(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
25℃のときの粘度が1mPa・s以上200mPa・s以下であり、且つエネルギー線により重合して得られる膜のガラス転移温度が−40℃以上40℃以下である請求項1〜4のうちの1項記載の有機EL装置用樹脂組成物。
基板と、前記基板上に、少なくとも一方が透明又は半透明の一対の電極間に発光層を含む有機EL層を挟んで構成した有機EL素子と、前記有機EL素子を封止する無機物膜と有機物膜とを交互に積層した封止層と、前記封止層の最上位有機物膜上に密着して、前記最上位有機物膜の上面の全てを覆うように配置される封止基板とを備え、前記有機物膜が、請求項1〜5のうちの1項記載の樹脂組成物である有機EL装置。
請求項9記載のプラスチック基板が、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートからなる群のうちの1種以上である有機EL装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明にかかる有機EL装置及びその製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。尚、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0014】
以下、基板上に形成された有機EL素子の基板と反対側から光を照射するトップエミッション型の有機EL装置を例に説明する。トップエミッション型の有機EL装置は、基板上に、陽極と、発光層を含む有機EL層と、陰極と、が順に積層された有機EL素子と、この有機EL素子全体を覆う無機物膜と有機物膜の積層体からなる封止層と、封止層上に設けられる封止基板と、が順に形成された構造を有する。
【0015】
ここで、基板としては、ガラス基板やシリコン基板、プラスチック基板等種々のものを用いることができる。これらの中では、フレキシブル性の点で、プラスチック基板が好ましい。
【0016】
プラスチック基板に用いられるプラスチックとしては、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオキサジアゾール、芳香族ポリアミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリチアゾール、ポリパラフェニレンビニレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン等が挙げられる。これらの中では、低水分透過性、低酸素透過性、耐熱性に優れる点で、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオキサジアゾール、芳香族ポリアミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリチアゾール、及びポリパラフェニレンビニレンからなる群のうちの1種以上が好ましく、紫外光又は可視光等のエネルギー線の透過性が高い点で、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートからなる群のうちの1種以上がより好ましい。
【0017】
陽極としては、比較的仕事関数の大きな(4.0eVより大きな仕事関数を持つものが好適である)、導電性の金属酸化物膜や半透明の金属薄膜等が一般的に用いられる。例えば、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide、以下、ITOという)、酸化スズ等の金属酸化物、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、銅(Cu)等の金属又はこれらのうちの少なくとも1つを含む合金、ポリアニリン又はその誘導体、ポリチオフェン又はその誘導体等の有機の透明導電膜等を用いることができる。陽極は、必要があれば二層以上の層構成により形成することができる。陽極の膜厚は、電気伝導度を(ボトムエミッション型の場合には、光の透過性も)考慮して、適宜選択することができる。陽極の膜厚は、10nm〜10μmが好ましく、20nm〜1μmがより好ましく、50nm〜500nmが最も好ましい。陽極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。トップエミッション型の場合には、基板側に照射される光を反射させるための反射膜を陽極の下に設けてもよい。
【0018】
有機EL層は、少なくとも有機物からなる発光層を含んでいる。この発光層は、蛍光又は燐光を発光する有機物(低分子化合物又は高分子化合物)を有する。発光層は、更に、ドーパント材料を含んでいてもよい。有機物としては、色素系材料、金属錯体系材料、高分子系材料等が挙げられる。ドーパント材料は、有機物の発光効率の向上や発光波長を変化させる等の目的で、必要に応じて有機物中にドープされるものである。これらの有機物と必要に応じてドープされるドーパントとからなる発光層の厚さは通常20〜2,000Åである。
【0019】
(色素系材料)
色素系材料としては、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等が挙げられる。
【0020】
(金属錯体系材料)
金属錯体系材料としては、イリジウム錯体、白金錯体等の三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、中心金属に、テルビウム(Tb)、ユーロピウム(Eu)、ジスプロシウム(Dy)等の希土類金属、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、ベリリウム(Be)等を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体等が挙げられる。
【0021】
(高分子系材料)
高分子系材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素体や金属錯体系発光材料を高分子化したもの等が挙げられる。
【0022】
上記発光性材料のうち、青色に発光する材料としては、ジスチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、及びそれらの重合体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。これらの中では、高分子材料のポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体からなる群のうちの1種以上が好ましい。
