(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
現在時刻から所定時間だけ遡った時刻を基準時刻とし、当該基準時刻から凝固時間以上遡った時刻を第一時刻とし、前記基準時刻から融解時間以上遡った時刻を第二時刻としたときに、
前記第一時刻から前記基準時刻に至るまで、水の温度が継続して前記相変化温度を下回っている場合には、潜熱蓄熱材の最大固相率を前記基準時刻における前記潜熱蓄熱材の固相率とし、
前記第二時刻から前記基準時刻に至るまで、水の温度が継続して前記相変化温度を上回っている場合には、前記基準時刻における前記潜熱蓄熱材のゼロとすることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の蓄熱量算出方法。
前記温度が前記潜熱蓄熱材の相変化温度を下回った時刻または上回った時刻を相変化時刻とし、当該相変化時刻から現在時刻までの経過時間を前記凝固固相率関数または前記融解固相率関数にあてはめて、前記潜熱蓄熱材の固相率を算出することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の潜熱蓄熱槽の蓄熱量算出方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施形態では、潜熱蓄熱槽1の蓄熱量を算出する場合について説明する。
潜熱蓄熱槽1の内部には、
図1に示すように、水2が貯留されているとともに、潜熱蓄熱材3が設置されている。
【0020】
水2は、いわゆる冷媒であって、潜熱蓄熱槽1において冷却された後、潜熱蓄熱槽1の下部に接続された輸送管6aを介して空調機6へと輸送される。一方、空調機6から排出された使用済の冷媒は、潜熱蓄熱槽1の上部に接続された返送管6bを介して潜熱蓄熱槽1に戻される。
【0021】
また、潜熱蓄熱槽1には、冷却機7が管路7aを介して接続されている。管路7aは、潜熱蓄熱槽1の上部から冷却機7を経由して潜熱蓄熱槽1の下部に接続されている。冷却機7は、温まった潜熱蓄熱槽1内の水2を冷却したのち、潜熱蓄熱槽1内に戻すように構成されている。
【0022】
本実施形態では、潜熱蓄熱材3を3段配置しているが、潜熱蓄熱材3の段数は限定されない。
潜熱蓄熱材3は、その温度が相変化温度t
sを上回ると融解し始め、相変化温度t
sを下回ると凝固し始める材質により構成されている。
【0023】
潜熱蓄熱材3の種類に制限はないが、例えば、無機水和塩(塩化カルシウム水和物、硫酸ナトリウム水和物、酢酸ナトリウム水和物等)やパラフィン等の有機化合物を使用することができる。
なお、本実施形態では、潜熱蓄熱槽1中の水は、0℃を下回らないものとし、かつ、潜熱蓄熱材3の相変化温度t
sは0℃よりも高いものとする。
【0024】
潜熱蓄熱槽1には、複数の温度計4が設置されている。本実施形態では、7個の温度計4を上下方向に等しい間隔をあけて一列に配置しているが、温度計4の設置間隔や個数は限定されない。また、温度計4は複数列配置してもよい。
【0025】
温度計4は、潜熱蓄熱槽1内の水2の温度を測定している。
ここで、潜熱蓄熱槽1では、上下に隣り合う温度計4同士の中間を通る水平面を層境b
Lとして各層の範囲を設定する。そして、各層(上下に隣り合う層境b
L,b
Lの間の領域)の温度計で測定された温度を、各層の水温度(潜熱蓄熱材3が含まれる層においては潜熱蓄熱材3の温度)とし、かつ、各層の温度が一定であるものとして計算を行う。
【0026】
潜熱蓄熱槽1の蓄熱量の算出は、温度計4による計測結果に基づいて、蓄熱量算出装置5(
図2参照)により行う。温度計4は、蓄熱量算出装置5に接続されていて、温度計4の計測結果は蓄熱量算出装置5に入力される。
【0027】
図2に示すように、蓄熱量算出装置5は、記憶装置10、出力装置20、入力装置30、演算処理部40を少なくとも備えるコンピュータから構成されている。記憶装置10には、コンピュータを蓄熱量算出装置5として機能させるための図示しない蓄熱量算出プログラムが格納されている。
【0028】
記憶装置10は、例えば半導体メモリや磁気ディスクなどから構成されており、少なくとも凝固融解関数ファイル11と、温度ファイル12と、固相率ファイル13と、蓄熱量ファイル14と、水条件ファイル15と、蓄熱材条件ファイル16とを格納している。すなわち、本実施形態では、記憶手段10が、凝固融解関数記憶手段と、温度記憶手段と、固相率記憶手段と、蓄熱量記憶手段として機能する。
【0029】
凝固融解関数ファイル11には、凝固固相率関数Fa(x)および融解固相率関数Fb(x)が記憶されている。また、凝固溶融関数ファイル11には、凝固完了時間T
M、凝固開始時間T
