(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0017】
以下では、オキシメチレン樹脂製機構部品、当該オキシメチレン樹脂製機構部品を形成するオキシメチレン樹脂組成物、当該オキシメチレン樹脂製機構部品の製造方法の順に説明する。
【0018】
[1.オキシメチレン樹脂製機構部品]
本実施形態に用いるオキシメチレン樹脂製機構部品は、
ポリオキシメチレン(A)100質量部と、
二種類以上の安定剤(B)0.02〜1.00質量部と、
導電性カーボン系充填剤(C)5.0〜15.0質量部と、
熱硬化性樹脂(D)0.5〜5.0質量部と、
二種類以上の硬化剤(E)0.3〜3.0質量部と、を含むオキシメチレン樹脂組成物を含み、
該オキシメチレン樹脂組成物の成形体を粉砕、成形して得られる成形体の強度が45MPa以上であり、伸度が10%以上である。
【0019】
本実施形態のオキシメチレン樹脂製機構部品は、導電性カーボン系充填剤を含むことで導電性を有し、生産性や耐久性に優れるため、導電性が必要とされる部品として使用されることができる。特には、物質の移動により発生する静電気や電気の移動により発生する電磁波が周辺に及ぼす影響を抑制するための部品として使用することが好適である。
【0020】
例えば、物質の移動により静電気が発生すると、製品が帯電して製品に周囲の塵や埃が付着したり、製品を搬送する時に搬送不良の原因となったりする。さらに、帯電量が多くなり放電時にスパークが発生した場合には、人体への不快な痛みの原因になったり、周囲に可燃性液体がある場合は火災の原因となったりする。そこで、本実施形態のオキシメチレン樹脂製機構部品を使用し、製品を除電することにより、上記問題が発生する可能性を著しく低減することができる。
【0021】
また、電気の移動により電磁波が発生すると、電気通信機器、センサー、又は回路等にノイズ又は誤動作が発生したり、これら機器が破壊されたりする。さらに、電磁波の発生は、人体への悪影響を及ぼす。そこで、本実施形態のオキシメチレン樹脂製機構部品を使用し、電磁波を遮蔽することにより、上記問題が発生する可能性を著しく低減することができる。
【0022】
本実施形態のオキシメチレン樹脂製機構部品は、耐久性に優れるため、部品の一部又は全体が変形をすることで生じる反力を利用した機構に用いられてもよい。反力を利用した機構の部品とは、特に限定されないが、例えば、接合部品や嵌合部品であり、例えば、ボス、リブ、クリップ、ボタン、ホルダー、コネクター、ジョイント、スナップフィット、車輪、ローラ、コロ、ワッシャ、スペーサ、ブッシュ、ロータ、バット、スイベル、軸受、軸穴、軸、プーリ、ギア等が挙げられる。これら部品の全て又は機構部を本実施形態のオキシメチレン樹脂製機構部品とすることができる。さらに、本実施形態のオキシメチレン樹脂製機構部品は、容器の蓋部、胴部、底部や、カバー、ケース、扉等の収納等に関する部品として用いることができる。これら部品の全て又は固定部品、稼動部品、施錠部品等の一部を本実施形態のオキシメチレン樹脂製機構部品とすることができる。
【0023】
本実施形態のオキシメチレン樹脂製機構部品のイメージを
図1〜
図3に示すが、オキシメチレン樹脂製機構部品はこれらに限られない。
図1は機構部品の一例として凹凸で位置を合わせて固定する結合部品のイメージ図であり、(a)は接合前の部品の状態を示し、(b)は接合状態の部品を上から見たイメージを示す。また、
図2は、機構部品の一例として爪部が動くことにより蓋を固定する容器のイメージ図であり、(a)は固定前の部品の状態を示し、(b)は蓋を固定した状態の容器を横から見たイメージを示す。さらに、
図3は、機構部品の一例として腕部が稼動することで固定する接合部品のイメージ図であり、(a)は固定前の部品の状態を示し、(b)は接合状態の部品のイメージを示す。いずれの部品も網掛けがされている部品が反力を利用した機構の部品に相当する。
【0024】
[2.オキシメチレン樹脂製機構部品を形成するオキシメチレン樹脂組成物]
本実施形態のオキシメチレン樹脂製機構部品を形成するオキシメチレン樹脂組成物は、ポリオキシメチレン(A)100質量部と、二種類以上の安定剤(B)0.02〜1.00質量部と、導電性カーボン系充填剤(C)5.0〜15.0質量部と、熱硬化性樹脂(D)0.5〜5.0質量部と、二種類以上の硬化剤(E)0.3〜3.0質量部と、を含む。以下、より詳細に説明する。
【0025】
〔ポリオキシメチレン(A)〕
本実施形態に用いるオキシメチレン樹脂組成物は、ポリオキシメチレン(A)を100質量部含む。本実施形態に用いるポリオキシメチレン(A)としては、オキシメチレンユニットのみを主鎖に有したポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)、分子中にオキシメチレンユニットと、オキシメチレンユニット以外のコモノマーユニットとを有するポリオキシメチレンコポリマー(A−2)、又はポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)及びポリオキシメチレンコポリマー(A−2)の混合物が挙げられる。特に、本実施形態に用いるオキシメチレン樹脂組成物は、ポリオキシメチレンコポリマー(A−2)を含むことが好ましい。ポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)及びポリオキシメチレンコポリマー(A−2)は、下記の重合工程、末端安定化工程及び造粒工程により製造することができる。
【0026】
<ポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)>
(1)重合工程
本実施形態に用いるポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)とは、オキシメチレンユニットのみを主鎖に有する重合体を表す。なお、ポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)の両末端又は片末端は、エステル基又はエーテル基により封鎖されていてもよい。ポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)の製造における重合形態は、公知のスラリー重合法(例えば、特公昭47−6420号公報及び特公昭47−10059号公報に記載の方法)を用いて実施することができる。これにより、末端が安定化されていない粗ポリオキシメチレンを得ることができる。
【0027】
1)モノマー
ポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)の製造に使用するモノマーとしては、特に限定されないが、例えばホルムアルデヒドを用いることができる。このとき安定した分子量のポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)を継続的に得るために、精製され、かつ不純物濃度が低く、安定したホルムアルデヒドガスを用いることが好ましい。ホルムアルデヒドの精製方法としては、公知の方法(例えば、特公平5−32374号公報及び特表2001−521916号公報に記載の方法)を用いることができる。
【0028】
本実施形態に用いるホルムアルデヒドガスは、水、メタノール、蟻酸等の重合反応中の重合停止及び連鎖移動作用を有する不純物を極力含まないものが好ましい。これらの不純物が少ないほど、予期せぬ連鎖移動反応を回避でき、目的の分子量のポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)が得られ易くなる。なかでも、水の含有量は、100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましい。
【0029】
2)連鎖移動剤
ポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)の製造に使用する連鎖移動剤としては、特に限定されないが、一般にはアルコール類、酸無水物を用いることができる。また、主鎖にポリアセタールホモポリマーを含むブロックポリマーや分岐ポリマーを得るためにポリオール、ポリエーテルポリオールやポリエーテルポリオール・アルキレンオキサイドを用いてもよい。
【0030】
また、連鎖移動剤についても、水、メタノール、蟻酸等の重合反応中の重合停止及び連鎖移動作用を有する不純物を極力含まないものを用いることが好ましい。なかでも、水の含有量は2,000ppm以下であることが好ましく、1,000ppm以下であることがより好ましい。これらの不純物の少ない連鎖移動剤を得る方法としては、例えば、汎用的であり水分含有量が規定量を超える連鎖移動剤を入手し、これを乾燥窒素でバブリングし、活性炭やゼオライト等の吸着剤により不純物を除去し、精製する方法等が挙げられる。ここで用いる連鎖移動剤は、1種単独で用いても又は2種類以上を併用してもよい。
【0031】
3)重合触媒
ポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)の製造における重合反応に使用する重合触媒としては、特に限定されないが、オニウム塩系重合触媒が挙げられる。重合反応に使用するオニウム塩系重合触媒は、例えば、下記式(1)で表されるものを用いることができる。
[R
1R
2R
3R
4M]
+X
− ・・・(1)
(式(1)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、各々独立にアルキル基を示し、Mは孤立電子対を持つ元素、Xは求核性基を示す。)
【0032】
上記式(1)で表されるオニウム塩系重合触媒のなかでも、第4級アンモニウム塩系化合物や第4級ホスホニウム塩系化合物が好ましく用いられる。このなかでも、より好ましくはテトラメチルアンモニウムブロミド、ジメチルジステアリルアンモニウムアセタート、テトラエチルホスホニウムヨージド、トリブチルエチルホスホニウムヨージドが用いられる。
【0033】
4)反応器
ポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)の製造における重合の反応器としては、特に限定されないが、例えば、バッチ式の攪拌機付き反応槽、連続式のコニーダー、二軸スクリュー式連続押し出し混練機、二軸パドル型連続混合機等を用いることができる。これらの胴の外周は反応混合物を加熱又は冷却できる構造を有することが好ましい。
【0034】
(2)末端安定化工程
上記粗ポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)の末端をエーテル基で封鎖して末端安定化する方法としては、特公昭63−452号公報に記載の方法がある。また、粗ポリオキシメチレンの末端をアセチル基で封鎖して末端安定化する方法としては、米国特許第3,459,709号明細書に記載の大量の酸無水物を用い、スラリー状態で行う方法と、米国特許第3,172,736号明細書に記載の酸無水物のガスを用いて気相で行う方法とがある。本実施形態においては、上記いずれの方法も採用でき、特に限定されるものではない。
【0035】
エーテル基で封鎖する場合のエーテル化剤としては、特に限定されないが、例えば、オルトエステルが挙げられ、通常は脂肪族酸又は芳香族酸と、脂肪族アルコール、脂環式族アルコール又は芳香族アルコールとのオルトエステルが挙げられる。このようなオルトエステルとしては、特に限定されないが、例えばメチル又はエチルオルトホルメート、メチル又はエチルオルトアセテート及びメチル又はエチルオルトベンゾエート、並びにエチルオルトカーボネート等のオルトカーボネートが挙げられる。
【0036】
エーテル化反応は、p−トルエンスルホン酸、酢酸及び臭化水素酸のような中強度有機酸、ジメチル及びジエチルスルフェートのような中強度鉱酸等のルイス酸型の触媒をエーテル化剤1質量部に対して0.001〜0.02質量部導入して行うことが挙げられる。
【0037】
エーテル化反応に用いる好ましい溶媒は、特に限定されないが、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン及びベンゼン等の低沸点脂肪族;脂環式族及び芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム及び四塩化炭素等のハロゲン化低級脂肪族化合物等の有機溶媒が挙げられる。
【0038】
一方、粗ポリオキシメチレンの末端をエステル基で封鎖する場合、エステル化に用いられる有機酸無水物としては、特に限定されないが、下記式(2)で表される有機酸無水物が挙げられる。
R
5COOCOR
6 ・・・(2)
(式(2)中、R
5及びR
6は、各々独立にアルキル基又はフェニル基を示す。R
5及びR
6は、同じであっても異なっていてもよい。)
