(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ホモポリマーとしたときのガラス転移温度が80℃以上のモノマーが、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、アクリルアミド、スチレンから選ばれる少なくとも1種である、請求項3に記載の粘着テープ。
前記(メタ)アクリル系ポリマーの原料モノマー中の、前記ホモポリマーとしたときのガラス転移温度が80℃以上のモノマーの含有割合が、1重量%〜30重量%である、請求項3または4に記載の粘着テープ。
前記(メタ)アクリル系ポリマーの原料モノマーが、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項3から5までのいずれかに記載の粘着テープ。
前記プラスチックフィルムのJIS−K−7127(1999年)に従って測定される最大伸びが100%以上である、請求項1から8までのいずれかに記載の粘着テープ。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の粘着テープは、プラスチックフィルムの片方の面に粘着剤層を備える。本発明の粘着テープは、プラスチックフィルムの片方の面に粘着剤層を備えていれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の層を含有し得る。本発明の粘着テープは、コーティングや共押出しなどの積層構造を構築するための手段を用いるなど、任意の適切な方法によって製造し得る。
【0035】
本発明の粘着テープは、温度23℃、湿度50%の環境下においてSUS430BA板に貼り合わせて30分間静置したときの粘着力をP1とし、温度50℃、湿度50%の環境下においてSUS430BA板に貼り合わせて10分間静置した後に、温度23℃、湿度50%の環境下において30分間静置したときの粘着力をP2としたときに、P2/P1が、1.2以上であり、好ましくは1.3以上であり、より好ましくは1.5以上であり、特に好ましくは2.0以上である。P2/P1の上限値は、好ましくは2.5以下である。P2/P1が上記範囲内に収まることにより、本発明の粘着テープは、必要なときに比較的簡単な加熱処理を行うことによって、その粘着力が上昇し、被着体への密着性が高まる。なお、上記粘着力P1およびP2の測定方法については後述する。
【0036】
本発明の粘着テープは、温度23℃、湿度50%の環境下においてSUS430BA板に貼り合わせて30分間静置したときの粘着力をP1とし、温度23℃、湿度50%の環境下においてSUS430BA板に貼り合わせて30分間静置した後に、温度23℃、湿度50%の環境下においてさらに72時間静置したときの粘着力をP3としたときに、P3/P1が、好ましくは2.0以下であり、より好ましくは1.5以下であり、特に好ましくは1.3以下である。P3/P1の下限値は、好ましくは1.0である。P3/P1が上記範囲内に収まることにより、本発明の粘着テープは、温度23℃、湿度50%の環境下において、粘着力経時変化が効果的に抑制され得る。なお、上記粘着力P3の測定方法については後述する。
【0037】
本発明の粘着テープは、上記のように、P2/P1が上記範囲内に収まり、また、好ましくはP3/P1が上記範囲内に収まることにより、半導体などの被着体へ該粘着テープを貼り合わせた後の粘着力経時変化が効果的に抑制され得るとともに、必要なときに比較的簡単な加熱処理を行うことによって、その粘着力が上昇し、被着体への密着性が高まるので、半導体製造工程での粘着テープ間での半導体の受け渡し作業において、ロボットアームなどの高価で複雑な機械設備を用いることなく、1種の粘着テープを用いて該受け渡し作業をスムーズに行うことができる。
【0038】
<1.プラスチックフィルム>
プラスチックフィルムとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な樹脂材料を含み得る。このような樹脂材料としては、好ましくは、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドなどが挙げられ、より好ましくは、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィンが挙げられ、さらに好ましくは、ポリ塩化ビニルが挙げられる。ポリ塩化ビニルとしては、例えば、軟質ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。特に、プラスチックフィルムの樹脂材料としてポリ塩化ビニルを採用すると、ポリ塩化ビニルは応力緩和性に優れるため、例えば、LEDダイシングなどの半導体加工に用いる粘着テープに好適に用いることができる。一方、プラスチックフィルムの樹脂材料としてポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンを採用すると、例えば、ダイシングの際にレーザーを用いた場合に該レーザーによる加工熱などによって該プラスチックフィルムが膨張・収縮してしまい、粘着テープが半導体ウェハから剥がれてしまい、プラスチックフィルムの樹脂材料としてポリ塩化ビニルを採用する場合に比べて、正確なダイシングができないおそれがある。
【0039】
プラスチックフィルム中の上記樹脂材料の含有割合としては、目的・用途に応じて、任意の適切な含有割合を設定し得る。このような含有割合としては、例えば、好ましくは50重量%〜100重量%であり、より好ましくは60重量%〜100重量%であり、さらに好ましくは70重量%〜100重量%である。
【0040】
プラスチックフィルム中には、可塑剤が含まれていても良い。プラスチックフィルム中の可塑剤の含有割合は、該プラスチックフィルム中の上記樹脂材料に対して、好ましくは0.5重量%〜50重量%であり、より好ましくは1.0重量%〜40重量%である。プラスチックフィルム中に上記含有割合にて可塑剤を含ませることによって、延伸等の変形に対する追随性が一層良好なものとなる。
【0041】
上記可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル系、トリメリット酸エステル系(大日本インキ(株)製、W−700、トリメリット酸トリオクチル等)、アジピン酸エステル系((株)ジェイプラス製、D620、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等)、リン酸エステル系(リン酸トリクレシル等)、アジピン酸系エステル、クエン酸エステル(アセチルクエン酸トリブチル等)、セバシン酸エステル、アセライン酸エステル、マレイン酸エステル、安息香酸エステル、ポリエーテル系ポリエステル、エポキシ系ポリエステル(エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等)、ポリエステル(カルボン酸とグリコールからなる低分子ポリエステル等)などが挙げられる。本発明においては、エステル系可塑剤を用いることが好ましい。可塑剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0042】
プラスチックフィルムの樹脂材料としてポリ塩化ビニルを採用すると、特に、該プラスチックフィルム中に可塑剤が含まれていても、該プラスチックフィルム表面への該可塑剤のブリードが抑制され得る。
【0043】
プラスチックフィルム中には、本発明の効果を損なわない範囲において、任意の適切なその他の成分を含んでいても良い。
【0044】
プラスチックフィルムは、JIS−K−7127(1999年)に従って測定される最大伸び(MD)が、好ましくは100%以上であり、より好ましくは200〜1000%である。このような最大伸びを示すプラスチックフィルムを使用することにより、本発明の粘着テープに適度な伸び性を付与することができ、例えば、被着体への追従性を向上できる。また、プラスチックフィルムは、JIS−K−7127(1999年)に従って測定される弾性率(MD)が、好ましくは100MPa〜1GPaである。プラスチックフィルムの弾性率(MD)が100MPa未満である場合、該プラスチックフィルムが軟らかくなり過ぎてハンドリング性が悪くなるおそれがある。プラスチックフィルムの弾性率(MD)が1GPaを超える場合、エキスパンド性が悪くなるおそれがある。
【0045】
プラスチックフィルムの厚みは、好ましくは20μm〜200μmであり、より好ましくは40μm〜150μmであり、さらに好ましくは50μm〜100μmである。プラスチックフィルムの厚みが20μm未満の場合、取扱性が悪くなるおそれがあり、特に、粘着テープを構成したときに貼り合わせ作業が難しくなるおそれがある。プラスチックフィルムの厚みが200μmより大きいと、延伸等の変形に対する追随性が悪くなるおそれがある。
【0046】
<2.粘着剤層>