【0023】
緑色に発光する材料としては、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、及びそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。これらの中では、高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体からなる群のうちの1種以上が好ましい。
【0024】
赤色に発光する材料としては、クマリン誘導体、チオフェン環化合物、及びそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。これらの中では、高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体からなる群のうちの1種以上が好ましい。
【0025】
(ドーパント材料)
ドーパント材料としては、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾロン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン等が挙げられる。
【0026】
有機EL層は、発光層以外に、発光層と陽極との間に設けられる層と、発光層と陰極との間に設けられる層と、を適宜設けることができる。まず、発光層と陽極との間に設けられる層としては、陽極からの正孔注入効率を改善する正孔注入層や、陽極、正孔注入層又は陽極により近い正孔輸送層から発光層への正孔注入を改善する正孔輸送層等が挙げられる。発光層と陰極との間に設けられる層としては、陰極からの電子注入効率を改善する電子注入層や、陰極、電子注入層又は陰極により近い電子輸送層からの電子注入を改善する機能を有する電子輸送層等が挙げられる。
【0027】
(正孔注入層)
正孔注入層を形成する材料としては、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン誘導体等が挙げられる。
【0028】
(正孔輸送層)
正孔輸送層を構成する材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体等が挙げられる。
【0029】
これらの正孔注入層又は正孔輸送層が、電子の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの正孔輸送層や正孔注入層を電子ブロック層ということもある。
【0030】
(電子輸送層)
電子輸送層を構成する材料としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体等が挙げられる。誘導体としては、金属錯体等が挙げられる。
【0031】
(電子注入層)
電子注入層としては、発光層の種類に応じて、カルシウム(Ca)層の単層構造からなる電子注入層、又は、Caを除いた周期律表IA族とIIA族の金属であり且つ仕事関数が1.5〜3.0eVの金属及びその金属の酸化物、ハロゲン化物及び炭酸化物からなる群のうちの1種以上で形成された層とCa層との積層構造からなる電子注入層等が挙げられる。仕事関数が1.5〜3.0eVの、周期律表IA族の金属又はその酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物としては、リチウム(Li)、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、酸化リチウム、炭酸リチウム等が挙げられる。仕事関数が1.5〜3.0eVの、Caを除いた周期律表IIA族の金属又はその酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物としては、ストロンチウム(Sr)、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
【0032】
これらの電子輸送層又は電子注入層が、正孔の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの電子輸送層や電子注入層を正孔ブロック層ということもある。
【0033】
陰極としては、仕事関数が比較的小さく(4.0eVより小さな仕事関数を持つものが好適である)、発光層への電子注入が容易な透明又は半透明の材料が好ましい。陰極としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、Be、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、Al、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)、Zn、イットリウム(Y)、インジウム(In)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、Eu、Tb、イッテルビウム(Yb)等の金属、又は上記金属のうち2つ以上の合金、若しくはそれらのうち1つ以上と、Au,Ag,Pt,Cu,マンガン(Mn)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、スズ(Sn)のうち1つ以上との合金、又は、グラファイト若しくはグラファイト層間化合物、又は、ITO、酸化スズ等の金属酸化物等が挙げられる。
【0034】
陰極を2層以上の積層構造としてもよい。この例としては、上記の金属、金属酸化物、フッ化物、これらの合金と、Al,Ag,クロム(Cr)等の金属との積層構造等が挙げられる。陰極の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して、適宜選択することができるが、陰極の膜厚は、10nm〜10μmが好ましく、20nm〜1μmがより好ましく、50nm〜500nmが最も好ましい。陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が挙げられる。
【0035】
これらの発光層と陽極との間と、発光層と陰極との間に設けられる層は、製造する有機EL装置に求められる性能に応じて、適宜選択可能である。例えば、本発明で使用される有機EL素子の構造としては、下記の(i)〜(xv)の層構成のいずれかを有することができる。
【0036】
