特許第6095923号(P6095923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095923
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】排ガス中の水銀処理システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/64 20060101AFI20170306BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20170306BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20170306BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20170306BHJP
   C02F 1/52 20060101ALI20170306BHJP
   C02F 1/12 20060101ALI20170306BHJP
   C02F 1/04 20060101ALI20170306BHJP
   B01J 29/06 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   B01D53/64 100
   B01D53/86 222
   B01D53/86 250
   B01D53/50 240
   B01D53/78
   C02F1/52 KZAB
   C02F1/12
   C02F1/04 C
   B01J29/06 A
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-203443(P2012-203443)
(22)【出願日】2012年9月14日
(65)【公開番号】特開2014-57913(P2014-57913A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】永江 笙子
(72)【発明者】
【氏名】香川 晴治
(72)【発明者】
【氏名】長安 立人
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 展行
(72)【発明者】
【氏名】岡本 卓也
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−162520(JP,A)
【文献】 特開平10−230137(JP,A)
【文献】 特開2008−142602(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/016585(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/104840(WO,A1)
【文献】 特表2007−530256(JP,A)
【文献】 特開2009−202107(JP,A)
【文献】 特開2000−197811(JP,A)
【文献】 特開2011−031222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/64
B01D 53/50
B01D 53/77− 53/78
B01D 53/86
C02F 1/04
C02F 1/12
C02F 1/52
F23J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラからの排ガス中に含まれるHgを除去する排ガス中の水銀除去システムであって、
前記排ガス中に、塩化アンモニウム溶液を供給する塩化アンモニウム溶液供給手段と、
前記排ガス中のNOxを脱硝し、金属水銀(Hg0)を酸化する脱硝触媒を有する脱硝装置と、
前記排ガスを熱交換する熱交換器と、
前記排ガス中の煤塵を除去する集塵機と、
前記排ガス中の酸化水銀(Hg2+)をアルカリ吸収液により除去すると共に、排ガス中の硫黄酸化物を脱硫する湿式脱硫装置と、
前記排ガス中又は、前記湿式脱硫装置のアルカリ吸収液中に臭素化合物を供給する臭素化合物供給手段とを具備すると共に、
前記湿式脱硫装置内のアルカリ吸収液中の「臭素濃度/溶存物質濃度」の値を0.25以上とすることを特徴とする排ガス中の水銀処理システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記臭素化合物供給手段は、臭素化合物を、前記集塵機と前記湿式脱硫装置との間の煙道内の前記排ガス中又は、前記湿式脱硫装置のアルカリ吸収液中に供給することを特徴とする排ガス中の水銀処理システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記アルカリ吸収液が石灰スラリーであり、
前記湿式脱硫装置で生成された石灰石膏スラリーを抜出し、該抜出した石灰石膏スラリーから石膏を分離する水分分離器を有することを特徴とする排ガス中の水銀処理システム。