粘着剤層の厚みは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な厚みを採用し得る。このような厚みとしては、好ましくは1μm〜50μmであり、より好ましくは1μm〜30μmであり、さらに好ましくは1μm〜20μmであり、特に好ましくは3μm〜15μmである。粘着剤層の厚みが1μm未満の場合、十分な粘着力を発現できないおそれがある。粘着剤層の厚みが50μmより大きい場合、コスト高になることに加えて、用途によっては粘着力が大きくなりすぎて、剥離等の際に被着体を破砕するおそれがある。
【0047】
粘着剤層の材料としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な粘着剤を採用し得る。粘着剤層は、このような粘着剤を用いて、任意の適切な方法によって製造し得る。
【0048】
粘着剤層の材料としては、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー;天然ゴム;メタクリル酸メチルなどのモノマーをグラフトした特殊天然ゴム;SBS、SBR、SEPS、SIS、SEBS、ポリブテン、ポリイソブテン、ポリイソブチレン、ブチルゴムなどの合成ゴム;などが挙げられる。これらの中でも、半導体などの被着体へ本発明の粘着テープを貼り合わせた後の粘着力経時変化が効果的に抑制され得るとともに、必要なときに比較的簡単な加熱処理を行うことによって、その粘着力が上昇し、本発明の粘着テープの被着体への密着性が高まり、また、剥離後の被着体への糊残りが少なく、高凝集性を有し、透明性に優れる点で、(メタ)アクリル系ポリマーが好ましい。なお、本明細書中において、「(メタ)アクリル」とある場合は、アクリルおよび/またはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とある場合は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
【0049】
(メタ)アクリル系ポリマーは、任意の適切な重合方法によって製造し得る。(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは300000以上であり、より好ましくは500000以上であり、さらに好ましくは550000以上であり、特に好ましくは600000以上であり、最も好ましくは650000以上である。(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量の上限値は、好ましくは、1000000以下である。(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量が上記範囲内に収まることにより、例えば、粘着剤層に可塑剤を加えても、(メタ)アクリル系ポリマーの凝集力が低下せず、糊残りが発生しにくくなる。
【0050】
粘着剤層が(メタ)アクリル系ポリマーを含む場合、その含有割合は、好ましくは30重量%〜100重量%であり、より好ましくは50重量%〜100重量%であり、さらに好ましくは70重量%〜100重量%であり、特に好ましくは90重量%〜100重量%である。粘着剤層中の(メタ)アクリル系ポリマーの含有割合が上記範囲内に収まることにより、半導体などの被着体へ本発明の粘着テープを貼り合わせた後の粘着力経時変化がより効果的に抑制され得るとともに、必要なときに比較的簡単な加熱処理を行うことによって、その粘着力がより上昇し、本発明の粘着テープの被着体への密着性がより高まり、また、剥離後の被着体への糊残りがより少なく、より高い凝集性を有し、透明性により優れる。
【0051】
(メタ)アクリル系ポリマーの原料モノマーは、(メタ)アクリル系モノマーを主モノマーとして含む。(メタ)アクリル系ポリマーの原料モノマー中の(メタ)アクリル系モノマーの含有割合は、好ましくは50重量%〜100重量%であり、より好ましくは70重量%〜100重量%であり、さらに好ましくは90重量〜100重量%であり、特に好ましくは95重量%〜100重量%である。原料モノマーは、1種のみのモノマーであっても良いし、2種以上のモノマーであっても良い。
【0052】
(メタ)アクリル系ポリマーの原料モノマーは、好ましくは、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度が80℃以上のモノマーを含む。(メタ)アクリル系ポリマーの原料モノマーが、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度が80℃以上のモノマーを含むことにより、(メタ)アクリル系ポリマーの凝集力が高まり、半導体などの被着体へ本発明の粘着テープを貼り合わせた後の粘着力経時変化がより効果的に抑制され得るとともに、必要なときに比較的簡単な加熱処理を行うことによって、その粘着力がより上昇し、本発明の粘着テープの被着体への密着性がより高まり、また、剥離後の被着体への糊残りがより少なく、より高い凝集性を有し、透明性により優れる。(メタ)アクリル系ポリマーの原料モノマーが含み得る、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度が80℃以上のモノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0053】
ホモポリマーとしたときのガラス転移温度が80℃以上のモノマーとしては、好ましくは、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、アクリルアミド、スチレンから選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは、アクリロニトリル、メタクリル酸メチルから選ばれる少なくとも1種である。ホモポリマーとしたときのガラス転移温度が80℃以上のモノマーとして、これらのモノマーを採用すれば、(メタ)アクリル系ポリマーの凝集力が高まり、半導体などの被着体へ本発明の粘着テープを貼り合わせた後の粘着力経時変化がより効果的に抑制され得るとともに、必要なときに比較的簡単な加熱処理を行うことによって、その粘着力がより上昇し、本発明の粘着テープの被着体への密着性がより高まり、また、剥離後の被着体への糊残りがより少なく、より高い凝集性を有し、透明性により優れる。
【0054】
(メタ)アクリル系ポリマーの原料モノマー中の、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度が80℃以上のモノマーの含有割合は、好ましくは1重量%〜30重量%であり、より好ましくは2重量%〜28重量%であり、さらに好ましくは3重量%〜25重量%であり、特に好ましくは3重量%〜23重量%であり、最も好ましくは3重量%〜20重量%である。(メタ)アクリル系ポリマーの原料モノマー中の、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度が80℃以上のモノマーの含有割合が、上記範囲内に収まれば、(メタ)アクリル系ポリマーの凝集力が高まり、半導体などの被着体へ本発明の粘着テープを貼り合わせた後の粘着力経時変化がより効果的に抑制され得るとともに、必要なときに比較的簡単な加熱処理を行うことによって、その粘着力がより上昇し、本発明の粘着テープの被着体への密着性がより高まり、また、剥離後の被着体への糊残りがより少なく、より高い凝集性を有し、透明性により優れる。(メタ)アクリル系ポリマーの原料モノマー中の、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度が80℃以上のモノマーの含有割合が、1重量%未満の場合、(メタ)アクリル系ポリマーの凝集力が高められないおそれがあり、半導体などの被着体へ本発明の粘着テープを貼り合わせた後の粘着力が経時で上昇してしまうおそれがある。(メタ)アクリル系ポリマーの原料モノマー中の、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度が80℃以上のモノマーの含有割合が、30重量%を超える場合、(メタ)アクリル系ポリマーが硬くなってしまうおそれがあり、十分な初期粘着力が発現できないおそれがあるとともに、必要なときに粘着力を上昇させるために厳しい条件で加熱処理を行う必要が生じるおそれがあり、被着体へのダメージが大きくなるおそれがある。
【0055】
(メタ)アクリル系ポリマーの原料モノマーは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他のモノマーを含み得る。このような他のモノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。このような他のモノマーとしては、好ましくは、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーから選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは、カルボキシル基含有モノマーである。(メタ)アクリル系ポリマーの原料モノマーが水酸基含有モノマーやカルボキシル基含有モノマーを含むことにより、被着体との水素結合等の二次的な結合が形成されるために、(メタ)アクリル系ポリマーの凝集力が高まり、半導体などの被着体へ本発明の粘着テープを貼り合わせた後の粘着力経時変化がより効果的に抑制され得るとともに、必要なときに比較的簡単な加熱処理を行うことによって、その粘着力がより上昇し、本発明の粘着テープの被着体への密着性がより高まり、また、剥離後の被着体への糊残りがより少なく、より高い凝集性を有し、透明性により優れる。
