【文献】
donpishaperfect パチンコ設備の株式会社スリーストン,パチンコ台取付機どんぴしゃパーフェクトの実測編,2012年 9月12日,URL,https://www.youtube.com/watch?v=qU3jzwdi-BE
【文献】
株式会社スリーストン,ねぶせパーフェクト使用手順書(裏面),日本,2012年 9月 6日,URL,http://www.3stone.co.jp/assets/files/catalog/120906ManualNebusejiguNebuseperfect.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記線状体の先端には、前記線状体を前記基準設置用脚よりも上に位置する遊技機、或いは遊技機を固定する又は遊技機に固定された所定の機器に固定するのに用いられる線状体固定手段が取付けられている、
請求項1記載の傾斜計。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、以上のような傾斜計にも改良すべき点がないとはいえない。
上述の傾斜計は、既に述べたように、使用時に他の設置用脚よりも高い位置で遊技機の盤面に当接されることが予定されている設置用脚を有する。しかしながらこれは、裏を返せば、その設置用脚を固定ないし係止させる釘がない場合には、遊技機の盤面の傾斜角を測定できないということである。
【0007】
例えば、近年の遊技機の中には、その盤面の特に向かって右側の部分に、釘が立設されていないものが多い。したがって、そのような遊技機においては、盤面の右半分については、その傾斜角の測定を行うことができない。
遊技機の盤面の傾斜角が盤面のいかなる部分においても同じであれば、遊技機の盤面の左側の傾斜角のみを測定できれば事が足りるが、実際はそうではない。遊技機の剛性は極めて高いということはなく、遊技機の右側と左側(或いは遊技機の盤面の右側と左側)とでその傾斜角が異なる、ということは往々にして存在する。
上述したように、遊技機の盤面の傾斜角は、出玉の調整の結果に影響を与えるものであるから、遊技機の盤面の如何なる部分でも遊技機の盤面の傾斜角の測定が行えるのが好ましいのは当然のことである。
【0008】
本願発明は、遊技機の盤面の釘が存在しない部分においても遊技機の盤面の傾斜角を測定できるようにする技術を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は、上述の課題を解決するため、以下のような発明を提案する。
本願発明者が提案するのは、少なくとも1つの釘が盤面に対して略垂直に打ち込まれている遊技機の盤面の傾斜角を測定する傾斜計であり、前記釘より長く、使用時において前記盤面にその先端が当接させられる、略棒状の複数の設置用脚と、複数の前記設置用脚の基端が接続されており、複数の前記設置用脚の先端が前記盤面に当接させられることにより前記盤面に対する距離が一定に決定されるようになっている傾斜計本体と、前記傾斜計本体に対して固定の位置関係にある仮想の軸である仮想軸の傾斜角を測定する、前記傾斜計本体に設けられた傾斜角測定手段と、を備えているとともに、前記設置用脚のうちの1つは、その使用時において他の設置用脚よりも高い位置で使用されることが予定されているとともに、前記釘のうちの任意のものに対して固定又は係止できるようにされた基準設置用脚とされている、傾斜計を用いて、遊技機の盤面の傾斜角を測定する方法である。
そして、本願の遊技機の盤面の傾斜角を測定する方法では、前記基準設置用脚を当接しようとする部分に釘が存在する部分における盤面の傾斜角を測定しようとする場合には、前記基準設置用脚を任意の釘に固定又は係止させるとともに、他の設置用脚を前記盤面に当接させ、前記傾斜計を重力で安定させることで、前記基準設置用脚に対する前記傾斜計本体の向きを一意に定めた状態で、前記傾斜角測定手段により前記盤面の傾斜角を測定し、前記基準設置用脚を当接しようとする部分に釘が存在しない部分における盤面の傾斜角を測定しようとする場合には、前記盤面に離脱可能に付着された所定の固定物の上面に前記基準設置用脚の下面を係止させ、且つ前記基準設置用脚の先端を前記盤面に当接させるとともに、他の設置用脚を前記盤面に当接させ、前記傾斜計を重力で安定させることで、前記基準設置用脚に対する前記傾斜計本体の向きを一意に定めた状態で、前記傾斜角測定手段により前記盤面の傾斜角を測定する。
つまり、本願発明者が提案する遊技機の盤面の傾斜角を測定する方法で用いられる傾斜計は、従来と同じものであってもよい。
特に、基準設置用脚を当接しようとする部分に釘が存在する部分における盤面の傾斜角を測定しようとする場合における盤面の傾斜角の測定の方法は、従来と代わりはない。他方、従来の傾斜計では測定が困難であった、基準設置用脚を当接しようとする部分に釘が存在しない部分における盤面の傾斜角を測定しようとする場合には、盤面に、離脱可能に所定の固定物を付着し、その固定物の上面に基準設置用脚の下面を係止させ、且つ基準設置用脚の先端を前記盤面に当接させるとともに、他の設置用脚を前記盤面に当接させ、その後傾斜計を重力で安定させることで、基準設置用脚に対する前記傾斜計本体の向きを一意に定めた状態で、傾斜角測定手段により前記盤面の傾斜角を測定する。
つまり、本願の方法では、基準設置用脚を当接しようとする部分に釘が存在しない部分における盤面の傾斜角の測定の場合には、盤面に対して離脱可能な固定物を盤面に付着してその固定物を釘の代わりに用いることで、遊技機の盤面の傾斜角の測定を行うのである。
なお、固定物の盤面に対する付着はどのように行なってもよい。例えば、その付着は、接着剤による接着であっても良いし、吸盤による吸着であってもよい。また、遊技機の構造的に許されるのであれば、遊技機の盤面の裏側に元々存在する、或いは遊技機の盤面に一時的に配される磁石又は磁石と吸着できる金属と、固定物に取付けた磁石又は磁石と吸着できる金属とを、盤面を挟んで吸着させ合うことにより上記付着を実現させることも可能である。
【0010】
本願発明による遊技機盤面の傾斜角の測定の方法では、上述のように、従来のものと変わりない傾斜計を用いることも可能である。
他方、以下のような傾斜計を用いれば、上述の傾斜角の測定の方法をより容易に実現可能となる。本願発明者は、大別して2つの傾斜計を提案する。便宜上これらを第1の傾斜計、第2の傾斜計と呼ぶことにする。
なお、第1の傾斜計が有する後述の特徴と、第2の傾斜計が有する後述の特徴とは排他的なものではなく、その双方を備えた傾斜計を実現することも可能である。
【0011】