【0039】
上記式(2)で表される有機酸無水物のなかでも、無水プロピオン酸、無水安息香酸、無水酢酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸等が好ましく、このなかでも無水酢酸がより好ましい。有機酸無水物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
また、気相でエステル基封鎖を行う方法においては、特開平11−92542号公報記載の方法によってオニウム塩系重合触媒を除去した後に末端封鎖を行うことが好ましい。ポリオキシメチレン中のオニウム塩系重合触媒を除去していると、末端封鎖する際に、オニウム塩系重合触媒由来のポリオキシメチレンの分解反応を回避でき、安定化反応におけるポリマー収率を向上することができると共に、ポリオキシメチレンの着色を抑制することができる。
【0041】
ポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)の末端はエーテル基及び/又はエステル基で封鎖することにより、末端水酸基の濃度が5×10
−7mol/g以下に低減されることが好ましい。末端水酸基の濃度が5×10
−7mol/g以下であると熱安定性に優れ、本来のポリオキシメチレン樹脂が有する品質を維持できるため好ましい。より好ましくは末端水酸基の濃度は0.5×10
−7mol/g以下であり、さらに好ましくは0.3×10
−7mol/g以下である。
【0042】
(3)造粒工程
末端安定化を行ったポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)のパウダーは乾燥を行った後、取扱い性を良くするために押出機を用いて造粒してもよい。このとき、通常のポリオキシメチレンに添加することの可能な公知の安定剤を加えながら溶融混練し、造粒を行うことが好ましい。溶融混練を行う場合には、品質や作業環境の保持のために、雰囲気を不活性ガスにより置換したり、一段及び多段ベントによる脱気をしたりすることが好ましい。溶融混練の際の温度は、ポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)の融点以上250℃以下とすることが好ましい。
【0043】
<ポリオキシメチレンコポリマー(A−2)>
ポリオキシメチレンコポリマー(A−2)は、オキシメチレンユニット以外のコモノマーユニットを、有するものである。ポリオキシメチレンコポリマー(A−2)は、コモノマーユニットを、オキシメチレンユニット100molに対して、0.3mol以上含有することが好ましく、0.4mol以上含有することがより好ましく、0.5mol以上含有することがさらに好ましく、0.6mol以上含有することがよりさらに好ましく、1.2mol以上含有することがさらにより好ましい。また、ポリオキシメチレンコポリマー(A−2)は、コモノマーユニットを、3.0mol以下含有することが好ましく、2.0mol以下含有することがより好ましく、1.5mol以下含有することがさらに好ましい。このようなポリオキシメチレンコポリマー(A−2)を含むオキシメチレン樹脂組成物を用いて形成された機構部品は、生産性、導電性、及び耐久性により優れる傾向にある。
【0044】
上記コモノマーユニットの定量については、
1H−NMR法を用いて、以下の手順で求めることができる。得られたポリオキシメチレン(A)を、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)により濃度1.5質量%となるように24時間かけて溶解させ、この溶解液を用いて
1H−NMR解析を行い、オキシメチレンユニットとオキシメチレンユニット以外のコモノマーユニット(例えば、オキシアルキレンユニット)との帰属ピ−クの積分値の比率から、オキシメチレンユニット100mol(a)に対するコモノマーユニット(b)のmol割合(b/a)を求めることができる。
【0045】
(1)重合工程
ポリオキシメチレンコポリマー(A−2)の両末端がエステル基又はエーテル基により封鎖されていてもよい。ポリオキシメチレンコポリマー(A−2)の製造における重合形態は、公知の重合法(例えば、米国特許第3027352号明細書、米国特許3803094号明細書、独国特許発明第1161421号明細書、独国特許発明第1495228号明細書、独国特許発明第1720358、独国特許発明第3018898号明細書、特開昭58−98322号公報、及び特開平7−70267号公報に記載の方法)を用いることができる。かかる重合工程により、ポリオキシメチレンコポリマーの末端が安定化されていない粗ポリオキシメチレンコポリマーが得られる。
【0046】
重合工程において用いる主モノマー等の材料を下記に説明する。
1)主モノマー
ポリオキシメチレンコポリマー(A−2)の製造に用いる主モノマーとしては、特に限定されないが、ホルムアルデヒド又はその3量体であるトリオキサン若しくは4量体であるテトラオキサン等の環状オリゴマーを用いることが好ましい。ここで、本明細書における「主モノマー」とは、全モノマー量に対して50質量%以上含有されているモノマーユニットをいう。
【0047】
2)コモノマー
ポリオキシメチレンコポリマー(A−2)の製造に用いるコモノマーとしては、特に限定されないが、分子中に炭素数2以上のオキシアルキレンユニットを有する環状エーテル化合物を用いることが好ましい。
【0048】
かかる環状エーテル化合物としては、特に限定されないが、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,3−ジオキソラン、1,3−プロパンジオールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、1,3,5−トリオキセパン、1,3,6−トリオキオカン、及び分子に分岐若しくは架橋構造を構成しうるモノ−若しくはジ−グリシジル化合物からなる群より選ばれる1種の化合物又は2種以上の混合物が、好適なものとして挙げられる。
【0049】
ポリオキシメチレンコポリマー(A−2)を重合する際において、主モノマー及びコモノマーには、水、メタノール及び蟻酸等の重合反応中の重合停止作用及び連鎖移動作用を有する不純物を極力含まないものを用いることが好ましい。不純物を極力含まない主モノマー及びコモノマーを用いることにより、想定していない連鎖移動反応を回避でき、これにより所望の分子量を有するポリマーが得られやすくなる。特に、ポリマー末端基に水酸基を誘導する不純物の含有量は、全モノマー量に対して、30質量ppm以下が好ましく、10質量ppm以下が好ましく、3質量ppm以下がさらに好ましい。
【0050】
所望の低不純物量の主モノマー及びコモノマーを得るための方法としては、公知の方法(例えば、主モノマーについては、特開平3−123777号公報や特開平7−33761号公報に記載の方法、コモノマーについては、特開昭49−62469号公報や特開平5−271217号公報に記載の方法)を用いることができる。
【0051】
3)連鎖移動剤
ポリオキシメチレンコポリマー(A−2)の重合工程においては、連鎖移動剤を用いることが好ましい。連鎖移動剤としては、特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒドのジアルキルアセタール及びそのオリゴマー;並びにメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びブタノール等の低級脂肪族アルコールを用いることが好ましい。上記ジアルキルアセタールのアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル及びブチル等の低級脂肪族アルキル基であることが好ましい。
【0052】
長鎖分岐ポリオキシメチレンを得るためには、連鎖移動剤として、ポリエーテルポリオール、及びポリエーテルポリオールのアルキレンオキサイド付加物を用いることが好ましい。また、連鎖移動剤としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、エステル基及びアルコキシ基からなる群より選択される1種以上の基を有する重合体を用いてもよい。さらに、上記連鎖移動剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を使用してもよい。いずれの場合においても、得られるポリオキシメチレンコポリマー(A−2)は不安定末端数の少ないものが好ましい。
【0053】
4)重合触媒
ポリオキシメチレンコポリマー(A−2)の重合工程に用いる重合触媒としては、特に限定されないが、ルイス酸、プロトン酸、及びプロトン酸のエステル又は無水物等の、カチオン活性触媒が好ましい。
【0054】
ルイス酸としては、特に限定されないが、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物が挙げられる。具体的には、三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン及び五フッ化アンチモン、並びにそれらの錯化合物又は塩が挙げられる。
【0055】
また、プロトン酸、そのエステル又は無水物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸−3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、及びトリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェートが挙げられる。また、必要に応じて、例えば特開平05−05017号報の記載にある末端ホルメート基の生成を低減するような触媒を併用してもよい。これらのなかでも、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素水和物、酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましく、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルがより好ましい。
【0056】
重合触媒の使用量は、例えばトリオキサンと環状エーテル及び/又は環状ホルマールを用いる場合、モノマーの合計量1molに対して、1×10
−6〜1×10
−3molが好ましく、5×10
−6〜1×10
−4molがより好ましい。重合触媒の使用量が上記範囲内であると、重合時の反応安定性や得られる成形体の熱安定性がより向上する。
【0057】
重合触媒は、重合工程後、触媒中和失活剤を含む水溶液又は有機溶剤溶液中に重合物を投入し、スラリー状態で一般的には数分〜数時間攪拌することにより失活させることができる。
【0058】
触媒中和失活剤としては、特に限定されないが、例えば、アンモニア、トリエチルアミン及びトリ−n−ブチルアミン等のアミン類;アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物;無機酸塩;有機酸塩からなる群より選択される1種以上が挙げられる。
【0059】
また、アンモニア及びトリエチルアミン等の蒸気とポリオキシメチレンコポリマー(A−2)とを接触させて重合触媒を失活させる方法や、ヒンダードアミン類、トリフェニルホスフィン及び水酸化カルシウムのうち少なくとも1種と混合機で接触させることにより触媒を失活させる方法も用いることができる。
【0060】
(2)末端安定化工程及び造粒工程
上述した重合工程により得られたポリオキシメチレンコポリマー(A−2)の粗ポリマーに含まれる不安定末端部分を分解除去することによって、安定したポリオキシメチレンコポリマー(A−2)を得ることができる。
【0061】
粗ポリオキシメチレンコポリマーに含まれる不安定末端部分の分解除去方法としては、特に限定されないが、例えば、ベント付き単軸スクリュー式押出機やベント付き2軸スクリュー式押出機等を用いて、公知の塩基性物質である後述する分解除去剤の存在下、粗ポリオキシメチレンコポリマーを溶融して不安定末端部分を分解除去する方法が挙げられる。
【0062】
末端安定化における溶融混練を行う場合には、品質や作業環境の保持のために、雰囲気を不活性ガスにより置換したり、一段及び多段ベントによる脱気をしたりすることが好ましい。また、溶融混練の際の温度は、ポリオキシメチレンコポリマー(A−2)の融点以上260℃以下とすることが好ましい。さらに、通常のポリオキシメチレンに添加することが可能な公知の安定剤を加えながら溶融混合し、造粒を行うことが好ましい。
【0063】
1)分解除去剤