【0056】
(メタ)アクリル系ポリマーの原料モノマーが水酸基含有モノマーやカルボキシル基含有モノマーを含むことにより、架橋剤を用いた場合に、該架橋剤との架橋反応を効率的に生じさせることが可能となり、粘着剤としての効果を十分に発現させることができ、また、剥離操作の際の被着体の破砕を効果的に防止し得る。
【0057】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−トなどが挙げられる。水酸基含有モノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0058】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。カルボキシル基含有モノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0059】
(メタ)アクリル系ポリマーの原料モノマーが水酸基含有モノマーを含む場合、該原料モノマー中の水酸基含有モノマーの含有割合は、好ましくは0.1重量%〜20重量%であり、より好ましくは0.5重量%〜10重量%である。原料モノマー中の水酸基含有モノマーの含有割合が上記範囲内に収まれば、被着体との水素結合等の二次的な結合が形成されるために、(メタ)アクリル系ポリマーの凝集力が高まり、半導体などの被着体へ本発明の粘着テープを貼り合わせた後の粘着力経時変化がより効果的に抑制され得るとともに、必要なときに比較的簡単な加熱処理を行うことによって、その粘着力がより上昇し、本発明の粘着テープの被着体への密着性がより高まり、また、剥離後の被着体への糊残りがより少なく、より高い凝集性を有し、透明性により優れる。原料モノマー中の水酸基含有モノマーの含有割合が多すぎる場合には、本発明の粘着テープの粘着力が大きくなりすぎてしまい、ブロッキングが生じやすくなるおそれがあり、また、剥離操作の際に被着体の破砕が発生しやすくなるおそれがある。
【0060】
(メタ)アクリル系ポリマーの原料モノマーがカルボキシル基含有モノマーを含む場合、該原料モノマー中のカルボキシル基含有モノマーの含有割合は、好ましくは0.01重量%〜20重量%であり、より好ましくは0.1重量%〜10重量%である。原料モノマー中のカルボキシル基含有モノマーの含有割合が上記範囲内に収まれば、被着体との水素結合等の二次的な結合が形成されるために、(メタ)アクリル系ポリマーの凝集力が高まり、半導体などの被着体へ本発明の粘着テープを貼り合わせた後の粘着力経時変化がより効果的に抑制され得るとともに、必要なときに比較的簡単な加熱処理を行うことによって、その粘着力がより上昇し、本発明の粘着テープの被着体への密着性がより高まり、また、剥離後の被着体への糊残りがより少なく、より高い凝集性を有し、透明性により優れる。原料モノマー中のカルボキシル基含有モノマーの含有割合が多すぎる場合には、本発明の粘着テープの粘着力が大きくなりすぎてしまい、ブロッキングが生じやすくなるおそれがあり、また、剥離操作の際に被着体の破砕が発生しやすくなるおそれがある。
【0061】
(メタ)アクリル系ポリマーの原料モノマーは、好ましくは、水酸基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマー以外の(メタ)アクリル酸エステルを主成分として含む。(メタ)アクリル系ポリマーの原料モノマー中のこのような(メタ)アクリル酸エステルの含有割合は、好ましくは50重量%〜99重量%であり、より好ましくは60重量%〜97重量%であり、さらに好ましくは70重量%〜95重量%であり、特に好ましくは80重量%〜93重量%である。
【0062】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭素数が1〜30のアルキル基(シクロアルキル基も含む)の(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0063】
炭素数が1〜30のアルキル基(シクロアルキル基も含む)の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の、炭素数が1〜30のアルキル基(シクロアルキル基も含む)の(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルの中でも、好ましくは、炭素数が2〜20のアルキル基(シクロアルキル基も含む)の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、より好ましくは炭素数が4〜18のアルキル基(シクロアルキル基も含む)の(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
【0064】
粘着剤層は、好ましくは、架橋剤を含む。粘着剤層が架橋剤を含む場合、粘着剤層中の架橋剤の含有割合は、目的に応じて適宜設定し得るが、好ましくは、主たる樹脂成分(好ましくは、(メタ)アクリル系ポリマー)100重量部に対して、0.1重量部〜20重量部である。粘着剤層中の架橋剤の含有割合を上記範囲内に収めることによって、適度な架橋反応を生じさせることができ、剥離操作の際の被着体の破砕を効果的に防止できる。
【0065】
架橋剤としては、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。これらの架橋剤の中でも、本発明の効果を十分に発現できる点で、メラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤が好ましい。また、架橋剤は必要に応じて適宜選択でき、1種のみであっても良いし、2種以上の混合系であっても良い。
【0066】
粘着剤層は、可塑剤を含んでいても良い。粘着剤層が可塑剤を含む場合、粘着剤層中の可塑剤の含有割合は、目的に応じて適宜設定し得るが、好ましくは、主たる樹脂成分(好ましくは、(メタ)アクリル系ポリマー)100重量部に対して、0.1重量部〜70重量部である。粘着剤層中の可塑剤の含有割合を上記範囲内に収めることによって、本発明の効果をより一層効果的に発現することが可能となる。粘着剤層中の可塑剤の含有割合が50重量%より大きいと、粘着剤層が柔軟になりすぎてしまい、糊残りや被着体汚染が発生しやすくなるおそれがある。
【0067】
上記可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル系、トリメリット酸エステル系(大日本インキ(株)製、W−700、トリメリット酸トリオクチル等)、アジピン酸エステル系((株)ジェイプラス製、D620、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等)、リン酸エステル系(リン酸トリクレシル等)、アジピン酸系エステル、クエン酸エステル(アセチルクエン酸トリブチル等)、セバシン酸エステル、アセライン酸エステル、マレイン酸エステル、安息香酸エステル、ポリエーテル系ポリエステル、エポキシ系ポリエステル(エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等)、ポリエステル(カルボン酸とグリコールからなる低分子ポリエステル等)などが挙げられる。本発明においては、エステル系可塑剤を用いることが好ましい。可塑剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0068】
粘着剤層は、架橋反応等を促進させるために、任意の適切な触媒を含んでいても良い。粘着剤層が触媒を含む場合、粘着剤層中の触媒の含有割合は、目的に応じて適宜設定し得るが、好ましくは、主たる樹脂成分(好ましくは、(メタ)アクリル系ポリマー)100重量部に対して、0.01重量部〜10重量部である。粘着剤層中の触媒の含有割合を上記範囲内に収めることによって、本発明の効果をより一層効果的に発現することが可能となる。
【0069】
このような触媒としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、オクチル酸スズ、オクチル酸鉛、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート等の有機金属化合物;ブチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、イソホロンジアミン、イミダゾール、水酸化リチウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート等の塩基性化合物;p−トルエンスルホン酸、トリクロル酢酸、燐酸、モノアルキル燐酸、ジアルキル燐酸、β−ヒドロキシエチルアクリレートの燐酸エステル、モノアルキル亜燐酸、ジアルキル亜燐酸等の酸性化合物;などが挙げられる。触媒は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0070】
