(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095944
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】泡組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 3/22 20060101AFI20170306BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20170306BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20170306BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20170306BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20170306BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
C11D3/22
A61Q5/02
A61Q19/10
A61Q5/10
A61K8/73
A61K8/02
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-241061(P2012-241061)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2013-237830(P2013-237830A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2015年10月8日
(31)【優先権主張番号】特願2011-289819(P2011-289819)
(32)【優先日】2011年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-93414(P2012-93414)
(32)【優先日】2012年4月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】横地 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】前田 和寛
(72)【発明者】
【氏名】細見 知広
【審査官】
古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−509462(JP,A)
【文献】
特表2010−513603(JP,A)
【文献】
特表2010−513692(JP,A)
【文献】
特開2009−040968(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/010368(WO,A1)
【文献】
特開2010−004827(JP,A)
【文献】
特開2010−004826(JP,A)
【文献】
特開2009−291081(JP,A)
【文献】
特開2010−018645(JP,A)
【文献】
特開2008−037841(JP,A)
【文献】
特開2003−073229(JP,A)
【文献】
発酵セルロース製剤”サンアーティスト”,三栄源エフ・エフ・アイ株式会社,2016年 5月11日,URL,http://www.saneigenffi.co.jp/closeup/san.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 3/22
A61K 8/02
A61K 8/73
A61Q 5/02
A61Q 5/10
A61Q 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵セルロースを0.03〜0.6質量%含有することを特徴とする、洗浄剤又はヘアカラーより生じた泡の安定性向上方法。
【請求項2】
洗浄剤が、頭髪用シャンプー、ボディシャンプー、ボディソープ、ハンドソープ、洗顔料、浴室用洗浄剤、換気扇用洗浄剤、ガラス用洗浄剤、台所用洗浄剤、又は洗濯用洗浄剤のいずれか一種である請求項1に記載の泡の安定性向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生成した泡の安定性が向上し、壁面等へ吹き付けた際のたれ落ちが抑制された泡組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