ポリオキシメチレンコポリマー(A−2)の粗ポリマーに含まれる不安定末端部分の分解除去に用いる分解除去剤としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン及びトリブチルアミン等の脂肪族アミン;水酸化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;無機弱酸塩;及び有機弱酸塩等の、公知の塩基性物質が挙げられる。
【0064】
上記分解除去剤のなかでも、下記式(3)で表される、第4級アンモニウム化合物を少なくとも1種用いて、熱的に不安定な末端を処理する方法が好適に利用できる。
[R
7R
8R
9R
10N
+]
nY
n− ・・・(3)
(式(3)中、R
7、R
8、R
9及びR
10は、各々独立して、炭素数1〜30の非置換アルキル基又は置換アルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の非置換アルキル基又は置換アルキル基が少なくとも1個の炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;炭素数6〜20のアリール基が少なくとも1個の炭素数1〜30の非置換アルキル基又は置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基からなる群より選ばれるいずれかを表す。
上記の非置換アルキル基又は置換アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。
上記の非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、及びアルキルアリール基は、水素原子がハロゲンで置換されてもよい。
nは1〜3の整数を表す。
Yは、水酸基、又は炭素数1〜20のカルボン酸、水素酸、オキソ酸無機チオ酸、炭素数1〜20の有機チオ酸からなる群より選ばれるいずれかの酸残基を表す。)
【0065】
上記第4級アンモニウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクダデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等の水酸化物が挙げられる。
【0066】
また、第4級アンモニウム化合物のその他の例としては、アジ化水素等のハロゲン化以外の水素酸塩;硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸等のオキソ酸塩;チオ硫酸等のチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプーリル酸、カプーリン酸、安息香酸、シュウ酸等のカルボン酸塩が挙げられる。これらのなかでも、水酸化物(OH
−)、硫酸(HSO
4−、SO
42−)、炭酸(HCO
3−、CO
32−)、ホウ酸(B(OH)
4−)、及びカルボン酸の塩が好ましい。またカルボン酸のなかでも、蟻酸、酢酸及びプロピオン酸がより好ましい。上記第4級アンモニウム化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
上記第4級アンモニウム化合物の添加量は、粗ポリオキシメチレンコポリマーに対して、下記式(α)で表される第4級アンモニウム化合物由来の窒素の量に換算して、0.05〜50質量ppmであることが好ましい。
第4級アンモニウム化合物の添加量=P×14/Q ・・・(α)
(式(α)中、Pは第4級アンモニウム化合物の粗ポリオキシメチレンコポリマーに対する濃度(質量ppm)を表し、「14」は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を表す。)
【0068】
第4級アンモニウム化合物等の分解除去剤は、粗ポリオキシメチレンコポリマーを溶融する前に、予め添加してもよいし、溶融させた粗ポリオキシメチレンコポリマーに添加してもよい。なお、分解除去剤としては、公知の分解除去剤であるアンモニア、トリエチルアミン、及び/又はホウ酸化合物と、上述した第4級アンモニウム化合物とを併用してもよい。
【0069】
(安定剤(B))
本実施形態に用いるオキシメチレン樹脂組成物は、ポリオキシメチレン100質量部に対して二種類以上の安定剤(B)を0.02〜1.00質量部含み、好ましくは0.06〜0.45質量部含み、より好ましくは0.10〜0.30質量部含む。上記範囲であることにより、オキシメチレン樹脂製機構部品は、生産性、導電性、及び耐久性により優れる傾向にある。
【0070】
本実施形態で使用される二種類以上の安定剤(B)とは、オキシメチレン樹脂組成物やオキシメチレン製機構部品を生産する上で、残留するホルムアルデヒドやこれが変性して生じる蟻酸等の、機構部品の生産性や導電性、耐久性に悪影響を与える生成物を捕捉又はその影響を抑制するために添加するものである。このような二種類以上の安定剤(B)としては、例えば、反応性窒素含有化合物、無機酸の金属塩、金属酸化物及び有機酸の金属塩等が挙げられる。このなかでも、安定剤(B)が不純物として酸を極力含まない、及び/又は安定剤が酸を発生し難い化合物であり、このような安定剤を50質量%以上含むことが好ましい。不純物として酸を極力含まない、及び/又は酸を発生し難い安定剤としては、特に限定されないが、具体的には、反応性窒素含有化合物であり、ポリアミド系樹脂、アクリルアミド系重合体、アミノトリアジン系化合物等が挙げられる。また、「二種類以上の安定剤」とは、上記反応性窒素含有化合物等が二種類以上であっても、反応性窒素含有化合物一種類以上及び無機酸の金属塩一種類以上であってもよく、化合物として異なる二種類以上の安定剤を意味する。
【0071】
<反応性窒素含有化合物>
安定剤(B)は、反応性窒素含有化合物を安定剤(B)の50〜100質量%含むことが好ましく、55〜100質量%含むことがより好ましく、60〜100質量%含むことがさらに好ましい。上記範囲であることにより、オキシメチレン樹脂製機構部品は、生産性、導電性、及び耐久性により優れる傾向にある。
【0072】
反応性窒素含有化合物としては、特に限定されないが、例えば、(1)ポリアミド系樹脂、(2)アクリルアミド及びその誘導体、又はそれらを含む重合体、(3)ヒンダードアミン系化合物、(4)アミノトリアジン系化合物、(5)グアナミン系化合物、(6)尿素系化合物及び(7)ヒドラジド系化合物等が挙げられる。上記反応性窒素含有化合物は、層状物質、多孔性物質(ハイドロタルサイト、モンモリロナイト、シリカゲル、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セピオライト、スメクタイト、パリゴルスカイト、イモゴライト、ゼオライト、活性炭等)に担持された形での使用も可能である。
【0073】
(1)ポリアミド系樹脂
ポリアミド系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12等及びこれらの共重合物、例えば、ナイロン6/6−6、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等が挙げられる。
【0074】
(2)アクリルアミド及びその誘導体、又はそれらを含む重合体
アクリルアミド及びその誘導体、又はそれらを含む重合体としては、特に限定されないが、例えば、ポリ−β−アラニン共重合体が挙げられる。これらの重合体や共重合体は、特公平6−12259号公報(対応米国特許5015707号明細書)、特公平5−87096号公報、特公平5−47568号公報及び特開平3−234729号公報の各公報記載の方法で製造することができる。
【0075】
(3)ヒンダードアミン系化合物
ヒンダードアミン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)−カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネト、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)トリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート等が挙げられる。このなかでも、好ましくはビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケートである。
【0076】
(4)アミノトリアジン系化合物
アミノトリアジン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、メラミン;メラム、メレム、メロン等のメラミン縮合体;メラミンホルムアルデヒド樹脂等のメラミン樹脂;N,N’,N’’−モノ、ビス、トリス、テトラキス、ペンタキス、又はヘキサキス(o−、m−又はp−ヒドロキシフェニルメチル)メラミン等のN−ヒドロキシアリールアルキルメラミン系化合物が挙げられる。
【0077】
(5)グアナミン系化合物
グアナミン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、バレログアナミン、カプログアナミン、ヘプタノグアナミン、カプーリログアナミン、ステアログアナミン等の脂肪族グアナミン系化合物;サクシノグアナミン、グルタログアナミン、アジポグアナミン、ピメログアナミン、スベログアナミン、アゼログアナミン、セバコグアナミン等のアルキレンビスグアナミン類;シクロヘキサンカルボグアナミン、ノルボルネンカルボグアナミン、シクロヘキセンカルボグアナミン、ノルボルナンカルボグアナミン及びそれらの官能基置換誘導体等の脂環族グアナミン系化合物;ベンゾグアナミン、α−又はβ−ナフトグアナミン及びそれらの官能基置換誘導体等の芳香族グアナミン系化合物;フタログアナミン、イソフタログアナミン、テレフタログアナミン、ナフタレンジグアナミン、ビフェニレンジグアナミン等のポリグアナミン類;フェニルアセトグアナミン、β−フェニルプロピオグアナミン、o−、m−又はp−キシリレンビスグアナミン等のアラルキル又はアラルキレングアナミン類;アセタール基含有グアナミン類、ジオキサン環含有グアナミン類、テトラオキソスピロ環含有グアナミン類、イソシアヌル環含有グアナミン類等のヘテロ原子含有グアナミン系化合物が挙げられる。
【0078】
上記脂環族グアナミン系化合物における官能基置換誘導体としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アセトアミノ基、ニトリル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルコキシ基、フェニル基、クミル基、ヒドロキシフェニル基等の官能基がシクロアルカン残基に1〜3個置換した誘導体が挙げられる。また、上記芳香族グアナミン系化合物における官能基置換誘導体としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アセトアミノ基、ニトリル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルコキシ基、フェニル基、クミル基、ヒドロキシフェニル基等の官能基がベンゾグアナミンのフェニル残基又はナフトグアナミンのナフチル残基に1〜5個置換した誘導体が挙げられる。このような化合物としては、例えば、o−、m−又はp−トルグアナミン、o−、m−又はp−キシログアナミン、o−、m−又はp−フェニルベンゾグアナミン、o−、m−又はp−ヒドロキシベンゾグアナミン、4−(4’−ヒドロキシフェニル)ベンゾグアナミン、o−、m−又はp−ニトリルベンゾグアナミン、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンゾグアナミン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾグアナミンが例示される。
【0079】
上記アセタール基含有グアナミン類としては、特に限定されないが、例えば、2,4−ジアミノ−6−(3,3−ジメトキシプロピル−s−トリアジンが挙げられる。また、上記ジオキサン環含有グアナミン類としては、特に限定されないが、例えば、[2−(4’−6’−ジアミノ−s−トリアジン−2’−イル)エチル]−1,3−ジオキサン、[2−(4’−6’−ジアミノ−s−トリアジン−2’−イル)エチル]−4−エチル−4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサンが挙げられる。さらに、上記テトラオキソスピロ環含有グアナミン類としては、特に限定されないが、例えば、CTU−グアナミン、CMTU−グアナミンが挙げられる。その上、上記イソシアヌル環含有グアナミン類としては、特に限定されないが、例えば、1,3,5−トリス[2−(4’,6’−ジアミノ−s−トリアジン−2’−イル)エチル]イソシアヌレート、1,3,5−トリス[3−(4’,6’−ジアミノ−s−トリアジン−2’−イル)プロピル]イソシアヌレートが挙げられる。
