(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095959
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】給水予熱装置を持ったボイラ
(51)【国際特許分類】
F22D 1/14 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
F22D1/14
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-258079(P2012-258079)
(22)【出願日】2012年11月27日
(65)【公開番号】特開2014-105908(P2014-105908A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(72)【発明者】
【氏名】高島 博史
(72)【発明者】
【氏名】黒木 茂
【審査官】
杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−236207(JP,A)
【文献】
特開昭57−023798(JP,A)
【文献】
特開昭49−057206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22D 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水ポンプを間欠運転することで給水を行っているボイラであって、ボイラからの燃焼排ガスを通す排ガス通路内にボイラへの給水を通す水管を設け、燃焼排ガスによって水管を加熱することでボイラへの給水を予熱するようにしている給水予熱装置を持ったボイラにおいて、給水予熱装置での水管入口側に入口側逆止弁、水管出口側に出口側逆止弁を設け、前記2つの逆止弁間に給水予熱装置での水圧を検出する圧力検出装置を設けておき、ボイラ運転中の給水ポンプ停止により前記2つの逆止弁間が一定の水圧で保持されている時に、前記圧力検出装置にて検出するボイラ給水の水圧が所定の値より低くなった場合、給水予熱装置に水漏れが発生したとの判定を行うものであることを特徴とする給水予熱装置を持ったボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラから排出している燃焼排ガスの熱を利用して、ボイラ給水の予熱を行う給水予熱装置を持ったボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2005−61712号公報にもあるように、燃焼装置と伝熱管を持ち、燃焼装置によって発生させた熱で伝熱管内を流れるボイラ水を加熱するボイラがある。このようなボイラでは、ボイラで熱を吸収した後の燃焼排ガスを通す排ガス通路に給水予熱装置を設け、燃焼排ガスによってボイラ給水を予熱することにより、ボイラの効率を向上させることが広く行われている。給水予熱装置では、排ガス通路内の燃焼排ガスと、排ガス通路内に設けた水管内を流れるボイラ給水との間で熱交換を行っており、燃焼排ガスから吸収した熱によってボイラ給水を予熱しておくことでボイラの効率は向上する。排ガスには燃焼によって発生した水分が気体の状態で含まれており、排ガスの顕熱だけでなく潜熱の回収を行うことで、より多くの熱を回収することも行われている。
【0003】
燃焼排ガスから潜熱まで回収する給水予熱装置では、燃焼排ガスが冷却されることで凝縮した凝縮水が水管表面に付着する。排ガス中に硫黄酸化物が含まれていると、水管表面に付着する凝縮水は希硫酸となり、水管を腐食する。給水予熱装置は腐食しやすい環境で使用されるものであるため、水管部に腐食による孔があく可能性があった。特開2005−61712号公報の発明では、潜熱回収部の水管は硫酸に対して腐食しにくい材質で水管を形成するようにしているが、腐食を完全になくすことはできなかった。水管に腐食が発生し、腐食孔が水管を貫通すると、腐食孔から水漏れが発生することになる。水漏れが発生すると、燃焼排ガスが有する熱の一部は漏れ水の加熱に奪われるために熱の回収効率が低下し、漏れ水量が増加すると煙突から水が飛散したり、給水予熱装置内部の排ガス流動に影響を及ぼして燃焼状態の悪化につながるという問題も出てくる。
【0004】