第1の傾斜計は、 少なくとも1つの釘が盤面に対して略垂直に打ち込まれている遊技機の盤面の傾斜角を測定する傾斜計であって、前記釘より長く、使用時において前記盤面にその先端が当接させられる、略棒状の複数の設置用脚と、複数の前記設置用脚の基端が接続されており、複数の前記設置用脚の先端が前記盤面に当接させられることにより前記盤面に対する距離が一定に決定されるようになっている傾斜計本体と、前記傾斜計本体に対して固定の位置関係にある仮想の軸である仮想軸の傾斜角を測定する、前記傾斜計本体に設けられた傾斜角測定手段と、前記傾斜計本体にその基端側が接続された、前記傾斜計本体からその先端までの長さが調節可能とされた線状体と、を備えている。
そして、前記設置用脚のうちの1つは、その使用時において他の設置用脚よりも高い位置で使用されることが予定されているとともに、前記釘のうちの任意のものに対して固定又は係止できるようにされた基準設置用脚とされており、前記基準設置用脚を任意の釘に固定又は係止させるとともに、他の設置用脚を前記盤面に当接させ、前記傾斜計を重力で安定させることで、前記基準設置用脚に対する前記傾斜計本体の向きを一意に定めた状態で、前記傾斜角測定手段により前記盤面の傾斜角を測定できるようになっているとともに、前記盤面に離脱可能に接着付着された所定の固定物の前記盤面に向かって下る傾斜が与えられた上面に前記基準設置用脚の下面を係止させるとともに、他の設置用脚を前記盤面に当接させ、且つ前記線状体の先端を前記基準設置用脚よりも上に位置する遊技機、或いは遊技機を固定する又は遊技機に固定された所定の機器に固定することにより、前記基準設置用脚から前記固定物に前記固定物が前記盤面から離脱するような力がかからないようにしつつ、前記傾斜計を重力で安定させることで、前記基準設置用脚に対する前記傾斜計本体の向きを一意に定めた状態で、前記傾斜角測定手段により前記盤面の傾斜角を測定できるようになっており、前記基準設置用脚の下面には、前記固定物の上面に対する摩擦係数を小さくするための手段が設けられており、前記基準設置用脚は、当該手段を前記固定物の前記上面に載せたときに前記固定物の前記上面を前記盤面に向かって滑ることによりその先端が前記盤面に当接するようになっている。
第1の傾斜計は、従来技術で説明した傾斜計の構成を概ね踏襲している。この傾斜計は、その基準設置用脚となる設置用脚の下面に、前記固定物の上面に対する摩擦係数を小さくするための手段が設けられている。それにより、前記基準設置用脚は、当該手段を前記固定物の前記上面に載せたときに前記固定物の前記上面を前記盤面に向かって滑ることによりその先端が前記盤面に当接するようになっている。
上述の遊技機の盤面の傾斜角の測定の方法では、基準設置用脚を当接しようとする部分に釘が存在しない部分における盤面の傾斜角を測定しようとする場合には、盤面に、離脱可能に所定の固定物を付着し、その固定物の上面に基準設置用脚の下面を係止させ、且つ基準設置用脚の先端を前記盤面に当接させることとしていた。基準設置用脚の先端を盤面に当接させるのは、基準設置用脚の基端から盤面までの距離を予定された一定の距離にするために、盤面と傾斜計本体との位置関係を予定された一定のものとするためである。基準設置用脚の先端を盤面に当接させるには、固定物の上に基準設置用脚を載せた状態で傾斜計本体を盤面に向かって押し込むことにより、基準設置用脚を盤面に向かって押し込めば良い。
ただし、基準設置用脚を盤面に向かって押し込む場合には、固定物に過剰な負荷が掛かって固定物が盤面から離脱してしまうおそれがないとはいえない。
そこで、固定物を、その上面が盤面に向かって下る傾斜を持つものとすることを前提としつつ、第1発明の傾斜計は、基準設置用脚となる設置用脚の下面に、固定物の上面に対する摩擦係数を小さくするための手段を設けたものとされている。それにより、基準設置用脚は、固定物の上面に対する摩擦係数を小さくするための手段を固定物の上面に載せたときに固定物の上面を盤面に向かって滑るようになる。これにより、基準設置用脚の先端を盤面に当接させる場合に、固定物に過剰な負荷が掛かって固定物が盤面から離脱してしまうおそれを小さくすることができる。
【0012】
前記固定物の上面に対する摩擦係数を小さくするための前記手段は、前記基準設置用脚の下面に設けられた、前記固定物の前記上面と点接触、又は線接触を行うような形状となっていてもよい。また、その素材も、樹脂、金属等の摩擦係数の小さなものを選択することができる。
なお、固定物の上面の素材を摩擦係数の小さなものとすることも可能であるし、固定物の上面に摩擦係数の小さな素材のもの(例えば、板)を取付けておくことも可能である。
【0013】
本願発明による第2の傾斜計は、少なくとも1つの釘が盤面に対して略垂直に打ち込まれている遊技機の盤面の傾斜角を測定する傾斜計であって、前記釘より長く、使用時において前記盤面にその先端が当接させられる、略棒状の複数の設置用脚と、複数の前記設置用脚の基端が接続されており、複数の前記設置用脚の先端が前記盤面に当接させられることにより前記盤面に対する距離が一定に決定されるようになっている傾斜計本体と、前記傾斜計本体に対して固定の位置関係にある仮想の軸である仮想軸の傾斜角を測定する、前記傾斜計本体に設けられた傾斜角測定手段と、前記傾斜計本体にその基端側が接続された、前記傾斜計本体からその先端までの長さが調節可能とされた線状体と、を備えている。そして、この傾斜計の前記設置用脚のうちの1つは、その使用時において他の設置用脚よりも高い位置で使用されることが予定されているとともに、前記釘のうちの任意のものに対して固定又は係止できるようにされた基準設置用脚とされており、前記基準設置用脚を任意の釘に固定又は係止させるとともに、他の設置用脚を前記盤面に当接させ、前記傾斜計を重力で安定させることで、前記基準設置用脚に対する前記傾斜計本体の向きを一意に定めた状態で、前記傾斜角測定手段により前記盤面の傾斜角を測定できるようになっているとともに、前記盤面に離脱可能に付着された所定の固定物の上面に前記基準設置用脚の下面を係止させるとともに、他の設置用脚を前記盤面に当接させ、且つ前記線状体の先端を前記基準設置用脚よりも上に位置する遊技機、或いは遊技機を固定する又は遊技機に固定された所定の機器に固定することにより、前記基準設置用脚から前記固定物に前記固定物が前記盤面から離脱するような力がかからないようにしつつ、前記傾斜計を重力で安定させることで、前記基準設置用脚に対する前記傾斜計本体の向きを一意に定めた状態で、前記傾斜角測定手段により前記盤面の傾斜角を測定できるようになっている。
第2の傾斜計は、従来技術で説明した傾斜計の構成を概ね踏襲している。