【請求項4】
請求項3において、
前記石膏分離後の分離液中の固形分を凝集処理し、凝集物を分離すると共に、分離した処理液を、前記湿式脱硫装置で再利用するか又は排水処理することを特徴とする排ガス中の水銀処理システム。
【請求項5】
請求項3において、
前記石膏分離後の分離液中の水銀を加熱水銀分離装置でガス状体として分離し、放散ガス中の水銀を捕集手段により捕集することを特徴とする排ガス中の水銀処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス中の水銀を極低濃度まで除去することができる排ガス中の水銀処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
石炭焚きボイラからの排ガスや重質油を燃焼した際に生じる排ガス中には、煤塵、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)のほか、金属水銀(Hg0)が含まれることがある。近年、NOxを還元する脱硝装置、およびアルカリ吸収液をSOx吸収剤とする湿式脱硫装置と組み合わせて、金属水銀(Hg0)を処理する方法や装置について様々な考案がなされてきた。
【0003】
排ガス中の金属水銀(Hg0)を処理する方法として、煙道中、脱硝装置の前流工程でNH4Cl溶液を液状で噴霧して煙道内に供給する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。煙道内にNH4Cl溶液を液状で噴霧すると、NH4Clは解離して、アンモニウム(NH3)ガス、塩化水素(HCl)ガスを生成する。NH3ガスは還元剤として作用し、HClガスは水銀塩素化剤として作用する。即ち、脱硝装置に充填されている脱硝触媒上で、NH3は下記式(1)のように排ガス中のNOxと還元反応が進行し、HClは下記式(2)のように排ガス中のHg0と酸化反応が進行する。脱硝触媒上でNH3を還元脱硝すると共に、金属水銀(Hg0)を酸化し、水溶性の塩化水銀(HgCl2)とした後、後流側に設置した石灰石膏法による湿式脱硫装置でHgCl2を石膏スラリー溶液に溶解させて排ガス中に含まれる水銀を除去する。
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O・・・(1)
Hg0+1/2O2+2HCl→HgCl2+H2O・・・(2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−142602号公報
【特許文献2】特開2009−202107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の排ガス中の水銀を除去する提案では、吸収除去された酸化水銀(Hg2+)の一部は再度、湿式脱硫装置の吸収液が還元雰囲気となると、金属水銀(Hg0)に還元され、同様に煙突から放出される場合がある。
【0006】
従来の排ガス中の水銀を除去する提案では、吸収液の酸化還元電位をコントロールして、水銀の還元による放出を防止している。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、脱硫装置で除去される排ガス中の水銀を固相、または液相に選択的に安定させることができる排ガス中の水銀処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、ボイラからの排ガス中に含まれるHgを除去する排ガス中の水銀除去システムであって、前記排ガス中に、塩化アンモニウム溶液を供給する塩化アンモニウム溶液供給手段と、前記排ガス中のNOxを脱硝し、金属水銀(Hg0)を酸化する脱硝触媒を有する脱硝装置と、前記排ガスを熱交換する熱交換器と、前記排ガス中の煤塵を除去する集塵機と、前記排ガス中の酸化水銀(Hg2+)をアルカリ吸収液により除去すると共に、排ガス中の硫黄酸化物を脱硫する湿式脱硫装置と、前記排ガス中又は、前記湿式脱硫装置のアルカリ吸収液中に臭素化合物を供給する臭素化合物供給手段とを具備すると共に、前記湿式脱硫装置内のアルカリ吸収液中の「臭素濃度/溶存物質濃度」の値を0.25以上とすることを特徴とする排ガス中の水銀処理システムにある。
【0010】
の発明は、第1の発明において、前記臭素化合物供給手段は、臭素化合物を、前記集塵機と前記湿式脱硫装置との間の煙道内の前記排ガス中又は、前記湿式脱硫装置のアルカリ吸収液中に供給することを特徴とする排ガス中の水銀処理システムにある。
【0011】
の発明は、第1又は2の発明において、前記アルカリ吸収液が石灰スラリーであり、前記湿式脱硫装置で生成した石灰石膏スラリーを抜出し、該抜出した石灰石膏スラリーから石膏を分離する水分分離器を有することを特徴とする排ガス中の水銀処理システムにある。
【0012】
の発明は、第の発明において、前記石膏分離後の分離液中の固形分を凝集処理し、凝集物を分離すると共に、分離した処理液を、前記湿式脱硫装置で再利用するか又は排水処理することを特徴とする排ガス中の水銀処理システムにある。
