(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記砂丘の標高区分図に基づき、予め定めた基準標高を実現するために必要な盛土材量を演算する盛土材量演算手段をさらに備え、前記経時変化情報提示手段は、前記必要な盛土材量の演算結果の格納及び提示も行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の海岸整備状況把握支援装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0017】
図1には、実施形態にかかる海岸整備状況把握支援装置に使用される海岸の状況の画像データを取得する方法の例が示される。
図1において、評価対象の海岸には砂丘100と砂丘100の背後(海とは反対側)の海岸林102とがあるものとする。本実施形態では、ヘリコプターや航空機等の飛翔体104に搭載された標高計測装置106により海岸の各位置の標高を計測する。この標高計測装置106としては、レーザ光をパルス的に発射し、その反射光を受光して時間差により標高を計測するレーザ測高計等を使用することができる。また、上記飛翔体104には、標高計測装置106の他に、海岸の光学画像を取得する撮像装置108を搭載してもよい。撮像装置108としては、静止画、動画の一方または両方を取得できるカメラを使用するのが好適である。
【0018】
図2には、海岸整備状況把握支援装置の一実施形態の機能ブロック図が示される。
図2において、海岸整備状況把握支援装置は、標高データ受付部10、傾斜段彩図生成部12、標高区分図生成部14、津波防御機能評価部16、盛土材量演算部18、経時変化情報提示部20、記憶部22及び通信部24を含んで構成されている。
【0019】
標高データ受付部10は、
図1で説明した標高計測装置106が計測した標高の値(標高データ)を標高計測装置106から取得する。取得方法は特に限定されないが、通信部24を介して無線通信または有線通信により取得してもよいし、CD(コンパクトディスク)、DVD(デジタル・バーサタイル・ディスク)、USBメモリ等を介して取得してもよい。
【0020】
傾斜段彩図生成部12は、標高データ受付部10が受け付けた標高計測装置106による標高計測結果(標高データ)に基づき、評価対象の海岸における砂丘及び海岸林の傾斜段彩図を生成する。ここで、傾斜段彩図とは、上記標高データに基づいて、各地点(具体的には予め定めた大きさのメッシュ)とその周囲の地点との標高差から傾斜角を求め、傾斜角に応じて段彩(グラデーション)をつけた地形図である。標高差の算出方法は後述する。
【0021】
なお、上記メッシュは正方形であり、現実の地表において一辺が20cm〜1mの大きさが好適である。メッシュの標高は、例えば標高計測装置106によりメッシュ内の複数点の標高を計測し、計測値の代表値(平均値や、最大値、最小値など)として求めるが、一辺の長さが上記範囲より小さい(20cm未満)と、標高計測装置106によりメッシュ内の複数点の標高を計測することが困難になる。また、上記範囲より大きい(1mより大きい)と、後述する標高差、海岸林の密集度の計測をおこなう際の解像度が不足する。このため、メッシュの大きさは、上記範囲が好適である。
【0022】
標高区分図生成部14は、標高データ受付部10が受け付けた標高計測装置106による標高計測結果(標高データ)に基づき、砂丘の標高区分図を生成する。ここで、標高区分図とは、上記標高データに基づいて、各地点(具体的には予め定めた大きさのメッシュ)毎の標高値に基づいて区分し、色分け、明度差(グラデーション)、模様等により表示した地形図である。
【0023】
津波防御機能評価部16は、評価対象の海岸における砂丘の標高及び傾斜、並びに海岸林の樹木の密度に基づいて津波に対する抵抗力の指標を算出する。評価方法の詳細は後述する。
【0024】
盛土材量演算部18は、標高区分図生成部14が生成した砂丘の標高区分図に基づき、予め定めた基準標高を実現するために必要な盛土材量を演算する。演算方法の詳細は後述する。
【0025】
経時変化情報提示部20は、上記傾斜段彩図、上記標高区分図、上記津波に対する抵抗力の指標及び必要な盛土材量の演算結果の履歴情報を格納し、上記履歴情報を経時変化情報として提示する。