粘着剤層には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加剤が含まれていても良い。このような添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、充填剤、老化防止剤、粘着付与剤、顔料、染料、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0071】
<3.非粘着層>
本発明の粘着テープは、プラスチックフィルムの粘着剤層と反対の面に非粘着層を備えていても良い。
【0072】
非粘着層は、シリコーンと(メタ)アクリル系ポリマーの混合層である。非粘着層をシリコーンと(メタ)アクリル系ポリマーの混合層とすることにより、非粘着層とプラスチックフィルムとの馴染みが良くなり、本発明の粘着テープは、延伸等の変形に対する追随性が良好なものとなる。
【0073】
非粘着層中の(メタ)アクリル系ポリマーは、その計算Tgが10℃以上であり、好ましくは20℃以上であり、より好ましくは30℃以上であり、さらに好ましくは45℃以上である。非粘着層中の(メタ)アクリル系ポリマーの計算Tgの上限は、特に限定されないが、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは150℃以下であり、さらに好ましくは100℃以下である。非粘着層中の(メタ)アクリル系ポリマーの計算Tgが上記範囲内に収まることにより、非粘着層の表面の微小な凹凸構造における耐熱性が高くなり、本発明の粘着テープを負圧により固定用台座に吸着固定を行ってダイシング等を行う場合に、台座の発熱等による過密着が起こることを効果的に抑制できる。
【0074】
本発明において共重合体(上記非粘着層中の(メタ)アクリル系ポリマーなど)の「計算Tg」とは、共重合体を構成する単量体由来の構造単位のTgについて、Foxの計算式により求められる計算ガラス転移温度である。
【0075】
Foxの式とは、以下に示すような、共重合体のガラス転移温度Tg(℃)と、共重合体を構成する単量体のそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tg
i(℃)との関係式である。なお、以下のFoxの式において、Tg(℃)は共重合体のガラス転移温度、W
iは単量体iの重量分率、Tg
i(℃)は単量体iのホモポリマーのガラス転移温度を示す。
1/(273+Tg)=Σ(W
i/(273+Tg
i))
【0076】
なお、ホモポリマーのガラス転移温度Tg
i(℃)としては、具体的には、「Polymer Handbook 3rd Edition」(A WILEY−INTERSCIENCE PUBLICATION、1989年)に記載された値を使用することができる。
【0077】
非粘着層は、その算術平均表面粗さRaが、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは0.1μm〜3.0μmであり、さらに好ましくは0.2μm〜2.0μmであり、特に好ましくは0.3μm〜2.0μmであり、最も好ましくは0.5μm〜2.0μmである。非粘着層の算術平均表面粗さRaが上記範囲内に収まることにより、負圧による吸着固定を行う場合に過密着が起こることを抑制できる。
【0078】
非粘着層中の(メタ)アクリル系ポリマーは、そのSP値が、好ましくは9.0(cal/cm
3)
0.5〜12.0(cal/cm
3)
0.5であり、より好ましくは9.5(cal/cm
3)
0.5〜11.5(cal/cm
3)
0.5であり、さらに好ましくは9.5(cal/cm
3)
0.5〜11.0(cal/cm
3)
0.5である。SP値は、Smallの式によって算出される溶解度パラメータである。SP値の計算は、公知の文献(例えば、Journal of Applied Chemistry,3,71,1953.など)に記載された方法で行うことができる。
【0079】
非粘着層は、好ましくは、相分離構造を有する。非粘着層が相分離構造を有することにより、該非粘着層の表面に微小な凹凸構造が効率的に形成され得る。これは、おそらくは、相分離構造生成時のシリコーン、(メタ)アクリル系ポリマーの物質移動性の差異によって凸凹が生成するものと推測される。この凹凸構造の形成によって、本発明の粘着テープにおいて、負圧による吸着固定を行う場合に過密着が起こることを抑制し得るとともに、ロール状の形態におけるブロッキングが効果的に抑制でき、ロール状の形態から巻き戻す際に裂けたり破れたりすることを抑制し得る。
【0080】
非粘着層は、好ましくは、シリコーンが(メタ)アクリル系ポリマーよりも多く含まれるシリコーンリッチ相と(メタ)アクリル系ポリマーがシリコーンよりも多く含まれる(メタ)アクリル系ポリマーリッチ相を含む。非粘着層は、より具体的には、好ましくは、上記シリコーンリッチ相と上記(メタ)アクリル系ポリマーリッチ相とが互いに独立した相分離構造で含み、より好ましくは、上記シリコーンリッチ相が空気界面側(プラスチックフィルムの反対側)に存在し、上記(メタ)アクリル系ポリマーリッチ相がプラスチックフィルム側に存在する。このような相分離構造を有することにより、空気界面側に存在するシリコーンリッチ相によってブロッキングが効果的に抑制され、プラスチックフィルム側に存在する(メタ)アクリル系ポリマーリッチ相によって非粘着層とプラスチックフィルムとの馴染みが良くなって変形追随性が良好になる。非粘着層中のシリコーンと(メタ)アクリル系ポリマーの混合比を下記のように調整することによって、このような相分離構造を形成し得る。
【0081】
非粘着層が、相分離構造を有することや、上記のような、シリコーンが(メタ)アクリル系ポリマーよりも多く含まれるシリコーンリッチ相と(メタ)アクリル系ポリマーがシリコーンよりも多く含まれる(メタ)アクリル系ポリマーリッチ相を含むことは、任意の適切な方法によって観察し得る。このような観察方法としては、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、電解放出型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)などの電子顕微鏡を用いて非粘着層断面を形態観察する方法が挙げられる。2層分離構造は、形態観察像の濃淡により判読することが可能である。また、全反射法による赤外吸収分光によって、非粘着層空気界面側から内部へとプローブ光深度を変えながら、組成中に含まれるケイ素や炭素などの含有量の変化を観測することによって観察する方法も挙げられる。この他、X線マイクロアナライザーやX線光電子分光によって観察する方法も挙げられる。また、適宜これらの方法を組み合わせて観察しても良い。
【0082】
非粘着層中のシリコーンと(メタ)アクリル系ポリマーの混合比は、重量比で、好ましくは、シリコーン:(メタ)アクリル系ポリマー=1:50〜50:1であり、より好ましくは、シリコーン:(メタ)アクリル系ポリマー=1:30〜30:1であり、さらに好ましくは、シリコーン:(メタ)アクリル系ポリマー=1:10〜10:1であり、特に好ましくは、シリコーン:(メタ)アクリル系ポリマー=1:5〜5:1であり、最も好ましくは、シリコーン:(メタ)アクリル系ポリマー=1:3〜5:1である。非粘着層中のシリコーンの含有割合が大きすぎると、プラスチックフィルム背面との化学的親和性が低くなり、プラスチックフィルム背面に馴染みにくいおそれがある。また、非粘着層中のシリコーンの含有割合が大きすぎると、粘着テープとした場合、延伸等の変形に対する追随性が悪くなり、非粘着層が破砕されて汚染の原因となるおそれがある。非粘着層中の(メタ)アクリル系ポリマーの含有割合が大きすぎると、非粘着層がアクリル系粘着剤として作用してしまうおそれがあり、ブロッキングが生じやすいおそれがある。
【0083】
シリコーンとしては、任意の適切なシリコーンを採用し得る。このようなシリコーンとしては、例えば、白金系化合物を触媒としてアルケニル基含有ポリジアルキルシロキサンとポリジアルキルハイドロジェンポリシロキサンを付加反応により硬化させて剥離性皮膜を形成して得られる付加型シリコーン、スズ系触媒を用いたメチロール基含有ポリジアルキルシロキサンとポリジアルキルハイドロジェンポリシロキサンを反応させて得られる縮合型シリコーンなどが挙げられる。付加型シリコーンの例としては、例えば、信越シリコーン製の「KS−776A」、「KS−839L」などが挙げられる。縮合型シリコーンの例としては、例えば、信越シリコーン製の「KS723A/B」などが挙げられる。なお、シリコーンを製造する際には、白金系触媒やスズ系触媒の他に、適宜、その他の架橋剤、架橋促進剤などを使用しても良い。またシリコーンの性状としては、トルエン等の有機溶剤に溶解したタイプ、これらをエマルジョン化したエマルジョンタイプ、シリコーンのみからなる無溶剤タイプなどに分類される。また、付加型シリコーンや縮合型シリコーンの他に、シリコーン/アクリルグラフトポリマー、シリコーン/アクリルブロックポリマーなどを使用することができる。シリコーン/アクリルグラフトポリマーとしては、例えば、サイマックGS−30、GS101、US−270、US−350、US−380(以上、東亞合成(株)製)などが挙げられる。シリコーン/アクリルブロックポリマーとしては、例えば、モディパーFS700、FS710、FS720、FS730、FS770(以上、日油(株)製)などが挙げられる。
