特許第6096021号(P6096021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6096021-顎関節症用外用剤 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096021
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】顎関節症用外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/24 20060101AFI20170306BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20170306BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20170306BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20170306BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20170306BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   A61K33/24
   A61K33/00
   A61P19/02
   A61K9/06
   A61K9/70 401
   A61K9/12
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-60985(P2013-60985)
(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公開番号】特開2014-185104(P2014-185104A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2016年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】509149530
【氏名又は名称】ファイテン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】平田 好宏
【審査官】 吉田 佳代子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0193559(US,A1)
【文献】 特開2006−248832(JP,A)
【文献】 特開2009−108001(JP,A)
【文献】 国際公開第97/028793(WO,A1)
【文献】 特開2003−226656(JP,A)
【文献】 特開2003−192580(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/012509(WO,A1)
【文献】 歯学,1980年,68巻 1号,pp. 100-108
【文献】 慢性疼痛,2002年,Vol. 21 No. 1,pp. 79-82
【文献】 Med. Sci. Sports Exerc.,2010年,Vol. 42,pp. 2273-2281
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33−33/44
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A61P 19/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン粒子及びシリカを含み、
前記チタン粒子が前記シリカに担持されている、顎関節症用外用剤。
【請求項2】
剤形が、塗布剤、貼付剤及びエアゾール剤のいずれかである、請求項1記載の顎関節症用外用剤。
【請求項3】
剤形が前記貼付剤であり、
支持体層と、
前記支持体層の一面に設けられた粘着層と、を備え、
前記支持体層及び前記粘着層の少なくとも一方は、前記チタン粒子及び前記シリカを含む、請求項記載の顎関節症用外用剤。
【請求項4】
前記支持体層及び前記粘着層が透明性及び柔軟性を有する、請求項記載の顎関節症用外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顎関節症用外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
顎関節症は、顎運動障害、顎関節痛又は関節雑音を主な症状とする、慢性疾患群の総括的診断名である。顎関節症の病態は、咀嚼筋障害等の筋性の病態と、関節靭帯障害、関節円板障害、及び、変形性関節症等の関節性の病態とに大別できる。顎関節症は、国内外で罹患が確認されており、例えば米国の患者数は、3500万人(2002年統計)と報告されている。
【0003】