【0080】
(6)尿素系化合物
尿素系化合物としては、特に限定されないが、例えば、鎖状尿素系化合物及び環状尿素系化合物が挙げられる。鎖状尿素系化合物としては、特に限定されないが、例えば、ビウレア、ビウレット、ホルム窒素等の尿素とホルムアルデヒドとの縮合体;及びポリノナメチレン尿素等のポリアルキレン又はアリーレン尿素が挙げられる。環状尿素系化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ヒダントイン類、クロチリデンジウレア、アセチレン尿素、モノ、ジ、トリ又はテトラメトキシメチルグリコールウリル等のモノ、ジ、トリ又はテトラアルコキシメチルグリコールウリル、シアヌル酸、イソシアヌル酸、尿酸、及びウラゾールが挙げられる。ヒダントイン類としては、特に限定されないが、例えば、ヒダントイン、5−メチルヒダントイン、5−エチルヒダントイン、5−イソプロピルヒダントイン、5−フェニルヒダントイン、5−ベンジルヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、5,5−ペンタメチレンヒダントイン、5−メチル−5−フェニルヒダントイン、5,5−ジフェニルヒダントイン、5−(o−、m−又はp−ヒドロキシフェニル)ヒダントイン、5−(o−、m−又はp−アミノフェニル)ヒダントイン、アラントイン、5−メチルアラントイン、及びアラントインジヒドロキシアルミニウム塩等のアラントインのAl塩等の金属塩が挙げられる。
【0081】
(7)ヒドラジド系化合物
ヒドラジド系化合物としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族カルボン酸ヒドラジド系化合物、脂環族カルボン酸ヒドラジド系化合物、及び芳香族カルボン酸ヒドラジド系化合物が挙げられる。脂肪族カルボン酸ヒドラジド系化合物の具体例としては、ラウリン酸ヒドラジド、ステアリン酸ヒドラジド、12−ヒドロキシステアリン酸ヒドラジド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸ヒドラジド等のモノカルボン酸ヒドラジド類;コハク酸モノ又はジヒドラジド、グルタル酸モノ又はジヒドラジド、アジピン酸モノ又はジヒドラジド、ピメリン酸モノ又はジヒドラジド、スベリン酸モノ又はジヒドラジド、アゼライン酸モノ又はジヒドラジド、セバシン酸モノ又はジヒドラジド、ドデカン二酸モノ又はジヒドラジド、ヘキサデカン二酸モノ又はジヒドラジド、エイコサン二酸モノ又はジヒドラジド、7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジド等のポリカルボン酸ヒドラジド類が挙げられる。脂環族カルボン酸ヒドラジド系化合物の具体例としては、シクロヘキサンカルボン酸ヒドラジド等のモノカルボン酸ヒドラジド類;ダイマー酸モノ又はジヒドラジド、トリマー酸モノ、ジ又はトリヒドラジド、1,2−、1,3−又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸モノ又はジヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸モノ、ジ又はトリヒドラジド等のポリカルボン酸ヒドラジド類が挙げられる。芳香族カルボン酸ヒドラジド系化合物の具体例としては、安息香酸ヒドラジド及びその官能基置換誘導体、α−又はβ−ナフトエ酸ヒドラジド及びそれらの官能基置換誘導体等のモノカルボン酸ヒドラジド類;イソフタル酸モノ又はジヒドラジド、テレフタル酸モノ又はジヒドラジド、1,4−又は2,6−ナフタレンジカルボン酸モノ又はジヒドラジド、3,3’−、3,4’−又は4,4’−ジフェニルジカルボン酸モノ又はジヒドラジド、ジフェニルエーテルジカルボン酸モノ又はジヒドラジド、ジフェニルメタンジカルボン酸モノ又はジヒドラジド、ジフェニルエタンジカルボン酸モノ又はジヒドラジド、ジフェノキシエタンジカルボン酸モノ又はジヒドラジド、ジフェニルスルホンジカルボン酸モノ又はジヒドラジド、ジフェニルケトンジカルボン酸モノ又はジヒドラジド、4,4’’−ターフェニルジカルボン酸モノ又はジヒドラジド、4,4’’’−クォーターフェニルジカルボン酸モノ又はジヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸モノ、ジ又はトリヒドラジド、ピロメリット酸モノ、ジ、トリ又はテトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸モノ、ジ、トリ又はテトラヒドラジド等のポリカルボン酸ヒドラジド類が挙げられる。安息香酸ヒドラジド及びその官能基置換誘導体としては、例えば、o−、m−又はp−メチル安息香酸ヒドラジド、2,4−、3,4−、3,5−又は2,5−ジメチル安息香酸ヒドラジド、o−、m−又はp−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、o−、m−又はp−アセトキシ安息香酸ヒドラジド、4−ヒドロキシ−3−フェニル安息香酸ヒドラジド、4−アセトキシ−3−フェニル安息香酸ヒドラジド、4−フェニル安息香酸ヒドラジド、4−(4’−フェニル)安息香酸ヒドラジド、4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル安息香酸ヒドラジド、4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル安息香酸ヒドラジド等の、アルキル基、ヒドロキシ基、アセトキシ基、アミノ基、アセトアミノ基、ニトリル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルコキシ基、フェニル基、ベンジル基、クミル基、ヒドロキシフェニル基等の官能基がベンゾグアナミンのフェニル残基に1〜5個置換した誘導体が挙げられる。α−又はβ−ナフトエ酸ヒドラジド及びそれらの官能基置換誘導体としては、例えば、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジドが挙げられる。
【0082】
<無機酸の金属塩、金属酸化物及び有機酸の金属塩>
(1)無機酸の金属塩
安定剤(B)は、無機酸の金属塩を安定剤(B)の0〜50質量%含むことが好ましく、0〜30質量%含むことがより好ましく、0〜20質量%含むことがさらに好ましい。
【0083】
無機酸の金属塩としては、特に限定されないが、例えば、ケイ酸、炭酸等の、アルミニウム塩、鉄塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等が挙げられる。具体的には、水和ケイ酸マグネシウム、シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、ウォラストナイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。このなかでも、オキシメチレン樹脂製機構部品の生産性から、水和ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウムが好ましい。
【0084】
(2)金属酸化物
安定剤(B)は、金属酸化物を安定剤(B)の0〜50質量%含むことが好ましく、0〜30質量%含むことがより好ましく、0〜20質量%含むことがさらに好ましい。
【0085】
金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化アルミニウム等が挙げられる。このなかでも、オキシメチレン樹脂製機構部品の生産性から、酸化亜鉛、ハイドロタルサイトが好ましい。
【0086】
(3)有機酸の金属塩
安定剤(B)は、有機酸の金属塩を安定剤(B)の0〜50質量%含むことが好ましく、0〜30質量%含むことがより好ましく、0〜20質量%含むことがさらに好ましい。
【0087】
有機酸の金属塩としては、特に限定されないが、例えば、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、オレイン酸、リノール酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の、アルミニウム塩、鉄塩、
カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等が挙げられる。具体的には、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。このなかでも、オキシメチレン樹脂製機構部品の生産性から、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウムが好ましい。
【0088】
(導電性カーボン系充填剤(C))
本実施形態に用いるオキシメチレン樹脂組成物は、ポリオキシメチレン100質量部に対して導電性カーボン系充填剤(C)を5.0〜15.0質量部含み、5.5〜13.5質量部含むことが好ましく、6.0〜12.0質量部含むことがより好ましい。上記範囲であることにより、オキシメチレン樹脂製機構部品は生産性、導電性、及び耐久性により優れる傾向にある。
【0089】
導電性カーボン系充填剤(C)としては、特に限定されないが、具体的には、カーボンブラック、黒鉛、カーボンファイバー等が挙げられる。導電性カーボン系充填剤(C)の形状は、特に限定されず、粉末状、鱗片状、板状、針状、球状、繊維状、テトラポッド状等とすることができる。このなかでも、導電性カーボン系充填剤(C)が、配向の影響が少ない粒子状の導電性カーボン系充填剤を含むことが好ましい。ここで「粒子状」とは、粒子の長径と短径が同程度のものであり、この比(長径/短径)が8以下が好ましく、6以下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。これにより、オキシメチレン樹脂製機構部品は、生産性、導電性、及び耐久性により優れる傾向にある。なお、本明細書における導電性カーボン系充填材(C)の長径及び短径は、以下のようにして測定することができる。検査する導電性カーボン系充填材のサンプリングを行い、サンプリングした粒子像を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率1千倍から100万倍で撮影し、得られた画像において無作為に選んだ最低100個の導電性カーボン系充填材の、それぞれの最大粒子径及び最小粒子径を測定し、得られた各粒径の相加平均の値を平均の長径及び短径として求める。また、下記にある平均粒子径は、この平均の長径とする。導電性カーボン系充填剤(C)における粒子状の導電性カーボン系充填剤の含有量は、30〜100質量%であることが好ましく、40〜100質量%であることがより好ましく、50〜100質量%であることがさらに好ましい。
【0090】
<カーボンブラック>
上記カーボンブラックとしては、導電性カーボンブラックが挙げられる。導電性カーボンブラックのなかでも、平均粒子径が小さいか又は表面積が大きく鎖状構造の発達したものが好ましい。具体的には、平均粒子径については、0.05μm以下のものが好ましく、0.04μm以下のものがより好ましく、0.03μm以下のものがさらに好ましい。また、表面積については、DBP吸油量(ASTM D2415−65T)が300ml/100g以上のものが好ましく、350ml/100g以上のものがより好ましく、400ml/100g以上のものがさらに好ましい。上記範囲の粒子径、DBP吸油量であれば、カーボンブラックの添加量が少なくても良好な導電性を得ることができる。
【0091】
具体的なカーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラックEC〔DBP吸油量:350ml/100g、粒子状〕、EC−300J[DBP吸油量:365ml/100g、粒子状]、EC−600JD〔DBP吸油量:480ml/100g、粒子状〕(ライオンアクゾ(株)製)、プリンテックスXE2−B〔DBP吸油量:420ml/100g、粒子状〕(デグッサ(株)製)等が挙げられる。なお、カーボンブラックは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0092】
<黒鉛>
上記黒鉛としては、特に限定されず、人造品及び天然品から目的に応じて適宜選択することができる。黒鉛粉末の形状は、特に限定されず、粉末状、鱗片状、板状、針状、球状、繊維状、テトラポッド状等いずれでもよいが、より良好な導電性発現の観点から、鱗片状の天然黒鉛が好ましい。黒鉛の平均粒子径は、0.5〜100μmの範囲が好ましく、より好ましくは1〜80μm、さらに好ましくは2〜70μmである。0.5μm以上であることにより、より優れた導電性が発現される傾向にあり、100μm以下であることにより、取り扱い性と成形品表面外観保持性により優れる傾向にある。なお、平均粒子径は、上記と同様の方法により測定することができる。