【0026】
記憶部22は、ハードディスク装置、ソリッドステートドライブ(SSD)等の不揮発性メモリに、上記傾斜段彩図、上記標高区分図、上記津波に対する抵抗力の指標、必要な盛土材量の演算結果及びCPUの動作プログラム等の、上記各処理に必要な情報を記憶させる。なお、記憶部22としては、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)、光磁気ディスク(MO)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ、電気的消去および書き換え可能な読出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュ・メモリ等を使用してもよい。
【0027】
通信部24は、USB(ユニバーサルシリアルバス)ポート、ネットワークポートその他の適宜なインターフェースにより構成され、海岸整備状況把握支援装置がネットワーク等の通信手段を介して外部の装置とデータをやり取りするために使用する。
【0028】
なお、上記海岸整備状況把握支援装置は、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ、I/O等を備えており、装置全体の制御及び各種演算を行うコンピュータとして構成されている。
【0029】
図3には、各地点の標高差(傾斜角)の算出方法の説明図が示される。
図3において、傾斜段彩図生成部12は、評価対象の海岸の地形図を予め定めた大きさのメッシュに区切って行く。このメッシュの大きさとしては、上述したように、一辺が20cm〜1mの大きさが好適である。
【0030】
図3の例では、九つのメッシュM1〜M9が示されている。なお、地形図上に設定されるメッシュの数が九つに限定される趣旨ではない。
図3に示されたメッシュの内、メッシュM1が傾斜角を求める対象である。上記各メッシュには、標高計測装置106により計測した標高が設定されている。なお、各メッシュの標高は、メッシュ内の複数点の標高を測定し、これらの算術的な平均値等の代表値として求められる。標高計測装置106により計測した標高データは、記憶部22に記憶させておいてもよいし、他のサーバ等に記憶させ、通信部24を介して傾斜段彩図生成部12が取得してもよい。また、傾斜段彩図生成部12の演算の度に標高計測装置106から取得してもよい。
【0031】
また、
図3には2つの異なる方向をx及びyで示している。これらの方向は、各メッシュの互いに交わる2つの辺に平行であり、各メッシュが矩形である場合には、x方向とy方向とは互いに直交する。
【0032】
傾斜角は、メッシュM1と他の八つのメッシュM2〜M9との間で以下の式(1)により定義する。
【0033】
メッシュM2との間の傾斜角={(dh/dx)
2+(dh/dy)
2}
1/2 …(1)
ここで、dh/dxは、
図3のx方向におけるメッシュの標高の変化率、dh/dyは、
図3のy方向におけるメッシュの標高の変化率である。
dh/dx=[{h(M9)+2h(M8)+h(M7)}-{h(M3)+2h(M4)+h(M5)}]/8Dx
dh/dy=[{h(M5)+2h(M6)+h(M7)}-{h(M3)+2h(M2)+h(M9)}]/8Dy
ただし、h(Mn)(n=1〜9)は、メッシュM1〜M9の標高、Dxは各メッシュのx方向の辺の長さ、Dyは各メッシュのy方向の辺の長さである。
【0034】
以上のようにして、傾斜段彩図生成部12が、評価対象の海岸の地形図に設定した各メッシュについて、そのメッシュの周囲に設定されたメッシュとの傾斜角を演算する。また、傾斜段彩図生成部12は、演算した傾斜角に基づき傾斜段彩図を生成する。この傾斜段彩図は、各メッシュについてそれぞれ演算された傾斜角をその大きさで区分し、区分毎に予め定めた基準により色相、明度、彩度、模様(メッシュ中のドットの密度等)等を設定し、地形図に段彩を付けることにより生成される。
【0035】
図4(a)、(b)には、標高段彩図及び傾斜段彩図生成部12が生成した傾斜段彩図の例が示される。このような標高段彩図または傾斜段彩図は、砂丘の欠損箇所及び海岸林の樹木の疎密を把握することに使用できる。
図4(a)が標高段彩図であり
