特許第6095979号(P6095979)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095979
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】位相測定に基づく接触評価
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20170306BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   A61B18/12
   A61B18/14
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-284322(P2012-284322)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-138863(P2013-138863A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2015年11月24日
(31)【優先権主張番号】13/343,024
(32)【優先日】2012年1月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・クラウディオ・アルトマン
(72)【発明者】
【氏名】ヤロン・エフラス
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−518151(JP,A)
【文献】 特表2010−514504(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0274239(US,A1)
【文献】 特表2007−537000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アブレーション装置であって、
生きている被験者の心臓内への挿入のために適合されており、前記心臓内の標的組織と接触させるための、遠位に配置されたアブレーション電極を有する、可撓性カテーテルと、
前記標的組織をアブレーションするために、ある投与量のエネルギーを前記標的組織に印加する、アブレーターと、
身体表面電極と前記アブレーション電極との間に電流を通すための第1回路及び前記電流の位相を判定するための第2回路を有する、前記被験者に取り付けられる前記身体表面電極を備えるインピーダンス測定サブシステムと、
前記電流の位相変化の動作中の判定を繰り返し行うための第3回路と、
前記アブレーターの動作中に前記位相変化の視覚的指標を表示するように動作可能な、前記第3回路と連結されたモニターと、を備え
終了基準が満たされたことを前記動作中の判定をもとに判定するための第4回路を更に備え、
前記動作中の判定を行うことが、前記アブレーション電極から得られた前記電流の前記位相の接触前の判定との比較を含み、前記終了基準が、既定値未満である、前記動作中の判定の1つと前記接触前の判定との間の差を含む、アブレーション装置。
【請求項2】
前記視覚的指標が、前記標的組織において意図される損傷に関しての、前記アブレーターを用いたアブレーション処置の進捗を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記終了基準が、前記動作中の判定の1つがそれより前の前記動作中の判定の1つから閾値を超えて変化することに失敗することを含む、請求項に記載の装置。
【請求項4】
前記動作中の判定を行うことが、前記標的組織から離間して置かれた基準電極から得られる基準波形のそれぞれ対応する位相との比較を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
動作中の判定を行う工程及びある投与量のエネルギーを印加する工程が同時に実行される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
接触前の判定を行うことが10ミリワット未満の電力で実行される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
動作中の判定を行うことが5〜50ワットの電力で実行される、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は組織アブレーションシステムに関する。より詳細には、本発明は、侵襲的プローブと体内組織との間の接触のモニタリングに関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動などの心不整脈は、心臓組織の諸領域が、隣接組織に、電気信号を異常に伝導することによって、正常な心周期を遮断し、非同期的な律動を引き起こす場合に発生する。
【0003】
不整脈治療の手順としては、不整脈の原因となっている信号源を外科的に遮断する工程、並びにそのような信号の伝達経路を遮断する工程が挙げられる。カテーテルをしてエネルギーを印し臓織を選択的にアブレーションすることによって、心臓の一部分から別の部分への望ましくない電気信号の伝播を停止する又は変更することが可能な場合がある。アブレーション方法は、非導電病変の形成により、望ましくない電気経路を破壊する。