(i)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(ii)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
(v)陽極/発光層/電子注入層/陰極
(vi)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
(vii)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
(viii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
(ix)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
(x)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極
(xi)陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(xii)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(xviii)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(xiv)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(xv)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(ここで、「/」は各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
【0037】
封止層は、水蒸気や酸素等の気体が有機EL素子に接触することを防ぐために、上記気体に対して高いバリア性を有する層で有機EL素子を封止するために、設けられる。この封止層は、無機物膜と有機物膜とが下から交互に形成される。無機/有機積層体は2回以上繰り返して形成されてもよい。
【0038】
無機/有機積層体の無機物膜は、有機EL装置が置かれる環境に存在する水蒸気や酸素等の気体に有機EL素子が曝されることを防止するために設けられる膜である。無機/有機積層体の無機物膜は、ピンホール等の欠陥が少ない連続的な緻密な膜であることが好ましい。無機物膜としては、SiN膜、SiO膜、SiON膜、Al
2O
3膜、AlN膜等の単体膜やこれらの積層膜等が挙げられる。
【0039】
無機/有機積層体の有機物膜は、無機物膜上に形成されたピンホール等の欠陥を満たすために、表面に平坦性を付与するために、設けられる。有機物膜は、無機物膜が形成される領域よりも狭い領域に形成される。これは、有機物膜を無機物膜の形成領域と同じか又はそれよりも広く形成すると、有機物膜が露出する領域で劣化してしまうからである。但し、封止層全体の最上層に形成される有機物膜(以下、最上位有機物膜という)は、無機物膜の形成領域とほぼ同じ領域に形成される。そして、封止層の上面が平坦化されるように形成される。有機物膜としては、上記した無機物膜との密着性能が良好な接着機能を有する、(a)ポリエン化合物と(b)ポリチオール化合物とを反応させたものが用いられる。
【0040】
本発明で使用する(a)ポリエン化合物とは、1分子当たり2個以上の炭素−炭素不飽和結合を有するアルケン類である。(a)ポリエン化合物としては、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等のビニル化合物、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレエート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、テトラアリロキシエタン等のアリル化合物、ポリオキシプロピレンジアリルエーテル等のアリルエーテル化合物等が挙げられる。これらの中では、(b)ポリチオール化合物との反応性が優れる点で、アリル化合物が好ましい。
【0041】
本発明は、低粘度を確保し、重合後の有機物膜のガラス転移温度を低くする目的で、(b)アルキレンオキサイド基を有するポリチオール化合物を含有する。(b)アルキレンオキサイド基を有するポリチオール化合物は1分子当たり2個以上のチオール基と、下記式(1)で表されるアルキレンオキサイド基とを有する化合物である。
【0042】
式(1)
−(−C
nH
2nO−)
m−
(式中のmは1〜12の整数、nは2〜30の整数を表す。式中のアルキル鎖は直鎖型、分岐型のいずれであっても構わない。)
【0043】
(b)アルキレンオキサイド基を有するポリチオール化合物としては、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、1,11−ジメルカプト3,6,9−トリオキサドデカン、ジエチレングリコールビスチオグリコレート、トリエチレングリコールビスチオグリコレート、テトラエチレングリコールビスチオグリコレート、ペンタエチレングリコールビスチオグリコレート、ヘキサエチレングリコールビスチオグリコレート、オクタエチレングリコールビスチオグリコレート、ドデカンエチレングリコールビスチオグリコレート、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヘキサエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、オクタエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ドデカンエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、トリエチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、ヘキサエチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、オクタエチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、ドデカンエチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、ポリエチレングリコールビスチオグリコレート、ポリエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ポリエチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、ポリプロピレングリコールビスチオグリコレート、ポリプロピレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ポリプロピレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、トリメチロールプロパン−トリス−(3−メルカプトプロピネート)のエチレンオキサイド付加物、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレートのエチレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)のエチレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート) のエチレンオキサイド付加物、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)のエチレンオキサイド付加物、1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)のエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらの中では、粘度とガラス転移温度が低い点で、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタンが好ましい。
【0044】
実施形態の目的を損なわない範囲で、本発明の樹脂組成物にアルキレンオキサイド基を有さないポリチオール化合物を含有してもよい。
【0045】
(a)ポリエン化合物と(b)アルキレンオキサイド基を有するポリチオール化合物の質量比は90:10〜10:90が好ましく、80:20〜20:80がより好ましく、70:30〜30:70が最も好ましい。
【0046】
本発明の樹脂組成物は、低粘度、及び粘度の安定性付与を目的として、(c)重合禁止剤を含有する。(c)重合禁止剤としては、キノン系化合物とニトロソアミン系化合物からなる群のうちの1種以上が挙げられる。キノン系化合物としては、β−ナフトキノン、2−メトキシ−1,4−ナフトキノン、4−メトキシ−1−ナフトール、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジ−tert−ブチル−p−ベンゾキノン等が挙げられる。ニトロソアミン系化合物としては、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩(クペロン)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。キノン系化合物の中では、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルからなる群のうちの1種以上が好ましい。ニトロソアミン系化合物の中では、クペロン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩からなる群のうちの1種以上が好ましい。
【0047】
(c)重合禁止剤の含有量は、ポリエン化合物とポリチオール化合物の合計100質量部に対して、0.00001〜1.0質量部が好ましく、0.0005〜0.1質量部がより好ましく、0.001〜0.01質量部が最も好ましい。
【0048】
実施形態の目的を損なわない範囲で、本発明の(c)重合禁止剤以外の重合禁止剤を用いてもよい。
【0049】
本発明の(d)光重合開始剤としては、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾイン安息香酸、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン誘導体、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアルキルアセトフェノン誘導体、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のα−ヒドロキシアセトフェノン誘導体、ビスジエチルアミノベンゾフェノン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン−1等のα−アミノアルキルアセトフェノン誘導体、イソブチリル−メチルフォスフィン酸メチルエステル、イソブチリル−フェニルフォスフィン酸メチルエステル、ピバロイル−フェニルフォスフィン酸メチルエステル、2−エチルヘキサノイル−フェニルフォスフィン酸メチルエステル、ピバロイル−フェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、p−トルイル−フェニルフォスフィン酸メチルエステル、o−トルイル−フェニルフォスフィン酸メチルエステル、2,4−ジメチルベンゾイル−フェニルフォスフィン酸メチルエステル、p−3級ブチルベンゾイル−フェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、ビバロイル−(4−メチルフェニル)−フォスフィン酸メチルエステル、ピバロイル−フェニルフォスフィン酸ビニルエステル、アクリロイル−フェニルフォスフィン酸メチルエステル、イソブチリル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、1−メチル−1−シクロヘキサノイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2−エチルヘキサノイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、p−トルイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、o−トルイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、p−3級ブチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、アクリロイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,2−ジメチル−ヘプタノイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、テレフタロイル−ビス−ジフェニルフォスフィンオキサイド、アジポイル−ビス−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイル−フェニルフォスフィン酸メチルエステル、2,6−ジメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイル−ジフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−フェニルフォスフィン酸メチルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,3,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−トリフォスフィン酸メチルエステル、2,4,6−トリメトキシベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジクロルベンゾイル−フェニルフォスフィン酸エステル、2,6−ジクロルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,3,4,6−テトラメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジブロムベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−フェニルフォスフィン酸メチルエステル、2,6−ジクロルベンゾイル−若しくは2,6−ジメトキシベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド誘導体、1,2−オクタンジオン,1−〔−4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)〕、エタノン1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル化合物等が挙げられる。
【0050】
本発明の有機EL装置の基材がプラスチック基材である場合、380nm以上430nm以下の光で硬化可能であり、且つ、硬化後の有機膜の透明性が高い点で、アシルフォスフィンオキサイド誘導体、オキシムエステル化合物からなる群のうちの1種以上が好ましい。
【0051】
(d)光重合開始剤の含有量は、ポリエン化合物とポリチオール化合物の合計100質量部に対して、0.001〜10質量部が好ましく、0.05〜5質量部がより好ましい。
【0052】
本実施形態の目的を損なわない範囲で、シランカップリング剤、光増感剤、光安定剤、溶剤、増量材、補強材、可塑剤、増粘剤、染料、顔料、難燃剤及び界面活性剤等の添加剤を含有してもよい。
【0053】
本発明は、(a)ポリエン化合物、(c)重合禁止剤、(d)光重合開始剤を予め混合させた後、(b)アルキレンオキサイド基を有するポリチオール化合物を混合してエネルギー線硬化性樹脂組成物を製造することが好ましい。(a)ポリエン化合物、(c)重合禁止剤、(d)光重合開始剤を予め混合する際、混合温度は、10〜150℃が好ましく、30〜80℃がより好ましい。続いて(b)アルキレンオキサイド基を有するポリチオール化合物を混合する際の混合温度は、10〜40℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。
【0054】
本発明の樹脂組成物の粘度は、B型粘度計やE型粘度計等公知の粘度計で測定することができるが、25℃のとき、1mPa・s以上200mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上150mPa・s以下がより好ましい。この範囲であれば、粘度が低すぎて、有機物膜の膜厚が薄くなりすぎたりせず、粘度が高すぎて、有機物膜の膜厚が厚くなりすぎたりすることがなく、良好な膜の平坦性を得ることができる。
【0055】
本発明の樹脂組成物のガラス転移温度は−40℃以上40℃以下が好ましく、−20℃以上10℃以下がより好ましい。−40℃以上であれば、有機物膜が硬化後にべたつくこともなく、40℃以下であれば、有機物膜が硬くなりすぎて、割れや亀裂を発生することもなく、フレキシブル性に優れた有機EL装置を提供することができる。
【0056】
ガラス転移温度の測定は、公知の動的粘弾性スペクトルメーター(例えば、S.I.Iナノテクノロジー社製のDMSシリーズや、TAインスツルメント社製のRSAシリーズ)や示差熱量計(DSC)等を用いることができる。
【0057】
本発明の樹脂組成物の透明性は、有機物膜の厚さが1μm以上10μm以下のとき、360nm以上800nm以下の紫外−可視光領域の分光透過率は97%以上が好ましく、99%以上がより好ましい。97%以上であれば、輝度、コントラストに優れた有機EL装置を提供することができる。
【0058】
本発明の封止層は、無機/有機積層体を1セットとして数えると、1〜5セット程度であることが好ましい。無機/有機積層体が6セット以上の場合には、有機EL素子に対する封止効果が5セットの場合とほぼ同じとなるからである。無機物膜の厚さは、50nm〜1μmが好ましく、有機物膜の厚さは1〜3μmが好ましい。
【0059】
封止基板は、封止層の最上位有機物膜の上面全体を覆うように密着して形成される。この封止基板は、可視光線に対して透明な基板が好ましい。可視光に対して透明な基板としては、ガラスや、アクリル、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリエステル等のプラスチック基板が挙げられる。これらの中では、フレキシブル性の点で、プラスチック基板がより好ましい。
【0060】
透明封止基板の厚さは、50μm以上300μm以下が好ましい。透明封止基板を封止層の更に上層に設けることによって、最上位有機物膜の表面が気体に触れると進行する劣化を抑えることができ、有機EL装置のバリア性を高めることができる。
【0061】
次に、このような構成を有する有機EL装置の製造方法について説明する。まず、第1の基板上に、従来公知の方法によって、所定の形状にパターニングした陽極、発光層を含む有機EL層、及び陰極を順に形成して、有機EL素子を形成する。例えば、有機EL装置をドットマトリックス表示装置として使用する場合、発光領域をマトリックス状に区切るためにバンクが形成され、このバンクで囲まれる領域に発光層を含む有機EL層が形成される。
【0062】