MS、融解完了時間T
L、融解開始時間T
LSも記憶されている。
【0030】
凝固固相率関数Fa(x)は、
図3の(a)に示すように、潜熱蓄熱材3の固相率がゼロから最大(固相率η
max)になるまでの時間(凝固完了時間T
M)と固相率との関係により求まる関数である。時間軸の原点は、相変化温度t
sを下回った時刻である。なお、相変化温度t
sを下回ってから所定時間は固相率に変化が生じない。相変化温度t
Sを下回ってから固相率が増加し始めるまでに要する時間を凝固開始時間T
MSとする。
【0031】
融解固相率関数Fb(x)は、
図3の(b)に示すように、潜熱蓄熱材3の固相率が最大(固相率η
max)からゼロになるまでの時間と固相率との関係により求まる関数である。時間軸の原点は、相変化温度t
sを上回った時刻である。なお、相変化温度t
sを上回ってから所定時間は固相率に変化が生じない。相変化温度t
sを上回ってから固相率が低下し始めるまでに要する時間を融解開始時間T
LSとする。
【0032】
凝固固相率関数Fa(x)および融解固相率関数Fb(x)は、潜熱蓄熱材3を実際に凝固融解させ求めた実測値である。なお、実測データから求めた近似関数をFa(x),Fb(x)としてもよい。
【0033】
温度ファイル12には、各温度計4により測定された温度の履歴が記憶されている。温度の履歴は、温度と時刻とを関連付けた状態で保存されている。
温度ファイル12には、層毎の温度履歴が少なくとも24時間分保存される。
【0034】
固相率ファイル13には、潜熱蓄熱材3の固相率が記憶されている。
蓄熱量ファイル14には、水2の蓄熱量や、潜熱蓄熱材3の顕熱蓄熱量および潜熱蓄熱量が記憶されている。
【0035】
水条件ファイル15には、水の蓄熱量の算出に使用する水の容積V
w、水の比重量γ
w、水の比熱H
w等が記憶されている。
蓄熱材条件ファイル16には、潜熱蓄熱材の蓄熱量の算出に使用する、潜熱蓄熱材の融解時容積V
u、潜熱蓄熱材の融解時比重量γ
u、融解進行時の潜熱蓄熱材の比熱H
u1、凝固進行時の潜熱蓄熱材の比熱H
u2等が記憶されている。
【0036】
出力装置20は、ディスプレイ、プリンタ及び送信手段の少なくとも一つからなる。例えば、出力装置20により各種記憶データや演算結果のディスプレイ表示、プリンタ出力、データ送信等を行うものである。
【0037】
入力装置30は、所定のデータを入力するためのものであり、キーボード、マウス、記憶媒体読み込み手段等から構成されている。
【0038】
演算処理部40は、
図2に示すように、温度取得手段41、固相率算出手段42、蓄熱量算出手段43等を備えて構成されている。
【0039】
温度取得手段41は、温度計4から出力された温度を定期的に取得する。すなわち、本実施形態においては、温度計4と温度取得手段41とにより、潜熱蓄熱槽1の温度を定期的に測定する温度測定手段が構成されている。
温度取得手段41により取得された温度は、温度ファイル12に記憶される。
【0040】
固相率算出手段42は、潜熱蓄熱材3の固相率を算出する。
固相率算出手段42は、凝固融解関数ファイル11に記憶された凝固固相率関数Fa(x)または融解固相率関数Fb(x)に、温度ファイル12に記憶された温度と時間とをあてはめることで、潜熱蓄熱材3の固相率を算出する。
【0041】
固相率算出手段42により算出された潜熱蓄熱材3の固相率は、固相率ファイル13に記憶される。
【0042】
蓄熱量算出手段43は、現在時刻における水2の蓄熱量と、潜熱蓄熱材3の顕熱蓄熱量および潜熱蓄熱量をそれぞれ算出するとともに、水2の蓄熱量、潜熱蓄熱材3の顕熱蓄熱量および潜熱蓄熱量の合計により潜熱蓄熱槽1の蓄熱量を算出する。
【0043】
具体的に説明すると、蓄熱量算出手段43は、温度ファイル12から現在時刻jにおける水の温度t
jおよび蓄熱最高温度(蓄熱とカウントする最高温度)t
maxを読み出すとともに、水条件ファイル15から水の容積V
w、水の比重量γ
w、水の比熱H
wを読み出し、読み出した水の温度などを利用して、式1により水2の蓄熱量(顕熱蓄熱量)Q
wjを算出する。
【0044】
Q
wj = V
w×γ
w×H
w ×(t
max-t
j) ・・・式1
ここで、Q
wj :現在時刻jにおける水の蓄熱量(MJ)
V
w:水の容積(m
3)
γ
w:水の比重量(kg/ m
3)
H
w:水の比熱(kJ/kg・K)
t
max:蓄熱最高温度(℃)
t
j:現在時刻jにおける温度(℃)
【0045】
潜熱蓄熱材3の現在時刻jにおける顕熱蓄熱量Q
usjを算出する場合、蓄熱量算出手段43は、温度ファイル12から潜熱蓄熱材3の温度の履歴を読み出すとともに、蓄熱材条件ファイル16から潜熱蓄熱材の融解時容積V