泡を発生してその使用目的に供されるもの(以下、泡組成物という)の例として、洗浄剤が例示できる。洗浄剤中には、洗浄の対象物に適した溶媒や多様な成分が混合されており、使用時の利便性も考慮された剤形が取られている。特に近年では、石鹸をはじめ洗濯洗剤や柔軟剤、台所用の洗剤など、そのほとんどが液状品となる傾向にある。
【0003】
洗浄剤中には、キレート剤や分散剤、界面活性剤、石けん、多糖類等が添加されている。洗浄剤の主目的である対象物から汚れを落とす作用は、主に界面活性剤によるものである。界面活性剤は汚れに吸着し、対象物から汚れを分離させることにより、対象物の洗浄が行われる。洗浄時には、洗浄剤中に含まれる成分により泡が生じるが、この泡は分離した汚れが対象物に再度付着することを防止するほか、汚れ成分への界面活性剤等の接触時間を長くするといった効果が見込まれる。
【0004】
泡の起泡性を向上する方法として、グリセロ糖脂質界面活性剤を使用する方法が開示されている(特許文献1)が、界面活性剤の多用は環境への影響もあることから、代替技術が求められている。
【0005】
また、泡組成物に含まれている界面活性剤等の作用により泡が生じるが、この泡は、分離した汚れが再度対象物に付着することを防止するほか、汚れ成分へ界面活性剤等が接触する時間を長くするといった効果が見込まれる。かかる接触時間を長くするために、当該泡が流れ落ちることなく、生じた箇所に留まる性質が求められる。
【0006】
泡の付着性を向上させるために、泡のたれ落ちを抑制する方法があげられる。かかる方法として、特定のセルロース、界面活性剤、水を含有することを特徴とするスプレー用液体洗浄剤組成物(特許文献2)、特定のセルロース微粒子と液状分散体を含有する組成物をスプレー噴霧装置に充填したスプレー剤(特許文献3)が開示されている。
【0007】
しかし、これらの技術で使用できる成分は特定のものに限定されており、その実施には困難が生じていた。また、特開平9−143498号公報、特開2011−225763号公報等に洗浄剤のたれ落ちを抑制する方法が開示されているが、これらはいずれも「液体」のたれ落ちを抑制するものであり、本願発明のように「泡」のたれ落ちを実現するものでも示唆するものでもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−252494号公報
【特許文献2】特開2011−57747号公報
【特許文献3】特開2003−73229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、界面活性剤を多用せずに起泡した泡の保持力、泡のきめの細かさといった泡の安定性を向上すること、及び洗浄の対象面に吹き付けて生じた泡のたれ落ちを抑制することによる洗浄効果の増強を目的とするものである。
【0010】
本発明にかかる技術を利用できる泡組成物としては頭髪用シャンプー、ボディーシャンプー、ボディソープ、ハンドソープ又は洗顔料といった身体用の洗浄剤や住宅用の洗浄剤だけでなく、頭髪用の着色料(ヘアカラー)や化粧品、シェービングフォーム、入浴用発泡剤(バブルバス)、除毛剤、育毛剤、殺虫剤、漂白剤、消火剤、観賞魚用餌、園芸用肥料、自動車のタイヤや革靴用の艶出し剤等が例示できる。これらはいずれも泡を生じることによってその使用目的を果たす点で共通しており、洗浄剤と同様に泡の保持力の向上、泡のきめ細かさの向上は、その使用感の改善に繋がる。また、生じた泡のたれ落ちを抑制することは、例えば洗浄剤であれば、汚れのある部分に泡、即ち界面活性剤が長時間留まるため、より界面活性剤による洗浄効果を期待することができ、除毛剤や育毛剤であれば、泡組成物に含まれる薬効成分等の効果を十分に享受できるため、泡の起泡性と同様、より向上する方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行い、洗浄剤等の泡組成物使用時に生じる泡の安定性、即ち泡の保持力の向上、泡のきめの細かさの向上といった泡の安定性の向上、及び生じた泡のたれ落ちの抑制といった効果の向上を図るために、自然分解される発酵セルロースを泡組成物へ添加することにより、従来使用されている泡組成物の安定性や洗浄効果の効率を増強し、かつ、自然環境への影響も抑えることができるとの知見に至り、本発明を完成した。
【0012】
即ち本発明は、下記の態様を有するものである;
項1
発酵セルロースを0.03〜0.6質量%含有することを特徴とする泡の安定性が向上した泡組成物。
項2
洗浄剤又はヘアカラーのいずれかである項1記載の泡の安定性が向上した泡組成物。
項3
洗浄剤が、頭髪用シャンプー、ボディーシャンプー、ボディソープ、ハンドソープ、洗顔料、浴室用洗浄剤、換気扇用洗浄剤、ガラス用洗浄剤、台所用洗浄剤、又は洗濯用洗浄剤のいずれか一種である項2に記載の泡組成物。