図4(b)が上記傾斜段彩図であって、いずれもグレースケールにより段彩が表現されている。なお、標高段彩図は、上記各メッシュの標高に基づき、予め定めた基準により色相、明度、彩度、模様(メッシュ中のドットの密度等)等を設定し、地形図に段彩を付けることにより生成される。また、
図4(a)、(b)の最も下側が海であり、その上側が砂丘であり、最も上側に海岸林が示されている。
【0036】
図4(a)では、標高が高いほど白に近づき、標高が低いほど黒に近づくように段彩図が作成されている。一方、
図4(b)では、傾斜角が大きいほど黒に近づき、傾斜角が小さいほど白に近づく様に段彩図が作成されている。
【0037】
図4(a)に示されるような標高に基づく段彩図の場合には、海S、砂丘H、海岸林Tが一つの段彩図に表現され、段彩図で表現される標高の範囲が広くなっている。このため、段彩図の標高差の解像度が低下し、例えば砂丘Hの欠損箇所等における小さな標高の差を明瞭に表現することが困難である。
【0038】
これに対して、
図4(b)に示されるような傾斜角に基づく段彩図の場合には、一つの段彩図に表現される標高の範囲が広くなっても、標高差(傾斜角)に関して高い解像度を維持することができる。すなわち、海面の標高と海岸林の木の頂上との標高差、あるいは、それよりも大きい標高差がある場合のように、傾斜角が一定値以上となるメッシュを黒とし、零から上記一定値までの傾斜角となるメッシュにグレースケールを設定すれば、標高差(傾斜角)の解像度を高くでき、砂丘Hの欠損箇所等の小さな標高差(傾斜角)を明瞭に表現することができる。
【0039】
上記
図4(a)では、海岸林Tにおいて樹木の密度が低く、地表面が見えている箇所(Aと表示)は、段彩図で表現された地域で最も標高が低い方の箇所であるので黒く表示され、標高段彩図から把握することができる。しかし、砂丘Hの欠損箇所は、その周囲との標高の差が、標高段彩図で表現される標高の範囲に対して大きくなく、グレースケール上で明度の差を大きく表現することができない。このため、
図4(a)のような標高段彩図では、砂丘Hの欠損箇所のような、標高の差が比較的小さく、かつ段彩図により把握したい箇所を明瞭に把握することが困難である。
【0040】
これに対して、
図4(b)では、海岸林Tの地域において、樹木の密度が低く、地表面が見えている箇所は、地表面がほぼ平坦であり傾斜角が小さいので白く表示されている。同様に、砂丘Hの地域の内傾斜角が小さい(欠損が生じていない)箇所及び海Sも白く表示されている。
【0041】
一方、海岸林Tの地域で樹木の密度が高い箇所は、樹木が存在するメッシュと樹木の無い(または少ない)地表に相当するメッシュとの標高差(標高の変化率)が大きくなり、傾斜角が大きくなるので、全体的に黒く表示されている。また、砂丘Hの地域において欠損が生じている箇所(欠損箇所、
図4(b)ではDeと表示)は、当該位置のメッシュについて算出される傾斜角が、傾斜段彩図で表現される傾斜角の範囲に対して比較的大きくなるので、黒い線として表示されている。従って、砂丘Hの欠損箇所Deを明瞭に把握することができる。
【0042】
図5(a)、(b)には、標高区分図生成部14が生成した標高区分図の例が示される。
図5(a)、(b)の例では、各メッシュの標高がグレースケールで表現されている。すなわち、標高を一定の範囲(例えば、5m未満、5m以上6m未満、6m以上6.5m未満、6.5m以上)毎に区分し、標高が低いほど白に近づき、標高が高いほど黒に近づくように作成されている。
【0043】
図5(a)の例では、図の右の領域が海Sであり、ほぼ中央に砂丘Hが存在している。ここで、津波に対する防御機能を確保するための砂丘の基準標高を、例えば6.5mとすると、
図5(a)では、最も標高が高い、すなわち6.5m以上のメッシュが黒く表現されているので、上記基準標高を超える砂丘の状況を容易に確認することができる。
図5(a)の例では、基準標高を超える砂丘Hが海岸線とほぼ並行に連続して存在していることがわかる。
【0044】
また、
図5(b)の例では、2つの砂丘H1、H2が黒く表現されている。これらの内、砂丘H1は基準標高を超えて連続しているが、基準標高を超える領域(図で黒く表示されている)の形状が整形されておらず、津波による浸食や経年劣化による欠損が認められる。また、
図5(b)では、2つの砂丘H1、H2の間が、道路R1により途切れている状態も確認できる。
【0045】
このように、標高区分図を使用することにより、砂丘の整備状況を容易に把握することができる。
【0046】
図6(a)、(b)には、津波防御機能評価部16が算出する津波に対する抵抗力の指標の説明図が示される。
図6(a)の例では、海岸における汀線W上に設定されたメッシュMWの列と海岸に存在する砂丘H上に設定されたメッシュMHとが示されている。また、
図6(b)の例では、砂丘Hの代わりに海岸林の樹木T上に設定されたメッシュMTが示されている。
【0047】
図6(a)、(b)において、津波は海側(汀線側)から海岸を遡上して行くが、本実施形態では砂丘Hの高さが一定の基準標高を超えている場合、あるいは海岸林の樹木の密度が一定値以上の場合に、津波の遡上を遮ると考える。このため、津波防御機能評価部16は、
図6(a)に示されたメッシュMHの標高を標高データ受付部10から取得する。また、
図6(b)に示されたメッシュMTの樹木の密度は、傾斜段彩図生成部12が生成した傾斜段彩図に基づき、各メッシュMTの樹木の密度が一定値を超えているか否かを人間が判断した結果を取得する。この場合、人間が上記判断結果をキーボードその他の入力装置から入力し、その情報を津波防御機能評価部16が取得すればよい。あるいは、上記傾斜段彩図のグレースケールの明度等から津波防御機能評価部16が各メッシュMTの樹木の密度が一定値を超えているか否かを判断する構成としてもよい。
【0048】
次に、津波防御機能評価部16は、汀線より陸地側(海岸)にある各メッシュから汀線までの距離を算出する。この距離は、基準標高を超えるメッシュ及び樹木の密度が一定値を超えメッシュ(後述する遮断メッシュ)を通過できないルールを設定して算出する。すなわち、
図6(a)、(b)に矢印付線分で示されるように、あるメッシュMSから遮断メッシュ以外のメッシュ(後述する通過メッシュ)を通過して上記遮断メッシュを迂回するものとして距離を算出する。このようにして、汀線より陸地側の全てのメッシュについて上記距離が算出され、この距離が予め定めた閾値以下のメッシュについて、当該距離がそのメッシュの汀線までの距離として設定される。なお、算出手順は後述する。
【0049】
図7(a)〜(d)には、津波防御機能評価部16による、津波に対する抵抗力の指標となる汀線までの距離の算出方法の説明図が示される。
【0050】
図7(a)において、汀線より陸地側のある地点Xを設定し、この地点Xと目標点Yとの間の距離を求める。なお、目標点Yは、汀線上の点である。また、地点Xとの距離を求める地点Yは、地点Xから最も近くなる汀線上の点であり、上記遮断メッシュが無ければ地点Xから汀線にひいた法線と汀線とが交わる点である。また、上記距離は、上記メッシュの一辺の長さを単位とするのが好適である。
【0051】
津波防御機能評価部16は、汀線上の目標点Yを含むメッシュMWと上記設定した地点Xを含むメッシュMXとの距離を算出する。この場合、
図7(b)に示されるように、メッシュMWの隣のメッシュの距離を1、以後メッシュMWとは反対方向に移る毎に距離を1ずつ増やしていく。また、本実施形態では、予め定めた閾値を5とし、メッシュMWからの距離が5までのメッシュMXに、それぞれの距離が汀線までの距離として設定される。
図7(b)の例では、各メッシュMXに、それぞれ1から5までの数字が記載されており、メッシュの一辺の長さを単位としたメッシュMWからの距離を示している。上記閾値が5であるので、メッシュMXに設定される数値は5までとなる。また、メッシュMWからの距離が閾値である5を超える(6以上)メッシュについては、距離の設定を行わず、例えば“NULL”を設定する。
図7(b)の例では、“N”と記載されている。なお、上記閾値は、想定する津波の高さ等により予め設定する。
【0052】
以上に述べた例では、メッシュMXの位置がメッシュMWとは反対方向にメッシュ1個分移る毎に距離を1ずつ増やしていたが、各メッシュMX間の距離に重み付けを行ってもよい。
図7(c)の例では、重みを付与した各メッシュMX間の距離が示されており、メッシュMWから1メッシュ分離れる毎に、それぞれ2,2,1,3,1,1,2という重み付きの距離が設定されている。この重みは、津波に対する抵抗力の大きさ等を考慮して予め設定される。例えば、当該メッシュの最大傾斜角θ(標高の最大変化率)を求め、この傾斜角θとメッシュの一辺の長さlとに基づき、l/cosθを重みとすることが例示できる。また、