u、潜熱蓄熱材の融解時比重量γ
u、融解時(すなわち固相率がゼロのとき)の潜熱蓄熱材の比熱H
u1、凝固時(すなわち固相率が最大固相率のとき)の潜熱蓄熱材の比熱H
u2を読み出し、読み出した温度等を利用して式2または式3により潜熱蓄熱材3の顕熱蓄熱量Q
usjを算出する。
なお、現在時刻jにおける潜熱蓄熱材3の温度が相変化温度t
sを上回っている場合には式2を利用し、同温度が相変化温度t
sを下回っている場合には式3を使用する。
【0046】
Q
usj = V
u×γ
u×H
u1×(t
max-t
j) ・・・式2
Q
usj = V
u×γ
u×H
u1×(t
max-t
s)+V
u×γ
u×H
u2×(t
s-t
j) ・・・式3
ここで、Q
usj:現在時刻jにおける潜熱蓄熱材の顕熱蓄熱量(MJ)
V
u:潜熱蓄熱材の融解時容積(m
3)
γ
u:潜熱蓄熱材の融解時比重量(kg/ m
3)
H
u1:潜熱蓄熱材の比熱(融解時)(kJ/kg・K)
H
u2:潜熱蓄熱材の比熱(凝固時)(kJ/kg・K)
t
max:蓄熱最高温度(℃)
t
j:現在時刻jにおける温度(℃)
t
s:相変化温度(℃)
【0047】
潜熱蓄熱材3の現在時刻jにおける潜熱蓄熱量を算出する場合、蓄熱量算出手段43は、固相率ファイル13から現在時刻jにおける潜熱蓄熱材3の固相率η
jを読み出し、さらに、蓄熱材条件ファイル16から潜熱蓄熱材の融解時容積V
u、潜熱蓄熱材の融解時比重量γ
u、潜熱蓄熱材の凝固熱S
uを読み出し、読み出した温度等を利用して、式4により潜熱蓄熱材3の潜熱蓄熱量を算出する。
【0048】
Q
ulj = V
u×γ
u×S
u×η
j/100 ・・・式4
ここで、Q
ulj:現在時刻jにおける潜熱蓄熱材の潜熱蓄熱量(MJ)
V
u:潜熱蓄熱材の融解時容積(m
3)
γ
u:潜熱蓄熱材の融解時比重量(kg/ m
3)
S
u:潜熱蓄熱材の凝固熱(kJ/kg)
η
j:現在時刻jにおける潜熱蓄熱材の固相率(%)
【0049】
次に本実施形態の蓄熱量算出方法について説明する。
潜熱蓄熱槽1の蓄熱量の算出は、蓄熱量算出プログラムにより蓄熱量算出装置5を作動させることにより行う。
【0050】
蓄熱量算出装置5が作動すると、温度測定手段(温度計4と温度取得手段41)により潜熱蓄熱槽1の温度測定が定期的に行われる。温度の測定間隔は限定されるものではないが、本実施形態では、1時間毎に測定するように設定されている。
【0051】
温度計4により測定された潜熱蓄熱槽1の温度は、温度取得手段41により取得される。温度取得手段41は、取得した温度を層毎に温度ファイル12に記憶する。
【0052】
また、蓄熱量算出装置5は、温度測定とともに潜熱蓄熱槽1の蓄熱量の算出を順次行う。
蓄熱量算出装置5は、まず、潜熱蓄熱材3の固相率の算出処理を実行する。
【0053】
蓄熱量算出装置5による潜熱蓄熱材3の固相率の算出は、現在時刻jから24時間前までの温度履歴を温度ファイル12から読み出すとともに、以下の手順に従って、現在時刻jから過去に時間i遡った基準時刻j−iにおける潜熱蓄熱材3の固相率を算出する。
なお、本実施形態では、遡る時間を24時間前までとしたが、遡る時間は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0054】
(1)基準時刻の決定
まず、融解または凝固が完了した時刻(基準時刻)j−iを決定する。現在時刻から遡る時間iは、
図5に示すように、初回は「0」とし(S11)、2回目以降は前回値にΔiを加えた値とする(S111)。ここで、Δiは、温度の測定間隔(本実施形態では1時間)に設定するとよい。
【0055】
次に、基準時刻j−iにおける潜熱蓄熱材3の温度t
j-iを温度ファイル12から読み出して、相変化温度t
sと比較する(S12)。
【0056】
(1−1)温度t
j-iが相変化温度t
sよりも低い場合(S12で「Yes」の場合)
S12で温度t
j-iが相変化温度t
sよりも低いと判定された場合は、S121に進み、時間iが(24−T
M)以上であるか否かを判定する。
【0057】
S121で「Yes」と判定された場合には、エラーを出力する。
S121で「No」と判定された場合にはS122に進み、n=Δnとした上で、S13に進み、基準時刻j−iからn時間だけ遡った時刻における潜熱蓄熱材の温度t
j-i-nを相変化温度t
sと比較する。時間nはΔn時間〜凝固完了時間T
Mとする。
【0058】
S13でt
j−i−n<t
sとなった場合には、n=n+Δnとした上で再度S13を繰り返す。
S13は、nがT
Mとなるまでくり返す。Δnは適宜設定すればよいが、例えば、温度の測定間隔(1時間)に合わせてΔn=1とすると、時刻j−i−1から時刻(第一時刻)j−i−T