【0004】
標的組織との物理的な電極の接触を実証することは、アブレーションエネルギーの送達を制御するために重要である。当該技術分野において、組織と電極との接触を実証する試みはこれまで広範に行われ、様々な技法が提案されてきた。例えば、米国特許第6,695,808号は、選択された患者の組織又は器官領域を処置するための装置を記載している。プローブは、その領域に押しつけられ得る接触面を有し、それにより接触圧を生じさせる。圧力変換器が接触圧を測定する。この構成は、接触力の存在及び規模の指標となる情報を機器のユーザに提供することにより、医療機器を、解剖学的表面と過剰には接触しないが、しっかりと定置しなければならないという、処置の必要性を満たすと言われている。
【0005】
別の例として、米国特許第6,241,724号は、分割された電極アセンブリを使用して、体内組織中に損傷部をつくるための方法を開示している。一実施形態では、カテーテルの電極アセンブリは圧力変換器を有し、これは組織との接触を感知して、圧力接触モジュールに信号を伝達する。モジュールは、圧力変換器信号と関連する電極要素を特定し、エネルギー生成機がこれらの要素に高周波エネルギーを伝達し、血液のみと接触する他の要素には伝達しないように指示する。
【0006】
米国特許第6,915,149にも、更なる例が記載されている。この特許は、局所的な電気的活性を測定するための先端電極を有するカテーテルを使用して、心臓をマッピングするための方法を記載する。先端部と組織との接触不良から生じ得るアーチファクトを回避するために、先端部と組織との間の接触圧力が圧力センサーを使用して測定され、安定的な接触を確保する。
【0007】
米国特許出願公開第2007/0100332号は、組織アブレーションのための、電極−組織間接触を評価するためのシステムと方法を開示している。カテーテルのシャフト内の電子機械的センサーは、カテーテルシャフトの遠位部分内の電極の運動量に対応する電気信号を生成し、出力機器は、電極と組織間の接触のレベルを評価するために、この電気信号を受け取る。
【0008】
米国特許第7,306,593号(Keidarらに発行)は、体内でアブレーションされるべき組織にプローブを接触させ、組織をアブレーションする前にプローブを使用してその位置の1つ以上の局所パラメーターを測定することにより、器官内の組織をアブレーションするための方法を記載する。器官のマップが表示され、1つ以上の局所パラメーターに基づき、その位置においてプローブを用いて適用されるある投与量のエネルギーに関し、達成される組織のアブレーションの予測される範囲を示す。プローブを使用して組織をアブレーションするためにある投与量のエネルギーが適用され、組織のアブレーションに続いて、プローブを使用してその位置におけるアブレーションの実際の範囲が測定される。測定されたアブレーションの実際の範囲が、予測された範囲との比較のためにマップ上に表示される。
【0009】
カテーテル−組織間接触を評価するためのインピーダンスに基づく方法は、当該技術分野において既知であり、通常、カテーテル上の電極と身体表面電極との間のインピーダンスの大きさの測定に依存する。その大きさがある閾値より下であるとき、電極は組織と接触していると考えられる。しかし、このような2要素の接触指標は信頼性がない場合があり、身体表面の電極と皮膚との間のインピーダンスの変化に対して敏感である。
【0010】
参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2008/0288038号及び同第2008/0275465号(いずれもSauaravらによる)は、電極カテーテルシステムは電気エネルギーを印加するように適応された電極を含み得ると記述している。インピーダンスを測定するために適応された測定回路を、電極が標的組織に接近する際に電極と地面との間に実装することができる。プロセッサ又は処理装置を実装して、測定回路によって測定されたインピーダンスのリアクタンスに少なくとも部分的に基づいて標的組織に関しての接触状態を判定することができる。別の実施形態では、接触状態はインピーダンスの位相角に基づく場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態により、アブレーションの方法が提供され、この方法は、アブレーション電極を有するプローブを生きている被験者の体内に挿入し、アブレーション電極が標的組織と接触していない関係である間に、アブレーション電極と別の電極との間を通過する電流の位相を接触前に予め判定することによって実行される。この方法は、更に、アブレーション電極を標的組織と接触している関係へと促し、アブレーション電極が接触している関係にある間に、標的組織のアブレーションのために、ある投与量のエネルギーをアブレーション電極を介して標的組織に印加し、動作中に電流の位相の判定を繰り返し行うことによって実行される。この方法は、更に、動作中の判定の1つがアブレーションの完了のための終了基準を満たしていることを確認し、それに応答して、エネルギーの印加を終了することによって実行される。