第2の傾斜計が従来技術で説明した傾斜計と大きく異るのは、線状体を備えているという点である。第2の傾斜計は、上述したように、盤面の釘の無い部分では、盤面に盤面から離脱可能な固定物を付着させ、そしてその固定物を釘の代わりとして用い、固定物に基準設置用脚を係止させた状態で、盤面の傾斜角の測定を行う。ところで釘の代わりとされる固定物は一時的に盤面に付着されるものに過ぎないから、盤面に対する付着を強固に行うことが難しい場合もある。したがって、基準設置用脚を固定物に係止させ傾斜計の重さを固定物にかけたときには固定物が遊技機の盤面から離脱しかねないということもあり得る。本願の傾斜計では、上述の線状体の先端を基準設置用脚よりも上に位置する遊技機、或いは遊技機を固定する又は遊技機に固定された所定の機器に固定することにより、傾斜計の重さの一定の部分(例えば、殆ど)を線状体の固定された遊技機、或いは遊技機を固定する又は遊技機に固定された所定の機器に負担させることができ、その状態で固定物を用いての盤面の傾斜角の測定ができるから、盤面の傾斜角の測定中に固定物が離脱するという事態を防ぐことができる。ここで、線状体の先端は、遊技機に固定される場合、或いは遊技機を固定する又は遊技機に固定された所定の機器に固定される場合があり、また、固定物の盤面に対する付着位置も変化するから、線状体の長さは一定であっては線状体を上述の目的で使えない。しかしながら、本願発明の線状体は、その長さ(傾斜計本体からその先端までの長さ)が可変であるから、遊技機の先端がどこに固定される場合でも、また、固定物が盤面のどこに付着される場合でも、その長さの範囲内であれば対応可能である。
【0014】
第2の傾斜計における前記線状体の先端には、前記線状体を前記基準設置用脚よりも上に位置する遊技機、或いは遊技機を固定する又は遊技機に固定された所定の機器に固定するのに用いられる線状体固定手段が取付けられていてもよい。線状体の先端は上述のように、遊技機、或いは遊技機を固定する又は遊技機に固定された所定の機器に固定される。この場合の固定は、線状体の先端をそれら遊技機又は所定の機器に結び付けるという単純な方法によっても良いが、線状体の先端に、遊技機又は所定の機器に固定を行うための線状体固定手段が存在すれば、線状体の遊技機又は所定の機器に対する固定が楽になる。
線状体固定手段は、例えば、線状体により形成されたループ、線状体の先端に固定される金属製の輪、スナップフック、L字型の鍵、又は、所定の隙間に入れたときに変形して前記隙間に係止される板バネである。遊技機は通常、枠と呼ばれる遊技機を囲む矩形の部材に取付けられた状態で、遊技機取り付け用の島に取付けられるが、枠の上側には一般に、若干の隙間が存在する。線状体固定手段を上述の板バネとした場合には、その隙間に線状体固定手段を固定するのが容易になる。
【0015】
第2の傾斜計における前記線状体は、その基端が前記傾斜計本体から露出しており、且つその基端に前記線状体をその基端側に引っ張るために用いられるループが設けられていてもよい。このようにすると、線状体の傾斜計本体から線状体の先端までの長さを縮める線状体の長さの調整が楽に行えるようになる。
この場合、傾斜計本体には、線状体を、基端側には引っ張れるが、解除の操作をしない限り先端側には引っ張れないように線状体を固定する手段を設けておくのが好ましい。このような手段があれば、線状体の長さの調節を容易に行えることと、線状体の傾斜計本体から先端までの長さが伸びて固定物に過度な力がかからないようにすることとを、両立できる。
【0016】
第1の傾斜計又は第2の傾斜計の設置用脚は、棒状で且つその長さが釘(の盤面から露出している部分の長さ)よりも長ければそれで足りる。第1の傾斜計又は第2の傾斜計の設置用脚は、また、盤面に平行して対向する傾斜計本体の対向面上を平行に移動できるようになっていてもよい。そうなっていれば、設置用脚が釘を回避し易くなる。
第1の傾斜計又は第2の傾斜計の前記設置用脚は、前記盤面に設けられた、玉が移動できる範囲を確定する仕切り板の盤面からの高さを超えるものとなっていてもよい。そうすれば、設置用脚の少なくとも1つと設置用脚の他の1つが仕切り板を超えた状態で盤面の傾斜角を測定できるようになるから、盤面の傾斜角を測定できる範囲が広がる。
第1の傾斜計又は第2の傾斜計の前記基準設置用脚の先端は丸められていてもよい。基準設置用脚のみならず、設置用脚の先端まで丸められていてもよい。
【0017】
また、第1の傾斜計又は第2の傾斜計の前記基準設置用脚は、弾性体によって前記傾斜計本体に向かう方向に付勢力を与えるようにされ、且つ前記弾性体によって与えられる付勢力に抗する外力を加えることにより当該基準設置用脚に沿って前記傾斜計本体から離れる方向に移動できるようにされている可動体を備えており、前記可動体には、当該可動体が設けられている前記基準設置用脚の前記先端が前記盤面に当接させられた状態で、前記外力が加えられていない場合には、前記釘の釘傘よりも前記傾斜計本体に近い位置にあり、前記外力が加えられた場合には、前記釘の釘傘よりも前記傾斜計本体から遠い移置にまで移動させることができるようになっている接面が設けられており、前記可動体が設けられている前記基準設置用脚の前記先端を前記釘の近辺の前記盤面に当接させた状態で、前記可動体に前記外力を加えて当該釘の釘傘よりも前記傾斜計本体から遠い位置にまで移動させた前記接面を当該釘の釘傘の前記盤面側の面に係止させ、前記弾性体による付勢力によって前記接面を前記釘傘に対して前記傾斜計本体の方向に付勢させることで、前記設置用脚を前記盤面に固定することができるようになっていてもよい。
この傾斜計では、傾斜計の設置用脚を盤面に対して固定する際には、可動体のある設置用脚の先端を盤面の釘の近辺に当接させた状態で、外力が加えられていない場合には、釘の釘傘よりも傾斜計本体に近い位置にある可動体の釘の釘傘に対する接面を、可動体に外力を加えることによって釘傘よりも傾斜計本体から遠い位置にまで移動し、釘傘の盤面側の面に係止させ、弾性体による付勢力によって接面を釘傘に対して傾斜計本体の方向に付勢させるようになっている。そのような弾性体を備える可動体を用いることで、傾斜計の設置用脚を盤面に固定する場合における、設置用脚が盤面を押す力が常に一定になる。例えば、手で傾斜計を持ち、設置用脚を盤面に押付けた場合には、設置用脚を盤面に押付ける力が過剰であった場合、可撓性を有する盤面を湾曲させてしまい、結果的に正確に傾斜角を測定できなくなる場合がある。本願発明では、傾斜計による盤面の傾斜の測定にあたり、設置用脚を盤面に押付ける力を弾性体による一定の力にすることができるので、上述の不具合を避けることができるようになるため、固定物を用いずに盤面の傾斜角を測定する際の測定の精度を向上させられるようになる。