Mまで1時間ピッチでS13を行うことになる。
【0059】
時刻j−i−1から時刻j−i−T
Mまでの間において、温度t
j-i-nが相変化温度t
sを下回っていれば、S131に進むことになる。この場合、基準時刻j−iにおける潜熱蓄熱材の固相率Rは最大固相率となる(η
j-i=η
MAX)。なお、R=Fa(x)においてxとすべき値をTPとすると、TP=T
Mとしたときに固相率が最大固相率η
MAXとなる。
一方、基準時刻j−i−1から時刻j−i−T
Mの間において、温度t
j-i-nが相変化温度t
sを上回っている場合は、i=i+Δiとしたうえで(S111)、S12に戻る。
【0060】
(1−2)温度t
j-iが相変化温度t
sよりも高い場合(S12で「No」の場合)
S12で温度t
j-iが相変化温度t
sよりも高いと判定された場合は、S123に進み、iが(24−T
L)以上であるか否かを判定する。
【0061】
S123で「Yes」と判定された場合には、エラーを出力する。
S123で「No」と判定された場合にはS124に進み、n=Δnとした上で、S14に進み、基準時刻j−iからn時間だけ遡った時刻における潜熱蓄熱材の温度t
j-i-nを相変化温度t
sと比較する(S14)。時間nはΔn時間〜凝固完了時間T
Lとする。
【0062】
S14でt
j−i−n≧t
sとなった場合には、n=n+Δnとした上で再度S14を繰り返す。
S14は、nがT
Lとなるまでくり返す。Δnは適宜設定すればよいが、例えば、温度の測定間隔(1時間)に合わせてΔn=1とすると、基準時刻j−i−1から時刻(第二時刻)j−i−T
Lまで1時間ピッチでS14を行うことになる。
【0063】
時刻j−i−1から時刻j−i−T
Lまでの間において、潜熱蓄熱材3の温度t
j-i-nが相変化温度t
sを上回っていれば、S141に進むこととなる。この場合、基準時刻j−iにおける潜熱蓄熱材の固相率Rはゼロとなる(η
j-i=0)。なお、R=Fb(x)において、xとすべき値をTPとすると、TP=T
Lとしたときに固相率がゼロとなる。
【0064】
一方、時刻j−i−1から時刻j−i−T
Lまでの間において、温度t
j-i-nが相変化温度t
s を下回っている場合は、i=i+Δiとしたうえで(S111)、S12に戻る。
【0065】
基準時刻j−iにおける潜熱蓄熱材3の固相率η
j-iを算出したら(S131,S141)、S15に進み、遡る時間iが0か否かを判定する。
【0066】
遡る時間iが0の場合(S15で「Yes」の場合)、現在時刻での潜熱蓄熱材3の固相率は、最大固相率またはゼロとなるので、ENDに進む。
一方、遡る時間iが0ではない場合(S15で「No」の場合)は、S21以降の各ステップを行い、現在時刻jにおける潜熱蓄熱材3の固相率の算出を行う。
【0067】
(2)現在時刻jにおける潜熱蓄熱材の固相率の算出
S15で「No」の場合は、固相率算出手段42が起動して、現在時刻jにおける潜熱蓄熱材3の固相率を算出する。
【0068】
固相率算出手段42が起動すると、固相率算出手段42は、経過時間(相変化温度t
sを横切った時刻からの経過時間)TC=MAX(T
L,T
M)、m=Δmとした上で(S21)、S22に進み、基準時刻j−iからm−Δm時間だけ進んだ時刻における潜熱蓄熱材の温度t
j-i+m-Δmを相変化温度t
sと比較する。なお、S22は、mがiになるまで繰り返す。
mの初期値は、Δmなので(S21)、初回は基準時刻j−iにおける潜熱蓄熱材の温度t
j-iを相変化温度t
sと比較する。なお、Δmは適宜設定すればよいが、例えば、温度測定間隔(1時間)に合わせてΔm=1とすればよい。
【0069】
(2−1)温度t
j-i+m-Δmが相変化温度t
sよりも低い場合(S22で「Yes」の場合)
S22において、温度t
j-i+m-Δmが相変化温度t
sよりも低いと判定された場合は、
図6に示すS30に進み、固相率算出手段42は、基準時刻j−iから時間mだけ進んだ時刻(すなわち、S22の時刻からΔm進んだ時刻)の温度t
j-i-mを相変化温度t
sと比較する。
【0070】
(2−1−1)温度t
j-i-mが相変化温度t
sよりも低い場合(S30で「Yes」の場合)
S30において、温度t
j-i-mが相変化温度t
sよりも低いと判定された場合は、固相率算出手段42は、時刻j−i+m-Δmにおける経過時間(相変化温度t
sを横切った時刻(下回った時刻)からの経過時間)TCにΔmを加えた値を時刻j−i+mにおける経過時間TCに設定した上で(S301)、S31に進み、経過時間TCと凝固開始時間T
MSと比較する(S31)。
なお、凝固開始時間T