【0093】
具体的な黒鉛としては、例えば、F#3〔平均粒子径60μm、鱗片状〕、CPB〔平均粒子径19μm、鱗片状〕、J−CPB〔平均粒子径5μm、鱗片状〕(日本黒鉛製)、CNP15〔平均粒子径15μm、鱗片状〕、Z−5F〔平均粒子径5μm、鱗片状〕(伊藤黒鉛工業製)等がある。なお、黒鉛は1種単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0094】
<カーボンファイバー>
上記カーボンファイバーとしては、特に限定されず、アクリル繊維又はピッチ(石油、石炭、コールタール等の副生成物)を原料に高温で炭化して作った繊維(PAN系繊維又はPITCH系繊維)のどちらも選択することができる。本実施形態に用いるオキシメチレン樹脂製機構部品に用いられるカーボンファイバーは、繊径としては1〜25μmであることが好ましく、2〜20μmであることがより好ましく、3〜18μmであることがさらに好ましい。また、繊維長さとしては配向がでない程度の長さのものが好ましい。なお、本明細書において繊径は、上記と同様カーボンファイバーのサンプリングを行い、サンプリングした繊維像を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率1千倍から100万倍で撮影し、得られた画像において無作為に選んだ最低100個のカーボンファイバーの繊径を測定し、得られた各繊径の相加平均の値を平均の繊径として求める。カーボンファイバーにおける長径と短径の比は、繊維長と繊径の比とする。
【0095】
具体的なカーボンファイバーとしては、例えば、トレカ(東レ(株)製)、テナックス(帝人(株)製)、パイロフィル(三菱レイヨン(株)製)、ダイアリード(三菱樹脂(株)製)、クレカ(クレハ(株)製)、Z−5F(伊藤黒鉛工業製)等があり、全て繊径3〜18μmの繊維状である。なお、カーボンファイバーは1種単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0096】
なお、導電性カーボン系充填剤(C)は、オキシメチレン樹脂組成物中の樹脂との親和性を向上させるために、公知の表面処理剤で処理したものを用いてもよい。このような表面処理剤としては、特に限定されないが、例えば、アミノシラン、エポキシシラン等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸等の脂肪酸、脂環族カルボン酸、樹脂酸、金属石鹸、及び樹脂類等が挙げられる。表面処理剤の添加量としては、導電性カーボン系充填剤(C)に対して3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
【0097】
(熱硬化性樹脂(D))
本実施形態に用いるオキシメチレン樹脂組成物は、ポリオキシメチレン100質量部に対して熱硬化性樹脂(D)を0.5〜5.0質量部含み、1.0〜3.5質量部含むことが好ましく、1.5〜3.0質量部含むことがより好ましい。上記範囲であることにより、オキシメチレン樹脂製機構部品は、生産性、導電性、及び耐久性により優れる傾向にある。
【0098】
熱硬化性樹脂(D)としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、ユリア系樹脂、アリル系樹脂等が挙げられる。このなかでも、熱硬化性樹脂(D)がエポキシ系樹脂又はフェノール系樹脂を含むことが好ましく、酸とアルカリどちらとも反応可能なグリシジル基を有するエポキシ系樹脂を含むことがより好ましい。なお、熱硬化性樹脂(D)は1種単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0099】
<エポキシ系樹脂>
エポキシ系樹脂とは、モノ又は多官能グリシジル誘導体、或いは不飽和結合をもつ化合物を酸化してエポキシ基を生じさせた化合物である。このようなエポキシ系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、ベヘニルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(エチレンオキシドのユニット;2〜30)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(プロピレンオキシドのユニット;2〜30)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ソルビタンモノエステルジグリシジルエーテル、ソルビタンモノエステルトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジグリセリントリグリシジルエーテル、ジグリセリンテトラグリシジルエーテル、クレゾールノボラックとエピクロルヒドリンとの縮合物(エポキシ等量;100〜400、軟化点;20〜150℃)、グリシジルメタクリレート、ヤシ脂肪酸グリシジルエステル、大豆脂肪酸グリシジルエステル等が挙げられる。このなかでも、クレゾールノボラックとエピクロルヒドリンとの縮合物であるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、オルソクレゾールとホルムアルデヒドの重縮合物のポリグリシジルエーテル化物であるオルソクレゾール型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0100】
<フェノール系樹脂>
フェノール系樹脂とは、フェノールとホルムアルデヒドを反応させて得られるものであれば制限されないが、酸性触媒を用いて反応させたノボラック型のフェノール樹脂が好ましい。分子量としては500〜10,000の重量平均分子量を有するものが好ましい。また、パラキシリレンあるいはアルキルベンゼンでさらに変性したフェノール系樹脂が好ましく、変性率40%以上のアルキルベンゼン変性フェノール系樹脂がより好ましい。さらに、フェノール系樹脂中に含有される未反応フェノールは5質量%以下が好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
【0101】
(硬化剤(E))
本実施形態に用いるオキシメチレン樹脂組成物は、ポリオキシメチレン100質量部に対して二種類以上の硬化剤(E)を0.3〜3.0質量部含み、0.6〜2.0質量部含むことが好ましく、0.8〜1.5質量部含むことがより好ましい。上記範囲であることにより、オキシメチレン樹脂製機構部品は生産性、導電性、及び耐久性により優れる傾向にある。
【0102】
硬化剤(硬化促進剤を含む)としては、特に限定されないが、例えば、塩基性リン系化合物;脂肪族アミン、ポリアミドアミン、芳香族アミン等の塩基性窒素化合物;酸及び酸無水物系化合物;置換イミダゾール化合物;第三級アミン化合物;モルホリン化合物;ジシアンジアミド誘導体等が挙げられる。硬化剤(E)は塩基性リン系化合物を含むことが好ましく、塩基性リン系化合物を80質量%以上含むことがより好ましい。また、「二種類以上の硬化剤」とは、上記塩基性リン系化合物等が二種類以上であっても、塩基性リン系化合物一種類以上及び塩基性窒素化合物一種類以上であってもよく、化合物として異なる二種類以上の硬化剤を意味する。
【0103】
具体的には、硬化剤(E)は特には塩基性リン系化合物を80〜100質量%含むことが好ましく、85〜100質量%含むことがより好ましく、95〜100質量%含むことがさらに好ましい。上記範囲であることにより、オキシメチレン樹脂製機構部品は生産性、導電性、及び耐久性により優れる傾向にある。
【0104】
上記塩基性リン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式(I)で示されるトリフェニルホスフィン、メチル置換トリフェニルホスフィン及びメトキシ置換トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
【化1】
(式(I)中、R、R’及びR”は、各々水素原子、メチル基又はメトキシキ基である。)
【0105】
式(I)で示される化合物としては、特に限定されないが、具体的には、トリフェニルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、ジ−m−トリルフェニルホスフィン、ジ−p−トリルフェニルホスフィン、m−トリルジフェニルホスフィン、p−トリルジフェニルホスフィン、トリ−p−メトキシフェニルホスフィン、ジ(p−メトキシフェニル)フェニルホスフィン、(p−メトキシフェニル)ジフェニルホスフィン等が挙げられる。
【0106】
上記塩基性窒素化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジエチレントリアミン(DTA)、トリエチレンテトラミン(TTA)、ジエチルアミノプロピルアミン(DEPA)、N−アミノエチルピペラジン(N−AEP)、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、メタフエニレンジアミン(MPD)、ジアミノジフエニルメタン(DDM)、ジアミノジフエニルスルホン(DDS)、ジシアンジアミド、三フツ化ホウ素モノエチルアミン(BF3・MEA)、メンタンジアミン、キシリレンジアミン、ビスアミノプロピルテトラオキサスピロウンデカン付加物(BATUA)、イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール(EMI)等が挙げられる。
【0107】
上記酸無水物系化合物としては、特に限定されないが、例えば、無水フタル酸(PA)、無水マレイン酸(MA)、無水ドデシルコハク酸(DDSA)、無水ヘキサヒドロフタル酸(HHPA)、無水メチルナジツク酸(MNA)、無水ピロメリツト酸(PMDA)、無水ベンゾフエノンテトラカルボン酸(BTDA)等が挙げられる。
【0108】
また、硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、下記式(II)で表わされる置換イミダゾール化合物、式(III)で表わされる第三級アミン化合物、式(IV)で表わされるモルホリン化合物、及び式(V)で表わされるジシアンジアミド誘導体等を挙げることができる。
【化2】
(式(II)中、R1は置換又は非置換の、アルキル基、アリール基、アリル基又はビニル基であり、R2、R3及びR4は、各々水素原子、置換若しくは非置換の、アルキル基、アリール基、アリル基又はビニル基であり、それらは同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。)
【化3】
(式(III)中、R5は置換又は非置換の、炭素数8以上のアルキル基又はアリール基であり、R6及びR7は各々置換若しくは非置換の、アルキル基又はアリール基であり、それらは同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。)
【化4】
(式(IV)中、R8は置換又は非置換の、炭素数8以上のアルキル基又はアリール基である。)
【化5】
(式(V)中、R9、R10、R11、及びR12は、各々、(−C
2H
4O)
x−(−C
3H
6O)
y−H (ここで、x及びyは、x+y=1〜20、x=0〜20、y=0〜20の関係を満たす数である)で示されるランダム共重合体又はブロツク共重合体の残基であり、それらは同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。)
【0109】
上記化合物において、R1〜R7がアルキル基である場合には、その炭素数が1〜30の範囲にあるものが好ましい。また、R5及びR8がアルキル基である場合には、その炭素数が8〜30の範囲にあるものが好ましい。
【0110】
上記式(II)で表わされる置換イミダゾール化合物としては、特に限定されないが、例えば、1−ヒドロキシエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ヘプタデシルイミダゾール、1−ビニル−2−フエニルイミダゾール、1−ラウリル−2−ウンデシルイミダゾール、1−アリル−2−イソプロピルイミダゾール、1−ベンジル−2−エチルイミダゾール、1−ステアリル−2−メチル−4−エチルイミダゾール、1−エチル−5−ラウリルイミダゾール、1−フエニル−4−エチルイミダゾール、1−トリル−2−ヘプタデシルイミダゾール、1−トリフエニルメチルイミダゾール、1−(ベヘニルベンジル)−2−メチルイミダゾール、2−(ベヘニルベンジル)イミダゾール、4−(ベヘニルベンジル)イミダゾール、5−(ベヘニルベンジル)イミダゾール等が挙げられる。