【0012】
この方法の1つの態様は、動作中の電流の位相の判定の視覚的指標を表示することを含む。この視覚的指標は、標的組織において意図される損傷に対するアブレーションの進行の表示を含んでもよい。
【0013】
この方法のまた別の態様によると、終了基準は、既定値未満である、動作中の判定の1つと接触前の判定との間の差を含む。
【0014】
この方法の更に別の態様によると、終了基準は、動作中の判定の1つが、それより前の動作中の判定の1つから閾値を超えて変化することに失敗することを含む。
【0015】
この方法の追加的な態様によると、接触前の判定及び動作中の判定を行うことは、プローブ上の電極と身体表面上の電極との間のインピーダンスの位相を測定することを含む。
【0016】
この方法の一態様によると、接触前の判定及び動作中の判定を行うことは、標的組織から離間して置かれた基準電極から得られる基準波形のそれぞれ対応する位相との比較を行うことを含む。
【0017】
この方法の更なる態様において、動作中の判定を行うことが2秒毎〜5秒毎に実行される。
【0018】
この方法の更に別の態様において、動作中の判定を行うこと及びある量のエネルギーを印加することが同時に実行される。
【0019】
本発明の更にまた別の態様によると、接触前の判定を行うことが10ミリワット未満の電力で実行される。
【0020】
本発明の追加的な態様によると、動作中の判定を行うことが5〜50ワットの電力で実行される。
【0021】
本発明の他の実施形態は、上記方法を実施するための装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明をより理解するために、実施例を用いて「発明を実施するための形態」を参照するが、これは以下の図面と併せて読むべきであり、類似の要素には類似の参照番号が与えられる。
図1】本発明の一実施形態に従って構成され、動作する、生存被験者の心臓に対してアブレーション手技を実行するためのシステムの模式図。
図2】カテーテルが本発明の一実施形態に従って心臓組織と接触するように移動するにつれて、カテーテルの電極を通って流れる電流の位相関係を示す複合図。
図3】本発明の一実施形態による組織アブレーションの方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の説明では、本発明の種々の原理を完全に理解させるために、多くの具体的な詳細を記載する。しかしながら、全てのこれらの詳細は、必ずしも、本発明の実施のために常に必要とされるものではないことを、当業者は理解するであろう。この場合、一般概念を不必要に不明確にすることのないよう、周知の回路、制御論理、並びに従来のアルゴリズム及び処理に関するコンピュータプログラム命令は詳しく示されていない。
【0024】
本発明の態様は、典型的には、コンピュータ可読媒体などの永久記憶装置内に維持される、ソフトウェアプログラミングコードの形態で具体化することができる。クライアント/サーバー環境において、このようなソフトウェアプログラミングコードは、クライアント又はサーバーに記憶される。ソフトウェアプログラミングコードは、ディスケット、ハードドライブ、電子媒体、又はCD−ROMなどの、データ処理システムと共に使用するための様々な既知の非一時的媒体のうちの、いずれかの上に具体化することができる。コードはこのような媒体上で配布でき、又は1つのコンピュータシステムのメモリー又は記憶装置からある種のネットワークを介して、別のコンピュータシステムのユーザが使用するために、該別のシステム上の記憶装置に配布され得る。
【0025】
ここで図面を参照し、図1を最初に参照すると、図1は、開示される本発明の一実施形態に従って構成され、動作する、生存被験者の心臓12に対してアブレーション手技を実行するための、システム10の模式図である。このシステムは、患者の血管系を通して、心臓12の心室又は血管構造内に、オペレーター16によって経皮的に挿入される、カテーテル14を含む。典型的には医師である、操作者16は、カテーテル遠位先端部18を心臓のアブレーション目標部位と接触させる。次いで、その開示が本明細書に参照により組み込まれる、米国特許番号第6,226,542号及び同第6,301,496号、並びに同一出願人による米国特許第6,892,091号に開示されている方法に従って、電気的活性マップが準備され得る。システム10の要素を具体化する1つの市販の製品は、Biosense Webster,Inc.(3333 Diamond Canyon Road,Diamond Bar,CA 91765)より入手可能な、CARTO(登録商標)3システムとして、入手可能である。
【0026】
例えば電気的活性化マップの評価によって、異常であると判定された区域は、熱エネルギーの適用によって、例えば、心筋に高周波エネルギーを適用する、遠位先端部18の1つ又は2つ以上の電極に、カテーテル内のワイヤーを通じて高周波電流を通過させることによって、アブレーションすることができる。エネルギーは組織に吸収され、それを電気的興奮性が恒久的に失われる点(典型的には約50℃)に加熱する。うまくゆけば、この手順により心臓組織において非伝導病変が生じ、これは不整脈の原因となる異常な電気経路を破壊する。本発明の原理を、種々の心腔に適用して、多種多様な心不整脈を処置することができる。