【0084】
(メタ)アクリル系ポリマーとしては、計算Tgが10℃以上であれば、任意の適切な(メタ)アクリル系ポリマーを採用し得る。
【0085】
(メタ)アクリル系ポリマーの原料モノマーは、(メタ)アクリル系モノマーを主モノマーとして含む。(メタ)アクリル系ポリマーの原料モノマー中の(メタ)アクリル系モノマーの含有割合は、好ましくは50重量%〜100重量%であり、より好ましくは70重量%〜100重量%であり、さらに好ましくは90重量〜100重量%であり、特に好ましくは95重量%〜100重量%である。原料モノマーは、1種のみのモノマーであっても良いし、2種以上のモノマーであっても良い。
【0086】
(メタ)アクリル系モノマーとしては、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
【0087】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭素数が1〜30のアルキル基(シクロアルキル基も含む)の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0088】
炭素数が1〜30のアルキル基(シクロアルキル基も含む)の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の、炭素数が1〜30のアルキル基(シクロアルキル基も含む)の(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルの中でも、好ましくは、炭素数が2〜20のアルキル基(シクロアルキル基も含む)の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、より好ましくは炭素数が4〜18のアルキル基(シクロアルキル基も含む)の(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
【0089】
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−トなどが挙げられる。
【0090】
(メタ)アクリル系ポリマーの原料モノマーは、本発明の効果を十分に発現させるために、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーから選ばれる少なくとも1種を含んでいても良い。
【0091】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、アリルアルコールなどが挙げられる。水酸基含有モノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0092】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。カルボキシル基含有モノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0093】
非粘着層中の(メタ)アクリル系ポリマーの原料モノマーが水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを含む場合、該原料モノマー中の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの含有割合が、該水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル以外の原料モノマーの総量に対して、好ましくは2重量%〜30重量%であり、より好ましくは3重量%〜25重量%であり、特に好ましくは5重量%〜20重量%である。原料モノマー中の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの含有割合が上記範囲内に収まれば、非粘着層の表面に微小な凹凸構造が一層効率的に形成され、この凹凸構造の形成によって、本発明の粘着テープにおいて、負圧による吸着固定を行う場合に過密着が起こることを一層抑制し得るとともに、ロール状の形態におけるブロッキングが一層効果的に抑制でき、ロール状の形態から巻き戻す際に裂けたり破れたりすることを一層抑制し得る。
【0094】
非粘着層中の(メタ)アクリル系ポリマーは、好ましくは、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル以外の原料モノマー中に、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステルを含み得る。この場合、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの含有割合は、重量比で、(メタ)アクリル酸:(メタ)アクリル酸エステルが、好ましくは0:100〜20:80であり、より好ましくは0:100〜10:90であり、さらに好ましくは0:100〜5:95である。
【0095】
(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの含有割合が上記範囲内に収まれば、非粘着層の表面に微小な凹凸構造が一層効率的に形成され、この凹凸構造の形成によって、本発明の粘着テープにおいて、負圧による吸着固定を行う場合に過密着が起こることを一層抑制し得るとともに、ロール状の形態におけるブロッキングが一層効果的に抑制でき、ロール状の形態から巻き戻す際に裂けたり破れたりすることを一層抑制し得る。
【0096】
非粘着層中の(メタ)アクリル系ポリマーは、任意の適切な重合方法によって製造し得る。
【0097】
非粘着層には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加剤が含まれていても良い。このような添加剤としては、例えば、触媒、紫外線吸収剤、充填剤、老化防止剤、粘着付与剤、顔料、染料、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0098】
非粘着層は、その非粘着試験剥離力が、好ましくは1.0N/20mm未満であり、より好ましくは0.5N/20mm未満であり、さらに好ましくは0.2N/20mm未満である。非粘着層の非粘着試験剥離力が上記範囲内に収まることにより、負圧による吸着固定を行う場合に過密着が起こることを一層抑制できる。本発明において、非粘着層の非粘着試験剥離力は、後述の方法に基づき測定される。
【0099】
非粘着層の厚みは、好ましくは0.01μm〜10μmであり、より好ましくは0.1μm〜5μmであり、さらに好ましくは0.1μm〜2μmである。非粘着層の厚みが0.01μm未満の場合、ブロッキングが生じやすくなる。非粘着層の厚みが10μmより大きいと、延伸等の変形に対する追随性が悪くなるおそれがある。非粘着層の厚みが0.01μmより小さいと、本発明の効果が発現し難くなるおそれや、製造がし難くなるおそれがある。
【0100】
プラスチックフィルムの片方の面に非粘着層を形成する方法としては、例えば、プラスチックフィルムの片方の面に非粘着層の材料を塗布して乾燥することによって非粘着層を形成する方法が挙げられる。上記塗布の方法としては、例えば、バーコーター、グラビアコーター、スピンコーター、ロールコーター、ナイフコーター、アプリケーター等を用いる方法が挙げられる。
【0101】
<4.剥離ライナー>
本発明の粘着テープは、粘着剤層の表面に剥離ライナーを備えていても良い。
【0102】
剥離ライナーとしては、任意の適切なセパレータを採用し得る。このような剥離ライナーとしては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等の剥離層を有する基材;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等のフッ素系ポリマーからなる低接着性基材;オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等の無極性ポリマーからなる低接着性基材;などが挙げられる。
【0103】
<5.用途>