項4
泡の安定性が、泡の保持時間の延長、泡のきめ細かさの向上又は泡のたれ落ち抑制のいずれかである項1又は2に記載の泡組成物。
項5
発酵セルロースを0.03〜0.6質量%含有することを特徴とする、泡組成物の泡の安定性向上方法。
項6
洗浄剤又はヘアカラーのいずれかである項5記載の泡組成物の泡の安定性向上方法。
項7
洗浄剤が、頭髪用シャンプー、ボディーシャンプー、ボディソープ、ハンドソープ、洗顔料、浴室用洗浄剤、換気扇用洗浄剤、ガラス用洗浄剤、台所用洗浄剤、又は洗濯用洗浄剤のいずれか一種である項6に記載の泡組成物の泡の安定性向上方法。
項8
泡の安定性が、泡の保持時間の延長、泡のきめ細かさの向上又は泡のたれ落ち抑制のいずれかである項5乃至7に記載の泡組成物の泡の安定性向上方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、発酵セルロースを0.03〜0.6質量%含有することにより、泡の安定性の向上、及び泡のたれ落ちが抑制された泡組成物に関する。
【0014】
本発明で用いられる発酵セルロースは、セルロース生産菌が生産するセルロースであれば特に限定されない。通常、セルロース生産菌を既知の方法、例えば特開昭61−212295号公報、特開平3−157402号公報、特開平9−121787号公報に記載される方法に従って培養し、得られる発酵セルロースを所望に応じて適宜精製することによって製造することができる。
【0015】
また、本発明の発酵セルロースは、特開平9−121787号公報に記載される方法に従い、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)、キサンタンガム、グァーガム等の高分子物質の一種もしくは二種以上と複合化していることが望ましい。簡便には、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社のサンアーティスト(商標)PXシリーズ、同PGシリーズを利用することができる。
【0016】
発酵セルロースの添加量は、泡組成物中に分散させる構成成分の種類や添加量、固形物においてはその比重に応じて、適宜調節することができるが、一般には泡組成物中に0.03〜0.6質量%、好ましくは0.03〜0.3質量%である。発酵セルロースの添加量が0.03質量%以下になると、好ましい泡の安定化やたれ落ち抑制の効果が得られず、0.6質量%以上を添加すると、粘度が高くなり使用の際の取り扱いが困難になる場合がある。
【0017】
さらに詳細には、泡組成物の安定性、即ち保持力やきめの細かさを特に向上させる場合には、発酵セルロースの添加量は、泡組成物中0.03〜0.6質量%、好ましくは0.03〜0.3質量%の範囲内とするのがよい。一方、生じた泡のたれ落ちを抑制することに着目し、その効果を発揮させる場合には、泡組成物中発酵セルロースを0.03〜0.6質量%、好ましくは0.06〜0.3質量%添加するのがよい。
【0018】
発酵セルロースを泡組成物に添加する方法は、調製する泡組成物の一原材料として発酵セルロースを添加すれば良く、その添加時期や温度条件等に特に制限はないため、通常の製造ラインを利用できるメリットがある。
【0019】
本発明に係る泡組成物は、発酵セルロースを必須成分とする以外は、従来使用されている各種成分を制限無く利用することができる。例えば、洗浄剤であれば固形石けん、粉末石けん、複合石けん等の石けん類;アニオン界面活性剤(直鎖アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、α−オレフィンスルフォン酸塩、エーテル硫酸エステル塩、アルキルフェニルポリエチレングリコールエーテル、アルキルポリエチレングリコールエーテル等)、ノニオン界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルポリグルコシド等)、カチオン界面活性剤(ジ長鎖アルキル型第四級アンモニウム塩、モノ長鎖アルキル第四級アンモニウム塩等)、両性界面活性剤(アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン等)等の界面活性剤;無機ビルダー(各種ゼオライト、非晶質アルミノ珪酸塩、ピロリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、結晶性珪酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム等)、有機ビルダー(アミノカルボン酸塩、ヒドロキシアミノカルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