【0027】
カテーテル14は通常、ハンドル20を備え、このハンドルを好適に制御する工程によって、オペレーター16が、アブレーションのために所望に応じて、カテーテルの遠位端を操縦、位置決定、配向することが可能になっている。オペレーター16を支援するために、カテーテル14の遠位部は、コンソール24に位置した位置決めプロセッサ22に信号を提供する、ポジションセンサー(図示せず)を収容する。
【0028】
アブレーションエネルギー及び電気信号を、遠位先端部18に又は遠位先端部18の付近に配置される、1つ又は2つ以上のアブレーション電極32を通じて、コンソール24に至るケーブル34を介し、心臓12へ/心臓12から、搬送することができる。ペーシング信号及び他の制御信号は、コンソール24から、ケーブル34及び電極32を通して、心臓12へと搬送することができる。更にコンソール24に接続される感知電極33は、アブレーション電極32間に配置され、ケーブル34への結線を有する。
【0029】
ワイヤー結線35は、コンソール24を、身体表面電極30、及び位置決定サブシステムの他の構成要素と連係させる。電極32及び身体表面の電極30は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,536,218号(Govariら)に教示されるように、アブレーション部位での組織のインピーダンスを測定するために使用することができる。温度センサー(図示せず)、典型的には、熱電対又はサーミスタを、電極32の各々の上に、又は電極32の各々の付近に載置することができる。
【0030】
コンソール24は、典型的には、1つ又は2つ以上のアブレーション電力発生装置25を収容する。カテーテル14は、任意の既知のアブレーション技術を使用して、例えば、高周波エネルギー、超音波エネルギー、及びレーザー生成光エネルギーを使用して、心臓にアブレーションエネルギーを伝導するように適合させることができる。このような方法は、同一出願人による米国特許第6,814,733号、同第6,997,924号、及び同第7,156,816号に開示されており、これらは参照によって本明細書に組み込まれる。
【0031】
位置決定プロセッサ22は、カテーテル14の位置座標及び配向座標を測定する、システム10の位置決定システム26の要素である。
【0032】
一実施形態では、位置決定システム26は、カテーテル14の位置及び配向を、場発生コイル28を使用して、その近傍の既定の作業容積内に磁場を発生させ、そのカテーテルでこれらの場を感知することによって判定する、磁気位置追跡構成を含み、また例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2007/0060832号で教示されるようなインピーダンス測定を含み得る。位置決定システム26は、上述の米国特許第7,536,218号で説明される、インピーダンス測定を使用する位置測定によって強化することができる。
【0033】
上述のように、カテーテル14はコンソール24に接続され、これによりオペレーター16がカテーテル14の機能を観察及び調節できるようになっている。コンソール24は、好ましくは適切な信号処理回路を有するコンピュータであるプロセッサを含む。プロセッサは、モニター29を駆動するように接続されている。信号処理回路は、典型的には、カテーテル14内の遠位に配置される、上述のセンサー及び複数個の場所感知電極(図示せず)によって生成される信号を含めた、カテーテル14からの信号を、受信し、増幅し、フィルタリングし、デジタル化する。デジタル化された信号は、コンソール24及び位置決定システム26によって受信され、カテーテル14の位置及び配向を計算し、電極からの電気信号を分析するために使用される。
【0034】
単純化のため図には示されていないが、通常、システム10には他の要素も含まれる。例えば、システム10は、1つ以上の身体表面電極からの信号を受信するように接続されてECG同期信号をコンソール24に供給する、心電図(ECG)モニターを含んでもよい。また、上述のように、システム10は、通常、対象の身体の外面に取り付けられた、外部から貼付された基準パッチ、又は心臓12に対して固定位置に維持された、心臓12の中に挿入され内部に配置されたカテーテルのどちらかの上に基準ポジションセンサーを含む。カテーテル14に液体を通して循環させるための、従来のポンプ及びラインが、アブレーション部位を冷却するために提供される。
【0035】
本発明の実施形態は、カテーテル電極と身体表面電極との間のインピーダンスの位相を測定する。この位相は、接触と非接触との間で、電極と組織との間の電気容量におけるそれに付随した変化のために、カテーテル電極と組織との間の距離とともに約1〜2mmの範囲にかけて顕著に変化する。従ってそれは、短い範囲の距離及び接触の、敏感な測定を提供する。
