形成される。このシャドーゾーンに到達する反射波を受信するため3次元超音波探傷センサ3を設置したものである。3次元超音波探傷センサ1と3次元超音波探傷センサ2、3次元超音波探傷センサ1と3次元超音波探傷センサ3との間の相対位置及び検査対象上のセンサ位置を評価するアルゴリズムは第1実施例と同様である。
【0041】
この実施例は受信センサを1つから2つに増やした例であるが、送信側、受信側とも複数個のセンサを用いても、第1実施例と同様のアルゴリズムでセンサと検査対象の相対位置を評価することが可能である。この実施例は、段差を持つ検査対象において、第1の実施例よりも探傷可能範囲が広がるというメリットを持つ。
【実施例3】
【0042】
図13図18を用いて、2次元超音波探傷センサを機械走査して3次元超音波探傷を行う第3実施例について説明する。
【0043】
図13に第3実施例の3次元超音波走査方法の概念図を示す。この実施例では1軸方向に電子走査し、もう1軸方向にはセンサを機械走査して回転させ、超音波を3次元走査するものである。
【0044】
図14に第3実施例の超音波探傷システムのブロック図を示す。第1の実施例の超音波探傷システムのパソコンにセンサ移動機構40へ電力を供給するためのD/Aコンバータ30を設け、センサ移動機構を駆動するものである。
【0045】
図15には2次元超音波探傷センサ35の構成図を示す。図16には2次元超音波探傷法を示す図で、その概要は背景技術に記載したとおりである。
【0046】
図17にセンサ移動機構の構成例を示す。この移動機構はセンサを回転させる回転ステージ45、2次元面上で2次元超音波探傷センサを検査対象に対して垂直及び水平方向へ平行移動させる2つの平行移動ステージ44、平行移動量の誤差を低減するための移動ステージガイド41、この移動機構を検査対象に固定するための吸盤43より構成される。吸盤は、磁石、クランプ等で代替してもよい。回転ステージおよび移動ステージの駆動はアクチュエータやモータを利用する。平行移動においては、移動量の誤差を減らすためにガイドを設けているが、アクチュエータ等の位置決め精度が高い場合には、このガイドは設けなくともよい。
【0047】
図18に第3実施例の超音波探傷方法のフローチャートを示す。この超音波探傷方法は、検査対象形状をパソコンに入力するステップ301、2次元超音波探傷センサとセンサ移動機構を検査対象に設置するステップ302、超音波探傷を実施するステップ303、超音波送受信データからセンサ位置を評価するステップ304、ステップ304でセンサ位置が不適であった場合に移動機構を用いてセンサを適正位置に移動させるステップ305、超音波探傷結果を評価するステップ306よりなる。このうちステップ301は第1実施例のステップ101、ステップ302はステップ102、ステップ304はステップ104、ステップ306はステップ105と同様である。
【0048】
第1実施例とは異なるステップ303とステップ305について超音波探傷システムのブロック図を用いて説明する。
【0049】
ステップ303は、ステップ103と超音波走査方法が異なる。ステップ303では電子走査の他に、機械走査で超音波の送信方向を変更する。2次元電子走査完了後、CPUからI/Oポート、パソコンのD/Aコンバータを介して回転ステージに電力を供給し、センサを回転させる。この超音波走査ステップ以外の超音波探傷はステップ103と同様である。
【0050】
ステップ304でセンサ位置が不適と評価された場合、ステップ305で、CPUを用いてI/Oポート、D/Aコンバータを介して平行移動ステージ及び回転ステージへ電力を供給し、超音波探傷に好適なセンサ位置へ移動させる。こうしてセンサを移動させた後、ステップ303を再実施し、ステップ306に進み超音波探傷結果を評価する。
【0051】
以上説明したように本実施例の超音波探傷システムは構成されているため、超音波探傷センサの設置位置が不適であった場合、第1実施例及び第2実施例よりもセンサ位置変更を迅速に行うことが可能なため、更に検査時間が短縮されるというメリットを持つ。
【符号の説明】
【0052】
1、2、3:3次元超音波探傷センサ
4:検査対象
8:超音波探傷装置
9:パソコン
21:CPU
22:ハードディスクドライブ(HDD)
23:ランダムアクセスメモリ(RAM)
24:リードオンリーメモリ(ROM)
25:I/Oポート
26:キーボード
27:記録メディア
28:モニタ
29:A/Dコンバータ
30:D/Aコンバータ
31:超音波素子
32、32B:電極
33:パッキング
34:保護ケース
35:2次元超音波探傷センサ
36:焦点
40:センサ移動機構
41:移動ステージガイド
43:吸盤
44:平行移動ステージ
45:回転ステージ
S101:検査対象形状入力ステップ
S102:センサ設置ステップ
S103:超音波探傷ステップ
S104:センサ位置評価ステップ
S105:超音波探傷結果評価ステップ
S301:検査対象形状入力ステップ
S302:センサ及びセンサ移動機構設置ステップ
S303:超音波送受信ステップ
S304:センサ試験体相対位置評価ステップ
S305:センサ移動ステップ
S306:超音波探傷結果評価ステップ
図5
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