、シクロカルボン酸塩、エーテルカルボン酸塩、有機カルボン酸塩ポリマー等)等の洗浄力補助剤;炭酸塩、珪酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、アミン類等のアルカリ剤;プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ等の酵素剤;カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレングリコール等の再汚染防止剤;その他漂白剤、柔軟化剤、泡コントロール剤、蛍光増白剤、還元剤、香料、色素、抗菌剤等を配合することができる。
【0020】
ヘアカラーや自動車のタイヤ用艶出し剤に関しても、従来使用されている成分を制限なく利用することができる。
【0021】
また、発酵セルロースに加え、アラビアガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、カラヤガム、トラガントガム、ガッティガム、アルギン酸及びその塩、デンプン、ヒアルロン酸、ペクチン、ジェランガム、カラヤガム、水溶性ヘミセルロースの何れか1種以上を、本発明の効果を妨げない範囲において泡組成物に対し使用されるものを任意で組み合わせて使用することができる。
【0022】
さらに任意で、上述の洗浄成分や香り成分や酵素等を粒状のゲルにしたものや、装飾目的で添加するラメやプラスチック製のビーズを洗浄剤中に添加することも可能である。本発明では、長期間保存された場合であっても、発酵セルロースによりこれらの添加物を洗浄剤全体に均一に分散させておくことが可能である。
【0023】
ここで、洗浄剤中に添加できる香り成分や洗浄成分を含む粒状ゲルの一例を挙げる。係る粒状ゲルに添加できる香り成分としては、一般に賦香のために用いられる香気成分を制限無く利用できる。具体的には天然・合成に関わらず、レモン香料、オレンジ香料、パイン香料、サンダルウッド香料、ラベンダー香料、ゼラニウム香料、シトロネラ香料、レモングラス香料、ジャスミン香料、ライラック香料、バラ香料、ローズマリー香料、ライム香料等が挙げられ、これらの1種以上を使用することができる。
【0024】
また、粒状ゲル中に先述の洗浄剤に添加できる1種以上の成分を添加することで、一つの洗浄剤をもって異なる複数の効果を洗浄力に付与することが可能となる。これら粒状ゲルの調製方法は、公知の技術によることができる。
【0025】
本発明で対象となる泡組成物は、洗浄剤のほかヘアカラーや自動車のタイヤ用艶出し剤といった、泡を生じることによってその使用目的に供されるものを制限なく例示することができる。好ましくは、身体用洗浄剤や住宅用の洗浄剤であって、具体的には、頭髪用及びボディ用のシャンプー、洗顔料やハンドソープといった身体表面の洗浄に用いるものや、住宅の床や壁、窓、浴槽等の浴室、洗面所、トイレに使用する洗浄剤の他、多量の泡を保持させることによって洗浄効果を発揮するもの、或いは白髪染めや毛染めに用いるヘアカラー、化粧品、シェービングフォーム、入浴用発泡剤(バブルバス)、除毛剤、育毛剤、殺虫剤、漂白剤、消火剤、観賞魚用餌、園芸用肥料、自動車のタイヤや革靴用の艶出し剤等が例示できる。また、上記洗浄剤以外であっても、多くの泡を利用して用いられる泡組成物であれば、本発明の技術を用いることができる。
【0026】
多くのきめ細かな泡が起ち、その泡が消えずに保持され長時間留まることにより、対象物の汚れている部分に泡が十分に接することとなる。その結果、洗浄剤中に含まれる界面活性剤や抗菌・殺菌効果を有する成分が汚れ部分に長時間触れることとなり、従来のような洗剤の粘度を高くすることなく、その効果が最大限発揮される。これにより、少ない洗浄剤の量であっても十分な洗浄効果を享受することが可能となり、洗剤残りや石鹸残りを改善することが可能となる。また、洗浄剤が泡と共に対象物にまとわり付くため、液状の洗浄剤よりも使い勝手がよく、液状の洗浄剤では流れ落ちて使用できないような、角度のある面や複雑な形状のものに対しても利用可能である。
【0027】
さらには、ヘアカラーの場合はきめの細かい泡がたれ落ちずに頭髪に満遍なく行き渡り、均一に頭髪と接触することとなる。除毛剤や育毛剤であれば、頭皮表面への付着時間の延長が見込め、製剤中の有効成分の効果向上を見込むことができる。
【0028】
消火剤は泡により火元を広範囲にわたり長時間被覆することで、酸素の供給を遮断し、鎮火に至るものである。観賞魚用の餌を泡状とすることで、水面に浮かぶ泡を観賞魚が摂取し、給餌の容易さとともに見た目の奇抜さから視認性が向上する。園芸用の肥料を泡状とすることで、肥料成分が長時間に亘り徐々にしみ込む効果が期待できる。外観は泡なので、美観の点においても貢献すると考えられる。さらに自動車のタイヤ用艶出し剤であれば、タイヤ表面にきめ細かい泡が均一に長時間付着するため、塗りムラのないタイヤの艶出しが可能となる。
【実施例】
【0029】
以下に、本発明を実施例にて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、下記処方中の単位は特に言及しない限り「%」は「質量%」であることを意味する。文中の「※」は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを示し、「*」は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の製品であることを意味する。
【0030】
実験例1
次の試験により、発酵セルロースを用いることによる気泡の保持力向上効果を確認した。
【0031】
<試験方法>
1 下記表1に示す増粘多糖類を市販の浴槽洗浄剤(ライオン社製 ルック)に添加して、ミルサー法にて起泡させた。
2 起泡させた泡を200mLメスシリンダーに充填し、充填直後(0分)、5分後、10分後、20分後及び30分後の泡の量を測定した。測定した結果を、表2に示す。
【0032】
・ミルサー法 条件
使用機器 : TML24ミル&ミキサー(TESCOM社製)
容量 : 180mLカップを使用
試験溶液量: 50g
攪拌時間 : 10秒
溶液温度 : 25℃
【0033】
各試験試料に使用した増粘多糖類と添加量は、表1の通り。調製方法については、以下に示す。
【表1】
【0034】
<増粘多糖類>
・発酵セルロース 0.06%含有洗浄剤(以下、試1とする)
発酵セルロース製剤(サンアーティスト※H−PX* 発酵セルロース含量60%)5gを、イオン交換水495gの入った1Lジョッキに攪拌(プロペラ攪拌1500rpm、4枚羽根使用)しながら投入し、10分間攪拌した。次いでホモミキサーにて10,000rpm、40分間攪拌し、発酵セルロースを活性化させた。活性化させた発酵セルロース0.6%水溶液10gを200mLビーカーにとり、攪拌(プロペラ攪拌1000rpm、3枚羽根使用)しながら洗剤溶液を90g投入し、5分間攪拌して得た。
・CMC(カルボキシメチルセルロース) 0.4%含有洗浄剤(以下、試2とする)
洗剤溶液90gにイオン交換水9.6gを加え、均一になるように攪拌した。次いでCMC(セロゲンF−SB、第一工業製薬社)0.4gを室温にて投入し、10分間攪拌(プロペラ攪拌1000rpm、3枚羽根使用)溶解して得た。
・キサンタンガム 0.04%含有洗浄剤(以下、試3とする)
キサンタンガム(サンエース※*)1gを、イオン交換水99gの入った200mLビーカーに攪拌(プロペラ攪拌1500rpm、3枚羽根使用)しながら投入し、10分間攪拌し1%キサンタンガム水溶液を得た。洗剤溶液90gにイオン交換水6gを加え、均一になるように攪拌した。次いで1%キサンタンガム溶液4gを室温にて投入し、5分間攪拌(プロペラ攪拌1000rpm、3枚羽根使用)溶解して得た。
・HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース) 0.4%含有洗浄剤(以下、試4とする)
洗浄剤溶液90gにイオン交換水9.6gを加え、均一になるように攪拌した。次いでHPMC(メトローズ65SH−4000、信越化学工業社)0.4gを室温にて投入し、10分間攪拌(プロペラ攪拌1000rpm、3枚羽根使用)溶解して得た。
【0035】
【表2】
【0036】
表2の結果より、発酵セルロース(試1)を添加し起泡した浴槽洗浄剤は、起泡直後の泡の量は他のものと遜色ないものの、時間が経過することによりその保持力が際立っていることが明らかとなった。泡の保持力が強いと、例えば浴槽内に生じたカビ等の汚れに対し、長時間洗剤が留まることとなるので、洗浄剤としての効果を十分に発揮することが期待される。
【0037】
次いで、時間の経過とともに生じる液層の量について確認した。結果を表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
表3からは、多糖類を添加することによって、起泡後の液層の発生が遅くなる、特に発酵セルロース(試1)を添加したものが顕著に遅いことが明らかとなった。液層が生じると、浴槽等の壁面に洗浄剤を噴きつけた際、液層の発生により泡がより滑り落ちやすくなることを意味している。従って、液層の発生は遅いほうが洗浄剤の付着性には都合が良いこととなり、発酵セルロース(試1)を添加した洗浄剤はこの点についても優れていることが判明した。
