【実施例1】
【0019】
図1〜11、数式(1)〜(6)を用いて、2つの3次元超音波探傷センサを用いてセンサ間の相対位置と検査対象上のセンサ位置を測定する第1実施例について説明する。
【0020】
図1に第1実施例の超音波探傷方法の概念図を示す。検査対象上に2つの3次元超音波探傷センサ1及び3次元超音波探傷センサ2を設置し、センサ間で直接送受信する超音波の伝播距離と送受信方向からセンサ間の相対位置を評価する。また、一方の3次元超音波探傷センサ1から超音波を送信し、検査対象で反射させて、もう1方の3次元超音波探傷センサ2で受信した場合の超音波の送受信距離と送受信方向から、検査対象上の3次元超音波探傷センサ位置を評価する。
【0021】
図2に第1実施例の超音波探傷システムのブロック図を示す。この超音波探傷には超音波を送受信するための超音波探傷装置8、3次元超音波探傷センサ1、超音波探傷装置を制御するとともに、センサ間の相対位置、センサと検査対象の相対位置を評価するために用いるパソコン9より構成される。
【0022】
図3には3次元超音波探傷センサ1の構成図を示す。
図4には3次元超音波走査法を示す。これらの概要は背景技術に記述したとおりである。
【0023】
図5〜
図10でセンサ間の相対位置とセンサと検査対象の相対位置を測定する方法について説明する。
【0024】
図5に高さH幅W長さLの直方体の検査対象上へのセンサ配置を示す。検査対象の高さをz軸、幅をx軸、長さをy軸と一致させている。3次元超音波探傷センサ1はy=0におけるx−z面上の(x1,0、z1)の位置で、z軸に対し角度θ1傾いて配置されている。x1、z1、θ1が未知のパラメータとなる。3次元超音波探傷センサ2は、y=Lにおけるx−z面上の(x2,L、z2)の位置で、z軸に対し角度θ2傾いて配置されている。x2、z2、θ2が未知のパラメータとなる。
【0025】
図6はセンサ間距離測定の説明図で、3次元超音波探傷センサ1から超音波を送信して3次元超音波探傷センサ2で受信する場合の最短の伝搬距離としてセンサ間距離L1が求められる。L1はセンサの位置座標を用いて数式(1)で記述される。
【0026】
L1={(x1−x2)
2+(L)
2+(z1−z2)
2}
0.5 ・・・数式(1)
図7はセンサ検査対象間距離測定の説明図で、3次元超音波探傷センサ1から検査対象の上面に超音波を送信し、3次元超音波探傷センサ2で受信される最短の距離を測定したものである。このときの伝搬距離L2は数式(2)で記述される。
L2={(x1−x2)
2+(L)
2+(2h−z1−z2)
2}
0.5 ・・・数式(2)
【0027】
図8は他のセンサ検査対象間距離測定の説明図で、3次元超音波探傷センサ1から検査対象の上面の角に超音波を送信し、3次元超音波探傷センサ2で受信される距離を測定したものである。角では面反射以外に回折波も発生するため、反射波強度の極大点として角で反射した時の超音波送受信経路が特定される。このときの伝搬距離L3は数式(3)で記述される。
L3={(x1+x2)
2+(L)
2+(2h−z1−z2)
2}
0.5・・・数式(3)
【0028】
図9は他のセンサ検査対象間距離測定の説明図で、もう1つの検査対象上面の角を通る超音波伝搬経路の距離を測定したものである。このときの伝搬距離L4は数式(4)で記述される。
L4={(2w−x1−x2)
2+(L)
2+(2h−z1−z2)
2}
0.5・・・数式(4)
【0029】
L1〜L4の測定結果と数式(1)〜(4)を用いることにより3次元超音波探傷センサ1と3次元超音波探傷センサ2の位置座標、x1、x2、z1、z2が求められる。また、検査対象に超音波反射源となる凹凸形状がある場合、角のかわりに凹凸部とセンサとの距離を測定してもよい。
【0030】
