【実施例1】
【0013】
図1に示すように、本実施例1のカードエッジコネクタ1は、コネクタ2と、コネクタ2に挿抜方向Sに挿抜可能なカードモジュール基板3(基板)と、カードモジュール基板3に固定された固定ブロック4(固定部)と、固定ブロック4の有する挿通孔4aに挿入されて挿抜方向Sに摺動可能で挿抜方向Sを中心として回動自在に連結される軸部5と、軸部5を固定ブロック4に対して挿抜方向Sの抜去方向SOに付勢するコイルバネ6(付勢手段)とを含む。軸部5の挿抜方向Sの挿入方向SI側にはコネクタ2の有する被係合部21に係合可能なロック部7(係合部)が形成される。
【0014】
また
図1に示すように、軸部5の抜去方向SO側にマイナスドライバにより操作する操作部8が形成又は連結される。またコイルバネ6は操作部8と固定ブロック4との間に挟持される。カードエッジコネクタ1はその両面にマトリクス状に配列されて内部の図示しない導体にて発生する熱を放熱する複数のフィン31を有している。
【0015】
固定ブロック4、軸部5、コイルバネ6、操作部8からなる一対の係合機構Lの一方は
図1中の正面側では右端部に配置され、他方は背面側の左端部に配置される。左端部の固定ブロック4は
図1に示すようにカードモジュール基板3の正面側からネジ32により固定され右端部の固定ブロック4も同様にネジ32により背面側から固定される。
【0016】
また、カードモジュール基板3は
図1中の右端部上側にケーブルコネクタ33が配置されており、このケーブルコネクタ33とエッジ部3aに並列されたパッド34とを電気的に接続する複数条の導体を具備している。コネクタ2はこれらのパッド34にそれぞれ対応するコンタクト22を有している。
【0017】
ロック部7は軸部5の径方向を含んで延びる径方向部7aと軸方向に延びる軸方向部7bと軸部5の周方向の接線方向に沿って延びる接線方向部7cを含む。さらに、ロック部7は、その先端部つまり接線方向部7cの先端部から抜去方向SOに突出する突部7dを含む。コネクタ2側では、突部7dに対応する抜去方向SOに窪む凹部21aを被係合部21が含むものとしている。なお、本実施例1では凹部21aは抜去方向SOに貫通する貫通穴を形成している。
【0018】
ここで、軸方向部7bは軸部5に対して径方向にオフセットされることとし、ロック部7と被係合部21の組合せは
図1、
図2(a)の上方視である
図2(b)に示すように、複数箇所に設けられることとし、ロック部7と被係合部21は挿抜方向Sから見て対角線上に配置されることとしている。なお、ロック部7を被係合部21に係合させると、
図2(c)に示すように、凹部21a内に突部7dが挿入されることとなる。
【0019】
ロック部7は、
図3に示すように、軸部5が固定ブロック4から抜去方向SOに抜け出すことを固定ブロック4の挿入方向SI側に当接することで防止する抜け止め部71を具備している。軸部5とロック部7は合成樹脂や金属等により一体的又は個別に構成されて連結され、軸部5の抜去方向SO側には雄ネジ部5aが形成される。
【0020】
軸部5の外径は固定ブロック4の挿通穴4aに挿通可能な外径とされ、固定ブロック4のカードモジュール基板3に固定される固定面4Aには、位置決めピン4bと、上述したネジ32が螺合される雌ネジ穴4cが形成される。固定ブロック4の抜去方向SO側の固定面4Aから離隔した位置にはコイルバネ6の付勢力を受け止める座面4Bが形成される。操作部8は円柱形状であって、頂部にマイナスドライバに対応する一条の溝部8aが形成され、挿入方向SI側の底面には雄ネジ部5aに対応する図示しない雌ネジ部が形成され、これも合成樹脂又は金属等により構成される。
【0021】
軸部5を固定ブロック4の挿通穴4aに挿通させ、挿通穴4aから突出する雄ネジ部5aからコイルバネ6を挿通した後、雄ネジ部5aに操作部8の雌ネジ部を螺合することにより、
図4に示すような、カードモジュール基板3側の係合機構Lが構成される。
【0022】
図4に示した係合機構Lのうち
図1中背面側の左端部に配置される係合機構Lをカードモジュール基板3への固定される固定面4Aの正面視(a)右方視(b)左方視(c)挿入方向視(d)抜去方向視(e)にて示したのが
図5である。
図5(e)に示すように突部7dは軸方向部7bよりも軸部5の中心軸線に対して近い位置に配置されている。
【0023】
なお本実施例1においてロック部7の径方向部7a、軸方向部7b、接線方向部7cは突部7dの被係合部21の凹部21aへの係合を正面側又は背面側から行うために、突部7dの三次元的な位置を調整する機能を有している。
図5(e)に示すように、接線方向部7cの延長方向は、軸部5の中心に対する周方向とカードモジュール基板3の固定面4Aの面方向が一致する軸部5の回動位置での接線方向を指している。
【0024】
また
図1に示したコネクタ2をカードモジュール基板3の正面視(a)抜去方向視(b)挿入方向視(c)右方視(d)コンタクト22が並列される嵌合穴23側から見て示す斜視図(e)にて示したのが
図6である。
図6に示すように、カードモジュール基板3のパッド34が並列されるエッジ部3aが嵌合される、嵌合穴23に対して、被係合部21は、正面側の右端部と背面側の左端部に突出して合成樹脂モールドによる一体成型にて形成される。なお、
図6中において、それぞれの被係合部21の嵌合穴23を挟んで反対側には予備の被係合部(21)が設けられている。
【0025】
つまりコネクタ2に対してカードモジュール基板3を挿入した後、操作部8により作業者からマイナスドライバにより入力される挿入方向SI側の押圧操作により係合機構Lの軸部5及びロック部7がコイルバネ6の付勢力に抗して挿入方向SI側に押し込まれながら、