【0040】
さらに、泡の保持率を求めた。結果を表4に示す。ここで泡の保持率とは、起泡させた直後の泡の量を100%とし、泡の量(液層は除く)が経時的にどれくらい残存しているかを示すものとする。
【0041】
【表4】
【0042】
表4の結果より、発酵セルロース(試1)を添加したものは30分経過後でも、発生した泡の7割以上が保持されていた。これは表1の起泡量ともリンクする結果であった。そして30分経過すると急激に泡の保持率が減少することから、実際の使用に際し、泡が残るといった問題は生じにくいものと推測される。
【0043】
実験例2
実験例1で用いた4種類の多糖類(表1参照)を、下記処方の洗顔料に添加し、起泡後の泡の状態を顕微鏡にて確認した。観察時の写真を
図1として示す。
【0044】
<洗顔料(泡タイプ洗顔料) 処方>
ココイルグリシンナトリウム30%溶液 16.7部
ラウロアンホ酢酸ナトリウム30%溶液 10 部
ポリオクタニウム−39 0.1部
1.3−ブチレングリコール 5 部
グリセリン 5 部
メチルパラベン 0.1部
水酸化ナトリウム 適量
水にて 合計100部
【0045】
<洗顔料の調製方法>
ココイルグリシンナトリウム30%溶液、ラウロアンホ酢酸ナトリウム30%溶液、ポリオクタニウム−39、1.3−ブチレングリコール、グリセリン、メチルパラベンを60℃にて攪拌溶解した。次いで、得られた溶液を室温まで冷却し、水酸化ナトリウムにてpH8.3に調整し、洗顔料とした。
【0046】
<測定方法>
1 各多糖類を上記で調製した洗顔料に添加し、ミルサー法(条件は実験例1と同じ)を用いて10秒間起泡させた。
2 起泡させた泡の少量をスライドグラスにのせ、高さ0.15mmのスリットで空間を作り、カバーガラスをかぶせた。
3 顕微鏡(倍率 150)にて起泡5分後の泡の状態を撮影した(
図1参照)。
【0047】
<結果>
図1に示す写真の通り、発酵セルロース(試1)及びHPMC(試4)を添加した洗顔剤では、気泡が他のものよりも細かくなっていた。
【0048】
実験例3
実験例2と同様に、市販のハンドソープ(花王:ビオレ)に上記多糖類を添加し、同様の操作を行い気泡の状態を確認した。撮影した写真を
図2に示す。
【0049】
<結果>
図2に示す写真の通り、こちらの実験でも発酵セルロース(試1)及びHPMC(試4)を添加したハンドソープにおいて、顕著に細かい気泡が得られていた。特に発酵セルロース(試1)を使用したハンドソープでは、気泡時の泡の量もHPMC(試4)のそれより多くなっており、より使い勝手が向上していた。
【0050】
実験例4
市販されている住宅用洗浄剤(花王:マジックリン)に対し、実施例1と同様の操作を行ってメスシリンダーへ充填した気泡の評価(泡の量、液層量、保持率)を行った。結果を表5乃至7に示す。
【0051】
【表5】
【0052】
表5より、発酵セルロース(試1)を添加した室内洗浄剤に関し、泡が長時間残ることがわかった。住宅用洗浄剤は、台所周り(換気扇やコンロ周辺)での使用が目的とされており、このように泡の量が多くまた長時間泡が残ることで、含まれる界面活性剤等の洗浄成分の効果をより発揮することが可能となる。具体的には、漬け置き洗いを泡で代替することが可能となる。
【0053】
【表6】
【0054】
表6からは、発酵セルロース(試1)を添加したものが、他のものより液層の発生が遅いことがわかった。上述の通り、液層の発生が遅いと、泡が液層とともに流れ落ちることがないため、より一層汚れ部分に泡が留まることとなり、好ましい洗浄効果の発揮が期待される。30分経過後の液層の発生量は、何も添加しないブランク品に近くなるため、実際の使用時における使い勝手に差は生じないと考えられる。
【0055】
【表7】
【0056】
表7より、発酵セルロース(試1)を添加したものでは、泡の保持率は顕著に向上していることがわかった。泡の保持率が高いことは、表5の結果とも相関しており、泡が長時間汚れを有する部分に留まることが期待され、より効果的に洗浄作用を発揮できると考えられる。
【0057】
実験例5
発酵セルロースを各種洗浄剤等に添加することにより、泡の保持力が向上することを確認する実験を行った。
【0058】
下記に記載の市販洗浄剤を用い、実験例1と同様の方法にて発酵セルロース0.06%含有洗浄剤とCMC0.4%含有洗浄剤を調製し、 実験例1と同様の操作を行い起泡させ、評価を行った。その結果を表8〜11に示す。
【0059】
市販品
・ ボディーソープ(牛乳石鹸:キューピーベビーソープ泡タイプ)
・ 洗濯用洗剤(ライオン:トップ)
・ ヘアカラーシャンプー(花王:プリティア メンズ泡カラー)