図10はセンサ設置角計算方法の説明図で、検査対象のz軸に対する3次元超音波探傷センサ1の中心軸がなす角度θ1は、こうして求めたx1、x2、z1、z2と3次元超音波探傷センサ1から3次元超音波探傷センサ2へのx−z平面における送信角ζ1を用いて、数式(5)で記述される。
θ1=ζ1−tan
−1{(z1−z2)÷(x1−x2)}・・・数式(5)
ここで、tan
−1は正接の逆関数を表す。また、3次元超音波探傷センサ2の設置角は3次元超音波探傷センサ2から3次元超音波探傷センサ1へ超音波を送信することにより求めることが可能である。
【0031】
このようにセンサ間で直接超音波を送受信させるとともに、検査対象で超音波を反射させて送受信することで、検査対象上のセンサ位置を評価することが可能である。
【0032】
図11に第1実施例の超音波探傷方法のフローチャートを示す。以下、このフローチャート及び
図2の超音波探傷システムのブロック図を用いて超音波探傷方法を説明する。
【0033】
ステップ101で、パソコンのキーボード26あるいは記録メディア27のうち1つ以上の入力装置を用いて検査対象の形状を入力する。記録メディアとしては、DVD、ブルーレイディスク、MO等を用いる。検査対象の形状はI/Oポート25を経由して中央演算処理装置(CPU)21に伝達するとともに、ハードディスクドライブ(HDD)22、ランダムアクセスメモリ(RAM)23のうち、1つ以上の記憶媒体に記憶する。
【0034】
ステップ102で検査対象上に2つの3次元超音波探傷センサを設置する。
【0035】
ステップ103で、3次元超音波探傷を実施する。探傷は、キーボードから超音波探傷開始信号を入力することで開始する。この開始信号はI/Oポートを介してCPUに伝達され、CPUで探傷開始信号に基づきパソコンのI/Oポート、超音波探傷装置のI/Oポート25、D/Aコンバータ30を介してセンサの圧電素子に電圧を印加する。電圧印加により圧電素子が振動して超音波が送信され、受信センサの圧電素子で送信波を振動として受信する。受信された振動は電圧に変換されてA/Dコンバータ29、超音波探傷装置のI/Oポート、パソコンのI/Oポートを介してパソコンのCPUに伝達される。CPUは超音波の送信角、集束距離、及び、受信強度の時間変化をRAM、HDDのうち1つ以上の記憶装置に記憶させる。CPUにおいて、この探傷結果とリードオンリーメモリ(ROM)24、RAM、HDDのうち1つ以上の記憶装置に記憶させた数式(1)から(5)を解くプログラムを用い、超音波探傷結果から、センサ間の相対位置と検査対象上におけるセンサ位置を評価する。こうして評価されたセンサ位置は、RAM、HDDのうち1つ以上の記憶装置に記憶する。
【0036】
ステップ104で、ステップ103で求めた検査対象上のセンサ位置をI/Oポートを介してモニタ28に表示する。センサ位置が不適切である場合、センサ位置測定結果に基づいてセンサ設置位置を変更し、ステップ103を行う。センサ位置が適切な場合、ステップ105に進む。ここでいう適切なセンサ位置とは、検査箇所への超音波入射角が超音波の反射効率が高くなる位置である。すなわち、縦波の場合0〜20°あるいは70〜90°、横波の場合35〜55°となるようセンサを設置することが好ましい。
【0037】
ステップ105で、モニタに表示された探傷結果から欠陥信号を弁別する。欠陥信号は、健全な検査対象の反射波との差異として評価される。また、センサ設置面積が小さいなどの理由により設置位置の誤差が小さいと想定される場合、ステップ104を省略してステップ105を行い、探傷結果を用いてステップ104を実施して、設置位置に問題が無いことを確認してもよい。この場合超音波探傷の信頼度を確保しつつ高速化が可能となる。
【0038】