図1中において挿入方向SIを中心として反時計回りに回転操作されると、突部7dは凹部21aの挿入方向SI側に位置され、そこで作業者が押圧操作を止めると、突部7dは凹部21aに挿入され、ロック部7の被係合部21への係合が完了する。
【0026】
このことは
図7〜
図9(a)に示す正面側の係合機構Lにおいても同様であり、
図7〜
図9(b)に示すように突部7dは凹部21aに挿入されてロック部7は被係合部21へ係合される。この対角線上のロック部7と被係合部21との係合に基づいてカードモジュール基板3はコネクタ2に固定される。
図7(b)に示すように突部7dの挿抜方向における長さは凹部21aを形成する貫通孔よりも短く形成される。これにより、作業者の押圧作業を最低限度のものとしている。
【0027】
これとは逆に、コネクタ2からカードモジュール基板3を抜去し取り外す場合には、操作部8により作業者からマイナスドライバにより入力される挿入方向SIの押圧操作によりロック部7の突部7dは被係合部21の凹部21aから抜去され、こののち操作部8に時計方向の回転操作がなされると、ロック部7と被係合部21との係合は解除される。
【0028】
以上述べたように、本実施例1のカードエッジコネクタ1によれば、以下のような有利な作用効果を得ることができる。つまり、本実施例1では、カードモジュール基板3の挿抜操作は挿抜方向Sの押圧又は引張操作であるところ、この押圧又は引張操作とは連動しない別個の係合機構Lの操作部8の作業者のマイナスドライバによる回転操作に基づいて、ロック部7を被係合部21に係合させてコネクタ2にカードモジュール基板3を固定することができる。
【0029】
このため従来の上述した特許文献1に示されるように、基板に設けた切り欠きに揺動タイプのラッチタイプのレバーを嵌合して固定することに比べて、係合箇所の挿抜方向Sのクリアランスつまりガタを考慮してエッジ部3aのパッド34の挿抜方向Sの長さを短くする必要性をなくして、パッド34とコンタクト22の接点において信号の迂回経路となる枝分かれ部が挿入方向SI側に発生することを防止できる。これにより高速伝送性能を高めることができる。
【0030】
またラッチタイプのレバーにより基板の側方の切り欠きに係合する従来技術では、挿抜方向Sのクリアランスが必要となるため、パッド34の挿抜方向Sの長さを短くすると、コンタクト22との電気的接触を確保の観点から摺動長を長くする必要があったが、本実施例1ではクリアランスをなくすことができるので、パッド34の挿抜方向の長さを短くした上で接触信頼性を高めることができる。
【0031】
またラッチタイプのレバーを有する従来の係合では、レバーを作業者が揺動操作するに当たり、手又は指を入れるスペースが必要であったが、本実施例1では、その作業用のスペースをなくすことができる。
【0032】
特に本実施例1の
図1に示すように挿抜方向Sに垂直な方向にケーブルコネクタ33を配置する場合に、ケーブルコネクタ33よりも挿入方向SI側に作業者が手又は指を入れる必要がない。また、ケーブルコネクタ33と作業者の手の大きさによってはラッチタイプのレバーでは係合操作が不可となる場合もあったが、本実施例1ではそのような作業上の不都合を招くことがない。このため本実施例1では、作業性を向上してコストダウンを図ることができる。
【実施例2】
【0033】
上述した実施例1においては、ロック部7の形態を軸部5側から径方向部7a、軸方向部7b、接線方向部7cの順番で形成したが、この順序は適宜変更することが可能である。以下それについての実施例2について述べる。
【0034】
図10に示す実施例2においてロック部17以外の形態は実施例1に示したものと同様であるため、相違点を主にして説明する。ロック部17は、軸部5よりも大径の軸方向部17aと、径方向部17bと、接線方向部17cを有している。
図10では突部17dの図示は省略している。
【0035】
つまり本実施例2においてもロック部17の軸方向部17a、径方向部17b、接線方向部17cは突部17dの被係合部21の凹部21aへの係合を正面側又は背面側から行うために、突部17dの三次元的な位置を調整する機能を有している。
図10に示すように、接線方向部17cの接線方向は、軸部5の中心に対する周方向と正背方向が一致する位置での接線方向を指している。
【0036】
本実施例2においても実施例1と同様に、カードモジュール基板3の挿抜に伴う押圧又は引張操作とは連動しない別個の係合機構Lの操作部8の作業者のマイナスドライバによる回転操作に基づいて、ロック部17を被係合部21に係合させてコネクタ2にカードモジュール基板3を固定することができる。
【0037】
また本実施例2においても、パッド34とコンタクト22の接点において信号の迂回経路となる枝分かれ部が挿入方向SI側に発生することを防止できるため、高速伝送性能を高めることができ、パッド34の挿抜方向の長さを短くした上で接触信頼性を高めることができる。また本実施例2でも、係合作業において手又は指を入れるスペースの確保を不要なものとして、作業性を向上してコストダウンを図ることができる。
【0038】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【0039】
例えば上述した実施例では操作部8をマイナスドライバに対応させる形態としたが、指により操作するツマミタイプとすることもできる。この場合、操作部8を抜去方向側に適宜延伸させる形態としてもよい。ケーブルコネクタ33の設置方向についても挿抜方向Sに設ける構成としてもよい。