顎関節症の治療方法としては、非手術的治療法と、手術的治療法とに大別されている。非手術的治療法としては、生活改善、セルフケアー、スプリント療法、咬合治療、認知行動及び心身医学療法、薬物療法及び理学的療法等が挙げられる。一方、手術的治療法としては、関節腔洗浄方法、パンピング・マニピュレーション、関節鏡視下手術及び関節開放手術等が挙げられる(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】柴田 孝典、「口腔外科領域における顎関節症の治療法」、日本補綴歯科学会誌、平成24年9月21日、Vol.4,No.3、p246−255
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の顎関節症の治療法の多くは、手間や時間がかかる。また、顎関節症については、様々な治療方法が実施されているが、未だに有効な治療方法が確立されてない。
【0006】
本発明は、顎関節症の治療を簡易に且つ有効に行うことができる顎関節用外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る顎関節用外用剤は、金属及びシリカの少なくとも一方を含む。
【0008】
一実施形態においては、金属が微粒子であってもよい。
【0009】
一実施形態においては、金属が遷移金属であってもよい。
【0010】
一実施形態においては、剤形が、塗布剤、貼付剤及びエアゾール剤のいずれかであってもよい。
【0011】
一実施形態においては、支持体層と、支持体層の一面に設けられた粘着層と、を備え、支持体層及び粘着層の少なくとも一方は、金属及びシリカの少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0012】
一実施形態においては、金属及びシリカを含み、金属がシリカに担持されていてもよい。
【0013】
一実施形態においては、支持体層及び粘着層が透明性及び柔軟性を有していてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、顎関節症の治療を簡易に且つ有効に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る顎関節症用外用剤を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
[顎関節症用外用剤の構成]
図1は、一実施形態に係る顎関節症用外用剤を示す図である。図1では、顎関節症用外用剤として、剤形が貼付剤であるものを一例として示しており、貼付剤の断面構成を示している。図1に示すように、顎関節症用外用剤1は、支持体層3と、粘着層5と、を備えている。顎関節症用外用剤1は、透明性及び柔軟性を有している。
【0018】
支持体層3は、例えばポリウレタン樹脂からなる。支持体層3は、シート状を成しており、その厚みが例えば5〜50μmである。支持体層3は、シリカと、金属と、を含んでいる。支持体層3に含有されるシリカ及びチタン粒子の含有率は、0.001〜95重量%の範囲で適宜調整することができる。支持体層3は、例えばキャスティング法(溶液流延法)により形成される。キャスティング法では、流動性を有する原料を平滑で且つ剥離性を有する担体上に流して延在させてポリウレタン樹脂の薄膜を形成し、その後、担体から薄膜を剥離することにより、ポリウレタン樹脂からなるシート状の支持体層3を得る。支持体層3は、略矩形形状、略円形形状等であってもよい。
【0019】
本実施形態では、支持体層3は、金属として、チタン(Ti)系素材からなるチタン粒子を含んでいる。チタン系素材は、シリカに担持されている。チタン系素材は、チタン単体、チタンを含有するチタン化合物、又は、チタン合金である。
【0020】
チタン化合物としては、特に制限されないが、例えば、TiH、TiH等の水素化物、TiO、Ti、TiO、Ti〔OH〕、Ti〔OH〕、MTiO〔Mは金属原子〕等の酸化物、TiS、Ti、TiS等の硫化物、Ti〔SO、Ti〔SO、TiP等の酸素酸塩、TiB、TiB、TiB、Ti等のホウ化物、TiC等の炭化物、TiSi、TiSi、TiSi等のケイ化物、TiN、Ti、Ti、Ti等の窒化物、TiPnなどのリン化物、TiCl、TiCl、TiCl、TiBr、TiBr、TiBr、TiI、TiI、TiI等のハロゲン化物、MTiF、MTiF、MTiF、M[TiCl〔OH〕]、MTiCl、[Ti〔OH〕]Cl、M[TiBr]等の複合塩等が挙げられる。
【0021】
また、チタン合金としては、Ti−Al、Ti−V、Ti−Mo、Ti−Cr、Ti−Mn、Ti−Fe、Ti−Al−Cr、Ti−Cr−Fe−O等があり、それぞれの合金の組成比を任意に選定することができる。また、チタン系素材としては、チタンを含有するものであればよく、ルチル、イタチタン石、エイスイ石等の鉱物の他に、CaTiO、SrTiO、BaTiO、CdTiO、PbTiO等のチタン酸塩等が挙げられる。更に、チタン系素材としては、上記のチタン系素材を複数併用してもよい。