MSは、
図3の(a)に示すように、潜熱蓄熱材3が凝固し始める時間帯であって、潜熱蓄熱材3の固相率に変化が生じない時間帯である。
【0071】
経過時間TCが凝固開始時間T
MS以下の場合(S31で「Yes」の場合)、固相率算出手段42は、時刻j−i+m−Δmの時点での固相率η
j-i+m-Δmを時刻j−i+mの時点での潜熱蓄熱材3の固相率η
j-i+mに設定する(S32)。
これは、潜熱蓄熱材3の温度が相対変化温度t
sを上回っている状態(融解が進行する状態)から相対変化温度t
sを下回る状態に変化しても、潜熱蓄熱材3の固相率がただちには増加せず、融解開始時間T
MSが経過した後に固相率が上がり始めるからである(
図8の(b)参照)。
【0072】
一方、経過時間TCが凝固開始時間T
MSよりも大きい場合(S31で「No」の場合)、固相率算出手段42は、凝固固相率関数Fa(x)を凝固融解関数ファイル11から読み出して、Fa(x)に代入すべき時間TPをTP+Δmとして(S311)、潜熱蓄熱材3の固相率η
j-i+mを凝固固相率関数Fa(x)から算出する(S33)。
固相率算出手段42は、算出された潜熱蓄熱材3の固相率η
j-i+mを固相率ファイル13に記憶する。
【0073】
(2−1−2)温度t
j-i-mが相変化温度t
sよりも高い場合(S30で「No」の場合)
S30において温度t
j-i-mが相変化温度t
s以上と判定された場合(すなわち、j−i+m−ΔmからΔmが経過するまでの間にt
sを超えた場合)、固相率算出手段42は、S302に進んで経過時間(t
sを横切った時刻(上回った時刻)からの経過時間)TCをリセット(TC=0)としたうえでS34に進み、基準時刻j−iから時間m−Δm進んだ時刻における潜熱蓄熱材3の固相率η
j-i+m-Δmがゼロか否かを判定する。
【0074】
固相率η
j-i+m-Δmがゼロの場合(S34で「Yes」の場合)、固相率算出手段42は、融解固相率関数Fb(x)を凝固融解関数ファイル11から読み出して、Fb(x)に代入すべき時間TPを融解完了時間T
Lとして(S35)、潜熱蓄熱材3の固相率η
j-i+mを融解固相率関数Fb(x)を利用して算出する(S36)。
固相率算出手段42は、算出された潜熱蓄熱材3の固相率η
j-i+mを固相率ファイル13に記憶する。
【0075】
固相率η
j-i+m-Δmがゼロではない場合(S34で「No」の場合)、固相率算出手段42は、固相率η
j-i+m-Δmが最大固相率η
MAXか否かを判定する(S37)。
固相率η
j-i+m-Δmが最大固相率η
MAXの場合(S37で「Yes」の場合)、固相率算出手段42は、融解固相率関数Fb(x)を凝固融解関数ファイル11から読み出して、Fb(x)に代入すべき時間TPをゼロとしたうえで(S38)、S36に進み、潜熱蓄熱材3の固相率η
j-i+mを凝固固相率関数Fb(x)から算出する。すなわち、Fb(x)においてx=TP=0として、η
j-i+mを算出する。
固相率算出手段42は、算出された潜熱蓄熱材3の固相率η
j-i+mを固相率ファイル13に記憶する。
【0076】
固相率η
j-i+m-Δmが最大固相率η
MAXではない場合(S37で「No」の場合)は、融解固相率関数Fb(x)を凝固融解関数ファイル11から読み出して、固相率η
j-i+m-Δmに対応する時間xを融解固相率関数Fb(x)から決定し、時間x
0をTPとして(S39)、すなわち、凝固固相率関数Fb(x)にx=TP=x
0として、固相率η
j-i+mを算出する(S36)。
固相率算出手段42は、算出された潜熱蓄熱材3の固相率η
j-i+mを固相率ファイル13に記憶する。
【0077】
(2−2)温度t
j-i+m-Δmが相変化温度t
sよりも高い場合(S22で「No」の場合)
S22において、温度t
j-i+m-Δmが相変化温度t
sよりも高いと判定された場合は、
図7に示すS40に進み、固相率算出手段42は、基準時刻j−iから時間mだけ進んだ時刻(すなわちS22の時刻からΔm進んだ時刻)の温度t
j-i-mを相変化温度t
sと比較する。
【0078】
(2−2−1)温度t
j-i-mが相変化温度t
s以上の場合(S40で「Yes」の場合)
S40において、温度t
j-i-mが相変化温度t
s以上と判定された場合は、S401に進み、固相率算出手段42は、時刻j−i+m−Δmでの経過時間(相変化温度t
sを横切った時刻(上回った時刻)からの経過時間)TCにΔmを加えた値を新たな経過時間TC(すなわち、温度が相変化温度t
sよりも高くなった時点から時刻j−i+mまでの時間)としたうえで、S41に進み、時間TCと融解開始時間T
LSとを比較する(S41)。
なお、融解開始時間T