次いで、有機EL素子が形成された基板上に、スパッタ法等のPVD(Physical Vapor Deposition)法やプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法等のCVD法等の成膜方法によって、所定の厚さを有する第1の無機物膜を形成する。その後、溶液塗布法やスプレー塗布法等の公知の塗膜形成方法やフラッシュ蒸着法等を用いて、第1の無機物膜上に本発明の樹脂組成物を付着させる。その後、紫外線や電子線、プラズマ等のエネルギー線の照射によって、樹脂組成物が硬化し、第1の有機物膜が形成される。以上の工程によって、1セットの無機/有機積層体が形成される。
【0063】
以上に示される無機/有機積層体の形成工程が、所定の回数だけ繰り返される。但し、最後のセット、即ち最上層の無機/有機積層体に関しては、上面が平坦化するように樹脂組成物を、塗布法やフラッシュ蒸着法等によって、無機物膜の上面に付着させても良い。
【0064】
次いで、基板上の樹脂組成物を付着させた面に、透明封止基板を貼り合わせる。貼り合わせの際、位置合わせを行う。その後、透明封止基板側から、エネルギー線を照射することによって、最上層の無機物膜と透明封止基板との間に存在する、本発明の樹脂組成物を硬化させる。これによって、樹脂組成物が硬化し、最上位有機物膜を形成すると共に、最上位有機物膜と透明封止基板とが接着される。以上によって、有機EL装置の製造方法が終了する。
【0065】
無機物膜上に樹脂組成物を付着させた後、部分的にエネルギー線を照射して重合させてもよい。このようにすることで、透明封止基板を載置したときに、最上位有機物膜となる樹脂組成物の形状の崩れを防止することができる。無機物膜と有機物膜の厚さは、各無機/有機積層体で同じにしてもよいし、各無機/有機積層体で異なっていてもよい。
【0066】
上述した説明では、トップエミッション型の有機EL装置を例に挙げて説明した。有機EL層で生じる光を基板側から照射するボトムエミッション型の有機EL装置にも、本発明を適用することができる。
【0067】
本発明の有機EL素子は、面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置として用いることができる。
【0068】
本発明の実施の形態によれば、第1のプラスチック基板上に形成された有機EL素子を外気と遮断するための封止層を形成し、更にその封止層上に透明封止基板を配置したので、有機EL素子に対する十分な水蒸気と酸素に対するバリア性を有する封止構造を得ることができる。本発明の実施の形態によれば、透明封止基板と封止層との間で十分な接着強度を有する封止構造を得ることができる。
【0069】
本実施の形態によれば、封止層の最上位有機物膜を構成する本発明の樹脂組成物を付着させた後に、樹脂組成物を硬化させることなく透明封止基板を載置して、その後に樹脂組成物を硬化させるようにしたので、封止層を構成する最上位有機物膜の形成と同時に、封止層と透明封止基板との間の接着を行うことができる。その結果、本発明は、封止層と透明封止基板とを接着剤で接着する場合に比して、工程を簡略化できるという効果を有する。
【実施例】
【0070】
以下、実施例により、本発明を説明する。本発明は実施例に限定されるものではない。
【0071】
(樹脂組成物(A)の調整)
撹拌機を備えたフラスコに、ポリエン化合物として、トリアリルイソシアヌレート(日本化成社製「TAIC」)50質量部、光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製「Irgacure−819」)0.1質量部、重合禁止剤として、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩(和光純薬工業社製「Q−1301」)0.002質量部を仕込み、60℃で1時間撹拌した。撹拌後、30℃以下迄冷却し、ポリチオール化合物として、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン(丸善石油化学社製「DMDO」)50質量部を加え、更に1時間撹拌を続けることで樹脂組成物(A)を得た。
【0072】
(樹脂組成物(B)の調整)
撹拌機を備えたフラスコに、ポリエン化合物として、テトラエチレングリコールジアクリレート(新中村化学社製「A−200」)40質量部、光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製「Irgacure−819」)0.1質量部、重合禁止剤として、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩(和光純薬工業社製「Q−1301」)0.002質量部を仕込み、60℃で1時間撹拌した。撹拌後、30℃以下迄冷却し、ポリチオール化合物として、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン(丸善石油化学社製「DMDO」)60質量部を加え、更に1時間撹拌を続けることで樹脂組成物(B)を得た。
【0073】
(樹脂組成物(C)の調整)
撹拌機を備えたフラスコに、ポリエン化合物として、ジアリルマレエート(黒金化成社製「DAM」)35質量部、光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製「Irgacure−819」)0.1質量部、重合禁止剤として、クペロン(和光純薬工業社製「Q−1300」)0.002質量部を仕込み、60℃で1時間撹拌した。撹拌後、30℃以下迄冷却し、ポリチオール化合物として、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン(丸善石油化学社製「DMDO」)10質量部、トリメチロールプロパン−トリス−(3−メルカプトプロピネート)(SC有機社製「TMMP−20P」)55質量部を加え、更に1時間撹拌を続けることで樹脂組成物(C)を得た。
【0074】
(樹脂組成物(D)の調整)
撹拌機を備えたフラスコに、ポリエン化合物として、ジアリルマレエート(黒金化成社製「DAM」)30質量部、光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製「Irgacure−819」)0.1質量部、重合禁止剤として、クペロン(和光純薬工業社製「Q−1300」)0.002質量部を仕込み、60℃で1時間撹拌した。撹拌後、30℃以下迄冷却し、ポリチオール化合物として、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン(丸善石油化学社製「DMDO」)30質量部、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(昭和電工社製「カレンズMT−PE1」)40質量部を加え、更に1時間撹拌を続けることで樹脂組成物(D)を得た。