しかし、給水予熱装置は排ガス通路内にあり、目視による腐食孔の発見はしにくいために対応が遅れることがあった。水漏れの発見が遅れた場合、効率の悪い状態で長期にわたって運転が行われることになり、ボイラの運転に支障が出ることにもなっていた。そのため、腐食による水漏れが発生した場合には、水漏れ検出することのできるボイラが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−61712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、給水予熱装置を持ったボイラにおいて、給水予熱装置部分での水漏れの発生を検出できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、給水ポンプを間欠運転することで給水を行っているボイラであって、ボイラからの燃焼排ガスを通す排ガス通路内にボイラへの給水を通す水管を設け、燃焼排ガスによって水管を加熱することでボイラへの給水を予熱するようにしている給水予熱装置を持ったボイラにおいて、給水予熱装置での水管入口側に入口側逆止弁、水管出口側に出口側逆止弁を設け、前記2つの逆止弁間に給水予熱装置での水圧を検出する圧力検出装置を設けておき、ボイラ運転中に前記圧力検出装置にて検出するボイラ給水の水圧が所定の値より低くなった場合、給水予熱装置に水漏れが発生したとの判定を行うものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明を実施することによって、給水予熱装置に腐食が発生して水漏れが発生した場合、水漏れの発生を素早く検出することができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。
図1は本発明を実施しているボイラのフロー図である。ボイラ1では、燃焼には大量の空気が必要であり、またボイラ内部の燃焼室内では燃焼を行うことによって炉圧が上昇するために圧力の高い箇所へ空気を送り込むことが必要となる。そのため送風機を設置しておき、送風機によって圧力を高めた空気を供給する。送風機による燃焼用空気の供給は、燃焼時の炉圧を考慮した上で燃焼量に応じた最適な風量に設定しておく。近年のボイラでは、小さなスペースで高負荷燃焼を行うようになっており、単に燃焼に必要な量の空気を送ればよいというわけではなく、COやNOxなどの有害物質発生量を低く保ちながら高い効率を得るため、精密な空気供給量制御を行っている。
【0011】
ボイラでは、バーナでの燃焼によって発生した高温の燃焼ガスで伝熱管内のボイラ水を加熱し、蒸気を発生する。発生した蒸気は気水分離器で液体分を分離した後に蒸気使用箇所へ送る。ボイラ水と熱交換を行うことで温度の低下した燃焼排ガスは、燃焼室とつながっている排ガス通路2を通して排出する。しかしこの燃焼排ガスは、ボイラ給水の温度に比べると十分高温であるため、排ガス通路2の途中に給水予熱装置7を設け、燃焼排ガスによってボイラ給水の予熱を行うようにしている。給水予熱装置7には、水平方向に伸びる水管3を多数設けており、燃焼排ガスは給水予熱装置7内の水管外側を下向きに流れ、給水予熱装置7内下部でターンさせて上部より取り出す構成とする。給水予熱装置7内の水管は連結することでボイラ給水の給水経路11としておき、水管内部にボイラ給水を通す。
【0012】
給水経路11はボイラへの給水を行うものであり、給水予熱装置7の水管3は給水経路11の一部であって、給水予熱装置7より上流側の給水経路11には給水ポンプ9を設けている。そして給水経路11の給水予熱装置入口側と出口側には、それぞれ入口側逆止弁5と出口側逆止弁6を設ける。この逆止弁は、給水ポンプ9の側からボイラ1側への通水は可能としているが、逆方向への通水は遮断するものであり、ボイラ1側の圧力が給水ポンプ9側の圧力より高くなっても、ボイラ水が給水ポンプ9側へ逆流することは発生しない。
【0013】
ボイラ1への給水は、ボイラ1に水位検出装置10を設けておき、ボイラ内の水位に基づいて給水ポンプ9を作動することで行う。水位検出装置10で検出している水位が給水開始水位まで低下すると給水ポンプ9の作動を開始し、給水によって水位が上昇して給水停止水位になると給水ポンプ9の作動を停止する。
【0014】
給水予熱装置7の水管外側表面には、熱吸収用フィンを多数設ける。熱吸収用フィンは、水管の表面から周方向に設けており、熱吸収用フィンを設置することで燃焼ガスと接触する面積を大きくなるため、水管での熱吸収量を大きくすることができる。給水予熱装置内でのボイラ給水流は、給水予熱装置内下部の水管から順次通り、加熱されながら最上段の水管まで達する。燃焼排ガスによって温度の上昇したボイラ給水は、給水予熱装置から取り出されてボイラ1内へ給水される。