【0111】
前記式(III)で表わされる第三級アミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、オクチルジメチルアミン、オクチルジエチルアミン、ジオクチルメチルアミン、トリオクチルアミン、ステアリルジメチルアミン、ステアリルジエチルアミン、ジステアリルメチルアミン、ジステアリルプロピルアミン、トリステアリルアミン、ベヘニルステアリルメチルアミン、ベヘニルジメチルアミン、ベヘニルジエチルアミン、ジベヘニルメチルアミン、ジベヘニルイソプロピルアミン、トリベヘニルアミン、トリラウリルアミン、オクチルジヒドロキシエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジブチルアミン、ベンジルステアリルメチルアミン、p−オクチルフエニルジメチルアミン、トリスジメチルアミノベンゼン、トリスジメチルアミノフエノール、トリスジメチルアミノトルエン、トリス(ジメチルアミノメチル)フエノール、トリフエルアミン、トリトリルアミン、ジフエニルトリルアミン、(ベヘニルベンジル)ジメチルアミン、ジ(ベヘニルベンジル)メチルアミン等が挙げられる。
【0112】
前記式(IV)で表わされるモルホリン化合物としては、特に限定されないが、例えば、クチルモルホリン、ラウリルモリホリン、セチルモルホリン、ステアリルモルホリン、ベヘニルモルホリン、フエニルモルホリン、p−ラウリルフエニルモルホリン、トリルモルホリン、ベンジルモルホリン、p−メチルベンジルモルホリン、ベヘニルベンジルモルホリン等が挙げられる。
【0113】
前記式(V)で表わされるジシアンジアミド誘導体としては、特に限定されないが、例えば、ジシアンジアミドにエチレンオキシド又はプロピレンオキシド、あるいはその両方を付加したものが挙げられる。このようなジシアンジアミド誘導体としては、特に限定されないが、例えば、ジシアンジアミドの4モルエチレンオキサイド付加物、ジシアンジアミドへの4モルプロピレンオキサイド付加物、ジシアンジアミドへの10モルエチレンオキサイド付加物、ジシアンジアミドへの10モルプロピレンオキサイド付加物や、ジシアンジアミドへの4モルエチレンオキサイド・7モルプロピレンオキサイド共重合付加物、ジシアンジアミドへの10モルエチレンオキサイド・7モルプロピレンオキサイド共重合付加物、ジシアンジアミドへの10モルエチレンオキサイド・30モルプロピレンオキサイド共重合付加物(ただし、ジシアンジアミドの4つの活性水素すべてに1モル以上のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドが付加したもので、1つの活性水素に付加したエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドのトータル付加モル数が20モルを越えていないもの)等が挙げられる。
【0114】
(その他の添加剤(F))
本実施形態に用いるオキシメチレン樹脂組成物は、必要に応じて、従来公知のその他の添加剤(F)を含んでもよい。オキシメチレン樹脂組成物に含まれるその他の添加剤(F)の含有量は、ポリオキシメチレン(A)100質量部に対し、0質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0質量部以上8質量部以下であることがより好ましく、0質量部以上5質量部以下であることがさらに好ましい。
【0115】
その他の添加剤(F)としては、特に限定されないが、例えば、上記以外の酸化防止剤、熱安定剤、耐候(光)剤、滑剤、各種無機・有機充填剤、結晶核剤、離型剤、他の熱可塑性樹脂・熱可塑性エラストマー、顔料・染料といった外観改良剤等が挙げられる。特に、その他の添加剤(F)には、摺動剤をさらに含むことが好ましく、特には上記安定剤(B)や硬化剤(E)と同様、酸を極力含まない、及び/又は酸を発生し難い摺動剤が好ましい。具体的には、オレフィン系摺動剤、シリコン系摺動剤、フッ素系摺動剤、アルキレンオキサイド系摺動剤、高分子量アルコール等である。このように摺動剤を含むことにより、耐久性が向上する場合がある。
【0116】
(オキシメチレン樹脂組成物の製造方法)
以下においては、(A)成分〜(E)成分を含有するオキシメチレン樹脂組成物の製造方法を例示的に説明する。上記のポリオキシメチレン(A)、二種類以上の安定剤(B)、導電性カーボン系充填剤(C)、熱硬化性樹脂(D)、二種類以上の硬化剤(E)、及び必要に応じてその他の添加剤(F)を混合することで行なう。この混合は、ポリオキシメチレン(A)の造粒時に、(B)成分〜(F)成分を添加し、溶融混練することにより行うことができる。
【0117】
また、ポリオキシメチレン(A)の造粒後、新たに、ヘンシェルミキサー、タンブラー、又はV字型ブレンダーを用いて(A)成分〜(F)成分を混合した後、ニーダー、ロールミル、単軸押出機、二軸押出機や多軸押出機を用いて、これらを溶融混練することにより、オキシメチレン樹脂組成物を得ることもできる。また、溶融混練時(A)成分〜(F)成分は分割して何回かに分けて添加してもよい。
【0118】
また、ポリオキシメチレン(A)に対する(B)成分〜(F)成分の分散性を高めるために、混合するポリオキシメチレン(A)のペレットの一部又は全量を粉砕して、(B)成分〜(F)成分に予め混合した後、溶融混合してもよい。この場合、展着剤を用いてさらに分散性を高めてもよい。かかる展着剤としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素、これらの変性物及びこれらの混合物、並びにポリオールの脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0119】
当該溶融混合の温度は、180〜230℃であることが好ましい。さらに、品質や作業環境を保持する観点から、不活性ガスによる置換や、一段及び多段ベントで脱気することが好ましい。
【0120】
さらに、本実施形態に用いるオキシメチレン樹脂組成物は、成形品より得てもよい。例えば、成形品を粉砕し、得られたフレークを上記ペレットの代わりに使用してもよい。また粉砕したフレークの一部を上記より得られたペレットに混合してもよい。
【0121】
好ましいオキシメチレン樹脂組成物の製造方法としては、次の方法が挙げられる。装置としては、減圧装置と複数のサイドフィーダーを装備した2軸押出機が好ましい。このような装置を用いて、上記各成分を溶融混練することによって本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物が得られる。溶融混練の方法は、(C)成分を除く全ての成分をトップより供給し溶融混練して、これより下流に位置するサイドフィーダーより(C)成分を供給する。さらには、トップより下流に設けられたサイドフィーダーのうち、少なくとも1つのサイドフィーダーからは、他の成分を添加してもしなくてもよい。よりさらには、(C)成分は、二か所のサイドフィーダーより供給することが好ましい。このとき押出機の減圧度は、0〜0.07MPaが好ましい。
【0122】
[3.オキシメチレン樹脂製機構部品の製造方法]
本実施形態に用いるオキシメチレン樹脂製機構部品は、例えば、上述したオキシメチレン樹脂組成物を成形することにより得ることができる。本実施形態に用いるオキシメチレン樹脂製機構部品の製造方法としては、原材料となる従来のオキシメチレン樹脂組成物を用いた多様な公知の成形方法を採用することができる。また、初期の成形条件が安定するまでの成形品や、成形時に製品と同時に成形されるランナー部は製品として使用しないことがあり、これを樹脂ペレットと混ぜて成形することも可能である。
【0123】
当該成形方法としては、特に制限されないが、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、多色成形、ガスアシスト射出成形、発砲射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法が挙げられる。特に、生産性の面から、押出成形・射出成形・射出圧縮成形、又は異材を組み合わせる多色成形・金型内複合成形が好ましい。当該成形条件としては、通常ポリオキシメチレンが成形される推奨条件を用いる。例えば、樹脂温度180〜230℃、金型温度60〜120℃で成形を行なうことが好ましい。また、本実施形態に用いるオキシメチレン樹脂製機構部品の表面状態は、平滑なものでも、各種シボ加工を施したものであってもよい。
【0124】
[4.成形品のリサイクル物性]
上記オキシメチレン樹脂組成物は、本実施形態に用いるオキシメチレン樹脂製機構部品を構成する成分であり、オキシメチレン樹脂組成物の成形体を粉砕、成形して得られる成形体の強度が45MPa以上であり、伸度が10%以上である。ここで示している物性は、環境温度23±2℃、湿度50±10%にて測定した値である。
【0125】
<オキシメチレン樹脂組成物の成形体を粉砕、成形して得られる成形体>
上記オキシメチレン樹脂組成物を成形することにより、オキシメチレン樹脂組成物は熱を加えられ溶融されて、圧力を加えられて機構部品となる。以下、オキシメチレン樹脂組成物の成形体を粉砕、成形して得られる成形体をリサイクル材ともいう。
【0126】
<リサイクル材の強度>
本実施形態に用いる100質量%リサイクル材の強度は、45MPa以上であり、46MPa以上であることが好ましく、47MPa以上であることがより好ましい。強度の測定に用いる評価用試験片は、ASTM D638に準拠したタイプI射出成形片である。この評価用試験片は、例えば成形機(東芝機械;IS−100E、シリンダー温度200℃、金型温度80℃、冷却時間30秒)等を用いて、ショートショットやバリがでていないことを確認しながら成形する。さらに、成形後、環境温度23±2℃、湿度50±10%に16時間以上放置調整を行なう。リサイクル材の強度は、上記同様ASTM D638に準拠して、例えば万能試験機(島津製作所;オートグラフAGS−X、伸び計装着)等により、評価用試験片に対して試験速度5mm/minで引張試験を行い、評価する。強度は、均一で安定したモルフォロジーを有し、熱安定性が維持されていると大きくなる傾向にあり、導電性カーボン系充填剤の凝集や分散不良を生じたり、熱安定性が悪くリサイクル材の密度が低くなったりすると小さくなる傾向にある。
【0127】
<リサイクル材の伸度>
本実施形態に用いる100質量%リサイクル材の伸度は、10%以上であり、12%以上であることがより好ましく、14%以上であることがさらに好ましい。伸度の測定に用いる評価用試験片は、上記同様ASTM D638に準拠したタイプI射出成形片である。リサイクル材の伸度は、上記同様ASTM D638に準拠して、例えば万能試験機(島津製作所;オートグラフAGS−X、伸び計装着)等により、評価用試験片に対して試験速度5mm/minで引張試験を行い、評価する。伸度も、強度と同様、均一で安定したモルフォロジーを有し、熱安定性が維持されていると大きくなる傾向にあり、導電性カーボン系充填剤の凝集や分散不良を生じたり、熱安定性が悪くリサイクル材の密度が低くなったりすると小さくなる傾向にある。
【0128】
リサイクル材の強度及び伸度の物性値が上記数値範囲にあることで、オキシメチレン樹脂製機構部品は、生産性、導電性、及び耐久性に優れる。
【0129】
また、リサイクル材の物性が上記数値範囲にあることは、リサイクル材が熱的な安定性に優れる傾向があることを示している。よって、上記のような添加剤(F)をさらに加えることができ、さらに耐候性、摺動性、良外観等の機能を付与することができる。
【0130】
さらに、本発明の特定の組成とリサイクル材の物性を確認することにより、もとのポリオキシメチレン樹脂組成物よりなる機構部品の熱的挙動、添加剤の脱落性、モルフォロジーの変化等の安定性を判断できる場合がある。例えば、リサイクル材の物性により、機構部品の製造時には気が付かないような機構部品の導電性の低下がわかったり、成形品の粉砕時やリサイクル材の成形時に発生する臭いにより、機構部品の耐久性の低下がわかったりする。
【0131】
以上よりポリオキシメチレン樹脂組成物の特長に加え、該オキシメチレン樹脂組成物の成形体を粉砕したものからなる成形体(本明細書において、「100質量%リサイクル材」ともいう)の物性が上記の値を満たすことにより、オキシメチレン樹脂製機構部品の生産性を維持し、耐久性を向上することが可能となる。
【0132】
[5.オキシメチレン樹脂製機構部品の使用]
本実施形態のオキシメチレン樹脂製機構部品の使用環境や用途について、以下に説明する。
【0133】
<使用環境>