【0022】
チタン粒子の体積平均径(MV:Mean Volume Diameter)は、特に制限されないが、例えば、0.1nm〜1μmであり、好ましくは、0.5〜500nmであり、より好ましくは、10〜200nmである。
【0023】
上記のチタン系素材からなるチタン粒子の製造方法について、一例を説明する。最初に、耐熱容器のタンクに精製水を注入し、チタン系素材からなるチタン棒を精製水中に供給する。次に、タンクを高圧に加圧し、水素ガスと酸素ガスを2:1の体積比で混合したガスを精製水に噴射する。続いて、混合ガスに点火して混合ガスを完全に燃焼させ、チタン棒を熔解させて、精製水中にチタン粒子を分散させる。
【0024】
続いて、精製水に沈降したチタン粒子を取り出して乾燥し、ふるい(目開き0.1μm)を通して、チタン微粒子を得る。なお、混合ガスとしては、水素ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いることができる。
【0025】
粘着層5は、支持体層3の一面に設けられている。粘着層5の厚みは、例えば20〜1000μmである。粘着層5は、粘着剤が支持体層3の一面に塗布されて形成されている。粘着剤としては、アクリル系樹脂を用いることができる。なお、図1では図示を省略しているが、粘着層5上には、粘着層5に対して剥離性を有する剥離材(シート)が設けられていてもよい。
【0026】
上記構成を有する顎関節症用外用剤1は、顎部等の顎関節症の患部に貼付される。顎関節症用外用剤1は、粘着層5側を皮膚に押し当てて貼付する。
【0027】
[臨床試験結果]
続いて、上述の顎関節症用外用剤1を用いて行った臨床試験について説明する。なお、臨床試験に用いた顎関節症用外用剤1は、略円形形状を呈しており、例えば直径が35mm程度のものである。
【0028】
臨床試験は、32名の顎関節症患者(男性6名、女性26名、平均年齢41.5歳(標準偏差14.5))を対象に実施した。試験では、上記の顎関節症用外用剤1を顎部に貼付し、貼付する前と、貼付して2週間経過した後とにおいて、以下の各項目について調査した。調査項目は、無痛開口量、有痛開口量、安静時疼痛、開口時疼痛、咀嚼時疼痛、及び、日常生活障害度の6つとした。
【0029】
無痛開口量とは、痛みを伴うことなく口を開けることができたときの、開口部の縦方向の最大値(mm)である。有痛開口量とは、痛みを伴う状態で口を開けることができたときの、開口部の縦方向の最大値(mm)である。安静時疼痛とは、安静時(通常状態)での痛みである。安静時疼痛の評価は、視覚的評価スケール(以下、VAS:Visual Analog Scaleとする)で示している。VASは、100mmの直線を示し、その一端(左端)を「痛みはない」状態、その他端(右端)を「これ以上の痛みがないくらい強い痛み」状態として、現在感じている痛みが直線上のどの位置にあるのかを示す方法である。VASでは、直線上で示した位置の長さが大きいほど、痛みが強いことを示している。
【0030】
開口時疼痛とは、口を開けたときの痛みである。咀嚼時疼痛とは、食べ物等を咀嚼したときの痛みである。開口部疼痛及び咀嚼時疼痛についても、VASで痛みを評価している。
【0031】
日常生活障害度とは、日常生活に係る以下の複数の活動項目(13項目)について、障害度を数値評価した指標である。
1. 小さな食物を口に入れる
2. 大きな食物を口に入れる
3. やわらかいものを噛む
4. かたいものを噛む
5. 食べ物をすりつぶす
6. 食いしばる
7. 奥歯の歯磨き
8. あくび
9. しゃべる
10.長時間しゃべる
11.食事をする
12.長時間食事をする
13.首を曲げる
【0032】
日常生活障害度では、上記の各項目について、以下の4段階の評価を行った。
0:この活動を行うのに全く困難(苦痛)はない。
1:この活動を行うのに少し困難(苦痛)を感じる。
2:この活動を行うのにかなり困難(苦痛)を感じる。
3:この活動は苦痛が強くて、私には行えない。
日常生活障害度は、各項目について上記4段階で評価を行い、評価した結果の値(0〜3)を合計して算出している。日常生活障害度は、数値が高いほど、日常生活において活動が困難なことを表す。以上の評価項目の試験結果について、表1に示す。なお、表1中の括弧内に示す数値は、標準偏差を示している。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示すように、顎関節症用外用剤1を2週間貼付した後では、全ての調査項目について、貼付前よりも改善しているという結果が得られた。すなわち、顎関節症用外用剤1を2週間貼付した後では、開口量及び疼痛のいずれについても改善されていることが確認された。また、無痛開口量、有痛開口量、開口時疼痛、咀嚼時疼痛及びに日常生活障害度において、有意な変化が認められた。さらに、日常生活障害度に示されるように、顎関節症用外用剤1を2週間貼付した後では、評価値が低下している。すなわち、顎関節症用外用剤1の貼付後では、上記の13項目のいずれかについて、困難であった活動ができるようになり、日常生活に係る活動が改善されたことが確認された。