【0013】
の発明は、第の発明において、前記石膏分離後の分離液中の水銀を加熱水銀分離装置でガス状体として分離し、放散ガス中の水銀を捕集手段により捕集することを特徴とする排ガス中の水銀処理システムにある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、湿式脱硫装置内のアルカリ吸収液中の臭素濃度を所定濃度以上とする。これにより、臭素濃度を所定濃度以上とすることで、脱硫装置から排出されるアルカリ吸収液である例えば石膏スラリー溶液中に水銀がHg2+イオン状態で保持され、排ガス中の水銀を液相に安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施例1に係る排ガス中の水銀処理システムを示す概略図である。
図2図2は、本発明の実施例2に係る排ガス中の水銀処理システムを示す概略図である。
図3図3は、本発明の実施例3に係る排ガス中の水銀処理システムを示す概略図である。
図4図4は、本発明の実施例4に係る排ガス中の水銀処理システムを示す概略図である。
図5図5は、本発明の実施例5に係る排ガス中の水銀処理システムを示す概略図である。
図6図6は、本発明の実施例6に係る排ガス中の水銀処理システムを示す概略図である。
図7図7は、スラリー吸収液中のBr濃度と、石膏中のHg濃度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の実施例1に係る排ガス中の水銀処理システムの概略図である。
図1に示すように、本実施例に係る排ガス中の水銀処理システム10Aは、ボイラ11からの排ガス12中に含まれる水銀を除去する排ガス中の水銀処理システムであって、燃料Fが供給されて燃焼されるボイラ11からの排ガス12中の窒素酸化物(NOx)を脱硝する脱硝装置17と、脱硝装置17の後流側に設けられ、排ガス温度を調整する熱交換器(AH)18と、熱交換器18の後流側に設けられ、排ガス12中の煤塵を除去する集塵機19と、排ガス12中の酸化水銀Hg2+をアルカリ吸収液により除去すると共に、排ガス12中の硫黄酸化物を脱硫する湿式脱硫装置21と、ボイラ出口から排ガス12を排出する煙道13内に臭素(Br化合物であるHBrを供給するHBr供給手段50とを具備すると共に、湿式脱硫装置21内のアルカリ吸収液中の臭素濃度を所定濃度以上とするものである。
ここで、図1中、符号13は排ガス12が排出される煙道、25は浄化された排ガス12を外部に排出する煙突、V1、V2、V3はバルブを図示する。
【0018】
本実施例では、脱硝装置17の前段側で、煙道13を流れる排ガス12中に、脱硝助剤としてアンモニア(NH3)溶液14Aを、アンモニア(NH3)供給ライン15Aを介してアンモニア(NH3)溶液供給手段16Aから供給している。
そして、排ガス12中のNOxNH3ガスでの還元を脱硝触媒により行っている。
脱硝装置17としては、還元脱硝触媒を備える一般的なものを使用することができる。この還元脱硝触媒としては、特に限定されないが、例えば、W、Sn、In、Co、Ni、Fe、Ni、Ag、Cu等の金属酸化物をゼオライト等の担体に担持させたものを用いることができる。
【0019】
ボイラ11から排出される排ガス12には、NH3溶液供給手段16Aからアンモニア(NH3)溶液供給ライン15Aを介して、NH3溶液14Aが供給される。
【0020】
煙道13内の排ガス12の温度は、ボイラ11の燃焼条件にもよるが、例えば320℃以上420℃以下が好ましく、320℃以上380℃以下がより好ましい。この温度帯において脱硝触媒上でNOxの脱硝反応を効率的に生じさせることができるためである。
【0021】
脱硝装置17では、供給されたNH3ガスはNOxの還元脱硝用に用いられる。
【0022】
即ち、脱硝装置17に充填されている脱硝触媒層に充填されている脱硝触媒上でNH3ガスは、下記式(1)のようにNOxを還元脱硝する。
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O・・・(1)
【0023】
排ガス12は、脱硝装置17において排ガス12中のNOxの還元がされた後、熱交換器18で排ガス12の温度を降下させる。
【0024】
その後、排ガス12は集塵機(例えばESP)19を通過して湿式脱硫装置21に送給される。また、熱交換器18と集塵機19との間には熱回収器を設けるようにしてもよい。
【0025】
次に、集塵機(ESP)19で除塵された後、排ガス12は、湿式脱硫装置21に送られ、脱硫処理される。
【0026】
この湿式脱硫装置21では、排ガス12を装置本体21aの塔底部21bの壁面側から送給し、アルカリ吸収液として用いられる石灰石膏スラリー20を吸収液送給ラインL1により装置本体21a内に供給し、ノズル21cより塔頂部側に向かって噴流させる。装置本体21a内の底部21b側から上昇してくる排ガス12と、ノズル21cから噴流して流下する石灰石膏スラリー20とを対向して気液接触させ、排ガス12中のHgCl、硫黄酸化物(SOx)は石灰石膏スラリー20中に吸収され、排ガス12から分離、除去され、排ガス12は浄化される。石灰石膏スラリー20により浄化された排ガス12は、塔頂部側より排出され、その後浄化ガス24として煙突25から系外に排出される。