また、直接送受された超音波による探傷結果を使用しなくても、角部での反射超音波、検査対象面での反射超音波のみを用いてもセンサ間の相対位置と検査対象上のセンサ位置を評価することが可能である。ただし、検査対象によっては、角部での反射超音波や検査対象面での反射超音波が十分に得られない場合もある。したがって、検査対象によっては、センサ間の直接送受された超音波の伝搬距離と走査方向からセンサ間の相対位置を求め、検査対象からの反射波の伝搬距離と走査方向から検査対象上の超音波探傷センサの位置を求めることが重要になる。
【0039】
本発明は以上説明したように構成されているため、センサ間の相対位置と検査対象上のセンサ位置を評価することが可能であるため、超音波探傷の信頼度が向上する。また、超音波探傷が高速化される。
【実施例3】
【0042】
図13〜
図18を用いて、2次元超音波探傷センサを機械走査して3次元超音波探傷を行う第3実施例について説明する。
【0043】
図13に第3実施例の3次元超音波走査方法の概念図を示す。この実施例では1軸方向に電子走査し、もう1軸方向にはセンサを機械走査して回転させ、超音波を3次元走査するものである。
【0044】
図14に第3実施例の超音波探傷システムのブロック図を示す。第1の実施例の超音波探傷システムのパソコンにセンサ移動機構40へ電力を供給するためのD/Aコンバータ30を設け、センサ移動機構を駆動するものである。
【0045】
図15には2次元超音波探傷センサ35の構成図を示す。
図16には2次元超音波探傷法を示す図で、その概要は背景技術に記載したとおりである。
【0046】
図17にセンサ移動機構の構成例を示す。この移動機構はセンサを回転させる回転ステージ45、2次元面上で2次元超音波探傷センサを検査対象に対して垂直及び水平方向へ平行移動させる2つの平行移動ステージ44、平行移動量の誤差を低減するための移動ステージガイド41、この移動機構を検査対象に固定するための吸盤43より構成される。吸盤は、磁石、クランプ等で代替してもよい。回転ステージおよび移動ステージの駆動はアクチュエータやモータを利用する。平行移動においては、移動量の誤差を減らすためにガイドを設けているが、アクチュエータ等の位置決め精度が高い場合には、このガイドは設けなくともよい。
【0047】
図18に第3実施例の超音波探傷方法のフローチャートを示す。この超音波探傷方法は、検査対象形状をパソコンに入力するステップ301、2次元超音波探傷センサとセンサ移動機構を検査対象に設置するステップ302、超音波探傷を実施するステップ303、超音波送受信データからセンサ位置を評価するステップ304、ステップ304でセンサ位置が不適であった場合に移動機構を用いてセンサを適正位置に移動させるステップ305、超音波探傷結果を評価するステップ306よりなる。このうちステップ301は第1実施例のステップ101、ステップ302はステップ102、ステップ304はステップ104、ステップ306はステップ105と同様である。
【0048】
第1実施例とは異なるステップ303とステップ305について超音波探傷システムのブロック図を用いて説明する。
【0049】
ステップ303は、ステップ103と超音波走査方法が異なる。ステップ303では電子走査の他に、機械走査で超音波の送信方向を変更する。2次元電子走査完了後、CPUからI/Oポート、パソコンのD/Aコンバータを介して回転ステージに電力を供給し、センサを回転させる。この超音波走査ステップ以外の超音波探傷はステップ103と同様である。
【0050】
ステップ304でセンサ位置が不適と評価された場合、ステップ305で、CPUを用いてI/Oポート、D/Aコンバータを介して平行移動ステージ及び回転ステージへ電力を供給し、超音波探傷に好適なセンサ位置へ移動させる。こうしてセンサを移動させた後、ステップ303を再実施し、ステップ306に進み超音波探傷結果を評価する。
【0051】
以上説明したように本実施例の超音波探傷システムは構成されているため、超音波探傷センサの設置位置が不適であった場合、第1実施例及び第2実施例よりもセンサ位置変更を迅速に行うことが可能なため、更に検査時間が短縮されるというメリットを持つ。