【0035】
続いて、顎関節症用外用剤1を貼付した顎関節症患者に実施したアンケート結果を、表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
表2に示すように、顎関節症用外用剤1を顎部に貼付した後では、21人(65.6%)の患者が、顎関節症の症状が改善したと回答した。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の顎関節症用外用剤1は、シリカ及びチタン粒子を含んでいる。この構成を有する顎関節症用外用剤1では、上記のように、顎部(患部)に貼付することにより、顎関節症の症状に対して、有効な効果が得られた。顎関節症用外用剤1を貼付した後では、安静時、開口時及び咀嚼時の疼痛の改善だけでなく、開口量の改善が確認された。すなわち、顎関節症用外用剤1では、顎関節部や咀嚼筋等の疼痛、及び、関節音、開口障害等の顎運動異常の改善に有効であることが確認された。さらに、顎関節症用外用剤1を貼付した後では、日常生活において困難であった活動が改善されたことが確認された。したがって、顎関節症用外用剤1は、顎関節症の治療を簡易に且つ有効に行うことができる。
【0039】
また、顎関節症用外用剤1は、透明性及び柔軟性を有している。そのため、顎関節症用外用剤1は、顎等の患部に貼付した場合であっても、目立たない。したがって、顎関節症用外用剤1は、長時間の貼付を可能としている。
【0040】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、上記実施形態では、金属としてチタン系素材を一例に説明したが、金属はその他のものであってもよい。金属としては、例えば遷移金属(例えば、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等)を用いることができる。
【0041】
上記実施形態では、顎関節症用外用剤1の粘着層5にシリカ及び金属(チタン粒子)が含まれている構成を一例に説明したが、支持体層3にシリカ及び金属が含まれていてもよい。また、顎関節症用外用剤1は、支持体層3及び粘着層5の両方にシリカ及び金属が含まれていてもよい。また、顎関節症用外用剤1は、支持体層3及び粘着層5の少なくとも一方に、シリカ及び金属の少なくとも一方が含まれていてもよい。
【0042】
上記実施形態では、接着層5は、シリカ及び金属と粘着剤とを混練したものを支持体層3の一面に塗布して形成しているが、接着層5の形成方法はこれに限定されない。例えば、接着層5は、金属、シリカ及び粘着剤を混練してスティック体とし、スティック体をスライスした薄片体を支持体層3の一面に設けてもよい。また、接着層5は、シリカに担持された金属を粘着性樹脂でコーティングし、これを支持体層3の一面に加圧して設けてもよい。
【0043】
上記実施形態では、顎関節症用外用剤の剤形として貼付剤を一例として説明したが、顎関節症用外用剤の剤形は、例えば塗布剤、エアゾール剤等であってもよい。顎関節症用外用剤が塗布剤である場合には、例えば以下構成を有している。
【0044】
塗布剤は、例えばクリーム状である場合には、以下の組成を有している。
・ステアリルアルコール 6.00重量%
・ステアリン酸 2.00重量%
・水添ラノリン 3.50重量%
・スクワラン 10.00重量%
・オクチルドデカノール 9.00重量%
・1,3−ブチレングリコール 8.00重量%
・PEG1500 3.50重量%
・POE(25)セチルアルコールエーテル 3.50重量%
・モノステアリン酸グリセリン 3.50重量%
・チタン微粒子 0.01重量%
・精製水 50.99重量%
【0045】
塗布剤は、例えばゲル状である場合には、以下の組成を有している。
・ジプロピレングリコール 8.00重量%
・PEG1500 7.50重量%
・カルボキシビニルポリマー 0.50重量%
・メチルセルロース 0.30重量%
・POE(15)オレイルアルコールエーテル 1.20重量%
・水酸化カリウム 0.10重量%
・チタン微粒子 0.005重量%
・精製水 82.395重量%
【0046】
上記の塗布剤は、顎部(患部)に塗布して使用することができる。顎関節症用外用剤の剤形が塗布剤である場合にも、上記実施形態の貼付剤と同様の作用効果を得ることができる。顎関節症用外用剤がエアゾール剤の場合も同様である。
【符号の説明】
【0047】
1…顎関節症用外用剤、3…支持体層、5…粘着層。
図1