図6(a)、(b)に示されるように、基準標高を超えるメッシュ及び樹木の密度が一定値を超えたメッシュは通過できないルールが設定されているので、このようなメッシュには十分大きな重みを設定する。ここで、十分大きいとは、上記閾値を超える値である。
【0053】
図7(c)において、汀線上のメッシュMWからの距離を演算する際には、各メッシュMX間の距離に上記重み付き距離を使用し、これを加算して行く。
図7(c)の例では、メッシュMWの隣のメッシュMXは、実際の距離は1であるが、設定された重み付き距離が2であるので、当該メッシュにはメッシュMWからの距離として2が設定される。また、メッシュMWから2個目のメッシュMXには、重み付き距離として2が設定されており、当該メッシュには2+2の演算によりメッシュMWからの距離として4が設定される。さらに、メッシュMWから3個目のメッシュMXには、重み付き距離として1が設定されており、当該メッシュには2+2+1の演算によりメッシュMWからの距離として5が設定される。この場合、メッシュMWから4個目以降のメッシュMXに設定されるメッシュMWからの距離は、上記閾値5よりも大きくなるので、全てN(NULL)が設定される。
【0054】
このようにして設定された各メッシュMXのメッシュMWからの距離が
図7(d)に示される。
図7(d)の例では、Nが設定されたメッシュには津波は到達しないとの仮定をおいており、どこまで津波が遡上するかの目安とすることができる。但し、実際に津波が到達しないことを保証するものではない。
【0055】
なお、
図6(a)、(b)に示される、基準標高を超えるメッシュ及び樹木の密度が一定値を超えるメッシュ(遮断メッシュ)には、上記閾値を超える十分大きな重みが設定されている。これは、津波がこの遮断メッシュを通過できないとの趣旨である。また、
図6(a)、(b)のメッシュMSは、上記閾値を超える重みが設定されたメッシュ(遮断メッシュ)が存在するために、直線経路(折れ線を含まない経路)による最短距離では汀線に達することができないメッシュの例である。この場合には、津波防御機能評価部16は、上記汀線までの距離を算出するにあたって、迂回経路(折れ線を含む経路)を演算する。この演算は、まずメッシュMSに辺で接している4個のメッシュの内、上記遮断メッシュ以外のメッシュ、すなわち津波が通過できるメッシュ(通過メッシュ)が無いか確認する。例えば、
図6(a)に示された例では、メッシュMSに辺で接している4個のメッシュの内2個のメッシュが上記通過メッシュと確認される。
【0056】
次に、津波防御機能評価部16は、通過メッシュと確認されたメッシュについて、上記メッシュMSの場合と同様に、辺で接している4個のメッシュの中に通過メッシュが無いか確認する。なお、この場合、上記メッシュMSは除外して判断する。
【0057】
以後、同様にして、通過メッシュと確認されたメッシュについて周囲4個のメッシュに通過メッシュが無いか確認して行く。なお、この際には、先に通過メッシュと確認されているメッシュは除外して判断する。
【0058】
次に、津波防御機能評価部16は、以上の手順により確認された通過メッシュを繋いだ時に、最も短い(繋いだメッシュの数が最も少ない)距離で汀線に達する経路(遮断メッシュを迂回する経路)を抽出する。
図6(a)、(b)に矢印付線分として示される経路(迂回路)は、上記手順により求めた、メッシュMSから最短距離で汀線に到達する経路である。上述したように、この最短距離が上記閾値を超えない場合は、当該距離がメッシュMSに設定され、閾値を超える場合は、N(NULL)がメッシュMSに設定される。なお、通過メッシュに重みを設定し、この重みに基づいて上記最短距離の迂回経路の距離を演算してもよい。
【0059】
上記
図6(a)、(b)及び