LSは、
図3の(b)に示すように、潜熱蓄熱材3が融解し始める時間帯であって、潜熱蓄熱材3の固相率に変化が生じない時間帯である。
【0079】
経過時間TCが凝固開始時間T
LS以下の場合(S41で「Yes」の場合)には、時刻j−i+m−Δmの時点での固相率η
j-i+m-Δmを時刻j−i+mの時点での潜熱蓄熱材3の固相率η
j-i+mに設定する(S42)。
これは、潜熱蓄熱材3の温度が相対変化温度t
sを下回っている状態(凝固が進行する状態)から相対変化温度t
sを上回る状態に変化しても、潜熱蓄熱材3の固相率がただちには減少せず、融解開始時間T
LSが経過した後に固相率が下がり始めるからである(
図8の(a)参照)。
【0080】
一方、経過時間TCが凝固開始時間T
LSよりも大きい場合(S41で「No」の場合)は、融解固相率関数Fb(x)を凝固融解関数ファイル11から読み出して、Fb(x)に代入すべき時間TPをTP+Δmとして(S411)、潜熱蓄熱材3の固相率η
j-i+mを融解固相率関数Fb(x)から算出する(S43)。
固相率算出手段42は、算出された潜熱蓄熱材3の固相率η
j-i+mを固相率ファイル13に記憶する。
【0081】
(2−2−2)温度t
j-i-mが相変化温度t
sよりも小さい場合(S40で「No」の場合)
S40において温度t
j-i-mが相変化温度t
sよりも小さいと判定された場合(すなわち、j−i+m−ΔmからΔmが経過するまでの間にt
s以下となった場合)は、S402に進んで、経過時間TCをリセット(TC=0)としたうえでS44に進み、温度t
j-i-mが、基準時刻j−iから時間m−Δmだけ進んだ時刻における潜熱蓄熱材3の固相率η
j-i+m-Δmが最大固相率η
MAXか否かを判定する。
【0082】
固相率η
j-i+m-Δmが最大固相率η
MAXの場合(S44で「Yes」の場合)は、凝固固相率関数Fa(x)を凝固融解関数ファイル11から読み出して、時間TP(Fa(x)におけるxの値)を融解完了時間T
Mとして(S45)、潜熱蓄熱材3の固相率η
j-i+mを凝固固相率関数Fa(x)を利用して算出する(S46)。
固相率算出手段42は、算出された潜熱蓄熱材3の固相率η
j-i+mを固相率ファイル13に記憶する。
【0083】
固相率η
j-i+m-Δmが最大η
MAXではない場合(S44で「No」の場合)は、S47に進み、固相率η
j-i+m-Δmがゼロか否かを判定する。
【0084】
固相率η
j-i+m-Δmがゼロの場合(S47で「Yes」の場合)は、凝固固相率関数Fa(x)を凝固融解関数ファイル11から読み出して、Fa(x)に代入すべき時間TPをゼロとしたうえで(S48)、S46に進み潜熱蓄熱材3の固相率η
j-i+mを凝固固相率関数Fa(x)から算出する。すなわち、Fa(x)においてx=TP=0として、固相率η
j-i+mを算出する。
固相率算出手段42は、算出された潜熱蓄熱材3の固相率η
j-i+mを固相率ファイル13に記憶する。
【0085】
固相率η
j-i+m-Δmがゼロではない場合(S47で「No」の場合)は、凝固固相率関数Fa(x)を凝固融解関数ファイル11から読み出して、固相率η
j-i+m-Δmに対応する時間x
0を凝固固相率関数Fa(x)から決定し(S49)、時間TPをx
0として潜熱蓄熱材3の固相率η
j-i+mを算出する(S46)。
固相率算出手段42は、算出された潜熱蓄熱材3の固相率η
j-i+mを固相率ファイル13に記憶する。
【0086】
潜熱蓄熱材3の固相率η
j-i+mを算出したら、m=m+Δmとした上で再度S22を繰り返す。S22は、mがiとなるまでくり返す。Δmは適宜設定すればよいが、例えば、Δm=1とすると、基準時刻j−iから現在時刻jに遡るまで1時間ピッチでS22を行うことになる。
【0087】
(3)潜熱蓄熱槽の蓄熱量の算出
固相率算出手段42が潜熱蓄熱材3の固相率を算出したら、蓄熱量算出手段43が起動して、潜熱蓄熱槽1の蓄熱量を算出する。
【0088】
(3−1)水の蓄熱量の算出
蓄熱量算出手段43による水2の蓄熱量の算出は、温度ファイル12から水2の温度の履歴を読み出すとともに、水条件ファイル15から水の容積V
w、水の比重量γ
w、水の比熱H
w等を読み出して、式1により算出する。
蓄熱量算出手段43は、算出された水2の蓄熱量を蓄熱量ファイル14に記憶させる。
【0089】
Q
wj = V
w×γ
w×H
w ×(t
max-t
j) ・・・式1
ここで、Q
wj :現在時刻jにおける水蓄熱量(MJ)
V
w:水の容積(m
3)
γ
w:水の比重量(kg/ m
3)
H
w:水の比熱(kJ/kg・K)
t
max:蓄熱最高温度(℃)
t
j:現在時刻jにおける温度(℃)