なお、この傾斜計は、このような可動体を有する設置用脚を盤面に対して着脱自在に固定できるようなものであるため、盤面の釘が有る部分での傾斜角の測定の際に作業者が傾斜計から手を離すことができる。それにより、作業者は、傾斜計を見ながら盤面の傾斜角の測定を行えるようになり便利である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を実施するための最良の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
まずは、この実施形態による後述する傾斜計でその盤面の傾斜角を測定される遊技機、及びそれが取付けられた島の概略の構成について説明する。
図1、
図2中300が遊技機である。
遊技機300は、玉がその表面を移動する盤面301を備えている。
盤面301には、多数の釘302が立設されている。この実施形態による遊技機300では、釘302は、盤面301の向かって左側に多く立設されており、盤面301の右半分の特に上方には殆ど存在していない。
また、盤面301には、盤面301上で玉が移動できる範囲を確定する仕切り板303が設けられている。仕切り板303で囲まれた略円形の範囲の中を玉は移動することになる。必ずしもこの限りではないが、この実施形態では、仕切り板303の盤面301からの高さ(仕切り板303の幅)は長さ方向のすべての部分で一定となっている。
なお、遊技機300の盤面301は通常、盤面301の正面をガラスとした扉で覆われているが、
図1では簡単のため、扉の図示を省略している。また、遊技機300の下方には、一般には上皿と下皿からなる出玉を受けるための皿や、玉を打ち出すための操作に用いられるハンドルも存在するが、それも同様の理由で図示を省略している。
【0021】
遊技機300は通常、ホールにおいては、島400と呼ばれる構造体に固定されている。島400は、金属製であることもあるが、多くの場合は木製であり、遊技機300を多数並列に取付けられるような構造となっている。
島にはその他に、遊技用の玉をユーザに貸し出す玉貸機、遊技機の状態をユーザやホールの店員に知らせる呼び出しランプ、玉貸機及び遊技機に玉を供給し、また、遊技機から外れ玉を回収して玉を循環させるための玉の循環機構、などが必要に応じて適宜取付けられるが、これらについての図示も省略する。
遊技機300は、島400に枠500と呼ばれる部材を介して取付けられる。枠500は、金属製の場合もあるが通常木製であり、4枚の板を4辺とした矩形形状とされている。その前面に遊技機300が固定された状態で、枠500を島400に固定することで、島400に対する遊技機300の固定がなされる。具体的には、島400には、枠500を載置するための下板401と、枠500の上側に位置する下板401と平行な上板402とが存在するが、枠500はその下側の辺にあたる板を下板401に、その上側の辺にあたる板を上板402に、それぞれ釘、専用の金具等適当な手段を用いて固定することで、島400に対して固定されている。そのとき、遊技機300の盤面301は、若干後方に倒れこむような傾斜が与えられている。その傾斜角は、本願の背景技術の欄で既に説明したように、事後的に変更可能な場合もある。
また、枠500の上側の板と、上板402の間には、
図2に示したように、若干(例えば、数mm程度)の隙間が空けられるのが通常である。
【0022】
次に、傾斜計10について説明する。
図3は、傾斜計を背面(なお、便宜上、傾斜計10の使用時に盤面301に対向する側の面を傾斜計10の前、盤面301から遠い側の面を傾斜計の後と、この実施形態では称するものとする。)側から見た状態を示す斜視図であり、
図4は、傾斜計10の背面側の後述する蓋を外した状態を示す斜視図であり、
図5は、傾斜計を前面側から見た状態を示す斜視図である。
【0023】
傾斜計10は、その使用時における上下方向を長さ方向とする傾斜計本体11を有する。傾斜計本体11は、これには限られないが、金属製、或いは樹脂製であり、略直方体形状に形成されている。この実施形態における傾斜計本体11の上面には、孔11Aが穿たれている。もっとも、孔11Aの位置はこれには限らない。
この実施形態では、傾斜計10は、略直方体である傾斜計本体11の前側の面である対向面12を盤面301に平行に臨ませた状態で、盤面301の傾斜角を測定する。
地上に対する垂直方向からの盤面301の傾斜角は、対向面12の傾斜角によって計測することができる。なお、対向面12上の最大傾斜方向に沿う線は、本発明における仮想軸の一例となる。
【0024】
この実施形態における傾斜計本体11には、上述したように対向面12に平行な矩形の板である蓋13がある。蓋13の中ほどには孔13Aが穿たれている。もっとも、孔13Aの位置はこれには限らない。
蓋13には、また、蓋13の背面に対して垂直な面を持つテーブル状部材14が取付けられている。テーブル状部材14の、傾斜計10の使用時における上側の面には、
図3〜5では図示を省略したが、本願の傾斜角測定手段として、蓋13に対して垂直方向に複数の水準計15が取付けられている(
図6、
図7)。傾斜計10を地面に対して垂直に設置した場合に、各水準計15は、蓋13に近い一端が他端より高くなるようになっており、それぞれ傾斜角Aを有する。この実施形態では、テーブル状部材14上の水準計15はそれぞれ異なる傾斜角Aを有するように設置されている。傾斜計10を盤面301に設置したときに、水準計15のうちで水平を示すものがあれば、その水準計15の傾斜角Aは、対向面12の地上に対する垂直方向からの傾斜角に一致する。上述したように、傾斜計本体11は対向面12が盤面301に平行になるように設置される。したがって、対向面12の傾斜角である傾斜角Aは、盤面301の地上に対する垂直方向からの傾斜角ということになるのである。例えば、この実施形態では、水準計15を4台使用しており、各水準計15に与えられた傾斜角Aはそれぞれ、
図6、7の手前から尺貫法でいう、3分、3.5分、4分、4.5分になっている。したがって、傾斜計10を盤面301に設置したときに、例えば、4度を計測する水準計15が水平であれば、盤面301の傾斜角は4度ということになる。なお、水準計15の数及び各水準計15の傾斜角は、適当に決定できる。更にいえば、傾斜角測定手段として、水準計を使用しなくてもよいし、傾斜角測定手段によってはテーブル状部材14も使用しなくてもかまわない。例えば、水準計15の代わりに、内部に傾斜センサを備えるコンピュータで制御されたディスプレイ付きの傾斜角測定装置を、傾斜計本体11に設けること等が考えられる。