なお、装置本体21a内部に補充される石灰26は石灰供給装置27から供給されている。
【0027】
排ガス12の脱硫に用いられる石灰石膏スラリー20は、水に石灰石粉末を溶解させた石灰(CaCO3)スラリーと、石灰26と排ガス12中のSOxが反応し更に酸化させた石膏(CaSO4)スラリーと、水とを混合させて生成される。石灰石膏スラリー20は、例えば湿式脱硫装置21の装置本体21aの塔底部21bに貯留した液を揚水したものが用いられる。装置本体21a内で排ガス12中のSOxは石灰石膏スラリー20中の石灰(CaCO3)と下記式(3)のような反応を生じる。
CaCO3+SO2+0.5H2O→CaSO3・0.5H2O+CO2・・・(3)
【0028】
一方、排ガス12中のSOxを吸収した石灰石膏スラリー20は、装置本体21a内に供給される水30と混合され、装置本体21aの塔底部21bに供給される酸化剤55である空気により酸化処理される。このとき、装置本体21a内を流下した石灰石膏スラリー20は、水30、空気と下記式(4)のような反応を生じる。
CaSO3・0.5H2O+0.5O2+1.5H2O→CaSO4・2H2O・・・(4)
このようにして、排ガス12中のSOは、湿式脱硫装置21において石膏CaSO・2HOの形で捕獲される。
この際、排ガス12中の臭化水銀(HgBr2)は水溶性であるので、石灰石膏スラリー20側に移行される。
【0029】
このように、本実施例の排ガス中の水銀処理システム10Aは、ボイラからの排ガス12中に含まれるHgを除去する排ガス中の水銀除去システムであって、ボイラ11からの排ガス12を熱交換する熱交換器(AH)18と、排ガス12中の煤塵を除去する集塵機19と、前記排ガス12中の酸化水銀Hg2+をアルカリ吸収液により除去すると共に、排ガス12中の硫黄酸化物を脱硫する湿式脱硫装置21と、を具備すると共に、前記湿式脱硫装置21内のアルカリ吸収液中の臭素濃度を所定濃度以上とするように制御している。この結果、臭素濃度を所定濃度以上とすることで、湿式脱硫装置21から排出される石灰石膏スラリー20の溶液中に水銀がHg2+イオン状態で安定化するようにしている。
【0030】
すなわち、HBr供給手段50により供給されたHBrが、排ガス12中に含まれた状態で湿式脱硫装置21内に所定濃度導入されるものとなる。よって、スラリー吸収液中では、下記式(5)の反応が左側に進行し、水銀はイオン状態で存在するので、水銀を液相に安定化することができる。
Hg2++SO42-⇔HgSO4・・・(5)
【0031】
ここで、図7は、スラリー吸収液中のBr濃度と、石膏中Hg濃度との関係を示す図である。
図7に示すように、液相の全溶存物質(TDS)中のBr濃度が高い場合には、石膏粒子中のHg濃度が低くなり、Br濃度/TDSの値が、0.33以上であれば、ほとんど零(0.01ppm)になっていることが確認されている。
また、Br濃度/TDSの値が、0.25以上であれば、0.2ppmであるので、石膏粒子中の水銀含有量は極微量であった。
【0032】
本実施例では、湿式脱硫装置21の塔底部の石灰石膏スラリー20中のBr濃度を、臭素(Br濃度計60を用いて計測している。そして、その計測結果に基づき、所定濃度が維持されていれば、そのままの状態を保持する。
また、Brが所定濃度より小さい場合には、HBr供給手段50から供給するHBrの供給量を増大させるように、バルブV4の開度を調整する制御を制御手段61により実行する。
これに対し、Brが所定濃度を超えた場合には、後述する水分分離器33から分離される分離液34を、湿式脱硫装置21の塔底部側に戻すように、ラインL3に介装されたバルブV5の開度を調整する制御を制御手段61により実行する。
【0033】
この制御の結果、常に適正の量のBr濃度を保持でき、脱硫装置で除去される排ガス12中の水銀を液相に安定化させることができる。
【0034】
また、湿式脱硫装置21の石灰石膏スラリー20の酸化還元電位を一定の範囲に保つようにしている。これは、下記式(6)のように、石灰石膏スラリー20中の酸化水銀(Hg2+)がSO2等により金属水銀(Hg0)に還元されるのを阻止し、水銀が再飛散するのを防止するためである。
Hg2++2e- ⇔ Hg0 ・・・(6)
この石灰石膏スラリー20の酸化還元電位を一定に保持する手段として、石灰石膏スラリー20の酸化還元電位(ORP)を制御するORPコントローラ56を用い、例えば200mV以上、さらに望ましくは600mV以上となるように酸化剤55の供給量を調するようにしている。
この結果、石灰石膏スラリー20中に溶解された酸化水銀が金属水銀となって再飛散されることが防止され、排ガス12中に水銀が同伴することが防止される。