本実施形態のオキシメチレン樹脂製機構部品は、主として屋内での使用が好ましく、屋外すなわち紫外線下や降雨といった環境下でも使用することができる。また、オキシメチレン樹脂製機構部品を接合部品として使用する場合は、安全に接合状態を維持することが好ましく、速い速度での変位や瞬間的な衝撃的負荷が加えられる場合に耐久性に優れることが好ましい。また、当該接合部品は、繰り返しの接合と取り外しが行なわれる場合にも耐久性に優れることが好ましい。
【0134】
本実施形態のオキシメチレン樹脂製機構部品は、凹凸等の形状を合わせたり、スナップフィット構造を有したりという、部品の一部又は全体が変形をすることで生じる反力を利用した機構を利用するため、使用されるとき常時又は断続的にクリープがかかる場合がある。上記にあるように接合部品は、オス部及び/又はメス部より構成されている。このうちどちらかが本実施形態の接合部品であってもよいし、両方でもよい。
【0135】
<用途>
本実施形態のオキシメチレン樹脂製機構部品は、特に限定されないが、例えば、ボス、リブ、クリップ、ボタン、ホルダー、コネクター、ジョイント、スナップフィット、車輪、ローラ、コロ、ワッシャ、スペーサ、ブッシュ、ロータ、バット、スイベル、軸受、軸穴、軸、プーリ、ギアからなる群より選択される少なくとも1種の機構を有する部品であることが好ましい。
【0136】
本実施形態のオキシメチレン樹脂製機構部品の用途としては、特に限定されないが、例えば、OA機器、音楽・映像・情報通信機器、電気電子機器、自動車、工業機器、農業機器、医療用機器、衣料や雑貨等の接合部への使用が挙げられる。さらに具体的には、自動車や工業用設備に外装用化粧板、各種電気配管類、気体状又は液体状の燃料配管類を胴部に固定するために使用するクリップ(パイピングクリップ)、電気通信機器やセンサー類のホルダー(センサーホルダー)、金属管やケーブル類同士の取りまとめたり接続したりするためのコネクター(ケーブルコネクター)等が挙げられる。
【実施例】
【0137】
以下、本発明を具体的な実施例と、これとの比較例を挙げてより詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0138】
先ず、実施例及び比較例におけるオキシメチレン樹脂製機構部品を形成するオキシメチレン樹脂組成物(P)等について説明する。
〔オキシメチレン樹脂製機構部品を形成するオキシメチレン樹脂組成物(P)〕
オキシメチレン樹脂組成物(P)を調製する原材料としては、以下に示すポリオキシメチレン(A)及び安定剤(B)等を用いた。
【0139】
(原材料)
<ポリオキシメチレン(A)>
(1)ポリオキシメチレンの製造
ポリオキシメチレンは、以下のようにして調製した。まず、下記のようにして重合工程を実施した。熱媒を通すことのできるジャケット付セルフクリーニングタイプの二軸パドル型連続混合反応機(スクリュー径3インチ、径Dに対する長さLの比(以下、「L/D」という。)=10)を80℃に調整した。主モノマーとしてトリオキサンを3,750g/hr、コモノマーとして1,3−ジオキソランを25〜150g/hr、かつ、連鎖移動剤としてメチラールを2.0〜8.0g/hrの範囲で調整を行ない、前記連続混合反応機に連続的にフィードした。
【0140】
また、重合触媒として三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテラートの1質量%シクロヘキサン溶液を、当該触媒がトリオキサン1molに対して2.0×10
−5molになるように調整し、前記連続混合反応機に添加して重合を行い、重合フレークを得た。
【0141】
得られた重合フレークを粉砕した後、トリエチルアミン1質量%水溶液中に、前記粉砕物を投入して撹拌し、重合触媒を失活させた。その後、重合フレークを含むトリエチルアミン1質量%水溶液を、濾過、洗浄及び乾燥を順次行い、粗ポリオキシメチレンコポリマーを得た。
【0142】
得られた粗ポリオキシメチレンコポリマー1質量部に対し、第4級アンモニウム化合物としてトリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム蟻酸塩を、下記数式(α)を用いて窒素の量に換算した場合に20ppmとなる量相当を添加し、均一に混合した後、120℃で3時間乾燥し、乾燥ポリマーを得た。
第4級アンモニウム化合物の添加量=P×14/Q ・・・(α)
(式(α)中、Pは第4級アンモニウム化合物の粗ポリオキシメチレンコポリマーに対する濃度(質量ppm)を表し、「14」は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を表す。)
【0143】
次に、得られた乾燥ポリマーを用いて末端安定化及び造粒工程を以下のとおり実施した。ベント付きスクリュー型二軸押出機(プラスチック工業(株)製、BT−30、L/D=44、設定温度200℃、回転数80rpm)の前段部分に、得られた乾燥ポリマーを添加し、さらに当該乾燥ポリマー100質量部に対して0.5質量部の水を添加し、ポリマー末端を安定化させつつ減圧脱気を行った。
【0144】
次に、上記乾燥ポリマー100質量部に対し、安定剤としてイルガノックス245(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)0.2質量部を予めヘンシェルミキサーにて1分間混合した。得られた混合物を、上記二軸押出機の後段部分にあるサイドフィーダーから添加し、200℃に設定したベント付きスクリュー型二軸押出機(プラスチック工業(株)製 BT−30、L/D=44)にてスクリュー回転数80rpmとし、24アンペアで溶融混練してポリオキシメチレン(A−1)のペレットを得た。原料投入からペレット採取まで、できるだけ酸素の混入を避けて操作を行った。さらに、上記コモノマーや連鎖移動剤を調整して、同様の操作により3種のポリオキシメチレン(A−2)〜(A−4)を得た。
【0145】
(2)ポリオキシメチレンの評価
得られた4種のポリオキシメチレン(A−1)〜(A−4)のメルトフローレート(MFR)を測定した。結果を下記表1に示す。ここでメルトフローレートは次のようにして求めた。上記ポリオキシメチレン(A−1)〜(A−4)のペレットを用い、測定前に80℃、2時間オーブン(エスペック(株)製、GPH−102)にて乾燥を行なった。その後、メルトインデクサ(東洋精機(株)製、F−W01)を用いて、ASTM D1238(温度190℃)に準拠して測定した。
【0146】
また、得られた4種のポリオキシメチレン(A−1)〜(A−4)のオキシメチレンユニットa(100mol)に対するオキシアルキレンユニットb(mol)の割合(以下「b/a」とも記す。)を求めた。結果を下記表1に示す。ここで(b/a)は、次のようにして求めた。上記ポリオキシメチレンのペレットを、溶媒であるヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)−d2(D化率97%、和光純薬98%assay)中に、24時間かけて溶解させることにより、ポリオキシメチレンの1.5質量%溶液を調製した。上記のポリオキシメチレンの1.5質量%溶液を検体として、JEOL−400核磁気共鳴分光計(1H:400MHz)を用い、55℃及び積算回数500回の条件下、オキシメチレンユニットaと、当該ユニットaを除くオキシアルキレンユニットbとの帰属ピークを積分した。このようにして得られた積分値から、オキシメチレンユニットa(100mol)に対するオキシアルキレンユニットb(mol)の割合を求めた。
【0147】
【表1】
【0148】
<安定剤(B)>
安定剤(B)として、下記(B−1)〜(B−7)を用いた。
(B−1):反応性窒素含有化合物(旭化成ケミカルズ(株)製、ポリアミド系化合物/NA100)
(B−2):反応性窒素含有化合物(日産化学工業(株)製、メラミン系化合物/2,4,6−トリアミノ−1,3,5トリアジン)
(B−3):反応性窒素含有化合物(旭化成ファインケム(株)製、ポリβアラニン系化合物/H3)
(B−4):反応性窒素含有化合物(三共ライフテック(株)製、ヒンダードアミン系化合物/サノールLS−770)
(B−5):反応性窒素含有化合物(日本ファインケム(株)製、ヒドラジド系化合物/SDH)
(B−6):有機酸の金属塩(日東化成(株)製、ジステアリン酸カルシウム/HCS)
(B−7):無機酸の金属塩(日本タルク(株)製、水和ケイ酸金属/MSタルク)
【0149】
<導電性カーボン系充填剤(C)>
導電性カーボン系充填剤(C)として、下記(C−1)〜(C−34)を用いた。
(C−1):カーボンブラック(ライオンアクゾ(株)製、ケッチェンEC、粒子状;(長径/短径)≦4)
(C−2):カーボンファイバー(三菱レイヨン(株)製、短繊維CF/TR06Q、繊維状;(長径/短径)>8)
(C−3):カーボンブラック(エポニックデグサジャパン(株)製、プリンテックスXE2、粒子状;(長径/短径)≦4)
(C−4):カーボンファイバー(東レ(株)製、ミルドCF30μm/MLD30、繊維状;8≧(長径/短径)>4)
【0150】
<熱硬化性樹脂(D)>
熱硬化性樹脂(D)として、下記(D−1)〜(D−3)を用いた。
(D−1):エポキシ系樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製、ECN280)
(D−2):エポキシ系樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製、ECN1299)
(D−3):フェノール系樹脂(住友デゥレズ(株)製、PR50731)
【0151】
<硬化剤(E)>
硬化剤(E)として、下記(E−1)〜(E−3)を用いた。
(E−1):塩基性リン系化合物(北広化学工業(株)製、TPP)
(E−2):塩基性リン系化合物((株)ワコーケミカル製、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン)
(E−3):ジシアンジアミド誘導体(日本カーバイド(株)製、ジシアンジアミド)
【0152】
<その他の添加剤(F)>
その他の添加剤(F)として、下記(F−1)〜(F−4)を用いた。
(F−1):オレフィン系柔軟材(三井化学(株)製、タフマーA4085/エチレン−ブテン共重合体)
(F−2):アルコール系摺動剤(日本油脂(株)製、NAA−422/ベヘニルアルコール)
(F−3):シリコン系摺動剤(信越化学工業(株)製、X22−2159/ポリジメチルシロキサン含有MB)
(F−4):脂肪酸エステル系摺動剤(日本油脂(株)製、スパームアセチ/ミリスチン酸セチル)
【0153】
(オキシメチレン樹脂組成物(P)の調製)
上記の原材料(A)〜(F)を用いて、下記表2及び表3に示す配合量でオキシメチレン樹脂組成物(P0〜P44)を製造した。具体的には、2軸押出機(東芝機械(株)製TEM−48SS押出機(L/D=58.4、1〜14の独立したバレルゾーンよりなり、1よりトップフィードが、7と10よりサイドフィードが可能であり、13に真空ベント口を有する。また、先端部15にダイヘッドを有する。))を用いて溶融混練し、ペレタイズしてオキシメチレン樹脂組成物(P)のペレットを製造した。原材料のフィードは、(C)成分を除く全ての成分をブレンダーで均一に混合した混合物をトップより行い、(C)成分は単独でバレルゾーン7よりサイドより行なった。このときバレルゾーン10のサイドフィーダーは何も供給しない状態(空回し)とし、バレルゾーン13から真空ポンプにより脱気を行った。スクリュー回転数を300rpm、押出量を200kg/hの条件で溶融混練し、ストランドバスにより固化後ペレタイズすることにより、オキシメチレン樹脂組成物(P)を得た。
【0154】
【表2】
【0155】
【表3】
【0156】
〔実施例1〜
20、参考例21、22、実施例23〜31、比較例1〜14、参考例1〕
[オキシメチレン樹脂製機構部品の作製]
上記オキシメチレン樹脂組成物(P0〜P44)を用いて、
図4に示すような機構部に
嵌合機構を有する、実施例1〜
20、参考例21、22、実施例23〜31、比較例1〜14、参考例1のオキシメチレン樹脂製機構部品を以下の通り作製した。
【0157】
(機構部品の作製)
上記調製したオキシメチレン樹脂組成物(P0)〜(P44)を用い、射出成形機((株)日本精鋼所製、J110AD−180H)を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度80℃を目安とし、十分に充填しバリが出ていないことを確認しながら射出成形することで、
図4に示すような機構部品を作製した。
図5に、実施例で評価に用いたオキシメチレン樹脂製機構部品の評価部位の写真を示す。
【0158】
[リサイクル材の物性測定]
上記オキシメチレン樹脂組成物のペレット(P0)〜(P44)を用いて上記のとおり機構部品を作製した後、機構部品を粉砕機(槇野産業(株)社製、粉砕機DD−2−3.7)により粉砕し、最大3mm大のフレークとした。このフレークを用いて、下記方法により物性(強度、伸度)を測定した。測定は全て、環境温度23±2℃、湿度50±10%にて測定し、n=5で行い、その平均を物性値とした。結果を上記表4及び表5に示す。