【0036】
ここで図2を参照すると、図2は、本発明の一実施形態に従ってカテーテル14が心臓12(図1)の壁37と接触するように移動する際にカテーテル14の電極を通って流れる電流の位相関係を図示する複合図である。この目的のために基準電極39が所望により提供される。基準電極39は壁37と接触していない。それらの電極は、その組織を通過して身体表面電極30(図1)又は他のある種の受信電極によって受信される既知の周波数の信号によって駆動される。図2の右側の波形は、上から下へ向かって順に、基準電極39で得られた基準波形41、アブレーション電極32が壁37と接触していないときに得られた、アブレーション電極32で得られた接触前の波形43、アブレーション電極32が壁37と機械的に接触しているときに得られた接触中の波形45、及びアブレーション治療の完了後であるが、まだアブレーション電極32が壁37と接触している間に得られたアブレーション後の波形47を含む。
【0037】
位相変化は、接触前の波形43及び接触中の波形45のそれぞれ対応する最大値レベルを通って引かれた縦線49及び51の変位によって示される。この位相変化はアブレーション電極32を壁37と接触させたときに生じる。本発明者らは、このような位相の測定を使用して組織の接触を実証するだけでなく、アブレーションの進捗の確認もできることを発見した。それは、損傷が作られるにつれて、及びアブレーション電極32が組織との接触を維持している間に、アブレーション電極32と組織との間のインピーダンスの位相が変化するからである。あるいは、上記の米国特許出願公開第2008/0288038号及び同第2008/0275465号に記述されている任意の他の位相判定法によって、アブレーション電極32と組織との間の位相の変化を判定してもよい。アブレーション後の波形47に近似した波形の出現は、組織のアブレーションが行われたことの指標を与える。
【0038】
アブレーション中、アブレーション電極32と壁37との間の継続的な接触は、位置決めプロセッサ22(図1)と位置センサーとを併用することによって、又は標的組織との物理的な電極の接触を実証するための上述した他の方法のいずれかによって、確認することができる。
【0039】
基準電極39から受信した信号の位相は、先端電極が組織と接触してもそれにつれて実質的に変化しないことに留意すべきである。従って、基準電極39は、アブレーション電極32又は別の先端電極(図示せず)を通って流れる電流の位相変化を測定するためのベースとして使用され得る。アブレーターは位相変化を監視している間に同時に動作することができる。それら2つの動作を組み合わせる必要はない。
【0040】
ここで図3を参照すると、これは、本発明の開示された実施形態による組織アブレーション方法のフローチャートである。最初の工程53で、上記実施形態の1つに従って構成されたカテーテルを、心臓に導入して配置し、アブレーション電極を、関連する温度センサと共に、位置決めシステム26(図1)を用いて標的部位の近くに配置する。
【0041】
次いで、工程55で、接触前の波形の位相を得るために読み取りを行う。これは、アブレーション電極32(図2)をキャリブレーションモードで操作することによって行うことができる。所望により、接触前の波形の位相は、基準電極から読み取られた波形と関連づけられる。いずれの場合も、結果は記憶される。
【0042】
次いで、工程57で、前述の方法のいずれかを用いて、アブレーション電極32と壁37との間の機械的な接触を実証する。
【0043】
次いで、工程59でベースライン接触波形を入手し、記憶させる。
【0044】
次いで、工程61でアブレーション電極を活性化して標的組織のアブレーションを行う。
【0045】
次いで、工程63で、所望の損傷及び操作者の判断に従って変化可能な間隔の後に、動作中の波形を入手し、その位相角をベースライン接触波形又は基準波形に対して確認する。動作中の波形の位相角及び意図される損傷の完了の度合いの予測の計算値を操作者に対して表示することができる。位相角の変化率がゼロに接近するとき、組織における変化はもはや生じておらず、アブレーションは本質的に完了していると推測できる。
【0046】
典型的には、測定の安定性に依存して、位相角は数秒毎に、例えば、2〜5秒毎に判定される。
【0047】
位相角の読み取り値を得るための電力要件は、アブレーターがアイドル状態の場合は10ミリワット未満である。アブレーターが稼働中は5〜50ワットが必要である。
【0048】
ここでコントロールは判定工程65に進み、終了基準が満たされているかどうかを判定する。適用し得る終了基準は、例えば、
(1)時間間隔にかけて位相角の変化がないこと、
(2)動作中の波形の位相角が接触前の波形の位相角に戻っていること、及び
(3)閾値の量、例えば、その前の工程61、63を含むループの繰り返しで得られた動作中の波形と比較して50%を超えて位相角が変化できないこと、である。
【0049】
判定工程65で終了基準が満たされない場合、コントロールは工程61に戻る。そうでなければ、コントロールは処置が終了する最終工程67に進む。
【0050】