【0035】
湿式脱硫装置21の塔底部21bに貯留される脱硫に用いた石灰石膏スラリー20は酸化処理された後、塔底部21bより抜き出される。抜き出された石灰石膏スラリー20は、水分分離器33にラインL2を介して送給された後、臭化水銀(HgBr2)を含んだ脱水ケーキ(石膏)28として系外に排出される。
【0036】
水分分離器33として、例えばベルトフィルターなどが用いられる。
【0037】
石灰石膏スラリー20の供給方法は、ノズル21cより塔頂部側に向かって噴流させる方法に限定されるものではなく、例えばノズル21cから排ガス12と対向するように流下させてもよい。
【0038】
本実施例によれば、湿式脱硫装置21に導入する排ガス12中にHBrを同伴させているので、排ガス12中の酸化水銀が吸収液中に溶解したイオン状態となっているので、液相に水銀を安定化することができる。
【0039】
また、水分分離器33で分離された水銀を含む分離液34は、ラインL3を介して水銀吸収液中の凝集物を凝集処理する凝集装置35に導入される。
凝集装置35には、例えば重金属捕集剤、キレート剤等の凝集剤等の凝集処理剤36が投入され、水銀を含む分離液34中の水銀を含む凝集物37を凝集処理している。
【0040】
凝集処理剤36としては、例えばFe系凝集剤、Al系凝集剤、ポリマー系凝集剤等を例示することができる。
この凝集処理の際、水銀を含む分離液34中の酸化水銀を凝集固化させることにより、液相から固相に移行させるようにしている。
【0041】
この凝集装置35での凝集物37は、蒸発処理手段により、別途蒸発処理させることで、無排水化処理するようにしている。
【0042】
また、凝集物37を脱水処理して固液分離する脱水処理装置38を設け、脱水処理し、汚泥39と処理水40とに分離するようにしてもよい。
そして、脱水物の汚泥39は水銀が含まれているので、別途処理される。
また、濾液である処理水40は、石灰供給装置27での石灰26の希釈液として再利用するようにしてもよい。また、装置本体21a内に供給される水30の一部として利用するようにしてもよい。
【0043】
また、処理水40を再利用する以外としては、例えば蒸発処理させる無排水化処理を行うようにしてもよい。また、排水処理装置41に送り、例えば処理水40中の懸濁物、重金属42などの除去、脱水濾液のpH調整などの操作を排水処理装置41により行うようにしてもよい。
この排水処理装置41で排水処理された排水43の一部は湿式脱硫装置21に返送され、残りは排水として処理される。
【実施例2】
【0044】
次に、本発明の実施例2に係る排ガス中の水銀処理システムについて説明する。なお、実施例1と同一構成部材には同一符号を付して重複した説明は省略する。
図2は、本発明の実施例2に係る排ガス中の水銀処理システムの概略図である。
図2に示すように、本実施例に係る排ガス中の水銀処理システム10Bは、実施例1の排ガス中の水銀処理システム10Aにおいて、排ガス12中へのHBrの供給をしない代わりに、脱硫装置21の石灰石膏スラリー20内にHBr供給手段50からHBrを供給するようにしている。これにより、石灰石膏スラリー20中のHBr濃度を高くするようにしている。
【0045】
この結果、HBrがスラリー吸収液中に所定濃度以上含まれるので、下記式(5)の反応が左側に進行し、水銀はイオン状態で存在するので、液相に水銀を安定化することができる。
Hg2++SO42- ⇔ HgSO4 ・・・(5)
【0046】
本実施例によれば、湿式脱硫装置21内のアルカリ吸収液中の臭素濃度を、HBr供給手段50によりHBrを別途供給して、所定濃度以上とする。これにより、臭素濃度を所定濃度以上とすることで、排ガス12中の水銀を湿式脱硫装置21から排出されるアルカリ吸収液である例えば石灰石膏スラリー20の溶液中に水銀がHg2+イオン状態で安定化することができる。
【0047】
本実施例では、湿式脱硫装置21の塔底部の石灰石膏スラリー20中のBr濃度を、臭素(Br濃度計60を用いて計測している。そして、その計測結果に基づき、所定濃度が維持されていれば、そのままの状態を保持する。
また、Brが所定濃度より小さい場合には、HBr供給手段50から供給するHBrの供給量を増大させるように、バルブV6の開度を調整する制御を制御手段61により実行する。
これに対し、Brが所定濃度を超えた場合には、水分分離器33から分離される分離液34を、湿式脱硫装置21の塔底部側に戻すように、ラインL3に介装されたバルブV5の開度を調整する制御を制御手段61により実行する。
【0048】
この制御の結果、常に適正の量のBr濃度を保持でき、脱硫装置で除去される排ガス12中の水銀を液相に安定化させることができる。
【実施例3】
【0049】
次に、本発明の実施例3に係る排ガス中の水銀処理システムについて説明する。なお、実施例1、2と同一構成部材には同一符号を付して重複した説明は省略する。
図3は、本発明の実施例3に係る排ガス中の水銀処理システムの概略図である。