【0025】
傾斜計本体11の対向面12には、略棒状である設置用脚が接続されている。例えば、この実施形態における傾斜計本体11には、角柱状である2本の設置用脚30及び40が接続されている。これら設置用脚30及び40は、釘302よりも長い必要がある。また、この実施形態では、これら設置用脚30及び40は、各設置用脚30及び40の先端を盤面301に当接させた状態で、対向面12と盤面301が平行になり、対向面12から盤面301までの距離が一定になるような長さになっている。つまり、設置用脚30及び40は、その先端が互いに面一となっている。設置用脚は2本である必要はなく、傾斜計本体11の形状等の要素に合わせて増加させてもよい。また、この実施形態では、設置用脚は角柱状であるが、略棒状であれば他の形状であってもよく、例えば、円柱状である場合等が考えられる。
なお、設置用脚30及び40は、少なくともその一方の先端が、
図14(A)、(B)に示されたように、例えば半球状に丸められていても構わない。
【0026】
2本の設置用脚のうち、その使用時において相対的に上部に存在する設置用脚30は、本願で言う基準設置用脚に該当する。設置用脚30は、傾斜計10の重心位置より上の範囲の中にある。
この設置用脚30には、
図3〜5では図示を省略したが、可動体31が備えられている(
図9)。可動体31は、後述のように、設置用脚30と釘302の固定をなすためのものである。もっとも、設置用脚30は釘302に対する固定が可能になっていてもよいが、釘302に対する係止が可能となっていればそれで十分なのであり、その場合には、設置用脚30に可動体31の如き可動なもの(可動体31がどのようにして可動となっているかは後述する。)を設ける必要は特にない。例えば、設置用脚30には、設置用脚30の先端を盤面301に当接させた状態で釘302をその内側に嵌め込むことができ、その状態で傾斜計10から手を離しても釘302に対する設置用脚30の係止が維持されるような溝が設けられているだけでも構わない。
他方、この実施形態では、もう一方の設置用脚40には可動体が備えられていないが、2本の設置用脚30、40の双方に可動体が備えられていても構わない。
【0027】
図8は、設置用脚30の可動体31付近の内部構造を示す図であり、
図9は、設置用脚30の可動体31付近を拡大したものである。設置用脚30の可動体31によって覆われている部分には、断面略矩形形状の空洞32が存在する。また、空洞32の内部には、第1バネ33が配置されている。可動体31は、第1樹脂体50及び第2樹脂体60によって構成されており、空洞32を挟み込むように組み合わせて構成される。第1樹脂体50には、第1突起部51が存在する。第1突起部51は、設置用脚30の長さ方向と平行な板状になっており、空洞32近くの両端には、この第1突起部51をはめ込むことができるように、設置用脚30の長さ方向と平行に長さを持つ窪み34が存在する。この窪み34の設置用脚30の長さ方向の長さは、第1突起部51の同方向の長さより長いものとなっている。
また、可動体31の下面には、溝52がある。溝52は、後述するように、釘302をその内部に嵌め込んで使用されるものであり、それが可能なような幅、深さとなっている。
【0028】
第1樹脂体50には、直方体状の第2突起部53があり、それが設置用脚30の空洞32に差し込まれている。この状態で第2突起部53の設置用脚30の先端方向の面を第1バネ33に当接させる。第1バネ33は、第2突起部53を第1バネ33に当接させた状態で、すでに縮んだ状態になっており、常に第2突起部53を傾斜計本体11の方向に付勢するようになっている。可動体31を傾斜計本体11から設置用脚30に沿って遠ざけることで、第2突起部53が第1バネ33をさらに縮ませることになり、第2突起部53を傾斜計本体11の方向に付勢する力がより強くなるようになっている。
【0029】
この実施形態では、第1樹脂体50を、2つの第1突起部51が対応する2つの窪み34に合うように嵌め込み、その上から第2樹脂体60で覆うように組み合わせる。第1突起部51は、窪み34に沿って設置用脚30の長さ方向に案内されながら移動させることができる。第1突起部51は、窪み34の長さの範囲の中でのみ移動させることができ、それに伴い可動体31の移動範囲も制限されるようになっている。
【0030】
可動体31の傾斜計本体11に最も近い面が接面35である。接面35は、可動体31の移動に伴って移動する。接面35は、
図9に示したように、可動体31が初期状態にあるときの位置aから位置bまでくるように移動させることができる。位置bは、釘302の釘傘22の盤面301側の面よりも、盤面301に近い位置である。上述したように、可動体31を盤面301の方向に移動させることで、第1バネ33によって可動体31を傾斜計本体11の方向に付勢する強い力が生じる。そして、接面35が釘傘22の盤面301側の面に当接するように可動体31を解放すると、可動体31に生じている付勢する力によって、可動体31を釘302に係止させることができる。このとき、釘302を溝52に嵌め込むことで、可動体31を釘302により安定した状態で固定することができる。可動体31は、樹脂製でなくてもよいし、直方体形状でなくてもよいが、可動体31の接面35から溝52のある可動体31の下面に至る部分は、釘傘22が滑らず釘302を係止することができるような形状(例えば、面取りされていない形状)とし、十分な剛性を有するのが好ましい。
【0031】
この実施形態では、設置用脚40は傾斜計本体11の長さ方向に沿って対向面12上を上下方向に平行に移動させることができるようになっている。
設置用脚40を傾斜計本体11の長さ方向に沿って移動させられるようにするための構成には特に制限はないが、この実施形態では、例えば、
図10で示されたような構成が採用されている。
この実施形態では、傾斜計本体11は、上述したように、略直方体形状に形成されている。傾斜計本体11の対向面12には、傾斜計本体11の長さ方向に長い辺を持つ切り込み16が存在する。設置用脚40は、その基端を対向面12に挿入した状態で、傾斜計本体11に接続される。
傾斜計本体11の内部には、設置用脚40の基端を固定するための固定板70、及び、固定板70と嵌め合わされて固定板70とともに傾斜計本体11内部を、上述の切り込み16に沿って移動する移動台80とが収納されている。
固定板70は、その中央に固定板70を貫通する孔である貫通孔71が設けられた矩形の板部72と、板部72の対向する2辺から傾斜計本体11の背面方向に延びる角柱状の2本の固定用脚73とを備えている。設置用脚40はネジ90によって固定板70に固定されている。上述の貫通孔71を貫通させたネジ90を設置用脚40の基端側の面に螺合させることにより、その固定は行われている。それを可能とするため、設置用脚40の傾斜計本体11側の面には、ネジ90が螺合させられるようなネジ切りがその内部にされたネジ穴41が設けられている。貫通孔71の径は、ネジ90のネジ部分は通るが、ネジ傘は通らない大きさとされている。
移動台80は、略直方体形状とされている。移動台80は、必ずしもこの限りではないが、この実施形態では樹脂製である。移動台80の固定板70に臨む面には、2つの差込口81と、円柱状穴82が設けられている。差込口81は、その断面形状が、固定用脚73の断面形状と略対応した穴であり、2つの固定用脚73の位置と対応した位置にそれぞれ設けられている。円柱状穴82は、比較的浅い断面円形の穴である。円柱状穴82には、第2バネ100の一端側が嵌め込めるようになっている。
固定板70は、移動台80との間に第2バネ100を挟み込み、且つその2つの固定用脚73を移動台80の差込口81のそれぞれに挿入した状態で、傾斜計本体11の内部に収納されている。この状態では、第2バネ100は、その一端を移動台80に、その他端を固定板70にそれぞれ当接させた状態で、縮んだ状態にある。したがって、固定板70は第2バネ100によって盤面301の方向に一定の力で常に付勢される。それにより、固定板70の対向面12側の面は、傾斜計本体11の対向面12の内壁に押接させられる状態になる。この状態では、固定板70と傾斜計本体11の内壁との摩擦による力によって設置用脚40を、切り込み16に沿って移動させることが殆ど不可能となる。しかしながら、設置用脚40を、第2バネ100を更に圧縮できるような力を加えて移動台80の方向に押し込み、固定板70が傾斜計本体11の内壁に当接しないようにすれば、設置用脚40は簡単に移動させられる。つまり、以上のような構成により、この実施形態では、設置用脚40を切り込み16の長さ方向に自由に動かせるようにすることと、設置用脚40を切り込み16の長さ方向の任意の位置で固定することとを両立させている。
もっとも、設置用脚40は必ず移動できるようになっていなくてはならないわけではないし、移動できる方向も対向面12に平行であれば傾斜計本体11の長さ方向に沿った上下方向に限る必要はない。また、傾斜計10の重心位置より上の範囲であれば、設置用脚30も移動できるようになっていてもよい。
【0032】
この実施形態の傾斜計10は、また、例えば丈夫なワイヤである線状体110を備えている。線状体110の先端は、孔11Aを貫通しており、また、線状体110の基端は、孔13Aを貫通している。これにより、線状体110は、傾斜計本体11を貫いた状態となっている。
線状体110は、適当な方法で傾斜計本体11の内部の傾斜計10の使用時における上端に取付けられた筒部材130(
図11〜13参照)の中を貫通している。
通常の状態では、線状体110は、筒部材130に固定されている。筒部材130による固定により、線状体110は、傾斜計本体11に固定された状態となる。
線状体110の一端側には、ループ111が設けられている。線状体110の他端側には、ループ111よりも大きな径の大ループ112が設けられている。大ループ112は、任意の指を入れられる程度の大きさとなっているが、指を数本通せる程度等、それよりも大きなものでも良い。
ループ111には、固定板120が取付けられている。
固定板120は、金属板である。固定板120は、山折りされた板バネ部121を有している。板バネ部121は、固定板120の厚さ方向に圧縮されたときにその厚さが小さくなるように変形し、元の厚さに戻ろうとする力を生じるようになっている。固定板120は、また、孔122が穿たれている。孔122の縁には、フック123が立設されている。線状体110のループ111は、孔122を通してから、フック123に引っ掛けられている。それにより、フック123に対して線状体110が接続されている。
参考までに、傾斜計10から取り出した線状体110と筒部材130を
図11に示す。
【0033】
筒部材130の構成について説明する。
図12に筒部材130の分解図を、
図13に筒部材130の破断図を示す。なお、
図13では、後述する外筒はその全体において軸を通る平面で破断された状態が、後述する内筒は、
図13の上半分において上記平面と同じ平面で破断された状態が示されている。
【0034】
筒部材130は、筒状である。筒部材130は、外筒131、内筒132、球133、弾性バネ134を備えて構成されている。
外筒131は、筒状である。筒状とされた外筒131の内部には内筒132が挿入されるようになっている。外筒131の外周面には溝131Aが切られている。
外筒131の内周面には、その前方に向けて徐々に内径が小さくなっていくようなテーパーの与えられたテーパー部131Bが設けられている。テーパー部131B後端のテーパー部131Bが終わる部分より後ろの部分においては、外筒131の内周面の径は一定となっている。
外筒131の内周面の後端には、断面形状がリング状の係止部131Cが設けられている。係止部131Cの内側に開いた孔は、内筒132の、後述する内筒後端部を案内するためのものであり、内筒後端部の外形よりも若干大きい程度の径となっている。
【0035】
内筒132は、筒状である。内筒132は、前側から、円筒形の内筒先端部132A、円錐台形状である内筒中間部132B、円筒形状で長い内筒後端部132Cからなる。内筒先端部132Aは外筒131の先端から前方に突出するようになっている。内筒後端部132Cの後端は、内筒132に特に外力を加えない場合には外筒131の後端と略一致するようになっている。
内筒先端部132A、内筒中間部132B、内筒後端部132Cは同軸であり、且つその内部を、貫通孔132Dで貫かれている。貫通孔132Dは、内筒中間部132Bの部分は図に示したように他の部分よりも大径となっているが、その他の部分においては、線状体110を前後にずらせる程度に線状体110の径よりも幾らか大きい程度の一定の径とされている。なお、貫通孔132Dは、すべての部分で一定の径とされていても構わない。
内筒132の内筒中間部132Bには、貫通孔132Dと連通したこの実施形態では円形の孔である連通孔132Eが穿たれている。連通孔132Eにはそれぞれ、球133が嵌っている。球133の径は、線状体110から、外筒131のテーパー部131Bの所定の部分(これには限られないが、この実施形態では、テーパー部131Bの前後方向の中程)までの距離に等しくなっている。