本発明の粘着テープは、任意の適切な用途に用い得る。本発明の粘着テープは、半導体などの被着体へ該粘着テープを貼り合わせた後の粘着力経時変化が効果的に抑制され得るとともに、必要なときに比較的簡単な加熱処理を行うことによって、その粘着力が上昇し、被着体への密着性が高まるので、半導体製造工程での粘着テープ間での半導体の受け渡し作業において、ロボットアームなどの高価で複雑な機械設備を用いることなく、1種の粘着テープを用いて該受け渡し作業をスムーズに行うことができる。また、本発明の粘着テープを用いると、該粘着テープ上でダイシングされた半導体チップに直接に別の本発明の粘着テープを貼り合わせて転写を行おうとした場合に、上記のように転写がスムーズに行われるので、サイズの大きな半導体ウェハのダイシングに用いた場合にも転写がスムーズに行われ、また、窒化ガリウム、ガリウムヒ素、炭化ケイ素などの非常に脆弱な材料で構成されている半導体ウェハのダイシングに用いた場合には、半導体チップが破損するという問題を回避できる。LEDに用いられるウェハは、窒化ガリウム、ガリウムヒ素、炭化ケイ素などの非常に脆弱な材料で構成されているため、本発明の粘着テープは、LEDに用いられるウェハのダイシング(LEDダイシング)などに非常に好適である。
また、上述のような非粘着層を設けると、負圧により固定用台座に吸着固定を行ってダイシング等を行う場合に、台座の発熱等による過密着が起こることを効果的に抑制でき、また、ロール状の形態におけるブロッキングが効果的に抑制され、ロール状の形態から巻き戻す際に裂けたり破れたりすることがなく、該非粘着層と該プラスチックフィルムとの馴染みが良く、延伸等の変形に対する追随性が良好である。したがって、脆弱な材料で構成されて微細精緻な回路パターンを有し得る半導体ウェハを被着体とする半導体加工に好適に用い得る。本発明の粘着テープを半導体加工に用いると、負圧により固定用台座に吸着固定を行ってダイシング等を行う場合に、台座の発熱等による過密着が起こることを効果的に抑制でき、したがって、ダイシングを含めた半導体製造工程をスムーズに進めることができる。また、本発明の粘着テープを半導体加工に用いると、従来ブロッキングに起因して生じているフィルム変形や応力ひずみの蓄積が生じないので、半導体ウェハの微細精緻な回路パターンに的確に追従して貼り合わせることが可能となり、また、半導体ウェハに貼り合わせた後の応力ひずみの自然解放が起こらないために、半導体ウェハが破砕することを効果的に防止できる。特に、LEDに用いられるウェハは、窒化ガリウム、ガリウムヒ素、炭化ケイ素などの非常に脆弱な材料で構成されているため、本発明の粘着テープは、LEDダイシングなどに非常に好適である。
【実施例】
【0104】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。部は重量部を意味し、%は重量%を意味する。また、溶液で供給されている試薬の量は、溶液を揮発させて残る固形分の量(固形分換算量)によって表される。
【0105】
<粘着力の測定>
(粘着力P1)
測定対象の粘着テープを20mm幅×100mmに切断し、トルエンに浸漬して超音波洗浄したSUS430BA板に、温度23℃、湿度50%の環境下において、線圧78.5N/cm、貼付速度0.3m/minで圧着した後、温度23℃、湿度50%の環境下において30分間静置し、粘着力を測定した。このときの粘着力をP1とした。
(粘着力P2)
測定対象の粘着テープを20mm幅×100mmに切断し、トルエンに浸漬して超音波洗浄したSUS430BA板に、温度23℃、湿度50%の環境下において、線圧78.5N/cm、貼付速度0.3m/minで圧着した後、温度50℃、湿度50%の環境下において10分間静置した後に、温度23℃、湿度50%の環境下において30分間静置し、粘着力を測定した。このときの粘着力をP2とした。
(粘着力P3)
測定対象の粘着テープを20mm幅×100mmに切断し、トルエンに浸漬して超音波洗浄したSUS430BA板に、温度23℃、湿度50%の環境下において、線圧78.5N/cm、貼付速度0.3m/minで圧着した後、温度23℃、湿度50%の環境下において30分間静置した後に、温度23℃、湿度50%の環境下においてさらに72時間静置し、粘着力を測定した。このときの粘着力をP3とした。
(粘着力の測定方法)
上記粘着力(P1、P2、P3)は、引張速度0.3m/min、剥離角度180°で、SHIMAZU製AUTOGRAPH(AG−IS)を使用して行った。
【0106】
<転写性試験>
4インチSiウェハを0.1mm厚となるようバックグラインドした。グラインド面の全面に、測定対象の粘着テープをハンドローラー1往復で貼付した後、温度23℃、湿度50%の環境下において30分間静置し、その後、グラインド面に貼りつけたものと同一の粘着テープを、同サンプルのミラー面全面にハンドローラー1往復で貼付し、温度23℃、湿度50%の環境下において30分間静置した。静置後、ミラー面側の粘着テープが温度50℃のホットプレートと接するようにして10分間静置して加温した。加温後のサンプルを、温度23℃、湿度50%の環境下において30分間静置した後、グラインド面側の粘着テープをSiウェハから剥離した。剥離操作により、ウェハの全体が破壊された場合を×、ウェハに亀裂が生じるかウェハが部分的に欠けた場合を△、ウェハを損傷することなく剥離できた場合を○として評価した。
【0107】
<重量平均分子量>
試料を乾燥させた後、THF溶液に調整して一晩静置し、この溶液を0.45μmメンブレンフィルターでろ過し、ろ液についてGPC測定を行った。
GPC測定条件を下記する。
使用機器:TOSOH製 HLC−8120GPC
使用カラム:TSKgel SuperHZM−H/HZ4000/HZ3000/HZ2000
カラムサイズ:6.0mmI.D.×150mm
溶離液:THF
流量:0.6ml/min
検出器:RI
カラム温度:40℃
注入量:40℃
サンプル濃度:1.0g/l
【0108】
<最大伸び>
最大伸びは、JIS−K−7127(1999年)に従って、インストロン型引張試験機(島津製作所製、オートグラフ)によって測定した。具体的には、幅20mm×長さ100mmのサンプルをチャック間距離50mmで設置した後、0.3m/分の引張速度で引っ張りを行い、破断した際の値を測定した。
【0109】
<弾性率>
弾性率は、JIS−K−7127(1999年)に従って測定した。
【0110】
<非粘着層の観察>
(SEMによる観察)
非粘着層断面が観察できるよう加工した後、透過型電子顕微鏡(SEM)で形態観察を行った。
(全反射法による赤外分光測定(ATR−IR)による観察)
赤外分光スペクトルメーター(Perkinermer製、Spectrum One)を用い、全反射測定法を選択し、プローブ光の分析深さを変えるため、2種類の全反射測定用プリズム(ZnSe45°、Ge45°)を用いて、非粘着層のATR−IR測定を行った。
【0111】
<算術平均表面粗さRa>
OLYMPUS製の共焦点レーザー顕微鏡「LEXT3000」を使用して、対物レンズ20倍で3Dモードにて測定した。3Dモードの観察範囲の決定は、レンズを上下動させた際にCF画像(共焦点画像)が真っ暗になる位置をそれぞれ観察範囲のTopとBottomに設定することで行った。
3Dモードでの画像取り込み方法は、Step方式で0.2μmピッチにて画像取り込みを行った。
算術平均表面粗さRaの計測は、解析モードの粗さ解析にて任意の場所のRaを計測した。なお値はn=5の平均値にて求めた。
【0112】
<高温状態における吸着試験>
20mm(タテ)×50mm(ヨコ)のスライドガラスに、粘着テープを背面(粘着剤層の反対側の面)が表になるように貼付した。次に、80℃環境下にて、上記テープ貼付スライドガラスと被着体となるスライドガラス(青板縁磨品、サイズ:65mm×165mm×1.35mmt)とを、上記テープ貼付スライドガラスの背面側と上記スライドガラスの非スズ面側を接触させて、15分間放置した後、2kgローラーにて一往復させてスライドガラスと上記テープ貼付スライドガラスの背面を貼り合わせ、80℃環境下にて30分間放置した。放置後、常温まで冷却した後、インストロン式引張試験機(島津製作所製、オートグラフ)で、引張速度0.3m/分において、0°剥離を行った。その時の剥離力(最大値)を測定し、下記の基準によって評価を行った。
○:剥離力5.0N未満。
△:剥離力5.0N以上15.0N未満。
×:剥離力15.0N以上。
【0113】
<非粘着試験剥離力>
JIS−Z−0237を参照し、23℃保存下において、被着体および非粘着層を含む粘着テープを1時間以上保持し、その後、非粘着面をSUS430BAに線圧8kg/m、圧着速度0.3m/分で圧着し、30分後の剥離力を、0.3m/分の引張速度、180°ピールで測定した。
◎:0.5N/20mm未満。
○:0.5N/20mm以上、1.0N/20mm未満。
×:1.0N/20mm以上。
【0114】
<ブロッキングテスト>
粘着テープの粘着剤層面を、同じ粘着テープの粘着剤層と反対側の最外面(背面層)に、線圧8Kg/m、圧着速度0.3m/分で圧着し、圧着後、50℃×48hrで保存した。保存後、引張速度0.3m/分にて、180°ピールの剥離試験によって剥離を行い(JIS−Z−0237準拠)、粘着剤層面と背面層のブロッキング(引き剥がし力)を測定した。
評価は引き剥がし力の測定とともに、引き剥がし時の背面層の脱落、粘着剤層の破壊(凝集破壊、投錨破壊により糊残り)などを確認し、総合評価とした。