図3に示すように、本実施例に係る排ガス中の水銀処理システム10Cは、脱硝装置17の前段側で、煙道13を流れる排ガス12中に、脱硝助剤として臭化アンモニウム(NH4Br)溶液14Bを、臭化アンモニウム(NH4Br)溶液供給手段16Bから臭化アンモニウム(NH4Br)供給ライン15Bを介して供給している。
そして、排ガス12中のNOxをNH3ガスで還元すると共に、HBrガス共存下で金属水銀(Hg0)の酸化を脱硝触媒により行っている。
脱硝装置17としては、還元脱硝触媒を備える一般的なものを使用することができる。この還元脱硝触媒としては、特に限定されないが、例えば、W、Sn、In、Co、Ni、Fe、Ni、Ag、Cu等の金属酸化物をゼオライト等の担体に担持させたものを用いることができる。脱硝装置17が備える還元脱硝触媒の量は、水銀酸化効率を高めるために通常の量より増加させるようにしてもよい。
【0050】
本実施例では、一例として臭化アンモニウム(NH4Br)溶液14Bを用いており、気化した際に酸化助剤と還元助剤とを生成すると共に、排ガス12中にHBrを含むようにしている。
ここで、本実施例においては、還元酸化助剤とは、酸化助剤共存下で金属水銀(Hg0)を酸化するのに用いられる酸化助剤と、還元助剤によりNOxを還元する還元剤として機能するものをいう。本実施例では、酸化助剤としてHBrガスが用いられ、還元助剤としてNH3ガスが用いられている。
なお、酸化助剤(例えばHBrガス)と還元助剤(例えばNH3ガス)とを別々に導入するようにしてもよい。
【0051】
ボイラ11から排出される排ガス12には、NH4Br溶液供給手段16Bから臭化アンモニウム(NH4Br)溶液供給ライン15Bを介して、NH4Br溶液14Bが供給される。
【0052】
NH4Br溶液供給手段16Bから煙道13内に噴霧されたNH4Br溶液14Bの液滴は、排ガス12の高温雰囲気温度により蒸発して気化され、微細なNH4Brの固体粒子を生成し、下記式(7)のように、HBrとNH3とに分解する。よって、噴霧手段から噴霧されたNH4Br溶液14Bは分解されて、HBr、NH3を生じ、NH3ガス、HBrガスを煙道13内に供給する。
NH4Br→NH3+HBr・・・(7)
【0053】
煙道13内の排ガス12の温度は、ボイラ11の燃焼条件にもよるが、例えば320℃以上420℃以下が好ましく、320℃以上380℃以下がより好ましい。この温度帯において脱硝触媒上でNOxの脱硝反応と、Hgの酸化反応とを効率的に生じさせることができるためである。
【0054】
また、排ガス12は、NH4Br溶液供給手段16Bから煙道13内に噴霧されたNH4Br溶液14Bの液滴から生じたHBrガス、NH3ガスを含んだ後、脱硝装置17に送給される。脱硝装置17では、NH4Brが分解して生じたNH3ガスはNOxの還元脱硝用に用いられ、HBrガスはHgの酸化用に用いられ、NOx及びHgを排ガス12から除去するので、アンモニアを用いる場合よりも水銀除去率が向上する。
【0055】
即ち、脱硝装置17に充填されている脱硝触媒層に充填されている脱硝触媒上でNH3ガスは、下記式(1)のようにNOxを還元脱硝し、HBrガスにより、下記式(8)のようにHgは酸化される。
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O・・・(1)
Hg+1/2O2+2HBr→HgBr2+H2O・・・(8)
【0056】
排ガス12は、脱硝装置17において排ガス12中のNOxの還元とHgの酸化がされた後、熱交換器18、集塵機(ESP)19を通過して湿式脱硫装置21に送給される。また、熱交換器18と集塵機(ESP)19との間には熱回収器を設けるようにしてもよい。
【0057】
その後、湿式脱硫装置21で脱硫がなされるが、その際石膏スラリー中のBr濃度を高くしているので、スラリー吸収液中では、下記式(5)の反応が左側に進行し、水銀はイオン状態で存在するので、水銀を液相に安定化することができる。
Hg2++SO42-⇔HgSO4・・・(5)
【0058】
また、本実施例では、実施例1と異なり、脱硝装置17で用いる還元・酸化剤として臭化アンモニウムを用いて、脱硝用の還元剤と、酸化剤とを生成すると共に、排ガス12中に臭化水素(HBr)を含有させて、湿式脱硫装置21へ導入するので、実施例1のようなHBrを供給するHBr供給手段50を別途設ける必要がないものとなる。
【0059】
本実施例では、湿式脱硫装置21の塔底部の石灰石膏スラリー20中のBr濃度を、臭素(Br濃度計60を用いて計測している。そして、その計測結果に基づき、所定濃度が維持されていれば、そのままの状態を保持する。
また、Brが所定濃度より小さい場合には、臭化アンモニウム(NH4Br)溶液供給手段16Bから供給するNH4Brの供給量を増大させるように、バルブV1の開度を調整する制御を制御手段61により実行する。