【0090】
(3−2)潜熱蓄熱材の顕熱蓄熱量の算出
蓄熱量算出手段43による潜熱蓄熱材3の顕熱蓄熱量の算出は、温度記憶手段12から潜熱蓄熱材3の温度の履歴を読み出すとともに、蓄熱材条件ファイル16から潜熱蓄熱材の融解時容積V
u、融解時比重量γ
u、比熱H
u1,H
u2等を読み出し、式2または式3により算出する。
つまり、現在時刻jにおける潜熱蓄熱材3の温度が相変化温度t
sを上回っている場合は式2を利用し、現在時刻jにおける潜熱蓄熱材3の温度が相変化温度t
sを下回っている場合は式3を利用する。
蓄熱量算出手段43は、算出された顕熱蓄熱量を蓄熱量ファイル14に記憶させる。
【0091】
Q
usj = V
u×γ
u×H
u1×(t
max- t
j) ・・・式2
Q
usj = V
u×γ
u×H
u1×(t
max-t
s)+V
u×γ
u×H
u2×(t
s-t
j) ・・・式3
ここで、Q
usj:現在時刻jにおける潜熱蓄熱材の顕熱蓄熱量(MJ)
V
u:潜熱蓄熱材の融解時容積(m
3)
γ
u:潜熱蓄熱材の融解時比重量(kg/ m
3)
H
u1:潜熱蓄熱材の比熱(融解時)(kJ/kg・K)
H
u2:潜熱蓄熱材の比熱(凝固時)(kJ/kg・K)
t
max:蓄熱最高温度(℃)
t
j:現在時刻jにおける温度(℃)
t
s:相変化温度(℃)
【0092】
(3−3)潜熱蓄熱材の潜熱蓄熱量の算出
蓄熱量算出手段43による潜熱蓄熱材の潜熱蓄熱量の算出は、固相率ファイル13から潜熱蓄熱材3の固相率η
jを読み出すとともに、蓄熱材条件ファイル16から潜熱蓄熱材3の融解時容積V
u、融解時比重量γ
u、凝固熱S
u等を読み出し、式4により算出する。
蓄熱量算出手段43は、算出された潜熱蓄熱量を蓄熱量ファイル14に記憶させる。
【0093】
Q
ulj = V
u×γ
u×S
u×η
j/100 ・・・式4
ここで、Q
ulj:現在時刻jにおける潜熱蓄熱材の潜熱蓄熱量(MJ)
V
u:潜熱蓄熱材の融解時容積(m
3)
γ
u:潜熱蓄熱材の融解時比重量(kg/ m
3)
S
u:潜熱蓄熱材の凝固熱(kJ/kg)
η
j:現在時刻jにおける潜熱蓄熱材の固相率(%)
【0094】
(3−4)潜熱蓄熱槽の蓄熱量の算出
蓄熱量算出手段43による潜熱蓄熱槽の蓄熱量の算出は、蓄熱量ファイル14から水の蓄熱量Q
wj、顕熱蓄熱量Q
usjおよび潜熱蓄熱量Q
uljを読み出し、これらを足し合わせることにより算出する。
蓄熱量算出手段43は、算出された潜熱蓄熱槽の蓄熱量を蓄熱量ファイル14に記憶させる。
【0095】
演算処理部40は、潜熱蓄熱槽1の蓄熱量を算出したら、出力手段20を介して算出結果を出力する。
【0096】
以上、本実施形態の蓄熱量算出装置および蓄熱量算出方法によれば、相変化中、温度がほぼ一定の潜熱蓄熱材の蓄熱量を、安価な温度計を利用して、潜熱蓄熱槽の蓄熱量を高精度に把握することができる。そのため、潜熱蓄熱槽の蓄熱量を簡易かつ高精度に算出することができる。つまり、潜熱蓄熱材が有する相変化中の固相率と時間との関係を用いることで、温度と時間を把握することで潜熱蓄熱材の固相率を把握することができ、ゆえに高精度に潜熱蓄熱槽の蓄熱量を把握することが可能となる。
【0097】
また、誤差の積み重ねが少ないため、高精度である。したがって、蓄熱量把握の信頼性が向上し、運転管理の自由度が向上する。
さらに、蓄熱量は、モニター等の出力手段により随時確認することができるため、装置の管理が容易である。
【0098】
以下に、本実施形態の蓄熱量算出方法による計算例を示す。
本計算例の条件を表1に示す。また、潜熱蓄熱材の凝固固相率関数Fa(x)および融解固相率関数Fb(x)は、それぞれ
図9の(a)および(b)に示す通りである。なお、
図9の(a)、(b)では、凝固固相率関数Fa(x)、融解固相率関数Fb(x)とも一次関数としているが、
図3の(a)、(b)のような関数を用いてもよい。
【0100】
温度履歴は、表2および
図10に示す通りとする。
【0102】
表2および
図10に示すように、時刻j−5以前(j−5〜j−24)の温度は、相変化温度6.5℃以上となっている。
一方、融解完了時間T
Lは
図9の(b)に示すように、9時間である。時刻j−5から9時間以前(時刻j−14)までの温度は、
図10に示すように、継続して相変化温度t
s以上となっているため、時刻j−5の時点で潜熱蓄熱材の固相率はゼロとなっていることがわかる。
【0103】
1時間ごとに固相率を確認するものとして(すなわち、Δn=1、Δm=1)、