【0060】
<調製方法>
1.実験例1と同様にして発酵セルロースの0.6%水溶液を調製した。
2.1の水溶液又は清水を200mLビーカーに10g測り取り、洗浄剤の市販品を90g加え、5分間攪拌(プロペラ攪拌、500rpm、3枚羽根使用)した。
3.2で得た液をミルサー法にて起泡させた。
ミルサー法条件
使用機器 :TML24ミル&ミキサー(TESCOM社)
容量 :180mLカップ
試験溶液量 :50g
攪拌時間 :10秒
溶液温度 :25℃
4.起泡させた3の溶液を全量200mLのメスシリンダーに充填し、0、5、10、20、30分後の泡の量、液層の量を測定し、また、5、30分後の泡のきめ細かさを目視で観察した。
【0061】
<評価方法>
泡の保持率:起泡させた直後の泡の量を100%とし、泡の量(液層は除く)の経時的な保持率を示す。
泡のきめ細かさ:泡のきめ細かさを目視にて5段階評価する。きめの細かいものを5、粗いものを1とする。
【0062】
以下に各種洗浄剤等に発酵セルロース(試1)又はCMC(試2)を添加した時の泡の量(表8)、液層量(表9)、泡の保持率(表10)及び泡のきめの細かさ(表11)についての評価結果を示す。
【0063】
【表8】
【0064】
【表9】
【0065】
【表10】
【0066】
【表11】
【0067】
以上の結果より、発酵セルロース(試1)を洗浄剤等に添加することにより、その起泡時の泡の量は増加し、経時的に生じる液層の量は押さえ、その結果、泡の保持率は向上することが明らかとなった。また、生じた泡のきめの細かさも向上しており、洗浄剤等の使用感向上に大いに資するものであることが明らかとなった。
【0068】
個別に確認を行うと、ボディソープに発酵セルロース(試1)を添加すると、泡の量は無添加またはCMC(試2)を添加したものよりも有意に増加した。そして泡がはじけて生じる液層の量も、これに応じて抑えられており、さらに泡の保持率も高いことから、身体表面に泡を長く留まらせる効果が向上したものと推測される。さらに、生じた泡のきめも顕著に細かくなっており、滑らかな使用感を提供することができるものとなった。
【0069】
次いで洗濯用洗剤に発酵セルロース(試1)を添加すると、泡の量はブランク及びCMC(試2)添加品よりもやや多い程度であったが、液層の量は顕著に低く、さらに泡の保持率も高いことから、これは添加した洗剤のほとんどが泡となり洗濯に利用されていることと推測される。即ち、使用する洗剤を余すことなく利用できることとなるため、洗剤量の低減等を見込むことができる。泡のきめの細かさはブランク品及びCMC(試2)添加品と同等で非常にきめ細かなものであることからも、発酵セルロース(試1)添加による優位性が認められた。
【0070】
ヘアカラーについては、発酵セルロース(試1)添加により生じる泡の量はブランク品と大差ないが、液層が生じず、泡の保持率も高くなっていた。これは、ヘアカラー使用時に問題となる「液ダレ」が生じないことを意味する。また、発酵セルロース(試1)添加品とブランク品と泡のきめの細かさは同等であるため、髪へのなじみは既存品と遜色ないものの、液ダレが生じないことから格段にその使用感は向上したものとなった。
【0071】
実験例6 風呂用洗浄剤
次の処方に基づき風呂用洗浄剤を調製し、スプレー性(泡の状態、広がり具合)、付着滞留性を比較した。増粘剤の添加量は表12に示す。発酵セルロースの添加量にある括弧書きの数値は、発酵セルロースとしての添加量を示す。得られた風呂用洗浄剤によるスプレー性及び付着滞留性の評価結果を、表13に示す。
【0072】
<処方>
1 エチレンジアミン四酢酸 3
2 クエン酸 3
3 アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム 2
4 ドデシルポリオキシエチレンエーテル 3
5 エチルカルビトール 5
6 増粘剤 実施例参照
水にて合計 100
【0073】
<調製方法>
1) 水に6を加え、10分間攪拌し溶解させた。溶解温度は、増粘剤によって、室温〜80℃で適宜選択することができる。
2) 発酵セルロースを使用する実施例1及び2については、発酵セルロース溶解後にホモゲナイザーにて150kgf/cm
2で処理を行った。
3) 水に処方1及び2を溶解し、pHを7.0に調整した。
4) 1)、2)で得た溶液、3)の溶液及び処方中の3〜5を添加攪拌し、試験に供する風呂用洗浄剤とした。
【表12】
【0074】
<評価基準>
スプレー性に関しては、トリガー式スプレー容器(泡を噴射するタイプ)を用いて、塗布面から15cm離れた位置から噴射し、塗布面に付着した泡の状態を下記の基準によって評価した。結果を表13に示す。