これに対し、Brが所定濃度を超えた場合には、水分分離器33から分離される分離液34を、湿式脱硫装置21の塔底部側に戻すように、ラインL3に介装されたバルブV5の開度を調整する制御を制御手段61により実行する。
【0060】
この制御の結果、常に適正の量のBr濃度を保持でき、脱硫装置で除去される排ガス12中の水銀を液相に安定化させることができる。
【実施例4】
【0061】
次に、本発明の実施例4に係る排ガス中の水銀処理システムについて説明する。なお、実施例1乃至3と同一構成部材には同一符号を付して重複した説明は省略する。
図4は、本発明の実施例4に係る排ガス中の水銀処理システムの概略図である。
図4に示すように、本実施例に係る排ガス中の水銀処理システム10Dは、実施例1の水分分離器33で分離した水銀を含む分離液34から水銀を加熱により除去する加熱水銀分離装置80を設けている。
【0062】
この加熱水銀分離装置80は、装置本体21a内に分離液34を噴霧すると共に、内部に水蒸気81を供給し、この水蒸気81の加熱により水銀をガス状態として分離するものであり、放散ガス82中に水銀をガス状で移行するようにしている。
【0063】
加熱水銀分離装置80で水銀が除去された処理水83は、補給水として再利用される。
【0064】
また、放散ガス82中に移行されたガス状の水銀は、例えば活性炭84を充填した水銀吸着塔85に導入される。そして、水銀吸着塔85内で、水銀は活性炭84に吸着除去される。また、水銀が除去された処理水86は、蒸発処理や、別途再利用するようにしてもよい。
【実施例5】
【0065】
次に、本発明の実施例5に係る排ガス中の水銀処理システムについて説明する。なお、実施例1乃至4と同一構成部材には同一符号を付して重複した説明は省略する。
図5は、本発明の実施例5に係る排ガス中の水銀処理システムの概略図である。
図5に示すように、本実施例に係る排ガス中の水銀処理システム10Eは、実施例3の脱硝装置17で用いた臭化アンモニウムの代わりに、塩化アンモニウムを供給している。
本実施例では、ボイラ11の下流の煙道13内に、還元酸化助剤として塩化アンモニウム(NH4Cl)を含むNH4Cl溶液14Cを噴霧する塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液供給手段16Cと、排ガス12中のNOxをNH3ガスで還元すると共に、HClガス共存下で金属水銀(Hg0)を酸化する脱硝触媒を有する脱硝装置17とを有している。
【0066】
本実施例では、一例としてNH4Clを用いているが、本実施例はこれに限定されるものではなく、還元酸化助剤は気化した際に酸化助剤と還元助剤とを生成するハロゲン化物であればいずれでも用いることができる。ここで、本実施例においては、還元酸化助剤とは、酸化助剤共存下で金属水銀(Hg0)を酸化するのに用いられる酸化助剤と、還元助剤によりNOxを還元する還元剤として機能するものをいう。本実施例では、酸化助剤としてHClガスが用いられ、還元助剤としてNH3ガスが用いられている。
また、酸化助剤(例えばHClガス)と還元助剤(例えばNH3ガス)とを別々に導入するようにしてもよい。
【0067】
ボイラ11から排出される排ガス12には、NH4Cl溶液供給手段16Cから塩化アンモニウム(NH4Cl)供給ライン15Cを介して、NH4Cl溶液14Cが供給される。
【0068】
NH4Cl溶液供給手段16Cから煙道13内に噴霧されたNH4Cl溶液14Cの液滴は、排ガス12の高温雰囲気温度により蒸発して気化され、微細なNH4Clの固体粒子を生成し、下記式(9)のように、HClとNH3とに分解する。よって、噴霧手段から噴霧されたNH4Cl溶液14Cは分解されて、HCl、NH3を生じ、NH3ガス、HClガスを煙道13内に供給する。
NH4Cl→NH3+HCl・・・(9)
【0069】
煙道13内の排ガス12の温度は、ボイラ11の燃焼条件にもよるが、例えば320℃以上420℃以下が好ましく、320℃以上380℃以下がより好ましい。この温度帯において脱硝触媒上でNOxの脱硝反応と、Hgの酸化反応とを効率的に生じさせることができるためである。
【0070】
また、排ガス12は、NH4Cl溶液供給手段16Cから煙道13内に噴霧されたNH4Cl溶液14Cの液滴から生じたHClガス、NH3ガスを含んだ後、脱硝装置17に送給される。脱硝装置17では、NH4Clが分解して生じたNH3ガスはNOxの還元脱硝用に用いられ、HClガスはHgの酸化用に用いられ、NOx及びHgを排ガス12から除去するので、アンモニアを用いる場合よりも水銀除去率が向上する。
【0071】
即ち、脱硝装置17に充填されている脱硝触媒層に充填されている脱硝触媒上でNH3ガスは、下記式(10)のようにNOxを還元脱硝し、HClガスにより、下記式(11)のようにHgは酸化される。
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O・・・(10)
Hg+1/2O2+2HCl→HgCl2+H2O・・・(11)
【0072】