図5のフローにあてはめると、現在時刻jから遡る時間i=0〜4のときはS13に進み、かつ、時間i=0のときはn=5のときにS13において「No」となり、時間i=0〜4のときは時間j−iから遡る時間n=5〜1のときにS13において「No」となるが、時間i=5〜15のときはS14に進み、かつ、S14において「Yes」となるので、S141において固相率η
i−5〜η
i−15がそれぞれ「0」と設定され、融解固相率関数Fb(x)ni代入すべき時間TPが「9」と設定される。
【0104】
i=5〜15では、S15に進むが、S15では「No」となり、S21に進む。S21に進むと、m=Δm=1と設定され、S22に進む。
i=5のとき、温度t
j−i+m−Δm(=t
j−5)は相変化温度t
sよりも大きいので、S22では「No」となり、S40(
図7)に進む。
【0105】
時刻j−i+mにおける温度t
j−i+m(=t
j−4)は相変化温度t
sより小さいので、S40においては「No」となり、
図7に示すように、S402、S44に進む。
i=5、m=Δm=1のとき、固相率η
j−i+m−Δm(=η
j−5)は「0」であるので、S44においては「No」となってS47に進むが、S47では「Yes」となり、S48に進み、TP=0と設定された上でS46に進みR=Fa(x)にx=TP=0が代入され、その結果、固相率η
j−i+m(=η
j−4)はゼロとなる。
【0106】
次に、i=5、m=2として、S22以降の処理を実行する。
i=5,m=2のとき、S22では、時刻j−i+m−Δmにおける温度はt
j−i+m−Δm(=t
j−4)<t
sとなるので「Yes」となりS30(
図6)に進む。
【0107】
時刻j−i+mにおける温度t
j−i+m(=t
j−3)は、相変化温度t
sよりも小さいので、S30では「Yes」となり、
図6に示すように、S301に進む。
S402で経過時間TC=0と設定されているので、S301では、新たな経過時間(t
sを横切った時点からの経過時間)TCとしてΔm=1が設定され、S31に進む。この場合、経過時間TCは凝固開始時間T
MS(1時間)と等しいので、S31では「Yes」となって、S32に進み、η
j−i+m(=η
j−3)の固相率として、η
j−i+m−Δm(=η
j−4)と同じ固相率(=0)が設定される。
【0108】
i=5、m=3のときはS30→S301→S31と進むが、S31では「No」となり、S311に進む。
m=2のときにS32で凝固固相率関数Fa(x)に代入すべき時間TP=Δm=1と設定されているので、S311では新たな凝固固相率関数Fa(x)に代入すべきTPとして「2」が設定され、S33に進む。S33では、R=Fa(x)にTP=2が代入される。
【0109】
図9の(a)に示すように、x=TP=2として、R=Fa(x)にあてはめると、x=2のときのRは10%であるので、η
j−i+m(=η
j−2)の固相率は10%となる。
m=4,5のときは、m=3と同様に、S30→S301→S31→S311→S33に進むので、固相率はそれぞれ20%、30%となる。
【0110】
すなわち、現在時刻jにおける固相率は30%となる。
計算の結果を表3に示す。
【0112】
以下、潜熱蓄熱材の固相率を利用して、潜熱蓄熱槽全体の蓄熱量を算出する。
(1)水の蓄熱量
Q
w= V
w×γ
w×H
w×(t
max−t
j)
= 10×1000×4.186×(14−5.4)
=360 MJ
【0113】
(2)潜熱蓄熱材の顕熱蓄熱量
Q
us= V
u×γ
u×H
u1×(t
max−t
s)+V
u×γ
u×H
u2×(t
s−t
j)
=6×820×2.3×(14−6.5)+6×820×1.9×(6.5−5.4)
=95 MJ
なお、本実施形態では、現在時刻jにおける温度t
jが相変位温度t
sを下回っているので式3により算出する。
【0114】
(3)潜熱蓄熱材の潜熱蓄熱量
Q
ul= V
u×γ
u×S
u×η
j/100
=6×820×100×30/100
=148 MJ
【0115】
(4)潜熱蓄熱槽全体の蓄熱量
Q
t=Q
w+Q
us+Q
ul
=360+95+148
=603 MJ
【0116】
以上、本発明に係る実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【0117】
例えば、潜熱蓄熱材3の凝固が最大になる前に、潜熱蓄熱材3の温度が相変化温度t
sを上回った場合には、
図8の(a)に示すように、融解開始時間T
LS後に、潜熱蓄熱材3の融解が進行するものとして、潜熱蓄熱材3の固相率を算出すればよい。
同様に、潜熱蓄熱材3の融解がゼロになる前に、潜熱蓄熱材3の温度が相変化温度t
sを下回った場合には、
図8の(b)に示すように、凝固開始時間T
MS後に、潜熱蓄熱材3の凝固が進行するものとして、潜熱蓄熱材3の固相率を算出すればよい。