本発明は、上記に具体的に示し、説明したものに限定されないことを、当業者は理解するであろう。むしろ、本発明の範囲は、以後に記載する種々の特性の組み合わせ及び一部の組み合わせをともに含み、それに加えて前述の説明を読んで当業者が思いつくであろう、先行技術にはない変形及び改良をも含む。
【0051】
〔実施の態様〕
(1) アブレーションの方法であって、
生きている被験者の体内にプローブを挿入する工程であって、前記プローブはアブレーション電極を有する、工程、
前記アブレーション電極が標的組織と接触していない関係にある間に、前記アブレーション電極と別の電極との間を通る電流の位相の、接触前の判定を行う工程、
前記標的組織と接触している関係へと前記アブレーション電極を促す工程、
前記アブレーション電極が前記接触している関係にある間に、前記標的組織のアブレーションのために、ある投与量のエネルギーを前記アブレーション電極を介して前記標的組織に印加し、前記電流の前記位相の、動作中の判定を繰り返し行う工程、及び
前記動作中の判定の1つが前記アブレーションの完了のための終了基準を満たしていることを確認し、それに応答して、前記ある投与量のエネルギーを印加する工程を終了する工程、を含む、方法。
(2) 前記電流の前記位相の前記動作中の判定の視覚的指標を表示する工程を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記視覚的指標が、前記標的組織において意図される損傷に関する前記アブレーションの進捗を含む、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記終了基準が、既定値未満である、前記動作中の判定の1つと前記接触前の判定との間の差を含む、実施態様2に記載の方法。
(5) 前記終了基準が、前記動作中の判定の1つがそれより前の前記動作中の判定の1つから閾値を超えて変化することに失敗することを含む、実施態様2に記載の方法。
(6) 前記接触前の判定及び前記動作中の判定を行うことが、前記プローブ上の電極と身体表面電極との間のインピーダンスの位相を測定することを含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記接触前の判定及び前記動作中の判定を行うことが、前記標的組織から離間して置かれた基準電極から得られる基準波形のそれぞれ対応する位相との比較を含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記動作中の判定を行う工程が2〜5秒毎に実行される、実施態様1に記載の方法。
(9) 前記動作中の判定を行う工程及びある投与量のエネルギーを印加する工程が同時に実行される、実施態様1に記載の方法。
(10) 接触前の判定を行うことが10ミリワット未満の電力で実行される、実施態様1に記載の方法。
【0052】
(11) 動作中の判定を行うことが5〜50ワットの電力で実行される、実施態様1に記載の方法。
(12) アブレーション装置であって、
生きている被験者の心臓内への挿入のために適合されており、前記心臓内の標的組織と接触させるための、遠位に配置されたアブレーション電極を有する、可撓性カテーテルと、
前記標的組織をアブレーションするために、ある投与量のエネルギーを前記標的組織に印加する、アブレーターと、
身体表面電極と前記アブレーション電極との間に電流を通すための第1回路及び前記電流の位相を判定するための第2回路を有する、前記被験者に取り付けられる前記身体表面電極を備えるインピーダンス測定サブシステムと、
前記電流の位相変化の動作中の判定を繰り返し行うための第3回路と、
前記アブレーターの動作中に前記位相変化の視覚的指標を表示するように動作可能な、前記第3回路と連結されたモニターと、を備える、アブレーション装置。
(13) 前記視覚的指標が、前記標的組織において意図される損傷に関しての、前記アブレーターを用いたアブレーション処置の進捗を含む、実施態様12に記載の装置。
(14) 終了基準が満たされたことを前記動作中の判定をもとに判定するための第4回路を更に備える、実施態様12に記載の装置。
(15) 前記動作中の判定を行うことが、前記アブレーション電極から得られた前記電流の前記位相の接触前の判定との比較を含み、前記終了基準が、既定値未満である、前記動作中の判定の1つと前記接触前の判定との間の差を含む、実施態様14に記載の装置。
(16) 前記終了基準が、前記動作中の判定の1つがそれより前の前記動作中の判定の1つから閾値を超えて変化することに失敗することを含む、実施態様14に記載の装置。
(17) 前記動作中の判定を行うことが、前記標的組織から離間して置かれた基準電極から得られる基準波形のそれぞれ対応する位相との比較を含む、実施態様12に記載の装置。
(18) 動作中の判定を行う工程及びある投与量のエネルギーを印加する工程が同時に実行される、実施態様12に記載の装置。
(19) 接触前の判定を行うことが10ミリワット未満の電力で実行される、実施態様12に記載の装置。
(20) 動作中の判定を行うことが5〜50ワットの電力で実行される、実施態様12に記載の装置。
図1
図2
図3