排ガス12は、脱硝装置17において排ガス12中のNOxの還元とHgの酸化がされた後、熱交換器18で排ガス12の温度を降下させる。
【0073】
なお、アンモニアのみを供給し、脱硝装置により、排ガス12中の窒素酸化物のアンモニア脱硝を行うようにしてもよい。
また、排ガス12中の窒素酸化物が少ない場合には、脱硝装置を設けず、排ガス処理を行うようにしてもよい。この際、水銀の酸化は、排ガス12中に含まれるハロゲン化物(例えば塩化物)等により、水銀酸化がなされる。
【0074】
次に、集塵機19で除塵された後、その後湿式脱硫装置21に送られ、脱硫処理される。
本実施例では、湿式脱硫装置21の石灰石膏スラリー20内にHBr供給手段50からHBrを供給するようにしている。これにより、石灰石膏スラリー20中のHBr濃度を高くするようにしている。
【0075】
この結果、HBrがスラリー吸収液中に所定濃度以上含まれるので、下記式(5)の反応が左側に進行し、水銀はイオン状態で存在するので、水銀を液相に安定化することができる。
Hg2++SO42-⇔HgSO4・・・(5)
【0076】
本実施例によれば、湿式脱硫装置21内のアルカリ吸収液中の臭素濃度を、HBr供給手段50によりHBrを別途供給して、所定濃度以上とする。これにより、臭素濃度を所定濃度以上とすることで、排ガス12中の水銀を湿式脱硫装置21から排出されるアルカリ吸収液である例えば石灰石膏スラリー20の溶液中に水銀がHg2+イオン状態で安定化することができる。
【0077】
本実施例では、湿式脱硫装置21の塔底部の石灰石膏スラリー20中のBr濃度を、臭素(Br濃度計60を用いて計測している。そして、その計測結果に基づき、所定濃度が維持されていれば、そのままの状態を保持する。
また、Brが所定濃度より小さい場合には、HBr供給手段50から供給するHBrの供給量を増大させるように、バルブV1又はバルブ6の開度を調整する制御を制御手段61により実行する。
これに対し、Brが所定濃度を超えた場合には、水分分離器33から分離される分離液34を、湿式脱硫装置21の塔底部側に戻すように、ラインL3に介装されたバルブV5の開度を調整する制御を制御手段61により実行する。
【0078】
この制御の結果、常に適正の量のBr濃度を保持でき、脱硫装置で除去される排ガス12中の水銀を液相に安定化させることができる。
【実施例6】
【0079】
次に、本発明の実施例6に係る排ガス中の水銀処理システムについて説明する。なお、実施例1乃至5と同一構成部材には同一符号を付して重複した説明は省略する。
図6は、本発明の実施例6に係る排ガス中の水銀処理システムの概略図である。
図6に示すように、本実施例に係る排ガス中の水銀処理システム10Fは、実施例5と異なり、湿式脱硫装置21へ排ガス12を導入する煙道13中に、HBr供給手段50からHBrを供給するようにしている。
排ガス12と共に湿式脱硫装置21内に導入されたHBrは、石灰石膏スラリー20内に溶解され、これにより、石灰石膏スラリー20中のHBr濃度を所定濃度以上とするようにしている。
【0080】
この結果、HBrがスラリー吸収液中に含まれるので、下記式(5)の反応が左側に進行し、水銀はイオン状態で存在するので、水銀を液相に安定化することができる。
Hg2++SO42- ⇔ HgSO4 ・・・(5)
【0081】
本実施例によれば、湿式脱硫装置21に導入する排ガス12中に、HBr供給手段50によりHBrを別途供給し、湿式脱硫装置21内でのアルカリ吸収液中の臭素濃度を、所定濃度以上とする。これにより、臭素濃度を所定濃度以上とすることで、排ガス12中の水銀を湿式脱硫装置21から排出されるアルカリ吸収液である例えば石灰石膏スラリー20の溶液中に水銀がHg2+イオン状態で安定化することができる。
本実施例では、湿式脱硫装置21の塔底部の石灰石膏スラリー20中のBr濃度を、臭素(Br濃度計60を用いて計測している。そして、その計測結果に基づき、所定濃度が維持されていれば、そのままの状態を保持する。
また、Brが所定濃度より小さい場合には、HBr供給手段50から供給するHBrの供給量を増大させるように、バルブV7の開度を調整する制御を制御手段61により実行する。
これに対し、Brが所定濃度を超えた場合には、水分分離器33から分離される分離液34を、湿式脱硫装置21の塔底部側に戻すように、ラインL3に介装されたバルブV5の開度を調整する制御を制御手段61により実行する。
【0082】
この制御の結果、常に適正の量のBr濃度を保持でき、脱硫装置で除去される排ガス12中の水銀を液相に安定化させることができる。
【符号の説明】
【0083】
10A〜10F 排ガス中の水銀処理システム
11 ボイラ
12 排ガス
16A NH3溶液供給手段
16B NH4Br溶液供給手段
16C NH4Cl溶液供給手段
17 脱硝装置
18 熱交換器(AH)
50 HBr供給手段
60 臭素(Br濃度計
61 制御手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7