評価は下記の基準に従った。
○:引き剥がし力3.0N/20mm未満、目視での脱落、粘着剤層の破壊なし。
×:引き剥がし力3.0N/20mm以上または目視での脱落、粘着剤層の破壊あり。
【0115】
<投錨性確認試験>
(投錨性確認試験A)
引張速度0.3m/分〜3m/分によって、粘着テープを200%まで延伸し、延伸時および延伸後の、粘着テープの粘着剤層と反対側の最外面(背面層)の脱落性を目視にて評価した。
(投錨性確認試験B)
投錨性確認試験Aと同様の延伸を行った後、日東電工(株)製「NO.31B」を背面処理層にして、2Kgローラー(25mm幅)にて、0.3m/分の圧着速度にて一往復させ、その後、23℃×50%RHにて1分間保管し、0.3m/分〜3m/分の剥離速度において90°剥離を行い、背面の脱落性を目視にて評価した。
(評価)
以上の評価を総合的に判断し、下記の基準に従って、投錨性を評価した。
◎:目視で確認できる背面の脱落が、投錨性確認試験Aおよび投錨性確認試験Bともに無かった。
○:目視で確認できる背面の脱落が、投錨性確認試験Aでは無く、投錨性確認試験Bではわずかに確認された(点状に確認)。
×:投錨性確認試験Aにおいて背面の脱落が確認されたか、または、投錨性確認試験Bにおいて背面の脱落が確認された。
【0116】
〔製造例1〕:プラスチックフィルム(1)の製造
重合度P=1050のポリ塩化ビニル100重量部に対してDOP可塑剤(フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、ジェイプラス製)27重量部を含んだ軟質ポリ塩化ビニルフィルムをカレンダー法によって製造した。この軟質ポリ塩化ビニルフィルムの厚みは70μmであり、JIS−K−7127に従って測定される弾性率(MD)が250MPa、JIS−K−7127に従って測定される最大伸び(MD)が400%であった。また、製造直後の表面粗さ(算術平均表面粗さRa)は0.1μmであった。
【0117】
〔製造例2〕:プラスチックフィルム(2)の製造
低密度ポリエチレン系樹脂からなる樹脂組成物を、混練溶融し、多層インフレーション法を用いて製造した。このポリエチレンフィルムの厚みは60μmであり、JIS−K−7127に従って測定される弾性率(MD)が200MPa、JIS−K−7127に従って測定される最大伸び(MD)が400%であった。また、製造直後の表面粗さ(算術平均表面粗さRa)は0.1μmであった。
【0118】
〔製造例3〕:プラスチックフィルム(3)の製造
低密度ポリエチレン系樹脂30重量部、r−ポリプロピレン樹脂40重量部、エチレン−プロピレンゴム30重量部からなる樹脂組成物を、混練溶融し、Tダイ法を用いて製造した。このポリオレフィンフィルムの厚みは40μmであり、JIS−K−7127に従って測定される弾性率(MD)が500MPa、JIS−K−7127に従って測定される最大伸び(MD)が400%であった。また、製造直後の表面粗さ(算術平均表面粗さRa)は0.2μmであった。
【0119】
〔実施例1〕
ブチルアクリレート(BA)/アクリロニトリル(AN)/アクリル酸(AA)=85/15/2.5(重量比)から構成されるアクリル共重合ポリマー(重量平均分子量=800000)100重量部、メラミン系架橋剤(ブタノール変性メラミンホルムアルデヒド樹脂、「スーパーベッカミンJ−820−60N」、日本ポリウレタン製)10重量部、DOP可塑剤(フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、ジェイプラス製)60重量部からなる粘着剤のトルエン溶液を調製した。
この粘着剤溶液を、製造例1で得られたプラスチックフィルム(1)の片方の表面に塗布した後、130℃×90秒で乾燥し、厚み10μmの粘着剤層を形成した。
このようにして、粘着テープ(1)を得た。
各種評価結果を表1に示した。
【0120】
〔実施例2〕
ブチルアクリレート(BA)/アクリロニトリル(AN)/アクリル酸(AA)=85/15/2.5(重量比)から構成されるアクリル共重合ポリマー100重量部の代わりに、ブチルアクリレート(BA)/アクリロニトリル(AN)/アクリル酸(AA)/ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)=92/5/2/0.3(重量比)から構成されるアクリル共重合ポリマー(重量平均分子量=900000)100重量部を用いた以外は、実施例1と同様に行い、粘着テープ(2)を得た。
各種評価結果を表1に示した。
【0121】
〔比較例1〕
ブチルアクリレート(BA)/アクリロニトリル(AN)/アクリル酸(AA)=85/15/2.5(重量比)から構成されるアクリル共重合ポリマー100重量部の代わりに、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)/エチルアクリレート(EA)/メチルメタクリレート(MMA)/ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)=30/70/5/4(重量比)から構成されるアクリル共重合ポリマー(重量平均分子量=480000)100重量部を用いた以外は、実施例1と同様に行い、粘着テープ(C1)を得た。
各種評価結果を表1に示した。
【0122】
〔比較例2〕
ブチルアクリレート(BA)/アクリロニトリル(AN)/アクリル酸(AA)=85/15/2.5(重量比)から構成されるアクリル共重合ポリマー100重量部の代わりに、天然ゴム(天産品製 天然ゴム、INT No.3 RSS−SMALLBALE)にメチルメタクリレート(MMA)75重量部をグラフト重合させた天然ゴム−g−MMAポリマー(重量平均分子量=420000)100重量部を用い、YSレジンPX1150(ヤスハラケミカル社製)70重量部、SONGNOX1010(堺化学工業社製)3重量部からなる粘着剤のトルエン溶液を調製した以外は、実施例1と同様に行い、粘着テープ(C2)を得た。
各種評価結果を表1に示した。
【0123】
〔比較例3〕
ブチルアクリレート(BA)/アクリロニトリル(AN)/アクリル酸(AA)=85/15/2.5(重量比)から構成されるアクリル共重合ポリマー100重量部の代わりに、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)/エチルアクリレート(EA)/メチルメタクリレート(MMA)/ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)=50/50/5/4(重量比)から構成されるアクリル共重合ポリマー(重量平均分子量=450000)100重量部を用い、製造例1で得られたプラスチックフィルム(1)の代わりに、製造例2で得られたプラスチックフィルム(2)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、粘着テープ(C3)を得た。
各種評価結果を表1に示した。
【0124】
〔比較例4〕
ブチルアクリレート(BA)/アクリロニトリル(AN)/アクリル酸(AA)=85/15/2.5(重量比)から構成されるアクリル共重合ポリマー100重量部の代わりに、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)/ビニルアセテート(VAc)/アクリル酸(AA)=100/80/5(重量比)から構成されるアクリル共重合ポリマー(重量平均分子量=450000)100重量部を用い、製造例1で得られたプラスチックフィルム(1)の代わりに、製造例2で得られたプラスチックフィルム(2)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、粘着テープ(C4)を得た。
各種評価結果を表1に示した。
【0125】
〔比較例5〕
ブチルアクリレート(BA)/アクリロニトリル(AN)/アクリル酸(AA)=85/15/2.5(重量比)から構成されるアクリル共重合ポリマー100重量部の代わりに、ブチルアクリレート(BA)/メチルメタクリレート(MMA)/ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)=64/33/3(重量比)から構成されるアクリル共重合ポリマー(重量平均分子量=500000)100重量部を用い、製造例1で得られたプラスチックフィルム(1)の代わりに、製造例3で得られたプラスチックフィルム(3)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、粘着テープ(C4)を得た。
各種評価結果を表1に示した。
【0126】
【表1】
【0127】
〔実施例3〕