【0075】
(樹脂組成物(E)の調整)
撹拌機を備えたフラスコに、ポリエン化合物として、トリアリルイソシアヌレート(日本化成社製「TAIC」)40質量部、光重合開始剤として、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(BASF社製「LUCIRIN−TPO」)0.1質量部、重合禁止剤として、ハイドロキノン(精工化学社製「ハイドロキノン」)0.1質量部を仕込み、60℃で1時間撹拌した。撹拌後、30℃以下迄冷却し、ポリチオール化合物として、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン(丸善石油化学社製「DMDO」)60質量部を加え、更に1時間撹拌を続けることで樹脂組成物(E)を得た。
【0076】
(樹脂組成物(F)の調整)
撹拌機を備えたフラスコに、ポリエン化合物として、トリアリルイソシアヌレート(日本化成社製「TAIC」)30質量部、光重合開始剤として、1,2−オクタンジオン,1−〔−4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)〕(BASF社製「Irgacure−OXE01」)0.1質量部、重合禁止剤として、ハイドロキノンモノメチルエーテル(和光純薬工業社製「MEHQ」)0.001質量部を仕込み、60℃で1時間撹拌した。撹拌後、30℃以下迄冷却し、ポリチオール化合物として、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン(丸善石油化学社製「DMDO」)70質量部を加え、更に1時間撹拌を続けることで樹脂組成物(F)を得た。
【0077】
(樹脂組成物(G)の調整)
撹拌機を備えたフラスコに、ポリエン化合物として、トリアリルイソシアヌレート(日本化成社製「TAIC」)40質量部、光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製「Irgacure−819」)0.1質量部、重合禁止剤として、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩(和光純薬工業社製「Q−1301」)0.002質量部を仕込み、60℃で1時間撹拌した。撹拌後、30℃以下迄冷却し、トリメチロールプロパン−トリス−(β−チオプロピネート)(SC有機社製「TMMP−20P」)60質量部を加え、更に1時間撹拌を続けることで樹脂組成物(G)を得た。樹脂組成物(G)は、アルキレンオキサイド基を有しないポリチオール化合物を使用した。
【0078】
(樹脂組成物(H)の調整)
撹拌機を備えたフラスコに、ポリエン化合物として、トリアリルイソシアヌレート(日本化成社製「TAIC」)50質量部、光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製「Irgacure−819」)0.1質量部を仕込み、60℃で1時間撹拌した。撹拌後、30℃以下迄冷却し、ポリチオール化合物として、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン(丸善石油化学社製「DMDO」)50質量部を加え、更に1時間撹拌を続けることで樹脂組成物(H)を得た。樹脂組成物(H)は、重合禁止剤を使用しなかった。
【0079】
(樹脂組成物(I)の調整)
撹拌機を備えたフラスコに、イソシアヌル酸EO(エチレンオキシド)変性トリアクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−315」)50質量部、テトラエチレングリコールジアクリレート(新中村化学社製「A−200」)50質量部、光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製「Irgacure−819」)0.1質量部、重合禁止剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(住友化学社製「スミライザーBHT」)0.1質量部を仕込み、60℃で1時間撹拌することで樹脂組成物(I)を得た。樹脂組成物(I)は、ポリチオール化合物を使用しなかった。
【0080】
(樹脂組成物(J)の調整)
撹拌機を備えたフラスコに、テトラエチレングリコールジアクリレート(新中村化学社製「A−200」)100質量部、光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製「Irgacure−819」)0.1質量部、重合禁止剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(住友化学社製「スミライザーBHT」)0.1質量部を仕込み、60℃で1時間撹拌することで樹脂組成物(J)を得た。樹脂組成物(J)は、本発明以外の重合禁止剤を使用した。
【0081】
上記の通り調製した各樹脂組成物の物性を表1に示す。尚、各物性については、下記の方法にて測定した。
【0082】
【表1】
【0083】
(粘度測定)
E型粘度計を用いて、温度25℃、回転数20rpmでの粘度を測定した(製造直後)。
貯蔵安定性の評価として、得られた樹脂組成物を40℃雰囲気下に24時間静置後した後の粘度も測定した(40℃×24h静置後)。
【0084】
(分光透過率測定)
樹脂組成物を0.7mm厚のガラス(コーニング社製「Eagle2000」)上に膜厚10μmで塗布した後に、超高圧水銀ランプ搭載の照射機(HOYA社製「UL−750」)にて、照度100mW/cm
2(405nm)の光を30秒間照射して、硬化した試験片を作製した。紫外−可視分光光度計(島津製作所社製「UV−2550」)にて360nm、500nm、800nmの分光透過率を測定した。
【0085】
(ガラス転移温度)
5mm×50mm×1mmの形状の型枠に樹脂組成物を流し込み、超高圧水銀ランプ搭載の照射機(HOYA社製「UL−750」)にて、照度100mW/cm
2(405nm)の光を30秒間照射して、硬化した試験片を作製した。作製した試験片を動的粘弾性スペクトルメーター(S.I.Iナノテクノロジー社製 DMS−210)にて、チャック間距離20mmでセットし、周波数1Hz、昇温速度2℃/分、引張モードにて測定し、tanδ(損失正接)が最大値を示す温度を読み取り、ガラス転移温度とした。