【0159】
(強度)
強度の測定に用いた評価用試験片は、ASTM D638に準拠したタイプI射出成形片とした。射出成形機(東芝機械;IS−100E、シリンダー温度200℃、金型温度80℃、冷却時間30秒)等を用いて、ショートショットやバリがでていないことを確認しながら成形した。さらに、成形後、環境温度23±2℃、湿度50±10%に16時間以上放置調整を行なった。また、強度の評価は、上記同様ASTM D638に準拠して、例えば万能試験機(島津製作所;オートグラフAGS−X、伸び計装着)等により、試験速度5mm/minで引張試験を行い、オキシメチレン樹脂組成物の強度とした。
【0160】
(伸度)
伸度の測定に用いた評価用試験片は、上記同様ASTM D638に準拠したタイプI射出成形片とした。また、伸度の評価は、上記同様ASTM D638に準拠して、例えば、万能試験機(島津製作所;オートグラフAGS−X、伸び計装着)により、試験速度5mm/minで引張試験を行い、オキシメチレン樹脂組成物の伸度とした。
【0161】
[オキシメチレン樹脂製機構部品の評価]
オキシメチレン樹脂製機構部品について、生産性、導電性、耐久性を以下のとおり評価した。評価結果を下記表4及び表5に示す。
【0162】
(オキシメチレン樹脂製機構部品の生産性の評価)
オキシメチレン樹脂製機構部品の生産性の評価を、以下のオキシメチレン樹脂組成物の生産性及びオキシメチレン樹脂製機構部品の成形性評価により行った。
【0163】
<オキシメチレン樹脂組成物の生産性評価>
上記オキシメチレン樹脂組成物の生産性評価は、ポリオキシメチレンとカーボンブラックだけを溶融混練したオキシメチレン樹脂組成物P0を造粒したときを基準として、同等の電力における単位時間当たりの平均造粒量、ストランドの状態、並びにペレットの外観及び臭気について、総合的に行った。評価基準を以下に示す。
[評価基準]
×:P0の生産性と比較して、明らかに低下した場合
◇:P0の生産性と比較して、同等のレベルであった場合
○:P0の生産性と比較して、改善がみられた場合
◎:P0の生産性と比較して、大きく改善がみられた場合
【0164】
なお、上記「明らかに低下」とは、P0と比較した場合に、単位時間当たりの平均造粒量の低下率が40%より大きかった場合、食い込み不良やストランドに切れ等が発生して巻き取りが不安定になった場合、又はペレットの外観(色や形状)が悪かったり、若しくはペレットの臭気が強かったりして作業性に影響を与えた場合をいう。
上記「改善がみられた」とは、P0と比較した場合に、単位時間当たりの平均造粒量の増加が5%以上10%未満であった場合、平均造粒量は大きく変わらなくてもペレットの外観(色や形状)が良好になった場合、又はペレットの臭気が軽減したりして作業性が改善した場合をいう。
さらに、上記「大きく改善がみられた」とは、P0と比較した場合に、単位時間当たりの平均造粒量の増加が10%以上であり、かつペレットの外観(色や形状)が良好になった場合、又はペレットの臭気が軽減したりして作業性が改善した場合をいう。
【0165】
<オキシメチレン樹脂製機構部品の成形性評価>
上記オキシメチレン樹脂組成物を用いて作製した上記機構部品の成形性評価は、ポリオキシメチレンとカーボンブラックを溶融混練したオキシメチレン樹脂組成物P0を用いて機構部品を成形したときを基準として、連続して1,000ショット成形した後の成形品の外観(シルバーやフローマーク等)や着色状態(ブリードや白化)、モールドデポジット等を目視で確認し、総合的に行なった。評価は成形した機構部品の5つの平均をとった。評価基準を以下に示す。
[評価基準]
×:P0の成形性と比較して、明らかに低下した場合
◇:P0の成形性と比較して、同等のレベルであった場合
○:P0の成形性と比較して、改善がみられた場合
◎:P0の成形性と比較して、大きく改善がみられた場合
【0166】
なお、上記「明らかに低下」とは、モールドデポジットの悪化や機構部品全体にシルバーやフローマーク等の明らかな不良が確認された場合をいう。
上記「改善がみられた」とは、モールドデポジットの改善やシルバーやフローマーク、ブリード等の一つ以上の点で改善がみられた場合をいう。
さらに、上記「大きく改善」とは、金型転写が大きく改善し、平滑性・光沢性が改善された場合をいう。
【0167】
(オキシメチレン樹脂製機構部品の導電性の評価)
図4に示すオキシメチレン樹脂製機構部品のA−A’の部分に四探針ASPプローブ(ピン間5mm、ピン先0.37mmRのピンを4本、バネ圧210g/1本、JIS K7194対応)を押し当て、三菱化学製ロレスタ−GPにより測定電圧90Vで体積抵抗率を測定し、評価を行なった。体積抵抗率の評価基準を以下に示す。
[評価基準]
×:体積抵抗率が500Ω・cm以上の場合
△:体積抵抗率が100Ω・cm以上500Ω・cm未満の場合
◇:体積抵抗率が50Ω・cm以上100Ω・cm未満の場合
○:体積抵抗率が10Ω・cm以上50Ω・cm未満の場合
◎:体積抵抗率が10Ω・cm未満の場合
【0168】
(オキシメチレン樹脂製機構部品の耐久性の評価)
オキシメチレン樹脂製機構部品の耐久性の評価は、オキシメチレン製機構部品にパイプ(矢崎化工(株)製、28ΦイレクターパイプHGA−4000)を嵌合するときに要する装着力、同様のパイプを繰り返し嵌合するときの着脱性、同様のパイプを嵌合させて高温下で荷重を加えたときの嵌合保持性により評価を行なった。評価は全て3回ずつ行い、その平均を評価値とした。
【0169】
<装着力の評価>
図6に示すようにオキシメチレン樹脂製機構部品を固定し、パイプを嵌合させる(50mm/min)ときの力を、万能試験機(島津製作所;オートグラフAGS−X)を用いて測定し、このときの荷重を装着力の評価値とした。装着力は以下の評価基準で評価した。
[評価基準]
×:荷重が100N未満の場合
△:荷重が100N以上120N未満の場合
◇:荷重が120N以上130N未満の場合
○:荷重が130N以上140N未満の場合
◎:荷重が140N以上の場合
【0170】
<着脱性の評価>
上記同様、
図6に示すようにオキシメチレン樹脂製機構部品を固定し、「パイプを1秒間100mm/secで下降し嵌合し、嵌合後0.5秒後に1秒間100mm/secで上昇し取り外し、0.5秒待機する」を繰り返し、破壊又は機能を失うまでの回数を着脱性の評価値とした。着脱性は以下の評価基準で評価した。
[評価基準]
×:回数が500回未満の場合
△:回数が500回以上800回未満の場合
◇:回数が800回以上1,000回未満の場合
○:回数が1,000回以上1,500回未満
◎:回数が1,500回以上の場合
【0171】
<嵌合保持性の評価>
図7に示すようにオキシメチレン樹脂製機構部品を固定し、パイプを嵌合し、パイプと重なり合わせて10kgとなるように機構部品に荷重を加え、その状態で80℃のオーブンに放置し、破壊又は機能を失うまでの時間を評価値とした。嵌合保持性は以下の評価基準で評価した。
[評価基準]
×:時間が400時間未満の場合
△:時間が400時間以上600時間未満の場合
◇:時間が600時間以上800時間未満の場合
○:時間が800時間以上1,000時間未満の場合
◎:時間が1,000時間以上の場合
【0172】
[実施例1〜3、比較例1〜4、参考例1]
実施例1〜3、比較例1〜4、参考例1の機構部品の評価結果を下記表4に記す。実施例1〜3、比較例1〜4、参考例1の評価結果より、オキシメチレン樹脂組成物が、本発明に規定するように、二種類以上の安定剤を所定の範囲で含み、その他原材料及びリサイクル材の物性の規定を満足することで、オキシメチレン樹脂製機構部品は、生産性、導電性、及び耐久性に優れることがわかった。また、参考例1について、機構部品の成形時と比較すると、機構部品の粉砕及び試験片の成形時の方が著しく臭いがきつくなっていた。一方、各実施例は参考例1と比べて機構部品の粉砕及び試験片の成形時でも臭いが少なかった。
【0173】
[実施例4、5、比較例5、6]
実施例4、5、比較例5、6の機構部品の評価結果を下記表4に記す。実施例2、4、5、比較例5、6、参考例1の評価結果より、オキシメチレン樹脂組成物が、本発明に規定するように、導電性カーボン系充填剤を所定の範囲で含み、その他原材料及びリサイクル材の物性の規定を満足することで、オキシメチレン樹脂製機構部品は、生産性、導電性、及び耐久性に優れることがわかった。
【0174】
[実施例6、7、比較例7、8]
実施例6、7、比較例7、8の機構部品の評価結果を下記表4に記す。実施例2、6、7、比較例7、8、参考例1の評価結果より、オキシメチレン樹脂組成物が、本発明に規定するように、熱硬化性樹脂を所定の範囲で含み、その他原材料及びリサイクル材の物性の規定を満足することで、オキシメチレン樹脂製機構部品は、生産性、導電性、及び耐久性に優れることがわかった。
【0175】
[実施例8、9、比較例9〜12]
実施例8、9、比較例9〜12の機構部品の評価結果を下記表4に記す。実施例2、8、9、比較例9〜12、参考例1の評価結果より、オキシメチレン樹脂組成物が、本発明に規定するように、二種類以上の硬化剤を所定の範囲で含み、その他原材料及びリサイクル材の物性の規定を満足することで、オキシメチレン樹脂製機構部品は、生産性、導電性、及び耐久性に優れることがわかった。
【0176】
[比較例13、14]
比較例13、14の機構部品の評価結果を下記表4に記す。実施例2、比較例13〜14、参考例1の評価結果より、本発明に規定するように、オキシメチレン樹脂組成物のリサイクル材が所定の物性の範囲であり、その他原材料を所定の範囲で含むことで、オキシメチレン樹脂製機構部品は、生産性、導電性、及び耐久性に優れることがわかった。また、比較例14のリサイクル材の強度は、用いた組成物P23の当初の強度と比較すると大きく低下していた。
【0177】
[実施例10〜12]
実施例10〜12の機構部品の評価結果を下記表5に記す。実施例2、10〜12、参考例1の評価結果より、オキシメチレン樹脂組成物が、本発明の好ましいポリオキシメチレンを含み、その他原材料及びリサイクル材の物性の規定を満足することで、オキシメチレン樹脂製機構部品は、生産性、導電性、及び耐久性に優れることがわかった。
【0178】
[実施例13〜20]
実施例13〜20の機構部品の評価結果を下記表5に記す。実施例2、13〜20、参考例1の評価結果より、オキシメチレン樹脂組成物が、本発明の好ましい安定剤を所定量含み、その他原材料及びリサイクル材の物性の規定を満足することで、オキシメチレン樹脂製機構部品は、生産性、導電性、及び耐久性に優れることがわかった。
【0179】
[
参考例21、22]
参考例21、22の機構部品の評価結果を下記表5に記す。実施例2、
参考例21、22、参考例1の評価結果より、オキシメチレン樹脂組成物が、本発明の好ましい導電性カーボン系安定剤を所定量含み、その他原材料及びリサイクル材の物性の規定を満足することで、オキシメチレン樹脂製機構部品は、生産性、導電性、及び耐久性に優れることがわかった。
【0180】
[実施例23、24]
実施例23、24の機構部品の評価結果を下記表5に記す。実施例2、23、24、参考例1の評価結果より、オキシメチレン樹脂組成物が、本発明の好ましい熱硬化性樹脂を含み、その他原材料及びリサイクル材の物性の規定を満足することで、オキシメチレン樹脂製機構部品は、生産性、導電性、及び耐久性に優れることがわかった。
【0181】
[実施例25〜27]
実施例25〜27の機構部品の評価結果を下記表5に記す。実施例2、25〜27、参考例1の評価結果より、オキシメチレン樹脂組成物が、本発明の好ましい硬化剤を含み、その他原材料及びリサイクル材の物性の規定を満足することで、オキシメチレン樹脂製機構部品は、生産性、導電性、及び耐久性に優れることがわかった。
【0182】
[実施例28〜30]
実施例28〜30の機構部品の評価結果を下記表5に記す。実施例2、28〜30、参考例1の評価結果より、オキシメチレン樹脂組成物が、本発明の好ましい添加剤を含み、その他原材料及びリサイクル材の物性の規定を満足することで、オキシメチレン樹脂製機構部品は、生産性、導電性、及び耐久性に優れることがわかった。
【0183】
[実施例31]
P3と同様の組成を用いて、製造時に(C)成分を除く全ての成分のフィードをトップから行っていたことを、トップとバレルゾーン7の二か所から(7:3)の割合で分割フィードした以外は実施例2と同様に評価をおこなった。評価結果を下記表5に記す。実施例2、31の評価結果より、オキシメチレン樹脂組成物が上記製造方法を用いることで、オキシメチレン樹脂製機構部品は、生産性、導電性、及び耐久性に優れることがわかった。
【0184】
【表4】
【0185】
【表5】