【0036】
弾性バネ134は一般的なコイルばねである。弾性バネ134は、
図13に示したように、内筒後端部132Cの周囲に巻き付けたような状態で、外筒131の内部空間に入れられている。弾性バネ134は、その先端を内筒中間部132Bと、内筒後端部132Cが交わる部分にできるドーナツ状の面に当接させ、その後端を係止部131Cの前面に当接させている。弾性バネ134は圧縮されており、内筒132に対して常に、内筒132を前側に向かって押すような付勢力を与えている。
【0037】
上述したように線状体110は、筒部材130に対して前方、後方に移動できる。その仕組は以下の通りである。
図13に示した筒部材130は通常の状態である。
この状態では、内筒132は、弾性バネ134により前側に付勢されている。内筒132が前側に付勢されているこの状態では、内筒中間部132Bに設けられた連通孔132Eから覗いている球133は前方に押しやられ、外筒131のテーパー部131Bに当接して軸方向に移動する。すると、3つの球133は、線状体110を3方向から押圧する。この状態では、線状体110は前方に引いても前方には移動できない。なぜなら、線状体110を前方に引こうとすると、線状体110から摩擦力を受ける球133は益々前方に移動しようとし、これにより球133が線状体110を押圧する力が益々大きくなるからである。他方、この状態で、線状体110を後ろに引くことは可能である。線状体110を後ろに引いた場合には、線状体110からの摩擦力を受ける球133は線状体110が後ろに引かれることにより後ろ向きの力を受け、内筒132ともども弾性バネ134の付勢力に抗して若干後ろに下がる。すると、その部分における外筒131の内部空間の径は、
図13に示した状態で球133が当接していた部分におけるテーパー部131Bの径よりも大きいので、球133は外筒131の内周面側に移動し、球133による線状体110の押圧が解かれる。それ故、
図13に示した状態でも、線状体110を後ろに引くことが可能なのである。
他方、内筒132の内筒先端部132Aを外筒131に向かって後方に押し込むと、線状体110は前方にも、後方にも引けるようになる。内筒先端部132Aを弾性バネ134の付勢力に抗して外筒131に対して相対的に後ろに下げると、球133の線状体110に対する押圧が解かれるからである。もっとも、上述したように、線状体110は内筒先端部132Aを外筒131に向かって後方に押し込まなくても後方には移動できるのであるから、この操作は事実上、線状体110を前方に移動させたい場合にのみ行うことになる。
つまり、上述の筒部材130は、内筒先端部132Aを外筒131に向かって後方に押し込むという特定の操作をしない限り、線状体110の移動方向を後方のみに規制するものであると言える。
【0038】
内筒先端部132Aは、傾斜計本体11の孔11Aから上方に若干飛び出している。
ユーザは、孔11Aから飛び出している内筒先端部132Aを後方へ、つまり
図3〜5等で示された状態であれば下方へ押しこむことにより、筒部材130による線状体110の前方への、つまり
図3〜5等で示された状態であれば傾斜計本体11に対して上方への移動を行えるようになる。
他方、ユーザが、内筒先端部132Aを後方へ押しこんでいない状態では、筒部材130による線状体110の前方への移動は規制されており、その代わりに線状体110の後方への移動は許容されている。この状態では、ユーザは、大ループ112に指を通すなどして、線状体110を後方へ引っ張ることが可能となる。
【0039】
次に、傾斜計10の使用方法について説明する。
この傾斜計10は、釘302を用いて遊技機300の盤面301の傾斜角を測定する場合と、釘を用いずに遊技機300の盤面301の傾斜角を測定する場合の2通りの使用方法がある。
まず、前者から説明する。
【0040】
釘302を用いて盤面301の傾斜角を測定するにあたっては、まず、傾斜計10を盤面301に固定する。上述したように、傾斜計10を盤面301に固定する場合には、傾斜計10から伸びる設置用脚30及び40の先端を盤面301に当接させる。
このとき、設置用脚30の可動体31にある溝52に適当な釘302を嵌め込みつつ、設置用脚30を盤面301に当接させる。このとき、設置用脚40を盤面301に当接するにあたり、他の釘302が干渉するようであれば、設置用脚40と他の釘302が干渉しないように設置用脚40を切り込み16の範囲内で上下に移動させる。そして、設置用脚30及び40を盤面301に当接させた状態で、可動体31を位置aから位置bまで移動させ、可動体31の接面35を釘302に係止させる。可動体31から手を離すと、可動体31の内部にある第1バネ33で生じる強い弾性力によって、接面35が位置aに戻る方向で可動体31が移動するので、可動体31の接面35の釘302に対する係止は、可動体31から手を離すと自動的に行われる。このとき設置用脚40が盤面301に押付けられる力は、第1バネ33の弾性力による一定の力となる。
この実施形態では、設置用脚30及び40が盤面301に当接する2点によって、傾斜計10の仮想軸の傾斜角が決定される。そして、この仮想軸の傾斜角は、異なる角度で設置される複数の水準計15のうち、水平を示した水準計15の傾斜角によって示され、その傾斜角によって盤面301の傾斜角が測定される。作業者は、傾斜計10が示す盤面301の傾斜角を見ながら、傾斜計10から手を離した状態で、盤面301の傾斜角の調整など、必要な作業を行うことができる。
【0041】
釘302を用いずに盤面301の傾斜角を測定するにあたっては、まず、設置用脚30の係止を行いたい部分に、固定物600を付着する。固定物600の盤面301に対する付着は、盤面301に対して離脱可能に行う。盤面301から固定物600を離脱させた場合に、盤面301に何らの影響も与えないのが好ましい。固定物600は、例えば、粘着性を有するゴムであり、また、その付着は、例えば、そのゴムが本来的に有する粘着性により行うことができる。もっとも、上記付着は、固定物600を盤面301から剥がせることが担保された接着剤によって行なわれても構わないし、吸盤による吸着、或いは、磁力を利用した吸着によって達成されても構わない。磁力を用いて固定物600の盤面301に対する付着を達成する場合には、盤面301の裏側に固定物600と磁力で吸着しあう物質を配することとし、固定物600とその物質の一方を磁石とし、その他方をその磁石と吸着しあう磁石又は金属とする。