◎ … きめ細かな泡の状態で付着した
○ … 泡の状態で付着するが、一部に大きな泡が生じていた
△ … 噴射し塗布面に付着する泡の範囲が狭くなり、また泡も荒くムラがあった
× … スプレー不可、ノズルからたれ落ちが生じた
【0075】
付着滞留性については、スプレー容器(泡を噴射するタイプ)を用いて、垂直に立てかけたアクリルパネルに洗浄剤を噴射し、壁面に付着した泡もしくは洗剤溶液がアクリルパネルの下端までたれ落ちるまでの時間を計測した。計測は、試料温度20℃で、アクリルパネルから15cm離れた位置から、アクリルパネルの下端から22cmの点が噴霧の中心となるようにスプレー容器で噴霧を行った。たれ落ちるまでの時間の計測は3回行い、その平均を算出した。計測したたれ落ちの所要時間等を表13に示す。
◎ … ブランクより大幅に滞留時間が延長 (ブランクの滞留時間の3倍以上)
○ … ブランクより滞留時間が延長 (ブランクの滞留時間の2〜3倍)
△ … ブランクと同等 (ブランクの滞留時間の1〜2倍)
× … ブランクよりも劣化 (ブランクの滞留時間より短時間)
【表13】
<結果>
表13に示した結果より、発酵セルロースを使用した実施例1及び2の洗浄剤から生じる泡は、付着面に対しきめ細かな泡が適度に広がって付着し、他品に比べて顕著な付着滞留性を有していた。
一方、発酵セルロース以外の多糖類を使用した比較例品より生じる泡は、きめの細かさに欠け(比較例2、3、5、7)、或いは十分な付着滞留性を示さなかった(比較例2〜7、9)。比較例1及び8では、一部にゲルを生じていたため、噴出時にスプレーのノズルが詰まる場合や、噴出が不十分でノズルから洗浄液が垂れることがあり、十分な噴出を得ることができず上記評価をすることができなかった。
【0076】
実験例7 換気扇用洗浄剤
換気扇用洗浄剤において、発酵セルロースを用いることによる気泡の保持力向上及びたれ落ち抑制の効果を確認した。
【0077】
<換気扇用洗浄剤の処方>
3−メチル−3メトキシブタノール 5
ポリオキシエチレン(付加モル数14モル)トリデシルエーテル 3
モノエタノールアミン 4
発酵セルロース 0.03または0.3
水にて合計 100
【0078】
<換気扇用洗浄剤の調製方法(ブランク品)>
イオン交換水88gに3−メチル−3メトキシブタノール、ポリオキシエチレン(付加モル数14モル)トリデシルエーテル、モノエタノールアミンを混合したものを加えて5分間攪拌し、換気扇用洗浄剤とした。
【0079】
<発酵セルロース0.03%添加品の調製方法>
試1と同様に活性化した0.6%発酵セルロース水溶液を調製し、その5gを計りとり、そこにイオン交換水83gを加え攪拌した。さらに攪拌しながら3−メチル−3メトキシブタノール、ポリオキシエチレン(付加モル数14モル)トリデシルエーテル、モノエタノールアミンを混合したものを加えて、5分間攪拌して換気扇用洗浄剤とした。
【0080】
<発酵セルロース0.3%添加品の調製方法>
試1と同様に活性化した0.6%発酵セルロース水溶液を調製し、その50gを計りとり、そこにイオン交換水38gを加え攪拌した。さらに攪拌しながら3−メチル−3メトキシブタノール、ポリオキシエチレン(付加モル数14モル)トリデシルエーテル、モノエタノールアミンを混合したものを加えて、5分間攪拌して換気扇用洗浄剤とした。
【0081】
<評価方法>
実施例1と同様の方法・評価基準にて、気泡の保持力向上効果(泡の量(表14)、液層量(表15)、保持率(表16))の評価を行った。また、トリガー式スプレー容器に各洗浄剤を充填し、垂直に立てたアクリルパネルに向かって10cm離れたところから噴霧し、生じた泡及び液がアクリルパネルの下端までたれ落ちる時間を計測することによって、泡のたれ落ち抑制効果を評価した。尚、噴霧の中心はアクリルパネルの下端から22cmとし、下端までたれ落ちるのに要する時間を3回計測し、その平均値を算出した。結果を表17に示す。
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【0082】
表14〜17の結果より、換気扇用洗浄剤に発酵セルロースを添加することにより、泡持ちがよく、泡のたれ落ちが抑制された洗浄剤となることが明らかとなった。このことから、発酵セルロースを添加した換気扇用洗浄剤を換気扇に噴霧した場合、換気扇に泡が長時間付着し、十分な洗浄効果が得られることが期待できることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【
図1】実験例2における泡の拡大写真と起泡時の泡の量
【
図2】実験例3における泡の拡大写真と起泡時の泡の量