シリコーン樹脂(KS−723A、信越化学工業製)60重量部、シリコーン樹脂(KS−723B、信越化学工業製)40重量部、アクリル共重合ポリマー(メチルメタクリレート(MMA)/ブチルアクリレート(BA)/ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)=90/10/10)50重量部、スズ系触媒(Cat−PS3、信越化学工業製)10重量部を、溶液状態で混合して、混合溶液(3)を得た。混合溶液(3)中のシリコーンと(メタ)アクリル系ポリマーの混合比は、重量比で、シリコーン:(メタ)アクリル系ポリマー=2:1であった。また、アクリル共重合ポリマーの計算Tgは67.8℃、SP値は10.7(cal/cm
3)
0.5であった。
製造例1で製造したプラスチックフィルム(1)の片方の面に、上記混合溶液(3)を塗布して、厚さ1.0μm、算術平均表面粗さRa=0.5μmの非粘着層を形成させた。
このようにして、粘着テープ用フィルム(3)を得た。
各種評価結果を表2に示した。
また、非粘着層をSEMによって観察すると、
図1、
図2、
図3に示すように、形態観察像の濃淡により、空気界面側とプラスチックフィルム側とで組成が異なっていることが確認でき、シリコーンが(メタ)アクリル系ポリマーよりも多く含まれるシリコーンリッチ相と(メタ)アクリル系ポリマーがシリコーンよりも多く含まれる(メタ)アクリル系ポリマーリッチ相を含んでおり、シリコーンリッチ相と(メタ)アクリル系ポリマーリッチ相とが互いに独立した相分離構造をなしており、シリコーンリッチ相が空気界面側(プラスチックフィルムの反対側)に存在しており、(メタ)アクリル系ポリマーリッチ相がプラスチックフィルム側に存在していることが観察された。
さらに、非粘着層について全反射法による赤外分光測定(ATR−IR)を行ったところ、(メタ)アクリル系ポリマー相中のカルボニル基由来の1725cm
−1付近のピークに対するSi−CH
3由来の800cm
−1付近のピークの吸光度比を測定した結果、ZnSe45°に比べGe45°のプリズムを用いた場合に800cm
−1付近のピークが大きくなることがわかった。したがって、基材側に比べ空気界面側でケイ素の含有率が高まることがわかった。
また、非粘着層においてシリコーンリッチ相が空気界面側(プラスチックフィルムの反対側)に存在していることは、FT−IRにおいても確認できた。FT−IRによる測定は、Perkinermer製の「Spectrum One」を用い、分析深さ方向の異なる2種類のプリズム(ZnSe45°、Ge45°)にて空気界面側をATR法で測定した。得られたチャートを確認したところ、非粘着層の(メタ)アクリルポリマー由来のC=Oに帰属する1720cm
−1−1730cm
−1のピークに対する、Si−CH
3由来の800cm
−1付近のピークの吸光度比が、分析深さ方向の浅いGe45°のプリズムを用いた場合に大きくなっていることが確認できた。このことから、空気界面側にはシリコーンの濃度がより高くなっていることが証明できた。
これらの観察結果、ならびに、表面自由エネルギー最小化の原理を考慮にいれると、空気界面側にシリコーンリッチ相を有する2層構造が非粘着層に形成されたことがわかった。
次に、実施例1で得られた粘着剤溶液を、粘着テープ用フィルム(3)の非粘着層と反対側の面に塗布した後、130℃×90秒で乾燥し、厚み10μmの粘着剤層をプラスチックフィルム(1)の非粘着層と反対側の面に形成した。
このようにして、粘着テープ(3)を得た。
各種評価結果を表2に示した。
【0128】
〔実施例4〕
非粘着層形成用のアクリル共重合ポリマーとして、メチルメタクリレート(MMA)/エチルアクリレート(EA)/ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)=90/10/10のアクリル共重合ポリマーを50重量部用いた以外は実施例3と同様に行って粘着テープ用フィルム(4)を得た。この粘着テープ用フィルム(4)を粘着テープ用フィルム(3)に代えて用いた以外は実施例3と同様に行い、粘着テープ(4)を得た。
アクリル共重合ポリマーの計算Tgは74.3℃、SP値は10.3(cal/cm
3)
0.5であった。
非粘着層は、厚さ1.0μm、算術平均表面粗さRa=0.5μmであった。
各種評価結果を表2に示した。
【0129】
〔実施例5〕
非粘着層形成用のアクリル共重合ポリマーとして、メチルメタクリレート(MMA)/シクロヘキシルアクリレート(CHA)/ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)=90/10/10のアクリル共重合ポリマーを50重量部用いた以外は実施例3と同様に行って粘着テープ用フィルム(5)を得た。この粘着テープ用フィルム(5)を粘着テープ用フィルム(3)に代えて用いた以外は実施例3と同様に行い、粘着テープ(5)を得た。
アクリル共重合ポリマーの計算Tgは80.0℃、SP値は10.4(cal/cm
3)
0.5であった。
非粘着層は、厚さ1.0μm、算術平均表面粗さRa=0.5μmであった。
各種評価結果を表2に示した。
【0130】
〔実施例6〕
非粘着層形成用のアクリル共重合ポリマーとして、メチルメタクリレート(MMA)/ブチルアクリレート(BA)/ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)=95/5/15のアクリル共重合ポリマーを50重量部用いた以外は実施例3と同様に行って粘着テープ用フィルム(6)を得た。この粘着テープ用フィルム(6)を粘着テープ用フィルム(3)に代えて用いた以外は実施例3と同様に行い、粘着テープ(6)を得た。
アクリル共重合ポリマーの計算Tgは73.0℃、SP値は10.5(cal/cm
3)
0.5であった。
非粘着層は、厚さ1.0μm、算術平均表面粗さRa=1.0μmであった。
各種評価結果を表2に示した。
【0131】
〔実施例7〕
非粘着層形成用のアクリル共重合ポリマーとして、メチルメタクリレート(MMA)/ブチルアクリレート(BA)/ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)=80/20/10のアクリル共重合ポリマーを50重量部用いた以外は実施例3と同様に行って粘着テープ用フィルム(7)を得た。この粘着テープ用フィルム(7)を粘着テープ用フィルム(3)に代えて用いた以外は実施例3と同様に行い、粘着テープ(7)を得た。
アクリル共重合ポリマーの計算Tgは48.5℃、SP値は10.1(cal/cm
3)
0.5であった。
非粘着層は、厚さ1.0μm、算術平均表面粗さRa=0.2μmであった。
各種評価結果を表2に示した。
【0132】
〔実施例8〕
非粘着層形成用のアクリル共重合ポリマーとして、メチルメタクリレート(MMA)/ブチルアクリレート(BA)/ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)=99/1/5のアクリル共重合ポリマーを50重量部用いた以外は実施例3と同様に行って粘着テープ用フィルム(8)を得た。この粘着テープ用フィルム(8)を粘着テープ用フィルム(3)に代えて用いた以外は実施例3と同様に行い、粘着テープ(8)を得た。
アクリル共重合ポリマーの計算Tgは94.3℃、SP値は10.1(cal/cm
3)
0.5であった。
非粘着層は、厚さ1.0μm、算術平均表面粗さRa=0.5μmであった。
各種評価結果を表2に示した。
【0133】
〔実施例9〕
実施例5で得られた粘着テープ(5)の粘着剤層側に、剥離ライナーとして、Si処理を施した厚さ38μmのPETライナーを貼付し、粘着テープ(9)を得た。
非粘着層は、厚さ1.0μm、算術平均表面粗さRa=0.5μmであった。
各種評価結果を表2に示した。
【0134】
〔実施例10〕
非粘着層形成用のアクリル共重合ポリマーとして、メチルメタクリレート(MMA)/ブチルアクリレート(BA)/ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)=95/5/10のアクリル共重合ポリマーを50重量部用いた以外は実施例3と同様に行って粘着テープ用フィルム(10)を得た。この粘着テープ用フィルム(10)を粘着テープ用フィルム(3)に代えて用いた以外は実施例3と同様に行い、粘着テープ(10)を得た。
アクリル共重合ポリマーの計算Tgは77.2℃、SP値は10.3(cal/cm
3)
0.5であった。
非粘着層は、厚さ1.0μm、算術平均表面粗さRa=0.7μmであった。
各種評価結果を表2に示した。
【0135】
〔実施例11〕
非粘着層形成用のアクリル共重合ポリマーとして、メチルメタクリレート(MMA)/ブチルアクリレート(BA)/ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)=70/30/10のアクリル共重合ポリマーを50重量部用いた以外は実施例3と同様に行って粘着テープ用フィルム(11)を得た。この粘着テープ用フィルム(11)を粘着テープ用フィルム(3)に代えて用いた以外は実施例3と同様に行い、粘着テープ(11)を得た。
アクリル共重合ポリマーの計算Tgは31.2℃、SP値は10.4(cal/cm
3)
0.5であった。
非粘着層は、厚さ1.0μm、算術平均表面粗さRa=0.3μmであった。
各種評価結果を表2に示した。
【0136】
【表2】