固定物600の形状はどのようなものでも良いが、これには限られないが、この実施形態では、直方体形状とされている。
この実施形態では、固定物600は、盤面301のうちの釘302の少ない右半分の適当な箇所に付着する。
図1、
図2では、盤面301のうちの仕切り板303の外側に固定物600が付着させられているが、固定物600は、仕切り板303の内側に付着させられても良い。
次いで、傾斜計10から伸びる設置用脚30及び40の先端を盤面301に当接させる。また、このとき、設置用脚30の下面を固定物600の上面に当接させる。なお、この状態では、傾斜計10の重さが固定物600にかからないようにする。この状態で、線状体110の先端を、固定物600の直上の適当な箇所に固定する。
線状体110の先端を固定する場所は、遊技機300の一部であっても良いし、遊技機300に取付けられた機器の一部、或いは遊技機300を取付ける島400や枠500の一部であっても良い。この実施形態では、枠500の上側の板と、上板402の間にある上述した隙間に、線状体110の先端に取付けられた固定板120を差し込むことにより、線状体110先端の固定を行う。固定板120を上述の隙間に差し込むと、固定板120の板バネ部121は圧縮され、その厚さが小さくなるように変形するが、元の厚さに戻ろうとする。その力により、固定板120は上述の隙間にしっかりと固定される。
なお、線状体110の先端側の長さが足りない場合には、ユーザは、孔11Aから飛び出している内筒先端部132Aを後方へ押しこみ、その状態で、線状体110を先端側に伸ばせばよい。この大雑把な線状体110の長さの調整を、設置用脚30及び40の先端を盤面301に当接させる前に行なって良いのは当然である。
また、線状体110の先端の固定に固定板120を用いないのであれば、ループ111からフック123を抜くことにより線状体110から固定板120を外して、例えばループ111を利用する等して線状体110の先端を、遊技機300の一部等に固定することも可能である。そのとき、固定板120を外したループ111に、他の金具等を接続して、線状体110の先端の遊技機300等の一部への固定に役立てることももちろんできる。
次いで、ユーザは、大ループ112に指を入れるなどして、線状体110を後方へ引っ張り、線状体110の傾斜計本体11よりも先端側の長さを縮める。線状体110の傾斜計本体11よりも先端側の長さは、設置用脚30から固定物600へかかる力がほんの僅かとなるか、少なくとも固定物600が盤面301から離脱しない程度の長さとする。
ここから先は、釘302を用いて盤面301の傾斜角を測定する場合と同じである。設置用脚30及び40が盤面301に当接する2点によって、傾斜計10の仮想軸の傾斜角が決定される。この場合も、作業者は、傾斜計10が示す盤面301の傾斜角を見ながら、傾斜計10から手を離した状態で、盤面301の傾斜角の調整など、必要な作業を行うことができる。
【0042】
<変形例>
上述の盤面301の傾斜角の測定方法に用いられた傾斜計10は、線状体110を備えていたが、変形例で用いられる傾斜計10は、線状体110が不要である。線状体110がない変形例の傾斜計10においては、筒部材130も当然不要である。
また、この変形例では、設置用脚30の下面、より詳細には、可動体31の下面に、滑り部31Aが設けられている(
図15)。滑り部31Aは、その表面が滑らかであり、後述する板体との間の摩擦係数が小さくなる素材でできている。その素材は例えば、金属や樹脂である。滑り部31Aはその下方が球状に面取りされており、後述の板体の上面と点接触することで、板体の上面を更に滑り易くされている。
なお、滑り部31Aは必ずしも可動体31の下面にある必要はなく、構造的に許されるのであれば設置用脚30の下面に直接取付けられていても構わない。また、滑り部31Aは、板体と点接触するような形状に限られず、例えば、その長さ方向の一辺が板体と接触する三角柱形状のような、板体と線接触するような形状とされていても構わない。
なお、この変形例の傾斜計10は、線状体110が存在しないことにより、その重さが後述する固定物600にそのままかかるような用い方をされることがあるので、傾斜計本体11や設置用脚30、40を樹脂製にするなどの、できる限りの軽量化がなされているのが好ましい。
【0043】
変形例による傾斜計10の使用方法について説明する。
変形例による傾斜計10は、上述の傾斜計10の場合と同様に、釘302を用いて遊技機300の盤面301の傾斜角を測定する場合と、釘を用いずに遊技機300の盤面301の傾斜角を測定する場合の2通りの使用方法がある。
【0044】
釘302を用いて盤面301の傾斜角を測定する方法は、上述の場合と変わらない。
【0045】
釘302を用いずに盤面301の傾斜角を測定するにあたっては、上述の場合と同様に、設置用脚30の係止を行いたい部分に、固定物600を付着する。
この変形例の傾斜計10と組合せて用いられる固定物600は、粘着性を有するゴム601と、板体602とからなる。ゴム601は、固定物600の盤面301に対する固定をなすためのものである。板体602は、その上面と滑り部31Aとの間の摩擦係数を小さくする機能を持つ。板体602の上面はそれが可能なように滑らかな平面とされている。板体602は、また、滑り部31Aとの間の摩擦係数が小さくなるような素材、例えば金属や樹脂でできている。板体602の上面は、盤面301に向かって下る傾斜が与えられている。ゴム601は板体602にそのような傾斜を与えられるような形状となっている。
次いで、傾斜計10の設置用脚30の下面、より詳細には、可動部31に設けられた滑り部31Aの下面を、固定物600の板体602の上面に載せ傾斜計10の重さをかける。そうすると、板体602の上面は盤面301に向かって下る傾斜が与えられており、且つ板体602の上面と滑り部31Aとの間の摩擦係数は小さいから、滑り部31Aは板体602の上を、盤面301に向かって、設置用脚30の先端が盤面301に当接するまで滑っていく。これにより、ユーザが、傾斜計10を盤面301に向かって押し込むような力を傾斜計10に特にかけることなく、設置用脚30の先端が盤面301に当接される。
ここから先は、釘302を用いて盤面301の傾斜角を測定する場合と同じである。設置用脚30及び40が盤面301に当接する2点によって、傾斜計10の仮想軸の傾斜角が決定される。この場合も、作業者は、傾斜計10が示す盤面301の傾斜角を見ながら、傾斜計10から手を離した状態で、盤面301の傾斜角の調整など、必要な作業を行うことができる。