【0015】
ボイラから排出され、給水予熱装置7の水管設置部分に達した燃焼排ガスは、給水予熱装置の水管3と熱交換を行い、水管内を流れるボイラ給水を加熱する。燃焼排ガスは水管を加熱しながら下部へ向けて流れており、水管を加熱することで温度が徐々に低下していく。
【0016】
燃焼排ガスの温度が低下し、排ガス中の水分が凝縮すると、水管表面には凝縮水が付着する。このとき、排ガス中に硫黄酸化物が含まれていると、凝縮水は希硫酸となるため、給水予熱装置は腐食しやすい環境で使用されることになっている。水管に腐食が発生し腐食による孔が水管を貫通すると、水管内を流れるボイラ給水が腐食孔から漏れ出すことになる。運転制御装置8では、給水予熱装置7での水漏れを監視し、水漏れが発生した場合には異常の報知を行う。
【0017】
給水経路11の入口側逆止弁5と出口側逆止弁6の間には、圧力検出装置4を設けておく。圧力検出装置4は、給水予熱装置7部分におけるボイラ給水の水圧を検出するのものである。ボイラ1の運転時、ボイラ内部では圧力が高くなっているため、ボイラへの給水はボイラ内の圧力よりも高い圧力で供給する必要があり、給水ポンプ9はボイラ内よりも十分に高い圧力で吐出する。給水経路11部分におけるボイラ給水の圧力がボイラ内の圧力より高くなると、給水経路11のボイラ給水はボイラへ送られる。給水ポンプ9はボイラ内水位に基づいて発停しており、給水ポンプ9の作動状況によって給水予熱装置部分での水圧は上下する。給水ポンプ9の作動を停止すると、停止直後であって給水予熱装置7部分での水圧がボイラの圧力より高い間はボイラへの給水が行われるが、ボイラへの給水によって水圧が低下し、ボイラ内での圧力と同じかそれ以下になると、それ以上は送られないために給水の流れは止まる。
【0018】
給水予熱装置7部分の水圧は、ボイラ内の圧力に等しくなってボイラ給水の流れが止まった以降は変化しなくなる。給水予熱装置7の部分では、入口側は入口側逆止弁5によって遮蔽されるため、給水ポンプ9部分での圧力が低くなっても給水予熱装置7部分から給水ポンプ9部分へ圧力が逃げることはない。そして、ボイラ1から給水予熱装置7への圧力伝播も出口側逆止弁によって遮蔽しているために、ボイラ部分での圧力が給水予熱装置7部分に掛かることもない。そのため、ボイラ運転中の給水ポンプ停止時、圧力検出装置4で検出している圧力値は、給水ポンプ運転時の値よりもは低くなるが、ある値まで低下するとそれ以上には低下せず、一定の水圧で保持されることになる。
【0019】
しかし、給水予熱装置7部分での圧力が低下しないのは給水予熱装置7部分が閉空間である場合のものであり、水管3に腐食孔が開くことで水が漏れていると、給水予熱装置7での水圧は低下し続けることになる。圧力検出装置4で検出した圧力値は、ボイラの運転を制御している運転制御装置8へ出力しておき、運転制御装置8ではボイラ運転中には圧力検出装置4によって給水予熱装置7部分の圧力を監視する。そして圧力検出装置4で検出している水圧が所定の値よりも低下した場合には、給水予熱装置7での水漏れ発生との判定を行う。以上のようにすることにより、運転制御装置8では水漏れ発生の判定を行うことができ、給水予熱装置での水漏れ発生の異常を報知することができる。
【0020】
また、出口側逆止弁6を設け、ボイラ1の圧力が給水予熱装置7に掛からないようにすることは、水漏れ発生時に水が漏れる量を少なくする効果を得ることもできる。水管3に腐食孔が開くことで水漏れが発生すると、給水予熱装置7から漏れ出た水の分だけ給水予熱装置7部分での水圧は低下する。給水予熱装置部分では出口側逆止弁6によってボイラ側からの圧力伝播は遮断しているため、給水予熱装置7部分で圧力が低下すると水の漏れも自然に止まることになる。出口側逆止弁6を設けていない場合、給水予熱装置7にはボイラの圧力が常に掛かることになるため、給水予熱装置7で水漏れが発生していても給水予熱装置7での圧力はボイラの圧力によって高い状態が維持され、給水予熱装置7からの水漏れは止まることなく続く。しかし出口側逆止弁6を設けていると、給水予熱装置7で水漏れが発生することで給水予熱装置7部分での圧力が低くなれば、低くなったままとなるため給水予熱装置7で漏れ出る水量は減少し、いずれは止まることになる。
【0021】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 ボイラ
2 排ガス通路
3 水管
4 圧力検出装置
5 入口側逆止弁
6 出口側逆止弁
7 給水予熱装置
8 運転制御装置
9 給水ポンプ
10 水位検出装置
11 給水経路