図7(a)〜(d)の例では、Nが設定されたメッシュまでは津波が到達しないと仮定して、津波防御機能評価部16が、津波に対する抵抗力の指標、すなわち津波が発生した場合に、何処まで遡上するかの指標(Nが設定されたメッシュの隣の、汀線からの距離が設定されているメッシュまで遡上すると仮定している)を算出する。この指標は、津波が遡上する領域を予想するための目安であり、例えば海岸を含む地図上に、津波が遡上すると予想される範囲を表示した画像等として表される。なお、前述したように、この指標はあくまで津波の到達し難さを表す目安であり、津波が到達しないことを保証するものではない。
【0060】
図8(a)、(b)には、盛土材量演算部18による盛土材の量の演算方法の説明図が示される。
図8(a)は、標高区分図生成部14が生成した砂丘の標高区分図に基づいて作成した砂丘上のメッシュ毎の標高を表す模式図である。
図8(a)において、各メッシュの標高は、四角柱の高さとして示されている。また、盛土材標高の基準高さ(基準標高)が面Stで示されている。必要となる盛土材の量は、各メッシュの高さを基準標高に到達させるための量である。
【0061】
そこで、盛土材量演算部18は、四角柱で示される各メッシュの現実の標高と、基準標高との標高差を求め、これにメッシュの面積を乗じて和をとることにより、必要となる盛土材の補充量(体積)を算出する。
【0062】
また、
図8(b)には、汀線に直行する方向の砂丘の断面図が示される。砂丘には、天端幅(頂上の面の幅)Lcを確保するために、
図8(b)に示されるように、法面Slを形成する必要がある。このため、盛土材量演算部18は、予め定めた基準に従って法面の形成に必要な盛土材の追加量(体積)を算出する。上記予め定めた基準は、適宜な法面の設計に基づいて定められる。
【0063】
盛土材量演算部18は、上記のようにして算出した盛土材の補充量と追加量と合計し、基準標高を実現するために必要な盛土材量を算出する。
【0064】
図9には、本実施形態に係る海岸整備状況把握支援装置の動作例のフロー図が示される。
図9において、標高データ受付部10が、標高計測装置106が計測した標高データを受け付ける(S1)。
【0065】
次に、傾斜段彩図生成部12が、標高データ受付部10が受け付けた標高データに基づき、
図4(b)に示されるような、評価対象の海岸における砂丘及び海岸林の傾斜段彩図を生成する(S2)。
【0066】
次に、標高区分図生成部14が、標高データ受付部10が受け付けた標高データに基づき、
図5(a)、(b)に示されるような、砂丘の標高区分図を生成する。
【0067】
次に、津波防御機能評価部16が、評価対象の海岸における砂丘の標高及び傾斜、並びに海岸林の樹木の密度に基づいて津波に対する抵抗力の指標を算出する(S4)。津波に対する抵抗力の指標は、上記
図6(a)、(b)及び
図7(a)〜(d)の例で説明したように、それぞれのメッシュの汀線からの距離が予め定めた閾値を超えるか否かに基づいて、津波が何処まで遡上するかを判断する際の目安となる指標である。
【0068】
次に、盛土材量演算部18が、標高区分図生成部14が生成した砂丘の標高区分図に基づき、
図8(a)、(b)で説明した方法により、予め定めた基準標高を実現するために必要な盛土材量を算出する(S5)。
【0069】
経時変化情報提示部20は、上記傾斜段彩図が生成され、上記標高区分図が生成され、上記津波に対する抵抗力の指標及び必要な盛土材の量の演算処理が行われたときに、その結果を記憶部22に格納し、履歴情報として収集する(S6)。履歴情報の収集は、上記履歴情報が生成される度に行われる。
【0070】
その後、経時変化情報提示部20は、収集した上記履歴情報を経時変化情報として提示する(S7)。履歴情報の提示は、使用者の指示に基づいて行われる。また、提示方法としては、適宜なデイスプレイへの表示、印刷出力等が挙げられるが、これらに限定されず、例えば通信部24を介して他のコンピュータ等に送信してもよい。
【0071】
以上により、海岸の整備状況の径時変化を容易に把握することができ、海岸の整備計画の立案等に有効な情報を得ることができる。
【0072】
上述した、
図9の各ステップを実行するためのプログラムは、記録媒体に格納することも可能であり、また、そのプログラムを通信手段によって提供しても良い。その場合、例えば、上記説明したプログラムについて、「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」の発明または「データ信号」の発明としてとらえてもよい。