【0086】
(実施例1)
(フレキシブル有機EL装置の製造)
前処理として200℃で2時間、乾燥処理及びコロナ処理を施した125μm厚のポリイミド基板(デュポン社製「カプトン500H/V」)上に、スパッタ法で約150nmの膜厚のITO膜を形成し、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術とを用いて所定の形状にパターニングして、陽極を形成した。次いで、陽極が形成されたポリイミド基板を有機溶媒、アルカリ洗剤及び超純水で洗浄して乾燥させた後、紫外線/オゾン洗浄装置で紫外線/オゾン洗浄処理を行った。
【0087】
次いで、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(HCスタルクヴィテック社「バイトロンP TP AI 4083(商品名)」)の懸濁液を0.5μm径のフィルターでろ過し、ろ過した懸濁液をスピンコート法によって70nmの厚さで、陽極を形成したポリイミド基板上に成膜した。その後、ポリイミド基板をホットプレート上に置き、大気雰囲気下において200℃で10分間乾燥させて、正孔注入層を形成した。
【0088】
次いで、キシレンとアニソールを1:1で混合した溶媒を用いて、1.5質量%の高分子有機発光材料(サメイション社製「Lumation GP1300」))の溶液を作製した。この溶液を、正孔注入層を形成したポリイミド基板上にスピンコート法によって、80nmの膜厚に成膜して、発光層を形成した。その後、ポリイミド基板上の取り出し電極部分や封止エリア部分における発光層を除去し、ポリイミド基板を真空チャンバ内に導入し、加熱室に移した。以後の工程では、真空中又は窒素雰囲気中で処理を行うので、処理中の有機EL装置が大気に曝されることはない。
【0089】
ポリイミド基板を加熱室に移した後、真空チャンバ内の加熱室を1×10
−4Pa以下の真空度にして、100℃で60分加熱した。次いで、ポリイミド基板を蒸着チャンバに移し、陰極マスクをポリイミド基板に対してアライメントし、有機EL装置中の発光が行われる領域である発光部と、取り出し電極部に、陰極が成膜されるように蒸着した。ここで、陰極は、抵抗加熱法で蒸着速度が約2Å/secとなるように金属Baを加熱し、膜厚が50Åとなるまで蒸着したBa膜と、電子ビーム蒸着法で約2Å/secの蒸着速度で100Åの膜厚となるまで蒸着したAl膜とによって形成した。その後、対向ターゲット式スパッタ装置を有する真空チャンバにガラス基板を移し、真空チャンバ内にアルゴンガスと酸素ガスを導入し、対向ターゲット式スパッタ法で膜厚1500ÅのITO膜を形成した。以上により、ポリイミド基板上に有機EL素子が形成された。
【0090】
その後、有機EL素子を作製したポリイミド基板を、大気中に曝露させずに、膜封止装置に移し、ポリイミド基板に対してマスクをアライメントしてセットした。次いで、無機成膜室にポリイミド基板を移し、スパッタ法で第1の無機物膜である酸化アルミニウム膜の成膜を行った。ここでは、純度5NのAl金属ターゲットを用いて、無機成膜室内にアルゴンガスと酸素ガスを導入し、厚さ約60nmの透明で平坦な酸化アルミニウム膜をポリイミド基板上に成膜した。
【0091】
次いで、マスクを交換し、有機成膜室にポリイミド基板を移した。その後、前記樹脂組成物(A)を、気化器に導入し、気化させて、スリットノズルから蒸気を噴き出させ、ノズル上をポリイミド基板が所定の速度で通過するように制御した。これによって、均一な厚みを有する樹脂組成物(A)がポリイミド基板上に付着した。その後、樹脂組成物(A)が付着したポリイミド基板上に、超高圧水銀ランプ搭載の照射機(HOYA社製「UL−750」)にて、照度100mW/cm
2(405nm)の光を30秒間照射して、樹脂組成物(A)の膜を硬化させて第1の有機物膜を形成した。これによって、透明で平坦な膜であり、膜厚が約1.3μmの第1の有機物膜が得られた。
【0092】
次いで、ポリイミド基板を再び無機成膜室に移し、無機成膜室中にアルゴンガスと酸素ガスを導入し、スパッタ法で第2の無機物膜である酸化アルミニウムの成膜を行った。このとき、約40nmの厚さを有し、透明で平坦な酸化アルミニウム膜をポリイミド基板上に成膜した。
【0093】
その後、第1の有機物膜と同様にして第2の無機物膜上に第2の有機物膜を形成し、第2の無機物膜と同様にして第2の有機物膜上に第3の無機物膜を形成した。
【0094】
次いで、第1の有機物膜と同様にして、第3の無機物膜上に樹脂組成物(A)を付着させた後、光を照射せずに、又大気に曝露せずに、有機成膜室から真空雰囲気下のグローブボックス(封止室)へポリイミド基板を移した。ここで、予め用意しておいた125μm厚のポリエステル基板(東洋紡績社製「コスモシャインA4100」)を、封止層を形成したポリイミド基板上の樹脂組成物(A)を付着させた面に貼り合わせた。この状態で真空に保ち、その後大気圧に戻し、超高圧水銀ランプ搭載の照射機(HOYA社製「UL−750」)にて、照度100mW/cm
2(405nm)の光を30秒間、ポリエステル基板側から照射して、ポリエステル基板と固着させた。以上によって、この実施の形態の封止構造を有する有機EL装置が作製された。以上のように作成した有機EL装置は、フレキシブル性に優れ、且つ十分な水蒸気と酸素に対するバリア性と密着強度を有するため、耐湿性に優れる有機EL装置となった。
【0095】
(実施例2〜6、比較例1〜4)
前記の実施例1にて、樹脂組成物(A)を樹脂組成物(B)〜(J)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、有機EL装置を作製した。
【0096】
前記の通り作製した各有機EL装置の特性を表2に示す。尚、各特性については、下記の方法にて評価した。
【0097】
(フレキシブル性評価)
MIT試験機(東洋精機製)を用いて、有機EL装置の折り曲げ試験をJIS P 8115に準じて行い、折り曲げ回数100回毎に外観変化の有無を確認し、割れや亀裂、気泡が発生した折り曲げ回数を測定した。最大の折り曲げ回数を500回として評価とした。
【0098】
(耐湿性評価)
有機EL装置を温度85℃、湿度85%RHの雰囲気に暴露し、50時間毎に外観変化の有無を確認し、黒点(ダークスポット)が発生した時間を測定した。最大の暴露時間を300時間として評価とした。
【0099】
【表2】